説明

化粧ボード

【課題】基板の地肌を視認できる程に化粧層が高い透明性を備えており、かつ、環境問題や資源問題にも配慮した化粧ボードを提供する。
【手段】基板2にプリプレグ3を重ねてから加熱・加圧してプリプレグ3の樹脂を硬化させることにより、透明な化粧層4を有する化粧ボード1が製造される。プリプレグ3は薄シート材にジアリルフタレート系樹脂を含浸させてなるもので、薄シート材はパルプを素材にした不織布(不織紙)又は紙であり、水に濡れると透ける性質を有している。薄シート材は目付け量が25〜50g /m2 であり、この薄シート材にジアリルフタレート系未反応樹脂を1m2 当たり75〜100g 含浸させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具類や建物の内装等に使用する木質系の化粧ボード及びその化粧層用材料となるプリプレグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質系化粧ボードは基板の表面に樹脂化粧層を積層した構造になっており、基板には主として木の単板や合板が使用されている。また、化粧層を形成する手段には、UV塗装等の塗装方式と、メラミン樹脂やジアリルフタレート樹脂(ダップ樹脂)から成る樹脂化粧板を接着剤で貼り合わせる接着方式とが主流であった。
【0003】
しかし、これらのいずれの方式も、有害物質(例えばホルムアルデヒド)が飛散したり工程が多い等の問題、或いは、化粧層は不透明であるため基板の特徴を活かすことができない等の問題があった。また、森林資源保護や環境負荷の低減といった点から、廃棄物や成長が早い植物を材料にしてボード化すること(換言するとバイオマス材料の活用)も要請されている。
【0004】
そこで、特許文献1には、環境問題や資源問題に配慮すると共に天然素材の基板の表面(外観)の特徴を活かした化粧ボードに関する技術として、基板を、リサイクルボード、パーティクルボード、古紙、等の廃材を素材として成形し、この基板の表面に、オレフィン系樹脂又はPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の透明な熱可塑性樹脂フィルムを接着剤で貼ることが記載されている。
【0005】
他方、特許文献2には、ジアリルフタレート系の未反応樹脂を基材に含浸させたプリプレグを基板に重ね、両者を加熱しつつ加圧して樹脂を反応・硬化させることにより、ジアリルフタレート樹脂からなる化粧層を基板に一体化することがが記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、ジアリルフタレート樹脂を使用したプリプレグの基材としてアクリル系繊維シートを使用することにより、化粧層に基板の地肌を視認できる透明性を付与することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−179888号公報
【特許文献2】特開2004−149592号公報
【特許文献3】特開平3−255138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成によると、透明フィルムを介して基板の地肌が透けて見えるため、基板が例えば木目を有している場合はその風合いを模様としてそのまま活かすことができる一方、基板が廃材を固めたエコ材料である場合は環境に優しいことをアピールすることができ、いずれにしても、基板の持ち味を意匠として利用できる点で優れている。
【0008】
しかし、フィルムは硬度が低いため耐傷性に劣る点や、基板の表面が粗いとフラット性が損なわれる虞がある点、或いは、廃棄して焼却するに際して接着剤から有害物質が発生する虞がある点に問題があった。
【0009】
他方、特許文献2の構成によると、原料樹脂の硬化を利用して化粧層が基板に一体化されるため接着剤は使用せず、また、ジアリルフタレートは燃焼によって有害物質が発生することはないため、廃棄した後の焼却時に有害物質が発生しない利点や、基材の表面が多少粗くてもプレスに際してのなじみ変形によってフラット性を確保できる利点、更に、ジアリルフタレート樹脂の特性として耐傷性や耐汚性に優れている利点、或いは、化粧層を形成した後に基板の外周面を切削加工してから化粧層を基板の外周面に折り曲げて接着するプレフォーミングも容易に行える利点がある。
【0010】
また、特許文献3の構成によると、ジアリルフタレート樹脂の特性を利用しつつ透明性を確保できるが、プリプレグの基材としてアクリル系繊維を使用するものであるため、薄いシートに加工し難い点や、腰が弱くて扱いにくくなる虞がある点、或いは、廃棄して焼却したときに有害物質が発生する虞がある点が問題であった。
【0011】
本願発明は、化粧層の素材としてジアリルフタレート樹脂を使用することは特許文献2や特許文献3の考え方を踏襲しつつ、実用性等についてより改善された化粧ボードを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、化粧ボードとその製造に使用するプリプレグとをを含んでいる。請求項1の発明は化粧ボードに係るもので、この化粧ボードは、基本構造として、有機質天然材料から成る基板の片面又は両面に、薄シート材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを重ねて加熱・加圧することによって樹脂の化粧層が一体に形成されており、外観上の特徴として、前記化粧層は人が基板の地肌面を視認できる程度の透明性を有している。
【0013】
そして、本願発明者たちは実験を繰り返して、前記薄シート材としてセルロース系でかつ使用前の状態では水に濡れると透ける性質を有するものを使用すると共に、前記熱硬化性樹脂としてジアリルフタレート系樹脂を使用することにより、透明性を持つ化粧層を得るに至った。
【0014】
請求項2の発明はプリプレグに係るものであり、このプリプレグは、薄シート材に未反応原料樹脂が含浸しており、有機質天然材料から成る基板に重ねた状態で加熱・加圧して原料樹脂を硬化させることにより、前記基板に一体化して樹脂の化粧層となる。そして、特徴として、セルロース系でかつ使用前の状態で水に濡れると透ける性質を有すると共に目付け量が25〜50g /m2 である薄シート材を備えており、この薄シート材に、ジアリルフタレート系未反応樹脂を1m2 当たり75〜100g 含浸させている。
【0015】
プリプレグを構成する薄シート材は、請求項3に記載したように、パルプを原料にした不織紙(薄い不織布)又は再生紙とするのが好ましい。敢えて述べるまでもないが、パルプにはピュアパルプと再生パルプとが含まれる。薄シート材は積層構造でもよい。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によると、プリプレグにおいて原料樹脂を担持する薄シート材として、例えばパルプのようなセルロース系素材を用いるものであるため、例えば既存の紙をそのまま使用できるというようにコストパフォーマンスに優れており、かつ、腰が強いと共に樹脂の含浸性にも優れており、このため実用性に優れている。更に、薄シート材は天然素材であるため、化粧ボードを廃棄して焼却するに際して薄シート材に起因した有害ガスが発生することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を説明する。図1では化粧ボード1の製造工程を大雑把に示している。化粧ボード1の材料として、(A)に示すように、有機天然材料を素材とした基板2と、薄シート材にジアリルフタレート系未反応樹脂を含浸させたプリプレグ3とが使用される。本実施形態では、基板2の表裏両面にそれぞれプリプレグ3を重ね合わせており、(B)に示すように、これら三者をホットプレス装置5によって加熱しつつ加圧することにより、プリプレグ3に含まれた樹脂を反応・硬化させて、(C)に示すように、基板2の表裏に化粧層4が一体化された化粧ボード1を得る。
【0018】
基板2の素材は天然系であれば良い。例えば木の単板、木の合板、パーティクルボード、粉状や粒状・繊維状・薄片状等の不定形材料を固めたもの等を使用できる。不定形材料としては、例えば、草類、藁類(稲藁,麦藁)、籾殻、オガクズ、鉋屑、コーヒー滓、大豆の絞り滓、サトウキビの搾り滓、古紙、再生パルプ等の一種又は複数種を使用できる。
【0019】
薄シート材は、例えばパルプを素材にした不織紙や紙(普通紙、再生紙など)を使用できる。紙を使用する場合、洋紙と和紙との区別は問わないが、水に濡らすと透ける性質があるものを用いる。従って、クラフト紙は好ましくない。コート紙も好ましくないといえる。樹脂の含浸性を良くするには、サイズ度は低いの好ましいといえる。
【0020】
薄シート材の秤量は25〜50g /m2 の範囲が好適である。25g /m2 より軽いと樹脂の含浸能力や腰の強さの点で問題が生じ、秤量が50g /m2 より重いと透明性が低くなり過ぎる。なお、薄シート材は積層しても良いのであり、従って、例えば10g /m2 のものを3〜5枚重ねるといったことも可能である。全体として25〜50g /m2 の範囲内であれば良い。
【0021】
プリプレグ3を構成する樹脂はアリルフタレートを主成分としているが、一般には、硬度や耐汚性、耐熱性、耐薬品性等の特性を高めるため、特許文献2に記載したように各種の副成分や補助剤を添加することが多い。
【0022】
ジアリルフタレート樹脂を主成分とした原料樹脂は、モノマー又はオリゴー(プレポリマー)の状態で存在しており、周知のように、適当な溶媒で粘度を低めてから薄シート材に含浸させる。薄シート材は溶媒で濡れると透明性される。樹脂の含浸量は、薄シート材の1m2 当たり75〜100g の範囲が好適である。含浸量が75g よりも少ないと化粧層4が薄くなり過ぎ、含浸量が75g よりも多いと薄シート材で担持できずにダレが生じたり均一性が阻害される。また、含浸量が75g より多いと必要以上に樹脂を使用することになって経済性が低くなる。プリプレグ3を反応硬化させる温度は160℃程度(120〜190℃)、加圧時間は20分程度、圧力は10〜30MPa程度でよい。
【0023】
基板2に化粧層4を一体化した化粧ボード1は、(C)の状態から縁を切り揃える加工をして家具等に使用することも可能であるが、ジアリルフタレート樹脂からなる化粧層4は剛性及び曲げ加工性とを備えているため、(D)に示すように、基板4の外周面をフライス装置等によって所望の断面形状に切削加工してから、化粧層4を基板2の外周面に折り曲げて接着することも可能である。すなわち、ポストフォーミング加工を施して製品化することも可能である。なお、化粧層4を基板2の片面だけに設けることも可能である。
【0024】
図2では、化粧ボード1がどのような外観を呈するかを模式的に示している。すなわち、図2は化粧ボード1の一部破断平面図であり、多数の横線は基板2の地肌模様を模式的に表示しているのであるが、化粧層4は相当の透明性を有するため、人は化粧層4を介して基板2の地肌を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】化粧ボードの製造工程を示す図である。
【図2】化粧ボードの模式的な一部破断部分平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 化粧ボード
2 基板
3 プリプレグ
4 化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機質天然材料から成る基板の片面又は両面に、薄シート材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを重ねて加熱・加圧することによって樹脂の化粧層が一体に形成されており、かつ、前記化粧層は人が基板の地肌面を視認できる程度の透明性を有する化粧ボードであって、
前記薄シート材としてセルロース系でかつ使用前の状態では水に濡れると透ける性質を有するものを使用すると共に、前記熱硬化性樹脂としてジアリルフタレート系樹脂を使用することにより、前記化粧層に透明性が付与されている、
化粧ボード。
【請求項2】
薄シート材に未反応原料樹脂が含浸しており、有機質天然材料から成る基板に重ねた状態で加熱・加圧して原料樹脂を硬化させることにより、前記基板に一体化して樹脂の化粧層となるプリプレグであって、
セルロース系でかつ使用前の状態で水に濡れると透ける性質を有すると共に目付け量が25〜50g /m2 である薄シート材を備えており、この薄シート材に、ジアリルフタレート系未反応樹脂を1m2 当たり75〜100g 含浸させている、
化粧ボード製造用のプリプレグ。
【請求項3】
前記薄シート材はパルプを原料にした不織紙又は再生紙の単層体又は積層体である、
請求項1に記載した化粧ボード又は請求項2に記載したプリプレグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−144840(P2007−144840A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343396(P2005−343396)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】