化粧シート及びその製造方法
【課題】加熱成形性の良い化粧シートを形成する。
【解決手段】化粧シート１は、凹凸柄ａが形成された熱可塑性樹脂シート層である下層１Ａと、凹凸柄ａを埋めるように下層１Ａ上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層１Ｂと、中間層１Ｂ上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層１Ｃとを有する。
【解決手段】化粧シート１は、凹凸柄ａが形成された熱可塑性樹脂シート層である下層１Ａと、凹凸柄ａを埋めるように下層１Ａ上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層１Ｂと、中間層１Ｂ上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層１Ｃとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、凹凸柄が内部に形成されている化粧シート及びその製造方法に関し、特に、後に加熱成形するものに適した内部エンボスを有する化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
化粧シートとしては、特にその意匠性を高めるために表面に立体感のある模様を施したものが知られている。立体感のある模様を得るためには、表面に凹凸柄のエンボス加工を施すことが行われる。このように表面に凹凸柄が施された化粧シートは、素朴な立体感は得られるものの、例えば奥行き感の生じるような効果的な意匠性を導き出すことができない。また、表面に凹凸柄があると、凹部に埃や汚れが溜まりやすく、溜まった埃や汚れを取り除くことが困難でもあるので、貼り付け後の時間経過によって意匠性が低下してしまう問題がある。更には、表面の凹凸柄は摩耗や傷などで崩れることがあるので、可動物の表面や人手が触れやすいところには適用し難い問題がある。
【０００３】
このような問題点を解消するものとして凹凸柄を内部に形成した、所謂内部エンボスと呼ばれる化粧シートが知られている。下記特許文献１には、エンボス凹凸柄が施された熱可塑性合成樹脂シートと透明合成樹脂シートとを２液型ウレタン系の透明接着剤等を用いたドライラミネート法で貼り合わせたものが記載されており、下記特許文献２には、ポリ塩化ビニル（ＰＶＣ）シート等の透明樹脂シートの裏面に紫外線硬化型樹脂からなる凹凸柄を形成し、そのシートの凹凸柄面に通気孔を形成したＰＶＣシートを熱ラミネートしたものが記載されている。
【特許文献１】特公平７−２２９８９号公報
【特許文献２】特開平１０−３４７８０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
前述した従来技術によると、特許文献１に記載のものでは、ドライラミネートに用いる接着剤に溶剤が含まれるため、ラミネート後、シートに溶剤成分が残留し、揮発性有機廃棄物（ＶＯＣ）を発生する懸念があるので、例えば車輌内装用等の気密性の高いところでの使用には適さない。溶剤成分を飛ばすためには乾燥工程が別途必要になり、製造工程が煩雑になってコストアップに繋がる問題がある。
【０００５】
また、特許文献２に記載のものでは、凹凸を埋める層が熱ラミネートされるＰＶＣシートになるので、シート厚さを薄く形成するとラミネートの際にエンボスに沿って表面が追従しユズ肌状に成りやすい。したがって、凹凸を表面側に向けると表面の平面性が得られず、平らな表面の内部に凹凸柄が存在する奥行き感のある効果的な意匠性が得られない。エンボスの深さが深い柄の場合にはこの問題が更に顕著になる。
【０００６】
そして、例えば、車輌内装用化粧シート等では、形成された化粧シートをダッシュボード，ドアトリム，コンソールボックスなどの形状に合わせて加熱成形することが行われるが、特許文献１に記載のものでは、シートに残留した溶剤成分が加熱成形時に気化して発泡するので、シート内部に気泡が生じて外観性に悪影響が出やすい問題があり、特許文献２に記載のものでは、加熱成形時に熱ラミネート層が溶融して更に内部の凹凸柄に表面が追従しやすくなる問題がある。更には、凹凸柄を形成した紫外線硬化樹脂層は、一度硬化すると加熱時の伸びが他の樹脂層に比べてかなり低くなるので、加熱成形時にひび割れを生じてしまう問題がある。
【０００７】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、奥行き感のある内部エンボスを有する化粧シートを得るに際して、ＶＯＣの発生が生じないこと、製造工程の煩雑さが生じないこと、表面がユズ肌状にならないこと、エンボスの深い柄にも適用できること、化粧シートの加熱成形性が良好なこと、加熱成形時に気泡やひび割れが生じて意匠性が低下する不具合が生じないこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
このような目的を達成するために、本発明の化粧シートは、凹凸柄が形成された熱可塑性樹脂シート層である下層と、前記凹凸柄を埋めるように前記下層上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層と、前記中間層上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層とを有することを特徴とする。
【０００９】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、ＡＳＢ樹脂シート層上に凹凸柄を印刷又はエンボス加工して下層を形成し、前記凹凸柄を埋めるように形成される透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層を介して、前記下層と透明又は半透明アクリル系樹脂層である上層とを熱ラミネートすることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
このような特徴の化粧シート及び化粧シートの製造方法によると、透明な中間層を設けることで上層からの下層の凹凸柄までの距離を有効に確保できるので奥行き感のある高い意匠性を有する内部エンボス化粧シートを得ることができる。中間層として溶剤成分を含まないホットメルト接着剤を用いることで、形成後にＶＯＣの発生が生じない化粧シートを得ることができる。ＶＯＣの発生がないクリーンな化粧シートを得るに際して溶剤成分を除去するための乾燥工程などを必要としないので、製造工程の煩雑さが生じることがなく、製造コストの低減化が可能になる。
【００１１】
中間層で完全に凹凸柄を平坦化した上に上層を形成するので、化粧シートの形成時又はその後の加熱成形時にも表面がユズ肌状になることがない。また、エンボスの深さに応じて中間層の厚さを決めることができるので、エンボスの深い柄にも適用可能である。ホットメルト接着剤を用いることで、下層，中間層，上層を熱可塑性樹脂で形成するので、加熱成形性が良好であり、無溶剤のホットメルト接着剤であるから加熱成形時に気泡が生じる不具合が無く、ホットメルト接着剤の再熱加工性によって加熱成形時にひび割れが生じるような不具合も無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施形態を説明する。図１は本発明の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。同図（ａ）に示した本発明の実施形態に係る化粧シート１は、下層１Ａと中間層１Ｂと上層１Ｃを有している。下層１Ａは凹凸柄ａが形成された熱可塑性樹脂シート層であり、例えば、化粧シート１の基材となる層である。中間層１Ｂは、下層１Ａに形成された凹凸柄を埋めるように下層１Ａ上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である。また、上層１Ｃは、中間層１Ｂ上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である。
【００１３】
また、同図（ｂ）に示した本発明の実施形態に係る化粧シート１は、前述した基材層１Ａ，中間層１Ｂ，上層１Ｃに加えて化粧層１Ｄを備えている。この化粧層１Ｄは、各種色柄を有する印刷層及び／又はアルミ蒸着層によって形成されており、基材層１Ａ上に施された凹凸柄ａの意匠性を高めるために設けられるものである。
【００１４】
下層１Ａの樹脂シート層は、加熱成形が可能で凹凸柄を形成することができる材料であればよいが、好ましくは加熱成形性が良く、更には、耐熱性が良い材料が適し、より具体的には、ＡＢＳ樹脂を採用することができる。また、下層１Ａは必要に応じて顔料を添加して所望の色に着色することも可能である。
【００１５】
下層１Ａ自体の成形は、Ｔダイ押出法やカレンダー法等、周知のシート成形法を採用することができ、好ましくは厚さ０．３〜０．４ｍｍのシート材を成形する。下層１Ａへの凹凸柄の形成は、印刷，転写法を含む周知のエンボス加工法によって行うことができる。より具体的には、加熱成形直後の下層シートに対して、表面に凹凸形状を有するローラ状又は板状のエンボス版を押し当てることによって施すことができる。
【００１６】
中間層１Ｂのホットメルト接着剤層は、無溶剤のポリウレタン系，エチレン酢酸ビニル（ＥＶＡ）系，ポリアミド系，ポリエステル系等のホットメルト接着剤を用いることができる。この中間層１Ｂは下層１Ａに形成された凹凸柄を埋めるのに適当な厚さの層に形成される。好ましくは、厚さ０．３〜０．４ｍｍの下層に対しては、５０〜１００μｍ程度の厚さに形成することができる。
【００１７】
中間層１Ｂの形成方法としては、下層１Ａ又は上層１Ｃの一方又は両方に塗工することによって形成することができる。塗工方法としては、グラビア印刷法，ローラコート法，オフセット法，ダイコート法等を用いることができる。
【００１８】
上層１Ｃの透明又は半透明の樹脂層としては、加熱成形が可能な熱可塑性樹脂であって、アクリル系，オレフィン系，スチレン系樹脂などの樹脂層にすることができ、好ましくはアクリル系樹脂層にすることができる。
【００１９】
このような構成の化粧シートによると、熱可塑性樹脂層の積層構造によって加熱成形性の良い化粧シートを得ることができる。また、透明又は半透明な中間層１Ｂを介在しているので、上層１Ｃからの下層１Ａの凹凸柄ａまでの距離を有効に確保することができ、下層１Ａに形成された凹凸柄ａに充分な奥行き感を与えることができ、上層１Ｃと中間層１Ｂの屈折率の関係で奥行き感のある凹凸柄ａに効果的な意匠性を与えることができる。
【００２０】
また、化粧シート１の内部に凹凸柄ａが形成されることで、表面に凹凸柄がある場合のように、凹凸柄ａの凹部に埃や汚れが溜まることはなく、上層の平坦な表面を清掃することで表面の汚れなどを簡易に取り除くことができる。これによって、貼り付け後の時間経過によっても高い意匠性を維持することができる。更には、表面の上層１Ｃが保護層の役目を担うので、凹凸柄ａは摩耗や傷などで崩れることはなく、化粧シートの適用箇所の選択性を高めることができる。
【００２１】
中間層１Ｂとして溶剤成分を含まないホットメルト接着剤を用いることで、形成後にＶＯＣの発生が生じない化粧シート１を得ることができる。ＶＯＣの発生がないクリーンな化粧シート１を得るに際して溶剤成分を除去するための乾燥工程などを必要としないので、製造工程の煩雑さが生じることがなく、製造コストの低減化が可能になる。
【００２２】
中間層１Ｂで完全に凹凸柄を平坦化した上に上層１Ｃを形成するので、化粧シート１の形成時又はその後の加熱成形時にも表面がユズ肌状になることがない。また、エンボスの深さに応じて中間層１Ｂの厚さを決めることができるので、エンボスの深い柄にも適用可能である。中間層１Ｂが無溶剤のホットメルト接着剤であるから加熱成形時に気泡が生じる不具合が無く、ホットメルト接着剤の再熱加工性によって加熱成形時にひび割れが生じるような不具合も無い。
【００２３】
図２は、本発明の実施形態に係る化粧シートの製造方法を説明する説明図である。同図（ａ）は、熱ラミネート方式の加工法を採用した場合、同図（ｂ）は、ダイコータでのラミネート方式を採用した場合を示している。
【００２４】
同図（ａ）に示す方法では、下層シート１Ａ０と中間層シート１Ｂ０と上層シート１Ｃ０を別途成形している。下層シート１Ａ０にはエンボス加工が施されてその表面に凹凸柄が形成されている。中間層シート１Ｂ０はシート状に成形されたホットメルト接着剤である。そして、それぞれ案内ローラ１０，１１，１２を介して下層シート１Ａ０，中間層シート１Ｂ０，上層シート１Ｃ０を加熱ローラ１３の外周に供給する。この際、下層シート１Ａ０の凹凸柄の上に中間層シート１Ｂ０が積層され、その上に上層シート１Ｃ０が積層される。加熱ローラの表面は熱ラミネートに必要な温度１００〜１２０℃に加熱されている。加熱成形された化粧シート１は引き出しローラ１４を介して引き出されることになる。
【００２５】
同図（ｂ）に示す方法では、予め凹凸柄が施された下層シート１Ａ０上にダイコータ（押出機）から押し出された中間層シート１Ｂ０を供給し、下層シート１Ａ０上に中間層シート１Ｂ０を積層した上に案内ローラ２１を介して上層シート１Ｃ０を供給し、同時に加熱ローラ２０で３層を加熱成形する。
【００２６】
このような製造方法によると、従来の熱ラミネートによる多層シートの形成工程を利用して、本発明の実施形態に係る化粧シートを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【図２】本発明の実施形態に係る化粧シートの製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ 化粧シート
１Ａ 下層
１Ｂ 中間層
１Ｃ 上層
１０，１１，１２，２１ 案内ローラ
１３，２０ 加熱ローラ
１４ 引き出しローラ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、凹凸柄が内部に形成されている化粧シート及びその製造方法に関し、特に、後に加熱成形するものに適した内部エンボスを有する化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
化粧シートとしては、特にその意匠性を高めるために表面に立体感のある模様を施したものが知られている。立体感のある模様を得るためには、表面に凹凸柄のエンボス加工を施すことが行われる。このように表面に凹凸柄が施された化粧シートは、素朴な立体感は得られるものの、例えば奥行き感の生じるような効果的な意匠性を導き出すことができない。また、表面に凹凸柄があると、凹部に埃や汚れが溜まりやすく、溜まった埃や汚れを取り除くことが困難でもあるので、貼り付け後の時間経過によって意匠性が低下してしまう問題がある。更には、表面の凹凸柄は摩耗や傷などで崩れることがあるので、可動物の表面や人手が触れやすいところには適用し難い問題がある。
【０００３】
このような問題点を解消するものとして凹凸柄を内部に形成した、所謂内部エンボスと呼ばれる化粧シートが知られている。下記特許文献１には、エンボス凹凸柄が施された熱可塑性合成樹脂シートと透明合成樹脂シートとを２液型ウレタン系の透明接着剤等を用いたドライラミネート法で貼り合わせたものが記載されており、下記特許文献２には、ポリ塩化ビニル（ＰＶＣ）シート等の透明樹脂シートの裏面に紫外線硬化型樹脂からなる凹凸柄を形成し、そのシートの凹凸柄面に通気孔を形成したＰＶＣシートを熱ラミネートしたものが記載されている。
【特許文献１】特公平７−２２９８９号公報
【特許文献２】特開平１０−３４７８０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
前述した従来技術によると、特許文献１に記載のものでは、ドライラミネートに用いる接着剤に溶剤が含まれるため、ラミネート後、シートに溶剤成分が残留し、揮発性有機廃棄物（ＶＯＣ）を発生する懸念があるので、例えば車輌内装用等の気密性の高いところでの使用には適さない。溶剤成分を飛ばすためには乾燥工程が別途必要になり、製造工程が煩雑になってコストアップに繋がる問題がある。
【０００５】
また、特許文献２に記載のものでは、凹凸を埋める層が熱ラミネートされるＰＶＣシートになるので、シート厚さを薄く形成するとラミネートの際にエンボスに沿って表面が追従しユズ肌状に成りやすい。したがって、凹凸を表面側に向けると表面の平面性が得られず、平らな表面の内部に凹凸柄が存在する奥行き感のある効果的な意匠性が得られない。エンボスの深さが深い柄の場合にはこの問題が更に顕著になる。
【０００６】
そして、例えば、車輌内装用化粧シート等では、形成された化粧シートをダッシュボード，ドアトリム，コンソールボックスなどの形状に合わせて加熱成形することが行われるが、特許文献１に記載のものでは、シートに残留した溶剤成分が加熱成形時に気化して発泡するので、シート内部に気泡が生じて外観性に悪影響が出やすい問題があり、特許文献２に記載のものでは、加熱成形時に熱ラミネート層が溶融して更に内部の凹凸柄に表面が追従しやすくなる問題がある。更には、凹凸柄を形成した紫外線硬化樹脂層は、一度硬化すると加熱時の伸びが他の樹脂層に比べてかなり低くなるので、加熱成形時にひび割れを生じてしまう問題がある。
【０００７】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、奥行き感のある内部エンボスを有する化粧シートを得るに際して、ＶＯＣの発生が生じないこと、製造工程の煩雑さが生じないこと、表面がユズ肌状にならないこと、エンボスの深い柄にも適用できること、化粧シートの加熱成形性が良好なこと、加熱成形時に気泡やひび割れが生じて意匠性が低下する不具合が生じないこと、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
このような目的を達成するために、本発明の化粧シートは、凹凸柄が形成された熱可塑性樹脂シート層である下層と、前記凹凸柄を埋めるように前記下層上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層と、前記中間層上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層とを有することを特徴とする。
【０００９】
また、本発明の化粧シートの製造方法は、ＡＳＢ樹脂シート層上に凹凸柄を印刷又はエンボス加工して下層を形成し、前記凹凸柄を埋めるように形成される透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層を介して、前記下層と透明又は半透明アクリル系樹脂層である上層とを熱ラミネートすることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
このような特徴の化粧シート及び化粧シートの製造方法によると、透明な中間層を設けることで上層からの下層の凹凸柄までの距離を有効に確保できるので奥行き感のある高い意匠性を有する内部エンボス化粧シートを得ることができる。中間層として溶剤成分を含まないホットメルト接着剤を用いることで、形成後にＶＯＣの発生が生じない化粧シートを得ることができる。ＶＯＣの発生がないクリーンな化粧シートを得るに際して溶剤成分を除去するための乾燥工程などを必要としないので、製造工程の煩雑さが生じることがなく、製造コストの低減化が可能になる。
【００１１】
中間層で完全に凹凸柄を平坦化した上に上層を形成するので、化粧シートの形成時又はその後の加熱成形時にも表面がユズ肌状になることがない。また、エンボスの深さに応じて中間層の厚さを決めることができるので、エンボスの深い柄にも適用可能である。ホットメルト接着剤を用いることで、下層，中間層，上層を熱可塑性樹脂で形成するので、加熱成形性が良好であり、無溶剤のホットメルト接着剤であるから加熱成形時に気泡が生じる不具合が無く、ホットメルト接着剤の再熱加工性によって加熱成形時にひび割れが生じるような不具合も無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の実施形態を説明する。図１は本発明の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。同図（ａ）に示した本発明の実施形態に係る化粧シート１は、下層１Ａと中間層１Ｂと上層１Ｃを有している。下層１Ａは凹凸柄ａが形成された熱可塑性樹脂シート層であり、例えば、化粧シート１の基材となる層である。中間層１Ｂは、下層１Ａに形成された凹凸柄を埋めるように下層１Ａ上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である。また、上層１Ｃは、中間層１Ｂ上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である。
【００１３】
また、同図（ｂ）に示した本発明の実施形態に係る化粧シート１は、前述した基材層１Ａ，中間層１Ｂ，上層１Ｃに加えて化粧層１Ｄを備えている。この化粧層１Ｄは、各種色柄を有する印刷層及び／又はアルミ蒸着層によって形成されており、基材層１Ａ上に施された凹凸柄ａの意匠性を高めるために設けられるものである。
【００１４】
下層１Ａの樹脂シート層は、加熱成形が可能で凹凸柄を形成することができる材料であればよいが、好ましくは加熱成形性が良く、更には、耐熱性が良い材料が適し、より具体的には、ＡＢＳ樹脂を採用することができる。また、下層１Ａは必要に応じて顔料を添加して所望の色に着色することも可能である。
【００１５】
下層１Ａ自体の成形は、Ｔダイ押出法やカレンダー法等、周知のシート成形法を採用することができ、好ましくは厚さ０．３〜０．４ｍｍのシート材を成形する。下層１Ａへの凹凸柄の形成は、印刷，転写法を含む周知のエンボス加工法によって行うことができる。より具体的には、加熱成形直後の下層シートに対して、表面に凹凸形状を有するローラ状又は板状のエンボス版を押し当てることによって施すことができる。
【００１６】
中間層１Ｂのホットメルト接着剤層は、無溶剤のポリウレタン系，エチレン酢酸ビニル（ＥＶＡ）系，ポリアミド系，ポリエステル系等のホットメルト接着剤を用いることができる。この中間層１Ｂは下層１Ａに形成された凹凸柄を埋めるのに適当な厚さの層に形成される。好ましくは、厚さ０．３〜０．４ｍｍの下層に対しては、５０〜１００μｍ程度の厚さに形成することができる。
【００１７】
中間層１Ｂの形成方法としては、下層１Ａ又は上層１Ｃの一方又は両方に塗工することによって形成することができる。塗工方法としては、グラビア印刷法，ローラコート法，オフセット法，ダイコート法等を用いることができる。
【００１８】
上層１Ｃの透明又は半透明の樹脂層としては、加熱成形が可能な熱可塑性樹脂であって、アクリル系，オレフィン系，スチレン系樹脂などの樹脂層にすることができ、好ましくはアクリル系樹脂層にすることができる。
【００１９】
このような構成の化粧シートによると、熱可塑性樹脂層の積層構造によって加熱成形性の良い化粧シートを得ることができる。また、透明又は半透明な中間層１Ｂを介在しているので、上層１Ｃからの下層１Ａの凹凸柄ａまでの距離を有効に確保することができ、下層１Ａに形成された凹凸柄ａに充分な奥行き感を与えることができ、上層１Ｃと中間層１Ｂの屈折率の関係で奥行き感のある凹凸柄ａに効果的な意匠性を与えることができる。
【００２０】
また、化粧シート１の内部に凹凸柄ａが形成されることで、表面に凹凸柄がある場合のように、凹凸柄ａの凹部に埃や汚れが溜まることはなく、上層の平坦な表面を清掃することで表面の汚れなどを簡易に取り除くことができる。これによって、貼り付け後の時間経過によっても高い意匠性を維持することができる。更には、表面の上層１Ｃが保護層の役目を担うので、凹凸柄ａは摩耗や傷などで崩れることはなく、化粧シートの適用箇所の選択性を高めることができる。
【００２１】
中間層１Ｂとして溶剤成分を含まないホットメルト接着剤を用いることで、形成後にＶＯＣの発生が生じない化粧シート１を得ることができる。ＶＯＣの発生がないクリーンな化粧シート１を得るに際して溶剤成分を除去するための乾燥工程などを必要としないので、製造工程の煩雑さが生じることがなく、製造コストの低減化が可能になる。
【００２２】
中間層１Ｂで完全に凹凸柄を平坦化した上に上層１Ｃを形成するので、化粧シート１の形成時又はその後の加熱成形時にも表面がユズ肌状になることがない。また、エンボスの深さに応じて中間層１Ｂの厚さを決めることができるので、エンボスの深い柄にも適用可能である。中間層１Ｂが無溶剤のホットメルト接着剤であるから加熱成形時に気泡が生じる不具合が無く、ホットメルト接着剤の再熱加工性によって加熱成形時にひび割れが生じるような不具合も無い。
【００２３】
図２は、本発明の実施形態に係る化粧シートの製造方法を説明する説明図である。同図（ａ）は、熱ラミネート方式の加工法を採用した場合、同図（ｂ）は、ダイコータでのラミネート方式を採用した場合を示している。
【００２４】
同図（ａ）に示す方法では、下層シート１Ａ０と中間層シート１Ｂ０と上層シート１Ｃ０を別途成形している。下層シート１Ａ０にはエンボス加工が施されてその表面に凹凸柄が形成されている。中間層シート１Ｂ０はシート状に成形されたホットメルト接着剤である。そして、それぞれ案内ローラ１０，１１，１２を介して下層シート１Ａ０，中間層シート１Ｂ０，上層シート１Ｃ０を加熱ローラ１３の外周に供給する。この際、下層シート１Ａ０の凹凸柄の上に中間層シート１Ｂ０が積層され、その上に上層シート１Ｃ０が積層される。加熱ローラの表面は熱ラミネートに必要な温度１００〜１２０℃に加熱されている。加熱成形された化粧シート１は引き出しローラ１４を介して引き出されることになる。
【００２５】
同図（ｂ）に示す方法では、予め凹凸柄が施された下層シート１Ａ０上にダイコータ（押出機）から押し出された中間層シート１Ｂ０を供給し、下層シート１Ａ０上に中間層シート１Ｂ０を積層した上に案内ローラ２１を介して上層シート１Ｃ０を供給し、同時に加熱ローラ２０で３層を加熱成形する。
【００２６】
このような製造方法によると、従来の熱ラミネートによる多層シートの形成工程を利用して、本発明の実施形態に係る化粧シートを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の実施形態に係る化粧シートの概略断面図である。
【図２】本発明の実施形態に係る化粧シートの製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【００２８】
１ 化粧シート
１Ａ 下層
１Ｂ 中間層
１Ｃ 上層
１０，１１，１２，２１ 案内ローラ
１３，２０ 加熱ローラ
１４ 引き出しローラ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
凹凸柄が形成された熱可塑性樹脂シート層である下層と、
前記凹凸柄を埋めるように前記下層上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層と、
前記中間層上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層と
を有することを特徴とする化粧シート。
【請求項２】
前記下層をＡＢＳ樹脂層とし、前記上層をアクリル系樹脂層としたことを特徴とする請求項１記載の化粧シート。
【請求項３】
ＡＢＳ樹脂シート層上に凹凸柄を印刷又はエンボス加工して下層を形成し、
前記凹凸柄を埋めるように形成される透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層を介して、前記下層と透明又は半透明アクリル系樹脂層である上層とを熱ラミネートすることを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項１】
凹凸柄が形成された熱可塑性樹脂シート層である下層と、
前記凹凸柄を埋めるように前記下層上に形成された透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層と、
前記中間層上に形成された透明又は半透明な熱可塑性樹脂層である上層と
を有することを特徴とする化粧シート。
【請求項２】
前記下層をＡＢＳ樹脂層とし、前記上層をアクリル系樹脂層としたことを特徴とする請求項１記載の化粧シート。
【請求項３】
ＡＢＳ樹脂シート層上に凹凸柄を印刷又はエンボス加工して下層を形成し、
前記凹凸柄を埋めるように形成される透明又は半透明なホットメルト接着剤層である中間層を介して、前記下層と透明又は半透明アクリル系樹脂層である上層とを熱ラミネートすることを特徴とする化粧シートの製造方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１０−６９７２８（Ｐ２０１０−６９７２８Ａ）
【公開日】平成２２年４月２日（２０１０．４．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２３９８０８（Ｐ２００８−２３９８０８）
【出願日】平成２０年９月１８日（２００８．９．１８）
【出願人】（００００００５５０）オカモト株式会社 (118)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年４月２日（２０１０．４．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年９月１８日（２００８．９．１８）
【出願人】（００００００５５０）オカモト株式会社 (118)
【Ｆターム（参考）】
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