説明

化粧パネルおよび化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法

【課題】表層材と通気性基材との間に高い通気性・透湿性を確保しながら表層材を通気性基材に強力に接着することができる化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法を提供する。
【解決手段】化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法Sであって、上記通気性基材2の表面に揮発性の揮発性接着剤4と、この揮発性接着剤4に対して相溶性が低くかつ揮発性が低い低揮発性接着剤5とが均一に混在するようにして、揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5とを塗布する塗布工程S1と、これら混在する揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5との上から表層材3を添着する添着工程S2と、上記添着された表層材3と通気性基材2との間の揮発性接着剤4を揮発させる揮発工程S3とを含んでいることを特徴とする化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法S。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧パネルおよび化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接
着方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等が高気密性、高断熱性を指向した構造が追求された結果、室内で発生した水分やガスなどは外部への拡散ができずに、室内のいたる所で結露を生じ、濡れや染みの原因となるという問題が生じている。
【0003】
そこで、天然木化粧板と同等または、それ以上の吸放湿性能を有し、表面に化粧を施した化粧パネルを提供することを目的として、調湿性能や消臭性能などの通気性性能を備えた化粧パネルが種々開発されている。
【0004】
ここで、通気性基材としては珪藻土やシリカゲル等の調湿材が内添された石膏ボードや、木質系パネルなどがあるが、内装用途に使用するには意匠性の問題から、石膏ボードやパネル表面に、直接塗装したり、化粧シートが貼られる場合が多い。化粧シートとしては通気性のあるグラビア等の印刷等がされた化粧紙や各種織りのクロスシート、また木材を薄くスライスしたツキ板等がある。
【0005】
従来、このような通気性を有する通気性基材に表層材を接着する場合、例えば接着剤中の水分が蒸発する時に、連続気孔が生成されて、通気性・透湿性の性能が確保されるような接着剤を通気性基材の全面に塗布していた。
【0006】
例えば、特許文献1には、吸放湿性能を有する通気性基材の一面に接着剤を介して化粧単板が貼着されてなる化粧単板貼り調湿性防火建材の技術が開示され提案されている。この特許文献1に開示された調湿性防火建材では、ガスを吸放出する通気性基材の上に、全面に通気性シーラーと呼ばれる水溶性のエマルジョン樹脂を通気性・透湿のある接着剤として塗布し、化粧単板を貼着していた。
【特許文献1】特開2002−178444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の調湿性防火建材のように、化粧単板を通気性・透湿のある接着剤で貼着する場合、接着性を確保するためには接着性に寄与する樹脂分の比率を高めたり、硬化剤を入れる必要がある。この場合、樹脂分を多くすればするほど、また硬化剤を入れれば入れるほど、接着性は向上するが、通気性・透湿性は劣化する。このため、従来の技術では、高い通気性・透湿性と接着性の両立はできなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表層材と通気性基材との間に高い通気性・透湿性を確保しながら表層材を通気性基材に強力に接着することができる化粧パネルおよび化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための本発明の接着方法は、化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法であって、上記通気性基材の表面に揮発性の揮発性接着剤と、この揮発性接着剤に対して相溶性が低くかつ揮発性が低い低揮発性接着剤とが均一に混在するようにして、これらを塗布する塗布工程と、これら混在する揮発性接着剤と低揮発性接着剤との上から表層材を添着する添着工程と、上記添着された表層材と通気性基材との間の揮発性接着剤を揮発させる揮発工程とを含んでいることを特徴とする。
【0010】
ここで、上記塗布工程は、上記通気性基材の表面に揮発性接着剤と低揮発性接着剤とのうち一方の接着剤を離散的に塗布する第1の工程と、離散的に塗布された一方の接着剤の間に他方の接着剤を充填するように塗布する第2の工程と、を含んでいることが好ましい。
【0011】
また、上記第1の工程においては、上記通気性基材の表面に揮発性接着剤がシルク印刷用のスクリーンシートを用いて離散的に塗布され、上記第2の工程においては、離散的に塗布された揮発性接着剤の間に低揮発性接着剤が塗布されることが好ましい。
【0012】
また、上記目的を解決するための本発明の化粧パネルは、上述の接着方法により、通気性基材と表層材とを接着してなる化粧パネルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、揮発工程において添着された表層材と通気性基材との間の揮発性接着剤を揮発させるので、揮発性接着剤が揮発した箇所に、表層材と通気性基材との間の通気性・透湿性を形成することができる。そのため、表層材と通気性基材との間に高い通気性・透湿性を確保することができる。
【0014】
ここで、第1の工程において、通気性基材の表面に揮発性接着剤と低揮発性接着剤とのうち一方の接着剤を離散的に塗布し、第2の工程において離散的に塗布された一方の接着剤の間に他方の接着剤を充填するように塗布すれば、表層材と通気性基材との間の通気性・透湿性にむらがないようにすることができる。
【0015】
また、通気性基材の表面に揮発性接着剤が離散的に塗布されるようにすれば、より効果的に表層材と通気性基材との間の通気性・透湿性にむらがないようにすることができる。
【0016】
また、この離散的に塗布された揮発性接着剤の間に比較的接着力の強い低揮発性接着剤が塗布されるので、表層材と通気性基材との間をより強力に接着することができる。
【0017】
さらに、上述の接着方法により、通気性基材と表層材とを接着して化粧パネルを形成すれば、表層材と通気性基材との間に高い通気性・透湿性を確保しながら表層材と通気性基材とが強力に接着されている化粧パネルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について説明する。
図1は、本発明の化粧パネル1の構成と、この化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法を模式的に示す斜視図である。
【0019】
本発明の化粧パネル1は、図1に示すように、通気性基材2と、表層材3とを備え、表層材3は、揮発性接着剤4と、低揮発性接着剤5とにより、通気性基材2に接着される。
【0020】
ここで、通気性基材2は、少なくとも調湿性能のある通気性・透湿性を有する材料である。ここでは、調湿性能を有する多孔質の材料として、珪藻土入り石膏ボードが用いられている。
【0021】
また、表層材3も、通気性・透湿性を有する材料である。本実施形態では、0.17mm厚の天然ツキ板の化粧シート7が採用されている。
【0022】
また、揮発性接着剤4は、通常の接着剤と比較すると、接着性能が劣るが、揮発して連続気孔を形成することが可能な接着剤である。例えば、ウレタン系接着剤やゴム系接着剤などの溶剤系の接着剤が採用可能である。
【0023】
また、低揮発性接着剤5は、揮発性が低く、揮発性接着剤4と比較して連続気孔を形成することがより少ないかあるいは連続気孔を形成することがない接着剤であるが、揮発性接着剤4よりも、接着性能を有し、揮発性接着剤4に対して相溶性が低いものが選択される。例えば、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤などの水溶性接着剤が採用可能である。
【0024】
次に図2と、図3とを参照して、本発明の実施の形態に係る化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法Sについて説明する。
【0025】
図2は、本発明の化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法を模式的に示す断面図であり、(a)は、通気性基材2の断面図を、(b)は、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4を離散的に塗布した状態を示す断面図を、(c)は、離散的に塗布された揮発性接着剤4の間に低揮発性接着剤5が塗布された状態を示す断面図を、(d)は、混在する揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5との上から表層材3を添着した状態を示す断面図を、(e)は、添着された表層材3と通気性基材2との間の揮発性接着剤4を揮発させる状態を示す断面図をそれぞれ示している。また、図3は、本発明の化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法Sの概略を示すフロー図である。
【0026】
化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法Sは、図3に示すように、塗布工程S1と、添着工程S2と、揮発工程S3とを含んでいる。
【0027】
上記塗布工程S1は、図2(c)に示すように、通気性基材2の表面に揮発性の揮発性接着剤4と、この揮発性接着剤4に対して相溶性が低くかつ揮発性が低い低揮発性接着剤5とが均一に混在するように塗布する工程であり、この塗布工程S1は、第1の工程S1aと、第2の工程S1bとを含んでいる。
【0028】
ここで、第1の工程S1aは、図2(b)に示すように、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5とのうち一方の接着剤を離散的に塗布する工程である。本実施形態では、この第1の工程S1aにおいては、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4がシルク印刷用のスクリーンシート6を用いて離散的に塗布される。
【0029】
また、第2の工程S1bは、離散的に塗布された一方の接着剤の間に他方の接着剤を充填するように塗布する工程である。本実施形態では、この第2の工程S1bにおいては、図2(c)に示すように、離散的に塗布された揮発性接着剤4の上に刷毛などを用いて一様に低揮発性接着剤5が塗布される。この時、低揮発性接着剤5は、揮発性接着剤4に対して相溶性が低いので揮発性接着剤4にはじかれた状態になり、混ざらずに一様に塗布することができる。
【0030】
さらに、添着工程S2は、図2(d)に示すように、これら混在する揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5との上から表層材3を添着する工程である。
【0031】
そして、揮発工程S3は、図2(e)に示すように、添着された表層材3と通気性基材2との間の揮発性接着剤4を揮発させる工程である。本実施例では、この揮発は熱を加えることにより、物理的に揮発性接着剤4を揮発させている。
【0032】
このように、2回塗布する接着剤の内、少なくとも一つには連続気孔が形成されており、通気性基材2と表層材3の間の通気性・透湿性が確保される。
【0033】
また、低揮発性接着剤5は、通常の接着性能を有する接着剤であり、通気性・透湿性接着剤に比べて接着性能が高いため、通気性基材2と表層材3は従来商品に比べてより強く接着される。よって、高い通気性・透湿性と接着性の両立が達成できる。
【0034】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る化粧パネル1における通気性基材2に対する表層材3の接着方法Sによれば、揮発工程S3において添着された表層材3と通気性基材2との間の揮発性接着剤4を揮発させるので、揮発性接着剤4が揮発した箇所に、表層材3と通気性基材2との間の通気性・透湿性を形成することができる。そのため、表層材3と通気性基材2との間に高い通気性・透湿性を確保することができる。
【0035】
この時、第1の工程S1aにおいて、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4と低揮発性接着剤5とのうち一方の接着剤を離散的に塗布し、第2の工程S1bにおいて離散的に塗布された一方の接着剤の間に他方の接着剤を充填するように塗布すれば、表層材3と通気性基材2との間の通気性・透湿性にむらがないようにすることができる。
【0036】
また、本実施形態のように、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4が離散的に塗布されるようにすれば、より効果的に表層材3と通気性基材2との間の通気性・透湿性にむらがないようにすることができる。
【0037】
また、この離散的に塗布された揮発性接着剤4の間に比較的接着力の強い低揮発性接着剤5が塗布されるので、表層材3と通気性基材2との間をより強力に接着することができる。
【0038】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0039】
例えば、通気性基材2は、珪藻土入り石膏ボードに限定されない。通気性を有する素材であれば、種々の設計変更が可能である。
【0040】
また、表層材3も、0.17mm厚の天然ツキ板の化粧シートに限定されない。表層材3も、通気性を有する素材であれば、種々の設計変更が可能である。
【0041】
また、揮発性接着剤4は、ウレタン系接着剤やゴム系接着剤などの溶剤系の接着剤に限定されない。揮発して連続気孔を形成することが可能な接着剤であれば採用可能である。
【0042】
また、低揮発性接着剤5も、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤などの水溶性接着剤に限定されない。揮発性が低く、揮発性接着剤4よりも、接着性能を有する接着剤であり、揮発性接着剤4に対して相溶性が低いものであれば、採用可能である。
【0043】
また、本実施形態では、第1の工程S1aにおいて、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4が離散的に塗布され、第2の工程S1bにおいて揮発性接着剤4の間に低揮発性接着剤5が塗布されているが、第1の工程S1aにおいて低揮発性接着剤5の方を離散的に塗布し、第2の工程S1bにおいて低揮発性接着剤5の間に揮発性接着剤4を塗布してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、第1の工程S1aにおいて、通気性基材2の表面に揮発性接着剤4がシルク印刷用のスクリーンシート6を用いて離散的に塗布されているが、スクリーンシート6に限らず、ロールコーターに溝を入れ、溝部のみ接着剤を塗布するようにしてもよいし、スプレーを用いて点状に塗布してもよい。さらに、ノズルを用いて線状に塗布することも採用可能である。
【0045】
また、揮発工程S3において、熱を加えることにより、物理的に揮発性接着剤4を揮発させているが、化学反応を利用して揮発性接着剤4を揮発させてもよい。
【0046】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0047】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の化粧パネルの構成と、この化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法を模式的に示す斜視図である。
【図2】化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法を模式的に示す断面図であり、(a)は、通気性基材の断面図を、(b)は、通気性基材の表面に揮発性接着剤を離散的に塗布した状態を示す断面図を、(c)は、離散的に塗布された揮発性接着剤の間に低揮発性接着剤が塗布された状態を示す断面図を、(d)は、混在する揮発性接着剤と低揮発性接着剤との上から表層材を添着した状態を示す断面図を、(e)は、添着された表層材と通気性基材との間の揮発性接着剤を揮発させる状態を示す断面図をそれぞれ示している。
【図3】化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法の概略を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0049】
1 化粧パネル
2 通気性基材
3 表層材
4 揮発性接着剤
5 低揮発性接着剤
6 スクリーンシート
S 化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法
S1 塗布工程
S1a 第1の工程
S1b 第2の工程
S2 添着工程
S3 揮発工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法であって、
上記通気性基材の表面に、揮発性の揮発性接着剤と、この揮発性接着剤に対して相溶性が低くかつ揮発性が低い低揮発性接着剤とが混在するようにして、これらを塗布する塗布工程と、
これら混在する揮発性接着剤と低揮発性接着剤との上から表層材を添着する添着工程と、
上記添着された表層材と通気性基材との間の揮発性接着剤を揮発させる揮発工程とを含んでいることを特徴とする化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記塗布工程は、上記通気性基材の表面に揮発性接着剤と低揮発性接着剤とのうち一方の接着剤を離散的に塗布する第1の工程と、
離散的に塗布された一方の接着剤の間に他方の接着剤を充填するように塗布する第2の工程と、
を含んでいることを特徴とする化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1の工程においては、上記通気性基材の表面に揮発性接着剤がシルク印刷用のスクリーンシートを用いて離散的に塗布され、
上記第2の工程においては、離散的に塗布された揮発性接着剤の間に低揮発性接着剤が塗布されることを特徴とする化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の化粧パネルにおける通気性基材に対する表層材の接着方法により、通気性基材と表層材とを接着してなる化粧パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−226895(P2009−226895A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78517(P2008−78517)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】