説明

化粧シート

【課題】表面に梨地状の凹凸模様を有する化粧シートであって、マジックインキの拭き取りなどの耐汚染性に優れ、さらに表面の耐傷付性にも優れる化粧シートを提供すること。
【解決手段】透明樹熱可塑性樹脂層の表面側に梨地状の凹凸模様を設け、シリコーンを含有した表面保護層を設けてなる化粧シートであり、表面保護層を設けた後の表面の凹凸の高低差が20μm以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の水平面から前記凹凸模様に至る角度が15度以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の算術平均粗さRaが3〜4μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に梨地状の凹凸模様を有する化粧シートに関するものであり、特には表面にシリコーンを含有した表面保護層を設けてなり、梨地状の凹凸の設計の設定により意匠性を有しながらも、マジックインキ汚れが乾拭きで簡単に取れ、生活傷が付きにくい化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より透明樹脂層の表面に凹凸を設けることで透明樹脂層と基材の間に設けた絵柄模様に深みと質感をもたせた化粧シートが知られている。ただし表面の凹凸の為にマジックインキなどで描いた後の表面の拭き取りが困難になるなど耐汚染性に問題があった。
【0003】
これを改善するために表面保護層にシリコーンを含有させることが考えられたが、シリコーンを入れすぎると表面の耐傷付性に劣るものとなってしまう。
【特許文献1】特許第3900622号
【特許文献2】特許第4265226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、表面に梨地状の凹凸模様を有する化粧シートであって、マジックインキの拭き取りなどの耐汚染性に優れ、さらに表面の耐傷付性にも優れる化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものでありすなわちその請求項1記載の発明は、基材の上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に設けた化粧シートであって、前記透明樹熱可塑性樹脂層の表面側に梨地状の凹凸模様を設け、シリコーンを含有した表面保護層を設けてなる化粧シートであり、前記表面保護層を設けた後の表面の凹凸の高低差が20μm以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の水平面から前記凹凸模様に至る角度が15度以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の算術平均粗さRaが3〜4μmであることを特徴とする化粧シートである。
【0006】
またその請求項2記載の発明は、前記表面保護層がウレタン系樹脂100重量部に対してシリコーンを2%〜9%含有したものであることを特徴とする請求項1記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、梨地状のエンボスの表面形状を限定することで、表面の耐汚染性と耐傷付性の両方に優れた化粧シートが得られるという作用効果を奏する。
【0008】
本発明はその請求項2記載の発明により、シリコーンの添加量を限定することでさらに表面の耐汚染性と耐傷付性の両方に優れた化粧シートが得られるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【図2】本発明の化粧シートの一実施例の梨地状の凹凸模様の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す。基材1の上に絵柄模様層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4が少なくともこの順に設けられてなり、表面に梨地状の凹凸模様5が設けられてなる。各層間には層間接着性を向上させるための接着剤層(図示せず)を適宜設けても良い。
【0011】
本発明における基材1としては、ポリ塩化ビニル樹脂等が用いられる場合もあるが、廃棄時の焼却性を考慮すれば、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。中でもポリプロピレン系又はポリエチレン系等のポリオレフィン系樹脂が、経済性、加工性、機械的強度、耐衝撃性、耐溶剤性等の各面で優れ、最も好適である。
【0012】
本発明における絵柄模様層2としては、表面に所望の意匠を付与するために設けられるものであり、その構成材料や形成方法は特に制限されるものではないが、長尺の被印刷体への連続高速印刷が可能なグラビア印刷によるのが最も一般的である。その絵柄としては、例えば木質系フローリング材をイメージしたオーク柄やバーチ柄等の木目柄や、大理石や御影石等をイメージした石目柄、その他抽象柄等、所望により任意である。
【0013】
絵柄模様層2の印刷に用いられるインキは、基材1との密着性を考慮して選択すれば良い。例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる基材に対しては、インキの凝集力から一液型ウレタン系樹脂や、ポリエステルポリオールに顔料を分散させ、ポリイソシアネートを配合して硬化させる2液型ウレタン系樹脂等が一般的である。また、基材がポリエステル系樹脂からなる場合には、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の混合系等が挙げられる。
【0014】
上記インキの着色に用いられる顔料としては、耐候性を考慮した設計が必要であり、無機顔料、縮合多環顔料又はフタロシアニン顔料を用いることが望ましい。例えば、黄色顔料としてはイソインドリノン顔料等、紅色顔料としてはキナクリドン顔料等、藍色顔料としてはフタロシアニン顔料等、墨色顔料としてはカーボンブラック等、白色顔料としては二酸化チタン等を好適に用いることができる。
【0015】
本発明における透明熱可塑性樹脂層3としては、ポリ塩化ビニル樹脂等が用いられる場合もあるが、廃棄時の焼却性を考慮すれば、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。中でもポリプロピレン系又はポリエチレン系等のポリオレフィン系樹脂が、経済性、加工性、機械的強度、耐衝撃性、耐溶剤性等の各面で優れ、最も好適である。
【0016】
基材1と透明熱可塑性樹脂層3との積層方法は、ドライラミネート用接着剤等の適宜の接着剤からなる接着層を介した接着法のほか、両者を高温で圧接して界面で部分的に溶け合わせて接着する熱融着法、透明熱可塑性樹脂層3を形成するための熱可塑性樹脂を加熱溶融して押し出すと同時に基材1上に積層する押出積層法等、従来公知の任意の手法を用いることができる。
【0017】
本発明における梨地状の凹凸模様5は、前記透明熱可塑性樹脂層3の表面にエンボスを施すことにより設けることが可能である。エンボスの形成方法としては形成すべきエンボス形状を反転した凹凸形状を円筒状の版材の円筒面に形成したエンボスロールと硬質ゴムロール等の圧ロールとの間に加熱したシートを通すロールエンボス法が最も一般的であるが、透明熱可塑性樹脂層3を前述した押出積層法により基材1上に積層する場合には、該積層の際に溶融押出した樹脂をエンボスロールと基材1との間に導くことにより、透明熱可塑性樹脂層3の積層と同時にエンボスを形成する押出積層同時エンボス法によることもできる。これらは長尺状の連続加工を前提とした方法であるが、枚葉による表現であれば、平板状のエンボス版を使用した平圧プレス法によって型押し成形してもよい。
【0018】
本発明における表面保護層4としては、シリコーンを含有したものが用いられる。シリコーンを含有させる樹脂としては2液硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂などがあげられるが、特にはアクリルポリオール化合物と、末端に水酸基を有するオルガノポリシロキサンアルキロール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを混合して、アクリルポリオール化合物の水酸基間をポリイソシアネート化合物を介して架橋させて硬化させると同時に、アクリルポリオール化合物の水酸基の一部をポリイソシアネート化合物を介してオルガノポリシロキサンアルキロール化合物の末端の水酸基と結合させたもの、アクリル酸又はメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を共重合成分として添加することにより側鎖にカルボキシル基を導入したアクリルポリオール化合物の該カルボキシル基と、末端に水酸基を有するオルガノポリシロキサンアルキロール化合物の該水酸基とをエステル化反応により結合させて得た、側鎖にオルガノポリシロキシ基が導入されたシリコーン変性アクリルポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを混合して、シリコーン変性アクリルポリオール化合物の水酸基間をポリイソシアネート化合物を介して架橋させたもの、の2種が好適に挙げられる。
【0019】
シリコーンの添加方法としては、ウレタン系樹脂にシリコーンオイルを添加して、表面上にブリードさせることで、耐汚染性を有する表面保護層4を作成することができる。また、前記ウレタン樹脂を成形する際に用いる、アクリルポリオールの側鎖にオルガノポリシロキサン基が導入し、ポリイソシアネート化合物と架橋させることで、シリコーン変性アクリルウレタン層を作成することでも、表面保護層4を作成することができる。
【0020】
前記シリコーンの添加量としては、ウレタン系樹脂100重量部に対して2%〜9%が好適である。2%未満ではマジック拭取りが困難であり、9%を越えるとウレタン樹脂との相溶性等に問題がある。またウレタン樹脂の中にシリコーンを入れる限界であり、シリコーンを入れすぎると本来表面保護層に必要なウレタン樹脂分でまかなっている強靭性(耐傷付き性など)が低下するものとなる。
【0021】
図2に本発明の化粧シートの一実施例の梨地状の凹凸模様の断面の形状を示す。本発明における梨地状の凹凸模様5は、前記表面保護層4を設けた後の表面の凹凸の高低差が20μm以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の水平面から前記凹凸模様に至る角度が15度以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の算術平均粗さRaが3〜4μmとなるようにする。
【0022】
凹凸高低差が20μmを越えるところがあると、凹部に入り込んだマジックインキなどの汚れを拭き取ることが困難なものとなる。また表面の水平面から凹凸模様に至角度が15度を越えるとろがあると、水平面に沿って汚れを拭き取ることが困難なものとなる。そして、算術平均粗さRaが3〜4μmの範囲であることによって、絵柄模様に深みと質感をもたせた梨地状凹凸として好適なものとなる。
【実施例1】
【0023】
基材1として、厚さ70μmの着色ポリオレフィン系フィルムを用い、この上に2液硬化型ウレタン樹脂系グラビアインキで石目柄の絵柄模様層2と、2液硬化型ポリエステルウレタン系接着剤を介して、透明熱可塑性樹脂層3としての厚さ80μmの透明ポリオレフィン系樹脂を共押出しにより積層し、押出しと同時に表面に梨地状凹凸模様5を施した。
【0024】
この後、透明熱可塑性樹脂層3の梨地状凹凸模様5を施した上から、アクリルポリオール100重量部、イソシアネート硬化剤5重量部、シリコーンオイル3重量部を配合した塗工液をグラビアコートにて乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるように塗工して表面保護層4を形成し、凹凸高低差を20μm以下、凹凸角度を最大値で15度以下、凹凸断面の算術平均粗さRa=3〜4μmとなるような化粧シートを得た。なお算術平均粗さの測定方法は、先端が2Rμmの針を用いた触針式表面粗さ計を用いて、JIS B0601:2001の規格に基いて求めた。
【0025】
<比較例1>
算術平均粗さを5.5μmにした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0026】
<比較例2>
算術平均粗さを2.5μmにした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0027】
<比較例3>
凹凸高低差を10μm、中心線平均粗さを2.0μmにした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0028】
<比較例4>
凹凸高低差を30μm、中心線平均粗さを8.0μmにした以外は、実施例1にして化粧シートを得た。
【0029】
<比較例5>
凹凸角度を最大値で30度以下にした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0030】
<性能評価方法>
マジックの拭取り性評価として、マジック拭取り試験を実施した。化粧シートの表面に、マジックインキ(no.500 黒色)にて幅10mmの線を引き、1分後、ティッシューペーパー(エルモア200)にて表面のマジックインキを拭取った後に、目視にて評価した。○・・・マジック残り無し △・・・部分的なマジック残り ×・・・マジック残り有り
【0031】
耐傷つき性評価として、化粧シートの上から、スチールウール(#0000)を1kg/cm2となるような荷重を加え、20往復回、擦り合わせたのち化粧シートの表面を目視にて観察した。○・・・傷無し(著しい変化無し) △・・・軽い傷あり(変化が見られる) ×・・・傷有り(大きな変化がある)
以上のような結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の化粧シートは内装材、家具や建具の表面材、キッチン扉、収納扉、室内扉等として利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…基材
2…絵柄模様層
3…透明熱可塑性樹脂層
4…表面保護層
5…梨地状の凹凸模様


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層を少なくともこの順に設けた化粧シートであって、前記透明樹熱可塑性樹脂層の表面側に梨地状の凹凸模様を設け、シリコーンを含有した表面保護層を設けてなる化粧シートであり、前記表面保護層を設けた後の表面の凹凸の高低差が20μm以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の水平面から前記凹凸模様に至る角度が15度以下であり、前記表面保護層を設けた後の表面の算術平均粗さRaが3〜4μmであることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層がウレタン系樹脂100重量部に対してシリコーンを2%〜9%含有したものであることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46032(P2011−46032A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194888(P2009−194888)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】