化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシ
【課題】従来の合成樹脂製の化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れると共に、肌への感触が極めて良好であり、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた化粧ブラシ用毛材およびこの毛材を用いた化粧ブラシを提供する。
【解決手段】異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材１であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝４と、繊維軸方向に連続形成された波形６を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部２が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【解決手段】異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材１であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝４と、繊維軸方向に連続形成された波形６を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部２が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、化粧粉や化粧液などの化粧料の含み具合および塗布性能が優れると共に、肌への感触も良好な化粧ブラシ用毛材およびこの化粧ブラシ用毛材を使用した化粧ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、化粧ブラシの毛材としては、山羊、リスやイタチなどの獣毛が多用されてきたが、近年ではこれら獣毛の調達が困難となるに伴い、これに代わってナイロンやポリブチレンテレフタレートなどを使用した合成樹脂製の化粧ブラシ用毛材の使用が増加しつつある。
【０００３】
この合成樹脂製化粧ブラシ用毛材としては、丸断面の直線状モノフィラメントの先端をテーパー状としたものが一般的であるが、この毛材は、獣毛に比べ表面が平滑であることに起因して、化粧料がブラシに付着しにくいため、化粧料の含みが悪く、また塗布初期に化粧料が離脱し易く、塗布ムラを生じるなどの点で塗布性能にも劣るばかりか、毛材が硬くて肌にチクチク感があり、肌への感触も劣るという問題を有していた。
【０００４】
これらの問題を改善した化粧ブラシ用毛材としては、毛材の断面に凹凸部を複数形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献１参照）、および繊維軸方向に一定の波形状を形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献２参照）が既に知られている。
【０００５】
しかしながら、これら従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材は、化粧ブラシとして用いた場合の化粧料の含み具合や塗布性能および肌への感触についてはある程度は改善されるものの、その改善効果はいまだに十分とはいえず、さらに獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材の実現がしきりに求められていた。
【特許文献１】特許第１５４５６４２号公報（第１頁）
【特許文献２】特開２００５−９５４５７号公報（第１頁）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【０００７】
したがって、本発明の目的は、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が極めて良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために本発明によれば、異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と、繊維軸方向に連続形成された波形を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材が提供される。
【０００９】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材においては、
前記異形断面合成樹脂モノフィラメントの断面形状が、３〜８の多角形または多葉形であること、
前記カットブリッスルの外周に連続捻り形成された螺旋状の溝のピッチ数が、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲にあること、および
前記繊維軸方向に連続形成された波形の波長が、２〜１０ｍｍの範囲にあり、かつ波高が０．５〜４ｍｍの範囲にあること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【００１０】
また、本発明の化粧ブラシは、上記の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が極めて良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下に本発明の化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシについて、図面にしたがい詳細に説明する。
【００１３】
図１は本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した側面図および一部拡大断面図であり、１は化粧ブラシ用毛材、２は化粧ブラシ用毛材の一端に形成されたテーパー部、３はストレート部、４は連続螺旋状の溝、５は毛材の断面、６は波形、Ｌは波形の波長、Ｈは波高を、それぞれ示している。
【００１４】
図１から分かるように、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、異形断面（この実施例では断面５が四角形）の合成樹脂モノフィラメントを、所望の長さに切断したカットブリッスルからなり、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と４、繊維軸方向に連続形成された波形６を有すると共に、その少なくとも一端には先端に向かって尖鋭なテーパー部２が形成されている。
【００１５】
つまり、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、モノフィラメント外周に連続螺旋状の溝４と、繊維軸方向に連続した波形６とを併せて有することにより、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、優れた化粧料の含み具合と塗布性能を発揮する。さらに、化粧ブラシに加工した時に、ブラシ先端が広がり易くなると共に、毛材がたわみ易くなるために、肌への感触が極めて良好な化粧ブラシ用毛材となるのである。
【００１６】
なお、上記の条件を満たすことにより、化粧料の含み具合や塗布性能に優れ、肌への感触にも優れた改善効果が得られるが、カットブリッスルの断面形状５については、化粧料の含み具合と化粧の際の化粧料の離脱性とのバランスが良くなることから、３〜８の多角形または多葉形であることが好ましく、さらには４〜７の多角形または多葉形断面であることがより好ましい。
【００１７】
また、外周に形成された連続螺旋状の溝６のピッチ数は、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲、特に０．６〜１２個／ｃｍの範囲で分布存在していることが好ましく、このようにすることにより化粧料が保持し易くなり、かつ、塗布する際は化粧料が一度に排出されず、連続螺旋状の溝６に保持された化粧料をゆっくり排出させることができ、均一で持続性がある塗布効果が得られやすくなる。一方、連続螺旋状の溝６のピッチ数が上記の範囲未満や範囲を超える場合には、化粧料の含み具合や塗布性能が劣り、十分な改善効果が得られない。
【００１８】
さらに、波形６の波長Ｌは、２〜１０ｍｍの範囲、特に３〜８ｍｍにあり、かつ波高Ｈが０．５〜４ｍｍの範囲、特に０．６〜３ｍｍの範囲にあることがより好ましい。つまり、上記の範囲とすることにより、毛材への化粧料の保持性がさらに向上すると共に、毛材のたわみが適度に付与されることにより、肌への感触が極めて良好となる。
【００１９】
一方、波形６の波長Ｌと波高Ｈが上記の範囲未満や範囲を超える場合には、化粧料の塗布効果や肌への感触が悪くなり、十分な改善効果が得られない。
【００２０】
また、本発明の化粧ブラシ用毛材の少なくとも一端には、先端に向かって尖鋭なテーパー形状が形成されていることが必要であり、この条件を満たすことにより、肌への感触が獣毛に似た化粧ブラシ用毛材が得られる。
【００２１】
ここで、本発明の化粧ブラシ用毛材のストレート部３の外形は、化粧ブラシの種類に応じて適宣選択することができるが、化粧ブラシに要求される肌への感触などを考慮すると、０．０５〜０．２５ｍｍの範囲であることが好ましく、さらには０．０７〜０．２０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００２２】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材１に用いられる合成樹脂としては、溶融紡糸が可能なものであれば特に限定はされず任意に選択することができるが、中でも、化粧ブラシ用毛材１の少なくとも一端にテーパー形状を形成するに際して、後に説明する通り、アルカリ溶解法で容易にテーパー加工を施すことができることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【００２３】
また、本発明の化粧ブラシ用毛材１には、本発明を阻害しない範囲であれば耐熱剤、耐光剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤および可塑剤などの添加剤などを任意に含有させることができる。
【００２４】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材１の製造方法について、以下に具体例を挙げて説明する。
【００２５】
なお、以下に説明する製造方法は、本発明の化粧ブラシ用毛材１を得るための一例に過ぎず、全てこの方法に限定されるものでない。
【００２６】
まず、原料となる合成樹脂チップを公知の溶融紡糸機に供給した後、所望の異形断面形状を有する紡糸口金孔から押し出し、冷却個化、熱延伸したモノフィラメントを巻き取る。
【００２７】
次に、一旦巻き取られた異形断面モノフィラメントを撚糸機に掛けて捻ることにより、モノフィラメントの外周にピッチ数が０．５〜１５個／ｃｍの螺旋状溝を付与する。この状態では片撚りのため捻りが戻ろうとするので、次いで所望の熱セット条件での熱処理を施して捻り止めセットを行った後、上下対称で一対の歯車の隙間に通過させることにより、螺旋状溝と繊維軸方向に沿った波形が連続して形成されたモノフィラメントができ上がり、これを一旦束にして巻き取る。
【００２８】
この際、歯車のピッチや上下歯車の隙間を変えることで、目的とする波形の波長および波高を設定することができる。
【００２９】
次いで、巻き取られたモノフィラメントの束を、一般には２５〜７０ｍｍの範囲の長さにカットし、カットブリッスルに加工する。その後、このカットブリッスルの少なくとも一端をテーパー加工して、テーパー部を形成する。
【００３０】
ここで、テーパー部の加工方法としては、研磨などの物理的処理や、酸・アルカリ溶解法などの化学的処理を採用することができ、特にアルカリ溶解法は、容易にテーパー形状を形成することができるとともに、アルカリ液の濃度、アルカリ液の温度、アルカリ液への浸漬深さ、および浸漬時間などを適宣調整することにより、所望形状のテーパー部を容易に形成できることから有利である。
【００３１】
上記の製造方法により得られた化粧ブラシ用毛材を使用した本発明の化粧ブラシは、公知の方法で製造することができ、その製造方法について特に限定されない。
【実施例】
【００３２】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、実施例および比較例における各化粧ブラシの性能評価は次の方法により行った。
【００３３】
［化粧料塗布性能］
成人女性１５名に対して、獣毛使用のフェースブラシと実施例および比較例で作製したフェースブラシとを使用して、粉体化粧料（アイビー化粧品：フェースカラーパウダー）を肌に塗布してもらい、以下の判定基準を基にして、化粧ブラシへの化粧粉の含み具合と塗布斑の発生について回答を得た。
判定：◎・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が多く、塗布斑も少なかった、
○・・・獣毛使用のものと同等の化粧粉の含み具合と塗布斑であった、
△・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が少なく、塗布斑も多かった、
×・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が極めて悪く、塗布斑も著しかった。
【００３４】
［肌への感触］
上記化粧料の塗布性能評価と同時に、以下の判定基準を基にして、肌への感触についても回答を得た。
判定：１・・・極めて柔軟であり、獣毛使用のものよりも優れた触感であった、
２・・・柔軟であり獣毛使用のものと同等の触感であった、
３・・・獣毛使用のものに比べてやや劣るが、実用上問題はなかった、
４・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が感じられ、触感が良くなかった、
５・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が強く感じられ、触感が悪かった。
【００３５】
［実施例１］
ポリブチレンテレフタレート樹脂（東レ（株）製 ＰＢＴ１２００Ｓ）を用いて、エクストルダー型紡糸機にて２７０℃に加熱溶融させた樹脂を、異形断面形状に対応した４角形状のノズルから押し出し、冷却、続いて延伸することによって、外接円が０．１００ｍｍの４角断面モノフィラメントを作成した。続いて、この４角断面モノフィラメントを撚糸機に掛けて捻ることにより、モノフィラメントの外周にピッチ数２．０個／ｃｍの螺旋状溝を付与して一旦巻き取った。次に、１８０℃に加温しながら捻り止めセットを行った後、上下対称で一対の歯車の隙間に通過させることにより、さらに波長が４ｍｍで、波高が２ｍｍの波形を連続して形成した後、このモノフィラメントを一旦束にして巻き取った。
【００３６】
さらに、このモノフィラメントを所望の長さにカットし、ブリッスルとした後、ブリッスルの一端に、アルカリ溶解法でテーパー部を形成することにより、化粧ブラシ用毛材を作製した。
【００３７】
そして、この化粧ブラシ用毛材を基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００３８】
［実施例２］
実施例１において、ノズルの孔の形状を変えて、５葉断面モノフィラメントを製糸したこと以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００３９】
［実施例３、４、５および比較例１、２］
螺旋状溝の数および波形状を、表１に示すように変更した以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００４０】
［比較例３］
実施例１において、ノズルの孔の形状を丸断面に変更して、得られたモノフィラメントにテーパー状に加工しなかったこと以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００４１】
これら化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシの評価結果を表１に示す。
【００４２】
【表１】
【００４３】
表１の結果から明らかなように、本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、獣毛に匹敵するかそれ以上の粉含みと塗布性能が得られ、かつ肌への感触も優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
本発明の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、化粧粉の含みや塗布性能に優れ、肌への感触も極めて良好で使い心地が良いため、獣毛から合成樹脂製化粧用ブラシへの切り替えにとって貢献するところが極めて大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【００４５】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示す側面図および一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【００４６】
１ 化粧ブラシ用毛材
２ テーパー部
３ ストレート部
４ 螺旋状の溝
５ 断面形状
６ 波形
Ｌ 波長
Ｈ 波高
【技術分野】
【０００１】
本発明は、化粧粉や化粧液などの化粧料の含み具合および塗布性能が優れると共に、肌への感触も良好な化粧ブラシ用毛材およびこの化粧ブラシ用毛材を使用した化粧ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、化粧ブラシの毛材としては、山羊、リスやイタチなどの獣毛が多用されてきたが、近年ではこれら獣毛の調達が困難となるに伴い、これに代わってナイロンやポリブチレンテレフタレートなどを使用した合成樹脂製の化粧ブラシ用毛材の使用が増加しつつある。
【０００３】
この合成樹脂製化粧ブラシ用毛材としては、丸断面の直線状モノフィラメントの先端をテーパー状としたものが一般的であるが、この毛材は、獣毛に比べ表面が平滑であることに起因して、化粧料がブラシに付着しにくいため、化粧料の含みが悪く、また塗布初期に化粧料が離脱し易く、塗布ムラを生じるなどの点で塗布性能にも劣るばかりか、毛材が硬くて肌にチクチク感があり、肌への感触も劣るという問題を有していた。
【０００４】
これらの問題を改善した化粧ブラシ用毛材としては、毛材の断面に凹凸部を複数形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献１参照）、および繊維軸方向に一定の波形状を形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献２参照）が既に知られている。
【０００５】
しかしながら、これら従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材は、化粧ブラシとして用いた場合の化粧料の含み具合や塗布性能および肌への感触についてはある程度は改善されるものの、その改善効果はいまだに十分とはいえず、さらに獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材の実現がしきりに求められていた。
【特許文献１】特許第１５４５６４２号公報（第１頁）
【特許文献２】特開２００５−９５４５７号公報（第１頁）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【０００７】
したがって、本発明の目的は、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が極めて良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために本発明によれば、異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と、繊維軸方向に連続形成された波形を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材が提供される。
【０００９】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材においては、
前記異形断面合成樹脂モノフィラメントの断面形状が、３〜８の多角形または多葉形であること、
前記カットブリッスルの外周に連続捻り形成された螺旋状の溝のピッチ数が、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲にあること、および
前記繊維軸方向に連続形成された波形の波長が、２〜１０ｍｍの範囲にあり、かつ波高が０．５〜４ｍｍの範囲にあること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【００１０】
また、本発明の化粧ブラシは、上記の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が極めて良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下に本発明の化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシについて、図面にしたがい詳細に説明する。
【００１３】
図１は本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した側面図および一部拡大断面図であり、１は化粧ブラシ用毛材、２は化粧ブラシ用毛材の一端に形成されたテーパー部、３はストレート部、４は連続螺旋状の溝、５は毛材の断面、６は波形、Ｌは波形の波長、Ｈは波高を、それぞれ示している。
【００１４】
図１から分かるように、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、異形断面（この実施例では断面５が四角形）の合成樹脂モノフィラメントを、所望の長さに切断したカットブリッスルからなり、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と４、繊維軸方向に連続形成された波形６を有すると共に、その少なくとも一端には先端に向かって尖鋭なテーパー部２が形成されている。
【００１５】
つまり、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、モノフィラメント外周に連続螺旋状の溝４と、繊維軸方向に連続した波形６とを併せて有することにより、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、優れた化粧料の含み具合と塗布性能を発揮する。さらに、化粧ブラシに加工した時に、ブラシ先端が広がり易くなると共に、毛材がたわみ易くなるために、肌への感触が極めて良好な化粧ブラシ用毛材となるのである。
【００１６】
なお、上記の条件を満たすことにより、化粧料の含み具合や塗布性能に優れ、肌への感触にも優れた改善効果が得られるが、カットブリッスルの断面形状５については、化粧料の含み具合と化粧の際の化粧料の離脱性とのバランスが良くなることから、３〜８の多角形または多葉形であることが好ましく、さらには４〜７の多角形または多葉形断面であることがより好ましい。
【００１７】
また、外周に形成された連続螺旋状の溝６のピッチ数は、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲、特に０．６〜１２個／ｃｍの範囲で分布存在していることが好ましく、このようにすることにより化粧料が保持し易くなり、かつ、塗布する際は化粧料が一度に排出されず、連続螺旋状の溝６に保持された化粧料をゆっくり排出させることができ、均一で持続性がある塗布効果が得られやすくなる。一方、連続螺旋状の溝６のピッチ数が上記の範囲未満や範囲を超える場合には、化粧料の含み具合や塗布性能が劣り、十分な改善効果が得られない。
【００１８】
さらに、波形６の波長Ｌは、２〜１０ｍｍの範囲、特に３〜８ｍｍにあり、かつ波高Ｈが０．５〜４ｍｍの範囲、特に０．６〜３ｍｍの範囲にあることがより好ましい。つまり、上記の範囲とすることにより、毛材への化粧料の保持性がさらに向上すると共に、毛材のたわみが適度に付与されることにより、肌への感触が極めて良好となる。
【００１９】
一方、波形６の波長Ｌと波高Ｈが上記の範囲未満や範囲を超える場合には、化粧料の塗布効果や肌への感触が悪くなり、十分な改善効果が得られない。
【００２０】
また、本発明の化粧ブラシ用毛材の少なくとも一端には、先端に向かって尖鋭なテーパー形状が形成されていることが必要であり、この条件を満たすことにより、肌への感触が獣毛に似た化粧ブラシ用毛材が得られる。
【００２１】
ここで、本発明の化粧ブラシ用毛材のストレート部３の外形は、化粧ブラシの種類に応じて適宣選択することができるが、化粧ブラシに要求される肌への感触などを考慮すると、０．０５〜０．２５ｍｍの範囲であることが好ましく、さらには０．０７〜０．２０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００２２】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材１に用いられる合成樹脂としては、溶融紡糸が可能なものであれば特に限定はされず任意に選択することができるが、中でも、化粧ブラシ用毛材１の少なくとも一端にテーパー形状を形成するに際して、後に説明する通り、アルカリ溶解法で容易にテーパー加工を施すことができることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【００２３】
また、本発明の化粧ブラシ用毛材１には、本発明を阻害しない範囲であれば耐熱剤、耐光剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤および可塑剤などの添加剤などを任意に含有させることができる。
【００２４】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材１の製造方法について、以下に具体例を挙げて説明する。
【００２５】
なお、以下に説明する製造方法は、本発明の化粧ブラシ用毛材１を得るための一例に過ぎず、全てこの方法に限定されるものでない。
【００２６】
まず、原料となる合成樹脂チップを公知の溶融紡糸機に供給した後、所望の異形断面形状を有する紡糸口金孔から押し出し、冷却個化、熱延伸したモノフィラメントを巻き取る。
【００２７】
次に、一旦巻き取られた異形断面モノフィラメントを撚糸機に掛けて捻ることにより、モノフィラメントの外周にピッチ数が０．５〜１５個／ｃｍの螺旋状溝を付与する。この状態では片撚りのため捻りが戻ろうとするので、次いで所望の熱セット条件での熱処理を施して捻り止めセットを行った後、上下対称で一対の歯車の隙間に通過させることにより、螺旋状溝と繊維軸方向に沿った波形が連続して形成されたモノフィラメントができ上がり、これを一旦束にして巻き取る。
【００２８】
この際、歯車のピッチや上下歯車の隙間を変えることで、目的とする波形の波長および波高を設定することができる。
【００２９】
次いで、巻き取られたモノフィラメントの束を、一般には２５〜７０ｍｍの範囲の長さにカットし、カットブリッスルに加工する。その後、このカットブリッスルの少なくとも一端をテーパー加工して、テーパー部を形成する。
【００３０】
ここで、テーパー部の加工方法としては、研磨などの物理的処理や、酸・アルカリ溶解法などの化学的処理を採用することができ、特にアルカリ溶解法は、容易にテーパー形状を形成することができるとともに、アルカリ液の濃度、アルカリ液の温度、アルカリ液への浸漬深さ、および浸漬時間などを適宣調整することにより、所望形状のテーパー部を容易に形成できることから有利である。
【００３１】
上記の製造方法により得られた化粧ブラシ用毛材を使用した本発明の化粧ブラシは、公知の方法で製造することができ、その製造方法について特に限定されない。
【実施例】
【００３２】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、実施例および比較例における各化粧ブラシの性能評価は次の方法により行った。
【００３３】
［化粧料塗布性能］
成人女性１５名に対して、獣毛使用のフェースブラシと実施例および比較例で作製したフェースブラシとを使用して、粉体化粧料（アイビー化粧品：フェースカラーパウダー）を肌に塗布してもらい、以下の判定基準を基にして、化粧ブラシへの化粧粉の含み具合と塗布斑の発生について回答を得た。
判定：◎・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が多く、塗布斑も少なかった、
○・・・獣毛使用のものと同等の化粧粉の含み具合と塗布斑であった、
△・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が少なく、塗布斑も多かった、
×・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が極めて悪く、塗布斑も著しかった。
【００３４】
［肌への感触］
上記化粧料の塗布性能評価と同時に、以下の判定基準を基にして、肌への感触についても回答を得た。
判定：１・・・極めて柔軟であり、獣毛使用のものよりも優れた触感であった、
２・・・柔軟であり獣毛使用のものと同等の触感であった、
３・・・獣毛使用のものに比べてやや劣るが、実用上問題はなかった、
４・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が感じられ、触感が良くなかった、
５・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が強く感じられ、触感が悪かった。
【００３５】
［実施例１］
ポリブチレンテレフタレート樹脂（東レ（株）製 ＰＢＴ１２００Ｓ）を用いて、エクストルダー型紡糸機にて２７０℃に加熱溶融させた樹脂を、異形断面形状に対応した４角形状のノズルから押し出し、冷却、続いて延伸することによって、外接円が０．１００ｍｍの４角断面モノフィラメントを作成した。続いて、この４角断面モノフィラメントを撚糸機に掛けて捻ることにより、モノフィラメントの外周にピッチ数２．０個／ｃｍの螺旋状溝を付与して一旦巻き取った。次に、１８０℃に加温しながら捻り止めセットを行った後、上下対称で一対の歯車の隙間に通過させることにより、さらに波長が４ｍｍで、波高が２ｍｍの波形を連続して形成した後、このモノフィラメントを一旦束にして巻き取った。
【００３６】
さらに、このモノフィラメントを所望の長さにカットし、ブリッスルとした後、ブリッスルの一端に、アルカリ溶解法でテーパー部を形成することにより、化粧ブラシ用毛材を作製した。
【００３７】
そして、この化粧ブラシ用毛材を基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００３８】
［実施例２］
実施例１において、ノズルの孔の形状を変えて、５葉断面モノフィラメントを製糸したこと以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００３９】
［実施例３、４、５および比較例１、２］
螺旋状溝の数および波形状を、表１に示すように変更した以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００４０】
［比較例３］
実施例１において、ノズルの孔の形状を丸断面に変更して、得られたモノフィラメントにテーパー状に加工しなかったこと以外は、実施例１と同様の方法で化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシを作製した。
【００４１】
これら化粧ブラシ用毛材およびフェースブラシの評価結果を表１に示す。
【００４２】
【表１】
【００４３】
表１の結果から明らかなように、本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、獣毛に匹敵するかそれ以上の粉含みと塗布性能が得られ、かつ肌への感触も優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【００４４】
本発明の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、化粧粉の含みや塗布性能に優れ、肌への感触も極めて良好で使い心地が良いため、獣毛から合成樹脂製化粧用ブラシへの切り替えにとって貢献するところが極めて大きいといえる。
【図面の簡単な説明】
【００４５】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示す側面図および一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【００４６】
１ 化粧ブラシ用毛材
２ テーパー部
３ ストレート部
４ 螺旋状の溝
５ 断面形状
６ 波形
Ｌ 波長
Ｈ 波高
【特許請求の範囲】
【請求項１】
異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と、繊維軸方向に連続形成された波形を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記異形断面合成樹脂モノフィラメントの断面形状が、３〜８の多角形または多葉形であることを特徴とする請求項１に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項３】
前記カットブリッスルの外周に連続捻り形成された螺旋状の溝のピッチ数が、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲にあることを特徴とする請求項１または２に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項４】
前記繊維軸方向に連続形成された波形の波長が、２〜１０ｍｍの範囲にあり、かつ波高が０．５〜４ｍｍの範囲にあることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか１項記載の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする化粧ブラシ。
【請求項１】
異形断面合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、前記カットブリッスルには、外周に連続捻り形成された螺旋状の溝と、繊維軸方向に連続形成された波形を有すると共に、その少なくとも一端にテーパー部が形成されていることを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記異形断面合成樹脂モノフィラメントの断面形状が、３〜８の多角形または多葉形であることを特徴とする請求項１に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項３】
前記カットブリッスルの外周に連続捻り形成された螺旋状の溝のピッチ数が、繊維軸方向の長さに対して０．５〜１５個／ｃｍの範囲にあることを特徴とする請求項１または２に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項４】
前記繊維軸方向に連続形成された波形の波長が、２〜１０ｍｍの範囲にあり、かつ波高が０．５〜４ｍｍの範囲にあることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項５】
請求項１〜４のいずれか１項記載の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする化粧ブラシ。
【図１】
【公開番号】特開２００８−２１２５０９（Ｐ２００８−２１２５０９Ａ）
【公開日】平成２０年９月１８日（２００８．９．１８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−５６５８３（Ｐ２００７−５６５８３）
【出願日】平成１９年３月７日（２００７．３．７）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年９月１８日（２００８．９．１８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月７日（２００７．３．７）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
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