説明

化粧シート

【課題】抗アレルゲン性及び耐傷性を有し、巻き取り時の加工適正が良好であり、用途に応じた滑り性を付与できる化粧シートの提供。
【解決手段】基材シート1の表面に単一層又は複数層からなる機能層10を備えた化粧シートであり、機能層の最外表面を構成する層8が、紫外線硬化型樹脂と、抗アレルゲン剤(A)と、ガラスビーズ(B)と、アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナのうち少なくともいずれかの化合物(C)と、を必須成分として含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、前記A成分が、前記紫外線硬化性樹脂組成物において前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下の範囲で含有されており、前記B成分の平均粒径が前記硬化物塗膜の膜厚の1/3以上2/3以下であり、前記C成分の平均粒径が前記硬化物塗膜の膜厚以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装、建具、家具、車両内装等の表面装飾に用いられる化粧シートは、日常接触する機会の多い部分であるため、抗アレルゲン性が望まれている。例えばこれまでに抗アレルゲン性を付与した化粧シートとして、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子からなる抗アレルゲン剤を含有する硬化性樹脂塗膜が表面に形成された化粧シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−194763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有しており、平衡吸水率が約6〜15%に達するため、化粧シート製造時のシート巻取り工程にてブロッキングが起こらないように滑り性を考慮する必要がある。また、巻き取り時の加工適正や巻き取られた状態での耐傷性を考慮する必要がある。そこで、滑り性、巻き取り時の加工適正、耐傷性を満足させるべく、抗アレルゲン剤とともにガラスビーズやアクリルビーズ等の硬質球状フィラーと、ポリエチレンワックス等のワックス系添加剤を硬化性樹脂に配合することが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記した抗アレルゲン剤は非反応性の高分子材料であるため、その配合物の樹脂塗膜表面の硬化性を著しく阻害する。このため、化粧シート表面の耐傷性を確保するためには、通常よりも架橋度の高い反応性樹脂を用いる必要があるとともに、多量の硬質球状フィラーを配合する必要がある。一方、架橋度の高い反応性樹脂と多量の硬質球状フィラーを用いると、巻き取り時の加工適正や望まれる範囲の滑り性を確保することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、抗アレルゲン性及び耐傷性を有し、巻き取り時の加工適正が良好であり、用途に応じた滑り性を付与できる化粧シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の化粧シートは、基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備え、機能層の最外表面を構成する層が、紫外線硬化型樹脂と、下記式(1)で表わされる構造を骨格中に有する化合物を有効成分とする抗アレルゲン剤(A)と、ガラスビーズ(B)と、アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナのうち少なくともいずれかの化合物(C)と、を必須成分として含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、A成分が、紫外線硬化性樹脂組成物において紫外線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下の範囲で含有されており、B成分の平均粒径が硬化物塗膜の膜厚の1/3以上2/3以下であり、C成分の平均粒径が硬化物塗膜の膜厚以下であることを特徴とする。
【0008】
【化1】

この化粧シートにおいては、C成分のB成分に対する質量比率(C成分/B成分)が、0.1以上2以下であることが好ましい。
また、この化粧シートにおいては、A成分は、下記式(2)で表される構造を骨格中に有する化合物を有効成分とすることが好ましい。
【0009】
【化2】

(式中、mは1以上の整数を示す。)
さらにまた、この化粧シートにおいては、硬化物塗膜の厚さが、5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な抗アレルゲン性及び耐傷性を発現させ、巻き取り時の加工適正が良好であり、用途に応じた滑り性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である化粧シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
化粧シートは、基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備えており、機能層の最外表面を構成する層は、紫外線硬化性樹脂組成物を塗布、硬化して形成された硬化物塗膜である。そして、紫外線硬化性樹脂組成物は、紫外線硬化型樹脂と、前記式(1)で表わされる構造を骨格中に有する化合物を有効成分とする抗アレルゲン剤(A)と、ガラスビーズ(B)とを必須成分として含有する。さらに、アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナのうち少なくともいずれかの化合物(C)も必須成分として含有する。
【0014】
化粧シートに用いられる基材シートとしては、環境問題の観点から、分子中に塩素原子等のハロゲン原子を含まない各種の熱可塑性樹脂よりなるシートを用いることが好ましい。特に、柔軟性、耐候性等を有するオレフィン系樹脂よりなるシートを用いることが好ましい。
【0015】
オレフィン系樹脂は、具体的には、ポリエチレン(低密度、中密度又は高密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンープロピレンーブテン共重合体、アイオノマー等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン樹脂、あるいは下記の各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0016】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマー、必要に応じて充填剤を添加してなるものが挙げられる。高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重0.94〜0.96のポリエチレンであり、低圧法で得られる結晶化度が高く分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。ポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチック型ポリプロピレンが用いられる。
【0017】
基材シートは、上記した熱可塑性樹脂をカレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により、厚さ50μm以上200μm以下程度に製膜して得られる。
【0018】
基材シートを構成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤等の各種の添加剤が添加される。また、下記の紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0019】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリレート系、サリシレート系、オキザニリド系の有機系紫外線吸収剤、微粒子状の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
これらの紫外線吸収剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂固形分に対し、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下の範囲である。0.1質量%以上とすることによりその添加効果を効果的に発揮させることができる。2質量%以下とすることにより、特に有機系紫外線吸収剤を配合した場合において、経時的にあるいは熱加工時に有機系紫外線吸収剤が表面にブリード(滲出)することを抑制することができる。
【0021】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤が用いられる。光安定剤を添加する割合は、添加する対象の層の樹脂固形分に対し、好ましくは、0.1質量%以上2質量%以下の範囲である。かかる範囲内で添加することにより、その添加効果を効果的に発揮させることができる。
【0022】
なお、紫外線吸収剤と光安定剤は、それぞれを単独で使用した場合でも効果はあるが、併用した方が、相乗的に効果が向上するため、併用することが望ましい。また紫外線吸収剤と光安定剤は、単に混合しただけでは使用中のブリードが避けがたいために、上記のヒンダードアミン系の光安定剤に代えて、下記の化合物を使用して、ブリードを防止することが望ましい。ヒンダードアミン系の光安定剤に代わる化合物としては、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルビペリジン、又は4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ブチル2,2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の(メタ)アクリロイルオキシ基を持つ化合物、もしくは4−クロトノイルオキシ−2,2,6,8−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のクロトノイルオキシ基を持つ化合物をグラフト共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0023】
また、熱可塑性樹脂には、顔料等の着色剤が添加されていてもよい。これによって、基材シートは不透明(隠蔽性)に形成される。
【0024】
基材シートを構成する熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シートの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことが好ましい。この易接着処理は、この種の基材シートにおいて通常使用される方法を用いることができる。このような易接着処理を行うことによって、オレフィン系樹脂で構成される基材シートの表面に、水酸基、カルボキシル基等の活性水素原子含有官能基を生成することができる。なお、基材シートを熔融押し出し法で製膜する場合には、基材シートの表面に極性官能基がある程度生成されるので、極性官能基の生成が十分であれば、易接着処理は省いてもよい。
【0025】
本発明においては、上記のとおり、機能層の最外表面を構成する層の形成に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物には、紫外線硬化型樹脂と、A成分と、B成分と、C成分とが配合されている。
【0026】
紫外線硬化型樹脂としては、下記のオリゴマー樹脂及び反応性モノマーが用いられる。
【0027】
オリゴマー樹脂は、例えば1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する光硬化性(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル共重合体の側鎖にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した共重合系(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、フッ素含有オレフィンから誘導されるユニット、重合性不飽和基含有シリコーンから誘導されるユニット、又は水酸基含有不飽和エーテルから誘導されるユニットを含有する共重合体であってもよい。
【0028】
オリゴマー樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート又はエステル変性されたエポキシアクリレートが用いられる。
【0029】
オリゴマー樹脂は、紫外線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは5質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下の割合で配合される。かかる範囲内で配合することにより、良好な塗膜強度とすることができる。なお、樹脂固形分とは、硬化物塗膜を構成する成分であり、紫外線硬化型樹脂成分をはじめ、A成分、B成分、C成分等の添加剤を含む。
【0030】
反応性モノマーは、反応性希釈剤や架橋剤として用いられる。反応性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボニルアクリレート、3−メトキシジブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(ヘキサ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記の反応性モノマーの中でも、1〜2個の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族炭化水素系モノマーは、これを配合することで、アレルゲン低減性能の低下を抑えて紫外線硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
【0032】
抗アレルゲン剤は、水素結合能力の高い官能基を持つため、カルボニル基やエーテル基を有するポリマーとの間に相互作用が働く。しかし、アレルゲン物質を不活化する活性点である水素結合能力の高い官能基とポリマーとの間に水素結合による相互作用が働くと、十分な抗アレルゲン性能が発現しにくくなる場合がある。これに対して、抗アレルゲン剤を分散可能な脂肪族炭化水素系モノマーを用いることにより、抗アレルゲン性能の低下を抑えて紫外線硬化性樹脂組成物を低粘度化することができる。
【0033】
脂肪族炭化水素系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
反応性モノマーは、紫外線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは3質量%以上45質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下の割合で配合される。かかる範囲内で配合することにより、抗アレルゲン性能の低下を抑えて紫外線硬化性樹脂組成物の低粘度化を実現するとともに、他の塗膜物性も確保することができる。
【0035】
紫外線硬化性樹脂組成物には、さらに光重合開始剤を配合することができる。
【0036】
光重合開始剤としては、水素引き抜き型あるいは分子内開裂型のものを用いることができる。
【0037】
水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン/アミン系、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系、チオキサントン/アミン系の光重合開始剤等が挙げられる。
【0038】
分子内開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン型、アセトフェノン型、ベンゾフェノン型、チオキサントン型、アシルフォスフィンオキサイド型の光重合開始剤等が挙げられる。中でも、反応性が高いアセトフェノン型の2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が好ましい。また、長波長まで吸収端が伸びているアシルフォスフィンオキサイド型のモノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等が好ましい。
【0039】
光重合開始剤の配合量は、反応性を高め、かつ塗膜物性等も損なわないようにする点からは、紫外線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分に対して好ましくは1質量%以上10質量%以下、より好ましくは3質量%以上6質量%以下である。
【0040】
本発明においては、一定量のA成分、所定の大きさのB成分及びC成分を組み合わせて、かつ、C成分をB成分に対して一定の割合で配合することで、十分な抗アレルゲン性及び耐傷性を確保することができる。巻き取り時の加工適正を良好なものとすることができる。さらに、用途に応じた滑り性を付与することができる。これら所定の成分の組み合わせにおいていずれか一つの成分を欠いても、抗アレルゲン性、耐傷性、巻き取り時の加工適正、滑り性のすべてを満足させることができない。
【0041】
A成分である抗アレルゲン剤について説明する。
【0042】
抗アレルゲン剤は、シクロヘキシレン基を1個もしくは2個以上骨格中に有する化合物を有効成分として含んでいる。シクロヘキシレン基は環上の1個の水素原子がヒドロキシル基により置換されている。具体的には、上記式(1)のとおりの2価の分子構造を骨格中に有する化合物を有効成分として含んでいる。ここで、「骨格」とは、分子の基本構造である主鎖としての分子骨格構造をいう。また、「化合物」とは、高分子(ポリマー)、オリゴマー、樹脂や縮合物等のいずれかとして考慮される。この化合物の質量平均分子量は、例えば200〜100000程度の範囲とすることができる。
このような化合物は、例えば、フェノール類の縮合物や重合体、又は共重合体等を原料として芳香環の二重結合を水素添加反応させて得ることができる。
【0043】
フェノール類としては、例えば、ヒドロキシル基を芳香環に有する各種の単環式の芳香族化合物や、多核フェノール、縮合多環型等の多環式の芳香族化合物が挙げられる。その具体的な例として、次のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0044】
単環式の芳香族化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、p−タ−シャリ−ブチルフェノ−ル等のアルキル置換フェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール等のハロゲノフェノールが挙げられる。また、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等のフェノール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物が挙げられる。また、メトキシフェノール等も挙げられる。
【0045】
多環式の芳香族化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビスフェノールS等のビスフェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類、ヒドロキシアントラセン等が挙げられる。また、これら芳香族化合物の単量体の単独又は2種以上の混合物をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ジオキソラン、ジシクロペンタジエン等で縮合し高分子化した芳香族高分子類が挙げられる。例えば、二官能性フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。二官能性フェノールとしては、オルソクレゾール、パラクレゾール、パラtブチルフェノール等、フェノール核の水酸基に対しオルソ又はパラ位の水素が1つ他の置換基で置換されたものが挙げられ、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
これら芳香族化合物の単量体及び縮重合体は単独のみならず、2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
また、フェノール類としては、1個以上のビニル基を有するフェノールも例示できる。例えば、ビニルフェノール、チロシン、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エテン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
フェノール類の重合体や共重合体は、例えば、テルペンフェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは酸や塩基等の触媒の存在下で公知の方法で製造される。例えば、テルペンフェノール樹脂は、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の環状テルペン化合物とフェノール類を、フリーデルクラフツ型触媒の存在下で反応させて得られる。アラルキル型フェノール樹脂は、フェノール類とα、α’−ジメトキシパラキシレンを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下で反応させて得られる。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドを酸性触媒の存在下で反応させて得られる。
【0048】
本発明においては、水素添加反応させた化合物の抗アレルゲン性能、耐熱性、耐薬品性、着色性及び加工性等の諸物性を総合的に考慮すると、テルペンフェノール樹脂が好ましく用いられる。特に下記式(3)で表される構造を骨格中に有するテルペンフェノール樹脂が好ましく用いられる。また下記式(3)中のmは1〜3の整数であることが好ましい。
【0049】
【化3】

このようなテルペンフェノール樹脂は、例えば、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターシリーズ、マイティエースシリーズ等が市販品としてある。
【0050】
上記式(3)で表される構造を骨格中に有するテルペンフェノール樹脂を水素添加反応させた化合物が、上記式(2)で表される構造を骨格中に有する化合物である。
【0051】
水素添加反応の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属又はそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土等の坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0052】
触媒の使用量は、原料がテルペンフェノール樹脂で反応がバッチ方式の場合、テルペンフェノール樹脂に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.2質量%以上20質量%以下である。かかる範囲内の触媒量とすることにより、水素化反応速度が最適化され、経済的に好適である。
【0053】
水素添加反応の際、反応溶剤として、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類を使用してもよいし、このような反応溶剤を使用しなくてもよい。
【0054】
水素添加反応の反応温度は、通常20〜300℃、好ましくは、50〜250℃である。反応温度を20℃以上とすることにより、水素化反応速度をより促進させることができるので好ましい。300℃以下とすることにより、副反応や分子量低下を抑えることができるので好ましい。
【0055】
水素添加反応の際の水素圧は、通常0.5〜30MPa程度である。好ましくは、5〜25MPaである。さらに好ましくは8〜24MPaである。0.5MPa以上とすることにより、水素化反応速度を促進させることができるので好ましい。30MPa以下とすることにより、水素添加物の分解を抑えることができるので好ましい。
【0056】
水素添加反応の反応時間は、使用する触媒や水素圧力、反応温度に依存するが、通常、0.1〜50時間程度、好ましくは0.2〜20時間、より好ましくは0.5〜15時間である。
【0057】
上記式(1)で表わされる構造を骨格中に有する化合物としては、上記式(2)で表される構造を骨格中に有する化合物以外には、例えば、ノボラック型フェノール樹脂を水素添加反応させた下記式(4)で表される化合物を挙げることができる。また、アラルキル型フェノール樹脂を水素添加反応させた下記式(5)で表される化合物も挙げることができる。式(4)及び(5)中のnは整数である。
【0058】
【化4】

【0059】
このようにして得られる上記式(1)で表される構造を骨格中に有する化合物は、反応性が低く安定性の高い化合物であり、高い耐熱性(耐熱変色性)及び耐薬品性を有する。また、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)に対して、優れた低減効果を発現することができる。例えば、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、CrIyj2)、ペット由来アレルゲンのイヌフケ(Canf1)、ネコフケ(Feld1)等のアレルゲンに対して有効である。さらにまた、着色を抑えたり、加工性を向上させたりすることもできる。
【0060】
抗アレルゲン剤は、上記式(1)で表される構造を骨格中に有する化合物単独でもよいが、目的を害さない程度に必要に応じて他の公知のアレルゲン抑制剤や親水性高分子が含まれていてもよい。
【0061】
公知のアレルゲン抑制剤としては、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子が挙げられる。例えば、ポリ3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル、ポリ―4−ビニルフェノール等のポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン)、ポリ(1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン)等が挙げられる。なお、芳香族環を有する構造のアレルゲン抑制剤を用いると、芳香族環が紫外線を吸収して紫外線硬化性樹脂が硬化しにくくなり加工適正や抗アレルゲン性能が多少低下するため、芳香族環を有さないものが好ましい。
【0062】
親水性高分子としては、上記式(1)で表される構造を骨格中に有する化合物に対して相互作用を起こし得る反応場を形成し得るものであるものが好ましい。抗アレルゲン剤に親水性高分子を含有することによって、通常の湿度条件下、例えば、絶対湿度50g/m以下の雰囲気下において、アレルゲンをさらに効果的に低減できる。
【0063】
抗アレルゲン剤は、紫外線硬化性樹脂組成物において紫外線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下の範囲で含有されている。好ましくは3質量部以上10質量部以下、より好ましくは5質量部以上10質量部以下である。かかる範囲内の含有量の抗アレルゲン剤と、所定の大きさのB成分及びC成分とを組み合わせて、かつ、C成分をB成分に対して一定の割合で配合することで、抗アレルゲン性、耐傷性、巻き取り時の加工適正を良好なものとすることができる。さらに、用途に応じた滑り性を付与することができる。抗アレルゲン剤の含有量が2質量部より少ないと、十分な抗アレルゲン性を発現することができない。12質量部より多いと、耐傷性や耐汚染性を確保することが困難となる。
【0064】
B成分であるガラスビーズは、その平均粒径が紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜の膜厚の1/3以上2/3以下である。好ましくは1/3以上3/5以下、より好ましくは1/2以上3/5以下である。平均粒径が硬化物塗膜の膜厚の1/3より小さいと、化粧シート表面に十分な耐傷性を付与することができない。2/3より大きいと、化粧シートの巻き取りや加工時に化粧シート表面を傷つけてしまったり、ガラスビーズの離脱等が生じたりすることがある。ガラスビーズの平均粒径が上記した範囲内であれば、異なる平均粒径を持つものを組み合わせて用いることができる。平均粒径はレーザー回折・散乱法によって測定される。
【0065】
ガラスビーズとしては、内部が均質で透明度が高く、真球に近くしかも表面が平滑な球状粒子が好適である。具体例としては、ポッターズ社製EMB−10(平均粒径5μm)、ポッターズ社製EMB−20(平均粒径10μm)、ユニチカ社製SPL−30(平均粒径30μm)等が挙げられる。
【0066】
このようなガラスビーズは、例えば、紫外線硬化性樹脂組成物において紫外線硬化型樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下、好ましくは5質量部以上10質量部以下の割合で含有される。かかる範囲内でガラスビーズを含有することにより、耐傷性がより良好となる。
【0067】
C成分は、アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナであり、その平均粒径が紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜の膜厚以下である。本発明においては、これら化合物のうち少なくとも一つを用いる。平均粒径が上記した範囲内であれば、異なる平均粒径を持つものを組み合わせて用いることもできる。C成分の平均粒径が硬化物塗膜の膜厚以下であることにより、耐傷性を向上させることができる。また、抗アレルゲン性能の向上にも寄与する。C成分の平均粒径は、形成される硬化物塗膜の膜厚に応じて設定される。例えば硬化物塗膜の膜厚が5μm以上20μm以下であれば、C成分の平均粒径は1μm以上5μm以下の範囲内に設定される。
【0068】
アルミノケイ酸塩としては、例えば、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、P型ゼオライト、ソーダライト、アナルサイム等を挙げることができる。これらのゼオライトは、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型、マグネシウム型、亜鉛型あるいはこれらの組合せであってよい。ゼオライトは、そのタイプにより特有のX線回折像を示す。X型、Y型及びP型ゼオライトは、焼成により非晶質化することが知られており、このような非晶質のアルミノケイ酸塩を用いることもできる。
【0069】
非晶質のシリカ−アルミナとしては、上記したゼオライト等を酸処理して、ゼオライトが非晶質化するのに十分な程度のナトリウム分、あるいはさらにアルミナ分を除去したものが使用される。
【0070】
具体例として、ゼオライトの酸処理物である非晶質ケイ酸アルミニウム粒子(水澤化学工業社製シルトンAMT−25:平均粒径2.5μm)、4A型ゼオライト粉末(水澤化学工業社製シルトンM:平均粒径2.5μm)、5A型ゼオライト粉末(水澤化学工業社製シルトンEP:平均粒径3μm)、X型ゼオライト粉末(水澤化学工業社製シルトンCP:平均粒径3μm)、P型ゼオライト粉末(水澤化学工業社製シルトンPC:平均粒径3.5μm)、4A型ゼオライト焼成粉末、(水澤化学工業社製シルトンPT:平均粒径2.3μm、強熱減量(1000℃)2.8%)、5A型ゼオライト焼成粉末(水澤化学工業社製シルトンEPT:平均粒径2.8μm、強熱減量(1000℃)3.1%)、X型ゼオライト焼成粉末(水澤化学工業社製シルトンCPT:平均粒径2.7μm、強熱減量2.6%)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明では、このようなC成分(アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナの合計量)のB成分(ガラスビーズの合計量)に対する質量比率(C成分の合計量/B成分の合計量)が0.1以上2以下であることが好ましい。質量比率が0.1以上であれば、硬化物塗膜が硬くなりにくくなり、適度な強度を有することになり、加工性がより良好となるので好ましい。質量比率が2以下であれば、より効果的に耐傷性を確保することができる。
【0072】
本発明においては、耐ブロッキング性や耐傷性向上の目的で、紫外線硬化性樹脂組成物に、さらに、シリカ微粒子、樹脂ビーズ、ワックス添加剤等を添加することができる。
【0073】
シリカ微粒子としては、レーザー回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm以上10μm以下のものを用いることができる。
【0074】
樹脂ビーズは、例えば、従来知られている方法、すなわちホモポリマーを重合して製造する方法や、高分子量ポリマーを分解して製造する方法等により得ることができる。具体例として、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリスチレン樹脂系、シリコン樹脂系等の樹脂ビーズが挙げられる。なかでも、安価で耐汚染性が高いアクリル樹脂系の樹脂ビーズや、触感が優れるウレタン樹脂系の樹脂ビーズが好ましい。
【0075】
樹脂ビーズの平均粒径は、3μm以上15μm以下であることが好ましい。平均粒径を3μm以上とすることで樹脂ビーズを塗膜中に埋没しにくくし、耐ブロッキング性や耐傷性を向上させることができる。平均粒径を15μm以下とすることで、樹脂ビーズの欠けを低減し耐傷性を向上させることができる。平均粒径はレーザー回折・散乱法によって測定される。
【0076】
ワックス添加剤としては、公知の天然ワックス又は合成ワックスの中から適宜選択して使用することができる。天然ワックスの具体例としては、ミツロウ、羊毛脂、鯨ロウのような動物性ワックス、カルナバロウ、木ロウのような植物性ワックス又はモンタンロウ、パラフィンロウ等の鉱物性ワックスが挙げられる。また、合成ワックスの具体例としては、アクリル系又はアクリル−スチレン系エマルジョン等を挙げることができる。
【0077】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記したシリカ微粒子、樹脂ビーズ、ワックス添加剤以外にも、必要に応じて、他の添加剤を紫外線硬化性樹脂組成物に配合することができる。このような添加剤としては、例えば、抗菌剤、防黴剤、非反応性希釈剤、重合禁止剤、艶消し材、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0078】
紫外線硬化性樹脂組成物には、粘度を調整するために、樹脂の成分を溶解可能であり常圧における沸点が70℃〜150℃の溶剤を、その組成物中に30質量%以下の範囲で用いることができる。溶剤の添加量が30質量%以下の範囲であれば、乾燥がスムーズであり、生産スピードの大きな低下がない。上記の溶剤としては、塗料、インキ等に通常使用されるものが使用できる。
【0079】
具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、ケトン類、酢酸エステル類等の電子供与性の高い溶剤は、より溶解しやすく好適である。
【0080】
紫外線硬化性樹脂組成物の塗工は、グラビア(ロール)コート、グラビアリバース(ロール)コート、グラビアオフセットコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート等を用いることができる。また、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等も用いることができる。好ましいのはリバースロールコートである。
【0081】
また、化粧シートの機能層の最外表面を構成する層の形成は、転写コーティング法を用いてもよい。これは、基材シートの表面に直接塗工せず、一旦、剥離性を有する薄いシート(フィルム)基材等に紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する。次いでこのシート基材を、塗膜を間に挟んで基材シートの表面に積層してこれを被覆し、紫外線照射により塗膜を架橋硬化し、しかる後にシート基材を剥離する方法である。なお、薄いシート基材に紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜を形成する手段は、上記の直接コーティング法と同じ各種のコーティング手段を用いることができる。
【0082】
最終的には、化粧シートの機能層の最外表面を構成する層は、例えば厚さ5μm以上20μm以下の硬化物塗膜として形成される。硬化物塗膜の厚さは、好ましくは7μm以上15μm以下である。硬化物塗膜の厚さが5μm以上20μm以下となるように紫外線硬化性樹脂組成物を塗工することで、抗アレルゲン性、耐傷性、巻き取り時の加工適正、滑り性等が良好な化粧シートを得ることができる。
【0083】
本発明においては、このようにして形成される硬化物塗膜を単一層として機能層を構成した化粧シートとすることもできる。また、図1に示すような機能層を備えた化粧シートとすることもできる。
【0084】
図1では、基材シート1上に、ベタ層2と絵柄印刷層3からなるインキ絵柄層4、接着剤層5、透明樹脂層6、透明なプライマー層7、そして最外表面を構成する層8として上記した紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜が順次積層されている。これらが機能層10を構成している。
【0085】
インキ絵柄層4として用いられるベタ層2は、隠蔽性を有しプライマーとしての特性も持つ着色インキにて全面にベタ印刷して形成したものであり、ベタ印刷層であるとともに基材シート1と透明樹脂層6との接着性を改良するためのプライマーとしての機能を有する。ベタ層2は、基材シート1表面の全面を覆うように全面ベタに形成しても、あるいは部分的ベタに形成してもいずれでもよい。ベタ層2の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下とされる。
【0086】
インキ絵柄層4として用いられる絵柄印刷層3は、木目模様、石目模様、各種抽象模様の絵柄を印刷形成したものである。絵柄印刷層3は、一般的な絵柄印刷用のインキを用いて印刷あるいは塗工することで形成できる。インキは、バインダーと着色剤とからなる。絵柄印刷層3の厚みは、例えば、1μm以上3μm以下とされる。
【0087】
インキ絵柄層4は、図1に示すようにベタ層2と絵柄印刷層3の両者から構成されていてもよいが、ベタ層2のみ、あるいは絵柄印刷層3のみから構成されていてもよい。ベタ層2及び絵柄印刷層3の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等の既知の手段を用いて形成することができる。インキ絵柄層4の形成は、基材シート1の表面に、ベタ層2、絵柄印刷層3の順に設けられる。
【0088】
接着剤層5は、透明樹脂層6を積層するのに用いられる。接着剤層5としては、2液硬化型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等のドライラミネート接着剤が好ましく用いられる。また上記方法以外にも、特に接着剤を用いずに、インキ絵柄層4の表面に、透明樹脂層6を構成する樹脂を熔融押し出し塗工により、透明樹脂層6をシート製膜と同時に積層する方法を用いてもよい。
【0089】
透明樹脂層6を構成する樹脂は、基材シート1を構成する樹脂と同種又は異種の熱可塑性樹脂であり、透明樹脂層6は、基材シート1と同様、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により形成される。透明樹脂層6の厚みは、例えば、50μm以上200μm以下とされる。
【0090】
透明樹脂層6を構成する熱可塑性樹脂には、基材シート1を構成する熱可塑性樹脂と同様、必要に応じて、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が添加される。透明樹脂層6は、非着色の透明に形成されるが、必要に応じて着色剤を添加して着色透明に形成することもできる。透明樹脂層6を構成する樹脂としてオレフィン系樹脂を用いた場合には、基材シート1としてオレフィン系樹脂を用いた場合と同様、表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理を施すことができる。また、透明樹脂層6の表面に、樹脂溶液を塗布してプライマー層7を形成することもできる。プライマー層7の樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0091】
そして、プライマー層7の表面には、上記したように、カレンダー成形、熔融押し出し成形等の常用の方法により最外表面を構成する層8である紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜が形成される。
【0092】
本発明の化粧シートは、表面に、エンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、常用の方法により形成される。例えば、最外表面を構成する層8を加熱軟化させた後、所望の凹凸形状を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりエンボスを施すものである。エンボスの凹凸形状は、木目導管溝、石板表面凹凸、梨目、砂目、ヘアライン等である。
【0093】
さらに、図1の化粧シートは、基材シート1の裏面側に硬質のバッカー層9が積層されている。バッカー層9は、樹脂層の単独層、発泡樹脂からなる発泡層の単独層、樹脂層又は発泡層に繊維層を積層したものが用いられる。バッカー層9の厚みは1mm以上5mm以下程度である。バッカー層9を備えることで、耐キャスター性・耐凹み性を化粧シートに容易に付与することができる。
【0094】
バッカー層9の樹脂層、発泡層に用いられる樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらは塩素原子等のハロゲン原子を含まない樹脂である。また、上記樹脂中にシリカ、ガラスビーズ等の充填剤を添加しても良い。バッカー層9は、図1に示すように基材シート1の裏面に直接積層してもよいが、接着剤層を介して積層してもよい。接着剤層は、上記した接着剤層5と同様のものを用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0095】
実施例及び比較例で用いた配合成分は以下の通りである。(配合表1及び表2参照)
(1)オリゴマー樹脂
・第一工業製薬社製「R1306X」ウレタンアクリレート
(2)反応性モノマー
・新中村化学社製「A−DCP」トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
・東亞合成社製「M−220」トリプロピレングリコールジアクリレート
・第一工業製薬社製「L−C9A」2個のメタアクリロイル基を有する脂肪族炭化水素モノマー
(3)抗アレルゲン剤(A成分)
【0096】
・前記式(2)で表される構造を骨格中に有する合成樹脂X(YSポリスターN(ヤスハラケミカル社製)をPd担持アルミナ触媒を用いて、水素添加し、合成樹脂X(重量平均分子量は780、水酸基価135mgKOH/g)を得た。)
(4)抗アレルゲン剤(A成分以外のもの)
・丸善化学株式会社製「マルカリンカーS−2P」(ポリ-4−ビニルフェノール)
(5)ガラスビーズ(B成分)
・ポッターズ社製「EBM−10」(平均粒径5μm)
・ポッターズ社製「EBM−20」(平均粒径10μm)
・ユニチカ社製「SPL−30」(平均粒径30μm)
(6)非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩(C成分)
・水澤化学工業社製4A型ゼオライト粉末「シルトンM」(:平均粒径2.5μm)
・水澤化学工業社製 5A型ゼオライト焼成粉末「シルトンEPT」(平均粒径2.8μm)
(7)光重合開始剤
・イルガキュア184
上記の配合成分を表1及び表2に示す配合量(質量部)で配合し、均一に混合することにより紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0097】
この紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、次の方法により化粧シートを作製した。厚さ80μmのオレフィン樹脂系の基材シートに、木目柄のインキ絵柄層、接着層、透明樹脂層を順次設けた。次いで、最外表面にトップコート層として、上記を配合して調製した紫外線硬化性樹脂組成物をリバースロールコートにて塗工した。その後、紫外線照射を行い硬化反応させた。
【0098】
このようにして得られた実施例及び比較例の化粧シートについて、下記のとおり、塗膜厚さの測定と評価を行った。
【0099】
[塗膜厚さ]
化粧シートの断面を切断し、化粧シートの最表面に配設された層の塗膜厚さを走査線電子顕微鏡(SEM)により測定した。
【0100】
[抗アレルゲン性能]
【0101】
予め調製したダニ抗原(アサヒビール(株)製、精製ダニ抗原Derf 2)の水溶液0.4mlを化粧シートの硬化物塗膜に滴下した(初期濃度33.3ng/ml)。6時間後、化粧シート上のダニ抗原液を回収し、ELISAキット(INDOOR社製)でダニアレルゲン不活化率を測定した。測定結果に基づき下記の基準により抗アレルゲン性能を評価した。
○:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が90%以上低下した。
△:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上90%未満低下した。
×:初期のダニ抗原濃度に比較して、6時間後にダニ抗原濃度の不活化率が80%以上低下しなかった。
【0102】
[耐傷性]
トルエンを含んだ不織布を化粧シートの塗膜に接触させた状態で100往復させた後、化粧シートの塗膜表面の外観状態を目視により下記の基準により評価した。
◎:外観異常なし
○:やや白化あり
×:白化あり
【0103】
[加工適正]折曲げ試験
化粧シートを180度折り曲げ、折り曲げ時の白化具合を目視で評価した。
○:白化なし
△:やや白化あり
×:白化あり
【0104】
[滑り性]
東工大式すべり試験機を用いて、滑り抵抗値(CSR)を測定し滑り性を評価した。
○:0.25≦CSR≦0.40
×:CSR<0.25, 0.40<CSR
評価結果を表1及び表2に示す。
【0105】
【表1】

【表2】

【0106】
表1より、実施例1〜12の化粧シートは、抗アレルゲン性能、耐傷性、加工適正、滑り性のすべてを満足することが確認された。一方、表2より、比較例1〜6の化粧シートは、所定量のA成分、所定の大きさのB成分及びC成分が用いられていないか、C成分がB成分に対して一定の割合で配合されていないので、抗アレルゲン性能、耐傷性、加工適正、滑り性のすべてを満足しないことが確認された。
【符号の説明】
【0107】
1 基材シート
8 最外表面を構成する層
10 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの表面に単一層又は複数層からなる機能層を備え、前記機能層の最外表面を構成する層が、紫外線硬化型樹脂と、下記式(1)で表わされる構造を骨格中に有する化合物を有効成分とする抗アレルゲン剤(A)と、ガラスビーズ(B)と、アルミノケイ酸塩及び非晶質シリカ−アルミナのうち少なくともいずれかの化合物(C)と、を必須成分として含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物塗膜であり、前記A成分が、前記紫外線硬化性樹脂組成物において前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して2質量部以上12質量部以下の範囲で含有されており、前記B成分の平均粒径が前記硬化物塗膜の膜厚の1/3以上2/3以下であり、前記C成分の平均粒径が前記硬化物塗膜の膜厚以下であることを特徴とする化粧シート。
【化1】

【請求項2】
前記C成分の前記B成分に対する質量比率(C成分/B成分)が、0.1以上2以下であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記A成分は、下記式(2)で表される構造を骨格中に有する化合物を有効成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
【化2】

(式中、mは1以上の整数を示す。)
【請求項4】
前記硬化物塗膜の厚さが、5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−240399(P2012−240399A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115796(P2011−115796)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】