説明

化粧剤用経皮送達システム

本発明は、化粧剤の皮内又は経皮送達システムに関する。特に、本発明は、対象の皮膚においてマイクロ−チャンネルを生成する装置と連動させた、化粧剤、特に、水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤を局所投与するための皮内又は経皮送達システムに関する。皮内又は経皮送達システムは、セルライト、色素沈着過度、皮膚老化及び座瘡等の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の皮膚においてマイクロ−チャンネルを生成する装置と連動させた、水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤を含む全てのタイプの化粧剤にとって予想外に有用な、化粧剤の有効な局所投与のための皮内又は経皮送達システムに関する。皮内又は経皮送達システムは、化粧剤の有効性を高め、したがって皮膚の外観を改善する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部物質の身体への進入に対するバリヤーとして機能する複雑な構造である。無処理の皮膚中に及びそれを介して環境から移動する分子は、これらの分子の皮膚中への浸透に対して高度に抵抗力のある脂質バリヤーとして作用する角質層を最初に浸透しなければならない。薬剤及び化粧品分野の両方において、皮膚中に局所機能剤を送達するために角質層のバリヤーを乗り越えるための相当な努力がなされている。一般的に、角質層を横切る3つの主な経路が分子の輸送に利用可能である:(1)正常な又は化学的に変性された皮膚は、通常、角質層の脂質内の曲がりくねった細胞間経路に従って小さな分子の拡散を可能にする;(2)毛包及び汗管を通る「分岐」経路は、イオン導入、圧力仲介送達及びリポソーム輸送中に利用されてもよい;及び(3)細胞及び角質層の細胞間脂質の両方を横切る経細胞経路は、化学的化合物の通過を可能にするために電気穿孔法により創り出すことができる。
【0003】
イオン導入の方法は、皮膚を介して毛細管構造及びリンパ系中に電気的に帯電した薬剤を効果的に送達するので薬の投与において広く使用される。この方法は、経口摂取薬と一緒の時の胃腸の副作用を避け、その比較的に良性で痛みのない性質の故に皮下又は筋肉内注射にとって好ましい。
【0004】
イオン導入法は有効であることが分かっているが、イオン導入による火傷の形態における皮膚損傷の発生及び治療域における炎症並びに治療域における望ましくない気泡の形成及び皮膚上の水疱等の多数の望ましくない副作用を伴うことが知られている。これらのイオン導入による火傷を防ぐために様々な複雑な方法が開発されている。しかしながら、その様な方法及び装置は、一般的に、十分に有効的ではないことが分かっている。したがって、イオン導入による治療は、通常、比較的に低い電流及び比較的に短い期間の投与に限られている。
【0005】
イオン導入による薬物送達システムは、又、主に、一定の領域に同時に、比較的に低い濃度で、単一極性だけの薬物の投与に限られていて、複数薬物の同時送達には適していない。
【0006】
その他の方法、即ち電気穿孔法は、拡散により非帯電物質の移動を可能にする一時的な皮膚の微細孔の形成を電気的に誘発することにより非帯電物質の経皮又は皮内送達を促進する。しかしながら、電気穿孔法は、一般的に、大きな分子を通過させるのを可能にするのに十分な直径の孔を生成しない。
【0007】
イオン導入法及び電気穿孔法は、皮膚パッチ及び生体電極を含めた多くの経皮送達装置の中に組み込まれている。例えば、経皮送達を促進するための電源及び電気回路を組み込んだ、今日知られている多くの皮膚パッチが存在する。しかしながら、これらのイオン導入による皮膚パッチ及び生体電極は、多くの場合費用が掛り、臨床医によって取り扱われなければならない。
【0008】
電気輸送又はイオン導入による薬物送達装置は、経皮送達が有利であるということが期待される多くのタイプの薬物の送達に有用なものとして開示されている。米国特許第6169920号明細書及び第6317629号明細書(Alza)は、例えば、イオン導入による薬物送達装置を開示し、米国特許第5983130号明細書及び第6718201号明細書(Alza)は、主に帯電薬物に適しているが、非帯電薬物にも適した電気輸送剤送達方法及び装置を開示している。
【0009】
米国特許第5885211号明細書、第6022316号明細書、第6142939号明細書、第6173202号明細書及び第6527716号明細書(Eppstein等)は、検体又は活性物質の経皮輸送を高めるために、熱伝導要素で蒸気点より上で組織結合水を加熱することにより角質層において微細孔を形成するための装置及び方法を記載している。更なる増進方法としては、音響エネルギー、圧力及び化学増強剤の使用が挙げられる。
【0010】
電気外科方法は、軟質組織におけるコラーゲン繊維を収縮させるために使用されている。これらの方法は、一般的に、組織の弾性を収縮させ且つ制限させるためにコラーゲン繊維を柔らかくするための高周波(RF)エネルギーの適用を含む。米国特許第6159194号明細書(Eggers等)は、治療場所に近く且つその下の組織に対する熱的損傷を制限しながら組織収縮を誘発するための電気外科装置及び方法を記載している。
【0011】
参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6148232号明細書(Avrahami)は、対象の角質層を切除するための装置を記載している。この装置は、対象の皮膚上の各点において適用される複数の電極を含む。電源は、2つ以上の電極間に電気エネルギーを適用して、主に、それぞれの電極の下の角質層(SC)の別々の領域の切除を引き起し、マイクロ−チャンネルを生成させる。電極の間隔及び隣接電極間の皮膚の電気抵抗の監視を含めて、角質層に対する切除を制限するための様々な方法が記載されている。本願の出願人に全て譲渡されていて、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6597946号明細書、第6611706号明細書、第6708060号明細書及び第6711435号明細書(Abrahami)は、角質層を切除してマイクロ−チャンネルを生成させ、皮膚を介して物質の経皮的通過を促進させるための更なる装置を開示している。この装置は、マイクロ−チャンネルの生成中に、角質層の下の皮膚に対して感覚を減少させ損傷を最小限にすることを目的とする。
【0012】
本願の出願人に全て譲渡されていて、参照として本明細書に組み込まれるWO2004/039426、WO2004/039427及びWO2004/039428は、薬剤の経皮送達のためのシステム及び方法を開示している。親水性抗催吐薬、乾燥組成物を含むパッチからの治療剤並びに水不溶性薬物及び水溶液における薬物の溶解性を高める担体分子を含む薬剤組成物が特に開示されている。
【0013】
化粧剤の皮膚への浸透性を高め、それらのバイオアベイラビリティを増加させる、化粧剤の効果的な皮内又は経皮送達のためのシステム及び方法に対する認識された必要性が今もなお存在し、そのシステム及び方法を持つことは極めて有益である。皮膚疾患を治療するのに有用な多くの化学剤は、水性ベースの化粧品組成物におけるその乏しい溶解性により又は顕著な酸化により有効性が制限されており、皮膚は、水溶性又は親水性剤に対して通常不浸透性バリヤーであるので、現に知られている治療の主要な欠点を解消し、化粧剤の有効性を劇的に改善する、化粧剤を投与するためのシステム及び方法に対するまだ対処されていない必要性が今もなお存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、化粧剤の皮内又は経皮送達のための有効なシステムを提供する。特に、本発明は、水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤の皮内又は経皮送達のためのシステム及び方法を提供する。
【0015】
本発明は、当該技術分野において知られている方法と比べて浸透増強剤を必要としない皮内又は経皮送達システムを利用し、それによって皮膚損傷を引き起すことなく且つ皮膚の外観を失わせることがあるきつい化学品を使用することなく所望の化粧品としての利益を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様においては、本発明は、対象の皮膚を介して化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成させることのできる装置と、皮膚にとって有効な量の少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤、及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物とを含む、水溶性、難水溶性又は水不溶性にとって予想外に有効な化粧剤の皮内又は経皮送達システムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書において使用される「経皮」又は「皮内」送達という用語は、化粧剤の送達場所を意味する。したがって、所望の送達は、角質層の下の皮層の病気を治療するための皮内であってもよく或いは皮下層に作用させるために剤を送達するための経皮であってもよい。
【0018】
本願の文脈において使用される「マイクロ−チャンネル」という用語は、一般的に、分子がそれを介して拡散することのできる、角質層の全部又は相当な部分を通って皮膚の表面から伸びている経路を意味する。「微細孔」及び「マイクロ−チャンネル」という用語は、本明細書においては相互変換的に使用される。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、本発明は、以下の特許において開示されている装置を含む、電気エネルギーを使用して角質層の切除を誘発することによりマイクロ−チャンネルを創り出すための方法を導入する:その内容が、参照としてそれらの全体において本明細書に組み込まれる米国特許第6148232号明細書、第6597946号明細書、第6611706号明細書、第6711435号明細書、第6708060号明細書及び第6615079号明細書。しかしながら、本発明の幾つかの好ましい実施形態は、前述の装置により皮膚を切除することにより得られる皮内又は経皮送達に関わるが、対象の皮膚においてマイクロ−チャンネルを生成させるために当該技術分野において知られている実質的に任意の方法が使用されてもよいことが強調される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、システムは、対象の皮膚を介しての化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための装置を含み、前記装置は、
a.複数の電極を含む電極カートリッジと、
b.前記電極が前記皮膚の近傍にある時に2つ以上の電極間において電気エネルギーを適用するように構成された制御ユニットを含む主ユニットであって、通常、電流又は1つ若しくは複数の火花を発生して、電極の真下の領域における角質層の切除を可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成させる主ユニットを含む。
【0021】
本発明のその他の実施形態によれば、装置の制御ユニットは、電極に供給される電気エネルギーの大きさ、周波数及び/又は期間を調節するための回路を含み、電流又は火花発生を調節して、1つ又は複数の形成されるマイクロ−チャンネルの幅、深さ及び形状を調節する。好ましくは、電気エネルギーは高周波によるものである。
【0022】
現に好ましい実施形態によれば、複数の電極を含む電極カートリッジは、均一な形状と寸法を有する複数のマイクロ−チャンネルを生成する。好ましくは、電極カートリッジは、取り外し可能である。更に好ましくは、電極カートリッジは、1回の使用後に廃棄され、したがって、主ユニットに簡単に取り付けて、その後主ユニットから取り外せるように設計される。
【0023】
皮膚への電気エネルギーの供給は、電気エネルギーが、死んだ角質化細胞の除去を促進できるために、化粧剤を投与しなくても皮膚の外観に有益な効果を与えることが理解される。
【0024】
本発明の原理によれば、化粧剤の皮内又は経皮送達システムは、皮膚にとって有効な量の少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物を含む。一般的に、化粧品組成物は、マイクロ−チャンネルが存在する領域にわたって置かれ、その領域における対象の皮膚疾患を改善する。
【0025】
本明細書において使用される「水溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/ml〜1g/30mlの範囲の水における溶解度を有する化合物を意味する。本明細書において使用される「難水溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/30ml〜1g/10,000mlの範囲の水における溶解度を有する化合物を意味する。本明細書において使用される「水不溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/10,000ml未満の、水における溶解度を有する化合物を意味する。本発明は、水溶性化粧剤、難水溶性化粧剤及び水不溶性化粧剤を包含する。
【0026】
本発明により使用されてもよい化粧剤の例としては、キサンチン類、レチノイド類、α−ヒドロキシ酸類、β−ヒドロキシ酸類、α−2アドレナリン阻害剤類、β−アドレナリン作用薬類、アロマターゼ阻害剤類、抗エストロゲン類、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コウジ酸、コルチコステロイド類、ムコ多糖類、コラーゲン、エストロゲン類、イソフラボノイド類、桂皮酸、過酸化ベンゾイル、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、ナイアシンアミド、トコフェロール、フェルラ酸、アゼライン酸、ボツリヌス菌、尿素、それらの誘導体又は塩が挙げられるがこれらに限定されない。現に好ましい実施形態においては、化粧剤は、カフェイン、サリチル酸及びヒドロキノンから選択される。
【0027】
組成物は、無水組成物、水性溶液又は懸濁液、マクロエマルション、ミクロエマルション又はナノエマルション等の水中油又は油中水エマルション、油滴水溶液、ミセル、リポソーム、エトソーム、ナノ粒子の水性懸濁液又は任意のその他の知られている化粧品組成物として調剤されてもよい。組成物は、ゲル、ペースト、クリーム、フォーム、スプレー、皮膚パッチ、スティックの形態又は当該技術分野において知られている任意のその他の形態であることができる。
【0028】
その他の態様によれば、本発明は、対象における皮膚疾患を治療するための方法を提供するものであり、前記方法は、
(i)皮膚疾患に罹っている対象の皮膚の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成させる工程と、
(ii)皮膚にとって有効な量の少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤、及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物を、前記対象の皮膚疾患を改善するために、マイクロ−チャンネルが存在する皮膚の領域に局所適用する工程とを含む。
【0029】
一実施形態によれば、対象の皮膚におけるマイクロ−チャンネルの生成は、皮膚の切除により、好ましくは、上述の方法及び装置により行われる。好ましくは、複数のマイクロ−チャンネルが生成される。
【0030】
更なる実施形態によれば、本発明方法により治療することのできる皮膚疾患は、セルライト、尋常性座瘡、嚢腫性座瘡、皮膚老化、皮膚の皺、個々の斑状色素沈着過度を含む色素沈着過度、光線性、日光性及び脂漏性角化症を含む角化症、皮膚斑点、ふけ、疣、光損傷皮膚、乾癬等の慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎及び脂漏性皮膚炎を含む皮膚炎、乾燥、魚鱗癬及びその他のタイプのウイルス、真菌又は細菌性皮膚感染症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
その他の実施形態によれば、化粧剤は、キサンチン類、レチノイド類、α−ヒドロキシ酸類、β−ヒドロキシ酸類、α−2アドレナリン阻害剤類、β−アドレナリン作用薬類、アロマターゼ阻害剤類、抗エストロゲン類、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コウジ酸、コルチコステロイド類、ムコ多糖類、コラーゲン、エストロゲン類、イソフラボノイド類、桂皮酸、過酸化ベンゾイル、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、ナイアシンアミド、トコフェロール、フェルラ酸、アゼライン酸、ボツリヌス菌、尿素、それらの誘導体又は塩からなる群から選択される。現に好ましい実施形態においては、化粧剤はカフェイン、サリチル酸及びヒドロキノンから選択される。
【0032】
本発明のこれらの及びその他の実施形態は、以下の図、記載、実施例及び特許請求の範囲と関連して更に良く理解される。
【0033】
本発明は、一方において水溶性化粧剤を含み、他方において難水溶性又は水不溶性化粧剤を含む化粧剤の効果的な皮内又は経皮送達システムを提供する。
【0034】
1つの態様によれば、本発明は、対象の皮膚を介して化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成することのできる装置と、皮膚にとって有効な量の少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤、及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物を含む、化粧剤の皮内又は経皮送達システムを提供する。
【0035】
本明細書において使用される「経皮」又は「皮内」送達という用語は、化粧剤の送達場所を意味する。したがって、所望の送達は、角質層の下の皮層、例えば、皮膚白化における皮膚メラニン細胞又は座瘡における皮膚脂腺の病気を治療するための皮内であってもよく或いは皮下層、例えば、セルライトにおける皮下脂肪細胞に作用させるために剤を送達するための経皮であってもよい。
【0036】
本願の文脈において使用される「マイクロ−チャンネル」という用語は、一般的に、分子がそれを介して拡散することのできる、角質層の全部又は相当な部分を通って皮膚の表面から伸びている経路を意味する。「微細孔」及び「マイクロ−チャンネル」という用語は、本明細書においては相互変換的に使用される。
【0037】
本明細書において使用される「水溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/ml〜1g/30mlの範囲の水における溶解度を有する化合物を意味する。本明細書において使用される「難水溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/30ml〜1g/10,000mlの範囲の水における溶解度を有する化合物を意味する。本明細書において使用される「水不溶性」化粧剤という用語は、一般的に、室温で、1g/10,000ml未満の、水における溶解度を有する化合物を意味する。本発明は、水溶性化粧剤、難水溶性化粧剤及び水不溶性化粧剤を包含する。
【0038】
「化粧」剤という用語は、皮膚への投与に適した、例えば、色素沈着過度の低減又は除去、座瘡の低減又は除去或いはセルライトの低減又は除去等の皮膚の外観を改善することのできる剤を意味する。「化粧」及び「皮膚用」剤又は組成物は、本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって本明細書においては相互変換的に使用される。
【0039】
意外にも、本発明のシステムは、皮膚を介して化粧剤の高度に有効な浸透を達成するということが今明らかにされる。化粧剤の浸透効率は、無処理の皮膚に比べて、マイクロ−チャンネルが生成された皮膚において高かった。本発明の原理は、特に、ヒドロキノン(水溶性剤;22℃で1g/水14mlの溶解度)、カフェイン(難水溶性剤;22℃で1g/水46mlの溶解度)及びサリチル酸(難水溶性剤;22℃で1g/水500mlの溶解度)を使用して本明細書において例示される。しかしながら、本発明の組成物及び方法は、以下の本明細書において列挙される広範囲の水溶性、難水溶性及び水不溶性化粧剤に適用できることが理解される。
【0040】
表皮中への角質層を介してのマイクロ−チャンネルの生成は、生存能力のある組織中へ取り込むために角質層内の又はそれを通り抜ける曲がりくねった細胞間経路を通過するための分子の必要性をなくする。このことは、幾つかの意味合いを有する。即ち、
分子の送達は、治療される皮膚領域の1%未満を占めるマイクロ−チャンネルを介して主に起こる。
組成物における浸透増強剤を含む必要性が存在しない。浸透増強剤は角質層の構造を崩壊し、角質層を介する分子の溶解度を増加させる。しかしながら、それ故に、それらは紅斑、浮腫又は掻痒の様な望ましくない副作用を引き起す。マイクロ−チャンネル生成中の浸透増強剤の排除は、皮膚の安全性を改善し、所望の化粧効果を達成する。
分子の送達は、分子が、角質層下の生存能力のある組織の親水性環境に到達するので有効である。
【0041】
これらの考慮を基にした本発明のシステムは、電気エネルギーを使用する角質層の切除により創られる新たな皮膚環境を介しての化粧剤の送達に極めて適するものである。結果として、本発明のシステムは、化粧剤の皮内又は経皮送達のための浸透増強剤の使用を必要とせず、したがって、それに付随する問題、特に刺激を生じることが少ない。
【0042】
本発明は、参照としてそれらの全体において本明細書に組み込まれる米国特許第6148232号明細書、第6597946号明細書、第6611706号明細書、第6711435号明細書、第6708060号明細書及び第6615079号明細書において開示される、電流又は火花を適用して角質層の切除を誘発することによりマイクロ−チャンネルを創り出すための装置及び方法を一体化するものである。しかしながら、対象の皮膚においてチャンネルを生成するための当該技術分野において知られている任意の方法が使用されてもよい(例えば、参照としてそれらの全体において本明細書に組み込まれる米国特許第5885211号明細書、第6022316号明細書、第6142939号明細書及び第6173202号明細書を参照)。
【0043】
一実施形態によれば、本発明のシステムは、対象の皮膚を介しての化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための装置を含み、前記装置は、
(i)複数の電極を含む電極カートリッジ、
(ii)前記電極が、前記皮膚の近傍にある時に2つ以上の電極間において電気エネルギーを適用するように構成された制御ユニットを含む主ユニットであって、通常、電流又は1つ又は複数の火花を発生して、電極の真下の領域における角質層の切除を可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成する主ユニットを含む。
【0044】
その他の実施形態によれば、装置の制御ユニットは、電極に供給される電気エネルギーの大きさ、周波数及び/又は期間を調節するための回路を含み、電流又は火花発生を調節して、1つ又は複数の形成されるマイクロ−チャンネルの幅、深さ及び形状を調節する。好ましくは、電気エネルギーは高周波(RF)におけるものである。
【0045】
本発明の装置により形成されるマイクロ−チャンネルは、親水性であり、一般的には、約10〜約100ミクロンの直径及び約20〜約300ミクロンの深さを有し、このようにして皮膚を介して物質の拡散を促進する。
【0046】
本発明の原理によれば、電極カートリッジは、電極配列を形成するように複数の電極を含み、電気エネルギーの適用によって、対象の皮膚内に少なくとも1つのマイクロ−チャンネル、好ましくは複数のマイクロ−チャンネルを生成する。しかしながら、一般的に、角質層において生成されるマイクロ−チャンネルの全体の領域は、電極配列によって占められる全体の領域に比べて小さい。「複数」の電極という用語は、本明細書においては2つ以上の電極を意味する。
【0047】
更なる実施形態によれば、対象の皮膚上に本発明の装置を置く間に得られる圧力は、電極に供給される電気エネルギーを活性化する。その様な形式の作用は、電極の活性が、マイクロ−チャンネルの所望の形成を可能にする皮膚との密接な接触においてのみ起こることを確実にする。
【0048】
マイクロ−チャンネルの数及び寸法は、皮膚への送達が望まれる化粧剤の量に合せることができる。
【0049】
電極カートリッジは、好ましくは取り外し可能である。或種の実施形態によれば、電極カートリッジは、1回の使用後に廃棄され、したがって、主ユニットに簡単に取り付け、その後主ユニットから取り外せるように設計される。
【0050】
本発明によれば、マイクロ−チャンネルは、細胞を加熱することにより角質層を切除するために皮膚への電流の適用により形成されてもよい。火花生成、火花生成の停止又は特定の電流水準は、所望の深さが達成され、電流の適用は終了されるべきことを指示するフィードバックの形態で使用されてもよい。これらの適用のために、電極は、好ましくは、所望の深さであってその深さを超えない深さまで角質層におけるマイクロ−チャンネルの形成を促進するのに役立つカートリッジにおいて成形され及び/又は支持される。或いは又、電流は、火花の生成なしで角質層においてマイクロ−チャンネルを形成するために設定されてもよい。得られるマイクロ−チャンネルは、形状及びサイズにおいて均一である。
【0051】
したがって、本発明によれば、電極は、皮膚と接触して、或いは、皮膚から500ミクロンの距離までの皮膚の近傍において維持されてもよい。更なる実施形態によれば、角質層の切除は、約10kHz〜4000kHz、好ましくは約10kHz〜500kHz、更に好ましくは100khzの周波数を有する電流を適用することによって行われる。
【0052】
本発明の化粧品組成物は、少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤を含む。その他の実施形態によれば、化粧剤は、キサンチン類、レチノイド類、α−ヒドロキシ酸類、β−ヒドロキシ酸類、α−2アドレナリン阻害剤類、β−アドレナリン作用薬類、アロマターゼ阻害剤類、抗エストロゲン類、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コウジ酸、コルチコステロイド類、ムコ多糖類、コラーゲン、エストロゲン類、イソフラボノイド類、桂皮酸、過酸化ベンゾイル、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、ナイアシンアミド、トコフェロール、フェルラ酸、アゼライン酸、ボツリヌス菌、尿素、それらの誘導体又は塩から選択される。現に好ましい実施形態においては、化粧剤は、カフェイン、サリチル酸及びヒドロキノンから選択される。
【0053】
本発明の組成物は、又、化粧剤の誘導体を包含する。本明細書において使用される「誘導体」という用語は、空気及び/又は光による酸化を減少させるためのそれらの変性並びに水溶液及び/又はエマルションにおける溶解度を増加させるための変性を含めた、局所投与のためのそれらの安定性及び/又はバイオアベイラビリティを改善するために化学的に変性された本発明の化粧剤の形態を意味する。
【0054】
本発明の組成物は、化粧剤の塩を包含する。化粧剤の塩は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む皮膚用として又は薬剤として許容される非毒性塩基又は酸から調製される。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が挙げられる。薬剤として許容される有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第1級、第2級及び第3級アミン類、自然界に存在する置換アミン類を含めた置換アミン類、環状アミン類等の塩が挙げられる。したがって、モノ−、ジ−及びトリ−アルキル及びアリールアミン類(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)並びに場合により置換されているエタノールアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)等の有機塩基が本発明の原理により使用されてもよい。
【0055】
化粧剤が塩基性である時は、塩は、無機及び有機酸を含む、薬剤として許容される非毒性酸から調製することができる。その様な酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマール酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0056】
本発明において使用される組成物は、それらをヒトの皮膚への適用に適するものにするために十分に高純度で且つ十分に低い毒性の更に薬剤として許容される安全な活性成分を場合により含むことができる。したがって、本発明によれば、皮膚疾患を治療するために有用な本発明の化粧剤は、単独で又は少なくとも1つの、薬剤として活性な剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0057】
本発明において使用される組成物は、皮膚用として許容される担体を含む。本明細書において使用される「皮膚用として許容される担体」という用語は、担体が、皮膚への局所投与に適するものであり、良好な審美的性質を有し、使用中に組成物の有効性を実質的に減少させる逆の相互作用が存在しない様な方法において本発明の化粧剤及びその他の成分と相溶性であることを意味する。適当な担体の例としては、スクアレン、オリーブ油、トウモロコシ油、キャノーラ油、落花生油、ベニバナ油、亜麻油、ひまわり油、鉱油、キャスター、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びステアリン酸並びにグリセリン、水、アルコール、プロピレングリコール等の水をベースとした担体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0058】
本発明の組成物は、組成物における化粧剤の溶解度を増加させてそれらの有効性を改善するために、当業者に知られている様々な形態として調剤されてもよい。これらの製剤としては、無水組成物、水性溶液又は懸濁液、マクロエマルション、ミクロエマルション又はナノエマルション等の水中油エマルション或いは油中水エマルション、油滴水溶液、ミセル、リポソーム、エトソーム又はナノ粒子の水性懸濁液が挙げられるがこれらに限定されない(例えば、その内容が参照としてその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6565886号明細書(Simonnet等)、第6562356号明細書(Verite等)、第6509024号明細書(Lorant)、第5599533号明細書(Stepniewski等)、第5202126号明細書(Perrier等)及びDayan、N.(2000)「生体材料(Biomaterials)」21:1879頁−1885頁参照)。組成物は、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、スプレー、フォームの形態又は当該技術分野において知られている任意のその他の形態であることができる。更に、本発明の化粧剤を含むスティック又は皮膚パッチが使用されてもよい。皮膚パッチは、剤が貯蔵器内に含まれる貯蔵器タイプの経皮パッチ、剤がポリマー層において分散されたマトリックスタイプの経皮パッチ、組成物が乾燥又は凍結乾燥されているプリントパッチ或いは剤の経皮送達のために当該技術分野において知られている任意のその他のパッチであってもよい(例えば、完全に示されるように、参照として本明細書に組み込まれる、WO2004/039426、WO2004/039427及びWO2004/039428を参照)。経皮パッチ内に含まれる化粧剤は、一般的に、空気/光酸化及び/又は分解に対して更に保護され、したがって、更に安定である。
【0059】
一般的に、本発明の化粧品組成物は、当該技術分野において良く知られている界面活性剤、湿潤剤及び皮膚軟化薬等の皮膚に役立つ物質、防腐剤、酸化防止剤、粉末、清澄剤、着色剤、乳白剤、増粘剤及び香料を含めたその他の成分を含むがこれらに限定されない。
【0060】
保湿剤及び湿潤剤の例としては、ポリオール、尿素、アミノ酸、グリセロール、プロピレングリコール、セチルアルコール、パラフィン油、ラノリン及びその誘導体、脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン油、シクロメチコーン、ジメチコーン、ジメチコノール等のシリコーン化合物が含まれてもよい。
【0061】
時には乳化剤として表示される界面活性剤は、本発明の化粧品組成物中に導入されてもよい。界面活性剤は、全組成物の約0.5%〜約30重量%、好ましくは約1%〜約15重量%のどこでも構成することができる。界面活性剤は、カチオン、ノニオン、アニオン性又は両性であってもよく、それらの組み合わせが使用されてもよい。
【0062】
皮膚軟化薬も化粧品組成物中に導入される。その様な皮膚軟化薬の水準は、全組成物の約0.5%〜約50重量%、好ましくは約5%〜30重量%の範囲であってもよい。皮膚軟化薬は、一般的な化学的範疇の下で、エステル、脂肪酸及びアルコール、ポリオール及び炭化水素に分類されてもよい。
【0063】
粉末としては、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、澱粉、スメクタイト粘土、化学的に変性されたマグネシウムアルミニウムシリケート、有機的に変性されたモンモリロナイト粘土、水和アルミニウムシリケート、フュームドシリカ、アルミニウム澱粉オクテニルスクシネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
その他の態様によれば、本発明は、対象における皮膚疾患を治療するための方法を提供するもので、前記方法は、
(i)皮膚疾患に罹っている対象の皮膚の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成させる工程、及び
(ii)皮膚にとって有効な量の少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤、及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物を、対象の皮膚疾患を改善するために、マイクロ−チャンネルが存在する皮膚の領域に局所適用する工程を含む。
【0065】
「局所適用する」という用語は、角質層を介して/横切って、皮膚中へ組成物を送達することを意味する。組成物に関連して使用される時の「局所」という用語は、特定の領域におけるその機能を意味する。したがって、対象の皮膚の領域に局所適用される本発明の組成物は、少なくとも1つの層、例えば、皮膚の表皮、真皮、皮下層内でその皮膚用としての又は化粧品としての活性を発揮するものと考える。
【0066】
本発明によれば、マイクロ−チャンネルが存在する皮膚の領域に局所的に、例えば、角質層を介して送達される組成物の「皮膚にとって有効な量」とは、退化性の皮膚疾患を予防又は抑制する或いはそれを必要としている対象において皮膚の外観を改善するために皮膚治療を促進する等の所望の化粧品及び/又は皮膚用としての効果を生み出すのに有効な量である。化粧品又は皮膚用としての治療必要量は、性別、年齢、対象の一般的な状態(生理的及び精神的)、治療を受けている状態の重篤度(例えば、慢性対急性)、治療を受けている皮膚の解剖学的領域、製剤のタイプ及び当該技術分野において知られているその他の要因により対象毎に変動する。
【0067】
本発明によれば、組成物は、上述の本発明の装置を使用して、マイクロ−チャンネルが存在する領域に局所的に投与される。しかしながら、対象における皮膚疾患を治療するための方法は、本発明の組成物を皮膚中に局所的に導入するための効率を増加することのできる更なる工程を場合により更に含んでもよい。その工程は、機械的又は物理的作用を含んでもよく或いは本発明の組成物の浸透を増加させる任意の組成物を含んでもよい。
【0068】
本発明によれば、組成物及び経皮装置は、適度に時を違えずに治療される皮膚の領域に適用される。好ましくは、組成物は、マイクロ−チャンネルの生成後に投与される。複数の火花が適用される時は、組成物は、それぞれの火花の前後で又は火花間の任意の時に投与することができる。
【0069】
1つの実施形態によれば、対象はヒト対象である。
【0070】
その他の実施形態によれば、本発明のシステムを使用して治療できる皮膚疾患としては、セルライト、尋常性座瘡、嚢腫性座瘡、皮膚老化、皮膚の皺、個々の斑状色素沈着過度を含む色素沈着過度、光線性、日光性及び脂漏性角化症を含む角化症、皮膚斑点、ふけ、疣、光損傷皮膚、乾癬等の慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎及び脂漏性皮膚炎を含む皮膚炎、乾燥及びその他のタイプのウイルス、真菌又は細菌性皮膚感染症が挙げられる。
【0071】
本発明方法により治療できる皮膚疾患の例及びこれらの皮膚疾患を治療するために有用な当該技術分野において知られている剤の例は、以下の本明細書において列挙される。本発明は、任意の皮膚疾患、特に以下に列挙される皮膚疾患を治療するための以下の本明細書において列挙される任意の及び全ての剤を包含することが理解される。
【0072】
セルライト
セルライトは、皮膚の表皮及び真皮層の薄化、高分子プロテオグリカンにより周りを囲まれた脂肪組織の皮下凝集の存在、体液の蓄積、皮下血管の退化及び貧弱な血流によって特徴付けられる。これらの影響は、皮膚の「ミカン膚」外観となって現れる。セルライトは、大腿、臀部及び上腕上の最も一般的な問題である。多くの場合肥満と結び付くが、セルライトは、正常の又はほぼ正常の体重の個人の皮膚においてもそれ自身現れることがある。
【0073】
含脂肪細胞で主として構成される脂肪組織からの正味の脂肪の除去は、カイロミクロンを介して血液において循環する食事性トリグリセリドの摂取と含脂肪細胞内の保存トリグリセリドの崩壊との間のバランスに依存する。リポリーシス(含脂肪細胞内のトリグリセリドの崩壊)は、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)が活性化される時に生起する。HSLの活性化は、プロテインキナーゼに依存する環状アデノシンモノホスフェート(cAMP)を介するリン酸化反応を必要とする。したがって、cAMP水準は、リポリーシスを調整する。cAMPの正味の水準は、アデニル酸シクラーゼを介するアデノシントリホスフェート(ATP)からのその酵素合成とホスホジエステラーゼを介するその崩壊との間のバランスの結果である。含脂肪細胞は、アデニル酸シクラーゼをそれぞれに活性化及び不活性化するβ−及びα−2アドレナリン受容体の両方を発現する。
【0074】
殆どのセルライト治療は、処置の主要形式としてリポリーシスに集中している。ソーダント等(Soudant et al.)(米国特許第5194259号明細書)は、α−2アドレナリン遮断薬としてギンコビルボワ(Ginko bilboa)をベースとした抗セルライト組成物を教示している。ホスホジエステラーゼ阻害剤としてのキサンチン(例えば、カフェイン)の使用は、セルライト治療として知られている。例えば、米国特許第5215759号明細書(Mausner)は、メチルシラノールエラスチメート、カフェイン及びメチルシラノールテオフィリンアセテートを更に含んでもよい、5つの成分の特定の組み合わせをベースとした抗セルライト組成物を開示している。米国特許第5362494号明細書(Zysman等)は、例えば、リポ調節剤としてのキサンチン並びにヒドロキシ酸、特にグリコール酸を含む化粧品組成物を開示している。キサンチン及びイノシトールリン酸及び/又はアルファヒドロキシ酸を含む組成物は、米国特許第5523090号明細書(Zaiden等)に開示されている。
【0075】
しかしながら、水における幾つかのキサンチンの制限された溶解性及び一般的な化粧製品(例えば、水中油エマルション)からのそれらの低い皮膚浸透性により、一般的にキサンチン、特にカフェインは、市場において大きな成果を得ていない。
【0076】
セルライト治療のためのその他の既存の方法は、β−アドレナリン作用薬を介してcAMP水準を増加させるためにアデニル酸シクラーゼの刺激を含む。グリーンウエイ等(Greenway et al.)(米国特許第4588724号明細書)は、リポリーシスを刺激することにより局所的脂肪組織の促進的減少のために、イソプロテレノール(β−アドレナリン刺激剤)又はα−2アドレナリン阻害剤の使用を開示している。米国特許第5051449号明細書(Kligman)において開示されている、局所適用されるレチノイドは、セルライトを妨害し且つ後進することができる。米国特許第6071526号明細書(Schmidt等)は、セルライトの化粧治療における局所的投与のためのアロマターゼ阻害剤及び抗エストロゲン(例えば、非ステロイド系エストロゲン作用薬であるタモキシフェン及びアミノグルテチミド)を開示している。米国特許第5962482号明細書(Bissett)は、ナイアシンアミドを含むスキンケア組成物を使用する、セルライトの治療方法を提供している。
【0077】
皮膚美白
皮膚における色素沈着過度は、皮膚におけるメラニンの過度の発現又は蓄積により引き起される。メラニン生成において含まれる主要酵素の1つはチロシナーゼである。
【0078】
様々な皮膚用組成物が皮膚美白に対して提案されている。今日、処方箋なしで消費者による使用に対して米国において認可されている色素沈着過度のための唯一の治療は、メラニン細胞活性を抑えることにより作用するヒドロキノンの局所的適用である。ヒドロキノンは、そのそれぞれがヒドロキノン製剤の貯蔵寿命及び適用に基づくバイオアベイラビリティに悪影響を及ぼす、空気、光及びチロシナーゼによって酸化される。長期間にわたり適用される場合、ヒドロキノンは、火照り、赤熱状態、感作及び炎症等の深刻な副作用を引き起す原因となり、その使用を限定された濃度のものにする。
【0079】
現に使用されている良好な許容された、皮膚を美白する物質は、天然産の、例えば、(一般的なベアベリー(Uvae ursi)の葉からの)アルブチン、(甘草の根からの)甘草抽出物、(柑橘類からのビタミンC)アスコルビン酸及び(或種の細菌の効果の下の糖液からの)マグネシウムアスコルビルホスフェート並びにコウジ酸である。これらの物質は、拮抗阻害剤としてチロシナーゼに作用する。しかしながら、水性系に導入されるとこれらの活性剤と一体化した多くの安定問題が存在する。コウジ酸及びアスコルビン酸は共に、水性系において酸化されやすく、極少量だけが深い皮膚層に浸透し、基底膜におけるメラニン細胞に到達するという欠点を有する。結果として、皮膚美白効果を達成するためには高濃度が要求される。使用されるヒドロキノンの量と比べて、17倍のアスコルビン酸及び100倍を超えるアルブチンが、同じ効果を達成するのに必要とされる。
【0080】
その他の皮膚用組成物は、過酸化物、酸、ホルムアルデヒド等の過酷な化学品、又は、それらを含む製品を消費者にとって望ましくないものにする不愉快な臭いを有するグルタチオン、システイン、メルカプトコハク酸、メルカプトデキストラン及びメルカプトエタノール等のチオレート物質を含む。局所用レチノイド及び局所用コルチコステロイドは、色素沈着低下剤として提案されているが、これらは望ましい応答には及ばない。
【0081】
更に、アロエから単離された化合物、特にアロエシン及びその誘導体の1つ、2”−O−フェルロイルアロエシンは、チロシナーゼの有効な阻害剤として提案されている。
【0082】
組み合わせ治療は、コウジ酸、アスコルビン酸及びヒドロキノンのバイオアベイラビリティ及び安定性を改善するために提案されている(米国特許第6365137号明細書(Aust等)及び米国特許第6417226号明細書(Perricone)参照)。
【0083】
抗老化
皮膚についての内在的又は外因性要因の効果の結果である皮膚の老化は、皺及び細かい線の外観によって、色素沈着斑点の外観に伴うくすんだ黄色状外観によって、弾性、柔軟性及び堅さの喪失をもたらすエラスチン及びコラーゲン繊維の組織破壊によって反映される。皮膚老化の特定の発現は、コラーゲンの架橋反応並びにヒアルロン酸及びその他のムコ多糖類の減少である。したがって、従来の化粧品組成物においては、ムコ多糖類又はコラーゲン並びにその他の生化学及び合成ポリマー製品のブレンドにより皮膚水分を維持することに努力が集中されていた。しかしながら、これらの物質は皮膚老化を防ぐことにおいて効果のないことが分かった。
【0084】
皮膚の老化に効くものとする様々な化粧品組成物が知られている。したがって、レチノイン酸は、例えば、米国特許第4603146号明細書においては、化粧品組成物における抗老化剤として開示されている。レチノイドは、in vivoのケラチン生成細胞の増殖を向上させ、表皮の厚さを増加させ、皮膚の繊維芽細胞によるコラーゲン合成を増加させることが示されている。これらの効果は、皺になった皮膚の滑らかさをもたらす。
【0085】
乳酸、リンゴ酸、グリコール酸或いは又クエン酸等のα−ヒドロキシ酸も、この同じ用途を持つ。これらの酸は、市場の多くの化粧品組成物中に導入されている。
【0086】
β−ヒドロキシ酸、特にサリチル酸及びその誘導体もこの用途に使われることが知られている(例えば、米国特許第4767750号明細書参照)。
【0087】
これらの化合物の全ては、落屑、即ち、角質層の表面に置かれた死んだ細胞の除去により皮膚の老化に対して作用する。残念ながら、高濃度でのそれらの使用は、適用によって時々皮膚の炎症、例えば、皮膚の赤熱状態及び刺すような感覚を伴うことがある。炎症は、組成物において活性成分の量を低下させることによって又は皮膚を介してその浸透を減少させることによって改善することができる。両方の方法の重大な欠点は、効率が損なわれることである。
【0088】
レチノイド及び/又はヒドロキシ酸による皮膚の炎症を低減するためのガンマリノレン酸(GLA)等の不飽和脂肪酸の使用は記載されている(例えば、米国特許第5445822号明細書及び第5690947号明細書参照)。
【0089】
エストロゲンホルモンは、経口形態において或いは局所的皮膚クリーム又はゲルとして皮膚老化の治療のために使用されている。これらの治療は、増大した皮膚の厚さ、多くの水分補給並びに弾性及び堅さにおける改善を生み出した。エストロゲンホルモンの有効性は、コラーゲン合成を刺激することによって引き起される皮膚コラーゲンの量の増加に関連すると考えられる。皮膚のコラーゲン含有量を増加させることができることに加えて、エストロゲン治療は、又、皮膚の機械的性質を改善する弾性繊維の含有量も増加する。エストロゲンは、皮膚の老化の治療及び予防のために使用することができるが、このホルモンの潜在的使用者は、副作用の危険性、特に、乳癌及び子宮癌に罹りやすい危険性の心配がある。更に、エストロゲンは、男性使用者におけるこの女性ホルモンの望ましくない副作用のために、皮膚の老化及び皺を伴う問題を有する男性においては一般的に使用されない。
【0090】
エストロゲンの副作用を解消するために、大豆及びクローバー等のその他の植物の構成成分である精製されたイソフラボノイドの局所的使用が、皮膚の老化の症状を効果的に治療及び予防するために提案されている。これらの化合物は、コラーゲンの合成を刺激することにより皮膚において作用する、顕著なエストロゲン活性を有することが考えられる。
【0091】
米国特許第5352438号明細書(N’Guyen)は、リン酸との組み合わせにおいて不均化酵素超酸化物(DSO)を含む化粧品組成物を開示している。これらの組成物は、局所的投与、特に、皮膚老化に対する対抗及び放射線暴露に対する皮膚の保護における局所的投与において使用されることが提案されている。
【0092】
米国特許第6562353号明細書(Breton等)は、皮膚老化に対抗するために桂皮酸の使用を開示している。桂皮酸は、それらの落屑活性を維持しながら、レチノイド及びヒドロキシ酸よりも副作用が少ないと考えられる。
【0093】
その他の物質は、皮膚老化を治療するために提案されている。例えば、オリゴ糖誘導体は、エラスターゼ活性を抑制することが知られており、したがって、皮膚老化を引き起す過程のエラスチン分解を抑制するために提案されている(例えば、米国特許第5910490号明細書(Moczar等)参照)。酸化防止剤としてユビキノン及びプラストキノンを含む組成物も提案されている(米国特許第5889062号明細書(Hoppe等))。
【0094】
座瘡
老化、ホルモン変化及び近づいてくる思春期は、多くの場合、にきび、斑点、吹き出物及び赤くなった領域の形態を取る、見場の悪い気恥ずかしい皮膚状態を引き起す。
【0095】
思春期は、幾つかの場合においては、男性及び女性の両方においてテストステロンの水準を増加させる皮脂の生成に悪影響を及ぼすことが良く知られている。テストステロン水準が増加するにつれて、毛嚢を伴う脂腺を刺激する。刺激に応じて、これらの腺は拡大し、通常よりも多くの皮脂を分泌し始める。更に、テストステロンは、皮膚孔の内側を覆っている細胞が、毛髪及び表皮の主たる構成成分である不溶性蛋白質のケラチンを更に放出する原因になる。同時に、皮脂及びケラチンは皮膚孔を塞ぎ、毛穴の黒ずみとしても知られている面皰を引き起す。細菌は、詰まった孔において増殖し、身体は、皮脂を破壊するための酵素を放出することによって一般的に反応する。その様な酵素は、最終的に吹き出物又はにきびとなることもある過程の孔の炎症を引き起す。この状態は、一般的に、尋常性座瘡として知られている。この応答は、特に、多量の脂腺が存在する顔、背中及び肩でよく見られる。
【0096】
集簇性座瘡、更に一般的には結節性又は嚢腫性座瘡として知られている集簇性座瘡は、尋常性座瘡よりも更に重篤な形態の座瘡である。結節性座瘡の場合においては、皮脂は腺において増加し、死んだ細胞と混合して、最後に、皮膚の下で深い嚢胞を一般的に形成する濾胞壁を破裂させる。瘢痕化は、多くの場合、これらの深い嚢胞から生じる。
【0097】
座瘡に対応する非ビタミン方法は、一般的に、乾燥剤を介して皮脂生成を緩和することによって座瘡を阻止しようとしている。米国特許第4536399号明細書(Flynn等)は、油性皮膚の治療を目的とした、過酸化ベンゾイル又はサリチル酸及びフュームドシリカからなる組成物を開示している。過酸化ベンゾイル及び刺激抑制剤を含む抗座瘡組成物は、米国特許第4545990号明細書(Le Poyer de Costil等)において記載されている。米国特許第4608370号明細書(Aronsohn)は、死んだ表面皮膚の軽い剥離のために、サリチル酸、レゾルシノール、乳酸及びエチルアルコールの組成物を開示している。米国特許第5482710号明細書(Slavtcheff等)は、少なくとも1つの角質溶解剤(例えば、サリチル酸及びグリコール酸又は乳酸等のβ−及びα−ヒドロキシカルボン酸の組み合わせ)並びに水溶性及び水不溶性抗刺激剤の組み合わせを含む化粧品組成物を開示している。その他の抗座瘡組成物は、米国特許第4613592号明細書(Benzoni)において開示されている。これらの治療は、油中水エマルションにおける活性成分としてC〜Cのアルキルラクテートを利用する。更に、エリスロマイシン、クリンダマイシン又はテトラサイクリン等の局所的に又は経口的に適用される抗生物質は、一般的に、細菌の成長を調節するために使用される。これらの治療は、多くの場合、過度に乾燥した皮膚の原因となり、治療の終了後に再発するのが一般的である。
【0098】
ビタミン及びハーブは、多くの場合、座瘡に関して更に期待できる結果を提供する。米国特許第5057502号明細書(Walsh)は、重度の油性の脂っこい皮膚の分泌物を薄くするのに有用な杜松抽出物質を開示している。ビタミンAは、座瘡の治療において極めて有効であることが証明されている。70年代前半から、局所用レチノイン酸又はトレチノイン、即ち、共にビタミンAの誘導体は、局所的に座瘡を治療するのに使用されている。ビタミンAに対する共活性は、アロエベラ及びカモミール抽出物であることが報告されている。粉砕された花は、米国特許第4880621号明細書及び第4933177号明細書(Grollier等)の皮膚治療において報告されている。上述の治療組成物及び方法の多くは有用性を証明できるが、それらは、緩慢な作用及び/又は不十分な結果に苦労している。更に、これらの局所的治療の幾つかは、治療域の刺すような痛み及び発赤並びに起こりうる光過敏性を含む副作用を有する傾向がある。
【0099】
イソトレチノインとして知られている、結節性座瘡の治療のための全身性ビタミンA誘導体は、ロッシュ(Roche Laboratories in Nutley、N.J)から、アキュタン(ACCUTANE、登録商標)の名称で市販されている。イソトレチノインでの治療は、4〜6ヶ月間で座瘡の85%程度を治癒することができる。又、患者の状態は、治療が終わった後でも改善する傾向にある。残念ながら、副作用は、多くの場合、イソトレチノインでの治療に原因し、患者は、注意深く監視されることが必要である。
【0100】
亜鉛は、創傷治癒、免疫応答、炎症調節、組織再生及びビタミンAの更に有効な利用におけるその補助能力の故に座瘡の治療において有用であると考えられる。或種の研究では、亜鉛が、表面の座瘡の治療においてはテトラサイクリンと同様の結果であるが座瘡の深い形態に関しては遥かに優れた結果を生み出すことを示している。
【0101】
座瘡タイプの皮膚障害は、皮膚、即ち、角質層並びに表皮及び真皮の深い層の両方の表面層の欠陥に関わるので、組成物及び方法は、それらの皮膚層を同時に治療するために用意されている。例えば、米国特許第5679374号明細書(Fanchon等)は2つの脂質小胞の分散混合物を含む抗座瘡組成物を開示しており、第1の脂質小胞は皮膚の深い層の中に浸透することができ、抗微生物剤、抗炎症剤又はレチノール等の活性剤を含み、第2の脂質小胞は、角質層に浸透することができ、ケラチン溶解剤等の活性成分を含む。
【0102】
したがって、セルライト調節を提供するのに有用な組成物の例としては、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、キサンチン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、その内容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6071526号明細書参照)及び、海草、上に伸びる蔦(ヘデラヘリックス)、アルニカ(アルニカモンターニャ)、ローズマリー(ローズマリナスオフィシナリスN)、マリーゴールド(カレンジュラオフィシナリス)、セージ(サルビアオフィシナリスN)、朝鮮人参(パナックスジンセング)、セントジョーンズワルト(ハイペリカムパーホラタム)、ラスカス(ラスカスアクレアタス)、シモツケ(フィリペンジュラウルマリアL)及びオルトシホン(オルトシホンスタミンカスベント)を含む或種の油溶性植物抽出物並びにこれらの植物抽出物の混合物(これらの全ては、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第4795638号明細書に開示されている)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0103】
本明細書において使用される「キサンチン」という用語は、以下の化合物を含むがこれらに限定されない:キサンチン;1,3−ジメチルキサンチン(「テオフィリン」として一般的に知られている);3,7−ジメチルキサンチン(「テオブロミン」として一般的に知られている);トリメチルキサンチン(「カフェイン」として一般的に知られている);アロキサンチン;パラキサンチン;ヘテロキサンチン;それらの誘導体及び塩。
【0104】
当該技術分野において知られていて且つ本発明により使用されてもよいその他の抗セルライト組成物は、ニコチン酸、イノシトールヘキサニコチネート、脂質分解酵素、α−又はβ−ヒドロキシ酸、α−アドレナリン阻害剤、β−アドレナリン作用薬、ナイアシンアミド及びレチノイドである(例えば、第5051449号明細書参照)。
【0105】
本明細書において使用される「レチノイド」という用語は、レチノイン酸及びそれらの誘導体、例えば、レチノール、レチナール、レチニルアセテート、トレチノイン及びイソトレチノイン等を含む。「レチノイン酸」という用語に含まれるものは、13−シスレチオニン酸及び全トランスレチノイン酸である。したがって、本発明は、レチノイドの合成及び天然生成物を包含する。
【0106】
レチノイド(例えば、ビタミンA及びその誘導体)は、広いスペクトルの生物学的活性を有することが知られている。更に正確に言えば、これらの物質は、細胞の成長、分化及び増殖に影響を及ぼす。ビタミンAは、上皮組織の成長及び分化を維持するのに必須のものである。レチノイドは、皮膚及びその他の場所において見出される多種類の細胞に対して一般的な成長刺激体として作用する。それらは、繊維芽細胞を刺激して真皮の主構成成分であるコラーゲンを作る。レチノイドは、新しい血管の形成を促す。その他の細胞型の代謝活性も増加される。レチノイドは、セルライト、尋常性座瘡、色素沈着過度及び乾癬を含む様々な慢性的皮膚病を治療するのに広範囲に且つ有効に使用されている。
【0107】
したがって、好ましい実施形態においては、セルライトを治療するための化粧剤は、キサンチン、レチノイド及びそれらの誘導体から選択される。更に好ましい実施形態においては、化粧剤はカフェインである。
【0108】
色素沈着過度の皮膚疾患としては、そばかす、肝斑、カフェオレ、老化及び肝斑が挙げられるがこれらに限定されない。
【0109】
チロシナーゼ阻害剤は、色素沈着過度を治療するためのものとして及び皮膚美白を引き起すものとして当該技術分野において知られており、したがって、本発明により化粧剤として使用されてもよい(例えば、第6365137号明細書参照)。チロシナーゼ阻害剤としては、コウジ酸及びその誘導体、グリシレチン酸、グリシリジン酸、ヒドロキノン及び誘導体(例えば、アルブチン)、チロシン、チロシン誘導体、デオキシフェニルアラニン、ドパキノン、ミモシン、ベンズヒドロキサム酸、2,3−ジチオプロパノール、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、モノカルボン酸類、グルコール酸、マンデル酸、乳酸等のアルファヒドロキシ酸、ジカルボン酸(アゼライン酸、セバシン酸)又はそれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0110】
メルカプト琥珀酸とメルカプトエタノール等のチオレート物質は、それらを一緒に含む組成物を消費者にとって不快にさせる不愉快な臭いを有する。チオレート物質は、又、一般的に、溶解困難性により化粧品組成物を含む水に導入することが困難である。チオレート物質は、又、本発明に包含される。
【0111】
本発明の有用なその他の美白剤としては、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸ホスフェート、アスコルビン酸又はアスコルビルパルミテート等のアスコルビン酸ホスフェートのモノ−又はジアルキル誘導体、それらの誘導体及び混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
その他の美白剤は、例えば、ナイアシン、ナイアシンアミド、胎盤抽出物、フェルラ酸、レチノイド、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン及び/又は2−エチルヘキシルメトキシルシンナメート等の有機日焼け止め剤、微粉化二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機日焼け止め剤又はその他のUV A及びUV B日焼け止め剤及びその他の知られている美白化合物などの任意の知られているその様な剤から選択されてもよく、これらの全ては本発明に包含される。
【0113】
更に、遊離基捕捉剤又は酸化防止剤は、本発明の組成物に添加されてもよい。遊離基捕捉剤又は酸化防止剤としては、ビタミンE、ユビキノン、スーパーオキシドジスムターゼ、α−リポ酸、甘草抽出物、ローズマリー抽出物及びそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。メルカプトデキストランは、アセローラチェリーの抽出物又は発酵物と組合されてもよい。
【0114】
本発明により使用することのできる抗老化(抗皺)化合物としては、α−ヒドロキシ酸、レチノイド及びそれらの誘導体、トコフェロール及びそれらの誘導体、β−ヒドロキシ酸、特にサリチル酸及びそれらの誘導体、ユビキノン、桂皮酸、ムコ多糖類、特にヒアルロン酸並びにボツリヌス菌が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
精製されたイソフラボノイドは、又、抗老化化合物として本発明により使用されてもよく、ゲニステイン、ダイゼイン、ビオカニンA、ホルモノネチン、O−デスメチルアンゴレンシン、グリシチン及びエクオールが挙げられる。
【0116】
局所及び全身の両方の多数の治療法が、座瘡(尋常性及び嚢腫性)の治療のために現に使用されており、本発明にとって有用であることがある。局所及び全身座瘡治療組成物は、一般的に、許容される担体成分との組み合わせにおいて活性成分を使用する。活性成分は、一般的に、テトラサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン等々の抗生物質/抗菌性物質を含む。局所治療組成物は、多くの場合、抗生物質の有効性を増強するために抗生物質及び担体と組み合わせて過酸化ベンゾイルを含む。したがって、本発明の組成物は、又、抗生物質/抗菌性物質を含んでもよい。
【0117】
皮膚治療組成物におけるイノシトールリン酸化合物の使用は、又、極めて限られた範囲ではあるが知られており、本発明において使用されてもよい。米国特許第5116605号明細書は、座瘡を緩和するためにフィチン酸(又は、「イノシトールヘキサホスフェート」としても知られている)を含む組成物を開示している。
【0118】
本発明により座瘡を治療するために使用されてもよい更なる剤としては、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、レチノイン酸及びそれらの誘導体、サリチル酸、マンデル酸、アルファヒドロキシ酸及びシステイン酸亜鉛等の亜鉛塩及び酸化亜鉛が挙げられるがこれらに限定されない。
【0119】
本発明の組成物は、抗刺激剤を更に含むことができることが理解される(例えば、米国特許第5482710号明細書参照)。
【0120】
本発明を一般的に記載したが、本発明は、本発明の例示であって限定を意図するものではない方法により提供される以下の実施例を参照することにより更に容易に理解される。
【実施例】
【0121】
バイアダーム(ViaDerm(商標))技術は、皮膚の外側層を通してRF−マイクロチャンネル(MicroChannels)(商標)を創り出すために高周波(RF)の電流を利用する。正確な寸法を有するこれらのマイクロ−チャンネルは、皮膚を通過して中に入る分子の通過を調節可能にする。
【0122】
機器及び材料
豚の皮膚においてマイクロ−チャンネルを創り出すために、バイアダーム方法が使用された。バイアダーム装置は、米国特許第6148232号明細書に開示されており、この発明に対する様々な改善は、米国特許第6597946号明細書、第6611706号明細書、第6711435号明細書、第6708060号明細書、第6615079号明細書並びにWO2004/039426、WO2004/039427及びWO2004/039428において開示されており、「バイアダーム」という用語で本明細書において参照される。
【0123】
要するに、バイアダームは、以下の構成要素を含む。即ち、
1.RF電流を発生する制御ユニットを含む再使用可能な主ユニット、
2.主ユニットの末端に取り付けられた微小電極の配列を含む使い捨て電極カートリッジ。
【0124】
微小電極配列の密度は、100微小電極/cmであった。バイアダームは、マイクロ−チャンネルの密度が200/cmとなる様にそれぞれの場所に2回適用された。皮膚は、適用電圧330V、100kHzの周波数及び5回のバーストで治療された。
【0125】
in vitro皮膚浸透研究
豚の皮膚を介しての化粧剤の浸透性は、貫流フランツ拡散セルシステム(flow−through Franz diffusion cell system)(Laboratory Glass Apparatus、Berkeley、CA)でin vitroで測定された。拡散領域は、1cmであった。皮膚分節された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments Ltd.、Kansas、MI、米国)豚の皮膚が、屠殺された白豚(Kibbutz Lahav、Israelにおいて地方で成長したLandres及びLarge Whiteの育種)から切り取られた。経表皮水分喪失測定(TEWL、Dermalab、Cortex Technology、Hadsund、デンマーク)が行われ、15g/m/h未満のTEWL水準を持つ皮膚片のみが拡散セル中に組み込まれた。皮膚のマイクロ−チャンネル化は、VD(バイアダーム)適用グループとして定義されたセルにおいて行われ、操作を調節するためにTEWLが再度測定された。皮膚片は、上向きに角質層を向けるようにレシーバー室に置かれ、ドナー室が所定の位置においてクランプされた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4又はpH5.5)又はPBS中の1%VolpoS−20が、3ml/時間の流量でアクセプタセルを通された。アクセプタ溶液からのサンプルは、24時間までの予め決められた時間で管中に集められた(Retriever IV、ISCO、Lincoln、Nebraska、米国のフラクションコレクター(fraction collector)を使用して)。サンプルは、HPLCにより分析されるまで4℃に保たれた。
【0126】
HPLCによる化粧剤の検査
アクセプタ溶液からのサンプル(10〜50μl)は、予め充填されたリクロスファー(LiChrospher)C18カラム(150x3.9mm、5μm;水)及びUV検出器を備えたHPLC系(水)中に注入された。カフェインサンプルは、30%メタノール及びHO中の0.2%HPOを含む定組成移動相を使用して1ml/分の流量で分離された。カフェインの検出は、280nmの波長で行われた。
【0127】
サリチル酸サンプルは、5%メタノール、25%アセトニトリル及びHO中の0.01モル/lKHPO/HPO緩衝液pH2.3を含む定組成移動相を使用して1ml/分の流量で分離された。サリチル酸の検出は、237nmの波長で行われた。
【0128】
ヒドロキノンサンプルは、20%メタノール及び80%HOを含む定組成移動相を使用して0.12ml/分の流量で分離された。ヒドロキノンの検出は、280nmの波長で行われた。
【0129】
(実施例1)
カフェインのin vitro浸透研究
バイアダーム処理された豚の皮膚を介しての又は無処理の豚の皮膚を介しての、水溶液又は市販の化粧ゲルからのカフェインの累積浸透性及び浸透効率が評価された。浸透効率は、皮膚に適用された剤の全量に対して浸透した剤の%として定義される。
【0130】
カフェイン溶液
バイアダーム処理された豚の皮膚を介してのカフェイン溶液からのカフェインの浸透は、無処理の皮膚の浸透と比較された。
【0131】
カフェインは、シグマ社(Sigma)から購入された。カフェイン溶液(1%w/vの0.25ml)は、ドナー室にピペットで入れられた。
【0132】
図1は、無処理の皮膚と比較された、バイアダーム処理された豚の皮膚を介してのカフェインの累積浸透性を示す。図1において示される通り、カフェインの皮膚累積浸透性は、未処理の対照の皮膚に比べて、バイアダームでの予備処理に従って高められた。
【0133】
予備処理された皮膚を介してのカフェイン流量は、対照の未処理の皮膚グループにおいて得られた0.4±0.3μg/mlと比べて、6時間後に18.5±2.2μg/mlの水平状態に達した。バイアダーム方法を使用したカフェインの浸透効率は、16時間後には未処理の皮膚に比べて10倍高い(予備処理及び未処理皮膚のそれぞれに対して、37.1±4.8対3.6±2.6%)。
【0134】
市販製品#1からのカフェイン
バイアダーム処理された豚の皮膚を介しての化粧ゲルからカフェインの浸透を評価するために、ロレアルの市販製品、「ロレアルプレニチュード:パーフェクトスリムゲル」(本明細書においては市販品#1として表される)が使用された。ゲル(4mg、3%カフェイン含有量)は、プラスチックカップを使用して豚の皮膚片上に薄く塗られた。プラスチックカップは、ゲルを塗る前及びゲルを塗った後に計量され、塗られたゲルの量が決定された。
【0135】
図2は、無処理の皮膚と比較された、バイアダーム処理された豚の皮膚を介しての市販品#1からのカフェインの累積浸透性を示す。図2において示される通り、バイアダーム処理された皮膚を介しての市販品#1からのカフェインの累積浸透性は、無処理の皮膚を解しての累積浸透性よりも高かった。
【0136】
市販品#1からのカフェインの浸透効率は、バイアダーム処理された皮膚及び無処理の皮膚において決定された。
【表1】

【0137】
表1は、市販品#1からのカフェインの浸透効率は、3時間及び24時間の後に、対照の無処理の皮膚におけるよりもバイアダーム処理された皮膚においてそれぞれ9.2倍及び3.5倍高かったことを示す。これらの結果は、市販ゲルからのカフェインの送達を高めるための新規な方法を証明するものである。
【0138】
豚の皮膚を介しての市販品#1からのカフェインのin vitro皮膚浸透は、又、ゲル量の関数として評価された。
【0139】
市販品#1(3%カフェイン含有量)は、上述の様に、豚の皮膚片上に、2、10、30及び50mgの様々なゲル量で薄く塗られた。レシーバーセルを通るPBSの流量は0.9ml/時間であった。
【0140】
図3は、適用されたゲルの量の関数としての市販品#1からのカフェインの累積皮膚浸透性を示す。図3において示される通り、市販品#1からのカフェインの累積皮膚浸透性は、ゲル量が増加された時に増加した(2、10、30及び50mgのゲルが適用された時から24時間後に、それぞれ20.1±8.7、70.2±33.6、152.0±55.7及び241.0±37.7μg/cm)。しかしながら、カフェインの浸透効率は、ゲル量の増加と共に減少した(2、10、30及び50mgのゲルに対して、それぞれ32.2±15.9、23.4±11.2、16.9±6.2及び16.1±2.5%)。
【0141】
市販品#2からのカフェイン
市販品#1からのカフェインの皮膚浸透性及び浸透効率がその他のゲル組成物からのカフェインに適用可能であるという結果を確認するために、ロックの(Roc’s)「レチノール抗セルライト」(本明細書においては市販品#2として表される)からのカフェインのin vitro浸透性評価が行われた。
【0142】
市販品#2(4mg、1.5%カフェイン含有量)は、プラスチックカップを使用して豚の皮膚片上に薄く塗られた。プラスチックカップは、ゲルを塗る前及びゲルを塗った後に計量され、塗られたゲルの量が決定された。バイアダーム処理された皮膚を介しての市販品#2からのカフェインの浸透は、無処理の皮膚の浸透と比較された。
【0143】
図4は、バイアダーム処理された皮膚及び無処理の皮膚を介しての市販品#2からのカフェインの累積浸透性を示す。図4において示される通り、バイアダーム処理された皮膚を介しての市販品#2からのカフェインの累積浸透性は、無処理の皮膚を介するよりも高かった。バイアダーム処理された皮膚における浸透効率は、3時間及び24時間後に、対照の無処理の皮膚におけるよりもそれぞれ7.7倍及び2.9倍高かった(表2参照)。バイアダーム処理された皮膚を介してのカフェインの浸透効率は極めて高かった点が注目されるべきである(24時間後で79%、表2参照)。
【表2】

【0144】
溶液におけるカフェイン、市販品#1におけるカフェイン及び市販品#2におけるカフェインでの結果は(上の実施例4)、溶液からの又は市販のゲルからのカフェインの経皮送達が、皮膚においてマイクロチャンネルを生成するバイアダーム方法を使用して高められることを示す。
【0145】
(実施例2)
サリチル酸のin vitro皮膚浸透研究
溶液におけるサリチル酸
サリチル酸は、カルロエルバ社(Carlo Erba)(ミラノ、イタリア)から入手した。サリチル酸溶液(10%エタノールを含むPBS中の0.5%w/vの0.25ml)は新たに調製されて、ドナー室にピペットで入れられた。拡散室用のアクセプタ媒体は、PBS中の1%VolpoS−20(Croda;North Humberside、イングランド)であった。
【0146】
バイアダーム処理された皮膚を介してのサリチル酸溶液からのサリチル酸の浸透は、無処理の皮膚の浸透と比較された。
【0147】
サリチル酸溶液からのサリチル酸の皮膚浸透性は、未処理の対照の皮膚の浸透性に比べて、バイアダームでの予備処理に従って高められた(図5)。バイアダーム処理された皮膚における24時間後の全浸透量は、対照の未処理の皮膚グループで得られた84μg/cmに比べて、820μg/cmであった。浸透効率は、24時間後のバイアダーム処理された皮膚及び未処理の皮膚において、それぞれに62%及び4%であった。浸透量の差は、時間の経過で減少した(例えば、3時間及び24時間後では、未処理の皮膚と比較してバイアダーム処理された皮膚において、それぞれに17倍及び10倍高い)。
【0148】
市販品#3からのサリチル酸
クリームからのサリチル酸の浸透を評価するために、ロレアルクリーム(市販品#3と表す)が、プラスチックカップを使用して皮膚上に薄く塗られた(4mg、0.2%サリチル酸含有量)。プラスチックカップは、所望の重量を保証するために塗る前及び塗った後で計量された。バイアダーム処理された皮膚を介してのクリームからのサリチル酸の浸透が評価され、無処理の皮膚の浸透と比較された。
【0149】
市販品#3からのサリチル酸の皮膚浸透性は、未処理の対照の皮膚の浸透性に比べて、バイアダームでの予備処理に従って高められた(図6)。バイアダーム処理された皮膚における24時間後の全浸透量は、対照の未処理皮膚グループで得られた2.6±1.4μg/cmに比べて、17.8±3.3μg/cmであった。浸透効率は、24時間後のバイアダーム処理された皮膚及び未処理の皮膚に対して、それぞれに90%及び13%であった。浸透量の差は、最初に高く時間の経過と共に減少した(例えば、3時間、12時間及び24時間後では、未処理の皮膚と比較して、それぞれに51倍、16倍及び7倍高い)。
【0150】
(実施例3)
ヒドロキノンのin vitro皮膚浸透
溶液におけるヒドロキノン
ヒドロキノンは、アルドリッチ社(Aldrich)(ドイツ)から入手した。PBS中の2%濃度でのヒドロキノンが新たに調製された。拡散室用のアクセプタ媒体は、pH=7.4のPBSであった。
【0151】
ヒドロキノン溶液(2%w/vの0.25ml)は、ドナー室にピペットで入れられた。バイアダーム処理された皮膚を介してのヒドロキノン溶液の浸透は、無処理の皮膚の浸透と比較された。
【0152】
ヒドロキノン溶液の皮膚浸透性は、未処理の対照の皮膚の浸透性に比べて、バイアダームでの予備処理に従って高められた(図7)。バイアダーム処理された皮膚における24時間後の全浸透量は、対照の未処理皮膚グループで得られた62μg/cmに比べて、1824μg/cmであった。浸透効率は、24時間後のバイアダーム処理された皮膚及び未処理の皮膚において、それぞれ27%及び1%であった。浸透量における差は、時間の経過と共に減少し、未処理の皮膚グループに比べて、バイアダーム処理された皮膚グループでは39(3時間の時点で)〜29倍(24時間の時点で)高かった。
【0153】
市販品#4におけるヒドロキノン
クリームからのヒドロキノンの浸透を評価するために、メディブランド(Medibrands)の「エソームドネック&ハンドクリーム」(市販品#4と表す)が、プラスチックカップを使用して皮膚上に薄く塗られた(4mg、2%ヒドロキノン含有量)。プラスチックカップは、所望の重量を保証するために塗る前及び塗った後で計量された。バイアダーム処理された皮膚を介してのクリームからのヒドロキノンの浸透が、無処理の皮膚の浸透と比較された。拡散室用のアクセプタ媒体は、pH=5のPBSであった。
【0154】
クリームからのヒドロキノンの皮膚浸透性は、未処理の対照の皮膚の浸透性に比べて、バイアダームでの予備処理に従って高められた(図8)。バイアダーム処理された皮膚における24時間後の全浸透量は、対照の未処理皮膚グループで得られた1.4μg/cmに比べて、28μg/cmであった。24時間後のバイアダーム処理された皮膚における浸透効率は35%であるのに対して未処理の皮膚においては2%であった。浸透量における差は、未処理の皮膚グループに比べて、マイクロ−チャンネル化グループにおいては12(6時間で)〜20倍(24時間で)高かった。
【0155】
溶液又は市販クリームからのサリチル酸及びヒドロキノン等の化粧剤の高められた経皮送達は、バイアダーム方法を使用して証明された。バイアダーム処理された皮膚を介しての皮膚浸透は、無処理の皮膚を介してのその浸透よりも更に高かった。バイアダーム方法は、サリチル酸及びヒドロキノンの高い浸透度及び高い浸透効率を達成する。
【0156】
(実施例5)
in vivoでのバイアダーム装置の性能
豚の皮膚においてバイアダームにより形成されたマイクロ−チャンネルの組織的研究は、マイクロ−チャンネルの寸法が調節可能であり且つ正確であることを示した。即ち、それぞれのマイクロ−チャンネルは、幅が30μmであり、深さが50〜100μmであった。表皮の深さが約40μmである豚の皮膚においては、これらのマイクロ−チャンネルは、真皮中に浸透した。しかしながら、表皮の深さが約100μmであるヒトにおいては、その様なマイクロ−チャンネルは表皮の限界内に存在する。マイクロ−チャンネルは極めて局在化し、マイクロ−チャンネルの周りの皮膚はその正常構造を維持した。
【0157】
経表皮水分喪失(TEWL)は、別々の数のマイクロ−チャンネルを生成した後に豚の耳の皮膚部分において測定された。TEWLは、マイクロ−チャンネルの数の増加と共に直線的に増加した。
【0158】
本発明は、上において特に示され且つ記述されたものによって限定されるものではないことが当業者によって理解される。むしろ、本発明の範囲は、上記の特許請求の範囲によって画定される。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、水溶液からのカフェインの浸透評価を示す図である。
【図2】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、市販品#1を表した市販のゲルからのカフェインの浸透評価を示す図である。
【図3】皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、市販品#1を表した市販のゲルからのカフェインの浸透評価を示す図である。カフェインの浸透は、適用されたゲルの量の関数として測定された。
【図4】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、市販品#2を表した市販のゲルからのカフェインの浸透評価を示す図である。
【図5】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、水溶液からのサリチル酸の浸透評価を示す図である。VDは、バイアダームを意味する。
【図6】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、市販品#3を表した市販のゲルからのサリチル酸の浸透評価を示す図である。VDは、バイアダームを意味する。
【図7】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、水溶液からのヒドロキノンの浸透評価を示す図である。VDは、バイアダームを意味する。
【図8】無処理の皮膚と比較された、皮膚においてマイクロ−チャンネルが生成された豚の耳の皮膚を介して、市販品#4を表した市販のゲルからのヒドロキノンの浸透評価を示す図である。VDは、バイアダームを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤の皮内又は経皮送達システムであって、対象の皮膚を介して化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための、前記対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成することのできる装置と、少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む化粧品又は皮膚用組成物とを含むシステム。
【請求項2】
対象の皮膚を介して化粧剤の皮内又は経皮送達を促進するための前記装置が、
a.複数の電極を含む電極カートリッジと、
b.前記電極が前記皮膚の近傍にある時に2つ以上の電極間において電気エネルギーを適用するように適合された制御ユニットを含む主ユニットであって、通常、電流又は1つ若しくは複数の火花を発生して、前記電極の真下の領域における角質層の切除を可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成する主ユニットとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極カートリッジが取り外し可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気エネルギーが高周波の電気エネルギーである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記化粧剤が、キサンチン類、レチノイド類、α−ヒドロキシ酸類、β−ヒドロキシ酸類、α−2アドレナリン阻害剤類、β−アドレナリン作用薬類、アロマターゼ阻害剤類、抗エストロゲン類、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コウジ酸、コルチコステロイド類、ムコ多糖類、コラーゲン、エストロゲン類、イソフラボノイド類、桂皮酸、過酸化ベンゾイル、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、ナイアシンアミド、トコフェロール、フェルラ酸、アゼライン酸、ボツリヌス菌、尿素、それらの誘導体又は塩からなる群から選択される、請求項1及び2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記キサンチンがカフェインである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記β−ヒドロキシ酸がサリチル酸である、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記化粧剤がヒドロキノンである、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、酸化防止剤、粉末、清澄剤、着色剤、乳白剤、増粘剤及び香料からなる群から選択される成分の少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記化粧品又は皮膚用組成物が薬剤を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤が抗菌剤である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、無水組成物、水溶液、水性懸濁液、水中油エマルション、油中水エマルション、油滴水溶液、ミセル、リポソーム、エトソーム及びナノ粒子の水性懸濁液からなる群から選択される形態として調剤される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ペースト、スプレー、フォーム、スティック及び皮膚パッチからなる群から選択される形態である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
(i)皮膚疾患に罹っている対象の皮膚の領域において少なくとも1つのマイクロ−チャンネルを生成させる工程と、
(ii)少なくとも1種の水溶性、難水溶性又は水不溶性化粧剤及び化粧品又は皮膚用として許容される担体を含む、皮膚にとって有効な量の化粧品又は皮膚用組成物を、前記対象の前記皮膚疾患を改善するために、前記マイクロ−チャンネルが存在する前記皮膚の領域に局所適用する工程とを含む、対象における皮膚疾患の治療方法。
【請求項15】
前記化粧剤が、キサンチン類、レチノイド類、α−ヒドロキシ酸類、β−ヒドロキシ酸類、α−2アドレナリン阻害剤類、β−アドレナリン作用薬類、アロマターゼ阻害剤類、抗エストロゲン類、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コウジ酸、コルチコステロイド類、ムコ多糖類、コラーゲン、エストロゲン類、イソフラボノイド類、桂皮酸、過酸化ベンゾイル、トロポロン、カテコール、メルカプトアミン、ナイアシンアミド、トコフェロール、フェルラ酸、アゼライン酸、ボツリヌス菌、尿素、それらの誘導体又は塩からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記キサンチンがカフェインである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記β−ヒドロキシ酸がサリチル酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記化粧剤がヒドロキノンである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、酸化防止剤、粉末、清澄剤、着色剤、乳白剤、増粘剤及び香料からなる群から選択される成分の少なくとも1つを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記化粧品又は皮膚用組成物が薬剤を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が抗菌剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、無水組成物、水溶液、水性懸濁液、水中油エマルション、油中水エマルション、油滴水溶液、ミセル、リポソーム、エトソーム及びナノ粒子の水性懸濁液からなる群から選択される形態として調剤される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記化粧品又は皮膚用組成物が、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ペースト、スプレー、フォーム、スティック及び皮膚パッチからなる群から選択される形態にある、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記皮膚疾患が、セルライト、尋常性座瘡、嚢腫性座瘡、皮膚老化、皮膚の皺、色素沈着過度、角化症、皮膚斑点、ふけ、疣、光損傷皮膚、慢性皮膚病、皮膚炎、乾燥、魚鱗癬、ウイルス感染症、真菌感染症及び細菌性皮膚感染症から選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521258(P2007−521258A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516813(P2006−516813)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000561
【国際公開番号】WO2004/112689
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】