説明

化粧シート

【課題】抗アレルゲン性と耐汚染性を有しており、電子線を照射して硬化させた際の異臭の発生を抑えることができる化粧シートを提供する。
【解決手段】基材シート1の表面に単一層又は複数層からなる機能層10を備えた化粧シートであり、機能層の最外表面を構成する層8が、電子線硬化型樹脂と、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子と、高分子系分散剤とを必須成分として含有する電子線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、抗アレルゲン剤が、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装、建具、家具、車両内装等の表面装飾に用いられる化粧シートは、日常接触する機会の多い部分であるため、抗アレルゲン性が望まれている。例えばこれまでに抗アレルゲン性を付与した化粧シートとして、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤を含有する硬化性樹脂塗膜が表面に形成された化粧シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−194763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗アレルゲン剤を含有する硬化性樹脂塗膜は樹脂の硬化物塗膜であるが、その樹脂としては、熱に弱い基材シートへの適用が可能であることから電子線硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂を採用することが考えられる。特に紫外線硬化型樹脂は、短時間で容易に緻密な硬化物塗膜を形成することができるため好ましい。
【0005】
しかしながら、電子線の照射エネルギーは紫外線のエネルギーと比較して桁違い(4〜5桁)に大きいため、電子線照射して硬化させた際に抗アレルゲン剤の一部が揮発し、化粧シートから異臭が発生することがある。この異臭は数ヶ月放置しても消失しないこともある。また、このようにして形成された硬化物塗膜はアルカリや酸に対して白化することもある等、耐汚染性が低下することもあった。そこで、抗アレルゲン剤の揮発を抑制するために、また耐汚染性の低下を抑制するために、電子線の照射エネルギーを下げ、かつ抗アレルゲン剤の添加量を減らして対処することが考えられるが、十分な抗アレルゲン性が得られないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、抗アレルゲン性と耐汚染性を有しており、電子線を照射して硬化させた際の異臭の発生を抑えることができる化粧シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の化粧シートは、基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備え、前記機能層の最外表面を構成する層が、電子線硬化型樹脂と、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子と、高分子系分散剤とを必須成分として含有する電子線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、抗アレルゲン剤が、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有されていることを特徴とする。
【0008】
この化粧シートにおいては、シリカ微粒子が、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の範囲で含有されていることが好ましい。
【0009】
また、この化粧シートにおいては、高分子系分散剤は、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系高分子及び脂肪族多価カルボン酸から得られる高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子からなる分散剤であることが好ましい。
【0010】
さらにまた、この化粧シートにおいては、高分子系分散剤が、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の範囲で含有されていることが好ましい。
【0011】
この化粧シートにおいては、硬化物塗膜の厚さが、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分な抗アレルゲン性及び耐汚染性を発現させ、また電子線を照射して硬化させた際の異臭の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である化粧シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
化粧シートは、基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、電子線硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜である。そして、電子線硬化性樹脂組成物は、電子線硬化型樹脂と、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、シリカ微粒子と、高分子系分散剤とを必須成分として含有する。
【0016】
化粧シートに用いられる基材シートとしては、環境問題の観点から、分子中に塩素原子等のハロゲン原子を含まない各種の熱可塑性樹脂よりなるシートを用いることが好ましい。特に、柔軟性、耐候性等を有するオレフィン系樹脂よりなるシートを用いることが好ましい。
【0017】
オレフィン系樹脂は、具体的には、ポリエチレン(低密度、中密度又は高密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンープロピレンーブテン共重合体、アイオノマー等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン樹脂、あるいは下記の各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0018】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマー、必要に応じて充填剤を添加してなるものが挙げられる。高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重0.94〜0.96のポリエチレンであり、低圧法で得られる結晶化度が高く分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。ポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチック型ポリプロピレンが用いられる。
【0019】
基材シートは、上記した熱可塑性樹脂をカレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により、厚さ50μm以上200μm以下程度に製膜して得られる。
【0020】
基材シートを構成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤等の各種の添加剤が添加される。また、下記の紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0021】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリシレート系、オキザニリド系の有機系紫外線吸収剤、微粒子状の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
これらの紫外線吸収剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂固形分に対し、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下の範囲である。0.1質量%以上とすることによりその添加効果を効果的に発揮させることができる。2質量%以下とすることにより、特に有機系紫外線吸収剤を配合した場合において、経時的にあるいは熱加工時に有機系紫外線吸収剤が表面にブリード(滲出)することを抑制することができる。
【0023】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤が用いられる。光安定剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂固形分に対し、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下の範囲である。かかる範囲内で添加することにより、その添加効果を効果的に発揮させることができる。
【0024】
なお、紫外線吸収剤と光安定剤は、それぞれを単独で使用した場合でも効果はあるが、併用した方が、相乗的に効果が向上するため、併用することが望ましい。また紫外線吸収剤と光安定剤は、単に混合しただけでは使用中のブリードが避けがたいために、上記のヒンダードアミン系の光安定剤に代えて、下記の化合物を使用して、ブリードを防止することが望ましい。ヒンダードアミン系の光安定剤に代わる化合物としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルビペリジン、又は4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ブチル2,2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の(メタ)アクリロイルオキシ基を持つ化合物、もしくは4−クロトノイルオキシ−2,2,6,8−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のクロトノイルオキシ基を持つ化合物をグラフト共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0025】
また、熱可塑性樹脂には、顔料等の着色剤が添加されていてもよい。これによって、基材シートは不透明(隠蔽性)に形成される。
【0026】
基材シートを構成する熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シートの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。この易接着処理は、この種の基材シートにおいて通常使用される方法を用いることができる。このような易接着処理を行うことによって、オレフィン系樹脂で構成される基材シートの表面に、水酸基、カルボキシル基等の活性水素原子含有官能基を生成することができる。なお、基材シートを熔融押し出し法で製膜する場合には、基材シートの表面に極性官能基がある程度生成されるので、極性官能基の生成が十分であれば、易接着処理は省いてもよい。
【0027】
本発明においては、上記のとおり、機能層の最外表面を構成する層の形成に用いられる電子線硬化性樹脂組成物には、電子線硬化型樹脂、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤、シリカ微粒子、及び高分子系分散剤が配合されている。
【0028】
電子線硬化型樹脂としては、下記のオリゴマー樹脂及び反応性モノマーが用いられる。
【0029】
オリゴマー樹脂は、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。具体例として、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、フッ素含有オレフィンから誘導されるユニット、重合性不飽和基含有シリコーンから誘導されるユニット、又は水酸基含有不飽和エーテルから誘導されるユニットを含有する共重合体であってもよい。
【0030】
上記のオリゴマー樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート又はエステル変性されたエポキシアクリレートが用いられる。
【0031】
オリゴマー樹脂は、電子線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは5質量%以上80質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下の割合で配合される。かかる範囲内で配合することにより、良好な塗膜強度とすることができる。なお、樹脂固形分とは、硬化物塗膜を構成する成分であり、電子線硬化型樹脂成分をはじめ、シリカ微粒子、高分子系分散剤等の添加剤を含む。
【0032】
反応性モノマーは、反応性希釈剤や架橋剤として用いられる。反応性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボニルアクリレート、3−メトキシジブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、上記の反応性モノマーの中でも、1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素系モノマーは、これを配合することで、抗アレルゲン性能の低下を抑えて電子線硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
【0034】
抗アレルゲン剤は、通常、水素結合能力の高い官能基を持つため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に相互作用が働く。しかし、アレルゲン物質を不活化する活性点である水素結合能力の高い官能基とポリマーとの間に水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性能が発現しにくくなる場合がある。これに対して、抗アレルゲン剤を分散可能な脂肪族炭化水素系モノマーを用いることにより、抗アレルゲン性能の低下を抑えて電子線硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
【0035】
脂肪族炭化水素系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
反応性モノマーは、電子線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは3質量%以上45質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下の割合で配合される。かかる範囲内で配合することにより、抗アレルゲン性能の低下を抑えて電子線硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保することができる。
【0037】
本発明においては、一定量有する所定の抗アレルゲン剤、所定の大きさのシリカ微粒子及び高分子系分散剤を組み合わせて配合することで、十分な抗アレルゲン性を確保することができる。また、電子線照射して電子線硬化性樹脂組成物を硬化させる際の抗アレルゲン剤の揮発を抑制し、異臭の発生を抑制できる等、十分な耐揮発性を発現できる。さらに、アルカリや酸に対する白化を抑える等、十分な耐汚染性を確保することができる。これら所定の成分の組み合わせにおいていずれか一つの成分を欠いても(抗アレルゲン剤の種類や配合量、シリカ微粒子の大きさが所定の条件に満たさない場合も含む)、抗アレルゲン性、耐揮発性、耐汚染性のすべてを満足させることができない。
【0038】
抗アレルゲン剤を構成するフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は、そのフェノール性水酸基によりアレルゲン物質を吸着捕捉し、そのエネルギー活性を不活化(抑制)する。また、非水溶性高分子であるため、水の存在下や高湿度条件におけるブリードや溶け出しを防止できる。
【0039】
フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子は、一価のフェノール性水酸基を有する単量体を重合又は共重合させたものである。例えば、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリ(4−ビニルフェノール)等のポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリビニルフェノールは、モノフェノールであるため着色レベルが低く、素地の外観を損ねることがなく、加工性が高く、市販品として容易に入手できる点から好ましく用いられる。
【0040】
抗アレルゲン剤は、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有されている。好ましくは3質量部以上8質量部以下、より好ましくは5質量部以上8質量部以下である。かかる範囲内の含有量の抗アレルゲン剤と、所定の大きさのシリカ微粒子及び高分子系分散剤とを用いることによって、十分な抗アレルゲン性を発現させることができる。電子線照射して電子線硬化性樹脂組成物を硬化させた際、異臭の発生を抑制することができる。また十分な耐汚染性を確保することができる。抗アレルゲン剤の含有量が3質量部より少ないと、十分な抗アレルゲン性を発現することができない。10質量部より多いと、電子線照射して電子線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に抗アレルゲン剤が揮発し異臭が発生してしまう等、耐揮発性が十分ではない。
【0041】
電子線硬化性樹脂組成物に配合されるシリカ微粒子は、平均粒径が3μm以上10μm以下のものが用いられる。好ましくは平均粒径4μm以上8μm以下、より好ましくは平均粒径4μm以上6μm以下のものが用いられる。平均粒径はレーザー回折・散乱法によって測定される。平均粒径が上記した範囲内であれば、異なる平均粒径を持つものを組み合わせて用いることもできる。かかる範囲内の大きさのシリカ微粒子と、一定量有する所定の抗アレルゲン剤及び高分子系分散剤とを用いることによって、抗アレルゲン性、耐揮発性、耐汚染性のすべてを満足させることができる。平均粒径が3μmより小さいと、抗アレルゲン性能及び耐揮発性を十分に発現することができない。平均粒径が10μmより大きいと、アレルゲンのシリカ微粒子への可逆的な吸着が大きくなり、安定した抗アレルゲン性能が発現しない。また、耐汚染性が低下する。
【0042】
このようなシリカ微粒子は、例えば、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下、好ましくは5質量部以上10質量部以下の割合で含有される。かかる範囲内でシリカ微粒子を含有することにより、抗アレルゲン性能を安定して発現させることができる。
【0043】
電子線硬化性樹脂組成物に配合される高分子系分散剤は、電子線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる粘度低減効果と、電子線硬化性樹脂組成物の粘度を安定化させる効果とを有し、抗アレルゲン剤とシリカ微粒子の分散性を良好なものとする。このような効果によって、抗アレルゲン性、耐揮発性、耐汚染性のすべてを満足させることができる。
【0044】
高分子系分散剤の具体例としては、アクリル系共重合体や変性アクリル系共重合体からなる分散剤、ウレタン系分散剤等が挙げられる。また、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系高分子、又は脂肪族多価カルボン酸等から得られる高分子からなる分散剤等が挙げられる。なかでもポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系高分子、又は脂肪族多価カルボン酸等から得られる高分子からなる分散剤は、本発明の所期の効果を効果的に発現することができるので好ましく用いられる。これらの分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0045】
また、高分子系分散剤の高分子の数平均分子量は、例えば2000以上である。これよりも数平均分子量が小さい低分子量系分散剤では、本発明の所期の効果を実現することができない。高分子系分散剤の高分子の数平均分子量の上限値は特に限定されないが、例えば1000000程度とすることができる。
【0046】
高分子系分散剤の具体例としては、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);及び、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0047】
本発明においては、高分子系分散剤として、所定の酸価を有する高分子系分散剤と、所定のアミン価を有する高分子系分散剤とを併用するのが好ましい。
【0048】
これにより、電子線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる粘度低減効果と、電子線硬化性樹脂組成物の粘度を安定化させる効果とがより効果的に両立され、抗アレルゲン剤とシリカ微粒子の分散性をより良好なものとすることができる。このため、少量の添加で耐揮発性と抗アレルゲン性を効率的に発現させることに寄与する。
【0049】
このような高分子系分散剤は、例えば、電子線硬化性樹脂組成物において電子線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上20質量部以下、好ましくは5質量部以上15質量部以下の割合で含有される。かかる範囲内で高分子系分散剤を含有することにより、抗アレルゲン剤とシリカ微粒子の分散性を良好なものとし、耐揮発性と抗アレルゲン性をより効率的に発現させることができる。
【0050】
本発明においては、耐ブロッキング性や耐傷性向上の目的で、電子線硬化性樹脂組成物に、さらに樹脂ビーズを添加してもよい。樹脂ビーズは、例えば、従来知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。具体例として、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、シリコン樹脂系等の樹脂ビーズが挙げられる。なかでも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系の樹脂ビーズや、触感が優れるウレタン樹脂系の樹脂ビーズが好ましい。
【0051】
樹脂ビーズの平均粒径は、3μm以上15μm以下であることが好ましい。平均粒径を3μm以上とすることで樹脂ビーズを塗膜中に埋没しにくくし、耐ブロッキング性や耐傷性を向上させることができる。平均粒径を15μm以下とすることで、樹脂ビーズの欠けを低減し耐傷性を向上させることができる。平均粒径はレーザー回折・散乱法によって測定される。
【0052】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、樹脂ビーズ以外にも、必要に応じて、他の添加剤を電子線硬化性樹脂組成物に配合することができる。このような添加剤としては、例えば、ワックス、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し材、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0053】
化粧シートの機能層の最外表面を構成する層の形成は、電子線硬化性樹脂組成物を適宜手段で塗工し、電子線を照射して硬化させる。電子線の照射エネルギーは、例えば20kGy以上60kGy以下であり、好ましくは25kGy以上40kGyである。かかる範囲内で電子線を照射することにより、抗アレルゲン剤の揮発を抑えて、異臭の発生を抑制することができる。また、耐汚染性の低下を抑えることもできる。
【0054】
電子線硬化性樹脂組成物には、粘度を調整するために、樹脂の成分を溶解可能であり常圧における沸点が70℃〜150℃の溶剤を、その組成物中に30質量%以下の範囲で用いることができる。溶剤の添加量が30質量%以下の範囲であれば、乾燥がスムーズであり、生産スピードの大きな低下がない。上記の溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されるものが使用できる。
【0055】
具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、ケトン類、酢酸エステル類等の電子供与性の高い溶剤は、より溶解しやすく好適である。
【0056】
電子線硬化性樹脂組成物の塗工は、グラビア(ロール)コート、グラビアリバース(ロール)コート、グラビアオフセットコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート等を用いることができる。また、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等も用いることができる。好ましいのはリバースロールコートである。
【0057】
また、化粧シートの機能層の最外表面を構成する層の形成は、転写コーティング法を用いてもよい。これは、基材シートの表面に直接塗工せず、一旦、剥離性を有する薄いシート(フィルム)基材等に電子線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する。次いでこのシート基材を、塗膜を間に挟んで基材シートの表面に積層してこれを被覆し、電子線照射により塗膜を架橋硬化し、しかる後にシート基材を剥離する方法である。なお、薄いシート基材に電子線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する手段は、上記の直接コーティング法と同じ各種のコーティング手段を用いることができる。
【0058】
最終的には、化粧シートの機能層の最外表面を構成する層は、例えば厚さ5μm以上15μm以下の硬化物塗膜として形成される。硬化物塗膜の厚さは、好ましくは7μm以上10μm以下である。硬化物塗膜の厚さが5μm以上15μm以下となるように電子線硬化性樹脂組成物を塗工することで、抗アレルゲン剤及びシリカ微粒子を高分子系分散剤で効率よく分散させることができる。耐ブロッキング性や耐傷性を向上させることができる。
【0059】
本発明においては、このようにして形成される硬化物塗膜を単一層として機能層を構成した化粧シートとすることもできる。また、図1に示すような機能層を備えた化粧シートとすることもできる。
【0060】
図1では、基材シート1上に、ベタ層2と絵柄印刷層3からなるインキ絵柄層4、接着剤層5、透明樹脂層6、透明なプライマー層7、そして最外表面を構成する層8として上記した電子線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜が順次積層されている。これらが機能層10を構成している。
【0061】
インキ絵柄層4として用いられるベタ層2は、隠蔽性を有しプライマーとしての特性も持つ着色インキにて全面にベタ印刷して形成したものであり、ベタ印刷層であるとともに基材シート1と透明樹脂層6との接着性を改良するためのプライマーとしての機能を有する。ベタ層2は、基材シート1表面の全面を覆うように全面ベタに形成しても、あるいは部分的ベタに形成してもいずれでもよい。ベタ層2の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下とされる。
【0062】
インキ絵柄層4として用いられる絵柄印刷層3は、木目模様、石目模様、各種抽象模様の絵柄を印刷形成したものである。絵柄印刷層3は、一般的な絵柄印刷用のインキを用いて印刷あるいは塗工することで形成できる。インキは、バインダーと着色剤とからなる。絵柄印刷層3の厚みは、例えば、1μm以上3μm以下とされる。
【0063】
インキ絵柄層4は、図1に示すようにベタ層2と絵柄印刷層3の両者から構成されていてもよいが、ベタ層2のみ、あるいは絵柄印刷層3のみから構成されていてもよい。ベタ層2及び絵柄印刷層3の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等の既知の手段を用いて形成することができる。インキ絵柄層4の形成は、基材シート1の表面に、ベタ層2、絵柄印刷層3の順に設けられる。
【0064】
接着剤層5は、透明樹脂層6を積層するのに用いられる。接着剤層5としては、2液硬化型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等のドライラミネート接着剤が好ましく用いられる。また上記方法以外にも、特に接着剤を用いずに、インキ絵柄層4の表面に、透明樹脂層6を構成する樹脂を熔融押し出し塗工により、透明樹脂層6をシート製膜と同時に積層する方法を用いてもよい。
【0065】
透明樹脂層6を構成する樹脂は、基材シート1を構成する樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂であり、透明樹脂層6は、基材シート1と同様、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により形成される。透明樹脂層6の厚みは、例えば、50μm以上200μm以下とされる。
【0066】
透明樹脂層6を構成する熱可塑性樹脂には、基材シート1を構成する熱可塑性樹脂と同様、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が添加される。透明樹脂層6は、非着色の透明に形成されるが、必要に応じて着色剤を添加して着色透明に形成することもできる。透明樹脂層6を構成する樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シート1としてオレフィン系樹脂を用いた場合と同様、表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことができる。また、透明樹脂層6の表面に、樹脂溶液を塗布してプライマー層7を形成することもできる。プライマー層7の樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0067】
そして、プライマー層7の表面には、上記したように、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により最外表面を構成する層8である電子線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜が形成される。
【0068】
本発明の化粧シートは、表面に、エンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、常用の方法により形成される。例えば、最外表面を構成する層8を加熱軟化させた後、所望の凹凸形状を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりエンボスを施すものである。エンボスの凹凸形状は、木目導管溝、石板表面凹凸、梨目、砂目、ヘアライン等である。
【0069】
さらに、図1の化粧シートは、基材シート1の裏面側に硬質のバッカー層9が積層されている。バッカー層9は、樹脂層の単独層、発泡樹脂からなる発泡層の単独層、樹脂層又は発泡層に繊維層を積層したものが用いられる。バッカー層9の厚みは1mm以上5mm以下程度である。バッカー層9を備えることで、耐キャスター性・耐凹み性を化粧シートに容易に付与することができる。
【0070】
バッカー層9の樹脂層、発泡層に用いられる樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらは塩素原子等のハロゲン原子を含まない樹脂である。また、上記樹脂中にシリカ、ガラスビーズ等の充填剤を添加しても良い。バッカー層9は、図1に示すように基材シート1の裏面に直接積層してもよいが、接着剤層を介して積層してもよい。接着剤層は、上記した接着剤層5と同様のものを用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
実施例及び比較例で用いた配合成分は以下の通りである。(配合表1及び表2参照)
(1)オリゴマー樹脂
・荒川化学社製「ビームセット577」ウレタンアクリレート
(2)反応性モノマー
・東亞合成社製「M−220」トリプロピレングリコールジアクリレート
・東亞合成社製「M−310」トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート
(3)フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子よりなる抗アレルゲン剤
・丸善化学株式会社製「マルカリンカーS−2P」(ポリ-4−ビニルフェノール)
(4)シリカ微粒子
・富士シリシア社製「サイリシア430」(平均粒径4.1μm)
・水澤化学社製「P−527」(平均粒径2μm)
・水澤化学社製「P−78F」(平均粒径18μm)
(5)高分子系分散剤
・楠本化成社製「DA−234」(ポリエーテルエステル酸のアミン塩)
(6)低分子量系分散剤
・楠本化成社製「DA−100」(低分子量ポリエステル系化合物)
上記の配合成分を表1及び表2に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより電子線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
この電子線硬化性樹脂組成物を用いて、次の方法により化粧シートを作製した。厚さ80μmのオレフィン樹脂系の基材シートに、木目柄のインキ絵柄層、接着剤層、透明樹脂層を順次設けた。次いで、最外表面にトップコート層として、上記を配合して調製した電子線硬化性樹脂組成物をリバースロールコートにて塗工した。その後、電子線照射を行い硬化反応させた。電子線照射は、窒素雰囲気下中、150kv、50kGyで行った。
【0073】
このようにして得られた実施例及び比較例の化粧シートについて、下記のとおり、塗膜厚さの測定と評価を行った。なお、耐揮発性の評価については、化粧シートの作製時の電子線照射した直後に行った。
【0074】
[塗膜厚さ]
化粧シートの断面を切断し、化粧シートの最表面に配設された層の塗膜厚さを走査線電子顕微鏡(SEM)により測定した。
【0075】
[抗アレルゲン性能]
予め調製したダニ抗原(アサヒビール(株)製、精製ダニ抗原Derf 2)の水溶液0.4mlを化粧シートの硬化物塗膜に滴下した(初期濃度33.3ng/ml)。6時間後、化粧シート上のダニ抗原液を回収し、ELISAキット(INDOOR社製)でダニアレルゲン不活化率を測定した。測定結果に基づき下記の基準により抗アレルゲン性能を評価した。
○:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が90%以上低下した。
△:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上90%未満低下した。
×:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上低下しなかった。
【0076】
[耐汚染性]
(耐アルカリ性試験)
化粧シートの硬化物塗膜に1%炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
◎:外観異常なし
○:やや白化あり
×:白化あり
(耐酸性試験)
化粧シートの硬化物塗膜に5%酢酸水溶液を滴下し、水分が蒸発しないように時計皿を被せて24時間保持した。24時間後、水洗いし、外観状態より下記の基準により評価した。
◎:外観異常なし
○:やや白化あり
×:白化あり
【0077】
[耐揮発性]
電子線照射後、化粧シートから異臭がするか否かを評価した。
◎:異臭なし
○:やや異臭あり
×:著しい異臭あり
評価結果を表1及び表2に示す。
【0078】
【表1】

【表2】

【0079】
表1より、実施例1〜14の化粧シートは、抗アレルゲン性能、耐揮発性、耐汚染性すべてを満足することが確認された。一方、表2より、比較例1〜7の化粧シートは、抗アレルゲン性能、耐揮発性、耐汚染性すべてを満足するものではなかった。ここで、比較例1,4の化粧シートは、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤が電子線硬化型樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有されていない。比較例2,3,5〜7の化粧シートは、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子又は高分子系分散剤が含有されていない。
【符号の説明】
【0080】
1 基材シート
8 最外表面を構成する層
10 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備え、前記機能層の最外表面を構成する層が、電子線硬化型樹脂と、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤と、平均粒径3μm以上10μm以下のシリカ微粒子と、高分子系分散剤とを必須成分として含有する電子線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、前記抗アレルゲン剤が、前記電子線硬化性樹脂組成物において前記電子線硬化型樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記シリカ微粒子が、前記電子線硬化性樹脂組成物において前記電子線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記高分子系分散剤は、ポリアミノアマイド塩、ポリエーテルエステル、燐酸エステル系高分子及び脂肪族多価カルボン酸から得られる高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子からなる分散剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記高分子系分散剤が、前記電子線硬化性樹脂組成物において前記電子線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記硬化物塗膜の厚さが、5μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−240398(P2012−240398A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115795(P2011−115795)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】