説明

化粧シート

【課題】ポリオレフィン系基材と透明アクリル系樹脂を用い、ヒートシール性・耐候性・温水白化性全てを満足し得る化粧シートを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系基材シート1の表面に絵柄インキ層2/ヒートシール層3を少なくともこの順番に積層してなり、更にその上に透明アクリル系樹脂シート4をヒートシールしてなる化粧シートにおいて、前記ヒートシール層3がアクリルポリオール50〜70重量部と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体30〜50重量部とからなり、前記アクリルポリオールのガラス転移点が80〜100℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の外装材、自動車等の車輌内外装材等として使用される化粧シートに関するものであり、特に住宅等の外装材など高耐候性が要求される部位に使用されるものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、係る用途の化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに適宜の絵柄の印刷を施してなるものが主流であった。近年では、環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれのない、ポリオレフィン系樹脂等の非塩素系樹脂フィルムを使用した化粧シートへの切り換えが進みつつある。
【0003】
更に、シート最表部に透明アクリル系樹脂シートを貼り合せる事により、耐候性・表面硬度・耐汚染性・意匠性を向上させる試みがなされた。
【0004】
ところで、係る化粧シートで透明アクリル系樹脂シート/ポリオレフィン系基材シートを貼り合せる際、透明アクリル系樹脂シートの耐溶剤性の問題から、一般的に溶剤系接着剤によるドライラミネーションは避けられ、ヒートシールによる貼り合せが主である。
【0005】
その際、透明アクリル系樹脂シートとポリオレフィン系基材シートのヒートシール性を向上させるためにヒートシール剤を事前に塗布するのだが、一般的に使用されている塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体は貼り合せるシートの種類を選ばず接着性が良好であるが耐候性が悪く黄変などの問題を起こし、一方透明アクリル系樹脂シートとの接着性の良いアクリル系樹脂ではポリオレフィン系基材シートとのヒートシール性が悪く、また温水白化性の悪さが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−370311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、ポリオレフィン系基材と透明アクリル系樹脂を用い、ヒートシール性・耐候性・温水白化性全てを満足し得る化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決したものであり、その請求項1記載の発明は、ポリオレフィン系基材シートの表面に絵柄インキ層/ヒートシール層を少なくともこの順番に積層してなり、更にその上に透明アクリル系樹脂シートをヒートシールしてなる化粧シートにおいて、前記ヒートシール層がアクリルポリオール50〜70重量部と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体30〜50重量部とからなり、前記アクリルポリオールのガラス転移点が80〜100℃であることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートは、ヒートシール層をガラス転移点が80〜100℃のアクリルポリオール50〜70重量部と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体30〜50重量部とからなるものとすることで、ポリオレフィン系基材シートと透明アクリル系樹脂シートのヒートシール性を保持させたまま、耐候性に優れ、且つアクリル樹脂特有の弱点である温水白化性を大幅に改善させることが可能になったものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。基材シート1の上に絵柄インキ層2、ヒートシール層3、透明樹脂シート4を設けてなる。
【0012】
本発明における基材シート1としては、ポリオレフィン系樹脂からなるものを用いる。用いるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのエチレン系共重合体などを挙げることができ、また、これらのオレフィン系樹脂にスチレン系樹脂などのエラストマーを混合したものも用いることができる。また、異なるオレフィン系樹脂を複数種均一に混合した混合樹脂を用いて構成されてもよく、異なるオレフィン系樹脂からなるシートを複数積層したものであってもよい。層厚としては50〜150μm程度が好適である。
【0013】
また、基材シート1中には着色剤として顔料等が含まれていてもよく、目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系、キナクリドン系、ジオキサジン系などの有機顔料;上述した酸化チタンなどの酸化物系、クロム酸モリブデン酸系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、炭酸カルシウムなどの各種無機顔料を適宜用いることができる。これらの顔料をオレフィン系樹脂基材シートに含有させておくことにより、被着体の色を隠蔽し、着色塗膜層の彩度を向上させることができる。この場合、被着体の色を隠蔽し、着色塗膜層の彩度を向上する上では、白色顔料が望ましく、特に、酸化チタンが好適に用いられる。
【0014】
さらに、基材シート1には、シート成形性やシート物性などを損なわない範囲において他の添加物が添加されていてもよく、例えば光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
【0015】
本発明における絵柄インキ層2としては、その絵柄インキ層の形成方法、材料、絵柄等の、絵柄インキ層の内容は特に制限はない。絵柄インキ層は、通常、インキを用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法等で形成する。絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮紋模様、文字、記号、幾何学模様、或いはこれらの2種以上の組合せ等である。また、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性処方を施しても良い。
【0016】
本発明におけるヒートシール層3に用いるヒートシール剤としては、ガラス転移点が80〜100℃のアクリルポリオール50〜70重量部と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体30〜50重量部とからなるものとする。前記ヒートシール剤は前記基材シート1に用いるポリオレフィン系樹脂と、後述する透明樹脂シート4にもちいるアクリル系樹脂5との間での熱ラミネート法による接着を可能とするものであり、両層間での接着強度を発現させるものであって、ヒートシール性、耐候性・温水白化性を改善したものとなる。ガラス転移点が80℃より低いものであると温水白化が見られるのとなり、ガラス転移点が100度より高いものであるとヒートシール性が劣化する。また、アクリルポリオールを50〜70重量部含有させることで好適な耐候性を有するものとすることが出来る。
【0017】
本発明における透明樹脂シート4としては、アクリル系樹脂からなるものを用いる。用いる樹脂としては、例えば従来より係る化粧シート用の表面層として使用されている公知の任意のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体を主成分として単独または共重合して得られる各種の熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂であって、例えばメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の長鎖アルキルエステルや、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸またはアクリル酸等から選ばれる単量体を共重合成分として添加したり、スチレン−ブタジエンゴムまたはメタクリル酸メチル−ブタジエンゴム等のゴム成分をグラフト共重合、ブロック共重合若しくはブレンドして、柔軟性や熱成形性を改善してなる樹脂などを好適に使用することができる。
【0018】
また、充填剤、耐候性処方(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの各種添加剤を適宜添加することも任意である。以上の樹脂をそれぞれ単独でまたは複数種混合して使用することができる。
【実施例1】
【0019】
ポリオレフィン系基材シートとして厚み70μmのホモプロピレン樹脂着色シート(リケンテクノス(株)製:「リベスターTPO」)を用い、これにグラビア印刷機にて2液ウレタン樹脂バインダーインキを用いた絵柄インキ層と、アクリルポリオールのガラス転移点が100℃のアクリルポリオール(DIC(株)製「UCシーラーEXP90717HS−D」)と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体(東洋インキ製造(株)製「V424PCV プライマー」)の混合物(重量比7:3)からなるヒートシール剤を用いたヒートシール層を施した。この上に、透明アクリル系樹脂シートとして厚み50μmの透明アクリルフィルム(三菱レーヨン(株)製:「アクリプレン006」)を用い、これらを熱ラミネートして本発明の化粧シートを作成した。
【0020】
<比較例1>
ヒートシール層中のアクリルポリオールとしてガラス転移点が50℃のアクリルポリオール(DIC(株)製「UCシーラーEXP90717HS−B」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
【0021】
<比較例2>
ヒートシール層中のアクリルポリオールとしてガラス転移点が115℃のアクリルポリオール(DIC(株)製「UCシーラーEXP90717HS−G」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
【0022】
<比較例3>
ヒートシール層を塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体のみとした以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
【0023】
以下の3項目について、実施例・比較例で作成した化粧シートを試験に供した。
【0024】
<ヒートシール性>
作成した化粧シートを1インチ巾に切り出し、透明アクリル系樹脂シート/ポリオレフィン系基材シート界面で剥離させ、その剥離のし易さを確認した。○:剥離しない、若しくはシート材破、△:剥離にかなりの力を要する、×:容易に剥離する
【0025】
<温水白化性>
作成した化粧シートを80℃の温水中に24hr浸漬し、ヒートシール層の白化の度合を目視にて確認した。○:白化がほとんど見られない、△:白化が確認される、×:激しく白化している
【0026】
<耐候性>
メタルウェザー(ダイプラウィンテス(株)製)を使用。作成した化粧シートを以下の条件で促進耐候試験に供した。試験条件:照度65mW/cm2、Light(53℃、70%RH)20h、Dew(30℃、95%RH)4hで終了、散水はDewの前後で30s、以上24hを1サイクルとし、13サイクル(312h)実施。試験後のサンプルを、ヒートシール層の黄変に注目して目視にて確認した。
○:黄変なし、△:やや黄変が見られる、×:激しく黄変している
以上の結果を表1にまとめる。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の化粧シートは、特に住宅等の外装材など高耐候性が要求される部位に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…基材シート層
2…絵柄インキ層
3…ヒートシール層
4…透明樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系基材シートの表面に絵柄インキ層/ヒートシール層を少なくともこの順番に積層してなり、更にその上に透明アクリル系樹脂シートをヒートシールしてなる化粧シートにおいて、前記ヒートシール層がアクリルポリオール50〜70重量部と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体30〜50重量部とからなり、前記アクリルポリオールのガラス転移点が80〜100℃であることを特徴とする化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−104832(P2011−104832A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260904(P2009−260904)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】