説明

化粧コンクリートブロック及び化粧コンクリートブロックの製造方法

【課題】コンクリート製のブロック本体の外表面に好適な品質の画像が形成され、ブロックの外表面に形成された画像の立体感が強調された、意匠性に優れる新たな化粧コンクリートブロックを提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート製のブロック本体3を構成するフェイスシェル32のフェイスシェル外表面32Sに、活性エネルギー硬化型インクのインク滴を着弾させ、着弾したインク滴を硬化させ、硬化したインク滴による複数の細線により画像が形成されている化粧コンクリートブロック1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製のブロック本体の外表面に画像が形成された化粧コンクリートブロックに関し、特に意匠性に優れる化粧コンクリートブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外表面に画像が形成されたコンクリート製のブロックに関する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。具体的に、特許文献1には、コンクリート製の母材と、該母材の表面に焼成により一体に形成した文字,記号,図案,模様等の化粧層とからなる化粧コンクリート成形体が開示されている。また、特許文献1には、次のような製造方法が提案されている。すなわち、所望の型枠内にセメント,水,骨材,混和材等を混合したセメント混練物を打設し、振動及び押圧力を加えて一次成形する工程と、この一次成形物を加熱して内部のガスを抜く工程と、該成形物の表面に釉薬を塗布する工程と、乾燥した前記成形物の表面に主として釉薬,顔料,オイルからなるスラリー状の化粧材料でインクジェット方式のプリンタ装置により印刷する工程と、これを焼成する工程とを順次経る化粧コンクリート成形体の製造方法が開示されている。なお、特許文献1には、インターロッキングブロックが例示されている。
【0003】
特許文献2には、色模様つきコンクリートブロックの製法等が開示されている。例えば特許文献2には、コンクリートブロック成形用即時脱型型枠、又はその型枠へ1回ごとに材料を運び込む移動ホッパーへの材料投入の際、連続的又は間欠的に、降り積もるように材料を落下させ、その積もりつつある材料の模様つけ予定位置へ適時、適量の顔料を噴射又は散布して色付けし、出来上がった製品ブロックの表面に上記色付けによる模様が出るようにする色模様つきコンクリートブロックの製法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−327455号公報
【特許文献2】特開平9−19915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、所定の画像を形成する手法の一つとして、インクジェット記録が広く用いられている。インクジェット記録は、高速で、好適な画像を記録することが可能であるといった利点を有する。ここで、コンクリート製のブロック本体は、吸液性を有する。従って、インクジェット記録装置から溶剤系又は水系のインクを吐出し、ブロック本体の外表面に画像を形成すると、ブロック本体の表面に着弾したインクがブロック本体に吸収されてしまう。従って、ブロック本体の外表面に好適な画像を形成することは困難であった。
【0006】
本発明は、コンクリート製のブロック本体の外表面に好適な品質の画像が形成され、ブロックの外表面に形成された画像の立体感が強調された、意匠性に優れる新たな化粧コンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に、活性エネルギー硬化型インクのインク滴が硬化した複数の細線により画像が形成されていることを特徴とする化粧コンクリートブロックである。これによれば、コンクリート製のブロック本体へのインク滴の吸収を抑制することができる。すなわち、活性エネルギー硬化型インクを用いることにより、コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に活性エネルギー硬化型インクのインク滴を着弾させ、好適にインク滴を外表面に付着させることができる。また、多くの凹状の空孔が存在するコンクリートブロックの外表面に、複数の細線により構成される画像を形成することにより、形成された画像の立体感が強調された、これまでになく意匠性に優れるものとなる。
【0008】
ここで、化粧コンクリートブロックを構成するブロック本体には、建築用として用いられる各種のコンクリートブロックが含まれる。例えば、JIS A 5406:2005に規定された建築用コンクリートブロックが含まれる。また、平板形状のコンクリート製のブロック、すなわち、JIS A 5406:2005に規定された建築用コンクリートブロックを例にすれば、ウェブを有さず、一つのフェイスシェルによって構成された形状のブロックが含まれる。
【0009】
この化粧コンクリートブロックは、次のような構成とすることもできる。すなわち、前記画像を形成する複数の細線は、直線または曲線あるいはそれらの組み合わせより構成されており、かつ細線の線幅が0.1〜20mmであることを特徴としてもよい。これによれば、画像が複雑化することでブロック本体の外表面の凹凸感が際立ち、さらに画像の立体感が強調される。
【0010】
また、前記外表面の非画像形成領域の明度L1と画像形成領域の明度L2の明度比L2/L1が0.3〜0.9であることを特徴としてもよい。これによれば、画像が形成されている領域と画像が形成されていない領域とでその濃淡がはっきりと表現され、より画像の立体感が強調される。
【0011】
また、前記外表面はコンクリートによる地肌面であって、前記地肌面に、直接、前記画像が形成されていることを特徴としてもよい。これによれば、化粧コンクリートブロックの構成をシンプルにすることができる。つまり、活性エネルギー硬化型インクを用いることで、ブロック本体へのインク滴の吸収が抑制されるため、好適な画像を形成のための下地層を省略することができる。
【0012】
また、本発明の他の側面は、コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に画像が形成されている化粧コンクリートブロックの製造方法であって、前記外表面に、活性エネルギー硬化型インクを吐出し、前記活性エネルギー硬化型インクによるインク滴を着弾させ、前記インク滴が着弾したインクドットにより複数の細線を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程の後、前記外表面に着弾され、前記インクドットを形成する前記インク滴に活性エネルギー線を照射し硬化させる活性エネルギー線照射工程とを含むことを特徴とする製造方法である。
【0013】
これによれば、上述した優れた機能を奏する化粧コンクリートブロックを製造することができる。活性エネルギー硬化型インクを用いることで、ブロック本体へのインク滴の吸収が抑制されるため、画像の形成に使用するインクの量を少なくすることができる。なお、この本発明の他の側面は、本発明の一側面に係る化粧コンクリートブロックに構成を追加した上述の化粧コンクリートブロックの製造方法として、特定することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンクリート製のブロック本体の外表面に好適な品質の画像が形成され、ブロックの外表面に形成された画像の立体感が強調された、意匠性に優れる新たな化粧コンクリートブロックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】化粧コンクリートブロックを示す図である。
【図2】化粧コンクリートブロックを構成するブロック本体のフェイスシェル外表面の写真である。
【図3】図1に示すM部の拡大図であって、インクドットの直径と、化粧コンクリートブロックを構成するブロック本体のフェイスシェル外表面に形成された空孔の開口部の開口幅との関係を説明する図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図10】ライン型のインクジェット記録装置を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0017】
(化粧コンクリートブロック)
本実施形態の化粧コンクリートブロック1について、図1〜図3を参照して説明する。化粧コンクリートブロック1は、図1に示すように、コンクリート製のブロック本体3の外表面に、複数の細線から構成された画像が形成されている。詳細には、化粧コンクリートブロック1は、ブロック本体3の側面を形成し、画像が形成されるフェイスシェル32の外表面(以下、「フェイスシェル外表面32S」ともいう。)に、複数の細線から構成された画像、図1に基づけば、複数の縦の直線から構成されるストライプ模様の画像が形成されている。図1に示すブロック本体3は、JIS A 5406:2005に規定された建築用コンクリートブロックである。
【0018】
なお、本実施形態の化粧コンクリートブロック1は、図1に示すような形状のブロック本体3によって構成される他、建築用として用いられる各種のコンクリートブロックを用いて構成することができる。例えば、ウェブ34を有さず、単一のフェイスシェル32によって形成された平板状のコンクリートブロックを用いた構成としてもよい。また、上述した特許文献1のようなインターロッキングブロックを用いた構成としてもよい。本実施形態では、図1に示すような、JIS A 5406:2005に規定された建築用コンクリートブロックを例として説明する。
【0019】
ブロック本体3は、互いに平行に対向した一組のフェイスシェル32と、複数のウェブ34とによって構成されている。フェイスシェル32は、側面視(図1に示す矢印Y参照)において、長手方向に細長い形状、つまり長方形形状を有する。複数のウェブ34それぞれは、長手方向に平行に配置され、一組のフェイスシェル32と一体で形成されている。
【0020】
ところで、ブロック本体3は、セメントと、骨材と、水と、混和材料とが混合され、図1に示すような形状に成形される。従って、画像が形成されるフェイスシェル外表面32Sを含むブロック本体3の外表面には、複数の凹状の空孔36が形成され存在する。つまり、画像が形成される範囲であるフェイスシェル外表面32Sには、複数の凹状の空孔36が形成され存在する。空孔36は、所定の幅寸法で、所定の開口面積を有する。複数の空孔36は、図2に示すように、それぞれ形状及び大きさが異なる。なお、本実施形態における空孔36は、ブロック本体3を構成する上記材料の形状等に起因して、ブロック本体3の製造上形成される凹状の空孔を意味する。換言すれば、本実施形態における空孔36は、意匠的な要素としてフェイスシェル外表面32Sに形成された凹状の空孔を含まない。
【0021】
今回、一般的に入手可能な3種類のブロック本体3(図1に示すブロック本体3とは形状の異なる建築用のコンクリートブロックを含む。)をサンプルとして、空孔36を観察し、その形状を測定した。その結果、フェイスシェル外表面32Sには、4個/cm〜60個/cmの空孔36が形成されていた。また、空孔36の形状に関し、空孔36における開口部の開口幅L1,L2(図3参照、以下、開口幅L1,L2のうち、いずれか開口幅の大きい方を「開口幅L」ともいう。)は、0.25mm〜2.0mmであった。同じく、空孔36の深さは、0.4mm〜4.0mmであった。このことから明らかな通り、化粧コンクリートブロック1を構成するブロック本体3は、開口部の開口幅Lが0.25mm〜2.0mmで、深さが0.4mm〜4.0mmの空孔36が、4個/cm以上の頻度で形成されたフェイスシェル外表面32Sを含む。なお、空孔36における開口部の開口幅L1は、第一方向の最大幅であり、開口幅L2は、第一方向に直交する第二方向の最大幅である。本実施形態において第一方向は、ブロック本体3(化粧コンクリートブロック1)の長手方向に一致する。
【0022】
化粧コンクリートブロック1において、ブロック本体3を構成するフェイスシェル外表面32Sには、複数のインクドット5が記録され、これによって画像が形成(記録)される。詳細には、フェイスシェル32を構成するコンクリート地肌面に、直接、複数のインクドット5が記録され、画像が形成される。化粧コンクリートブロック1は複数個が積み重ねられる等して所定の大きさのブロック塀等の壁を構成する。この際、インクドット5が記録されるフェイスシェル外表面32Sは、このブロック塀等の壁の壁面となる。つまり、この壁面は、フェイスシェル外表面32Sに形成された画像によって模様付けされた状態となる。
【0023】
(複数の細線による画像)
コンクリートブロックの外表面に、複数の細線により構成される画像を形成することで、立体感が強調される理由については、以下のように推論することができる。コンクリートブロックには多くの凹状の空孔が存在するため、インク滴が着弾する位置によって、部分的には空孔にインクドットが入り込むことになる。そして、インクドットが空孔の形状にあわせて広がり、活性エネルギー線が照射され、インクが硬化し、被膜化する。そして形成される画像が細線であるため、被膜はある程度の幅をもって連続的に存在していることになる。この状態をもう少し詳しく考察してみると、形成される画像には、平面ではなく、凹状の空孔分の高低差があることになる。また、インクドットレベルのミクロな視点でみると、凹状の空孔は、複雑な形状で、それぞれ違う大きさ・形で複数、コンクリートブロックの外表面に存在しており、これが光を複雑に屈折させて外表面の凹凸感を際立たせているが、複数の細線により構成される画像を形成することで、画像の形成部分はインクドットの硬化により被膜化し、上記記載の凹凸感を際立たせる効果を失う。このことにより、画像形成部分が凹部のように見え、結果的に意匠性のある凹状の空孔を擬似的に表現することができる。さらに、画像の形成に使用する活性エネルギー硬化型インクは、硬化すると被膜化する樹脂であり、一般的にこのような樹脂はフェイスシェル外表面に比して光沢のあるものであり、このことも立体感の強調に寄与しているものと思われる。
【0024】
フェイスシェル外表面32Sに形成される複数の細線による画像については、細線は直線または曲線、あるいはそれらの組み合わせであってよい。また線幅は0.1〜20mmであると、画像の立体感が強調されるため好ましい。
【0025】
複数の細線による画像の具体的な模様については、図1に示したものに限定されるものではなく、例えば、図4〜図9に例示することが出来、複数の細線により構成されるものであれば、これらの模様以外についてももちろん適用可能である。なお、図中、黒色の部分が形成される画像である。
図4は、フェイスシェル外表面32Sの全面に、線幅1〜15mmで、楕円形模様をデザインしたものである。
図5は、フェイスシェル外表面32Sの全面に、線幅7〜12mmで、縦・横の直線模様をデザインしたものである。
図6は、フェイスシェル外表面32Sの全面に、線幅2〜3mmで、曲線(円)と縦・横の直線模様をデザインしたものである。
図7は、フェイスシェル外表面32Sの全面に、線幅0.1〜3mmで、縦・横・斜めの直線模様をデザインしたものである。
図8は、フェイスシェル外表面32Sの全面に、線幅1〜12mmで、線幅が変動する横の曲線模様をデザインしたものである。
図9は、フェイスシェル外表面32Sに、線幅20mm、長さ100mmで、部分的に縦の直線模様をデザインしたものである。
【0026】
また、フェイスシェル外表面32Sの非画像形成領域(インクドットが存在しない部分)の明度をL1、細線による画像形成領域(インクドットが存在する部分)の明度L2としたとき、その明度比L2/L1が、0.3〜0.9であることが好ましく、0.5〜0.8であることがより好ましい。明度比がこの範囲にあると、より立体感を強調することができる。ここで、明度Lとは、L*a*b*表色系(JIS Z 8729)により表される明度L値のことであり、その測定については、例えば、コニカミノルタセンジング(株)製の分光測色計 MINOLTA CM 2600を使用して簡単に測定することができる。
【0027】
インクドット5の記録には、インクジェット記録方式が採用され、例えば、ライン型のインクジェット記録装置100(図10(a),(b)参照)が用いられる。シリアル型のインクジェット記録装置を用いてもよい。ライン型のインクジェット記録装置100を用いた化粧コンクリートブロック1の製造方法についての説明は、後述する。インクドット5は、通信可能に接続された外部装置からインクジェット記録装置100に入力される所定の画像(模様)を示すデータに従い、インクジェット記録装置100から吐出され、フェイスシェル外表面32S(フェイスシェル32のコンクリート地肌面)に着弾したインク滴が硬化したものである。画像の形成には、活性エネルギー硬化型インクの一種である紫外線硬化型インクが用いられる。例えば、画像の形成のために用いられた紫外線硬化型インクの色が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)である場合、画像は、イエロードット5Yとマゼンタドット5Mとシアンドット5Cとブラックドット5Kとによって形成されている。なお、本実施形態において、インクドット5とは、イエロードット5Yとマゼンタドット5Mとシアンドット5Cとブラックドット5Kとを総称した名称である。
【0028】
ここで、インクドット5の直径φ1と空孔36における開口部の開口幅Lとの関係について、図3を参照して説明する。なお、図3は説明の都合上、インクドット5を、空孔36に対して拡大して図示している。また、図3では、インクドット5と、開口幅L1,L2の開口部を有する空孔36との大小関係が明らかに視認できるようにするため、インクドット5と空孔36とが重複する部分において、空孔36の開口部の外縁を示す実線を、インクドット5上に図示している。
【0029】
まず、インクドット5の直径φ1(着弾したインク滴の着弾径)について説明する。本実施形態では、フェイスシェル外表面32Sに形成される画像の解像度は、2500dpi〜90dpiに設定される。この場合、円形状をなすインクドット5の直径φ1は、15μm〜500μm程度となる。より具体的に、例えば解像度が360dpiに設定された場合、インクドット5の直径φ1は、70μm〜130μm程度(実測値)となる。これに対し、画像が形成されるフェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36における開口部の開口幅Lは、上記の通り0.25mm〜2.0mmである。従って、本実施形態の化粧コンクリートブロック1では、インクドット5の直径φ1は、フェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36における開口部の開口幅Lより小さく設定されている。詳細には、インクドット5の直径φ1は、フェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36における開口部の開口幅L1又は開口幅L2のうち、いずれか大きい開口幅Lより小さく設定されている。なお、インクドット5の直径φ1は、上述したような範囲の寸法である、フェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36の開口部の深さに対しても、開口幅Lと同じく、小さく設定されている。なお、本実施形態において、インクドット5の直径φ1(着弾したインク滴の着弾径)とは、1液滴が着弾したときに円形状に形成される直径である。また、本実施形態におけるフェイスシェル外表面32Sに形成される画像の解像度とは、1画素あたり1液滴とした場合に導き出されるものをいう。
【0030】
なお、化粧コンクリートブロック1において、フェイスシェル外表面32Sには、インクドット5以外には、特別な被覆層は形成されなくてもよい。例えば、コンクリート地肌面に対して、インク滴が着弾し、インクドット5が記録されるベースコート層の形成は省略してもよい。また、インクドット5を被覆するトップコート及び/又は防汚機能を付与するためのコーティングの形成は省略してもよい。ただし、これら各層は形成されていてもよい。
【0031】
(紫外線硬化型インク)
本実施形態の紫外線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤を含み、さらに必要に応じて添加剤等を含む。インク色は、上述したイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックが用いられる。なお、この他、ライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアン、ホワイト、グレー、クリア(透明)色等を適宜用いてもよい。ライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアンの紫外線硬化型インクは、イエロー、マゼンタ、シアンの紫外線硬化型インクに対し淡色、具体的には濃度比が例えば10〜30%のインクである。
【0032】
ここで、顔料濃度は、紫外線硬化型インク100重量部中に、0.5重量部〜20重量部であることが好ましい。インクの顔料濃度が0.5重量部未満の場合には、着色が不十分となり、画像形成が困難になるおそれがあり、また、顔料濃度が20重量部を超える場合には、インクの粘度が高くなって画像形成の際の取り扱いが難しくなる。
【0033】
着色材としての顔料は、無機顔料又は有機顔料のいずれとすることもできる。なお、ブラックは、無機顔料が用いられる。無機顔料としては、金属の酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉等が例示される。具体的に、イエローの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントイエロー42、シー・アイ・ピグメントイエロー184を用いることができる。マゼンタの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントレッド101、シー・アイ・ピグメントレッド102を用いることができる。シアンの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブルー28、シー・アイ・ピグメントブルー36を用いることができる。ブラックの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブラック7を用いることができる。
【0034】
有機顔料としては、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾ類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、キノフタロン類、アゾメチン類、ピロロピロール類等が例示される。具体的に、イエローの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントイエロー120、シー・アイ・ピグメントイエロー150を用いることができる。マゼンタの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントレッド122、シー・アイ・ピグメントレッド178、シー・アイ・ピグメントレッド179、シー・アイ・ピグメントレッド202、シー・アイ・ピグメントレッド254、シー・アイ・ピグメントバイオレット19を用いることができる。シアンの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブルー15、シー・アイ・ピグメントブルー15:1、シー・アイ・ピグメントブルー15:2、シー・アイ・ピグメントブルー15:3、シー・アイ・ピグメントブルー15:4、シー・アイ・ピグメントブルー15:6、シー・アイ・ピグメントブルー16を用いることができる。無機顔料それぞれ又は有機顔料それぞれを単独又は複数種類を混合して使用することもできる。
【0035】
反応性オリゴマー及び反応性モノマーは、耐候性の面から脂肪族化合物であることが好ましい。反応性モノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやそれらの変性体等の6官能アクリレート;ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート等の5官能アクリレート;ペンタジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、グリセリルトリアクリレート等の3官能アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等の2官能アクリレート;及び、カプロラクトンアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸等の単官能アクリレートが挙げられる。特に、強じん性、柔軟性に優れる点で、2官能モノマーが好ましい。2官能モノマーの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族反応性モノマー、具体的には1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート等が好ましい。
【0036】
反応性モノマーとしては、さらに上記の反応性モノマーにリン又はフッ素、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの官能基を付与した反応性モノマーが用いられる。また、これらの反応性モノマーを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
反応性モノマーは、紫外線硬化型インク100重量部中に、50重量部〜85重量部含まれることが好ましい。50重量部未満の場合、インクの粘度が高くなって画像形成を行う上で取り扱いが難しくなり、85重量部を超えると硬化に必要な他の成分が不足し、硬化不良になるおそれがある。
【0038】
インクに用いる反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、強じん性、柔軟性及び付着性に優れる点で、ウレタンアクリレートが好ましい。ウレタンアクリレートの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族ウレタンアクリレートがさらに好ましい。
【0039】
反応性オリゴマーは、紫外線硬化型インク100重量部中に、1重量部〜40重量部含まれることが好ましく、5重量部〜40重量部がより好ましく、10重量部〜30重量部がさらに好ましい。反応性オリゴマーが1重量部〜40重量部の範囲であれば、インク滴の硬化した皮膜が、強じん性、柔軟性及び密着性の点でより優れたものとなる。
【0040】
紫外線硬化型インクに用いる光重合開始剤としては、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、高反応性であり、難黄変性である点で、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が好ましい。
【0041】
光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型インク100重量部中に、1重量部〜15重量部であることが好ましく、3重量部〜10重量部であることがより好ましい。1重量部未満では重合が不完全で皮膜が未硬化となるおそれがあり、一方、15重量部を超えて添加しても、それ以上の硬化率及び硬化速度の向上が期待できず、コスト高となる。
【0042】
紫外線硬化型インクには、必要に応じて、顔料を分散させる目的で分散剤を添加してもよい。分散剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び高分子系分散剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
さらに必要に応じて、紫外線硬化型インクには、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、樹脂バインダー、樹脂エマルジョン、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、顔料誘導体、重合禁止剤等の添加剤を加えることもできる。また、紫外線硬化型インクには添加材として、紫外線吸収剤(以下、「UVA」ともいう。)及び光安定剤(以下、「HALS」ともいう。)を加えることもできる。
【0044】
ここで、UVAとしては、代表的なものとしてベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、オギザニリド系及びシアノアクリレート系のものがあり、単独及び2種以上を混合させた混合系のいずれの使用も可能である。また、HALSにおいても様々なものが提案されており、その中より任意に単独及び混合系のいずれの使用も可能である。ところで、UVA及びHALSの添加において重要な点として適正な添加量が挙げられる。添加量が少ない場合は十分な耐候性は期待できず、反対に添加量が多い場合は物性面ではブリードアウトの問題が懸念され、またコスト高にも繋がる。本実施形態の紫外線硬化型インク中への好ましい添加量は、UVAが0.3%〜5%、HALSも同様に0.3%〜5%である。
【0045】
(化粧コンクリートブロックの製造方法)
本実施形態における化粧コンクリートブロック1の製造方法は、画像形成工程と、活性エネルギー線照射工程としての紫外線照射工程とを含む。化粧コンクリートブロック1の製造方法は、例えば、図10に示すようなライン型のインクジェット記録装置100によって実現される。まず、図10を参照して、インクジェット記録装置100について説明する。インクジェット記録装置100は、搬送部110と、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yと、紫外線照射部130とを備える。搬送部110は、コンベア等によって構成され、設置面112にセットされたブロック本体3を、搬送部110の一端側(図10(a),(b)を正面視したとき左端側)から、記録ヘッド120K,120C,120M,120Y及び紫外線照射部130を通過させ、搬送部110の他端側に搬送する(図10(a),(b)を正面視したとき右側に示す2点鎖線のブロック本体3(化粧コンクリートブロック1)参照)。
【0046】
記録ヘッド120K,120C,120M,120Yは、搬送部110によるブロック本体3の搬送方向に隣り合った状態で配列されて設置されている。記録ヘッド120Kは、ブラックの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型ブラックインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Cは、シアンの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型シアンインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Mは、マゼンタの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型マゼンタインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Yは、イエローの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型イエローインク)を吐出する記録ヘッドである。なお、搬送方向における記録ヘッド120K,120C,120M,120Yの配列は、図10の構成の他、これとは異なる配列順序としてもよい。各色の配列順序は種々の点を考慮し決定される。
【0047】
記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれには、搬送部110の設置面112に対向するようにノズルが形成されている。ノズルは、搬送方向に直交する方向に複数個配列された状態で、ノズル列を形成する。ノズル列は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに複数列形成されている。記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに対応する色の紫外線硬化型インクは、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに形成されたノズルから吐出される。
【0048】
活性エネルギー線照射部としての紫外線照射部130は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに対して、搬送方向下流側の所定の位置に配置されている。紫外線照射部130は、搬送部110の設置面112に向けて設置された紫外線ランプを備え、設置面112の方向に活性エネルギー線としての紫外線を照射する。紫外線照射部130は、紫外線ランプから発せられた紫外線が外部に照射されることを防止可能なシャッタ機構を備え、このシャッタ機構を開閉させることで、紫外線の照射を開始し停止することができる。なお、紫外線の照射の開始及び停止は、紫外線照射部130が備える紫外線ランプの点灯及び消灯によって実現する構成としてもよい。この場合、シャッタ機構を省略することができる。
【0049】
紫外線の照射の開始は、例えば、記録ヘッド120Yに対して搬送方向下流側でかつ紫外線照射部130に対して搬送方向上流側の所定の位置に設置された検知センサ(図10(a),(b)で図示を省略)によって、ブロック本体3が検知されたことを条件として行われる。これによって、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yで、ブラックドット5K、シアンドット5C、マゼンタドット5M、イエロードット5Y(図3参照)が記録される。そして、その後、さらに搬送部110によって搬送されるブロック本体3に、紫外線が照射される。換言すれば、コンクリート地肌面であるフェイスシェル外表面32Sに着弾し、ブラックドット5K、シアンドット5C、マゼンタドット5M、イエロードット5Yを形成する各色の紫外線硬化型インクによるインク滴に、紫外線が照射される。一方、紫外線の照射の停止は、搬送方向下流側の所定の位置に設置された検知センサ(図10(a),(b)で図示を省略)によって、ブロック本体3が紫外線照射部130を通過したことが検知されたことを条件として行われる。紫外線の照射の開始後、所定の時間経過したとき、紫外線の照射を停止する構成とすることもできる。
【0050】
インクジェット記録装置100は、この他、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの紫外線硬化型インクをそれぞれ貯留したメインタンクを備える。各色のメインタンクに貯留された紫外線硬化型ブラックインク、紫外線硬化型シアンインク、紫外線硬化型マゼンタインク及び紫外線硬化型イエローインクは、各色毎のインク供給ラインを介して記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに供給される。また、インクジェット記録装置100は、自装置内で実行される処理を制御する制御部を備える。制御部は、各種の機能手段を構成する。制御部は、次に示す化粧コンクリートブロック1の製造方法の各工程を制御する。
【0051】
インクジェット記録装置100では、インクジェット記録装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のような外部装置から、ブロック本体3に形成される画像を示すデータが入力される。そして、入力されたデータに対して、ラスタライズ等の処理が実行され、所定のデータが生成される。また、搬送部110の一端側の設置面112にセットされたブロック本体3が、搬送部110によって、搬送方向に搬送される。なお、図3では、ブロック本体3の長手方向(図1,図3参照)が搬送方向に一致するように、ブロック本体3が設置面112にセットされ、この状態で搬送されている。しかし、ブロック本体3のセット方向は、種々の条件の下適宜設定される。ブロック本体3の長手方向が搬送方向に交差する、例えば直交するようにブロック本体3を設置面112にセットしてもよい。
【0052】
そして、ブロック本体3は、図10(a),(b)を正面視したとき中央部に示す2点鎖線(符号3参照)の位置に到達する。つまり、ブロック本体3は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yのノズルが形成された面と、フェイスシェル外表面32Sとが対向した位置に搬送される。このとき、インクジェット記録装置100では、ラスタライズによって生成された所定のデータに従って、フェイスシェル外表面32Sに対して、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yが配置された順に、紫外線硬化型ブラックインク、紫外線硬化型シアンインク、紫外線硬化型マゼンタインク及び紫外線硬化型イエローインクが吐出される。吐出されたこれら紫外線硬化型インクのインク滴は、コンクリート地肌面であるフェイスシェル外表面32Sに、直接、着弾し付着する。これによって、フェイスシェル外表面32Sに、ブラックドット5K、シアンドット5C、マゼンタドット5M、イエロードット5Yが記録され、入力されたデータによって示される画像が形成される(画像形成工程)。ここで、吐出されるインク滴のサイズは、インクドット5の直径φ1が、フェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36における開口部の開口幅Lより小さくなるように設定される。
【0053】
さらに、インクジェット記録装置100では、画像が形成されたブロック本体3が搬送部110によって、紫外線照射部130側に搬送される。また、上述したタイミングで、紫外線照射部130から設置面112側に向けた紫外線の照射が開始される。そして、コンクリート地肌面であるフェイスシェル外表面32Sに着弾し付着した、インクドット5それぞれを形成する各色の紫外線硬化型インクによるインク滴に、紫外線が照射される(紫外線照射工程)。これによって、インク滴が硬化し、硬化した複数のインクドット5によって画像が形成される。
【0054】
紫外線照射部130を通過し、化粧コンクリートブロック1となったブロック本体3が、図10(a),(b)を正面視したとき右側に示す2点鎖線(符号3(1)参照)の位置に到達した時点で、ブロック本体3が設置面112から取り除かれる。そして、新たなブロック本体3がセットされ、上述した各工程が再度実行される。なお、上記において画像が形成されたフェイスシェル32とは異なる他方のフェイスシェル外表面32S等に対しても、画像を形成する場合、再度、他方のフェイスシェル外表面32S等が、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに対向するように設置面112にセットされ、上述した各工程が再度実行される。
【0055】
例えば、化粧コンクリートブロック1が、上述したブロック塀等の壁を構成する場合、化粧コンクリートブロック1が複数個積み重ねられる等した状態において、隣接する他の化粧コンクリートブロック1の外表面と対面することとならない、化粧コンクリートブロック1の外表面(フェイスシェル外表面32Sを含む。)の全て又はその一部が順次、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに対向するように設置面112にセットされ、上述した各工程が再度実行される。これによって、化粧コンクリートブロック1が複数個積み重ねられる等して所定の大きさのブロック塀等の壁とされた場合、ブロック塀等の壁面の全て又は一部を、画像によって模様付けされた状態とすることができる。
【0056】
(本実施形態の構成による有利な効果)
本実施形態の化粧コンクリートブロック1では、インクジェット記録装置100を用いて紫外線硬化型インクをフェイスシェル外表面32Sに対して吐出し、吐出されたインク滴を着弾させ、これを硬化させたインクドット5による複数の細線画像を形成した。その際、インクドット5の直径φ1は、フェイスシェル外表面32Sに形成された空孔36における開口部の開口幅Lより小さくなるように、紫外線硬化型インクが吐出される。従って、空孔36の内面も含め、フェイスシェル外表面32Sに好適にインク滴を着弾させ、かつフェイスシェル外表面32Sに好適にインク滴を付着させることができる。そして、フェイスシェル外表面32Sに好適に付着したインク滴に紫外線を照射させ、硬化したインクドット5による複数の細線画像を記録することができる。つまり、コンクリート製のブロック本体3のフェイスシェル外表面32Sに画像の立体感が強調された、意匠性に優れる画像を形成することができる。
【0057】
(変形例)
上述した本実施形態の化粧コンクリートブロック1は、次のようにすることもできる。すなわち、コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に、活性エネルギー硬化型インクのインク滴が硬化した複数のインクドットによる複数の細線画像が形成されるとともに、前記画像を形成する前記インクドットそれぞれの面積は、前記外表面のうち、前記画像が形成される範囲に形成された一の空孔における開口部の開口面積より小さいことを特徴としてもよい。これによっても、本実施形態の化粧コンクリートブロック1と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記では、活性エネルギー硬化型インクとして、紫外線硬化型インクを例に説明した。この他、画像の形成には、活性エネルギー硬化型インクの一種である電子線硬化型インクを用いてもよい。具体的に、例えば、電子線硬化型ブラックインク、電子線硬化型シアンインク、電子線硬化型マゼンタインク及び電子線硬化型イエローインクを用いてもよい。この場合、インクジェット記録装置は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの電子線硬化型インクをそれぞれ貯留したメインタンクを備える。
【0059】
また、インクジェット記録装置は、紫外線照射部130に換えて、活性エネルギー線照射部として電子線照射部を備える。電子線照射部は、搬送部の設置面に向けて設置され、設置面の方向に、活性エネルギー線としての電子線を照射する。つまり、電子線照射部では、活性エネルギー線照射工程としての電子線照射工程において、ブロック本体3のフェイスシェル外表面32S、具体的にはコンクリート地肌面であるフェイスシェル外表面32Sに着弾し付着した、インクドット5それぞれを形成する各色の電子線硬化型インクによるインク滴に、電子線が照射される。これによって、インク滴が硬化し、硬化した複数のインクドット5によって画像が形成される。
【0060】
なお、この他の点等については、紫外線硬化型インクの場合と同様である。従って、活性エネルギー硬化型インクとして電子線硬化型インクを用いた場合に関する、この他の説明は省略する。
【符号の説明】
【0061】
1 化粧コンクリートブロック
3 ブロック本体
32 フェイスシェル
32S フェイスシェル外表面
36 空孔
5 インクドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に、活性エネルギー硬化型インクのインク滴が硬化した複数の細線により画像が形成されていることを特徴とする化粧コンクリートブロック。
【請求項2】
前記画像を形成する複数の細線は、直線または曲線あるいはそれらの組み合わせより構成されており、かつ細線の線幅が0.1〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧コンクリートブロック。
【請求項3】
前記外表面の非画像形成領域の明度L1と画像形成領域の明度L2の明度比L2/L1が0.3〜0.9であること請求項1又は請求項2に記載の化粧コンクリートブロック。
【請求項4】
前記外表面はコンクリートによる地肌面であって、前記地肌面に、直接、前記画像が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧コンクリートブロック。
【請求項5】
コンクリート製のブロック本体の少なくとも一つの外表面に画像が形成されている化粧コンクリートブロックの製造方法であって、
前記外表面に、活性エネルギー硬化型インクを吐出し、前記活性エネルギー硬化型インクによるインク滴を着弾させ、前記インク滴が着弾したインクドットにより複数の細線を形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程の後、前記外表面に着弾され、前記インクドットを形成する前記インク滴に活性エネルギー線を照射し硬化させる活性エネルギー線照射工程とを含むことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−140263(P2012−140263A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292934(P2010−292934)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】