説明

化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシ

【課題】液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、これら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えた化粧ブラシ用毛材、およびこの化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した化粧ブラシを提供する。
【解決手段】合成樹脂モノフィラメントからなる化粧ブラシ用毛材であって、合成樹脂がポリエステル系樹脂90〜55重量%およびポリエステルエラストマー10〜45重量%の混合物からなり、繊維軸との垂直方向の断面が異形断面形であり、且つ繊維軸方向に波形状を有するとともに、毛材の少なくとも一端に尖鋭状のテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、これら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えた化粧ブラシ用毛材、およびこの化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した化粧ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧ブラシ用毛材としては、獣毛および合成樹脂製毛材が多用されてきた。このうち、獣毛を使用した化粧ブラシは、化粧料の保持性や離脱性に優れるため化粧料を肌に満遍なく塗布することができるばかりか、柔軟性を有するため、使用時の肌触りが良好であった。しかし、近年の動物愛護の風潮により獣毛の入手が困難となりつつあり、さらに使用者の中には動物性アレルギーを発症する可能性があるため、獣毛からなる化粧ブラシを使用できない場合もあった。
【0003】
一方、合成樹脂製毛材は、容易に加工することができ、獣毛に比べ工業的な大量生産が可能で、さらには動物性アレルギーを発症しにくいなどの利点があるが、化粧ブラシとして使用した場合には、獣毛を使用した化粧ブラシに比べて化粧料の保持性や離脱性が低く、使用時の肌触りが良くないなどの問題を抱えていた。
【0004】
この問題解決のため、これまでに様々な手法がなされ、例えば、合成樹脂製毛材の繊維横断面内に複数の凹部と、中心から外側に向かって徐々に細くなる複数の凸部とを形成した尖鋭化合成繊維からなる毛材(例えば、特許文献1参照)が知られている。この尖鋭化合成繊維による毛材を化粧ブラシ用毛材として使用した場合は、液体化粧料の保持性については十分な効果が得られるものの、その離脱性が低いために肌へ満遍なく塗布することができず、また粉体化粧料についても保持性や離脱性が低いことから、塗布性能が十分ではなく、さらには肌触りも十分なものではなかった。
【0005】
また、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなり、10mm以下の波長および尖鋭部を有する化粧ブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)についても知られている。この化粧ブラシ用毛材は、粉体化粧料の塗布性能が良好で、柔らかく、肌触りに優れたものであるが、液体化粧料の保持性と離脱性が低いためにそれを肌へ満遍なく塗布することができず、獣毛を使用した化粧ブラシ用毛材に比べ塗布性能が十分なものではなかった。
【0006】
さらに、先端にテーパーを有し、断面が異形な毛材を、同じく先端にテーパーを有し、ストレートな大径毛材と波形状の小径毛材とともに混毛してなる筆穂(例えば、特許文献3参照)についても知られている。この筆穂は毛材同士のズレを防止し、穂先のまとまりや液の保持性に優れ、滑らかさ有するなど、絵画や書道用の筆として十分な性能を有するものであるが、液体および粉体化粧料は絵の具の顔料や墨とは異なる性質なものであるため、これらの毛材を化粧ブラシ用毛材として使用した場合には、液体および粉体化粧料の塗布性能が十分ではなく、肌触りも良好ではないなどの問題があった。
【0007】
つまり、従来技術による合成樹脂製毛材は、化粧ブラシ用毛材とした場合に粉体および液体化粧料の両方に使用にできるものではなく、さらには獣毛に匹敵する柔軟性と肌触りを十分兼ね備えたものではないため、化粧ブラシとして十分に性能を発揮せず、これらの特性を全て満足する化粧ブラシ用毛材の実現が強く求められていたのが実状であった。
【特許文献1】特許第1545642号公報
【特許文献2】特許第3434700号公報
【特許文献3】実開平4−124683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、これら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えた化粧ブラシ用毛材、およびこの化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、合成樹脂モノフィラメントからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記合成樹脂がポリエステル系樹脂90〜55重量%およびポリエステルエラストマー10〜45重量%の混合物からなり、繊維軸との垂直方向の断面が異形断面形状であり、且つ繊維軸方向に波形状を有するとともに、毛材の少なくとも一端に尖鋭状のテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材が提供される。
【0010】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材においては、
ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレートであること、
繊維軸方向の波形状の波長が15〜70mm、且つ波高が8mm以下であること、
繊維軸との垂直方向の断面が八葉形であること、および、
帯電防止剤が含有および/または塗布されていること、
がいずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たした場合には、さらに優れた性能を発揮する。
【0011】
また、本発明の化粧ブラシは、前記化粧用ブラシ毛材を毛材の少なくとも一部に使用したものであり、化粧用として優れた性能を有するブラシとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明する通り、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、これら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えた化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の化粧ブラシ用毛材について図1に従って説明する。
【0014】
図1は本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示したものであり、1は化粧ブラシ用毛材、2は化粧ブラシ用毛材の繊維軸と垂直方向の断面形状、3は化粧ブラシ用毛材の一端に形成されたテーパー部、Lは波形状の波長、およびHは波高を示している。
【0015】
本発明の化粧ブラシ用毛材1が、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができ、獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を持った毛材であるためには、本発明の化粧ブラシ用毛材1を構成する合成樹脂が、ポリエステル系樹脂90〜55重量%とポリエステルエラストマー10〜45重量%の混合物からなることが必要である。
【0016】
ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーとの混合比率が上記の範囲を外れた場合は、化粧ブラシに使用した際に十分な柔軟性が得られないために肌への接触が不十分となり、液体化粧料および粉体化粧料を満遍なく肌に塗布することができにくくなるとともに、適度な肌触りが得られにくくなるため好ましくない。なお、化粧ブラシの種類や用途に応じた毛腰が得られるように、その混合比率を上記範囲内で適宜調整することができるが、液体化粧料および粉体化粧料をより満遍なく肌に塗布することができ、さらに優れた肌触りと柔軟性を得るためには、その混合比率がポリエステル系樹脂85〜60重量%とポリエステルエラストマー15〜40重量%の混合物からなることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明の化粧ブラシ用毛材1を構成するポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、以下に説明するように、アルカリまたは酸により加水分解し、テーパー部3が容易に加工できるという理由から、特にポリブチレンテレフタレートが好ましく使用される。
【0018】
一方、本発明の化粧ブラシ用毛材1を構成するもう1成分のポリエステルエラストマーの具体例としては、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどに代表されるジオール成分とからなるポリエステルハードセグメント、および分子量600〜3000の脂肪族ポリエーテルソフトセグメントから形成されるポリエステルエーテルブロック共重合体などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、東レ・デュポン(株)製“ハイトレル”などは、容易に入手できるとともに、本発明の化粧ブラシ用毛材を得る上で好ましく使用することができる。
【0019】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、上記のポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーの混合物には、耐熱剤、耐候剤、可塑剤、酸化防止剤および着色剤などの慣用の添加剤を任意に含有せしめることができる。
【0020】
また、液体化粧料および粉体化粧料の両方の保持性に優れた化粧ブラシ用毛材を得るためには、化粧ブラシ用毛材1の繊維軸と垂直方向の断面形状が異形断面であることが必要である。なお、その断面2の形状としては、丸形以外の断面形状、例えば、三角形、四角形などの多角形、または、三葉形、五葉形などの多葉形などが挙げられるが、ブラシ用毛材には液体化粧料および粉体化粧料の保持性のほか離脱性も要求されるため、そのバランスに優れるとの理由から、本発明の化粧ブラシ用毛材1の断面2の形状は八葉形であることが好ましい。
【0021】
なお、毛材を構成する合成樹脂モノフィラメントの直径は、化粧ブラシの種類や用途に応じて適宜変えることができ、特に限定するものではないが、化粧ブラシ用として使用する場合には、一般には異形断面の外接円直径が0.030〜0.250mm、さらには0.050〜0.150mmの範囲であることが好ましい。
【0022】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材1が、液体化粧料および粉体化粧料の保持性と離脱性に優れるとともに、獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を持った毛材であるためには、化粧ブラシ用毛材1がその繊維軸方向に波形状を有し、さらに化粧ブラシ用毛材1の少なくとも一端に尖鋭状のテーパー部3を有することが必要である。なお、テーパー部3の長さは、化粧ブラシの種類や用途に応じて適宜変えることができ、特に限定するものではない。
【0023】
さらに、化粧ブラシ用毛材1が、液体化粧料および粉体化粧料の保持性と離脱性に一層優れ、より良好な肌触りと柔軟性を持つ毛材であるためには、波形状の波長Lが15〜70mm、且つ波高Hが8mm以下であることが好ましく、さらには、波長Lが20〜55mm、且つ波高Hが4mm以下であることが好ましい。この理由は、波長Lが15〜70mm、且つ波高Hが8mm以下の範囲から外れた場合には、肌触りの悪い化粧ブラシとなりやすいばかりか、液体化粧料および粉体化粧料の保持性と離脱性のバランスが崩れた化粧ブラシとなりやすいからである。なお、上記の範囲内であれば、化粧ブラシの種類や用途に応じて適宜その波長Lや波高Hを変えることも可能である。
【0024】
上記の化粧ブラシ用毛材1は、そのまま化粧ブラシとして使用することもできるが、特に化粧ブラシ用毛材に静電気が発生すると、化粧ブラシを製造する際に穂先成型等の加工が困難になるばかりか、粉体化粧料の保持性や離脱性に影響を及ぼし、優れた塗布性能が得られにくくなる場合がある。このような場合には、本発明の化粧ブラシ用毛材1に帯電防止剤を含有および/または塗布することが好ましい。
【0025】
なお、帯電防止剤としては、例えば、各種界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボンなどが挙げられ、これらの中から少なくとも1種を選ぶことができるが、本発明においては特にこれらに限定されない。
【0026】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材の製造方法について説明する。
【0027】
まず、本発明の化粧ブラシ用毛材1となる合成樹脂モノフィラメントは、例えば、ポリエステル系樹脂チップとポリエステルエラストマーチップのほか、必要に応じて各種添加剤を所定量混合した後、公知の溶融紡糸機に供給し、異形断面口金から溶融押出し、冷却、および延伸工程を経て製造することができる。
【0028】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントに繊維軸方向に波形状が付与される。合成樹脂モノフィラメントに波形状を付与する方法としては、公知の方法、例えば、1対からなる所定形状のギヤの間に合成樹脂モノフィラメントを通過させて波形状を付与するなどの方法が挙げられる。
【0029】
そして、波形状が付与された合成樹脂モノフィラメントは、さらにテーパー部3を形成するためにさらに加工される。合成樹脂モノフィラメントにテーパー部3を形成する方法としては、例えば、合成樹脂モノフィラメントを複数本束ねてテープ等で周囲を保護し、この束を化粧ブラシの種類や用途に応じた長さに切断した後、切断端部の片方または両方をアルカリ液に浸漬させて尖鋭状に溶解する方法のほか、機械研磨による方法が挙げられる。
【0030】
上記の製造方法により得られた化粧ブラシ用毛材1を使用した本発明の化粧ブラシは、公知の方法で製造することができ、製造方法については特に限定されない。
【0031】
以上説明した通り、本発明の化粧ブラシ用毛材1は、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、それら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えたものであるため、本発明の化粧ブラシ用毛材1を毛材の少なくとも一部に使用した化粧ブラシは、これらの特性を全て十分に発揮し、その実用性が極めて高いものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明の化粧ブラシ用毛材の評価方法については、次の通り行った。すなわち、実施例に示す化粧ブラシ用毛材を化粧ブラシ用の駒に入れ、穂先を整えた上で金属製筒に化粧ブラシ用毛材を差し込み、金属製筒へ柄を取り付けることにより、毛丈35mm、束径20mmのフェースブラシを作製し、以下の方法で性能評価を行った。
【0033】
〔粉体化粧料の塗布性能〕
作製したフェースブラシで成人女性25人対して粉体化粧料(資生堂:UVホワイト ホワイトアップベール)を使用して、実際に化粧をしてもらい、その塗布性能について回答を得た。なお、判定基準は以下の通り行った。
A・・化粧料の保持性および離脱性にすぐれ、肌に満遍なく均一に塗布することができた、
B・・化粧料の保持性および離脱性がやや劣るが実用上問題ない性能であった、
C・・化粧料の保持性および離脱性が劣り、肌に満遍なく均一に塗布することができなかった。
【0034】
〔液体化粧料の塗布性能〕
液体化粧料(コーセー:Fasio フィット&ステイ リキッドファンデーション)を使用して、成人女性25人対して液体化粧料を使用して、実際に化粧をしてもらい、その塗布性能について回答を得た。なお、判定基準は以下の通り行った。
A・・フェースブラシが化粧料を十分に含み、肌に満遍なく均一に塗布することができた、
B・・フェースブラシが化粧料を十分に含むが、肌に塗布する場合の均一性をやや欠いていた、
C・・フェースブラシが化粧料を十分に含まず、肌に塗布した場合に塗布斑を生じた。
【0035】
〔肌触り〕
上記の化粧料塗布性能評価と同時に粉体化粧料、液体化粧料を使用した場合での化粧ブラシの肌触りについても、回答を得た。なお、判定基準は以下の通り行った。
1・・柔軟であり獣毛に匹敵する肌触りであった、
2・・獣毛より劣るが良好な肌触りであった、
3・・特に良い肌触りではないが実用上問題はなかった、
4・・柔軟性および弾力性が不足し、肌への刺激が感じられ、肌触りがやや悪かった、
5・・柔軟性および弾力性が不足し、肌への刺激が顕著であり、肌触りが悪かった。
【0036】
〔実施例1〕
十分に予備乾燥したポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)製 “トレコン”1200S、以下PBTという)70重量%とポリエステルエラストマー(東レ・デュポン(株)製“ハイトレル”4767)30重量%を均等に分散するまで混合した後、押出型紡糸機へ供給し、加熱溶融された樹脂混合物を糸断面形状に対応する八葉形断面状のノズルから押出し、直ちに水中で冷却固化せしめて未延伸糸を得た。さらに得られた未延伸糸を温水中および乾熱浴中で延伸することにより、外接円直径0.080mmの八葉断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0037】
引き続き、この八葉断面モノフィラメントを加温しながら、1対のギヤの間に連続的に通過させることによって、八葉断面合成樹脂モノフィラメントの繊維軸方向に波形状を付与した。なお、使用するギヤの歯形やピッチおよび挟み圧は、最終製品での波長が28mm、波高が2mmとなるように選定した。
【0038】
次に、波形状が付与された八葉断面合成樹脂モノフィラメントを複数本に束ね、その束の周囲に紙テープを巻いて必要な長さにカットした後、切断端部を水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬させて八葉断面合成樹脂モノフィラメントの先端部に尖鋭状のテーパー部を形成し、さらにシリコーンエマルジョン系油剤(竹本油脂(株)社製 B711)を水で0.3%の濃度に希釈した溶液を帯電防止剤として塗布し、化粧ブラシ用毛材を作製した。
【0039】
そして得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1において、原料の混合比をPBT80重量%とポリエステルエラストマー20重量%にしたこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0041】
〔実施例3〕
実施例1において、原料の混合比をPBT50重量%とポリエステルエラストマー50重量%にしたこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0042】
〔実施例4〕
実施例1において、波形状の波長を75mm、波高を10mmに変更したこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0043】
〔比較例1〕
実施例1において、原料の混合比をPBT30重量%とポリエステルエラストマー70重量%にした以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0044】
〔比較例2〕
実施例1において、原料をPBT100重量%にした以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0045】
〔比較例3〕
実施例1において、原料をポリエステルエラストマー100重量%にした以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0046】
〔比較例4〕
実施例1において、波形状を形成していないこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0047】
〔比較例5〕
実施例1において、繊維軸と垂直方向の断面の形状を丸形にしたこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0048】
〔比較例6〕
実施例1において、テーパー部を形成していないこと以外は、同様の方法で化粧ブラシ用毛材を作製し、得られた化粧ブラシ用毛材を使用してフェースブラシを作製した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜4のフェースブラシは、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができた。つまり、化粧料が過不足もなく毛材に十分に保持されるとともに、塗布した際にはその殆どが離脱し、肌に満遍なく均一付着し、獣毛を使用した化粧ブラシと同等の塗布性能を示した。また、肌触りと柔軟性に優れ、獣毛に匹敵する毛材であると評価された。
【0051】
これらの実施例に対し、ポリエステル系樹脂とポリエステルエラストマーの組成比率が本発明の条件を満たさない比較例1〜比較例3のフェースブラシは、液体化粧料および粉体化粧料の塗布性能および肌触りがいずれも十分なものではなく、波形状を持たない比較例4のフェースブラシは、液体化粧料および粉体化粧料の塗布性能と肌触りがさらに不十分なものであった。また、繊維軸方向に垂直な断面形状が丸形断面の比較例5のフェースブラシは、粉体化粧料および液体化粧料の保持性が低いために塗布性能が十分なものではなく、さらに毛材の一端にテーパー部を形成していない比較例6のフェースブラシは、肌触りが十分なものでなかった。このように比較例のフェースブラシは、いずれも粉体化粧料および液体化粧料の保持性と離脱性が低く、獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えていないために、化粧ブラシとして十分な性能を発揮するものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上、説明した通り、本発明の化粧ブラシ用毛材は、液体化粧料および粉体化粧料のいずれをも満遍なく肌に塗布することができるとともに、これら化粧料の保持性と離脱性にも優れ、且つ獣毛に匹敵する肌触りと柔軟性を兼ね備えたものであるため、本発明の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した化粧ブラシは、これらの特性を全て十分に発揮し、その実用性が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の化粧ブラシ用毛材の拡大模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 化粧ブラシ用毛材
2 化粧ブラシ用毛材の断面
3 テーパー部
L 波形状の波長
H 波形状の波高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂モノフィラメントからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記合成樹脂がポリエステル系樹脂90〜55重量%およびポリエステルエラストマー10〜45重量%の混合物からなり、繊維軸との垂直方向の断面が異形断面形状であり、且つ繊維軸方向に波形状を有するとともに、毛材の少なくとも一端に尖鋭状のテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項3】
前記繊維軸方向の波形状の波長が15〜70mm、且つ波高が8mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の化粧用ブラシ毛材。
【請求項4】
前記繊維軸との垂直方向の断面が八葉形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項5】
帯電防止剤が含有および/または塗布されていることを特徴とする請求項1〜4記載のいずれか1項に記載の化粧用ブラシ毛材。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の化粧用ブラシ毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする化粧ブラシ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−136523(P2006−136523A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328977(P2004−328977)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】