説明

化粧シート

【課題】環境負荷低減のため、ポリ乳酸系樹脂を用いた化粧シートを開発するにあたり、化粧シートのバイオマス比率を上げ、かつ、従来の石油系プラスチックによる化粧シートと同程度の性能を付与した化粧シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂シート基材1が少なくともポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなり、それぞれが連続層の構造をとる共連続構造であること、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂、(C)変性層状珪酸塩からなり、(A)が30から70重量%、(B)が30から70重量%、(C)が3から10重量%からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用するための化粧シートに関するものであり、さらに詳しくは、植物由来プラスチックのポリ乳酸系樹脂を基材シート原料とし、焼却時にも有毒ガスを発生せず、地球環境と人体に優しい化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
係る樹脂系の化粧シートとしては、絵柄の印刷を熱可塑性樹脂シート基材の表面側又は裏面側に施した単層構成の化粧シートと、絵柄層をその裏面側の熱可塑性樹脂シート基材と表面側の透明樹脂層との間に挟持した複層構成の化粧シートとがある。前者は構造が単純なので安価かつ簡便に製造可能である利点があり、後者は製造面や価格面からはやや不利ではあるが、絵柄が表裏両面から保護されているので、絵柄の耐磨耗性や耐溶剤性、耐候性等の表面物性と、被貼着基材への接着時に使用する接着剤に対する耐性とを兼ね備え、また意匠面からも、基材シートの着色による高隠蔽化と、透明樹脂層へのエンボス加工による高意匠化とを両立できる等、性能面では多くの利点がある。係る関係により、両者は用途により要求される性能や価格に応じて使い分けられている。
【0003】
従来この種の化粧シートに使用される熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが該化粧シートの基材シート又はその基材シート表面の透明樹脂層などとして使用される。なかでも塩化ビニル樹脂を用いた化粧シートは、印刷適正、高意匠性、下地基材との接着性の点などに優れ広く用いられてきたが、焼却時の発生ガス等の環境問題から、ポリオレフィン樹脂による化粧シートが開発され、提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
ポリ乳酸は、とうもろこしなどのバイオマス原料から大量生産可能なバイオマス材料として注目されており、昨今の環境問題への関心の高まりを受け、生産プラントの整備などによりコスト的にも従来の石油由来プラスチックへの代替として期待されている。ポリ乳酸の特徴として、融点が約170℃と比較的高く、また、高い透明性や高い弾性率などの長所を持つが、ガラス転移温度以上の環境下での軟質化に起因する耐熱性、加水分解による物性低下、耐溶剤性などの短所を併せ持つ材料である。
【0005】
環境負荷低減のため、ポリ乳酸の化粧シート材料としての検討が進められてきたが、上記問題点によりポリ乳酸単体での検討は困難である。例えば、特許文献2にはポリ乳酸系樹脂からなる樹脂基材シートに装飾処理を施した化粧シートが開示されているが、これらの処方を用いた場合では、絵柄印刷のためのインキとの密着性、木質系材料などの下地材との接着性改善のためのプライマー層との密着性、脆性的な物性による耐衝撃性、化粧シートとして求められる耐湿、耐熱などの各種耐候性などを満たすことができない。
【0006】
高分子材料の改質手法として、他高分子材料とのアロイによる改質が広く用いられており、ポリ乳酸に関しても、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂とのアロイなどが検討されている。ポリマーアロイによる改質において、なるべく相溶性のよい組合せが効果的であるが、この点からポリ乳酸とポリオレフィン系樹脂は相溶性が悪く、いわゆる非相溶の組合せであり、単純にポリ乳酸とポリオレフィンをブレンドすることによる大きな改質効果は期待できない。例えば、特許文献3にはポリ乳酸にオレフィン樹脂を配合する検討が開示されているが、これらの処方を用いた際にも化粧シートとしての性能を得ることはできない。
【0007】
バイオマス材料を用いることに関して社会法人日本有機資源協会(JORA)において、バイオマス材料を用いた商品に関してはバイオマスマークの認定を行っている。バイオマスマークとは、バイオマス材料を利活用して生産された商品にバイオマスマークを付することにより、バイオマス商品への利活用を消費者に知らせ、これらの商品を普及させることにより、バイオマス材料の利用を促進して、自然の恵みで持続的に発展可能な社会構築に貢献することを目的としている。これらの状況からも分かるように、化粧シートにおけるバイオマス材料比率をできるだけ高くすることは、地球環境への負荷を考えても非常に重要であり、バイオマスマークを取得することで消費者に対して付加価値として認識されることを考えると、今後必要な検討項目である。
【特許文献1】特開2001−353828号公報
【特許文献2】特開平11−129426号公報
【特許文献3】特開平9−316310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術における以上の様な問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、環境負荷低減のため、ポリ乳酸系樹脂を用いた化粧シートを開発するにあたり、化粧シートのバイオマス比率を上げ、かつ、従来の石油系プラスチックによる化粧シートと同程度の性能を付与した化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなる連続層の構造をとる、共連続構造であることを特徴とする化粧シートである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂、(C)変性層状珪酸塩からなり、(A)が30から70重量%、(B)が30から70重量%、(C)が3から10重量%の配合比からなり、(A)、(B)、(C)の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなる連続層の構造をとる、共連続構造であることにより、化粧シートのバイオマス比率を上げることができ、かつ、ポリ乳酸の欠点である、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性などの問題を引き起こすことのない、十分な物性の化粧シートを得ることが可能となる。
【0013】
本発明において、熱可塑性樹脂シート基材がポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂が共連続構造を形成していることが特徴であり、必要である。共連続構造とは各成分がどちらとも連続層を形成し相互に入り組んだ構造である。例えば、「ポリマーアロイ 基礎と応用(P.325)」(高分子学会編:東京化学同人)に模式図が記載されている。熱可塑性樹脂シート基材がポリ乳酸系樹脂単体より構成される場合には、前述のポリ乳酸の問題点により、化粧シートとしての必要物性を得ることが出来ない。また、ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とのポリマーアロイを考えた場合、例えば、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂がいわゆる海島構造の相構造をとった場合には、ポリ乳酸系樹脂層とポリオレフィン樹脂層との界面での応力集中での剥離に起因して、熱可塑性樹脂シート基材の引裂き性が悪いという問題点を引き起こす。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂、(C)変性層状珪酸塩からなり、(A)が30から70重量%、(B)が30から70重量%、(C)が3から10重量%の配合比からなり、(A)、(B)、(C)の合計が100重量%であることであり、配合比がこの範囲にあることにより、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂が共連続構造をとることができる。共連続構造の形成要因としては、ポリマーアロイにおける組成比(配合比)、各成分の溶融粘度比、成形条件等により決まるが、上記範囲をはずれ、どちらかの樹脂配合比が多い場合には、熱可塑性樹脂シート基材の層構造としては海島構造となり、本発明による効果を得ることができない。また、本発明において層状珪酸塩を添加することが特徴であり、層状珪酸塩を添加することで、安定した共連続構造を得ることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含むことにより、化粧シートとして要求される適度な柔軟性、耐磨耗性、耐傷性、耐熱性、耐薬品性、後加工性等を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の化粧シートの一例の積層構造を示す模式断面図である。図1に示す例では、本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂シート基材1はポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなり、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂がともに連続層の共連続構造を有している。熱可塑性樹脂シート基材上に絵柄インキ層2、透明熱可塑性樹脂層5および表面保護層6が順次積層されて構成されるものである。
【0018】
ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいても構わない。他の共重合成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、テレフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、プロピオラクトンなどのラクトン類が挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体や、これらを接着性の向上の目的で酸変性したもの、あるいはアイオノマー等から適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。中でも、化粧シートとして要求される適度な柔軟性、耐磨耗性、耐傷性、耐熱性、耐薬品性、後加工性等を備え、なおかつ安価で提供される点から、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が最も適している。
【0020】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリ乳酸系樹脂との界面の自由エネルギーを低下させ、共連続構造の形成を容易にするため、相用化剤として、マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト共重合または末端変性させたポリオレフィン系樹脂のような、酸変性した変性ポリオレフィン系樹脂を添加することが好適である。
【0021】
熱可塑性樹脂シート基材を構成するポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン系樹脂分含む)の配合比としては、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂、(C)変性層状珪酸塩からなり、(A)が30から70重量%、(B)が30から70重量%、(C)が3から10重量%の配合比からなり、(A)、(B)、(C)の合計が100重量%であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の配合比が少ない場合には、本発明の目的である化粧シートのバイオマス比率が低くなり、差別化が難しくなる。また、ポリ乳酸系樹脂もしくはポリオレフィン系樹脂の配合比率が上記範囲を外れた場合には、共連続構造を形成することが困難となり、ポリ乳酸系樹脂の耐熱性、耐溶剤性などの欠点を改質する効果が得られない。層状珪酸塩の添加量に関して、上記範囲より少ない場合には、安定した共連続構造を得るという効果が得られず、また、多い場合には該熱可塑性樹脂シート基材の機械物性低下や、成形性の低下などの不具合をともなう。
【0022】
一般に相溶しない2種類のポリマー成分A、Bからなるポリマーブレンド(例えば本発明におけるにポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂)では、配合比によりその相構造は変化し、Aが連続層、Bが分散相となる海島構造、逆にAが分散相、Bが連続層の海島構造を形成するが本発明ではA、Bともに連続相となる共連続構造を形成することが必要である。共連続構造となることで、海島構造に比べ、優れた機械物性を得ることが可能となり、具体的には本発明における化粧シートに用いた場合、ポリ乳酸とポリオレフィンの界面で発生するクレーズ生成にともなうシート基材の引裂き性の問題を改善できるとともに、ポリ乳酸単体での問題点である、耐熱性、耐加水分解性などを改選できるともに、化粧シートとしての十分な柔軟性の付与が可能である。
【0023】
本発明に用いられる層状珪酸塩としては、層間に有機カチオンを含有していることが好ましい。層状珪酸塩が有機カチオンを含有することで、層間への樹脂の挿入あるいは層間剥離が容易となり、樹脂中への微分散が可能となり目的とする熱可塑性樹脂シート基材の共連続構造形成の安定化を達成することができる。なお、有機カチオンとしては、1級ないし3級アミン塩、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0024】
共連続構造を形成させる手法としては、溶融混練による方法を用いることができ、単軸押出機または2軸押出機内でポリ乳酸系樹脂およびポリオレフィン系樹脂を溶融混練し、押出機内で相溶化する条件で混練した樹脂を、吐出後に冷却することでスピノーダル分解による共連続構造を固定する。溶融混練時に層状珪酸塩を添加することで、共連続構造を安定して得ることが可能となり、また、溶融混練におけるせん断応力を、押出機スクリュー設計や、せん断速度により制御することにより、共連続構造のサイズをコントロールすることができる。
【0025】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂に関しては、本発明の目的を損なわない範囲において、ポリ乳酸系樹脂の末端封鎖による耐加水分解処理を行うことができる。耐加水分解処理をすることにより、化粧シートとしての耐湿性を向上させることが可能となる。末端封鎖剤としては、ポリ乳酸のカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に限定されるものではなく、一般的なポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。
【0026】
このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ化合物、N、N´−ジ−2、6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2、6、2′、6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物、2、2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2、2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)などのオキサゾリン化合物、オキサジン化合物から選ばれる少なくとも一種または二種以上の化合物を任意に選択して使用することができる。
【0027】
熱可塑性樹脂シート基材には、目的の化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。これらの添加剤として具体的には、以下に示す添加剤を使用することができる。
【0028】
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等が使用可能である。紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等が使用可能である。光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等が使用可能である。熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等が使用可能である。可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等が使用可能である。滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等が使用可能である。帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等が使用可能である。難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等が使用可能である。充填剤としては例えば炭酸カルシウム、滑石、蝋石、カオリン等が使用可能である。以上から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用することができる。
【0029】
上記の他、熱可塑性樹脂シート基材1を構成する熱可塑性樹脂に、適宜の有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を添加することによって、熱可塑性樹脂シート基材1を着色することもできる。特に、用途により化粧シートが隠蔽性を必要とする場合には、隠蔽性顔料を使用して熱可塑性樹脂シート基材1を隠蔽性とすることが好ましい。隠蔽性顔料とは、分散媒たる熱可塑性樹脂と比較して高屈折率の顔料であり、屈折率の高さや耐候性、耐薬品性等の面から、例えば酸化チタン系顔料や酸化鉄系顔料等の無機顔料を少なくとも使用することが好ましい。勿論、熱可塑性樹脂シート基材1自体を隠蔽性とする替わりに、隠蔽性顔料等を含有する印刷インキ又はコーティング剤等からなる隠蔽ベタ層を設けても良いし、両者を併用することもできる。
【0030】
熱可塑性樹脂シート基材1の製造方法には特に制限はなく、Tダイ押出法、インフレーション成形法およびカレンダー成形法などの公知の方法で製膜することができる。また、熱可塑性樹脂シート基材1の厚さには特に制限はなく、従来の一般の化粧シートの基材シートと同様の厚さのものを使用することができる。具体的には、化粧シートの用途や樹脂の種類にもよるが、50〜200μm程度の範囲から選ばれるのが一般的である。
【0031】
また、熱可塑性樹脂シート基材1には、木質系基材などの下地材と接着させる面に必要に応じてプライマー層8が設けられる。プライマー層8としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等、従来公知の易接着性プライマー剤から任意に選択して使用すれば良い。また、プライマー層8に例えばシリカ等の無機質微粉末を添加して粗面化しておくと、化粧シートの巻取保存中のブロッキングの防止や、投錨効果による接着性の向上などに有効である。
【0032】
絵柄インキ層2は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄の意匠性を付与する目的で設けられるものであって、その絵柄の種類には特に制限はなく、例えば木目柄、石目柄、抽象柄、単色無地等、従来の化粧シートの場合と同様の各種の絵柄を採用することができる。絵柄インキ層2の構成材料や形成方法にも特に制限はなく、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる、印刷インキ又はコーティング剤等を、適宜の印刷方法又はコーティング方法によって印刷又は塗工して設けることができる。
【0033】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0034】
また、前記結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0035】
また、前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合溶剤等を使用することができる。
【0036】
絵柄インキ層2の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらの方法を複数組み合わせて行うことも勿論可能である。
【0037】
熱可塑性樹脂シート基材1/絵柄インキ層2と積層される、透明熱可塑性樹脂層5は、必ずしも厳密な意味での透明に限定されるものではなく、半透明や着色透明等であっても良い。樹脂材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール等の公知の熱可塑性樹脂が使用できるが、中でもポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体や、これらを接着性の向上の目的で酸変性したもの、あるいはアイオノマー等から適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。中でも、化粧シートとして要求される適度な柔軟性、耐磨耗性、耐傷性、耐熱性、耐薬品性、後加工性等を備え、なおかつ安価で提供される点から、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が最も適している。また、前記熱可塑性樹脂シート基材に用いるポリオレフィン系樹脂と同系統の樹脂とすることで、積層体の接着性、耐候試験環境下におけるシート挙動が類似することにより、化粧シートのデラミ等の問題を防ぐことが可能となる。
【0039】
透明熱可塑性樹脂層5の厚みには特に制限はなく、従来の一般的な化粧シートの場合と同等に設定することができる。具体的には、図1に示す様な複層構成の化粧シートの透明樹脂層として使用する場合には20〜150μm程度の範囲とされる場合が多い。
【0040】
なお、図1に示す様な複層構成の化粧シートにおいては、絵柄インキ層2は熱可塑性樹脂シート基材1と透明熱可塑性樹脂層5との積層前に透明熱可塑性樹脂層5側に設けておいても良いが、熱可塑性樹脂シート基材1側に設けておいても良い。また、絵柄インキ層2の形成に先立ち必要に応じて、透明熱可塑性樹脂層5又は熱可塑性樹脂シート基材1の被印刷面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカーコート層3を設けるか又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明熱可塑性樹脂層5又は熱可塑性樹脂シート基材1と絵柄インキ層2との密着性の向上を図ることもできる。また、本発明における熱可塑性樹脂シート基材1はポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂が共連続構造の相構造となっているのが特徴であり、この構造により、ポリ乳酸系樹脂単体を用いた場合では困難であった、従来の化粧シートと同等のインキ密着性を得ることが可能である。
【0041】
本発明においては透明熱可塑性樹脂層5と熱可塑性樹脂シート基材1との積層方法にも特に制限はなく、従来公知の任意の方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、予めフィルム状乃至シート状に成形された透明熱可塑性樹脂層5をドライラミネート接着剤、感熱接着剤、感圧接着剤又は電離放射線硬化型接着剤等の適宜の接着性樹脂層4を介して熱可塑性樹脂シート基材1の表面上に接着する方法、或いは接着剤を介さずに熱圧着又は超音波溶着等の手段によって直接接着する方法や、透明熱可塑性樹脂を加熱溶融しフィルム乃至シート状に押し出し成形すると同時に熱可塑性樹脂シート基材1の表面上に積層し接着させる方法等、従来公知の各種の方法の中から、樹脂の特性に合致した方法を適宜選択して使用することができる。
【0042】
なお、上記積層に先立ち、透明熱可塑性樹脂層5及び/又は熱可塑性樹脂シート基材1に絵柄インキ層2を施しておいても良いことは勿論であるが、その他、接着性の向上を目的として、透明熱可塑性樹脂層5及び/又は熱可塑性樹脂シート基材1の接着面に、コロナ処理又はオゾン処理等の適宜の表面活性化処理や、適宜の接着性樹脂組成物からなるアンカーコート層3を施しておくこともできる。また押し出しラミネート法の場合には、透明熱可塑性樹脂と共に接着性樹脂層4を熱可塑性樹脂シート基材1との間に挟持する様に共押し出し積層することにより、接着性の向上を図ることもできる。
【0043】
透明熱可塑性樹脂層5の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボス7を設けることもできる。エンボス7の模様の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、和紙調、布目調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば単なる艶消状や砂目状、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボス7の模様を絵柄インキ層2の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることも出来るが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄インキ層2の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボス7を設けることもできる。
【0044】
エンボス7の形成方法にも特に制限はないが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボス7の形成時期にも特に制限はなく、熱可塑性樹脂シート基材1との積層前、積層と同時又は積層後の中から任意の時期を選択することができ、またこれらの中から選ばれる複数の時期に同一又は異なる模様のエンボス7を複数回に亘って施すこともできる。なお、エンボス7の凹陥部には、必要に応じてワイピング法等の手法により着色剤を充填しても良く、これによって表面の凹凸模様と同調した色彩模様を有する意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
【0045】
また、化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、透明熱可塑性樹脂層5の表面に表面保護層6を設けることもできる。表面保護層6は、先ず表面の保護としての役割を持っており、表面硬度維持向上や耐汚染性向上、表面の艶を調節する層である。使用される材料としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択することができる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系等いずれも使用可能で、かつ硬化も一液タイプでも硬化剤を用いた二液タイプでも良い。中でもイソシアネートを用いたウレタン系の保護層は、作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
【0046】
前述したイソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選択できるが、耐候性を考慮すると二重結合を持つタイプよりも直鎖状の構造を持つタイプ、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が最適である。
【0047】
また、本発明における表面保護層6には耐候性を向上させる役割があり、紫外線吸収剤および光安定剤を適宜添加する必要がある。紫外線吸収剤としてはトリアジン系紫外線吸収剤、光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤を好適に用いることができる。
【0048】
前記トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2−(4、6−ジフェニル−1、3、5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−〔4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル〕−4、6−ビス(2、4−ジメチルフェニル)−1、3、5−トリアジン、2−〔4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル〕−4、6−ビス(2、4−ジメチルフェニル)−1、3、5−トリアジン、2、4−ビス(2、4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が等を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
【0049】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔[3、5−ビス(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス[2、2、6、6−テトラメチル−1−オクチルオキシ)−4−ピペリジニル]エステルなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
【0050】
本発明における表面保護層6は最表面に存在するためシートの耐候性に寄与する部分が大きい。そのため耐候性を十分考慮する必要があり、添加量は樹脂や溶剤中への溶解度にもより、その要求物性や多量添加による弊害も考慮して、表面保護層6に用いる塗液の固形分100重量部に対し、0.1重量部から10重量部程度添加するのが好適である。
【0051】
前記塗液としては、溶剤系、無溶剤系、水系、エマルジョン系、ホットメルト系等、乾燥性とシートの耐熱性、乾燥後のブロッキング性、またシートとの密着性等々を考慮して適宜選択すると良い。また塗工方法も、例えばグラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。また、表面保護層6の膜厚としては1〜20μmであることが好ましい。
【0052】
なお、透明熱可塑性樹脂層5と表面保護層6との密着性が不十分である場合には、表面保護層6の塗工形成に先立ち、透明熱可塑性樹脂層5の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明熱可塑性樹脂層5と表面保護層6との間の密着性を向上することができる。
【0053】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
熱可塑性樹脂シート基材1として、ポリ乳酸樹脂(ユニチカ製;TE4000)、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製;Y−2045GP)、マイレイン変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成製;ユーメックス1001)、有機変性層状珪酸塩(ホージュン製:エスベンNX)を重量比55:40:5:5で配合した熱可塑性樹脂材料に対し、フェノール系酸化防止剤を0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3重量%、ブロッキング防止剤を0.2重量%添加し、二軸押出機を用いて成形温度190℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した。ダイから吐出したストランドをウォータカットしたペレットを水槽中で急冷した。得られた熱可塑性樹脂組成物を単軸押出機に投入し、押出機先端にとりつけたTダイからシートを押出し、900mm幅、厚さ60μmの熱可塑性樹脂シート1を製膜した。
得られた熱可塑性樹脂シート基材1の表面にコロナ処理を施した後、グラビア印刷法により絵柄用インキ(東洋インキ製造(株)製;ラミスター)を使用して木目模様を施し、絵柄インキ層2とした。
該絵柄インキ2上に2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤[主剤として東洋インキ製造(株)製;EL510(ポリエステルポリオール)を50重量%、三井武田ケミカル(株)製;A520(ウレタン変成ポリエステルポリオール)を50重量%の混合物を使用。また、イソシアネートとして4、4−ジフェニルメタンジイソシアネートを5重量%、イソホロンジイソシアネートを50重量%、ヘキサメチレンジイソシアネートを45重量%の混合物を使用し、前記主剤とイソシアネートを5:1の割合で混合し2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤とし、これをグラビア印刷法により塗工してアンカーコート層3を形成した。
【0055】
ホモポリプロピレン樹脂にフェノール系酸化防止剤を0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5重量%、ブロッキング防止剤を0.2重量%添加した透明なポリプロピレン樹脂層5構成用の樹脂と、無水マレイン酸でグラフト重合した変性ランダムポリプロピレン樹脂(変性ランダムポリプロピレン1g中のカルボニル基含量は0.02ミリモル当量)とを、Tダイから共押し出しすると共に、前記熱可塑性樹脂シート基材1と一体化させて導管エンボスの施された冷却ロールと加圧ロールとの間に通すことにより、ラミネートとエンボス付与とを同時に行い、絵柄印刷層2の施された熱可塑性樹脂シート基材1上のアンカーコート層3面に、接着性樹脂層4を介して、表面に凹陥模様のエンボスされた透明熱可塑性樹脂層5をラミネートした。
熱可塑性樹脂シート基材1とのラミネートに際しては、その直前に、前記接着性樹脂層4にオゾン処理装置によりオゾンガスを吹き付けてラミネート強度を一段と向上させるようにした。
【0056】
さらに、その透明熱可塑性樹脂層5の表面側に表面保護層6として、トリアジン系紫外線吸収剤(2−〔4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル〕−4、6−ビス(2、4−ジメチルフェニル)−1、3、5−トリアジン)とヒンダードアミン系光安定剤(ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートの混合物)を含有する二液硬化型ウレタン系トップコートを、乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようグラビアコーティングにて塗工して化粧シートを作成した。
【0057】
<比較例1>
熱可塑性樹脂シート基材1として、二軸延伸ポリ乳酸フィルム(三菱化学製;エコロージュ)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを作成した。
【0058】
<比較例2>
熱可塑性樹脂シート基材1として、ポリ乳酸樹脂(ユニチカ製;TE4000)、ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製;E−200GV)、マイレイン変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成製;ユーメックス1001)を重量比80:10:5:5で配合したものを用いた以外は実施例1と同様に化粧シートを作成した。
【0059】
<評価項目>
下記項目についての評価結果を表1に示す。
【0060】
<基材シート相構成観察>
ミクロトームを用いて超薄切片を切り出し四酸化ルテニウムにより染色した後、TEM観察で基材シート断面における、ポリ乳酸系樹脂とポリプロピレン系樹脂の共連続構造形成の有無を確認した。本発明の特徴である、共連続構造が確認できた場合を○、海島構造の場合を×で示す。
【0061】
<耐候性評価>
得られた化粧シートに関して、耐候性評価をするために耐候促進試験(メタルハライドランプ方式試験機 JTM G 01 2000日本試験機工業会規格)を行った。試験機は、ダイプラ・メタルウェザー(KU−R5CI−A:ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用いた。
【0062】
耐候促進試験条件は、
1.光源ランプ:MW−60W、フィルター:KF−1(照射範囲295nmから780nm)照度65±3mW/cm2(測定域 330nmから390nm)Light(照射)(53℃、50%RH)20.00時間
2.Dew(暗黒結露)(30℃、98%RH)4.00時間
3.Rest(休止)(30℃、98%RH)0.01時間
以上の24.01時間を1サイクルとして、216時間試験した。なお、シャワーはDewの前後に30秒おこなった。試験後の化粧シートの外観、ラミネート強度を測定し評価した。
【0063】
また、得られた化粧シートを60℃90%RHの恒温恒湿層に500時間保持した後、化粧シートの外観、ラミネート強度を測定し耐湿、耐熱試験として評価した。
【0064】
なお、ラミネート強度の測定は以下の方法による。得られた化粧シートを2.5cm幅に切り取り、剥離試験機(株式会社オリエンテック製 TENSILON RTC−1250)にセットし、剥離速度50mm/min、T型剥離で測定した。
【0065】
表1の結果から分かるように、今回の発明によって得られた実施例1は、本発明の特徴であるポリ乳酸系樹脂とポリプロピレン系樹脂の共連続構造を有し、これにともない比較例1に示すようなポリ乳酸系樹脂単体のフィルムで構成された化粧シートにくらべ、耐候性、耐熱性、耐湿性に優れた化粧シートを得ることができた。また、比較例2においては、ポリ乳酸系樹脂とポリオポリプロピレン系樹脂の配合比が本発明の請求項の範囲を外れているため、ポリオレフィン系樹脂が分散相、ポリ乳酸系樹脂が連続相の相構造となり、これにともない化粧シートとしての必要物性が得られていない。以上の結果から、本発明により、環境負荷低減のため、ポリ乳酸系樹脂を用いた化粧シートを開発するにあたり、化粧シートのバイオマス比率を上げ、かつ、従来の石油系プラスチックによる化粧シートと同程度の性能を付与した化粧シートを提供することができた。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の化粧シートは、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の化粧シートの一例の積層構造を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…熱可塑性樹脂シート基材
2…絵柄インキ層
3…アンカーコート層
4…接着性樹脂層
5…透明熱可塑性樹脂層
6…表面保護層
7…エンボス
8…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなる連続層の構造をとる、共連続構造であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂シート基材が(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂、(C)有機変性層状珪酸塩からなり、(A)が30から70重量%、(B)が30から70重量%、(C)が3から10重量%の配合比からなり、(A)、(B)、(C)の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂シート基材に用いるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2010−69852(P2010−69852A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243124(P2008−243124)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】