説明

化粧シート

【課題】易加工性・傷の自己回復性とともに高い耐候性を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも基材シート、絵柄模様層、アンカーコート層、表面保護層をこの順に有する化粧シートにおいて、前記表面保護層がアクリル系樹脂組成物を主成分としてなり、前記表面保護層のガラス転移点が10〜50℃であり前記アンカーコート層のガラス転移点が表面保護層のガラス転移点より高く、前記アンカーコート層を構成する樹脂成分100重量部に対して紫外線吸収剤を10〜30重量部含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の外装材、自動車等の車輌外装材等として使用される化粧シートに関するものであり、特には表面の傷や凹みを自己修復する柔軟性と耐候性をともに求められる住宅入口のドア材などに用いる化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、係る用途の化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに適宜の絵柄の印刷を施してなるものが主流であった。近年では、環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれのない、ポリオレフィン系樹脂等の非塩素系樹脂フィルムを使用した化粧シートへの切り換えが進みつつある。
【0003】
ところで、係る用途の化粧シートは、ラッピング加工などの二次加工適性が良好である事が求められる。また、擦過傷などの傷を弾性的に受け止めることで、傷の自己回復性を持たせる事を求められるケースも昨今増えてきている。この要望に答えるための手段として、表面保護層にガラス転移点の低い柔軟性の高い樹脂を使用し、易加工性・傷の自己回復性を付与させるという方法がなされている。
【0004】
しかし、ガラス転移点の低い樹脂は、その性質上添加剤のブリード現象を生じやすく、耐候剤の十分な投入が難しいために、住宅用外装材など高い耐候性を求められる部分には使用することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−322339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、易加工性・傷の自己回復性とともに高い耐候性を有する化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、少なくとも基材シート、絵柄模様層、アンカーコート層、表面保護層をこの順に有する化粧シートにおいて、前記表面保護層がアクリル系樹脂組成物を主成分としてなり、前記表面保護層のガラス転移点が10〜50℃であり前記アンカーコート層のガラス転移点が表面保護層のガラス転移点より高く、前記アンカーコート層を構成する樹脂成分100重量部に対して紫外線吸収剤を10〜30重量部含有してなることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はその請求項1記載の発明により、該表面保護層の下にガラス転移点が表面保護層のそれより高いアンカーコート層を有し、且つ該アンカーコート層の樹脂成分100重量部に対し、紫外線吸収剤を10〜30重量部含有させる事により、柔軟性・易加工性・自己回復性を有する目的でガラス転移点を低く設定している樹脂ではブリード現象のため保持しきれない耐候剤をアンカーコート層にて保持し、印刷インキ層の耐候劣化防止や表面保護層の耐候密着性を向上させ、表面の傷の自己回復性とともに高い耐候性を有する化粧シートを得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。基材シート1の上に絵柄模様層2、アンカーコート層3、表面保護層4をこの順に有する。
【0011】
本発明における基材シート1としては、後述する絵柄模様層2を設けることが可能であり、化粧シートの基材としての性能を有するものであれば、特に限定するものではなく、従来公知のものが使用可能である。特には環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれのない、ポリオレフィン系樹脂等の非塩素系樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのエチレン系共重合体などを挙げることができ、また、これらのオレフィン系樹脂にスチレン系樹脂などのエラストマーを混合したものも用いることができる。また、異なるオレフィン系樹脂を複数種均一に混合した混合樹脂を用いて構成されてもよく、異なるオレフィン系樹脂からなるシートを複数積層したものであってもよい。層厚としては50〜150μm程度が好適である。
【0013】
また、基材シート1中には着色剤として顔料等が含まれていてもよく、目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系、キナクリドン系、ジオキサジン系などの有機顔料;上述した酸化チタンなどの酸化物系、クロム酸モリブデン酸系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系、炭酸カルシウムなどの各種無機顔料を適宜用いることができる。これらの顔料をオレフィン系樹脂基材シートに含有させておくことにより、被着体の色を隠蔽し、着色塗膜層の彩度を向上させることができる。この場合、被着体の色を隠蔽し、着色塗膜層の彩度を向上する上では、白色顔料が望ましく、特に、酸化チタンが好適に用いられる。
【0014】
さらに、基材シート1には、シート成形性やシート物性などを損なわない範囲において他の添加物が添加されていてもよく、例えば光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
【0015】
本発明における絵柄模様層2としては、その絵柄模様層の形成方法、材料、絵柄等の、絵柄模様層の内容は特に制限はない。絵柄模様層は、通常、インキを用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法等で形成する。絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮紋模様、文字、記号、幾何学模様、或いはこれらの2種以上の組合せ等である。また、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性処方を施しても良い。
【0016】
本発明におけるアンカーコート層3としては、後述する表面保護層4よりガラス転移点が高く、樹脂成分100重量部に対して紫外線吸収剤を10〜30重量部含有してなる物を用いる。後述する表面保護層のガラス転移点が10〜50℃であるものを用いるのでそれ以上のガラス転移点を有すればよいが、ガラス転移点が100℃よりも高いと加工適性が劣化するので100℃以下が好適である。紫外線吸収剤は10重量部より少ないと十分な耐候性の発現がなされず、30重量部より多いと表面保護層との密着性低下の問題やコスト上の問題などが発生する。アンカーコート層に用いる樹脂としてはアクリルポリオールや塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、これらの混合物などが好適である。
【0017】
本発明における表面保護層4としては、アクリル系樹脂組成物を主成分としてなりガラス転移点が10〜50℃のものを用いる。用いる樹脂としては、例えば従来より係る化粧シート用の表面層として使用されている公知の任意のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体を主成分として単独または共重合して得られる各種の熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂であって、例えばメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の長鎖アルキルエステルや、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸またはアクリル酸等から選ばれる単量体を共重合成分として添加したり、スチレン−ブタジエンゴムまたはメタクリル酸メチル−ブタジエンゴム等のゴム成分をグラフト共重合、ブロック共重合若しくはブレンドして、柔軟性や熱成形性を改善してなる樹脂などを好適に使用することができる。
【0018】
本発明においては、絵柄模様層2と表面保護層4との間に、アンカーコート層3以外にも、意匠上・強度上の理由で、押出樹脂層や透明樹脂層を貼り合わせなどによって適宜設けてもよく、特に限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
基材シート1として、厚み70μmのホモプロピレン樹脂着色シート(「リベスターTPO」リケンテクノス株式会社製)を用い、これにグラビア印刷機にて2液ウレタン樹脂バインダーインキを用いて木目印刷を行い絵柄模様層2を設けた。絵柄模様層上に、透明樹脂層として、透明ランダムポリプロピレン樹脂(押出厚み60μm)とエラストマー樹脂(押出厚み10μm)とを、エラストマー樹脂側が絵柄模様層2と接するようにして共押出ラミネートにより設けた。
【0020】
前記透明樹脂層の表面にコロナ処理を施した後、アンカーコート層3として、メチルメタクリレートモノマー80重量部とシクロヘキシルメタクリレートモノマー20重量部、更に側鎖への水酸基付与のために不飽和アルコールを共重合させたアクリル系樹脂組成物プレポリマーを主成分とし、そこにヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・ジャパン(株)製「チヌビン400」)を10重量部とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・ジャパン(株)製「チヌビン1130」)を5重量部添加した主剤溶液(紫外線吸収剤重量部合計:15部)と、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト型硬化剤を10:1の割合で混合した塗工液を厚さ6μmとなるよう塗工した。ガラス転移点は100℃であった。
【0021】
前記アンカーコート層3の上に表面保護層4として、ガラス転移点30℃のアクリルアクリレート系樹脂(ナトコ(株)製「TP−1」)を厚さ15μmとなるよう塗工し、化粧シートを得た。
【0022】
<比較例1>
前記アンカーコート層3に添加した紫外線吸収剤をアンカーコート層3に添加するかわりに表面保護層4に添加した他は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0023】
<比較例2>
実施例1において、紫外線吸収剤の添加量をヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を5重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を2.5重量部とした(紫外線吸収剤重量部合計:7.5部)他は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0024】
<比較例3>
実施例1において、紫外線吸収剤の添加量をヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を30重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を15重量部とした(紫外線吸収剤重量部合計45部)他は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0025】
<表面保護層密着性>
このようにして得られた化粧シートについて、表面保護層にクロスカットを入れた後、セロテープ(登録商標)剥離試験を実施。表面保護層の剥離が生じるかどうかを確認した。
【0026】
<耐候剤のブリードの有無の確認>
このようにして得られた化粧シートを、40℃恒温槽内にて48時間養生した後常温(25℃)にて最大1ヶ月静置し、耐候剤のブリード現象が発生するかどうかを観察した。
【0027】
<耐候性>
このようにして得られた化粧シートについて、ダイプラ・メタルウェザー試験機による耐候性試験を行った。耐候性試験の試験条件を以下に示す。
試験機:ダイプラ・メタルウェザー(型式:KU−R5DC1−A ダイプラ・ウィンテス(株)製)
試験条件:1サイクル=Light(照度70mW/cm2、温度53℃、湿度50%RH)20時間
+Dew(温度30℃、湿度95%RH)4時間(前後にシャワー30秒)
+Rest(温度30℃、湿度95%RH)0.01時間
のサイクル試験を繰り返し回数最大21サイクルまで試験実施。
評価方法:(1)意匠性/退色、白濁、或いは著しい脆化が起きているかを確認
(2)表面保護層の耐候密着性/表面保護層にクロスカットを入れた後、セロファンテープ剥離試験を実施。表面保護層の剥離が生じるかどうかを確認。
(1)(2)何れかでNGが発生した時点の繰り返し回数で評価(繰り返し回数が多いほど耐候性能が高い)。
以上の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1のようにすることで、ガラス転移点の低く柔軟性の高い樹脂を表面保護層として選んでも、ブリードなど添加剤の移行の心配が無く、外装用途での使用に耐え得る十分な耐候性を得ることが可能になるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の化粧シートは、表面の傷や凹みを自己修復する柔軟性と耐候性をともに求められる住宅入口のドア材などに利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…基材シート
2…絵柄模様層
3…アンカーコート層
4…表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シート、絵柄模様層、アンカーコート層、表面保護層をこの順に有する化粧シートにおいて、
前記表面保護層がアクリル系樹脂組成物を主成分としてなり、
前記表面保護層のガラス転移点が10〜50℃であり
前記アンカーコート層のガラス転移点が表面保護層のガラス転移点より高く、
前記アンカーコート層を構成する樹脂成分100重量部に対して紫外線吸収剤を10〜30重量部含有してなることを特徴とする化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22836(P2013−22836A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159900(P2011−159900)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】