説明

化粧シートの製造方法

【課題】表面にアクリル系透明熱可塑性樹脂を有する化粧シートにおいて、70℃温水浸漬試験において化粧シートの白化度合いを低いものとした化粧シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂基材の表面に絵柄模様を印刷し、アンカー剤を介してアクリル系透明熱可塑性樹脂シートを熱ラミネートしてなる化粧シートの製造方法において、前記熱可塑性樹脂基材に多孔質炭酸カルシウムを添加してなり、熱ラミネート時の熱ロールの温度が100〜140℃であることを特徴とする。アンカー層とアクリル系透明熱可塑性樹脂との密着力も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅などの建築物の内外装や、造作材、建具等の建築資材、車両内装材、家具、家電製品等の表面化粧などに使用するための化粧シートの製造方法に関するものであり、特に例えば玄関ドア、玄関引戸、エクステリア、シャッター、雨戸等の耐候性や耐熱性が必要とされる建築部材の表面化粧用として好適な化粧シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面側にアクリル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂シートを、アンカー剤を介して絵柄模様を設けた熱可塑性樹脂基材と積層されることを特徴とした化粧シートでは、温水浸漬試験において表面が白濁し、70℃以上の温水では基材の印刷が見えなくなるほど白化するという問題点があった。
【0003】
温水浸漬後の白濁の原因として、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート自体の白化と、アンカー剤とアクリル系透明熱可塑性樹脂との間の密着力不足によるものがある。
アンカー層とアクリル系透明熱可塑性樹脂との間の密着力が弱い化粧シートで温水浸漬試験を行った場合、アンカー層とアクリル系透明熱可塑性樹脂との間に剥離部分(ボイド)が発生し、可視光領域で光が乱反射し白化して見える。
例えば、玄関ドアに使用した際、雨が降った後に直射日光が照りつけ、表面温度が急上昇した再に表面が白化してしまう恐れがあった。
【特許文献1】特許第3633367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、表面にアクリル系透明熱可塑性樹脂を有する化粧シートにおいて、70℃温水浸漬試験において化粧シートの白化度合いを低いものとした化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂基材の表面に絵柄模様を印刷し、アンカー剤を介してアクリル系透明熱可塑性樹脂シートを熱ラミネートしてなる化粧シートの製造方法において、前記熱可塑性樹脂基材に多孔質炭酸カルシウムを添加してなり、熱ラミネート時の熱ロールの温度が100〜140℃であることを特徴とする化粧シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明はその請求項1記載の発明により、熱可塑性樹脂基材に添加した多孔質炭酸カルシウムが、熱ラミネート時における熱環境にさらされた熱可塑性樹脂基材の剛性を向上させるため、熱ロールへの取られも少なくなり、より高い温度で熱ラミネートが可能になり、アンカー層とアクリル系透明熱可塑性樹脂との密着力が向上し、温水浸漬試験後においてもボイドが少なくなり、温水白化性もすぐれたものになるという、作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の化粧シートの製造方法により得られる化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂基材1の上に絵柄模様層2、アンカー層3、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4がこの順に積層され、さらに熱可塑性樹脂基材1の裏面にはプライマー層5が積層されてなる。
【0008】
熱可塑性樹脂基材1を構成する熱可塑性樹脂の種類は特に限定されず、例えば従来より係る化粧シート用の基材シートや表面樹脂層の素材として使用されている公知の任意の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。
【0009】
但し、近年頓に社会問題化しつつある環境問題への適応を考慮すると、上記した塩素系樹脂やフッ素系樹脂の使用は余り好ましいものとは言えず、塩素やフッ素等のハロゲン元素を含有しない樹脂、すなわち非ハロゲン系樹脂を使用することが好ましい。中でも、市場での価格や流通量・調達の容易性を始め、化粧シート用基材シートとしての適度の柔軟性と強度のバランスや、折り曲げや切断・切削等の加工適性、耐磨耗性や耐溶剤性等の表面物性、耐候性等の各種の側面から見て、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂を使用することが最も好ましい。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂としては前記したものを始め種々の単独重合体や共重合体が知られているが、中でも化粧シート用基材シートの素材として最も好適なのはポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等の改質剤を添加することもできる。
【0011】
また、ポリエステル系樹脂としては、前記したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のホモポリマーの他、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルと、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールとの縮合重合反応において、ジカルボン酸成分として例えばセバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の長鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸を導入したり、及び/又は、ジオール成分としてポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の両末端に水酸基を有するポリエーテル系ジオールを導入する等して、柔軟性や熱成形性を改善した樹脂などを好適に使用することができる。
【0012】
本発明のような化粧シートには一般に、それを貼り合わせる部材の表面の色彩や欠陥に対する隠蔽性が必要とされる場合が多い。そこで、目的の化粧シートに十分な隠蔽性を持たせる為に、熱可塑性樹脂基材1に着色顔料を添加することが好適に行われる。また、熱可塑性樹脂基材1を隠蔽性とする代わり、熱可塑性樹脂基材1の表面又は裏面に、隠蔽性顔料を含有する印刷インキ組成物による隠蔽ベタ印刷層(図示しない)を設けても良いし、両者を併用することも勿論可能である。
【0013】
前記着色顔料としては、高屈折率で隠蔽性に優れた無機顔料を使用することが望ましい。具体的には、例えば黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、カドミウムレッド、弁柄、鉛丹、辰砂、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、紺青、エメラルドグリーン、クロムバーミリオン、酸化クロム、ビリジアン、鉄黒、カーボンブラック等の有色顔料や、例えば酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、チタノックス等の白色顔料等を使用することができる。
【0014】
中でも、隠蔽性や耐光性に優れ、意匠面でも色調的に化粧シート用に好適な顔料としては弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料、白色顔料としては酸化チタン系顔料が挙げられる。勿論、色調の調整等の目的で他の隠蔽性又は非隠蔽性の無機顔料又は有機顔料を併用することも可能であり、その場合には無機顔料であれば例えばコバルトブルー、カーボンブラック等、有機顔料であればフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料等、耐候性に優れた顔料を使用することが好ましい。その他、必要に応じて例えばシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料を併用することもできる。
【0015】
その他、熱可塑性樹脂基材1を構成する熱可塑性樹脂や後述するアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の透明アクリル系樹脂には、目的とする化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0016】
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等が使用される。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂基材1には、充填剤として表面を多孔質にした炭酸カルシウムが添加される。表面を多孔質にした炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム1kgと乳酸水溶液100gをミキサーで混合後、大気中100℃で3時間乾燥し、大気中で300℃で2時間焼成して得ることが可能である。
【0018】
熱可塑性樹脂基材1とアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4との間に後述する絵柄模様層2が設けられる場合には、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4は少なくともその下の絵柄模様層2を透視可能な程度の透明性を有している必要があり、無色透明であることが最も望ましいが、極わずかな着色や半透明であっても良い。その限りにおいて、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4は着色剤や充填剤を含有していても良い。
【0019】
熱可塑性樹脂基材1やアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の厚さには特に制限はなく、例えば従来の一般の化粧シートにおけるそれらと同様の厚さとすることができる。具体的には、化粧シートの用途や樹脂の種類にもよるが、一般的には熱可塑性樹脂基材1の厚さは20〜300μm程度、より好ましくは50〜200μm程度、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の厚さは10〜200μm程度、より好ましくは10〜100μm程度の範囲内とするのが良い。
【0020】
熱可塑性樹脂基材1やアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の成形方法にも特に制限はなく、例えば押出成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、キャスト成形法等の従来公知の任意の成形方法によって製膜されたフィルム乃至シートを使用することができる。
【0021】
絵柄模様層2は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄の意匠性を付与する目的で設けられるものである。従って、例えば単なる表面着色や色彩調整のみを目的とした無地の化粧シートの様に、熱可塑性樹脂基材1の着色や隠蔽ベタ印刷層の形成等によって十分に前記表面着色や色彩調整が達せられる場合や、熱可塑性樹脂基材1自体に顔料の練り込みや昇華性乃至溶融移行性染料の移行等により絵柄が施されている場合等には、絵柄模様層2は特に設けられない場合もある。しかし一般的には、熱可塑性樹脂基材1の表面又はアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の裏面に、印刷法等の手段により適宜の絵柄模様を有する絵柄層2が設けられる場合が多い。
【0022】
絵柄模様層2の構成材料や形成方法には一切制限はなく、従来より係る化粧シートの絵柄層に適用されて来た任意の画像形成材料や画像形成方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング剤等を使用することができる。
【0023】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0024】
また、前記結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0025】
前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合溶剤等を使用することができる。
【0026】
その他、必要に応じて例えば体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
【0027】
目的の化粧シートに優れた層間密着性を持たせる為には、絵柄模様層2の結着剤樹脂としては接着性や凝集力の強い樹脂を使用することが好ましく、その観点からは熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂を使用することが好ましい。中でも、架橋硬化後に高い凝集力を有しつつも適度の可撓性や柔軟性を有しており、ポリオレフィン系樹脂等の不活性な熱可塑性樹脂に対しても優れた接着性を示し、2液硬化型ウレタン系樹脂を使用することが最も望ましい。具体的には、ポリエステルポリオール系樹脂を主成分とする主剤100重量部に対して、キシレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物を3〜10重量部添加した印刷インキ組成物を印刷後、常温又は加熱下で架橋硬化させて絵柄模様層2を形成することが最も望ましい。
【0028】
絵柄模様層2の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には前記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらの方法を複数組み合わせて行うことも勿論可能である。
【0029】
また、絵柄模様層2の形成に先立ち必要に応じて、熱可塑性樹脂基材1の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、熱可塑性樹脂基材1と絵柄模様層2との間の密着性を向上することもできる。
【0030】
上記した絵柄模様層2が構成する絵柄の種類には特に制限はなく、例えば従来より係る化粧シートの分野において広く採用されている木目柄や、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いは単なる着色や色彩調整を目的とする場合には単色無地であっても良く、要するに、目的の化粧シートの用途に応じ任意の所望の絵柄を採用することができる。
【0031】
アンカー層3は、熱可塑性樹脂基材1とアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4との間での熱ラミネート法による接着を可能とし、両層間での接着強度を発現させる目的で設けられるものであり、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩酢ビ系樹脂からなる熱接着性樹脂もしくはそれらの複合樹脂を採用する。
【0032】
アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4を構成するアクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルなどのアクリル酸エステルや、メタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸を成分として1つ以上含むもので構成されるものが挙げられる。また、アクリル系樹脂のゴム弾性体を適宜添加してもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂基材1とアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4とをアンカー層3を介して積層するにあたり、アンカー層3は予め熱可塑性樹脂基材1側に塗工形成しておいても良いし、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4側に塗工形成しておいても良い。また、フィルム状のアンカー層3が入手可能である場合には、熱可塑性樹脂基材1とアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4との間にこれを挟持させた形で重ねて熱ラミネートを行うこともできる。但し、一般にアンカー層3は、塗工形成された熱可塑性樹脂層の面との接着性に優れる傾向があるので、貼り合わせるべき2層の熱可塑性樹脂層の両方の貼り合わせ面に予めアンカー層3を塗工形成しておくと、熱ラミネート法による最も優れた接着強度を得ることができる。
【0034】
アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボスを設けることもできる。エンボスの模様の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、布目調、和紙調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば単なる艶消状や砂目状、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボスの模様を絵柄模様層2の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることも出来るが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄模様層2の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボスを設けることもできる。
【0035】
エンボスの形成方法にも特に制限はないが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボスの形成時期にも特に制限はなく、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の熱可塑性樹脂基材1との積層前、積層と同時又は積層後の中から任意の時期を選択することができ、また前記の各時期から選ばれる複数の時期に同一又は異なる模様のエンボスを複数回に亘って施すこともできる。中でも特に、熱可塑性樹脂基材1とアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4との熱ラミネート法による積層と同時にエンボスを施す方法によると、ラミネートとエンボスとを一工程で行うことができるので、生産効率の面からも熱エネルギー効率の面からも有利である。
【0036】
本発明において、熱ラミネート時の熱ロール温度は100℃以上140℃以下とする。100℃未満だと、熱量が足りない為にシート層間の密着強度が発現せず、140℃よりも高いと、熱可塑性樹脂基材にポリオレフィンを使用した場合に溶けて熱ロールに貼りついてしまう。
【0037】
上記エンボスの凹陥部には、必要に応じてワイピング法等の手法により着色剤を充填しても良く、これによって表面の凹凸模様と同調した色彩模様を有する意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
【0038】
また、化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の表面上に更にトップコート層(図示しない)を設けることもできる。トップコート層の構成材料としては、従来より係る化粧シートのトップコート層の構成材料として使用されている公知の各種のトップコート剤の中から選ばれる任意のものを使用することができる。一般的には、少なくとも下地を透視可能な透明性を有する必要がある他、化粧シートの用途により要求される耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を具備させるべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。
【0039】
前記トップコート層の構成材料として具体的には、例えばメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また必要に応じて、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防黴剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。また、艶状態の異なる2種以上の樹脂組成物を使用し、その一部又は全部を任意の模様状に形成することによって、艶の変化による視覚的な立体感を有する高意匠性の化粧シートを得ることもできる。
【0040】
トップコート層の形成方法にも特に制限はなく、全面ベタ状であれば例えばグラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。また模様状に設ける場合には、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等の任意の印刷法によって設けることもできる。
【0041】
なお、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4とトップコート層との密着性が不十分である場合には、トップコート層の塗工形成に先立ち、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、アクリル系透明熱可塑性樹脂シート4とトップコート層の間の密着性を向上することができる。
【0042】
本発明により得られる化粧シートは、従来の化粧シートと同様、木質系基材や無機質系基材等の各種の基材の表面に貼着(ラミネート)して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、係る接着剤の種類によっては熱可塑性樹脂基材1との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、熱可塑性樹脂基材1の裏面に、ラミネート用接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層5を設けておくことが好ましい。
【0043】
プライマー層5としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から熱可塑性樹脂基材1に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できると共に、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【実施例1】
【0044】
熱可塑性樹脂基材1として厚さ70μmの着色ポリエチレン系樹脂シート(ポリエチレン樹脂100重量部、多孔質炭酸カルシウム充填剤30部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5重量部添加)を用い、この表面に2液ウレタン樹脂系インキによりグラビア印刷にて絵柄模様層2を設けた。さらにこの上にグラビア印刷にてアンカー層3としてポリエステル樹脂−塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂−ウレタン樹脂共重合樹脂を用い、これを乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布し、この上にアクリル系透明熱可塑性樹脂シート4として厚さ50μmのアクリルフィルム(HBS006 三菱レーヨン株式会社製)を熱ロール温度120℃での熱ラミネート法により積層し、また熱可塑性樹脂基材層1の裏面にはウレタン樹脂系のプライマー5を2μm積層することで化粧シートを得た。
【0045】
<比較例1>
熱可塑性樹脂基材1に多孔質炭酸カルシウム充填剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0046】
<比較例2>
熱ロール温度を90℃とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0047】
<性能評価1:熱ロールへのトラレ>
実施例1と比較例2は熱ロールへの取られがないため、シートとヒーターとの距離が適度であり、ラミネート時に十分な熱をかける事が出来たが、比較例1は熱ロールへ取られたために、シートとヒーターの間が離れてしまい、ラミネート時に十分な熱をかける事が出来なかった。
【0048】
<性能評価2:密着性評価>
1インチ幅にシートを切り出し、アクリルクリヤーにカッターで切れ込みを入れ、ポリエチレンシートから剥がせるかどうかで評価した。その結果、実施例1は剥がせなかったが、比較例1と比較例2は剥がせた。
【0049】
<性能評価3:温水白化性評価>
シートをアルミ基材に接着剤で貼り付け、70℃の温水に24時間浸漬した後、表面が白く濁るかどうかで評価した。その結果、実施例1は白化しなかったが、比較例1と比較例2は白化した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の化粧シートの製造方法は、住宅などの建築物の内外装や、造作材、建具等の建築資材、車両内装材、家具、家電製品等の表面化粧などに使用するための化粧シートの製造方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の化粧シートの製造方法により得られる化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。
【符号の説明】
【0052】
1…熱可塑性樹脂基材
2…絵柄模様層
3…アンカー層
4…アクリル系透明熱可塑性樹脂シート
5…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂基材の表面に絵柄模様を印刷し、アンカー剤を介してアクリル系透明熱可塑性樹脂シートを熱ラミネートしてなる化粧シートの製造方法において、前記熱可塑性樹脂基材に多孔質炭酸カルシウムを添加してなり、熱ラミネート時の熱ロールの温度が100〜140℃であることを特徴とする化粧シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−96061(P2009−96061A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269607(P2007−269607)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】