説明

化粧シート

【課題】優れたツヤ調整による意匠を有しつつも、表面の対汚染性、対傷付き性など各種耐性を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】着色樹脂層上に絵柄模様層、透明樹脂層、ツヤ調整層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、前記ツヤ調整層がウレタン系樹脂を主剤として不定形無機化合物粒子を含有してなるものであり、前記表面保護層がシリコーンを含有したウレタン系樹脂を主剤として平均粒径1〜2μmの球状無機化合物粒子を1〜3重量%含有してなるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築材の内外装に用いる化粧シートに関するものであり、特にはテーブル、食卓、キッチン等の水平面用途であって、グロス/マット調のツヤ調整による意匠性を有し、かつ表面の各種耐性に優れた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
前記用途の化粧シートの構造としては、下地となる着色樹脂上に絵柄模様層を設け、各種耐性を付与するための透明樹脂層、表面保護層を設けたものが知られている。着色樹脂層や透明樹脂層としては、近年の環境問題を重視する傾向から塩化ビニル系樹脂ではなく複合オレフィン系樹脂フィルムなどが好適に用いられている。絵柄模様層としては木目等の意匠をグラビア印刷によりインキ層として設けたものが多いが、抽象柄といわれる幾何学模様を表現したものもある。
【0003】
このような化粧シートにグロス調/マット調となるツヤを調整するためのツヤ調整層を適宜設けることが可能である。このようやツヤ調整層としては、絵柄模様層の上に設けて、適量の添加剤を添加した樹脂を、塗布厚を調整して塗布することで絵柄模様層を視認できる程度に化粧シートのツヤを調整することが可能となる。
【0004】
しかし、このようなツヤ調整層が表面側に設けられると、表面に添加剤が浮き出る影響で化粧シート表面の対汚染性、対傷付き性などに問題あるものとなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、優れたツヤ調整による意匠を有しつつも、表面の対汚染性、対傷付き性など各種耐性を有する化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、着色樹脂層上に絵柄模様層、透明樹脂層、ツヤ調整層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、前記ツヤ調整層がウレタン系樹脂を主剤として不定形無機化合物粒子を含有してなるものであり、前記表面保護層がシリコーンを含有したウレタン系樹脂を主剤として平均粒径1〜2μmの球状無機化合物粒子を1〜3重量%含有してなるものであることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、ツヤ調整層と表面保護層に添加する無機化合物粒子の種類を異なるものとし、さらに表面保護層にシリコーンを添加することで、表面の対汚染性、対傷付き性など各種耐性を有するとともにツヤ調整による優れた意匠を有するものとなる。また、ツヤ調整層と表面保護層の層間強度も強く製造も容易な化粧シートを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。着色樹脂層1の上に絵柄模様層2、透明樹脂層3、ツヤ調整層4、表面保護層5を設けてなる。
【0009】
本発明における着色樹脂層1としては、熱可塑性樹脂からなり、適宜顔料、酸化防止剤や耐候性処方を施したフィルムであるのが好適である。熱可塑性樹脂自体は、特に原材料を問わない。例えば、アクリルフィルム、オレフィン系フィルム、塩化ビニル系フィルム、ポリエステル系フィルム、エチレンビニルアセテートフィルム、ポリイミドフィルム、などが挙げられる。またフィルムによっては本発明の化粧シートを木質材料に接着することを想定し、接着性向上のために裏面にプライマー処理を施すことも必要に応じて行えばよい。厚さは、とくに限定されるものではないが、10〜300μm程度が最も汎用的に用いられる。
【0010】
本発明における絵柄模様層2としては、絵柄を形成するのはインキであり、顔料およびバインダーは適宜選定すればよい。フィルムとの接着性を考慮し、適宜原材料を選定すればよい。例えば、イソシアネート硬化剤と活性水素を有したバインダーを混合させた塗工液が、接着性の点では優位である。絵柄模様層を施す方法は、従来から行われているグラビア印刷が好適であるが、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などとくに印刷手法は問わない。
【0011】
本発明における透明樹脂層3としては、熱可塑性樹脂フィルムであればとくに限定されるものではない。オレフィン系フィルムや塩化ビニル系フィルム、非晶質ポリエステルフィルムに関しては、加熱軟化による各種加工適性を有しているので好適である。厚さは限定されるものではないが、10μm〜300μmが好適である。前記絵柄模様層2を設けた着色樹脂層1と透明樹脂層3とを積層する方法はとくに限定するものではなく、選択された樹脂やインキに応じて適宜積層すればよい。例えば塩化ビニルフィルムに塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂系インキで印刷された場合には、透明塩化ビニルとは熱圧で積層すればよい。また、オレフィン系フィルムにウレタン系インキにて印刷されている場合は、ウレタン系のドライラミネート接着剤で、透明印刷オレフィンフィルムと積層すればよい。
【0012】
本発明におけるツヤ調整層4としては、ウレタン系樹脂を主剤として、不定形無機化合物粒子を含有している。ウレタン系樹脂としては、不定形無機化合物粒子の脱落を防ぎ塗膜中に保持できる様な、適度の柔軟性が要求されるアクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応生成物で、アクリルウレタン樹脂を使用することが望ましい。
【0013】
前記アクリルポリオールとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリレートモノマーに、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じてこれらと共重合可能な、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の重合性モノマーとを共重合させてなる、アクリル骨格を主鎖とし、側鎖に水酸基を有するポリマーである。
【0014】
前記イソシアネート化合物としては、たとえはトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が用いられ、適宜選定すればよい。
【0015】
前記不定形無機化合物粒子としては、シリカやアルミナなどの無機酸化物が好適に用いられ、粒子形状としては球状粒子で無ければよく、鱗片状、多角形状など適宜使用可能であるが、特に限定されるものではない。球状粒子であるとツヤ調整の効果が十分に発現できず、また添加量が好適な範囲でのツヤ調整が困難なものとなる。平均粒径は、不定形であると測定が困難であるが、おおよそ外形の最大直径部分と最小直径部分の平均として考えればよく、粒子全体としての平均が3〜10μmのものが用いられる。これより外れると添加量が好適な範囲でのツヤ調整が困難なものとなる。
【0016】
本発明における表面保護層5としては、前記シリコーンを含有したウレタン系樹脂を主剤として平均粒径1〜2μmの球状無機化合物粒子を1〜3重量%含有してなるものが用いられる。
【0017】
前記シリコーンを添加したウレタン系樹脂としては、シリコーン成分を表層に出ていればよく、方法は特に問わないが、例えば、前記ウレタン系樹脂にシリコーンオイルを添加して、表面上にブリードさせることで、耐汚染性を有する表面保護層を作成することができる。また、前記ウレタン樹脂を成形する際に用いる、アクリルポリオールの側鎖にオルガノポリシロキサン基が導入し、ポリイソシアネート化合物と架橋させることで、シリコーン変性アクリルウレタン層を作成することでも、耐汚染性を有する表面保護層を作成することができる。
【0018】
前記平均粒径1〜2μmの球状無機化合物粒子としては、珪素化合物であることが望ましく、水和性があればシリコーン変性樹脂との相性が低下しやすい。添加量は1〜3重量%の範囲が好適であり、表面保護層の厚みはこれら粒径と添加量とにより調整すればよい。
【0019】
また、ツヤ調整層4及び表面保護層5にはそのほかに、耐候性の処方を行うため、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系など)やヒンダードアミン系光安定剤を適宜添加する。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%である。
【0020】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール,2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0021】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0022】
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体が挙げられる。またイソシアネート添加による架橋によって、樹脂成分と結合を望めるため、紫外線吸収剤は水酸基を有したものが適している。
【0023】
また、樹脂自体の光・熱・水などによる劣化を防止するため、ヒンダードアミン系光安定剤を適宜添加する。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【実施例1】
【0024】
着色樹脂層として、厚さ70μmの着色ポリオレフィン系フィルムの上に、2液硬化型ウレタン樹脂系グラビアインキで木目柄の絵柄模様層と、2液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤介して、透明樹脂層としての厚さ80μmの透明ポリオレフィン系樹脂を共押出しにより積層し、押出しと同時に表面に導管柄のエンボスを施した。
【0025】
前記透明樹脂層の上に、ツヤ調整層として、アクリルポリオール100重量部、イソシアネート硬化剤5重量部、艶消し剤として不定形シリカ2.5重量部を配合した塗工液をグラビアコートにて乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗工した。
【0026】
前記ツヤ調整層の上に、保護層としてアクリルポリオール100重量部、イソシアネート硬化剤5重量部、シリコーンオイル3重量部、平均粒径2μmの球状シリカ2重量部を配合した塗工液をグラビアコートにて乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗工して化粧シートを得た。
【0027】
<比較例1>
前記実施例1において、保護層に無機化合物のシリカを添加しなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0028】
<比較例2>
前記実施例1において、保護層に添加する球状シリカの平均粒経を6μmのものを用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0029】
<化粧板作成>
厚み2.7mmのMDF(中密度繊維板)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(「BA−10L」と「BA−11B」を100重量部:5重量部で混合)をウエット状態で70g/mに塗工したあと、ラミネータにて前記化粧シート実施例1、比較例1、比較例2と貼り合わせ、化粧板を得た。
【0030】
<性能評価方法>
性能評価は、各実施例及び比較例で得た化粧版について、マジックインキ拭き取り、耐スチールウール性にて評価した。
【0031】
<マジックインキ拭き取り>
化粧板の表面に黒色速乾性インキ(速乾性筆記具<JIS S 6037(1964)に定めたもの>)で幅10mmの線を引き、1分間放置した後、ティッシュペーパーで空拭きした。その工程を5回行った後、目視にてマジックの拭き取り具合を確認した。○:マジック残り無し、×:マジック残りありで評価
【0032】
<耐スチールウール試験>
化粧板の表面に50g荷重のスチールウール(#0000)にて20往復させる。その後、目視にて傷の付き具合を確認する。○:傷無し、×:傷有りで評価。
以上の結果を表1にまとめる。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の化粧シートは、特にテーブル、食卓、キッチン等の水平面用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1…着色樹脂層
2…絵柄模様層
3…透明樹脂層
4…ツヤ調整層
5…表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色樹脂層上に絵柄模様層、透明樹脂層、ツヤ調整層、表面保護層を少なくともこの順に設けてなる化粧シートにおいて、前記ツヤ調整層がウレタン系樹脂を主剤として不定形無機化合物粒子を含有してなるものであり、前記表面保護層がシリコーンを含有したウレタン系樹脂を主剤として平均粒径1〜2μmの球状無機化合物粒子を1〜3重量%含有してなるものであることを特徴とする化粧シート。





【図1】
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【公開番号】特開2010−69850(P2010−69850A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243121(P2008−243121)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】