説明

化粧パネル

【課題】 化粧板において、取扱いの容易性を維持しつつ、表面に外部の磁石を適切に吸着する。
【解決手段】 化粧板10は、コア層12と、このコア層12に積層される化粧層14と、コア層12の化粧層14とは反対側の面に積層される最下層16とから成っている。これらの化粧板10を構成する各層のうち、少なくともいずれか一層には、ソフトフェライトが含有されている。ソフトフェライトを含有する層は、平均粒子径が1〜10μmのソフトフェライトを、基材に含浸される樹脂100重量部に対して10〜150重量部添加して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板とその製造方法に関し、特に、磁性を有し、磁石を吸着させることができる化粧板及びその製造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧板は、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性に優れ、意匠性においても美しい外観を有し、更に豊富な色調、色柄の中から選択できることから、家具テーブル、会議用テーブル、事務デスク等の天板、あるいは住宅やオフィスビルの内装材などに広く使用されている。
【0003】
このような化粧板は、上記家庭や事業所等の備品材料として使用されることから、同時に、例えば、メモ用紙等を磁石で止めておくこと等もできる機能を有することがニーズとして高まるに至っている。その手段として、化粧板の表面に磁石を吸着することができるよう、化粧板の一部に鉄板層又は鉄粉層を設定することが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、磁性材料として、鉄を使用すると、鉄は非常に酸化力が強いため、長期間の使用により錆が生じたり、化粧板を設置箇所に合わせてチェーンソー等により切断等する際に、鉄から火花が飛散し、取扱いに手間を要する問題があった。
【0005】
この場合、化粧板に、外部磁界により磁化されると、その磁化を保って永久磁石となるハードフェライト(硬磁性材料)を含有させることにより対応することも考えられるが、常時磁化を帯びていると、化粧板の設置箇所によっては、他の機器の性能に影響を与えるおそれがある。また、ハードフェライトは、それ自体が磁性を帯びた磁石であるため、単に、粉末状にして化粧板に含有させるだけでは、極性がランダムに混在して相互の磁力が相殺され、化粧板の表面に磁石を充分に吸着させることができなくなるおそれがある。
【0006】
また、化粧板に既存の層とは、別途、吸着のための磁性材料から成る層を設定すると、化粧板全体の厚み、あるいは、既存の他の層の厚みに変更を加える必要性が生じ、反りや強度等に影響を与えたり、化粧板の取付箇所によっては、その取付性に影響を与えるおそれがある。また、表面の化粧層ではなく、化粧板の内部の層に磁性材料を設定しても、必ずしも充分な吸着力を得ることはできず、その結果、吸着力を高めようとすると、更に磁力を強める必要があり、他の機器への影響が避けられなくなるおそれがある。更には、化粧板全体の重量が嵩み、取扱いが困難となる問題があった。
【0007】
この場合、既存の層自体に、磁性材料を含有させることにより対応することも、勿論考えられるが、その材質や含有量によっては、化粧板の意匠性に限定や影響を与えたり、磁性が強すぎたり、あるいは、弱すぎたりする結果、適切な吸着力を得ることができなくなることに加え、化粧板を構成する各層間の接着強度にも影響を与えるおそれがある。
【特許文献1】特開平9−1743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、取扱いの容易性を維持しつつ、表面に外部の磁石を適切に吸着することができる化粧板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、上記の課題を解決するための第1の手段として、コア層と、このコア層に積層される化粧層とを少なくとも備えた化粧板において、化粧板を構成する各層のうち、少なくともいずれか一層以上に、ソフトフェライトが含有されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0010】
本発明においては、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、コア層の化粧層とは反対側の面に更に最下層が積層されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0011】
本発明においては、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、ソフトフェライトの平均粒子径が1〜10μmであることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0012】
本発明においては、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、化粧板を構成する各層のうち、ソフトフェライトを含有する層は、基材に含浸される樹脂100重量部に対して10〜150重量部のソフトフェライトを添加して形成されていることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0013】
本発明においては、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、コア層に、少なくとも化粧層を積層して化粧板を製造する化粧板の製造方法において、化粧板を構成する各層のうち、少なくともいずれか一層以上に、ソフトフェライトを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明においては、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第5の解決手段において、コア層の化粧層とは反対側の面に更に最下層を積層することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明においては、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第5又は第6のいずれかの解決手段において、平均粒子径が1〜10μmであるソフトフェライトを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明においては、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第5乃至第7のいずれかの解決手段において、化粧板を構成する各層のうちソフトフェライトを含む層を、基材に含浸される樹脂100重量部に対して10〜150重量部のソフトフェライトを添加して、基材に含浸して形成することを特徴とする化粧板の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、磁性材料として、外部磁界により一時的に磁石となり、外部磁界の影響を取り去ると磁石として性質を失うソフトフェライト(軟磁性材料)を使用しているため、いったん磁化した後は永久磁石としての性質を有するハードフェライトを使用した場合のように、N又はSの極性がランダムに混在して相互の磁力が相殺されて、外部の磁石に対する吸着力が低下することがなく、化粧板において、適切な吸着力を発揮させることができる実益がある。
【0018】
この場合、本発明によれば、同時に、磁性材料として、酸化物であるソフトフェライトを使用しているため、それ以上は酸化しにくく、永年劣化によって錆びたりすることが少なく、また、設置箇所に合わせてチェーンソー等により切断しても火花等が飛散することがないので、容易に取り扱うことができる実益がある。
【0019】
更に、本発明によれば、別途吸着のための層を設定するのではなく、上記のように、既存の層自体にソフトフェライトを含有させているため、化粧板全体の厚みや重量、更には意匠性に大きな影響を与えることがなく、化粧板本来の取扱いの容易性を維持しつつ、磁石を吸着させることができる実益がある。
【0020】
また、本発明によれば、上記のように、含有させるソフトフェライトとして、平均粒子径が1〜10μmであるソフトフェライトを使用しているため、各層を構成する基材に含浸させる樹脂中にソフトフェライトを均一に分散させて、偏ることなく平均的に分布された磁性を実現することができるので、後述する実施例に示すように、外部の磁石を適切に吸着させることができる実益がある。
【0021】
更に、本発明によれば、上記のように、各層を構成する基材に含浸させる樹脂中に、当該樹脂100重量部に対して、10〜150重量部のソフトフェライトを添加しているため、後述する実施例に示すように、充分な層間接着強度を維持しつつ、外部磁石に対しての充分な吸着力をも確保することができる実益がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1は、本発明の化粧板10を示し、この化粧板10は、図1に示すように、コア層12と、このコア層12に積層された表面の化粧層14と、コア層12の化粧層14とは反対側の面に積層された最下層16とから成っている。この化粧板10は、コア層12、化粧層14、最下層16を各々形成した後、これらを重ね合わせて加熱加圧成形して、図1に示すように、各層を積層することにより製造することができる。
【0023】
<1.化粧層>
表面に配置される化粧層14は、その本来の材質には、特に限定はなく、本発明においても、通常の化粧板10と同様に、熱硬化性樹脂を含有する液状のワニスを調製し、これをグラビア印刷紙などの紙基材に含浸させた後、加熱乾燥により溶剤を除去して、熱硬化性樹脂を半硬化させた状態のプリプレグを使用することができる。なお、この場合、ワニスを紙基材に含浸させる方法も、特に限定はなく、通常行われるキスコーターを用いる方法を採ることもできるし、ディップによる方法を採ることもできる。
【0024】
また、このワニスを含浸させる紙基材としては、セルロース(パルプ)に顔料(チタン白など)をすきこんだ抄造紙に模様を印刷した印刷紙を使用することができる。また、その坪量としても特に限定されないが、通常と同様、50〜150g/m2のものを用いることができる。
【0025】
また、この紙基材に含浸させるワニスに含有させる樹脂としても、特に限定はなく、通常使用されるメラミン樹の他、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等、又は、これらを混合したもの等も必要に応じて使用することができる。これらの樹脂成分は、化粧層14の表面を硬化させると共に、化粧層14の表面に耐熱性や耐汚染性等の優れた性能を付与するものである。
【0026】
<2.コア層>
コア層12は、化粧板10全体の厚み調整や、化粧板10に、剛性や、また、添加剤の種類によっては湿気に対するバリア性、不燃性等を付与するために用いられる。このコア層12も、特に、その本来の材質に限定はないが、化粧層14と同様に、基材に樹脂ワニスを含浸させた後、樹脂成分を半硬化させたプリプレグを使用することができる。
【0027】
この場合、基材としては、通常の化粧板と同様、クラフト紙を使用することができる。クラフト紙を用いる場合の坪量は特に限定されないが、通常、50〜250g/m2 のものを使用することができる。また、その他、目的に応じて、天然有機繊維、ガラス等の無機繊維、ポリエステル等の合成繊維などを単独もしくは混紡、混抄により複数種用いた紙、織布、あるいは不織布等を使用することもできる。
【0028】
また、これらの基材に含浸させるワニスに含有させる樹脂成分にも、特に限定はないが、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の他、メラミン樹脂とフェノール樹脂の共縮合体やフェノール樹脂とエポキシ樹脂の共縮合体を使用することもでき、更には、耐燃焼性において燃焼時の発熱量抑制に優れるメラミン樹脂をベースとするエポキシ変性メラミン樹脂やアクリル樹脂混合メラミン樹脂等も使用することができる。なお、これらの樹脂成分を含有したワニスの基材への含浸方法についても、化粧層14の場合と同様の手段を採ることができる。
【0029】
<3.最下層>
最下層16は、バック層となるもので、化粧板10の設置箇所や化粧板10を取り付ける対象の性質等に合わせて適宜設定することができる。図示の実施の形態では、最下層16は、基材、ワニスに含有される樹脂等を、化粧層14と同じく設定したものを使用している。なお、この最下層16は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて適宜設定すれば足りる。
【0030】
<4.ソフトフェライトの含有>
本発明の化粧板10は、上記の化粧板10を構成する各層のうち、少なくとも化粧層14に、ソフトフェライトが含有されている。この場合、ソフトフェライトを含有させる層は、少なくとも、いずれか一層以上であれば、、吸着強度等の設定等の必要に応じて、1)化粧層14のみ、2)コア層12のみ、あるいは、3)化粧層14とコア層12、4)化粧層14と最下層16、あるいは、5)化粧層14、コア層12、最下層16の全て、のうちのいずれとすることもできる。これらのソフトフェライトを含有すべき層の選択は、外部磁石に対する吸着性を考慮すると、少なくとも化粧層14とすることが好ましいが、化粧層14の有する装飾性に幅を持たせたい場合等には、コア層12のみとすることもでき、必要に応じて、適宜決定することができる。
【0031】
この含有すべきソフトフェライトとしては、例えば、Mn−Zn系ソフトフェライトやNi−Zn系ソフトフェライト等を使用することができる。このソフトフェライトは、非常に酸化力が強い鉄粉と異なり、酸化しにくいため、長年の使用により錆びたり、あるいは、チェーンソー等により切断する際に火花が飛散することがない。
【0032】
一方、同じフェライトであっても、外部磁界によっていったん磁化されると永久磁石としての性質を有するBa−系(バリウム磁石)、Sr−系(ストロンチウムフェライト磁石)等のハードフェライトを含有すると、これらのハードフェライトはそれ自身が磁石であるため、単に樹脂中に添加しても、N極とS極とがランダムに混在して、相互の磁力が相殺されるため、化粧板10の表面に外部磁石を適切に吸着することができない。一方、その配向性を調整するのは、非常に困難であると共に、添加量によっては、他の機器に影響を与えるおそれもある。
【0033】
これらの点は、その他の永久磁石、即ち、例えば、Al−Ni−Co系(アルニコ磁石)、Fe−Cr−Co系(鉄クロム磁石)等の鋳造磁石、また、Sm−Co系(サマリウム・コバルト磁石)、Nd−Fe系(ネオジウム・鉄磁石)等の希土類磁石等を含有させた場合も、同様の問題が生ずると思われる。
【0034】
この点、ソフトフェライトによれば、外部の磁界により一時的に磁石となるだけで、外部の磁石を接近させると、その外部の磁石を吸着するように(外部磁界との関係で)、その都度極性が変化するため、上記永久磁石のような問題は生じず、適切に外部磁石を吸着させることができる。即ち、本発明の化粧板10は、鉄を使用した場合の問題点と、ハードフェライト等の永久磁石を使用した場合の問題点を、同時に解決することができる。
【0035】
このソフトフェライトは、ソフトフェライトを含有させるべき層の形成の際に、各層に含有させることができる。即ち、ワニス中にソフトフェライトを添加して混合・分散処理をして、均一に分散させ、このソフトフェライトが添加されたワニスを、キスコーターやディップにより、基材に含浸させることにより、各層に含有させることができる。
【0036】
但し、ソフトフェライトの含有方法には特に限定はなく、各層に均一に分散して含有させることができれば、その他、例えば、ワニスを含浸させた基材(プリプレグ)に、ソフトフェライト粉末を篩等により均一に篩い落として、含有させることもできる。
【0037】
なお、この場合、平均粒子径が1〜10μmであるソフトフェライトを添加することが望ましい。粒子径を1μm未満とすると、凝集して均一に分散しにくくなり、一方、10μmを超えても、混合によっても均一に分散させることが困難となるためである。
【0038】
更に、このソフトフェライトの添加量は、基材に含浸されるワニス中に含まれる樹脂100重量部に対して10〜150重量部のソフトフェライトを添加することが望ましい。これは、ソフトフェライトの添加量を、樹脂100重量部に対して10重量部未満とすると、外部の磁石を充分に吸着することができず、一方、樹脂100重量部に対して150重量部超とすると、樹脂のバインダ力が低下して各層間の接着強度が低下するおそれがあるためである。なお、この場合、ワニス全体ではなく、樹脂成分に対する重量部としたのは、ワニス中に含まれる溶剤は揮発するため、溶剤を含むワニス全体に対する重量部とすると、乾燥後の(樹脂の硬化後の)各層に対するソフトフェライトの含有割合を定量的に把握、調整することが困難となるためである。
【0039】
以上のようにして、ソフトフェライトを必要な層に含有させた後は、通常の高圧樹脂化粧板10の場合と同様に、各層を積層して加熱加圧することにより、ソフトフェライトを含み、外部磁石に対して適切な吸着力を有する化粧板10とすることができる。但し、この場合、一般の高圧樹脂化粧板の場合に比べ、高温で加熱加圧することが望ましく、具体的には、製品最高温度を125℃〜143℃程度に調整することが望ましい。
【実施例】
【0040】
次に、表面の化粧層14にソフトフェライトを含有させて、図1に示す化粧板10を製造した本発明の実施例、及び、本発明の効果を確認するために設定した比較例について、説明する。なお、以下の本発明に関する実施例及び比較例に関する記載中、「%」は全て「重量%」を表す。
【0041】
<1.実施例1>
(1)化粧層
ワニス中に含有させる樹脂として、1)モル比が1.6、数平均分子量が230、不揮発分が52%、粘度が40cP/20℃のポストフォーム用水溶性メラミン樹脂の100重量部に、不揮発分比率で、2)固形分45%、粘度35cP/20℃の水性アクリル樹脂エマルジョンを20重量部混合したものを使用した。この樹脂を水で粘度20cP/25℃に調整した後、触媒を添加して含浸用変性メラミン樹脂ワニスを得た。このワニスに、磁性材料として、ワニス中のメラミン樹脂と水性アクリル樹脂エマルジョンの成分100重量部に対し10重量部のMn−Zn系ソフトフェライト(戸田工業株式会社製「KNS−415」)を添加して、混合した。なお、このソフトフェライトの平均粒子径は、1.8μmであった。一方、基材としては、通常の化粧紙(米坪130g/m2の単色抄き込み紙)を使用し、この化粧紙に、上記のソフトフェライトが添加されたワニスを、スプレーノズル(アトマックス株式会社製の「アトマックスノズルBN型」)が装着されたスプレー装置にて霧状にして吹き付けて含浸させて、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0042】
(2)コア層
ワニスとして、一般のメラミン化粧板の生産に使用されるホルムアルデヒド(F)とフェノール(P)とを反応モル比(P/F)が1.3となるように配合して反応させた水溶性レゾール型フェノール樹脂ワニスを得た。一方、基材として、米坪190g/m2 の未晒クラフト紙を使用し、このクラフト紙に、上記のワニスを、ディップ法で含浸させ、樹脂量30%、揮発分6%に乾燥調整して、フェノール樹脂のコア層12を形成した。なお、このコア層12は、通常の化粧板におけるフェノール樹脂含浸紙に比べ、樹脂分を5%増加し、揮発分を25%低下させたものである。
【0043】
(3)最下層
化粧層14と同じ基材に、化粧層14と同じ変性メラミン樹脂ワニスを含浸させて、樹脂量60%、揮発分7%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の最下層16を形成した。なお、ワニスの含浸は、コア層12と同じく、ディップ法により行った。
【0044】
(4)化粧層、コア層、最下層の積層
上記(1)〜(3)の化粧層14、コア層12、最下層16を所定枚数重ね合わせ、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の熱圧成形方法に準じて、製品最高温度が135℃〜140℃の範囲内に入るようにして、加熱加圧し、図1に示す形態の化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.6%であった。
【0045】
<2.実施例2>
(1)化粧層
ワニス及びこのワニスを含浸させる基材として、実施例1と同じものを使用し、このワニスに添加する磁性材料として、ワニス中のメラミン樹脂と水性アクリル樹脂エマルジョンの成分100重量部に対し150重量部のMn−Zn系ソフトフェライト(戸田工業株式会社製「BSF−029」)を添加して、混合した。なお、このソフトフェライトの平均粒子径は、8.1μmであった。このソフトフェライトが添加されたワニスを、バットに入れ、基材にディップ法により含浸させて、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0046】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、これらの化粧層14、コア層12、最下層16を所定枚数重ね合わせ、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の熱圧成形方法に準じて、製品最高温度が135℃〜140℃の範囲内に入るようにして、加熱加圧し、図1に示す形態の化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.6%であった。即ち、この実施例2は、化粧層14において、ワニス中に添加するソフトフェライトの平均粒子径及び樹脂成分に対する重量部並びにワニスの基材への含浸方法の点においてのみ、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、実施例1と同様とした。
【0047】
次に、本発明の上記の実施例1、2の効果を確認するために設定した2つの比較例について説明する。
<3.比較例1>
(1)化粧層
ワニス及びこのワニスを含浸させる基材として、実施例1と同じものを使用し、このワニスに添加する磁性材料として、ワニス中のメラミン樹脂と水性アクリル樹脂エマルジョンの成分100重量部に対し10重量部の鉄粉(関東化学株式会社製/鹿一級)を使用した。この鉄粉が添加されたワニスを、実施例1と同じスプレーノズルで基材に含浸させて、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0048】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、また、各層の積層方法についても、実施例1と同様に設定して、化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.77mm 、含水率は4.5%であった。即ち、この比較例1は、化粧層14において、ワニス中に添加する磁性材料として、ソフトフェライトの代わりに鉄粉を使用した点においてのみ、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、実施例1と同様とした。
【0049】
<4.比較例2>
(1)化粧層
ワニス及びこのワニスを含浸させる基材として、実施例1と同じものを使用し、このワニスを、バットに入れ、基材にディップ法により含浸させて、樹脂量52%、揮発分5%に乾燥調整して、変性メラミン樹脂の化粧層14を形成した。
【0050】
(2)コア層、最下層、及び、各層の積層
その他、コア層12、最下層16として、実施例1と同じものを使用し、また、各層の積層方法についても、実施例1と同様に設定して、化粧板10を成形した。成形後の化粧板10は、厚さが0.78mm 、含水率は4.7%であった。即ち、この比較例2は、化粧層14において、ワニス中に磁性材料を添加しない点において、実施例1と設定が異なり、その他の点においては、ワニスの含浸方法を除き、実施例1と同様とした。
【0051】
<5.各実施例及び比較例の対比>
以上の実施例1、2及び比較例1、2として得られたメ化粧板10(メラミン樹脂化粧板)について、その特性を測定した結果を、次の表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
なお、この表1において、各測定結果の評価は、次の基準により行った。
1)寸法変化率:JISK69022に準拠して測定した。
2)表面鉛筆硬度:JISK5401の塗膜鉛筆引っ掻き試験に準拠して測定した。
3)外部磁石吸着性:コクヨ株式会社製磁石(カラーマグネットマク−20NR)を化粧板10に吸着させ、この磁石と化粧板10との間にA4のコピー用紙を2枚挟んで、磁石でこれらのコピー用紙を止めることができるかの評価を行った。
4)加工性:化粧板10を、チェーンソーで切断し、切断面から火花が飛散するかを目視にて確認した。
【0054】
この表1から明らかなように、磁性材料として、鉄粉を使用した比較例1では、外部磁石吸着性は発揮することができるものの、切断の際に火花が生じ、取扱いの容易性は確保することができないことが解る。また、磁性材料を使用しない比較例2においては、切断の際に火花が発生することはないものの、外部の磁石を吸着することができない。即ち、これらの比較例1、2では、いずれにしろ、外部磁石の吸着性と取扱い性とを両立させることはできないことが判明した。
【0055】
対して、本発明の範囲に含まれる実施例1、2においては、充分な外部磁石吸着性を発揮しつつ、同時に切断によっても火花が発生することがなかった。即ち、これらの実施例1、2により、本発明に含まれる範囲であれば、取扱いの容易性を維持しつつ、同時に表面に外部の磁石を適切に吸着することができる化粧板を提供するという本発明の課題を解決できることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の化粧板は、家具テーブル、会議用テーブル、事務デスク等の天板、あるいは住宅やオフィスビルの内装材等として、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の化粧パネルの断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 化粧板
12 コア層
14 化粧層
16 最下層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と前記コア層に積層される化粧層とを少なくとも備えた化粧板において、前記化粧板を構成する各層のうち、少なくともいずれか一層以上に、ソフトフェライトが含有されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
請求項1に記載された化粧板であって、前記コア層の前記化粧層とは反対側の面に更に最下層が積層されていることを特徴とする化粧板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された化粧板であって、前記ソフトフェライトの平均粒子径が1〜10μmであることを特徴とする化粧板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された化粧板であって、前記化粧板を構成する各層のうち、前記ソフトフェライトを含有する層は、基材に含浸される樹脂100重量部に対して10〜150重量部のソフトフェライトを添加して形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項5】
コア層に、少なくとも化粧層を積層して化粧板を製造する化粧板の製造方法において、前記化粧板を構成する各層のうち、少なくともいずれか一層以上に、ソフトフェライトを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された化粧板の製造方法であって、前記コア層の前記化粧層とは反対側の面に更に最下層を積層することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、平均粒子径が1〜10μmである前記ソフトフェライトを含有させることを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載された化粧板の製造方法であって、前記化粧板を構成する各層のうち前記ソフトフェライトを含む層を、基材に含浸される樹脂100重量部に対して10〜150重量部のソフトフェライトを添加して、前記基材に含浸して形成することを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−272822(P2006−272822A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97471(P2005−97471)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(502177521)デコラニット株式会社 (8)
【Fターム(参考)】