説明

化粧シート及び化粧材

【課題】リオレフィン系材料をベースにし、表面保護層を電子線照射により硬化させた化粧シートにおいて、化粧シートとして充分な耐候性能を有しつつ、電子線照射に由来する黄変を抑さえた意匠性の高い化粧シートを提供することであり、その中でも特に、ポリプロピレン系樹脂層の電子線照射に由来する黄変を抑制すること。
【解決手段】透明ポリプロピレン系樹脂層のうち表面保護層に接していない少なくとも1つの層にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が添加されており、透明ポリプロピレン系樹脂層のうち表面保護層に接してる層にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が添加されていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、車両内装、住設機器や家電製品等の表面化粧等に使用するための化粧シートに関するものであり、特に、例えば玄関ドア等の耐候性、耐熱性、温水性が必要とされる建築部材の表面化粧用として好適な化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の様な各種用途に使用するための化粧シートとしては従来、安価で加工性に優れたポリ塩化ビニル樹脂製の化粧シートが最も一般的であった。この化粧シートには、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材シートの表面又は裏面に、木目等の適宜の所望の絵柄の印刷を施してなる、単層構成の化粧シートと、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材シートの表面に絵柄の印刷を施し、該印刷面上に透明なポリ塩化ビニル樹脂からなる表面樹脂層を積層してなる、複層構成の化粧シートとがある。中でも、後者の複層構成の化粧シートは、絵柄の印刷が表面からも裏面からもポリ塩化ビニル樹脂層によって保護され、加工上も耐久性上も有利である点や、基材シートの着色による高隠蔽化が容易である点などから、単層構成の化粧シートよりも広く一般的に使用されて来た。
【0003】
上記の他、ポリ塩化ビニル樹脂と他の熱可塑性樹脂との組み合わせによる化粧シートもあった。例えば、耐候性が要求される準外装用途には、耐候性に優れたアクリル系樹脂を表面樹脂層に使用したものもあったし、鋼板用等の高鮮映性が要求される用途には、透明性や表面平滑性に優れたポリエステル系樹脂を表面樹脂層に使用したものもあった。そして、係る如く、ポリ塩化ビニル樹脂同士、或いはポリ塩化ビニル樹脂と他の熱可塑性樹脂との組み合わせによって構成される化粧シートは、ポリ塩化ビニル樹脂の持つ優れた熱接着性を利用して、熱ラミネート法によって製造するのが最も一般的であった。
【0004】
ところが、近年になって、ポリ塩化ビニル樹脂が燃焼時に塩素ガスや塩化水素ガス等を大量に発生し、有毒物質であるダイオキシンの発生の直接的又は間接的要因となることが指摘され、環境保護の観点からポリ塩化ビニル樹脂に替わる素材を使用した化粧シートの開発が要望される様になった。そして、係る要望に応えるものとして、例えばポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の、ポリ塩化ビニル以外の塩素を含有しない熱可塑性樹脂を使用した化粧シートが既に開発、実用化され、ポリ塩化ビニル樹脂製の化粧シートの代替が徐々に進行しつつある。
【0005】
しかし、これらの代替樹脂はいずれも、ポリ塩化ビニル樹脂と比較して、熱接着性に劣っているので、従来のポリ塩化ビニル樹脂を使用した化粧シートの場合と同様に、熱ラミネート法によって化粧シートを製造しようとすると、必要な接着強度を得ることが困難であるという問題点があった。特に、ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、熱接着可能な温度条件の範囲が非常に狭く、しかも高温過ぎるので、シートの破断や伸び、変形、劣化等のラミネート不良を発生してしまう。また、これらの不都合の発生しない低温域で熱ラミネートを行っても、ラミネート強度が極端に低く、とても化粧シートとして実用に堪えるものを得ることはできない。
【0006】
係る問題点に対応すべく、基材シートと表面樹脂層との間に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(以後塩酢ビと記す)−アクリル系樹脂からなる熱接着性樹脂層を設ける方法なども提案されている(特許文献1)。この方法によれば、シートの破断や伸び、変形、劣化等の発生しない低温域において十分に熱活性化され接着性を発現する熱接着性樹脂層を介在させて熱ラミネートを行うことによって、ラミネート不良を発生することなく十分なラミネート強度を達成することができる利点がある。特に塩酢ビ系樹脂が基材シートと表面樹脂層との密着性を向上させる。
【0007】
しかしながら、上記熱接着性樹脂層は、耐熱性に劣る樹脂からなることもあり、得られた化粧シートは耐熱性に劣ったものであることもある。例えば準外装用途などにおいて水が化粧面表面に浸漬し、直射日光等により昇温した場合、その温水によって熱接着性樹脂層が軟化し、熱接着樹脂層に細かい空隙が発生し、表面状態が光の乱反射により白化して見えてしまうという問題点がある。この問題点は、熱軟化温度の高い熱接着性樹脂を使用すれば、理論的には改善されるであろうが、そうすると、必然的にラミネート温度を上げる必要があるから、結果的にはシートの破断、伸び、変形、劣化等のラミネート不良を招くことになり、所期の目的が達成できなくなってしまう。
【0008】
そこで、熱接着性樹脂にイソシアネート化合物等の架橋剤を配合しておき、ラミネート加工時の熱で接着性を発現して基材シートと表面樹脂層とを接着させると同時に、熱接着性樹脂の内部で架橋反応を起こさせることによって、ラミネート加工後の耐熱性を向上する手法も考えられる。しかしながら、係る手法によると、基材シートに熱接着性樹脂を塗工後、熱ラミネート加工までに時間を置くと、その間に架橋反応が進行する結果、熱ラミネート加工時には最早熱接着性を発現しなくなってしまうので、直ちに熱ラミネート加工を行う必要がある。従って、化粧シートの製造工程の進捗管理が面倒である他、熱接着性樹脂の塗工済みの印刷基材シートを大量に作り置きをしておくことができないので、多品種少量生産への対応も非常に困難である等の問題点がある。
【0009】
また、熱ラミネート法に代わるラミネート法として、溶融押出しラミネート法等の提案もあるが、これらは大規模で高価な製造設備を必要とし、多品種少量生産や短納期への対応も困難であり、使用可能な樹脂の種類も限定される等の問題もあって、熱ラミネート法を全て代替し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3853427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、密着性等のラミネート不良を招くことなく安定的にラミネート加工が可能であり、しかも接着強度や耐熱性、耐候性、耐温水密着性に優れた化粧シート及び化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その請求項1記載の発明は、オレフィン系樹脂基材の上に絵柄層、接着剤層、透明アクリル系樹脂層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、前記接着剤層が、オレフィン系基材側にポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層、透明アクリル系樹脂層側にガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層の2層を有してなることを特徴とする化粧シートである。また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の化粧シートを化粧板用基材に積層したことを特徴とする化粧材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧シートは接着剤層が、オレフィン系基材側にポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層、透明アクリル系樹脂層側にガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層の2層とした構成により、ドライラミネート法によって容易に製造可能でありながら、接着強度や耐熱性、耐候性、耐温水白化性、耐温水密着性に優れており、準外装用途にも十分に使用可能な化粧シートを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の化粧シート及び化粧材を図面に基づき詳細に説明する。
図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。オレフィン系樹脂基材2の裏面には適宜プライマー層1を設けられる。オレフィン系樹脂基材2の上に、絵柄層3、ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4、ガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層5、透明なアクリル系樹脂層6を少なくともこの順に設けてなる。
【0016】
本発明の化粧シートは、アルミ系基材や無機質系基材等の各種の化粧板用基材の表面に貼着(ラミネート)して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、係る接着剤の種類によってはオレフィン系樹脂基材2を構成する熱可塑性樹脂との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、オレフィン系樹脂基材2の裏面に、ラミネート用接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層1を適宜設けておくことが好ましい。
【0017】
プライマー層1としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中からオレフィン系樹脂基材2を構成する熱可塑性樹脂に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層1に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層1の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できると共に、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【0018】
本発明におけるオレフィン系樹脂基材2としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体を使用することができる。その他種々の単独重合体や共重合体が知られているが、中でもオレフィン系樹脂基材2の素材として最も好適なのはポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等の改質剤を添加することもできる。
【0019】
ところで、本発明の様な化粧シートには一般に、被貼着基材の表面の色彩や欠陥に対する隠蔽性が必要とされる場合が多い。そこで、目的の化粧シートに十分な隠蔽性を持たせる為に、オレフィン系樹脂基材2に隠蔽性顔料を添加することにより、オレフィン系樹脂基材2を隠蔽性とすることもできる。また、オレフィン系樹脂基材2を隠蔽性とする替わりに、オレフィン系樹脂基材2の表面又は裏面に、隠蔽性顔料を含有する印刷インキ組成物による隠蔽ベタ印刷層を設けても良いし、両者を併用することも勿論可能である。
【0020】
上記隠蔽性顔料としては、高屈折率で隠蔽性に優れた無機顔料を使用することが望ましい。具体的には、例えば黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、バリウムイエロー、キナクリドン、オーレオリン、モリブデートオレンジ、カドミウムレッド、弁柄、鉛丹、辰砂、マルスバイオレット、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、紺青、エメラルドグリーン、クロムバーミリオン、酸化クロム、ビリジアン、鉄黒、カーボンブラック等の有色顔料や、例えば酸化チタン(チタン白、チタニウムホワイト)、酸化亜鉛(亜鉛華)、塩基性炭酸鉛(鉛白)、塩基性硫酸鉛、硫化亜鉛、リトポン、チタノックス等の白色顔料等を使用することができる。
【0021】
中でも、隠蔽性や耐光性に優れ、意匠面でも色調的に化粧シート用に好適な顔料として、有色顔料としては弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料、白色顔料としては酸化チタン系顔料を使用することが最も望ましい。勿論、色調の調整等の目的で他の隠蔽性又は非隠蔽性の無機顔料又は有機顔料を併用することも可能であり、その場合には無機顔料であれば例えばコバルトブルー、カーボンブラック等、有機顔料であればフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料等、耐候性に優れた顔料を使用することが好ましい。その他、必要に応じて例えばシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料を併用することもできる。
【0022】
その他、オレフィン系樹脂基材2には、目的とする化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0023】
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石、カオリン等から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用される。
【0024】
オレフィン系樹脂基材2の厚さには特に制限はなく、例えば従来の一般の化粧シートにおけるそれらと同様の厚さとすることができる。具体的には、化粧シートの用途や樹脂の種類にもよるが、一般的には厚さは20〜300μm程度、より好ましくは50〜200μm程度が好適である。
【0025】
オレフィン系樹脂基材2の成形方法にも特に制限はなく、例えば押出成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、キャスト成形法等の従来公知の任意の成形方法によって製膜されたフィルム乃至シートを使用することができる。
【0026】
本発明における絵柄層3は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄の意匠性を付与する目的で設けられる。一般的には、オレフィン系樹脂基材2の表面に、印刷法等の手段により適宜の絵柄模様を有する絵柄層3が設けられる。絵柄層3の構成材料や形成方法には一切制限はなく、従来より係る化粧シートの絵柄層3に適用されて来た任意の画像形成材料や画像形成方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング剤等を使用することができる。
【0027】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0028】
また、前記結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0029】
前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合溶剤等を使用することができる。
【0030】
その他、必要に応じて例えば体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
【0031】
目的の化粧シートに優れた層間密着性を持たせる為には、絵柄層3の結着剤樹脂としては接着性や凝集力の強い樹脂を使用することが好ましく、その観点からは熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂を使用することが好ましい。中でも、架橋硬化後に高い凝集力を有しつつも適度の可撓性や柔軟性を有しており、ポリオレフィン系樹脂等の不活性な熱可塑性樹脂に対しても優れた接着性を示し、また接着性にも優れる点で、2液硬化型ウレタン系樹脂を使用することが最も望ましい。具体的には、ポリエステルポリオール系樹脂を主成分とする主剤100重量部に対して、キシレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物を3〜10重量部添加した印刷インキ組成物を印刷後、常温又は加熱下で架橋硬化させて絵柄層3を形成することが最も望ましい。
【0032】
絵柄層3の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらの方法を複数組み合わせて行うことも勿論可能である。
【0033】
また、絵柄層3の形成に先立ち必要に応じて、オレフィン系樹脂基材2の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、オレフィン系樹脂基材2と絵柄層3との間の密着性を向上することもできる。
【0034】
前記絵柄層3が構成する絵柄の種類には特に制限はなく、例えば従来より係る化粧シートの分野において広く採用されている木目柄や、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いは単なる着色や色彩調整を目的とする場合には単色無地であっても良く、要するに、目的の化粧シートの用途に応じ任意の所望の絵柄を採用することができる。
【0035】
本発明におけるポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4は、前記オレフィン系樹脂基材2と後述する透明アクリル系樹脂層6との間でのドライラミネート法による接着を可能とし、両層間での接着強度を発現させる目的で設けられるものである。具体的には、主剤となるポリエステルポリオールと硬化剤となるヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びこれらの混合物の2液ウレタン樹脂系接着剤を塗工することにより設けられる。層厚としては乾燥後の厚み4μmから10μm程度が好適である。
【0036】
ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4には、目的とする化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0037】
本発明におけるガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層5としては、前記ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4と後述する透明アクリル系樹脂層6との間での、接着強度を発現させる目的で設けられるものである。具体的には主剤となるアクリルポリオールと硬化剤となるヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することにより設けられる。
【0038】
アクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤は、主剤となるアクリルポリオール100重量部に対して、硬化剤となるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート化合物を3〜10重量部添加したものが好適である。アクリル系のものを使用することにより、ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4との密着性を向上させ、また耐候性向上に寄与する。ウレタン架橋をすることにより、絵柄層2との密着性を向上させ、また耐熱性を向上させる。
【0039】
本発明における前記アクリル系樹脂としては、ガラス転移温度が95〜100℃ものが用いられる。ガラス転移温度が低すぎる場合には耐熱性が劣り、温水に浸漬されることにより接着性樹脂層内にて接着性樹脂に空隙が発生し、密着力が低下する。ガラス転移温度が高すぎると主剤となるアクリル系樹脂に含まれる水酸基の含有量が減少し、硬化剤となるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート化合物との反応によって構成されるウレタン架橋部分が減少し、耐久密着性が低下する。
アクリル系樹脂のガラス転移温度を調整する方法は、アルキル基についている炭素原子数の数を変えることにより調整可能であり、アクリレートとメタクリレートの割合で適宜調整すれば良い。あるいはまた市販されているアクリル系樹脂のガラス転移温度を測定して適宜選択することであってもよい。
【0040】
本発明における透明アクリル系樹脂層6に用いるアクリル系樹脂としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体を主成分として単独又は共重合して得られる各種の熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂であって、例えばメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の長鎖アルキルエステルや、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸又はアクリル酸等から選ばれる単量体を共重合成分として添加したり、スチレン−ブタジエンゴム又はメタクリル酸メチル−ブタジエンゴム等のゴム成分をグラフト共重合、ブロック共重合若しくはブレンドして、柔軟性や熱成形性を改善してなる樹脂などを好適に使用することができる。
【0041】
透明アクリル系樹脂層6は少なくともその下の絵柄層3を透視可能な程度の透明性を有している必要があり、無色透明であることが最も望ましいが、着色透明や半透明であっても良い。その限りにおいて、表面樹脂層6は着色剤や充填剤を含有していても良い。
【0042】
透明アクリル系樹脂層6の厚さには特に制限はなく、例えば従来の一般の化粧シートにおけるそれらと同様の厚さとすることができる。具体的には、化粧シートの用途や樹脂の種類にもよるが、一般的には10〜200μm程度、より好ましくは10〜100μm程度の範囲内とするのが良い。
【0043】
透明アクリル系樹脂層6の成形方法にも特に制限はなく、例えば押出成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、キャスト成形法等の従来公知の任意の成形方法によって製膜されたフィルム乃至シートを使用することができる。
【0044】
また、透明アクリル系樹脂層6の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボスを設けることもできる。エンボスの模様の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、布目調、和紙調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば単なる艶消状や砂目状、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボスの模様を絵柄層3の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることも出来るが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄層3の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボスを設けることもできる。
【0045】
エンボスの形成方法にも特に制限はないが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボスの形成時期にも特に制限はなく、透明アクリル系樹脂層6のオレフィン系樹脂基材2との積層前、積層と同時又は積層後の中から任意の時期を選択することができ、また前記の各時期から選ばれる複数の時期に同一又は異なる模様のエンボスを複数回に亘って施すこともできる。
【0046】
本発明の化粧シートは、前記の各構成として、ラミネート後に架橋硬化させることにより、準外装用途等における高温の使用条件下でも接着強度を失わず、十分な耐剥離性を維持する特性を有するものとなる。
【実施例1】
【0047】
オレフィン系樹脂基材2として厚さ90μmの着色ポリプロピレン樹脂フィルム「リベストTPO」(リケンテクノス(株)製)を用い、この表面にポリエステルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を3重量%配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ製造(株)製)を使用してグラビア印刷法により絵柄層3を印刷した。
一方、透明アクリル系樹脂層6として透明アクリル樹脂フィルム「HBS−006」(三菱レイヨン(株)製)を用い、この裏面に、主剤がガラス転移温度が100℃のアクリルポリオール「UCクリヤー」(DIC(株)製)100重量部に対し硬化剤がヘキサメチレンジイソシアネート「HDMI W−325N」(DIC(株)製)10重量部を添加したウレタン系接着剤をグラビアコート法により乾燥後の塗布量1g/m2に塗工して、ガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層5とした。
【0048】
そして、前記オレフィン系樹脂基材2の絵柄層3を設けた上に、主剤がポリエステルポリオール「TM−593」(東洋モートン(株)製)100重量部に対し硬化剤がヘキサメチレンジイソシアネート「HDMI W−325N」15重量部を添加したウレタン系接着剤をグラビアコート法により乾燥後の塗布量1g/m2に塗工して、ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層4とし、これと前記透明アクリル系樹脂層6の前記ガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層5を設けた面をドライラミネートして、本発明の化粧シートを作製した。
【0049】
<比較例1>
実施例1において、アクリルポリオールを、ガラス転移温度が70℃の「XS783」(東洋モートン(株)製)とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0050】
<比較例2>
実施例1において、アクリルポリオールを、ガラス転移温度が102℃の「YL413」(東洋インキ製造(株)製)とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0051】
<性能比較>
以上のように作製した実施例1および比較例1、比較例2の化粧シートについて、温水密着性試験として、試験体に80℃温水48時間浸漬後、1時間放置し、化粧シート表面にクロスカットを施し、セロファンテープ剥離試験を実施する。透明アクリル層6が剥離した場合を不合格×とし、剥離しない場合を合格○とする。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の化粧シートは、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、車両内装、住設機器や家電製品等の表面化粧等に使用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…プライマー層
2…オレフィン系樹脂基材
3…絵柄層
4…ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層
5…ガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層
6…透明アクリル系樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂基材の上に絵柄層、接着剤層、透明アクリル系樹脂層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、前記接着剤層が、オレフィン系基材側にポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層、透明アクリル系樹脂層側にガラス転移温度が95〜100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤層の2層を有してなることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧シートを化粧板用基材に積層したことを特徴とする化粧材。


【図1】
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【公開番号】特開2011−207019(P2011−207019A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76466(P2010−76466)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】