説明

化石燃料から生じる温室効果ガスを非毒性基本元素に転換する方法

プロセスは、化石燃料を燃焼する炉から排出されるCO2、SO2、Nox及びCO等の温室効果ガスを集める工程;ガスの浄化及びスクラブが行われる金属イオン封鎖装置にガスを供給する工程;スクラブされたガスを、ガスの体積を減少させるために圧縮機へ移送する工程;ガスを荷電成分にイオン化するプラズマアークにガスを導入する工程;自由電子源を供給する工程;自由電子を高濃度自由電子ゾーンで捕獲する工程;プラズマアークから架電成分を高濃度自由電子ゾーンに導入し、イオンを、炭素、酸素ガス、窒素、炭化水素、及び他の元素成分の元素フラグメントに転換する工程;炭素及び他の元素の元素フラグメントを集める工程;酸素ガスを炉へ送って、さらなる化石燃料を燃焼させる工程、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
≪発明者≫
ホルコーム,ロバート,レイ、アメリカ合衆国民、アメリカ合衆国 37212 テネシー,ナッシュビル,スカーリット プレース 1941;及びホルコーム,アンドリュー,アール.、アメリカ合衆国民、アメリカ合衆国 37212 テネシー,ナッシュビル,スカーリット プレース 1941
≪関連出願の説明≫
本願は、2004年1月28日に出願された仮特許出願第60/539635号"Method of Converting Green House Gases from Fossil Fuels into Non-toxic Base Element"(「化石燃料からの温室効果ガスを非毒性基本元素に転換する方法」)の優先権を主張し、該出願は引用を以て本願に組み入れられる。
≪連邦政府に資金提供を受けている研究開発に関する陳述≫
非適用
≪「マイクロフィッシュ添付書類」の説明≫
非適用
【背景技術】
【0002】
<1.発明の分野>
本発明は、温室効果ガス(green house gases)の処理に関する。より具体的には、本発明は、化石燃料の燃焼によって発生する二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、亜酸化窒素などの有害な温室効果ガスを、大気中へ放出することなく、それらの基本元素(base components)、つまり元素状の炭素、硫黄、窒素及び酸素に転換する方法に関する。
【0003】
<2.発明の全体的背景>
石炭は、世界中で最も豊富な燃料源である。石炭は、世界で利用可能な化石燃料の90%を構成する。石炭は、一般的には、化石化した植物から形成され、暗褐色乃至黒鉛のような材料である。石炭は、概して、数種類の有機化合物と無機化合物で合成された無定形炭素である。石炭の品質と種類は、高品質の無煙炭(炭素含有量が多く、揮発性不純物が殆どなく、クリーンな炎で燃焼する)から、瀝青炭(揮発性不純物の割合が多く、暗い炎で燃焼する)、亜瀝青炭(揮発性不純物の割合は低いが、灰と水分の割合が多い)、亜炭(瀝青炭より軟らかく、植物物質が炭素に十分に転換されておらず、燃焼煙に多くの煙を含む)まで様々である。石炭は、世界中の石炭火力発電所で燃焼され、電気という形態でエネルギーを生成する。炭素中の不純物には、石炭燃焼時に発生する幾種類かの物質に大きな影響を及ぼすものがあることは認識されている。特に厄介な不純物は硫黄である。硫黄は、石炭中に存在する量は、微量から数重量パーセント(例えば0〜7重量パーセント)の範囲である。石炭中に存在する硫黄の形態は、例えば有機硫黄、発熱性硫黄、又は硫酸塩硫黄等、様々である。石炭含有硫黄が燃焼するとき、一般的には、二酸化硫黄(SO2)が燃焼ガスとして大気中に放出される。大気中にSO2が存在すると、その一部は、SO2と水とから硫酸又は亜硫酸を生じ、酸性雨となる。酸性雨は、様々な方法で環境を破壊する。アメリカ合衆国では、環境保護庁(EPA)が、石炭の燃焼基準を規定しており、石炭火力発電所からのSO2排出を制限している。
【0004】
石炭は合衆国の多くの地域で生産されるが、容易に採掘される(ゆえに安価な)石炭の多くは、硫黄を高濃度で含有しており、燃焼ガス中のSO2量がEPAの規定を越える。したがって、石炭火力発電所では、高品質の石炭を、発電所から遠く離れた炭坑から購入しなければならず、輸送その他の費用が増大する。高硫黄含有石炭の燃焼ガス中のSO2量を低減するための技術は、長い間に亘って発展してきている。この技術は、燃焼前、燃焼中及び燃焼後における石炭の処理を含んでいる。しかしながら、これまでの処理では、SO2放出低減効果と経済的な実現可能性の点で満足するには至っていない。
【0005】
現在使用されているボイラーの燃焼温度では、石炭を空気の存在下で燃焼させると、空気中の窒素が酸素と共有結合を形成して、亜酸化窒素(NO及びNO2)又はNoxを生成する。亜酸化窒素は、酸性雨の主成分である。石炭燃焼ボイラーからのNox総排出量は、年間約6.8百万トン(年間6,909百万キログラム)であり、100万BTU当たり0.75Ibの放出量(1キログラム当たり416,625キロカロリー)に相当する。Nox還元技術は発展したが、次の点では不十分である:1)低Noxバーナー。;2)選択的な触媒及び非触媒還元技術(SCR);3)人工知能ベースの制御システム。
【0006】
多くの石炭鉱床は、含まれる水銀量は様々である。石炭が燃焼すると、この水銀の大部分は、排煙の中に含まれて排出される。この水銀は、雨水に含まれて地球に戻される。このように、地表水が汚染すると、有毒濃度の水銀が魚に蓄積するから、魚は食用に不適切となる。今のところ、これらの水銀排出を制御するのに良好な技術が無い。
【0007】
石炭1トンの燃焼により、1トンのCO2(二酸化炭素)が発生し、大気中に放出される。このため、石炭の燃焼により、世界全体では、毎年、約40億トン(4.0642×109キログラム)のCO2が大気中に放出される。この著しい温室効果ガスの放出を防止するのに有効な技術は存在しない。
【0008】
このように、本発明のプロセスの開発が必要とされる背景がある。
【発明の開示】
【0009】
<発明の要旨>
本発明は、上記課題を解決するもので、直接的な方法で、温室効果ガスを処理し、非毒性元素に転換するものである。本発明のプロセスは、化石燃料の燃焼によって炉から排出されたCO2、SO2、Nox及びCO等の温室効果ガスを集める工程;金属イオン封鎖(sequestration)装置へガスを送給し、ガスの浄化(clean)及びスクラブ(scrub)を行なう工程;ガスの体積を減少させるために、スクラブされたガスをコンプレッサーへ送る工程;ガスを荷電成分にイオン化するためにガスをプラズマアークに導入する工程;自由電子源を供給する工程;自由電子を高密度自由電子ゾーンの中に捕獲する工程;イオンを、炭素、酸素ガス、窒素、炭化水素及び他の元素成分の元素フラグメント(elemental fragments)にするために、プラズマアークからの荷電成分を、高密度自由電子ゾーンに導入する工程;炭素及び他の元素の元素フラグメントを集める工程;追加の化石燃料を燃焼させるための酸素を供給するために、酸素ガスを炉へ供給する工程、を含んでいる。
【0010】
本発明の主たる目的は、化石燃料の燃焼によって放出された有毒な温室効果ガスを、無害の元素成分にするプロセスを提供することである。
本発明のさらなる目的は、温室効果ガスを、排出することがない閉ループシステム内で、元素フラグメントに転換するプロセスを提供することである。
本発明のさらなる目的は、温室効果ガスを非毒性成分へ転換できるプロセスを提供することである。
本発明のさらなる目的は、例えばCO2、CO、SO2その他の温室効果ガスを、化石燃料の燃焼生成物として大気中に放出することを回避できるプロセスを提供することである。
本発明のさらなる目的は、元素フラグメントへのさらなる処理を行なうために、温室効果ガスの浄化及びスクラブが行なわれる金属イオン封鎖装置を含むプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の方法及びシステムでは、温室効果ガスの少なくとも10%以上が非有害成分へ転換される。望ましくは、温室効果ガスの少なくとも20%以上が非有害成分へ転換される。より望ましくは、温室効果ガスの少なくとも50%以上が非有害成分へ転換される。さらにより望ましくは、温室効果ガスの少なくとも90%以上が非有害成分へ転換される。最も望ましくは、温室効果ガスの全部又は実質的に全部が非有害成分へ転換される。
【0012】
全部又は実質的に全部の温室効果ガスが非有害成分へ転換されることが最も好ましいが、本発明は、例えば、温室効果ガスの50%、60%、70%、80%又は90%が転換されるだけでも、有用であり、望ましい。
【0013】
本発明の性質、目的及び利点については、図面を参照した以下の詳細な説明により、さらなる理解が得られるであろう。なお、図面中、同じ要素には同じ引用符号を付している。
【0014】
<発明の詳細な説明>
Holcomb Scientific Zero Emissions Prototype Power Plant(ホルコームのゼロ排出標準型発電所)は、将来の代表的なクリーン発電であり、現在利用可能である。それは、既存のインフラ設備を利用して、大気中に排出物を放出することなく、石炭、油及びガス等の化石燃料を燃焼させるものである。この技術では、地球の自然バランス確保に必要なレベルを越えるような異常レベルの温室効果ガスを発生させないであろう。
【0015】
燃焼プロセスは、炉の中で開始する。炉の中で、熱エネルギーが発生し、その後、利用可能な電力に変換される。炉はまた、危険排出物問題の開始点でもある。これらの危険排出物は、ガスの形態では、我々が今日知っているものとしてスモッグ、温室効果ガス及び酸性雨のガスがあり、今日の我々を悩ませる有害副産物を生成する。
【0016】
炉から出たガスは、配管系を通り、循環ファンにより、金属イオン封鎖チャンバーに送られる。燃焼のガス状副生成物は、金属イオン封鎖チャンバーの中で、水銀のような有毒物質と共に部分的に除去され、水銀は完全に除去される。
【0017】
スクラブされたガスの残部は、次に、圧縮され、プラズマアークによって導入され、酸素、炭素、窒素及び硫黄の結合が破壊される。危険ガスのこれらの結合が破壊されると、酸素及びガスの基本元素がイオン化状態で放出される。電子加速器は、イオン化ガスを、過剰数の電子をそれに照射することによって安定化させる。これは磁気チャンバーの中で行われる。
【0018】
基本元素は、元素トラップ(element trap)の中で分離される。酸素は、次に、燃焼チャンバーへ送られ、該チャンバー内で、追加の化石燃料を燃焼させるために再利用される。
このサイクルは、閉ループシステムの中で、排出物を出すことなく継続しながら、エネルギーを連続的に発生させる。
【0019】
これは、温室効果ガスの問題を解決するものである。また、化石燃料の燃焼によって同時に発生する有毒ガスを除去する。前記金属イオン封鎖装置は、家庭又は小規模の用途では炉のサイズに合わせて小さくすることができるし、工業的利用及び電力網への利用に合わせて大きくすることもできる。ホルコームのゼロ排出標準型発電所は、現在利用可能である将来のクリーン発電である。
【0020】
図9は、エネルギーの炭素サイクルを示しており、以下に、本発明のプロセスについてその理論と動作の要旨を説明する。炭化水素は、酸素の存在下で燃焼され、二酸化炭素と、高周波電子の形態を有する熱エネルギーと、水を生成する。二酸化炭素は、プラズマアークの中でイオン化されて炭素を生成する。生成される炭素は、外側軌道の電子とイオン化酸素を含まない。再酸化は、イオン化プロセスの領域に過剰電子を供給することにより、競合的に阻害される。カーボンブラックのような炭素フラグメントは集められ、O2は反応チャンバーに戻して利用可能である。
【0021】
炭素フラグメントは、無機ポリマーエレクトレット(Inorganic Polymer Electret;IPE)流体[触媒表面]と水の溶液の中で溶解される。炭素フラグメント溶液は次に、窒素の存在下(酸素なし)で、プラズマアークから、電子加速器に送られる。該加速器は、自由電子の無い環境を提供する。それゆえ、炭素は、長鎖油のような可燃性炭化水素を生成する。この炭化水素は、ソーラー及び/又はホルコーム電池(Holcomb Power Cell)に転換するための動力源となる。炭素−炭素、炭素−水素及び炭素−酸素の共有結合により、蓄電池は、長期に亘り、電気の安定した保存が可能となる。
【0022】
次に、本発明の具体例を説明する。本発明の望ましい実施例は、閉ループシステムの中で、リアルタイム及びオンラインにて、CO2、SO2、Nox、CO及び炭化水素を含む温室効果ガスを、それらの基本元素に転換する方法である。同じ発明者による仮出願「Emissions Free High Efficiency Coal Fired Power Generation Plant(ガスを排出しない高能率石炭火力発電所)」は、本発明の幾つかの態様を開示しており、引用を以て本願への記載加入とする。しかしながら、ここに開示する本発明のプロセスは、どんな化石燃料も効率的に燃焼させることができ、環境への排出はゼロである。本発明のプロセスでは、CO2及びその他の温室効果ガスは、酸素フラグメント、窒素フラグメント及び炭素フラグメントに転換される。これらフラグメントとして、例えば、カーボンブラック、グラファイト、可燃ガスを挙げられるが、全てを列挙した訳ではない。また、本発明のプロセスでは、軽質油又は中質油が生産されるが、これは、圧力タンク及びラインの中にある軽質原油のカテゴリーに含まれる。
【0023】
次に図面を参照して説明する。図1は、全体プロセス(10)の概要を示しており、これについて説明する。炉(12)が設けられており、この炉の中で、化石燃料が燃焼させられる。化石燃料として、例えばバイオマス、石炭、ブタンガス及び油を挙げられるが、これらに限定されるものではない。この炉は、種々の工業で、世界的に汎用されているものである。毎年400万トンもの石炭が炉の中で燃焼させられ、これとほぼ同量のCO2が大気中に放出されていると推定される。再び図1を参照すると、配管(14)には、1又は複数のファン(16)又は同様な装置が含まれており、石炭の燃焼によって放出された温室効果ガスが、配管(14)を通じて引き出される(矢印(15)で示されている)。このガスとして、CO2、SO2、CO、NOXで表される窒素化合物、Chxで表される炭化水素、さらに、水銀を含む他のガスが挙げられる。次に、ガスは、金属イオン封鎖装置(18)に送られる。図2により詳しく示しているように、金属イオン封鎖装置(18)において、ガス(15)は、無機ポリマーエレクトレット(IPE)発生器(26)で発生したIPE流体(26)が入れられた槽の中で浄化及びスクラブされる。スクラブされた温室効果ガスは、次に、圧縮機(27)に送られ、ガスは、体積が減じられた後、転換塔(conversion tower)(50)へ送られる。転換塔(50)は、図3及び図4により詳しく示されている。ガスは、転換塔(50)に入る前に、当該分野で知られているようにプラズマアーク(30)を通り、温室効果ガスの中の主にCO2が、C++及びO--の荷電イオン並びに他の荷電イオンに転換される。塔(50)内の荷電イオンは、次に、塔(50)内で生成された高密度電界に曝露され、それによって、荷電イオンは、元素状態のC原子、酸素ガス並びに銀及び水銀等の他の元素に還元される。酸素は再使用のために炉(12)に戻され、元素炭素などは回収される。このように、本発明のプロセスからは、炭化水素、特にCO2ガスは全く排出されない。図1に示されるように、プロセスの進行に応じて成分をサンプリングできるように、システムの全体に一連のポート(29)が設けられている。
【0024】
図2は、前述した金属イオン封鎖装置(18)を独立して示している。炉(12)から排出された温室効果ガス(15)は、ファン(12)により、ライン(14)を通って金属イオン封鎖装置(18)の金属イオン封鎖チャンバー(20)の下部(17)へ送られる。チャンバー(20)の中で、ガス(15)は下部(17)から上方に向けて移動する。一方、無機ポリマーエレクトレット(IPE)流体(矢印(19))は、ポンプにより、IPE発生器(26)からチャンバー(20)の上部(21)に送り込まれる。チャンバー(20)の内部では、温室効果ガス(15)はチャンバー(20)の下部から上方に移動し、配管(23)を通って出て行く(図1参照)。一方、IPE流体(19)はチャンバー(20)の中に雨のように降り注ぐ。このように、IPE流体(19)は、ガス(15)の上向きの流れに対向する流れである。このプロセスでは、金属イオン封鎖チャンバー(18)では、非常に効率的に短時間で、ガスのスクラブ及び浄化が行われる。新規な金属イオン封鎖装置(18)は、IPE発生器(26)によって生成される無機ポリマーエレクトレット(IPE)用のIPEコイル(22)を含んでいる。これにより、CO2と炭酸カルシウムからのカルシウムはコロイドを生成し、これが触媒を封鎖する(sequester)。反応は瞬間的に行われる。IPE流体(19)が炭酸塩で飽和されると、溶液の作用により石炭ガスが処理される。IPE流体は、装置(18)の下部のリザーバ(31)に集められた後、戻りライン(24)を通り、IPE発生器(26)へ再循環される。
【0025】
図1を再び参照すると、ガスは金属イオン封鎖装置(18)を通って再循環されるとき、スクラブされたガスの一部は、ファン等の装置(16)の作用により、第2配管(25)を通り、燃焼排ガス圧縮機(27)へ送られる。温室効果ガスの残部は、ライン(28)を通って金属イオン封鎖装置(18)の中へ再循環され、さらなる処理が行われる。金属イオン封鎖装置(18)で処理されるため、圧縮機(27)に送られるのは、CO、CO2、NOx等だけである。一方、ガス(15)は圧縮機(27)で圧縮され、ガスの体積が減少した後、生成物の中に、現場で回収できる軽質の炭化水素油がある。
【0026】
次に、図3を参照すると、圧縮機(27)を出た残りのガス(15)は、当該分野で公知のプラズマアークユニット(30)へ導入され、化合物は荷電粒子に転換される。前記ユニットは、プラズマアーク発生器(33)によって駆動する(図1参照)。ガスがプラズマアーク(30)へ導入されると、アーク(33)はガスの速度を増す。ガスがプラズマアーク(30)の帯電電極(36)(38)の間を移動すると、CO2、CO、SO2等のガスは、転換されてイオン化され、C++、O--、S++のイオンになる。通常の条件では、荷電イオンがプラズマアーク(30)から放出されると、前記イオンは直ちに再結合してガス分子を生成する。これは、アーク(30)に入る前と同じである。しかしながら、プロセスの中にこれを回避するためのステップがあり、次に説明する。
【0027】
アーク(30)を出たイオン(32)は、次に、チタングリッド(65)に隣接する高密度電子ゾーン(64)に曝される。これにより、荷電された正イオン(32)は、酸素と結合してガス分子を作るのではなく、直ちに自由電子ゾーン(64)の中へ流れ、チタングリッド(65)の高密度電子ゾーンから自由電子を獲得することにより、炭素の荷電イオンを、例えばカーボンブラック又はグラファイト等の元素状炭素フラグメント(75)に転換する。荷電された負の酸素イオン(32)は酸素ガス分子に転換され、塔(50)からライン(72)を通って流れ、炉(12)へ戻され、より多くの燃料を燃焼させる。このプロセスでは、炭化水素に転換されるが、最終的には、CO2又はその他の温室効果ガス分子は大気中に排出されない。
【0028】
図3を参照して説明した転換を実行するために、図4に示される転換塔について説明する。塔(50)は、一連の電磁石(52)を具えており、各電磁石(52)は中空の鋳鉄コア(54)又は他の適当なコアを取り囲んでいる。塔(50)には、当該分野で公知の電子加速器(56)から発せられた自由電子(58)が送り込まれる。電子加速器(56)は、高周波電子源であるタングステンロッドの触媒コンバータを用いて、自由電子(58)を捕獲し、電子を約2百万ワットの高周波自由電子として、ライン(57)を通って塔(50)へ送り込む。密度は、最大100,000Hz、最大2千万Hzである。複数の磁石(52)は、毎秒約40回の割合で順次励磁され、自由電子(58)を、矢印(63)に示されるように、塔(50)の中空コアの中を下向きに移動させる。電子(58)が最後の2つの磁石(61)(62)に達すると、これら磁石のコイル(66)は、並列に接続され、極性は反対である。
【0029】
それゆえ、電子(58)がこの領域に入ると、電子は、励磁した電磁石(61)によって反発し、チタングリッド(65)上に集められて捕獲され、反対極性のゾーン(64)の中にトラップされ、これにより、電子の高密度部が形成される。このように、高密度電子ポケット(64)が生成され、チャンバー内のチタングリッド(65)では、プラズマアーク(30)の出口ノズル(69)に隣接する位置での自由電子は約2百万ワットと推定され、そこで、荷電イオンの原子への還元が行われる。この場合、正の荷電イオン(32)が、負に荷電された酸素イオン(32)から自由電子を獲得して、イオンが有害な温室効果ガスに戻るのではなく、炭素イオンは、高密度電子ゾーン(64)から電子を獲得して、例えばカーボンブラック又はグラファイト等の元素状炭素フラグメント(75)に転換される。負に荷電した酸素イオンは、酸素ガス分子(73)を生成する。硫黄又は水銀のような他の荷電イオンもまた、元素フラグメントを生成し、チャンバー内に貯められる。酸素と、窒素の一部は、ライン(72)を通って炉(12)に戻され、化石燃料をさらに燃焼させるために利用される。転換された炭素フラグメントは大量であり、炭素は、カーボントラップ(70)へ送られ、そこで炭素は回収される。例えば炭化水素フラグメントのように他のどんな炭素フラグメントも、油又は他の成分を生成する。
【0030】
図5は、IPE処理された東部テネシー石炭のCO2濃度の比較試験結果を示している。結果に示されるように、60分以上に亘って、CO2コンバータを通過する前のCO2濃度は、10%を越えているのに対し、転換後のCO2濃度は10%より低いレベルに減少している。
【0031】
図6は、処理されていない東部テネシー石炭のCO2濃度の比較試験結果を示している。CO2コンバータを通過する前のCO2濃度のレベルは約10%であったが、CO2コンバータを通過した後のCO2濃度は0%より僅かに上か0%であった。
【0032】
図7は、IPE処理された東部テネシー石炭のO2濃度の比較試験結果を示している。結果に示されるように、60分以上に亘って、CO2コンバータを通過する前のO2濃度は0%の近傍であるが、転換後のO2濃度は20%より高い濃度に増加した。
【0033】
図8は、処理されていない東部テネシー石炭のO2濃度の比較試験結果を示している。CO2コンバータを通過する前のO2濃度は、開始時は約5%で、40分以上経過後に略0%まで減少し、試験の終了時は約10%より高い濃度に増加した。コンバータを通過した後のO2濃度は、最初は20%より少し低く、試験の途中に約30%以上に増加し、試験の終了時に約20%まで低下した。
【0034】
<CO2の試験結果>
本プロセスにおけるCO2に関する試験において、以下の結果が観察された。
1:炉 → 化石燃料とO2の燃焼により、CO2を生じる。
2:金属イオン封鎖チャンバー → CO2は、CaCO3(10%)とCO2(90%)になる。
3:圧縮機 → CO2から、圧縮CO2になる。
4:CO2コンバータ → CO2は、O2とCフラグメントになる。
5:炭素水トラップ → O2+Cから、O2が放出された。
【0035】
<温室効果ガスの試験結果>
CO2の他に他の成分を含む温室効果ガスの処理において、以下の結果が観察された。
1:炉 → 化石燃料を21%O2中で燃焼させると、熱+CO2(10%)+CO(1%)+SO2(CaSO4)となる。温室効果ガスは、NO(60ppm)+NO2(100ppm)+CHX(炭化水素)(1.2ppm)+O2(9〜10%)である。
2:金属イオン封鎖チャンバー → CO2、SO2、CO、NOX及びCHXは、CO2、CaSO4、H2O、CO、NOX、CHX及びCaCO3になる。
3:圧縮機 → CO2、CO、NOX及びCHXは、成分の変化はないが、体積が減少する。
4:CO2コンバータ → CO2、CO、NOX及びCHXは、(C)n、O2及びN2になる。
5:炭素水トラップ → (C)n、O2及びN2は、O2及びNO2になる。
【0036】
<プラズマアーク/コンバータのプロセス>
CO2がプラズマアークの電極に曝されると、不安定なC++イオンと不安定なO--イオンになる。塔内の高密度電界に接触させると、C++は、カーボンブラック及びグラファイトの形態である(C)nフラグメントに転換され、不安定なO--イオンはO2分子に転換される。
【0037】
開示だけを目的として、以下の米国特許出願の各々が引用を以て本願へ組み入れられる。本願は、以下に示される各出願の継続、分割又は一部継続出願ではない。
【0038】
2003年10月27日に出願された特許出願第10/694,326号"Apparatus and Process for Generating Electric Power by Utilizing High Frequency High Voltage Oscillating Current as a carrier for high EMF DC in an Armature Board";
2003年8月27日に出願された特許出願第60/498,050号"Emissions Free High Efficiency Coal Fired Power Generation Plant";
2002年10月23日に出願された特許出願第60/421,097号"Apparatus and Process For Generating Electric Power by Utilizing High Frequency High Voltage Oscillating Current as a carrier for high EMF DC in an Armature Board Composed of laminated Steel and Wound with Exciter Circuits in Proximity to a Stator Board of laminated Steel Wound with a Collector Coil and Separated by an Air Gap and Aluminum Screen Wire to Contain the High Frequency Within the Armature Board";
2002年1月24日に出願された特許出願第60/351,655号"Apparatus and Process for Generating Electric Power by Alternating Fields of High Frequency and High Voltage Which Generate Pulsating Fields Which In Turn PushElectrons Across Static Magnetic Flux Fields of the Invention and Collecting the Current on Collector/Conductor Coils Co-wound with the Exciter Coils";
2001年1月23日に出願された特許出願第60/264,394号"Apparatus and Process for Converting the Force of Gravity to Useable Mechanical and/or Electrical Energy";
2001年2月23日に出願された特許出願第60/271,224号"Apparatus and Process for Converting The Force of Gravity Combined with Magnetic levitation To Usable Mechanical and/or Electrical Energy";
2001年7月4日に出願された特許出願第60/303,662号"Apparatus and Process for Converting the Formula and Operating of the Windings in Power Generating Equipment and Electric Motors to an increased Efficiency, By Removing the Power Reaction Force or Drag and Decreasing the Resistance in the Coils";
2001年7月16日に出願された特許出願第60/305,635号"Apparatus and Process for Generating Electric Power by Alternating Fields of High Frequency, High Voltage Across Static Magnetic Flux Fields and Collecting the Current on Collector/Conductor Coils Co-wound with the Exciter Coils";
2000年12月26日に出願された特許出願第09/749,243号"Description of an Inorganic Polymer Electret in a Colloidal State along with the Method of Generating and Applications";
2001年3月28日に出願された特許出願第60/279,325号"Apparatus and Process for Treating Coal which is High in Sulfur such that it will Burn in a High Temperature Furnace with Greatly Reduced Emissions of Sulfur Dioxide (S02) Nitrous Oxide and Mercury";
2002年3月28日に出願された特許出願第W02/079356号"Reducing Sulfur Dioxide Emissions from Coal Combustion"。
【0039】
<部品リスト>
以下の記載は、本発明の望ましい実施例における種々の要素について、適当な部品及び材料のリストである。
プロセス 10
炉 12
配管 14
ファン 16
温室効果ガス(矢印) 15
下部 17
金属イオン封鎖装置 18
IPE流体 19
チャンバー 20
上部 21
IPEコイル 22
配管 23
ライン 24
第2配管 25
IPE発生器 26
ガス圧縮機 27
ライン 28
プラズマアーク 30
IPEリザーバ 31
イオン 32
プラズマアーク発生器 33
電極 36,38
転換塔 50
電磁石 52
鋳鉄コア 54
電子加速器 56
自由電子 58
電磁石 61,62
矢印 63
高密度電子ゾーン 64
チタングリッド 65
コイル 66
出口ノズル 69
カーボントラップ 70
ライン 72
酸素分子 73
炭素フラグメント 75
【0040】
前記の実施例は単なる例示であって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によってのみ制限されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】温室効果ガスを元素成分に転換する本発明のプロセスに含まれる構成要素を示す図である。
【図2】炭酸カルシウムとIPEを生成するために、CO2の金属イオン封鎖を行なう閉ループの金属イオン封鎖装置を表す図である。
【図3】イオン化された温室効果ガス成分を安定な元素成分へ転換する転換部を示す部分図である。
【図4】自由電子を集めて、荷電イオンを元素フラグメントに転換する塔を別個に示す図である。
【図5】IPE処理された石炭のCO2濃度を比較する図である。
【図6】処理されていない石炭のCO2濃度を比較する図である。
【図7】IPE処理された石炭のO2濃度を比較する図である。
【図8】処理されていない石炭のO2濃度を比較する図である。
【図9】エネルギーの炭素サイクルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2又は他の温室効果ガスを有用な元素成分に転換する方法であって、
a.CO2等の温室効果ガスを荷電元素にイオン化する工程;
b.荷電元素を、十分な電子密度を有する外部電界に曝露して、炭素フラグメント及び他の温室効果ガスフラグメントの再酸化を競合的に阻害する工程、を含んでいる方法。
【請求項2】
他の温室効果ガスは、SO2、Nox、CO及び炭化水素を含んでいる請求項1の方法。
【請求項3】
CO2等の温室効果ガスのイオン化は、プラズマアークを通じて行われる請求項1の方法。
【請求項4】
十分な電子密度は、磁気チャンバーの中の電磁石によって生成され、電磁石は一連に配備され、最後の電磁石は、反対極性のアークの下の磁気コイルで並列に配線されており、炭素の再酸化を防止する高密度電界が形成される請求項1の方法。
【請求項5】
CO2ガスは、イオン化の前に、無機ポリマーエレクトレットを含む金属イオン封鎖チャンバーに供給される請求項1の方法。
【請求項6】
CO2ガスは、イオン化工程の前に圧縮される請求項1の方法。
【請求項7】
元素は電界に曝露された後、炭素は元素炭素又はグラファイトとして集められ、酸素はO2ガスを生成し、化石燃料を燃焼させる炉へ再び供給されることができる請求項1の方法。
【請求項8】
CO2などの温室効果ガスの基本元素への還元は、プラズマアークに隣接して配置されたチタングリッドで行われる請求項1の方法。
【請求項9】
オフガスとして温室効果ガスが生成される炉において、温室効果ガスを有用な元素成分に転換する方法であって、
a.温室効果ガスを荷電元素にイオン化する工程;
b.荷電元素を、十分な電子密度の外部電界に曝露して、炭素フラグメント及び他の温室効果ガスフラグメントの再酸化を競合的に阻害して、元素炭素、酸素ガス及び他の元素フラグメントを得る工程、を含んでいる方法。
【請求項10】
温室効果ガスは、CO2、CO、Sox、Nox及び他の毒性ガスからなる群の中にある請求項9の方法。
【請求項11】
化石燃料燃焼炉から排出されるCO2ガスから炭素フラグメント及び酸素を生成するシステムであって、
a.炉から発生したCO2ガスを集める手段;
b.CO2ガスを浄化及びスクラブする金属イオン封鎖チャンバー;
c.スクラブされたガスを圧縮する圧縮機;
d.CO2ガスを炭素フラグメント及び酸素に初期イオン化する手段;及び
e.炭素フラグメントの再酸化を競合的に阻害するために、十分な電子密度を有する外部電界を生成する手段、を具えているシステム。
【請求項12】
炭素フラグメント及び得られたO2ガスを集める手段をさらに具えている請求項11のシステム。
【請求項13】
システムの全体は、気体又は固体が大気中へ排出されない閉ループシステムである請求項11のシステム。
【請求項14】
炉からCO2ガスを集める手段は、流管を含んでいる請求項11のシステム。
【請求項15】
CO2をイオン化する手段は、プラズマアークを含んでいる請求項11のシステム。
【請求項16】
外部電界を生成する手段は、自由電子がプラズマアークの近傍で蓄積されるゾーンが形成されるように配置された一連の電磁石を含んでおり、自由電子は、炭素及び酸素の荷電イオンを元素フラグメントに転換させるために供給される請求項11のシステム。
【請求項17】
CO2、CO、SO2、NO2及び他の温室効果ガスを有用な元素成分に転換する方法であって、
a.温室効果ガスを金属イオン封鎖チャンバー内でスクラブする工程;
b.温室効果ガスを圧縮してその体積を減少させる工程;
c.温室効果ガスを荷電イオンにイオン化する工程;
d.荷電元素を、十分な電子密度を有する外部電界に曝露し、炭素フラグメント及び他の温室効果ガスフラグメントの再酸化を競合的に阻害する工程、を含んでいる方法。
【請求項18】
集められたフラグメントは、カーボンブラック又はグラファイトの形態を有する元素炭素、酸素ガス、炭化水素油、硫黄フラグメント及び窒素フラグメントを含んでいる請求項17の方法。
【請求項19】
温室効果ガスは、プラズマアークユニットによって荷電イオンに転換される請求項17の方法。
【請求項20】
外部電界により生成した自由電子は、荷電磁界の中にトラップされ、プラズマアークから放出される荷電イオンの生成部に隣接する位置に蓄積される請求項17の方法。
【請求項21】
金属イオン封鎖チャンバーは、温室ガスのスクラブを向上させるために、無機ポリマーエレクトレットをさらに含んでいる請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−521948(P2007−521948A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551623(P2006−551623)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003472
【国際公開番号】WO2005/072466
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506258039)
【氏名又は名称原語表記】HOLCOMB,Robert,R.
【出願人】(506258040)
【氏名又は名称原語表記】HOLCOMB,Andrew,R.
【Fターム(参考)】