説明

化粧シート

【課題】従来と同等の意匠性を有しつつ、化石資源由来材料の使用割合を低減した化粧シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも着色熱可塑性樹脂層と絵柄インキ層とを具備する化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層中に着色剤としてリグニンを含むことを特徴とする。これにより、エネルギー以外の有効な利用方法が求められているリグニンを化粧シート基材の着色剤として有効利用できるほか、化粧シートにおける化石資源由来材料の使用割合を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築物のドアや枠材等の建築部材の表面装飾等に用いられる化粧シートのうち、特に熱可塑性樹脂を主成分とする化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、主に建築物のドアや枠材等の建築部材の表面装飾として、熱可塑性樹脂を主成分とする化粧シートを用いることが多くなってきた。係る樹脂系の化粧シートとしては、絵柄の印刷を熱可塑性樹脂フィルム基材の表面側又は裏面側に施した単層構成の化粧シートと、熱可塑性樹脂フィルム基材に印刷された絵柄層上にさらに透明樹脂層が積層された複層構成の化粧シートとがある。
【0003】
前記化粧シートのフィルム基材や透明樹脂層の構成材料としては従来、安価で加工適性や物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が多用されてきた。しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は廃棄・焼却されると有害な塩素化合物を発生するおそれがあり、近年ではポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等を使用した化粧シートも提案されている(特許文献1、2参照)。これらの樹脂系からなる化粧シートならば、焼却されても有害なガスを発生することはなく、環境への負荷を低減することができる。
【0004】
しかしながら近年、大気中の二酸化炭素の削減、石油等の化石資源の節約が求められるとともに、植物由来材料の使用が求められるようになってきた。化粧シートも例外ではなく、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等の化石資源由来材料の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−79830号公報
【特許文献2】特開平7−24979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、従来と同等の意匠性を有しつつ、化石資源由来材料の使用割合を低減した化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、少なくとも着色熱可塑性樹脂層と絵柄インキ層とを具備する化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層中に着色剤としてリグニンを含むことを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
リグニンは特に木材中に豊富に含まれており、材種によっても異なるが、その含有量は木材全成分に対しておおよそ20〜30重量%程度である。リグニンは特にパルプの製造工程において多量に発生する。即ち、パルプ製造工程では水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを含む薬液で木材チップを蒸解し、木材繊維からなるパルプを回収するが、パルプ回収後の廃液を濃縮したものは黒液と呼ばれ、多量のリグニンが含まれている。黒液を酸で中和することにより容易にリグニンを得ることができる(こうして得られたリグニンのことをクラフトリグニンと言う)が、一般的にパルプ製造工場において黒液は回収ボイラーにて燃焼され、リグニンはエネルギーとして利用されているのが現状であり、エネルギー以外の有効な利用方法が求められている。
【0009】
請求項1記載の発明により、リグニンを化粧シート基材の着色剤として有効利用できるほか、化粧シートにおける化石資源由来材料の使用割合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】本発明の化粧シートの他の実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明におけるもっとも基本的な構成は、図1に示すように、着色熱可塑性樹脂層1上に、絵柄インキ層2が積層されてなる積層体である。
【0012】
着色熱可塑性樹脂層1は化粧シートの基材となるものであり、用いられる熱可塑性樹脂としては、価格や使い勝手等を勘案して任意に選択することができる。特にポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が好適であるが、その他にも、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン等も用いることができる。また必要に応じて、これらの材料を組み合わせて多層にして使用しても良い。
【0013】
本発明は、着色熱可塑性樹脂層1中に着色剤としてリグニンを含むことを特徴とする。使用するリグニンとしては特に制限はないが、前述したクラフトリグニンを用いるのが最も簡便である。また、一般的に化粧シートは木目柄が多いため、着色熱可塑性樹脂層1は茶系色に着色されるのが普通であるが、クラフトリグニンは濃茶色をしているため、茶系色を表現するのに適している。着色熱可塑性樹脂層1へのリグニンの添加量は、所望する色を得るために適宜調整することができ、特に制限はない。また、着色熱可塑性樹脂層1にはリグニン以外にも公知の各種顔料を添加しても良く、その色や配合比率は隠蔽の度合いや意匠性等を鑑みて任意に決められるものであり、特に制約はない。
【0014】
着色熱可塑性樹脂層1の製造方法としては、Tダイ押出法、カレンダー法等の公知の製膜法を用いることができる。着色方法としては、リグニン及びその他の顔料を分散助剤や界面活性剤で処理した微粉末状の着色剤を使用するドライカラー法、熱可塑性樹脂と高濃度のリグニン及びその他の顔料を溶融混練して予備分散したマスターバッチペレットを作製し、ホッパー内で着色のされていない熱可塑性樹脂とドライブレンドするマスターバッチ法等があり、特に限定されるものではない。
【0015】
絵柄インキ層2は化粧シートに木目柄等の意匠性を付与するため、あるいはベタ着色で着色熱可塑性樹脂層1を隠蔽するために設けられる。絵柄インキ層2の形成方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷技法を用いて着色熱可塑性樹脂層1の表面に印刷するのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また用いられるインキも公知のもの、すなわちビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔剤を添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、希釈剤等で充分に希釈、攪拌してなるものでよい。
【0016】
また本発明においては、図2に示すように絵柄インキ層2上に透明樹脂層3を適宜積層しても良い。透明樹脂層3を設ける目的としては、化粧シートの意匠性向上や絵柄インキ層2の保護、表面の耐摩耗性、耐薬品性、耐傷性及び耐候性の付与等が挙げられる。透明樹脂層3に用いる材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン等の熱可塑性樹脂を用いることができるが、なかでもポリプロピレンあるいはポリエチレンテレフタレートが好適である。透明樹脂層3には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を添加することができる。
【0017】
絵柄インキ層2上に透明樹脂層3を積層する方法としては、熱及び圧力をかけて貼り合わせる熱ラミネーション法、接着剤を介して貼り合わせるドライラミネーション法あるいはウェットラミネーション法、透明樹脂層3に用いる樹脂をTダイから溶融押出ししながら貼り合わせる押出ラミネーション法の他、ニーラムラミネーション法、サンドラミネーション法などの手法があり、透明樹脂層3に用いる樹脂により適宜選択すれば良い。例えば、透明樹脂層3としてポリプロピレンを用いる場合は押出ラミネーション法またはドライラミネーション法が好適であり、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合はドライラミネーション法が好適である。
【0018】
そのほかに、必要に応じて表面保護層4を適宜積層しても良い。表面保護層4の材質は、耐候性、耐摩耗性、耐傷性、耐薬品性等の諸物性に加えて、透明樹脂層3との密着性が充分に得られれば特に規定されるものではなく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等から適宜選択できる。硬化方法に関しても、1液硬化タイプ、硬化剤を用いる2液硬化タイプ、あるいは活性エネルギー線照射による硬化タイプ等から適宜選択できる。また表面保護層4には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、減摩剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を加えても良い。表面保護層4の厚さは3〜15μmが好適である。表面保護層4を設ける方法としては、グラビアコート、リバースコート、グラビアリバースコート、ダイコート、フローコートなど、公知の各種コート方式が利用可能である。
【0019】
そのほかに、本発明の化粧シートと、木質系ボード類、無機系ボード類、あるいは金属板等との密着強度を向上させるために、必要に応じて着色熱可塑性樹脂層1の裏面にプライマー層5を設けても良い。このプライマー層5に関しては、着色熱可塑性樹脂層1との充分な密着強度が得られており、かつ木質系ボード類、無機系ボード類、金属板等との積層時に用いられる接着剤との密着性が得られるものであれば特に規定されるものではないが、ポリウレタン系のものを使用するのが好適である。
【実施例1】
【0020】
着色熱可塑性樹脂層1に用いる着色剤として、クラフトリグニン10重量部、二酸化チタン20重量部、炭酸カルシウム30重量部、ポリプロピレン樹脂40重量部を溶融混練してマスターバッチペレットを作製した。前記マスターバッチペレット50重量部とポリプロピレン樹脂50重量部とをホッパー内でドライブレンドしつつ、Tダイから250℃にて押出し製膜することにより、厚み70μmの着色熱可塑性樹脂層1を得た。該着色熱可塑性樹脂層1上に、グラビア印刷法により絵柄インキ層2として木目柄模様を施した。
【0021】
前記絵柄インキ層2上に、ウレタン変性ポリエステルポリオール80重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート10重量部、イソホロンジイソシアネート10重量部を混合してなる2液硬化型のアンカーコート剤を、グラビアコート法を用いて厚み1μmとなるように塗布した。続いて透明ホモポリプロピレン樹脂を押出しラミネート法により厚み80μmとなるように積層して透明樹脂層3とし、さらに表面保護層4として2液硬化型ウレタン系表面保護剤(DIC(株)製「UCクリヤー」)を厚み6μmとなるように塗布して本発明の化粧シートを得た。
【0022】
以上のようにして得られた化粧シートは、優れた意匠性を有しつつ、植物由来材料であるリグニンを有効利用したものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、主に建築物のドアや枠材等の建築部材の表面装飾等に用いられる化粧シートのうち、特に熱可塑性樹脂を主成分とする化粧シートに利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…着色熱可塑性樹脂層
2…絵柄インキ層
3…透明樹脂層
4…表面保護層
5…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色熱可塑性樹脂層と絵柄インキ層とを具備する化粧シートにおいて、前記着色熱可塑性樹脂層中に着色剤としてリグニンを含むことを特徴とする化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201740(P2010−201740A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48677(P2009−48677)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】