説明

化粧シート

【課題】表面を正面視する場合を含めて、視認方向に応じて異なる絵柄を視認でき、正面視の場合に視認できる絵柄と斜視の場合に視認できる絵柄をそれぞれ独立に視認する。
【解決手段】表面に照射された光を乱反射する梨地面が形成された第1の表面部分aと、一方向への反射光が主に得られる表面が形成された第2の表面部分bと、他方向への反射光が主に得られる表面が形成された第3の表面部分cとを備え、第1の表面部分aにおける凸部の頂点を第2及び第3の表面部分と同一面上に形成し、第1の表面部分aと当該第1の表面部分以外の表面のコントラスト差によって、正面視による第1の視認絵柄が形成され、第2の表面部分bと第3の表面部分cのコントラスト差によって、斜視による第2の視認絵柄が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関するものであり、特には、車や家屋等の室内装飾、基材,機器,物品の表面装飾等に適した化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、基材,機器,物品の外観的付加価値を高めるために広く使用されており、特に、乗用車の車内装飾ではインパネやシートの高級感を高める目的等で各種の化粧シートが用いられている。
【0003】
この化粧シートとしては、凹凸面によるコントラストの違いによって絵柄を表すものが一般に知られているが、更に付加価値を高めるために、視認する方向によって異なる絵柄が視認できるものが提案されている。
【0004】
下記特許文献1には、表面に形成された複数の平行線状凸部と複数の平行線状凹部と、複数の平行線状凸部のうちの所定の凸部の第1側に突出して形成された第1画素部と、複数の平行線状凸部のうちの所定の凸部の第1側に突出して形成された第2画素部とを備え、第1画素部が集まって第1画像を形成し、第2画素部が集まって第2画像を形成し、第1画素部の表面は線状凸部から第1側に向かって下がる第1角度傾斜面を有し、第2画素部の表面は線状凸部から第2側に向かって下がる第2角度傾斜面を有するエンボス版が記載されている。
【特許文献1】特開2004−314344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術を採用してエンボス加工した化粧シートを形成すると、第1側から斜視した場合には第1の絵柄を見ることができ、第2側から斜視した場合には第2の絵柄を見ることができる。しかしながら、表面を正面から見た場合には、第1の絵柄と第2の絵柄が合成された画像が見えることになり、化粧シートに適用した場合に、最も頻繁に視認される正面視で意図する絵柄を視認できないという問題がある。
【0006】
これに対して、表面に照射される光を散乱する梨地面の表面と表面に照射される光を特定方向に反射する表面を形成して、その梨地面の表面部分と反射面の表面部分とのコントラスト差によって絵柄を形成することで、正面視の場合にも所定の絵柄を得ることが可能になる。
【0007】
しかしながら、この梨地面の表面部分を単に前述した従来技術に適用して、正面視の場合も含めてユニークな複数の絵柄が得られるように構成することを考えた場合には、斜視の場合に梨地面の表面部分が暗く見えてしまい、斜視の場合に視認できる絵柄に正面視の場合に視認できる絵柄が合成された状態になり、やはり、意図する絵柄を視認できないという問題が生じる。
【0008】
そして、前述したように合成された絵柄が視認される場合には、一つの絵柄から急に他の絵柄に変わる場合に得られる意外性が失われることになり、異なる絵柄を切り換えるという付加価値が十分に発揮できない問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、表面を正面視する場合を含めて、視認方向に応じて異なる絵柄を視認できるようにすること、正面視の場合に視認できる絵柄と斜視の場合に視認できる絵柄がそれぞれ合成されること無く視認できること、一つの絵柄から視認方向を変えるだけで急に他の絵柄に切り変わるようにすることで、高い意外性が得られ、異なる絵柄を切り換えるという付加価値を十分に発揮できること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明による化粧シートは、表面に照射された光を乱反射する梨地面が形成された第1の表面部分と、前記第1の表面部分以外の表面に形成され、一方向への反射光が主に得られる表面が形成された第2の表面部分と、前記第1及び第2の表面部分以外の表面に形成され、前記第2の表面部分における反射光の方向とは異なる他方向への反射光が主に得られる表面が形成された第3の表面部分とを少なくとも備え、前記第1の表面部分における凸部の頂点を他の表面部分と同一面上に形成し、前記第1の表面部分と当該第1の表面部分以外の表面のコントラスト差によって、正面視による第1の視認絵柄が形成され、前記第2の表面部分と前記第3の表面部分のコントラスト差によって、斜視による第2の視認絵柄が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、化粧シートを正面視した場合には、梨地面と非梨地面とのコントラスト差によって第1の表面部分に応じた第1の視認絵柄が形成される。正面視した場合には、第2の表面部分と第3の表面部分とは大きなコントラスト差を示さないので、第2の表面部分と第3の表面部分との境界線に応じた第2の視認絵柄は隠すことができる。
【0012】
また、化粧シートを斜めから見た場合には、第2の表面部分と第3の表面部分との反射方向の違いによるコントラスト差によって、第2の表面部分と第3の表面部分との境界線に応じた第2の視認絵柄が形成される。この際、第1の表面部分における凸部の頂点を他の表面部分と同一面上に形成しているので、斜めから見た場合に、第1の表面部分の存在を第2の表面部分と第3の表面部分との反射方向の違いによるコントラスト差によって隠すことができる。
【0013】
これによって、表面を正面視する場合を含めて、視認方向に応じて異なる絵柄を視認でき、正面視の場合に視認できる絵柄と斜視の場合に視認できる絵柄をそれぞれ独立に視認することができる。また、一つの絵柄から視認方向を変えるだけで急に他の絵柄に切り変わるようにできるので、高い意外性が得られ、異なる絵柄を切り換えるという付加価値を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係る化粧シートの構造を説明する説明図である。図1は、第1の表面部分a,第2の表面部分b,第3の表面部分cの境界を破線で示した平面図であって、図2は、その断面図である(同図(a)は、図1におけるX−X断面図、同図(b)は、拡大断面図)。ここに破線で示された絵柄は一例であって、特にこの絵柄に限定されることはなく、どのような絵柄を形成することも可能である。
【0015】
図示の例では、第1の表面部分aは、表面に照射された光を乱反射する梨地面が形成された表面部分であり、第2の表面部分bは、一方向への反射光が主に得られる表面が形成された表面部分であり、第3の表面部分cは、他方向への反射光が主に得られる表面が形成された表面部分である。
【0016】
第1の表面部分aは梨地面であって、それ以外の表面の非梨地面が第2の表面部分b及び第3の表面部分cになっている。第2の表面部分bと第3の表面部分cは、例えば、異なる方向性を有する凹凸面によって形成することができる。この場合には、凹凸面に形成される斜面(反射面)が第2の表面部分bと第3の表面部分cとで異なる方向に向くように形成されている(図2の例では、第2の表面部分bの直線的な凹凸方向に沿った断面が記載されている)。
【0017】
そして、第1の表面部分aとそれ以外の表面部分の境界によって第1の視認絵柄(ここでは「◎」の絵柄)が形成されており、第2の表面部分bと第3の表面部分cの境界によって第2の視認絵柄(ここでは「A」の絵柄)が形成されている。
【0018】
ここで重要な点は、図2(b)に示すように、第1の表面部分aにおける凸部の頂点が第2の表面部分b及び第3の表面部分cと同一面上に形成されていることである。第2の表面部分b及び第3の表面部分cを凹凸面とした場合には、第1の表面部分a,第2の表面部分b,第3の表面分cの各頂点が同一平面上に形成されることになる。
【0019】
このような実施形態に係る化粧シートを正面視した場合には、図3に示すように、第1の表面部分aとそれ以外の表面部分の境界によって形成される第1の視認絵柄のみが形成されることになる。これは、正面から見た場合には、第2の表面部分bと第3の表面部分cとは、反射方向に違いがあってもコントラストの違いとしては現れないからであり、正面視した場合には、第2の視認絵柄はほぼ完全に隠れた状態になる。
【0020】
一方、このような実施形態に係る化粧シートを斜視した場合には、図4に示すように、第2の表面部分bと第3の表面部分cの境界によって形成される第2の視認絵柄のみが形成されることになる。これは、斜めからみた場合には、反射方向の違いによって第2の表面部分bと第3の表面部分cでコントラストの違いが大きく現れて、第2の視認絵柄が浮き彫りにされることになるが、第1の表面部分aにおける凸部の頂点を第2の表面部分b及び第3の表面部分cと同一面上に形成することで、第1の表面部分aと第2の表面部分b、或いは第1の表面部分aと第3の表面部分cとのコントラスト差は、前述した第2の表面部分bと第3の表面部分cとのコントラスト差に比べて無視できるほど小さくなるので、第1の視認絵柄はほぼ完全に隠れた状態になり、第2の視認絵柄のみが形成されることになる。
【0021】
図示の例では、前述した非梨地面に第2の表面部分bと第3の表面部分cを形成しているが、これに加えて第4,第5の表面部分等を加えることができる。第4の表面部分を加える場合には、第2の表面部分と第3の表面部分と第4の表面部分とがそれぞれ異なる方向性を有する凹凸面にすることが有効である。その場合には、第2の表面部分と第3,第4の表面部分とのコントラスト差で一つの絵柄が視認でき、第3の表面部分と第2,第4の表面部分とのコントラスト差で一つの絵柄が視認でき、第4の表面部分と第2,第3の表面部分とのコントラスト差で一つの絵柄が視認できることになる。すなわち、異なる方向からの斜視で異なる絵柄が視認できることになる。
【0022】
このような実施形態によると、前述した特徴を有することで、表面を正面視する場合を含めて、視認方向に応じて異なる絵柄を視認でき、正面視の場合に視認できる絵柄と斜視の場合に視認できる絵柄をそれぞれ独立に視認することができる。また、一つの絵柄から視認方向を変えるだけで急に他の絵柄に切り変わるようにできるので、高い意外性が得られ、異なる絵柄を切り換えるという付加価値を十分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの構造を説明する説明図。
【図2】本発明の実施形態に係る化粧シートの構造を説明する説明図(同図(a)は、図1におけるX−X断面図、同図(b)は、拡大断面図)。
【図3】本発明の実施形態に係る化粧シートを正面視した場合の視認絵柄を示した説明図。
【図4】本発明の実施形態に係る化粧シートを斜視した場合の視認絵柄を示した説明図。
【符号の説明】
【0024】
a 第1の表面部分
b 第2の表面部分
c 第3の表面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に照射された光を乱反射する梨地面が形成された第1の表面部分と、
前記第1の表面部分以外の表面に形成され、一方向への反射光が主に得られる表面が形成された第2の表面部分と、
前記第1及び第2の表面部分以外の表面に形成され、前記第2の表面部分における反射光の方向とは異なる他方向への反射光が主に得られる表面が形成された第3の表面部分とを少なくとも備え、
前記第1の表面部分における凸部の頂点を他の表面部分と同一面上に形成し、
前記第1の表面部分と当該第1の表面部分以外の表面のコントラスト差によって、正面視による第1の視認絵柄が形成され、
前記第2の表面部分と前記第3の表面部分のコントラスト差によって、斜視による第2の視認絵柄が形成されることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第2の表面部分は一方向に方向性を有する凹凸面であり、前記第3の表面部分は他方向に方向性を有する凹凸面であることを特徴とする請求項1の化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302656(P2008−302656A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153978(P2007−153978)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)