説明

化粧シート及びこれを用いた化粧板

【課題】耐候性、耐傷付き性及び加工性などに優れるシートや加飾シートにおける、表面保護層の形成などに用いられる電離放射線硬化性コーティング剤組成物、該コーティング剤組成物を用いて形成された前記性状を有する加飾シートを提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する加飾シートであって、該表面保護層が、(A)電離放射線硬化性樹脂及び(B)反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該(A)電離放射線硬化性樹脂が炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されていることを特徴とする化粧シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及びこれを用いた化粧板に関する。詳しくは、耐候性及び耐擦傷性に優れる化粧シート及びこれを用いた化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートに対して、耐傷付き性を付与するために、化粧シートの表面保護層を硬くする手法が取られていたが、化粧シートを折り曲げたり、衝撃を受けた際にひび割れや白化が生じやすい。一方で、表面保護層を柔らかくすると傷が入りやすく、また溶剤に簡単に溶けてしまう恐れがある。
そこで、弾力性を持ちながら、一度表面に細かい擦り傷ができても、これを自己修復可能な活性エネルギー線硬化性ウレタン(メタ)アクリレートが提案されており(特許文献1参照)、この材料を表面保護層として用いることで、長期間使用しても外観を損なうことなく、優れた耐衝撃性、耐傷付き性を維持し得る化粧シートが得られる。
【0003】
上述の自己修復可能な活性エネルギー線硬化性ウレタン(メタ)アクリレートを表面保護層形成用材料として用いて、外装用の化粧シートを製造する場合には、該化粧シートに耐候性を付与する必要がある。耐候性を付与するためには、紫外線吸収剤や光安定化剤などの耐候剤を配合することが一般的であるが、耐候剤の種類が不適切である場合や配合量が少ない場合には、十分な耐候性を付与することができない。
一方、耐候剤の配合量が多い場合には、ブリードアウトの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−256053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下になされたものであり、自己修復性を有し、耐候性及び耐擦傷性に優れる化粧シート、及びこれを用いた化粧板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に、少なくとも装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する化粧シートであって、表面保護層が特定の耐候剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層である化粧シートが、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、少なくとも装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する化粧シートであって、該表面保護層が、(A)電離放射線硬化性樹脂及び(B)反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該(A)電離放射線硬化性樹脂が炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されていることを特徴とする化粧シート、及び
(2)上記(1)に記載の化粧シート、接着剤層及び基板を有する化粧板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自己修復性を有し、耐候性及び耐擦傷性、加工適性に優れる外装材に特に優れた化粧シート、及びこれを用いた化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の化粧シートの一態様の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧シートの他の一態様の断面を示す模式図である。
【図3】本発明の化粧板の一態様の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(化粧シートの層構成)
本発明の化粧シートは、基材上に、少なくとも装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する。その層構成としては、種々の態様があるが、代表的なものについて、以下、図1及び図2を参照しつつ、詳細に説明する。
図1に示す本発明の化粧シート10は、基材11上に、装飾層12、プライマー層13、及び表面保護層14をこの順に有する。また、必要に応じて、基材11の上記各層が設けられるのとは反対の面(以下「裏面」と称する。)に、裏面プライマー層(図示せず)を設けてもよい。
次に、図2に示す態様では、基材11上に装飾層12、接着剤層16を介して透明樹脂層17、プライマー層13、及び表面保護層14をこの順に有し、図1に示す態様と同様に、基材11には裏面プライマー層(図示せず)を設けてもよい。
【0011】
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
本発明の化粧シートは、表面保護層が、(A)電離放射線硬化性樹脂、(B)反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該(A)電離放射線硬化性樹脂が炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されていることが特徴である。
【0012】
(電離放射線硬化性樹脂)
本発明における(A)成分は、炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されている電離放射線硬化性樹脂である。
ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。本発明においては、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。電離放射線硬化性樹脂(化合物)とは、上記電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂(化合物)を指す。
【0013】
前記(A)電離放射線硬化性樹脂は、(a)1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、(b)炭素数13〜25のアルキル基を有するアルコール、(c)ポリカプロラトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
【0014】
上記(a)成分は、ジイソシアネートモノマーを、イソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性などの方法によって変性することにより得られる。ここで用いられるジイソシアネートモノマーとしては、特に制限はなく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
次に、上記(b)成分としては、トリデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが例示される。
また、(c)成分は、下記一般式(I)で示される化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜25の整数、好ましくは2〜5の整数である。nが2〜5の整数であると、架橋間分子量の増大に伴う硬化不良が抑制され、かつ良好な耐擦傷性及び自己修復機能が発揮される。
【0017】
なお、本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、上記(A)成分以外の電離放射線硬化性樹脂を併用してもよい。
また、本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物において、電離放射線硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0018】
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性であることが好ましい。電子線硬化性の場合は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0019】
(反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤)
本発明における(B)成分は、反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤(以下、「反応性UVA」と称することがある。)である。反応性UVAを用いることで、ブリードアウトすることなく、UVAの含有量を増大させることができるため、本発明の化粧シートに高い耐候性を付与することができる。すなわち、反応性UVAは、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有することにより、電離放射線の照射によって、それ自体が重合して高分子量化したり、あるいは共存する(A)電離放射線硬化性樹脂と共重合することにより、ブリードアウトが抑制されるものである。
反応性基Aとしては、前述した電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0020】
UVAとしては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などを用いることができる。ベンゾトリアゾール系としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。
【0021】
トリアジン系としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、ベンゾフェノン系としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0022】
当該反応性UVAの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の固形分全量に対して、1〜5質量%であることが好ましい。当該反応性UVAの含有量が上記範囲内であれば、該UVAがブリードアウトすることなく、また本発明のコーティング剤組成物を用いて作製されるシートは十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。以上の観点から、反応性UVAの含有量は3〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
(反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤)
本発明の化粧シートにおける電離放射線硬化性樹脂組成物には、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、さらに(C)反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤(以下、「反応性HALS」と称することがある。)を含有することが好ましい。
この反応性HALSにおける反応性基Bとしては、上記反応性基Aと同様に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0024】
このような反応性HALSとしては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
これらの反応性HALSは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該反応性HALSは、電離放射線の照射によって、それ自体が重合して、高分子量化したり、前述した電離放射線硬化性樹脂と共重合することにより、ブリードアウトが抑制される。
【0025】
当該反応性HALSの含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の固形分全量に対して、1〜5質量%であることが好ましい。当該反応性HALSの含有量が上記範囲内であれば、該HALSがブリードアウトすることなく、また本発明のコーティング剤組成物を用いて作製されるシートは十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。以上の観点から、反応性HALSの含有量は3〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
(その他の耐候剤)
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、上述の反応性UVA及び反応性HALSに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の耐候剤、例えば、反応性基を有しない紫外線吸収剤や光安定剤を併用することもできる。
反応性基を有しない紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジンなどが挙げられる。
また、反応性基を有しない光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
【0027】
(その他添加剤)
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、上述の耐候剤に加えて、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
【0028】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
【0029】
(基材)
本発明の化粧シート10において、基材11は、後加工適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用されるが、これらの中でポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好適であり、特に当該化粧シートにおいては、ポリオレフィン系樹脂が好適である。
また、当該基材は、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムとして使用することができる。
当該基材の厚みは、用途に応じて選定されるが、加工性、柔軟性、強度等の観点から50〜150μmであることが好ましく、50〜120μmであることがさらに好ましい。
【0030】
当該基材はその上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、ベースフィルムの種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また当該基材はプライマー層を形成するなどの処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
【0031】
(装飾層)
図1に示される装飾層12は、加飾樹脂成形品等に装飾性を与えるものであり、均一に着色が施された着色層(ベタ印刷層)でもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される模様層であってもよい。
模様層を構成する模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
【0032】
装飾層12に用いるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらの中で特にポリウレタン系樹脂が好適である。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
【0033】
本発明の化粧シート10は、所望により、基材11と装飾層12との間に隠蔽層(図示しない。)を設けても良い。基材11表面の色の変化、ばらつきにより、化粧シート10の柄の色に影響を及ぼさないようにする目的で設けられる。通常不透明色で形成することが多く、その厚さは1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
また、基材11と装飾層12との間に、融点が70〜130℃程度のポリオレフィン系熱接着層を設けてもよい。
【0034】
(プライマー層)
本発明の化粧シート10は、装飾層12と表面保護層14との間にプライマー層13が設けられる。該プライマー層を設けることにより、装飾層12と表面保護層の密着性を高めることができ、かつ、表面保護層に対する応力が緩和され、表面保護層の耐候劣化による割れを抑制することが可能となり、耐久性を著しく向上させることができる。
【0035】
上記プライマー層13は、主剤であるポリオールと硬化剤からなる組成物を硬化して得られるものであることが好ましい。
該ポリオールとしては、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオールなどが挙げられる。一方、硬化剤としては、多価イソシアネートが好ましく、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート;を用いることができ、あるいは、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いることができる。
上記ポリオール及び多価イソシアネートは任意に組み合わせて用いることができるが、中でもポリアクリルポリオールと多価イソシアネート化合物とを反応させ、熱硬化させてなるアクリルウレタン系樹脂が好ましい。
【0036】
本発明では、プライマー層13中に(C’)紫外線吸収剤(UVA)を含有させることが好ましい。特に、上述のアクリルウレタン系樹脂及び(C’)紫外線吸収剤を少なくとも含有するプライマー層形成用樹脂組成物を用いてプライマー層13を形成することが好ましい。このようなプライマー層を設けることにより、本発明の化粧シートにさらに良好な耐候性を付与することができる。
ここでUVAは反応性UVAであってもよいし、非反応性UVAであってもよい。また、UVAとしては、上記(B)成分と同様のものを好適に用いることができる。
さらに、プライマー層13中には、さらに本発明の化粧シートの耐候性を向上させるために、HALSを含有させることが好ましい。ここでHALSは反応性HALSであってもよいし、非反応性HALSであってもよい。ここでHALSとしては、上記(C)成分と同様のものを好適に用いることができる。
【0037】
(表面保護層)
本発明の加飾シート10における表面保護層14は、前述した本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物を、前記プライマー層13上に塗布し、架橋硬化することにより、形成することができる。
したがって、該表面保護層には、反応性UVA自体の重合による重合体や、あるいは反応性UVAと電離放射線硬化性樹脂との共重合体が含まれており、UVAのブリードアウトが抑制されると共に、表面保護層に高い耐候性を付与することができる。
なお、該電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗工方式により、プライマー層13の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を、プライマー層13の表面に、硬化後の厚さが1〜100μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0038】
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材11として電子線により劣化する素材を使用する場合には、電子線の透過深さと未硬化樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材11の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、未硬化樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)、さらに好ましくは30〜70kGy(3〜7Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0039】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0040】
本発明においては、表面保護層14の硬化後の厚さが1〜100μmであることが好ましい。表面保護層14の硬化後の厚さが1μm以上であれば、耐傷付き性、耐候性などの保護層としての十分な物性が得られる。一方、表面保護層14の硬化後の厚さが100μm以下であれば、電離放射線を均一に照射し易く、均一な硬化が得られ易く、経済的にも有利となる。
また、表面保護層14の硬化後の厚さは、安定して自己修復性能を付与する観点から、10〜100μmであることがより好ましく、加工適性を付与する観点から10〜50μmの範囲がさらに好ましい。
【0041】
(裏面プライマー層)
本発明の化粧シートでは、基材の裏面に裏面プライマー層(図示せず)を設けてもよい。裏面プライマー層は、後述する化粧板20を形成する際に、基板18との接着性を向上させる目的で設けられる。裏面プライマー層を形成する材料としては、上記プライマー層13に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0042】
本発明の化粧シートは、図2に示すように、基材11上に装飾層12、接着剤層16を介して透明樹脂層17、プライマー層13、及び表面保護層14をこの順に有する態様をとることもできる。
(透明樹脂層)
前記装飾層12(又は前記接着剤層16)の上には、耐傷付き性や耐汚染性等の諸性能を付与することを目的として、透明樹脂層17を形成してもよい。透明樹脂層17は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。透明樹脂層を形成する樹脂成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明樹脂層を形成することが望ましい。
透明樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
透明樹脂層の形成方法としては、上記樹脂成分等を含む樹脂組成物を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により装飾層(又は接着剤層)の上にラミネートする方法が挙げられる。
透明樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には20〜250μm、特に50〜200μm程度とすることが好ましい。
透明樹脂層の表面であって、表面保護層を形成する面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0043】
(接着剤層)
本発明の化粧シートにおいては、装飾層12と透明樹脂層17を接着させるために、接着剤層16を有することが好ましい。接着剤層16を構成する接着剤としては特に制限はなく、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
【0044】
(化粧シートの製造方法)
図1に示す化粧シートにおいては、例えば、基材11に装飾層12を公知の塗工方法により設け、その上にプライマー層13を積層し、該プライマー層上に未硬化樹脂層を形成させる。塗工方法としては、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方法を用いることができる。その後、上述のように、該未硬化樹脂層を、紫外線、電子線等の電離放射線を照射し、硬化して表面保護層14を形成することで本発明の化粧シートを得ることができる。
また、図2に示す態様では、基材11上に装飾層12を形成しておく。次いで、必要に応じて装飾層12上に接着剤層16を形成し、透明樹脂層17を構成する透明樹脂フィルムが接するように貼付する。次いで、透明樹脂層17上にプライマー層13を積層し、該プライマー層上に表面保護層14を形成し、図2に示す本発明の化粧シートを得ることができる。表面保護層の形成方法は上記と同様である。
【0045】
(化粧板)
本発明の化粧シート10は、接着剤層を介して基板18と貼り合わされて化粧板20を得ることができる。
被着体となる基板18は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧シートとの密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。酸化法、凹凸化法の具体例としては前記したものと同様の方法を用いることができる。
【0046】
化粧シート10と基板18を貼り合わせるための接着剤層を構成する接着剤としては、特に限定されず、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などが好適に使用できる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた化粧シートの諸特性を下記要領に従って評価した。
【0048】
<化粧シートの諸特性の評価>
(1)ブリード性
化粧シートを40℃、相対湿度90%の条件下に2週間放置し、化粧シート表面の変化を目視にて観察した。評価基準は以下の通りである。
○:塗膜の外観変化は見られなかった。
△:塗膜表面に若干のブリードが見られたが、使用上問題のない程度であった。
×:塗膜表面にブリードが見られ、使用上問題のある程度であった。
(2)耐候性
耐候性試験装置「アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製、60mW/cm2)」にて、耐候性評価を実施した。評価は100時間後及び200時間後の色変化にて行った。評価基準は以下の通りである。
○:塗膜の性能・外観の変化が見られなかった。
△:塗膜の性能・外観の変化がごくわずかに見られた。
△−:塗膜の性能・外観の変化がわずかに見られた(△評価よりも程度の大きな変化がみられた)。
×:塗膜の性能・外観の変化が顕著に見られた。
【0049】
実施例1
(1)電子線硬化性樹脂の合成
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500mL容のフラスコにトルエン57.7質量部、ステアリルアルコール(NAA−46;日本油脂(株)製、水酸基価:207)9.7質量部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)25質量部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02質量部仕込み、同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA2D;ダイセル化学工業(株)製、水酸基価:163)100質量部、ジブチルスズラウレート0.02質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン77質量部を加え、固形分50質量%のウレタンアクリレートを得た。
【0050】
(2)化粧シートの製造
基材11として着色ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ60μm)を準備し、該基材表面にコロナ放電処理を施した後、着色ベタ層、及び木目模様の絵柄層をグラビア印刷で形成して、装飾層12を形成した。バインダーの樹脂として、着色ベタ層はウレタンアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とからなる2液硬化型ウレタン樹脂を用い、絵柄層はウレタンアクリルポリオール樹脂を用いた。
次に、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融して得た透明樹脂フィルム(厚さ80μm)を形成し、2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を装飾層12上に塗布して接着剤層16(乾燥状態での厚さ15μm)を形成し、該透明樹脂フィルムをドライラミネート法により積層させ、透明樹脂層17を形成した。
次いで、該透明ポリプロピレン層17上にコロナ放電処理を施した後、下記のプライマー層形成用樹脂組成物A(表中ではAと記載)を2.5g/m2の塗布量にて塗布し、プライマー層13を形成した。次に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物を20g/m2の塗布量にて、該プライマー層上にグラビア印刷によって塗布し、塗膜を形成した。次いで、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させ、表面保護層14を形成し、化粧シート10を得た。該化粧シートに関して、上記方法にて評価した結果を第1表に示す。なお、実施例1では図2に示す層構成をとるので表中の層構成の欄に図2と記載した。以下の実施例において、図2の構成をとるものは、層構成の欄に図2と記載し、図1の構成をとるものには図1と記載した。
【0051】
(プライマー層形成用樹脂組成物A)
以下の主剤、硬化剤、体質顔料、及びUVAからなる。
主剤;バインダーとしてウレタン成分とアクリル成分の質量比が5/5であるポリエステル系アクリルウレタン系樹脂
硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート(主剤100質量部に対して5質量部添加)
体質顔料;未処理シリカ(市販品)、平均粒径3μm、プライマー層形成用樹脂組成物中に24質量%(固形分換算)
非反応性UVA;トリアジン系紫外線吸収剤、プライマー層形成用樹脂組成物中に11質量%(固形分換算)
(電離放射線硬化性樹脂組成物)
電離放射線硬化性樹脂;上記(1)で合成した電子線硬化性樹脂
反応性UVA;電離放射線硬化性樹脂組成物中に3質量%(固形分換算)
【0052】
実施例2及び3
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性UVAの含有量を、第1表に記載したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0053】
実施例4
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性UVAの含有量を1質量%とし、さらに反応性HALS(LS−3410、商品名、チバジャパン(株)製)を1質量%(固形分換算)加えたこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0054】
実施例5
基材11として着色ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ60μm)を準備し、該基材表面にコロナ放電処理を施した後、着色ベタ層、及び木目模様の絵柄層をグラビア印刷で形成して、装飾層12を形成した。バインダーの樹脂として、着色ベタ層はウレタンアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とからなる2液硬化型ウレタン樹脂を用い、絵柄層はウレタンアクリルポリオール樹脂を用いた。
次に、装飾層12上に、実施例1に記載のプライマー層形成用樹脂組成物A(表中ではAと記載)を2.5g/m2の塗布量にて塗布し、プライマー層13を形成した。
次いで、実施例1に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物を20g/m2の塗布量にて、該プライマー層上にグラビア印刷によって塗布し、塗膜を形成した。次いで、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させ、表面保護層14を形成し、化粧シート10を得た。該化粧シートに関して、上記方法にて評価した結果を第1表に示す。なお、本実施例に記載の方法で製造した化粧シートは、図1に示す層構成をとる。
【0055】
実施例6
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物に、さらに反応性HALSを3質量%(固形分換算)加えたこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0056】
実施例7
実施例5において、プライマー層形成用樹脂組成物A及び電離放射線硬化性樹脂組成物として、実施例6と同様のものを用いたこと以外は、実施例5と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0057】
実施例8及び9
実施例4において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性UVAの含有量及び反応性HALSの含有量を、第1表に記載したように変更したこと以外は、実施例4と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0058】
実施例10
実施例6において、プライマー層形成用樹脂組成物Aの塗布量を1.3g/m2としたこと以外は、実施例6と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0059】
実施例11
実施例9において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性HALSに代えて、非反応性HALSを用いたこと以外は、実施例9と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0060】
実施例12
実施例6において、プライマー層形成用樹脂組成物Aに代えて、下記のプライマー層形成用樹脂組成物B(表中ではBと記載)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
(プライマー層形成用樹脂組成物B)
以下の主剤、硬化剤、体質顔料、及びUVAからなる。
主剤;バインダーとしてウレタン成分とアクリル成分の質量比が7/3であるポリカーボネート系アクリルウレタン樹脂
硬化剤;ヘキサメチレンジイソシアネート(主剤100質量部に対して5質量部添加)
体質顔料;未処理シリカ(市販品)、平均粒径3μm、プライマー層形成用樹脂組成物中に16質量%
非反応性UVA;トリアジン系紫外線吸収剤、プライマー層形成用樹脂組成物中に11質量%(固形分換算)
非反応性HALS;商品名「チヌビン123」(チバジャパン(株)製)、プライマー層形成用樹脂組成物中に2質量%(固形分換算)
【0061】
実施例13
実施例12において、プライマー層形成用樹脂組成物Bの塗布量を1.3g/m2としたこと以外は、実施例12と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0062】
実施例14
実施例12において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性UVAの含有量を、第1表に記載したように変更したこと以外は、実施例14と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0063】
実施例15
実施例5において、プライマー層形成用樹脂組成物B及び電離放射線硬化性樹脂組成物として、実施例13と同様のものを用いたこと以外は、実施例5と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0064】
実施例16
実施例5において、プライマー層形成用樹脂組成物B及び電離放射線硬化性樹脂組成物として、実施例14と同様のものを用いたこと以外は、実施例5と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0065】
比較例1
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物に用いられる反応性UVAに代えて、非反応性UVAを用いたこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0066】
比較例2
比較例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物に、さらに非反応性HALSを3質量%(固形分換算)加えたこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0067】
比較例3
比較例2において、非反応性HALSに代えて、反応性HALSを用いたこと以外は、比較例2と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0068】
比較例4
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中に反応性UVA、非反応性UVA、反応性HALS及び非反応性HALSを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。該化粧シートに関して、実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の化粧シートは、自己修復性を有し、かつ耐候性及び耐擦傷性に優れるとともに、耐候剤のブリードアウトがない。したがって、外観上の美観を長期間保持することができ、特に外装用の化粧シートとして有用である。
[符号の説明]
【0071】
10 加飾シート
11 基材
12 装飾層
13 プライマー層
14 表面保護層
16 接着剤層
17 透明樹脂層
18 基板
20 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する加飾シートであって、該表面保護層が、(A)電離放射線硬化性樹脂及び(B)反応性官能基Aを有する紫外線吸収剤を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる層であり、該(A)電離放射線硬化性樹脂が炭素数13〜25のアルキル基と電離放射線硬化性官能基を有し、かつポリカプロラクトン変性されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに(C)反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤を含有する請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記(B)成分の含有量が電離放射線硬化性樹脂組成物中の固形分全量に対して、1〜5質量%である請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記(C)成分の含有量が電離放射線硬化性樹脂組成物中の固形分全量に対して、1〜5質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記電離放射線硬化性官能基の数が3以上である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記反応性官能基Bが、エチレン性二重結合を有する官能基である請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
前記エチレン性二重結合を有する官能基が、(メタ)アクリロイル基である請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記プライマー層が、少なくともアクリルウレタン系樹脂及び(B’)紫外線吸収剤を含有するプライマー層形成用樹脂組成物からなる請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
前記(B’)成分の含有量が、前記プライマー層形成用樹脂組成物中の固形分全量に対して1〜20質量%である請求項8に記載の化粧シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化粧シート、接着剤層及び基板を有する化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206376(P2012−206376A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73621(P2011−73621)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】