説明

化成処理鋼材の製造方法、有機樹脂被覆鋼材および表面処理設備

【課題】環境規制の制約のない元素を含有する化成処理液を使用しても、6価Crを含有する化成処理液と同等またはそれ以上の化成処理の耐食性能を発現できる化成処理鋼材の製造方法、有機樹脂被覆鋼材を提供する。また前記鋼材を製造する表面処理装置を提供する。
【解決手段】鋼材に化成処理液を塗布あるいは接触させて化成処理する際に、化成処理液が鋼材と接触しているときに、鋼材面の鉛直方向の磁場の強さが0.2T以上、3T未満の範囲になるようにして磁場を印加する。前記で製造された化成処理鋼材を有機樹脂で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成処理鋼材の製造方法、有機樹脂被覆鋼材および表面処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
耐食性等の特性を向上させるために、化成処理を施した鋼材、化成処理の下地処理後さらに有機樹脂を被覆した鋼材が、橋梁、鉄塔、タンク、道路、住宅、ビルなどの土木・建築分野、家電、自動車などの用途分野において種々使用されている。従来、鋼材の化成処理をコントロールするファクターには、処理液濃度、組成、処理時間、温度、鋼材の表面状態、焼付け温度などがあるが、これらのファクターで化成処理の特性を向上させるのには限界があった。
【0003】
また近年6価Crの規制などがあり化成処理においても環境対応が進行している。従来の化成処理で使用される6価Crなどの元素が環境規制により使用できなくことで、化成処理による耐食性能や有機樹脂被覆の下地処理としての性能が低下することが避けられない状態にある。
【0004】
後記するように、本願は化成処理の際に磁場を利用するものである。塗料の塗布に磁場を利用するものとして、特許文献1がある。特許文献1は、塗料を塗布した金属帯に3〜15Tの強磁場を付与することで、塗料の膜厚の均一性を改善するもので、化成処理を施した際の耐食性能を向上させるものではない。
【0005】
特許文献2〜4にも、鋼材に磁場を付与する技術が開示されているが、いずれも鋼材の腐食抑制のために磁場を付与するもので、化成処理の際に磁場を付与するものではない。
【特許文献1】特開平10−328606号公報
【特許文献2】特開2001−087771号公報
【特許文献3】特開2005−272891号公報
【特許文献4】特開平10−204663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、環境規制の制約のない元素を含有する化成処理液を使用しても、6価Crを含有する化成処理液と同等またはそれ以上の化成処理の耐食性能を発現できる化成処理鋼材の製造方法を提供することである。
また本発明の課題は、環境規制の制約のない元素を含有する化成処理液を使用して鋼材を下地処理した後その上に有機樹脂を被覆したときに、鋼材の下地処理に6価Crを含有する化成処理液を使用して処理をしたときと同等またはそれ以上の優れた耐食性能を発現できる有機樹脂被覆鋼材を提供することである。
また本発明の課題は、前記化成処理鋼材、前記有機樹脂被覆鋼材の製造に適用できる表面処理設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、化成処理する場合において、化成処理被膜の形成過程に技術的改善点があると考えた。金属表面で起きる腐食反応(金属溶解反応やそれの対反応で起きる還元反応、それに伴い移動する各種イオンなどの一連の反応)に磁場が作用すると、各種イオンの移動に対してローレンツ力が発生し、その移動を促進、抑制、する働きがあると考えられる。このことは、磁場中においては、溶液と金属の電気化学反応をコントロールできる可能性を示唆している。そこで化成処理被膜の形成反応も電気化学反応の一種であることに着目し、磁場中での溶液と金属材料間の電気化学的相互作用について検討した結果、化成処理の形成過程において金属の溶解反応とその対になるカソード還元反応の起きるミクロセルが微細化できるのではないかと推定された。さらに検討した結果、化成処理の際に磁場を印可すると、化成処理皮膜の耐食性が向上し、化成処理の際に磁場を印可して形成した化成処理皮膜を有機被覆の下地処理として採用すると有機被覆鋼材の耐食性が向上することが判った。
【0008】
本発明は上記知見に基づくものである。上記課題を解決する本発明の手段は以下の通りである。
【0009】
(1)鋼材に化成処理液を塗布あるいは接触させて化成処理する際に、化成処理液が鋼材と接触しているときに、鋼材面の鉛直方向の磁場の強さが0.2T以上、3T未満の範囲になるようにして磁場を印加することを特徴とする化成処理鋼材の製造方法。
【0010】
(2)前記化成処理液は、リン酸、硫酸、酢酸、蟻酸、モリブデン酸、タングステン酸およびバナジン酸のなかから選ばれる1種以上の酸成分と、Zn、Co、Mo、W、Ni、V、Fe、Crのなかから選ばれる金属の金属イオンまたは金属塩の1種以上を含むことを特徴とする(1)の化成処理鋼材の製造方法。
【0011】
(3) (1)または(2)の方法で製造された化成処理鋼材を有機樹脂で被覆してなることを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
【0012】
(4)鋼材に化成処理液を塗布する塗布装置、塗布された化成処理液と鋼材が反応している過程で磁場を印可する磁場印加装置、水洗装置および乾燥装置を備えたことを特徴とする表面処理設備。
【発明の効果】
【0013】
本発明法で製造された化成処理鋼材は、磁場を付与することなく製造される従来法の化成処理鋼材に比べて耐食性に優れ、クロムを含有しない化成処理液を用いても、従来のクロメート処理した鋼材と同等以上の耐食性を有している。この化成処理鋼材の化成処理被膜は有機樹脂被覆の下地処理としても耐食性に優れる。
【0014】
この化成処理鋼材に有機樹脂を被覆した鋼材は、下地処理にクロメート処理を施した鋼材に有機樹脂を被覆した鋼材と同等以上の耐食性を有している。
【0015】
本発明の表面処理設備は、上記化成処理鋼材、上記有機樹脂被覆鋼材を製造する装置として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について以下詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の表面処理設備の一実施形態を示す概略縦断面図である。図1において、1は鋼板、2は電磁石、3は乾燥装置(加熱炉)、4は塗布ロール、5は中間ロール、6はピックアップロール、7は化成処理液、8は化成処理液保持槽、11は搬送ロール、12は水洗装置である。図1を用いて典型的な化成処理鋼板の製造方法を説明する。
【0018】
化成処理液保持槽8内の化成処理液7をピックアップロール6で汲み上げ、汲み上げた化成処理液7を中間ロール6を介して塗布ロール5に転写し、塗布ロール5上の化成処理液7を、搬送ロール11で搬送される鋼板1が塗布ロール5部を通過する際にその表面に塗布する。
【0019】
化成処理には、化成処理の際に化成処理液と基材である鋼板を反応させて被膜を形成する反応型化成処理と、化成処理液と基材である鋼板との反応を抑制して被膜を形成する塗布型化成処理がある。本願発明の作用効果は、化成処理液が反応型化成処理液である場合に顕著に発現されるので、化成処理液は反応型化成処理液が好ましい。以下の説明は、化成処理液が反応型化成処理液である反応型化成処理を念頭において説明する。
【0020】
塗布ロール5出側(鋼板進行方向下流)に、鋼板面に対向してその両側に電磁石2、2が配置されている。この電磁石2、2により化成処理液7が塗布された直後の鋼板面に鉛直方向の磁場を印加、すなわち、鋼板上に化成処理液が溶液として存在している間に磁場を印加する。磁場の極性の向きは、鋼板に対してどちらがN極であっても良いが、化成処理面側(反鋼板側)がN極、鋼板側がS極であることがより好ましい。
【0021】
磁場の印加は出来る限り化成処理液7を塗布直後の印加が好ましく、図1に示した塗布ロール5に隣接して磁石2を設置するのが好ましい。磁場の印可は、塗布直後から5秒以内に行うことが好ましい。磁場を印可できる位置にライン速度を勘案して磁石を配置するのが良い。磁場の印可を塗布直後から5秒以内に行うのは、化成処理の極初期の溶解過程が塗布後5秒内に起きると推定されるためである。所定時間磁場中に保持した後、水洗することなく、または水洗したのち、鋼板を加熱乾燥し、化成処理鋼板を得る。
【0022】
水洗の有無は、化成処理液濃度や種類などに依存するので、それに応じて水洗の有無を選択する。化成処理液濃度を反応後にほとんど過剰成分が残らないものに調整可能な場合には水洗は必要でなく、反応後に過剰成分が残る場合には水洗をした方が化成処理の耐食性という点では好ましい。水洗装置は、例えばシャワーノズルから、純水や工業用水を噴霧して、当該鋼板上の化成処理面に水をかけ、流すタイプや、フローコーターのように表面に水を噴きかけるタイプが挙げられる。
【0023】
磁場中の保持時間は、1秒以上600秒以下が好適である。1秒以下では磁場印加の効果が発揮されず、600秒超では化成処理反応が概ね終了しているので印加効果がない。磁場中の保持は乾燥過程にいたるまで行うことが好ましい。乾燥過程の前に水洗するときは磁場中の保持は水洗過程に至るまで行うことが好ましい。
【0024】
印加する磁場の強さは、磁極間で0.2T以上が好ましい。0.2T未満では、化成処理被膜形成時に磁場の印加効果が生じない。より好ましくは0.5T以上である。3T以上では磁極の保持が困難で装置全体を保持するための装置が大掛かりになり経済的に不利になるので、3T未満が好ましい。また磁場の印加方向は、処理する鋼板に対して鉛直方向が好ましい。磁場をできる限り鋼板に対して鉛直方向に付与するために、鋼板の上下面に磁石を取り付け磁場の方向を鉛直方向とし、磁力線が鋼板面に対して鉛直方向になるように付与することが良い。また磁石が板に対して鉛直方向でない場合には、実際に磁場印加の効力をもつ実効磁場は、以下の式で計算される。
【0025】
実効磁場強度=平行磁場強度×Cosα
(αは、鋼板面に対して磁石がずれている角度(傾斜角)を指す。)
鋼板面と平行でない磁場の場合には、実効磁場強度により磁界を調節することが必要である。例えば、鋼板面に対して角度αのずれ(傾斜角)がある場合には、必要な磁場強度は、上記の式から計算することができる。これに従い塗布した化成処理液中に所用の磁場を印加することが可能となる。
【0026】
化成処理液は、(イ)リン酸、硫酸、酢酸、蟻酸、モリブデン酸、タングステン酸およびバナジン酸のなかから選ばれる1種以上の酸成分と、(ロ)Zn、Co、Mo、W、Ni、V、Fe、Crのなかから選ばれる金属の金属イオンまたは金属塩の1種以上を含むものが好ましい。酸成分が鋼板表面を溶解し、酸成分側のアニオン(例えば、リン酸イオン、モリブデン酸イオン、バナジン酸など)が添加した金属イオンと鋼板から溶解した鉄イオン(鋼材上にめっき層などの金属層が付与されているときは該金属層が溶解して生成した金属イオン)と化合物を生成し表面に沈殿し、化成処理膜を形成させるためである。
【0027】
酸成分の濃度は、0.01mol/l〜10mol/l程度が好ましい。金属イオンまたは金属塩の濃度も0.01mol/l〜10mol/l程度が好ましい。いずれも0.01mol/l未満では化成処理被膜が形成されず、10mol/l超では酸による溶解が激しく、化成処理被膜が形成されにくいためである。
【0028】
化成処理被膜の形成過程は、初期に酸成分による鋼材の溶解(鋼材上にめっき層などの金属層が付与されているときは該金属層の溶解)が見られ、その後pHの上昇とともに化成処理被膜が形成される。この形成過程において、溶解側(アノード領域)と水素発生側(カソード域)との間で電気化学的セルが形成されるが、磁場が印加されない場合では、その電気化学的セルのサイズが数百μから数mmと比較的大きいのに対して、磁場の印加によりそのセルのサイズがより微細化すると考えられる。この微細化により、より均一な化成処理被膜が形成され耐食性が向上する。化成処理被膜の耐食性は、被膜の不均一部に起因するミクロな欠陥から劣化すると考えられ、電気化学的セルが微細化されることで、被膜の不均一部に起因するミクロな欠陥が減少し、耐食性向上に寄与すると考えられる。
【0029】
ここで述べる鋼材とは、成分的には一般鋼、低合金鋼、高合金鋼(ステンレス鋼含む)を含み、冷延鋼板、熱延鋼板および厚板、形鋼、鋼管などであり、表面にめっきや溶射、コールドスプレー、クラッド化などにより他金属層が付与されたものであっても良い。
【0030】
図1の装置では、電磁石を配置したが、磁場を与えるものは電磁石に限定されず、永久磁石や超伝導磁石などによっても良い。
【0031】
図1の装置では、塗布ロールにて鋼板表面に化成処理液を塗布するロールコーターであった。処理液の塗布方法はロールコーターに限定されず、スプレーやコンマコーター、流しかけ、浸漬などの方法であっても良い。磁場の印加は、化成処理液が鋼材と接触して、化成処理被膜が形成過程にある時に行う。
【0032】
鋼板上に化成処理被膜を形成した後その上に有機樹脂の被覆層を形成した有機樹脂被覆鋼材でも下地の化成処理被膜の不均一部に起因するミクロな欠陥から有機樹脂被覆鋼材が劣化する。したがって、上記の本発明法で形成した化成処理被膜は、有機樹脂被覆鋼材の下地処理としも活用できる。有機樹脂被覆は特に限定されず、一般の塗料や樹脂(ライニング)などを使用できる。また、有機樹脂被覆の塗布方法は刷毛、スプレー、ロールコーターなどの通常の方法でよい。
【実施例】
【0033】
以下実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0034】
<供試鋼板の作製(方法A)>
化成処理液は、表1に示した組成の化成処理液を使用した。溶液には一部溶解できず沈殿していた成分もみられたので、溶液調整後24時間攪拌した後、ろ過して沈殿成分を取り除いたものを使用した。
【0035】
【表1】

【0036】
鋼材は1.2mm厚みの冷延鋼板を30mm×100mmにせん断したものを使用した。図2に示す実験装置を用いてこの鋼板21を化成処理液24の入ったアクリル製セル23中に100mm浸漬し、100mm浸漬後直ちに電磁石22に電流を流し磁場を付与した。25はセル23内で鋼材を保持する保持部材である。磁場は、アクリル製セル23を取り除いた状態で測定し、流す電流値と磁場の強さの相関を取っておくことで、電磁石22への電流値で磁場の強さをコントロールした。鋼板21を化成処理液24に浸漬して2秒〜60秒間磁場を保持し、電磁石への電流を遮断することにより磁場を遮断した。その後、セル23中での浸漬時間、すなわち磁場印加と磁場を印加しない時間の合計が60秒になるタイミングで鋼板を抜き出し、直ぐに水洗した後、100℃の電気炉において3分保持し乾燥させた。
【0037】
その後一部の鋼板には、さらにポリウレタン塗装を施した。ポリウレタンは、第一工業製薬製のパーマガード(登録商標、以下同じ。)331プライマーを乾燥膜厚が30μmになるようにバーコーターで塗布し、24時間後にパーマガード137を乾燥膜厚が1mmになるようにスプレー塗装した。塗装後約2週間室温で養生後試験に供した。
【0038】
<供試鋼板の作製(方法B)>
化成処理液は、表1に示した組成の処理液を使用した。溶液には一部溶解できず沈殿していた成分もみられたので、溶液調整後24時間攪拌した後、ろ過して沈殿成分を取り除いたものを使用した。鋼材は1.2mm厚みの冷延鋼板を30mm×1000mmにせん断したものを使用した。
【0039】
図3に示す実験装置を用いて、鋼板31にロールコーターにて化成処理液を塗布し、アクリル製セル33中に導入し、電磁石32で磁場を印可した。39はセル中の鋼材を安定移動させるための保持部材である。磁場は、アクリル製セル33を取り除いた状態で測定し、電磁石32に流す電流値と磁場の強さの相関を取っておくことで、電磁石32への電流値で磁場の強さをコントロールした。磁場の印加時間は引き出し速度を変えることにより変化させ、60〜180秒とした。電磁石32を通過後直ちに鋼板31を水洗した後(水洗設備は図示せず)、100℃の電気炉において3分保持し乾燥させた。処理部分より約100mmを切り出し試験材に供した。その後一部の鋼材には、ポリウレタン塗装を施した。ポリウレタンは、第一工業製薬製のパーマガード331プライマーを乾燥膜厚が30μmになるようにバーコーターで塗布し、24時間後にパーマガード137を乾燥膜厚が1mmになるようにスプレー塗装した。塗装後約2週間室温で養生後試験に供した。
【0040】
<供試比較鋼板の作製(方法C)>
比較例として市販のクロメート処理(関西ペイント製;コスマー(登録商標)100)を行なった試験材を作製した。1.2mm×30mm×100mmの冷延鋼板に、上記クロメート処理液を純水で4倍に希釈した処理液に30秒間浸漬した後、垂直に10分間保持し、その後120℃の電気炉中で3分間乾燥させた。クロメート付着量は、Cr量換算で、60〜100mg/mであった。クロメート処理した鋼板に方法Aと同様に、ポリウレタン被覆を行ない、耐食性試験に供した。
【0041】
<耐食性の調査>
化成処理被膜の耐食性の調査には、化成処理被膜上(30mm×100mm)に、0.75質量%のNaCl溶液を4g塗布(約0.1g/m相当のNaCl)し、全面になじむようにガラス棒で伸ばした。これを100℃の電気炉中で乾燥させた後、95%RH、40℃の恒温恒湿槽に水平に置き、20日後の腐食面積率を求めた。腐食面積率は目視で判定し、次の5段階とした。
1:腐食面積率0〜0.03%未満、2:腐食面積率0.03%〜0.3%未満、3:腐食面積率0.3%〜3%未満、4:腐食面積率3%〜30%未満、5:腐食面積率30%〜100%
ポリウレタン被覆鋼材の耐食性は、カッター刃厚1mmのカッターで試験材中央部の塗装面に鋼材に達する長さ約30mmのクロスカットを設けた。この試験材を35℃、5質量%NaCl溶液による塩水噴霧試験に28日間置き、回収した。水洗後クロスカット部から容易に剥離できるポリウレタン層を剥離し、剥離部分の錆の最大侵入距離(カット部に対する垂直方向の最大幅)を求めた。
【0042】
方法Aで作製した供試鋼板の製造条件と調査結果、方法Bおよび方法Cで作製した供試鋼板の製造条件と調査結果を各々表2、表3に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
いずれも磁場の印加により耐食性の向上が認められ、かつ本発明材は従来最も耐食性が良いとされてきたクロメート処理と同等以上の耐食性能が確保されている。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の化成処理鋼材の製造方法は、皮膜中にクロムを含有しない化成処理鋼材の製造方法として利用することができる。本発明の有機樹脂被覆鋼材は、下地被膜にクロムを含有しない有機被覆鋼材が必要となれる用途分野に適用することができる。本発明の表面処理設備は、前記化成処理鋼材、前記有機樹脂被覆鋼材を製造するための装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の表面処理設備の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】実施例の方法Aで使用した表面処理装置(化成処理装置)で、(a)は概略縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視拡大図である。
【図3】実施例の方法Bで使用した表面処理装置(化成処理装置)で、(a)は概略縦断面図、(b)は(a)のA−A断面拡大図である。
【符号の説明】
【0048】
1 鋼板
2 電磁石
3 乾燥装置(加熱炉)
4 塗布ロール
5 中間ロール
6 ピックアップロール
7 化成処理液
8 化成処理液保持槽
9 化成処理液層
10 化成処理被膜
11 搬送ロール
12 水洗装置
21 鋼板
22 電磁石
23 アクリル製セル
24 化成処理液
25 保持部材
31 鋼板
32 電磁石
33 アクリル製セル
34 塗布ロール
35 中間ロール
36 ピックアップロール
37 化成処理液
38 化成処理液保持槽
39 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材に化成処理液を塗布あるいは接触させて化成処理する際に、化成処理液が鋼材と接触しているときに、鋼材面の鉛直方向の磁場の強さが0.2T以上、3T未満の範囲になるようにして磁場を印加することを特徴とする化成処理鋼材の製造方法。
【請求項2】
前記化成処理液は、リン酸、硫酸、酢酸、蟻酸、モリブデン酸、タングステン酸およびバナジン酸のなかから選ばれる1種以上の酸成分と、Zn、Co、Mo、W、Ni、V、Fe、Crのなかから選ばれる金属の金属イオンまたは金属塩の1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の化成処理鋼材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法で製造された化成処理鋼材を有機樹脂で被覆してなることを特徴とする有機樹脂被覆鋼材。
【請求項4】
鋼材に化成処理液を塗布する塗布装置、塗布された化成処理液と鋼材が反応している過程で磁場を印可する磁場印加装置、水洗装置および乾燥装置を備えたことを特徴とする表面処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−256699(P2009−256699A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104233(P2008−104233)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】