説明

化粧シート製造用樹脂組成物

【課題】耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性等に優れた塗膜を与えることができる水性組成物を提供する。
【解決手段】化粧シートにおける樹脂含有層を形成するために用いる樹脂組成物であって、1)前記樹脂含有層は、180℃以上の熱処理に供されるものであって、2)前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂を含有する一液型水性組成物である、ことを特徴とする化粧シート製造用樹脂組成物に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート製造用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シート(壁紙)は、一般に基材上に種々の樹脂含有層を形成することにより構成されるものであり、各種の建材、家具等に幅広く使用されている。ところが、最近では、樹脂含有層を形成するための塗料に含まれるホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)の問題(人体に対する影響等)が大きく取り上げられ、その対策が急務とされている。
【0003】
これに対し、これらの樹脂含有層の形成するための塗料として水性組成物(水系組成物)の開発が進められている。水性組成物は、水に安定であることが必要であることから、カルボキシル基を有する樹脂成分を含む塗料組成物が提案されている。例えば、(i)カルボキシル 基および/または水酸基を有する重合性単量体1〜15重量%、(ii)ニトリル基を有する重合性単量体5〜20重量%、(iii)その他の重合性単量体65〜94重量%を含む混合物を乳化重合して得られるラテックス(A)、エポキシ基を2個以上含む化合物(B)を含み、固形分換算で該ラテックス(A)100重量部に対して該エポキシ基を2個以上含む化合物(B)が0.5〜50重量部である化粧シート用水性分散体組成物(特許文献1)等が提案されている。
【特許文献1】特開平11−172127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来技術の水性組成物を用いて形成された塗膜は、耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性等の物性が不十分である。一方、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物等を架橋剤として用いる方法により物性を高める検討もなされているが、これらの方法でもなお改善の余地がある。
【0005】
従って、本発明の主な目的は、耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性等に優れた塗膜を与えることができる水性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の化粧シート製造用樹脂組成物に係る。
1.化粧シートにおける樹脂含有層を形成するために用いる樹脂組成物であって、
1)前記樹脂含有層は、180℃以上の熱処理に供されるものであって、
2)前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂を含有する一液型水性組成物である、
ことを特徴とする化粧シート製造用樹脂組成物。
2.前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂固形分10〜30重量%及びオキサゾリン基含有樹脂固形分0.2〜4.0重量%を含む、上記項1に記載の化粧シート製造用樹脂組成物。
3.前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂固形分100重量部に対し、オキサゾリン基含有樹脂固形分2重量部以上含む、上記項1又は2に記載の化粧シート製造用樹脂組成物。
4.前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂の溶液又はエマルジョンと、オキサゾリン基含有樹脂の溶液とを混合する工程を含む方法により得られたものである、上記項1〜3のいずれかに記載の化粧シート製造用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧シート製造用樹脂組成物は、所定の熱処理工程を経ることにより、耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性等に優れた塗膜を付与できる結果、高性能の化粧シートを製造することが可能となる。
【0009】
また、本発明の化粧シート製造用樹脂組成物は、所定の樹脂成分等が含まれることから、1液型の形態で使用することができる。特に、水を含む水性組成物の形態としても、優れた安定性(ポットライフ性)等を発揮することができる。しかも、水性組成物であることから、皮膚刺激性、変異原性、急性毒性等が低減ないしは解消されており、高い安全性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.化粧シート製造用樹脂組成物
本発明の化粧シート製造用樹脂組成物は、化粧シートにおける樹脂含有層を形成するために用いる樹脂組成物であって、
1)前記樹脂含有層は、180℃以上の熱処理に供されるものであって、
2)前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂を含有する一液型樹脂組成物である、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の化粧シート製造用樹脂組成物(以下「本発明組成物」という。)は、化粧シートにおける樹脂含有層を形成するために用いる樹脂組成物である。
【0012】
樹脂含有層は、化粧シート(壁紙)のいずれの層の形成にも使用することができる。例えば、表面コート層(いわゆるOP層)、プライマー層、柄層(図柄層)、接着剤層等のいずれにも適用することができる。
【0013】
樹脂含有層は、180℃以上、好ましくは200℃以上の熱処理に供されるものであることが必要である。160℃以上で熱処理されることによって、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と、オキサゾリン基含有樹脂のオキサゾリン基とを効率良く反応させることができる等の作用により、これまで以上に優れた所望の耐汚染性、耐アルコール性、耐アルカリ性等を得ることができる。一般に、カルボキシル基とオキサゾリン基とは下記のような反応を起こすが、180℃以上という高温に供することによって高い反応率を確保することができる。
【0014】
【化1】

【0015】
これに対し、180℃未満の温度では、反応率が十分上がらない等の理由により、所望の耐汚染性、耐アルコール性、耐アルカリ性等を得ることができない。
【0016】
熱処理の時間は、所望の耐汚染性、耐アルコール性、耐アルカリ性等を得ることができる程度に十分な反応率が得られる時間とすれば良いが、一般に30〜60秒、特に35〜50秒とすることが好ましい。
【0017】
熱処理の形態は限定的でなく、例えば前記の樹脂含有層に対して直接行うものであっても良いし、化粧シート全体を熱処理するような形態であっても良い。
【0018】
本発明樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂を含有する一液型樹脂組成物である。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂としては、カルボキシル基を有するものであれば特に限定されず、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0020】
また、公知の製法によって得られるものも使用することができる。例えば、単量体としてカルボキシル基含有ビニルモノマーの1種又は2種を原料を重合して得られる重合体又は共重合体をカルボキシル基含有樹脂としても用いることができる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、ジメチルプロピオン酸、ジメチルブタン酸等が挙げられる。また、必要に応じて、カルボキシル基含有ビニルモノマーと重合可能な単量体も使用することができる。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、クロルスチレン、2−メチルスチレン等のスチレン系化合物等が挙げられる。
【0021】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は限定されないが、酸価が20〜50mgKOH/gであることが好ましく、特に20〜40mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲内のカルボキシル基含有樹脂を用いることによって、水性組成物として優れた特性を発揮することができる。
【0022】
なお、酸価は、JIS K0070−1992に準拠し、カルボキシル基含有樹脂の固形分1g中に含まれる遊離カルボキシル基を中和するのに要するKOHのmg数から算出することができる。
【0023】
本発明組成物中におけるカルボキシル基含有樹脂の含有量(固形分)は、用いるカルボキシル基含有樹脂の種類、所望の化粧シート特性等に応じて適宜設定することができるが、通常は10〜30重量%、特に15〜20重量%とすることが好ましい。
【0024】
オキサゾリン基含有樹脂としては、下記一般式(1)で示されるオキサゾリン基を有するものであれば良く、特に限定されない。
【0025】
【化2】

【0026】
(ただし、R〜Rは、炭素数0〜10であり、互いに同一又は異なって、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。)
このようなオキサゾリン基含有樹脂は、公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製法によって得られるものも使用することができる。例えば、単量体として付加重合性オキサゾリンを1種又は2種以上含む原料を重合することによって得られる重合体をオキサゾリン基含有樹脂として用いることができる。この場合、前記のカルボキシル基含有ビニルモノマーと重合可能な単量体も必要に応じて用いることができる。
【0027】
上記の付加重合性オキサゾリンとしては、例えば下記一般式(2)で示される化合物を用いることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
(ただし、R〜Rは、炭素数0〜10であり、互いに同一又は異なって、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。Rは、付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基を示す。)
上記の付加重合性オキサゾリンとしては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
このようなオキサゾリン基含有樹脂は、水溶性タイプ、エマルションタイプ、固形タイプ等のいずれであっても良いが、特に水溶性タイプのものを好適に用いることができる。このような水溶性タイプのオキサゾリン基含有樹脂も市販品を使用することができる。例えば、製品名「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」(いずれも日本触媒製)等を好適に用いることができる。
【0031】
本発明組成物中におけるオキサゾリン基含有樹脂の含有量(固形分)は、用いるオキサゾリン基含有樹脂の種類、所望の化粧シート特性等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.1〜10.0重量%、特に0.2〜4.0重量%とすることが好ましい。
【0032】
また、カルボキシル基含有樹脂に対するオキサゾリン基含有樹脂の割合は、カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の一部又は全部と反応する当量又はそれ以上のオキサゾリン基を供給できる量であれば良い。一般的には、カルボキシル基含有樹脂固形分100重量部に対し、オキサゾリン基含有樹脂固形分2重量部以上、特に2〜14重量部とすれば良い。
【0033】
本発明組成物は、前記した樹脂成分以外に溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、水のほか、水溶性有機溶媒を好適に使用することができる。水溶性有機溶媒としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等の低級アルコールのほか、グリコール類、グリコールエステル類等を好適に使用できる。
【0034】
溶媒の使用量は、本発明組成物の固形分含有量が10〜30重量%程度となるような範囲内で適宜設定することができる。
【0035】
その他の成分としては、形成する樹脂含有層の機能、目的等に応じて公知の添加剤を適宜配合することができる。例えば、着色剤、体質顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、等を使用することができる。これら添加剤は、公知のもの又は市販品を用いることができる。また、これら添加剤の種類及び含有量は、目的とする層(形成される樹脂含有層)の種類に応じて決定すれば良い。例えば、最表面層(表面コート層)、プライマー層、柄層、接着剤層等のいずれに本発明組成物を用いるかによって添加剤の種類及び含有量を適宜定めることができる。この場合の添加剤の種類及び含有量は、公知の化粧シートの製法に従って定めることもできる。
【0036】
本発明組成物は、公知の化粧シートを製造する方法と同様の方法に従って使用することによって、化粧シートを製造することができる。例えば、基材又はその上に形成された層の上から本発明組成物を塗工し、乾燥した後、形成された樹脂含有層を上記した熱処理に供すれば良い。塗工方法としては、刷毛塗り、スプレー、ロール等による方法のほか、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター等による方法が例示される。塗工量は、通常は1.0〜5.0g/mの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0037】
本発明は、本発明組成物を用いて形成された樹脂含有層を含む化粧シートも包含する。上記樹脂含有層は、所定の熱処理を経ていることから、特にカルボキシル基とオキサゾリン基との反応生成物の存在によって、高い耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性を実現することができる。
【0038】
本発明の化粧シートの構成は、特に限定されず、公知の化粧シートとすることができる。例えば、1)基材/柄層/表面コート層、2)基材/プライマー層/柄層/プライマー層/表面コート層、3)基材/柄層/プライマー層/表面コート層、4)基材/プライマー層/柄層/表面コート層等の層構成を採用することができる。これらの各層の少なくとも1層の形成に本発明組成物による樹脂含有層を適用することができる。
【0039】
例えば、表面コート層(透明性保護層又はOP層)を形成するために用いる場合は、本発明組成物として、カルボキシル基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、水、水溶性有機溶媒、体質顔料及びシリコンを含む水性組成物を好適に用いることができる。また例えば、プライマー層を形成するために用いる場合は、本発明組成物として、カルボキシル基含有樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、水、水溶性有機溶媒及び体質顔料を含む水性組成物を好適に用いることができる。
【0040】
基材としては、例えば熱可塑性樹脂により形成された樹脂シートを好適に使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0042】
実施例1
アクリル系樹脂からなる原反に柄層(「オーデAG」ザ・インクテック製、塗工量2g/m)を設け、前記柄層の上に表面層(OP層:塗工量2g/m)を下記組成のOP層用インキで形成することにより、印刷物を作製した。なお、OP層は、OP層用インキ作製後5時間経過したものを用いて塗工した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。(OP層用インキの組成)
・カルボキシル基含有アクリルエマルジョン(酸価31mgKOH/g、固形分38重量%):50重量部
・オキサゾリン基含有樹脂(「エポクロスWS700」日本触媒製):10重量部
・水:14重量部
・イソプロピルアルコール:4重量部
・体質顔料(アクリルビーズ)16重量部
・シリコン6重量部
なお、上記組成では、カルボキシル基含有アクリルエマルジョン固形分100重量部に対してオキサゾリン基含有樹脂固形分が13.2重量部であった。
【0043】
実施例2
前記オキサゾリン基含有樹脂を4.6重量部(カルボキシル基含有アクリルエマルジョン固形分100重量部に対してオキサゾリン基含有樹脂の固形分が6.0重量部)としたほかは、実施例1と同様にして印刷物を作製した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0044】
比較例1
前記オキサゾリン基含有樹脂を0重量部としたほかは、実施例1と同様にして印刷物を作製した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0045】
比較例2
実施例1と同様にして印刷物を作製した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で160℃にて30秒間加熱した。
【0046】
比較例3
実施例1と同様にして印刷物を作製した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で100℃にて30秒間加熱した。
【0047】
比較例4
前記オキサゾリン基含有樹脂の代わりにイソシアネート化合物(「AQ100」日本ポリウレタン製、固形分100%)を5重量部(カルボキシル基含有アクリルエマルジョン固形分100重量部に対してイソシアネート化合物の固形分が26重量部)を配合し、5時間経過後に塗工し、OP層を形成したほかは、実施例1と同様にして印刷物を作製した。次いで、得られた印刷物をギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0048】
試験例1(耐アルカリ性、ラビング)
脱脂綿に市販のアルカリ性住宅用合成洗剤(「マジックリン」花王製)を染み込ませ、1500g荷重でOP層の上から100回ラビングした後の塗膜の状態を目視で確認した。塗膜に外観上の変化がなかったものを「◎」、若干の艶変化が認められる程度のものを「○」、柄層が50%取れたものを「△」、柄層が全部取れたものを「×」と評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
試験例2(耐汚染性)
市販の青インク(パイロット製)を脱脂綿に染み込ませ、これを塗膜上に24時間放置した。その後水洗し、塗膜の状態を目視にて観察した。塗膜に汚れが残らないものを「○」、やや汚れが残る程度のものを「△」、汚れが濃く残るものを「×」と評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例3
アクリル樹脂からなる原反に柄用プライマー(「オーデEVプライマー」ザ・インクテック製、塗工量2g/cm)を設け、柄層(「オーデAG」ザ・インクテック製、塗工量2g/m)を印刷した。その後、下記組成(プライマー組成)からなる電離放射線硬化型樹脂用プライマーを塗工し、プライマー層を形成した。次に、電離放射線硬化型樹脂(「WP−A」ザ・インクテック製、塗工量2g/m)を塗工し、200KV、4Mrad、酸素濃度200ppm以下の条件で電子線を照射することにより硬化させて印刷物を得た。次いで、ギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0052】
(プライマー組成)
・カルボキシル基含有ポリエステル系ウレタンエマルジョン(酸価20mgKOH/g、固形分44重量%):66重量部
・オキサゾリン基含有樹脂(「エポクロスWS700」日本触媒製、固形分25重量%):7重量部
・イソプロピルアルコール:3重量部
・水:10重量部
・ヘキシルジグリコール1重量部
・シリカ:3重量部
なお、上記組成では、カルボキシル基含有アクリルエマルジョン固形分100重量部に対してオキサゾリン基含有樹脂固形分が6.2重量部であった。
【0053】
実施例4
前記オキサゾリン基含有樹脂を2.3重量部(カルボキシル基含有アクリルエマルジョン固形分100重量部に対してオキサゾリン基含有樹脂の固形分が2.0重量部)としたほかは、実施例3と同様にして印刷物を作製した。次いで、ギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0054】
比較例5
前記オキサゾリン基含有樹脂を0重量部としたほかは、実施例3と同様にして印刷物を作製した。次いで、ギアオーブン(東洋精機製)で220℃にて30秒間加熱した。
【0055】
試験例3(耐エタノール性、ラビング)
脱脂綿にエタノールを染み込ませ、1500g荷重で塗膜を100回ラビングした後の塗膜の状態を目視で確認した。塗膜に外観上の変化がなかったものを「5」、若干の艶変化が認められたものを「4」、柄層が一部取れたがなお柄層が維持されているものを「3」、柄層のほとんどが取れたものを「2」、柄層が全部取れたものを「1」と評価した。その結果を表2に示す。
【0056】
試験例2(耐アルカリ性、滴下)
市販のアルカリ性住宅用合成洗剤(「マジックリン」花王製)を脱脂綿に染み込ませ、これを塗膜上に1時間放置した。その後塗膜の状態を目視にて観察した。柄層の脱色がないものを「○」、脱色があるものを「×」と評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シートにおける樹脂含有層を形成するために用いる樹脂組成物であって、
1)前記樹脂含有層は、180℃以上の熱処理に供されるものであって、
2)前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂及びオキサゾリン基含有樹脂を含有する一液型水性組成物である、
ことを特徴とする化粧シート製造用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂固形分10〜30重量%及びオキサゾリン基含有樹脂固形分0.2〜4.0重量%を含む、請求項1に記載の化粧シート製造用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂固形分100重量部に対し、オキサゾリン基含有樹脂固形分2重量部以上含む、請求項1又は2に記載の化粧シート製造用樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂の溶液又はエマルジョンと、オキサゾリン基含有樹脂の溶液とを混合する工程を含む方法により得られたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート製造用樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−84446(P2009−84446A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256565(P2007−256565)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】