説明

化粧合わせガラス

【課題】耐光性、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性などといった基本性能に優れ、中間膜とガラスとの優れた接着性を有しつつ、意匠性にも優れた化粧合わせガラスを提供すること。
【解決手段】二枚のガラス板2A、2Bの間に、接着剤層3A、3Bを介して化粧シート11を挟んでなる化粧合わせガラス1であって、該化粧シートが基材上に少なくとも絵柄層と保護層とを順に有し、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものである化粧合わせガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、一般建築物、住宅、家具などの窓、扉や、大型店舗、ビルなどの大型建物の内外装に広く用いられており、その構成は、通常二枚のガラス板を、装飾を施した中間膜を介して貼りつけるというものである。そして、中間膜としては、ポリビニルブチラール樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂により形成される樹脂フィルムが用いられることが一般的である(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
ところで、近年の住環境あるいは公共施設などの環境への意識の高まりに伴い、従来要求されていた中間膜とガラスとの接着性などの機械的性能だけでなく、意匠性にも優れた合わせガラスが要望されている。意匠性に着目した合わせガラスは、これまで幾つか開発されているが(例えば、特許文献3参照)、中間膜とガラスとの優れた接着性を有しつつ、意匠性にも優れた合わせガラスの開発は十分になされていないのが現状であり、これらを同時に高いレベルで満足する合わせガラスの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−194797号公報
【特許文献2】特開2004−59395号公報
【特許文献3】実開平6−33936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐光性、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性などといった基本性能に優れ、中間膜とガラスとの優れた接着性を有しつつ、意匠性にも優れた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、合わせガラスに用いる化粧シートを特定の構成とすることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) 二枚のガラス板の間に、接着剤層を介して化粧シートを挟んでなる化粧合わせガラスであって、該化粧シートが基材上に保護層を有し、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものである化粧合わせガラス、
(2) 化粧シートが、基材と保護層との間に絵柄層を有するものである上記(1)に記載の化粧合わせガラス、
(3) 絵柄層と保護層との間に透明樹脂層を有するものである上記(2)に記載の化粧合わせガラス、
(4) 化粧シートが、保護層側からエンボス加工されたものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧合わせガラス、
(5) 化粧シートが、二枚挟まれてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧合わせガラス、及び
(6) 接着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤により形成されたものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化粧合わせガラス、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐光性、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性などといった基本性能に優れ、中間膜とガラスとの優れた接着性を有しつつ、意匠性にも優れた合わせガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の化粧合わせガラスの断面の好ましい一態様を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧合わせガラスの断面の好ましい一態様を示す模式図である。
【図3】本発明の化粧合わせガラスに用いられる化粧シートの断面の好ましい一態様を示す模式図である。
【図4】実施例における耐熱クリープ試験で用いた試験片を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化粧合わせガラスの好ましい態様の一例について、図1〜3を用いて説明する。図1及び2は、本発明の好ましい層構成を有する化粧合わせガラスの一例の断面を示す模式図である。図1に示される化粧合わせガラス1は、ガラス板2Aの上に接着剤層3A、化粧シート11、接着剤層3B及びガラス板2Bが順に積層されたものである。また、図2に示す例では、化粧シートを二枚有する構成となっており、ガラス板と化粧シートとの間、及び二枚の化粧シートの間は接着剤層を介して貼り付けられる構成を有している。
また、図3は本発明の化粧合わせガラスに用いられる化粧シートの好ましい層構成を有する態様の一例を示す模式図である。図3に示される化粧シートは、基材12の上に、絵柄層13、接着層15、透明樹脂層16、プライマー層17、及び保護層14を順に積層されたものであり、保護層側からエンボス加工による凹凸模様18が施されている。
【0010】
[ガラス板2]
本発明で用いられるガラス板2は、無色又は着色された透明の板ガラスや、化粧シートの意匠性を失わない範囲内であれば半透明の板ガラスである。ガラス板の種類としては、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば普通ガラス、フロートガラス、すりガラス、フロストガラス、高透過ガラス、型板ガラス、耐熱ガラス、金網入りガラスなどが挙げられ、本発明で用いられる二枚のガラス板の種類は同じでも異なっていてもよい。ガラス板の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよく、通常1〜15mm程度、好ましくは2〜12mm、より好ましくは2〜10mmであり、二枚のガラス板の厚みは同じでも異なっていてもよい。
【0011】
[接着剤層3]
接着剤層3は、ガラス板と化粧シート、あるいは化粧シート同士を接着するために設けられる層である。接着剤層3に用いられる接着剤としては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、ポリビニルアルコール系の接着剤や、スチレン−ブタジエンゴム系、スチレン−イソプレン系などのエラストマー系接着剤を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤が挙げられる。これらのうち、特にガラス板と化粧シートとの接着における接着性と透明性の観点から、酢酸ビニル樹脂系の接着剤が好ましく、なかでもエチレン−酢酸ビニル共重合体系の接着剤が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合系の接着剤を使用することで、後述する電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる保護層14との優れた接着性が得られる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体系の接着剤を用いる場合、該共重合体における酢酸ビニルの含有量は、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。また、本発明においては、上記したような樹脂からなるシート状の接着剤を用いることもできる。
接着剤層3の厚みは、合わせガラスの厚みを抑えつつ、十分な接着性を得る観点から、通常0.1〜3mm程度であり、0.1〜1mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。
【0012】
[化粧シート11]
本発明で用いられる化粧シート11は、本発明の化粧合わせガラスに意匠を付与するために設けられるものであり、基材12上に保護層14を有し、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものである。
【0013】
《基材12》
基材12には、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート又はこれらの複合材料などが使用される。
【0014】
紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙などが挙げられ、不織布としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、ガラスなどの繊維からなる不織布が挙げられる。紙又は不織布の坪量は、通常20〜100g/m2程度とすればよい。また、紙又は不織布は、樹脂含浸させたものでもよく、意匠性の向上を目的として、着色されたものであってもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、なかでもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度、中密度、あるいは低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、あるいはシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、上記したような結晶質ポリオレフィン樹脂からなるハードセグメントとエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アタクチックポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、水素添加スチレン−ブタジエンゴムなどのエラストマーからなるソフトセグメントを混合して得られるものが挙げられる。ハードセグメントとソフトセグメントとの混合比は、〔ソフトセグメント/ハードセグメント〕=5/95〜40/60(質量比)程度である。必要に応じて、エラストマー成分は、硫黄、過酸化水素などの公知の架橋剤によって架橋する。また、熱可塑性樹脂シートは、意匠性の向上を目的として、着色されたものを用いてもよい。
【0016】
基材の層構成としては、上記したような紙、不織布、熱可塑性樹脂シートなどを単層又は2層以上に積層したものが挙げられる。これらのなかでも、熱可塑性樹脂シートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂シートがより好ましく、特にポリエチレン、あるいはポリプロピレンからなるシートが好ましい。
基材シートの厚み(積層体の場合は合計した厚み)は、限定されないが、一般的には25〜500μm程度とすればよく、エンボス加工により凹凸模様18を施す場合には、80〜500μmが好ましく、80〜300μmがより好ましく、80〜200μmがさらに好ましい。
【0017】
《絵柄層13》
絵柄層13は、本発明で用いられる化粧シートに装飾性を付与するために好ましく設けられるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。
模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。また、文字、記号、幾何学模様、全面を印刷した着色ベタや、これらを複合した模様も挙げられる。
これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
【0018】
絵柄層13の形成に用いられるインキには、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などから選ばれる任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0019】
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
この絵柄層13の厚さは、通常1〜20μm程度である。
【0020】
《保護層14》
保護層14は、絵柄層13などの基材12と保護層14との間に設けられる層を保護するために設けられる層であり、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる層である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂とその他必要に応じて添加される成分とからなる組成物である。
【0021】
(電離放射線硬化性樹脂)
保護層14に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すればよい。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0022】
重合性モノマーとしては、代表的には分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジアクリレートのほか、エチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性、プロピオン酸変性、カプロラクトン変性などの変性された多官能(メタ)アクリレートなども挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
これらのなかでも、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが、ガラス板との接着性の観点から好ましい。より具体的には、1分子中に2個のラジカル重合性不飽和基を有する重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)30〜80質量%、及び1分子中に3個〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)20〜70質量%からなる混合物を電離放射線硬化性樹脂として用いることが好ましい。
【0025】
この重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ジイソシアネートと、1分子中に水酸基を2個以上有する重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールと、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート化合物と、が結合してなる、重量平均分子量が1000〜4000、好ましくは1000〜3000のオリゴマーである。
上記ジイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族のイソシアネートであり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールとしては、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどがある。上記ポリエステルポリオールとしては、(イ)芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物と、ラクトン化合物又はその誘導体又はエポキシ化合物との付加反応生成物、(ロ)多塩基酸とアルキレングリコールとの縮合生成物、及び(ハ)環状エステル化合物から誘導される開環ポリエステル化合物があり、これらを単独又は2種以上を混合して使用することができる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどがある。上記(ロ)の多塩基酸としてアジピン酸を用い、アルキレングリコールと縮合生成物として得られる重量平均分子量500〜2000の、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが、各種物性が良好であることから好ましく用いられる。
【0027】
末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、アクリル酸又はメタクリル酸もしくはこれらの誘導体のエステル化合物であって、末端に水酸基を有するものである。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、あるいはその他の1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物などが例示される。
【0028】
上記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とともに用いられる脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、1分子中に3個〜15個の(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性不飽和基を有するものであり、脂肪族ジイソシアネート、多官能ポリオール、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られる、多官能(3〜15官能)ウレタンアクリレートである。
【0029】
上記脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、上記の水酸基とラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0030】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。また、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などの光増感剤を用いることもできる。
【0032】
(各種添加剤)
電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる保護層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えばアルミナ、シリカなどの無機粒子やアクリルなどの樹脂粒子などの耐摩耗性向上剤、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂類がエステル系などの有機溶剤に溶解又は分散して得られるワックスのほか、耐候性改善剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。なお、これらの各種添加剤の電離放射線硬化性樹脂組成物における含有量は、各種添加剤の添加効果を十分に得つつ、本発明の効果を害しない範囲内であり、適宜設定するものである。
【0033】
(保護層14の形成方法)
保護層14の形成方法は、好ましくは以下のように行う。電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
このようにして調製された塗工液を、基材12の表面に、硬化後の厚さが所定の範囲内になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、通常1〜20μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【0034】
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0035】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0036】
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0037】
《接着層15》
接着層15は、化粧シート11が透明樹脂層16を有する場合などに所望により設けられる層である。
接着層で使用する接着剤は、公知又は市販の接着剤の中から、絵柄層13又は透明樹脂層16を構成する成分などに応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、エマルションの状態で使用してもよい。なかでも、耐熱性の観点からウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
【0038】
接着方法としては、用いる接着剤の種類などに応じて公知の方法に従って実施すればよい。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を用い、溶融押出(エクストルージョンコート法)で絵柄層上に塗工する方法、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミンなどの架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの重合促進剤などを必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明においては、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層15と透明樹脂層16とを積層することもできる。
接着層15の厚さは、保護層14、使用する接着剤の種類などに応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすればよい。
【0039】
《透明樹脂層16》
透明樹脂層16は、透明性のものであれば限定されず、無色透明、着色透明、半透明などの透明性を有する樹脂からなる層である。
透明樹脂層16としては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらのなかでも、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0040】
透明樹脂層16は、上記したように透明であれば着色されていてもよい。この場合、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、公知又は市販の顔料又は染料を適宜使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合いなどに応じて適宜設定すればよい。
【0041】
また、透明樹脂層16には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)などの各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0042】
透明樹脂層16の形成方法としては、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、透明樹脂層16を形成し得る樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法などのいずれも採用することができる。本発明では、特に溶融押出により透明樹脂層16を形成することが好ましく、とりわけ、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって塗工して形成することが望ましい。具体的には、絵柄層13上に予め接着層15を形成し、当該接着層15上にポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを溶融押出して塗工することにより透明樹脂層16を好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイなどを用いる公知の方法に従って実施すればよい。
【0043】
透明樹脂層16の厚みは、最終製品の用途、使用方法などにより適宜設定できるが、一般的には50〜250μm、特に20〜200μm程度とすることが好ましい。
【0044】
また、透明樹脂層16の表面及び/又は裏面には、隣接する層との接着性を高めるために、必要に応じて酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0045】
《プライマー層17》
透明樹脂層16の表面及び/又は裏面には、プライマー層17を形成することもできる。プライマー層17を形成するための材料としては、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)などの樹脂類ほか、アルキルチタネート、エチレンイミンなどの化合物も使用することができる。なかでも、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン硝化綿や、2液硬化型のウレタン系樹脂などをバインダー樹脂とすることが好ましい。イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪酸イソシアネート(脂肪族イソシアネート)、ポリオールとしてアクリルポリオールをそれぞれ使用する場合には、より優れた耐候性、密着性などが得られるので好ましい。
【0046】
プライマー層17の形成は、これらをそのままで又は溶媒に溶解、もしくは分散させた状態で用い、グラビア印刷などの公知の印刷方法、塗布方法などに従ってプライマー層を形成することができる。
また、ガラス板との接着性を高める目的で、本発明で用いられる化粧シート11において、上記と同様のプライマー層を基材2の裏面(絵柄層などが設けられるのとは反対の面)に設けることができる。
【0047】
《凹凸模様18》
本発明で用いられる化粧シート11には、意匠性を高める目的でエンボス加工による凹凸模様18を施すことが好ましい。
凹凸模様18は、化粧シート11が製造過程において何らかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、基材12の絵柄層13を設けた側の上面からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。ここで、エンボス加工は、保護層14を設ける前に行っても、後に行ってもよい。凹凸模様18の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が用いられ、凹凸模様18の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などがある。
【0048】
エンボスによる凹凸模様18の深さは、例えば図3に示されるようにプライマー層17や透明樹脂層16に達していてもよいし、基材12まで達していてもよく、凹凸模様18の深さは、所望の意匠に基づき、適宜選択すればよい。凹凸模様18の深さは、化粧シートの厚みにもよるが、通常5〜160μmが好ましく、10〜140μmがより好ましい。凹凸模様18の深さが上記範囲内にあれば、優れた意匠性が得られるので好ましい。
また、化粧シート11のエンボスにより凹凸模様18が施された面の表面粗さRzは、1〜300μm程度であり、好ましくは10〜120μmであり、より好ましくは30〜90μmである。ここで、Rzは、十点平均粗さであり、JIS B 0601に準拠して、測定長4mm、カットオフ値0.8mmで測定した値である。
【0049】
《化粧シートの製造方法》
以上、化粧シート11の構成について説明したが、化粧シート11としては上記ように作製したものを用いてもよいし、市販品を用いることもできる。
化粧シート11の作製は、公知の方法に従って行えばよいが、その製造方法の一例について以下に示す。
その表面にコロナ放電処理により易接着処理を施したポリプロピレン系樹脂フィルムを基材12とし、該基材上に木目柄などの絵柄をグラビア印刷して絵柄層13を形成し、その裏面にアクリルウレタン系樹脂などをバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成する。次いで、絵柄層13の上に2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を塗工して接着層15を形成し、さらにポリプロピレン系樹脂をTダイで溶融押し出し塗工することにより、透明樹脂層16を形成する。該透明樹脂層16の上に、2液硬化型ウレタン系樹脂などの樹脂を塗工して、プライマー層17を形成する。次に、該プライマー層17の上に、多官能ウレタンオリゴマーなどの電離放射線硬化性樹脂と各種添加剤とを含む電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアコートで塗工し塗膜を形成し、所定の条件で電子線を照射して、該塗膜を架橋硬化させて、保護層14を形成し、化粧シート11を得ることができる。
【0050】
本発明の化粧合わせガラスは、図2に示すように、化粧シート11を二枚用いた構成としてもよい。二枚の化粧シートを用いる場合、二枚の化粧シートは同じ絵柄でも異なった絵柄でもよい。このような構成とすることで、本発明の化粧合わせガラスは、表裏のいずれの方向からも意匠性の高いものとすることができる。また、異なった柄の化粧シートを用いる場合には、表裏それぞれ異なった絵柄を有することができ、多様化する消費者のニーズにこたえることが可能となる。
【0051】
[化粧合わせガラスの製造方法]
本発明の化粧合わせガラスは、公知の方法で製造すればよいが、例えば以下のようにして製造することができる。ガラス板を二枚、作製した化粧シート又は市販品の化粧シートを用意し、二枚のガラス板の一方の面に各々接着剤を塗布し、該接着剤を塗布した面で化粧シートを挟み込み、100℃程度に予備加熱した後に、オートクレーブなどを用いて100〜150℃の温度、0.1〜1MPa、好ましくは0.2〜0.8MPa程度の圧力で加熱圧着する。また、接着剤にシート状接着剤を用いる場合には、一方のガラス板の上に、シート状接着剤と化粧シートとシート状接着剤を順に積層し、この上にガラス板をのせて、上記ようにして加熱圧着すればよい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた化粧合わせガラスについて、以下の方法で評価した。
(1)耐光性−1
化粧合わせガラスの試験片(40×25mm角)を用意して、該試験片の表面及び裏面について、サンシャインウエザー試験機を用いて、照射条件(照度:25.5mw/cm2,波長:300〜700nm)で1時間42分間、及び降雨条件(RH90%)で18分間放置し、これを1サイクル(2時間で1サイクル)として、1000時間又は2000時間経過するまで繰り返した後の状態を目視し、以下の基準で評価した。
○:変色、泡、剥離及び濁りがなかった。
△:若干の変色、泡、剥離及び濁りが発生したが、実用上問題ない。
×:著しい変色、泡、剥離及び濁りが発生した。
(2)耐光性−2
化粧合わせガラスの試験片(40×25mm角)を用意して、該試験片の表面及び裏面について、サンシャインウエザー試験機を用いて、照射条件(照度:25.5mw/cm2,波長:300〜700nm)で1時間42分間、及び降雨条件(RH90%)で18分間放置し、これを1サイクル(2時間で1サイクル)として、2000時間経過するまで繰り返した後、この試験片について、JIS K6854−2:1999に従って、180度はく離試験方法により、オートグラフを用いて、クロスヘッドスピード200mm/分の条件ではく離力(N)を三回測定し、その平均値をはく離力(N)とした。このときの試験片の状態を目視し、その値を剥離強度(N/25mm)として、以下の基準で評価した。
○:2N/25mm以上であり、かつ接着剤層で剥離した。
×:2N/25mm未満である、または接着剤層で剥離しなかった。
(3)耐熱性の評価
化粧合わせガラスの試験片(50×50mm角)を用意した。この試験片を、65℃に保ったお湯に3分浸してから、沸騰水に2時間浸し、これを1サイクルとして、合計3サイクル行った後、試験片の状態を目視し、以下の基準で評価した。
○:変色、泡、剥離及び濁りがなかった。
△:若干の変色、泡、剥離及び濁りが発生したが、実用上問題ない。
×:著しい変色、泡、剥離及び濁りが発生した。
(4)耐湿性の評価
化粧合わせガラスの試験片(100×100mm角)を用意した。この試験片を50℃RH95%の条件下で14日間放置し、次いで50℃RH30%の条件下で14日間放置し、これを1サイクルとして、1〜3サイクルした後の試験片の状態を目視し、以下の基準で評価した。
○:変色、泡、剥離及び濁りがなかった。
△:若干の変色、泡、剥離及び濁りが発生したが、実用上問題ない。
×:著しい変色、泡、剥離及び濁りが発生した。
(5)落球衝撃試験
化粧合わせガラスの試験片(610×610mm角)を6つ用意した。JIS R3205に規定の落球衝撃試験に従い、2260gの鋼球を3mの高さから試験片に、自由落下させたときの、試験片の状態を以下の基準で評価した。
○:6枚中5枚以上の試験片で、化粧シートが切断することなく、かつガラス板の欠落による化粧シートの露出部分がなかった。
×:6枚中2枚以上の試験片で、化粧シートが切断し、又はガラス板の欠落による化粧シートの露出部分が生じた。
(6)ショットバッグ試験
化粧合わせガラスの試験片(1930×864mm角)を用意した。この試験片に、JIS R3205に準拠して高さ120cmからショットバッグを落下させるショットバッグ試験を行った。このときのガラスの試験片の状態を目視し、以下の基準で評価した。
○:6枚中5枚以上の試験片で、全く割れが生じなかった。
×:6枚中2枚以上の試験片で、割れが生じ、又はガラス片が飛散した。
(7)寒熱繰返し試験
化粧合わせガラスの試験片(150×150mm角)を用意した。この試験片を80℃の条件下で2時間放置し、次いで−20℃の条件下で2時間放置し、これを1サイクルとして、5及び10サイクルした後の試験片の状態を目視し、以下の基準で評価した。
○:変色、泡、剥離及び濁りがなかった。
△:若干の変色、泡、剥離及び濁りが発生したが、実用上問題ない。
×:著しい変色、泡、剥離及び濁りが発生した。
(8)耐熱クリープ試験
実施例に記載の化粧合わせガラスの製造方法において、ガラス板(幅:25mm,長さ:90mm,厚さ:3mm)と化粧シート(幅:25mm,長さ:50mm)とを、図4に示されるように貼付した試験片を用意した。ガラス板は、貫通穴(φ10mm)を有しており、一方の貫通穴19aを用いて試験片を壁に固定し、他方の貫通穴19bに針金を用いて500gの錘をつるした。これを80℃の条件下におき、500g/25mm幅の静荷重を垂直方向に24時間かけた。このときの、荷重によるずれを測定し、以下の基準で評価した。
○:ずれが1mm/時間以内であった。
×:ずれが1mm/時間よりも長かった。
(9)接着性−1
一枚のガラス板と化粧シートの保護層側とを実施例で用いた接着剤で接着したもの(試験片−1)、および一枚のガラス板と化粧シートの基材側とを実施例で用いた接着剤で接着したもの(試験片−2)を試験片(40mm×150mm角)とした。これらの試験片について、JIS K6854−2:1999に従って、180度はく離試験方法により、オートグラフを用いて、クロスヘッドスピード200mm/分の条件で平均はく離力(N)を測定した。このときの試料の状態を目視し、その値を剥離強度(N/25mm)として、以下の基準で評価した。
また、別々の試験片を用意して、熱処理(試験片を65℃に保ったお湯に3分浸してから、沸騰水に2時間浸した)、湿処理(試験片を50℃RH95%の条件下で14日間放置し、次いで50℃RH30%の条件下で14日間放置した)、又は寒熱処理(80℃の条件下で2時間放置し、次いで−20℃の条件下で2時間放置し、これを1サイクルとして、10サイクルした)を別々の試験片に施した後、上記と同様に碁盤目テープ剥離試験を行い、以下の基準で評価した。
○:2N/25mm以上であり、かつ接着剤層で剥離した。
×:2N/25mm未満である、または接着剤層で剥離しなかった。
(10)接着性−2
上記接着性−1で用いた試験片−1及び2と同様の試験片を用意した。試験片−1及び2の化粧シート面を、室温にてJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、以下の基準で評価した。
また、別々の試験片を用意して、熱処理(試験片を65℃に保ったお湯に3分浸してから、沸騰水に2時間浸した)、湿処理(試験片を50℃RH95%の条件下で14日間放置し、次いで50℃RH30%の条件下で14日間放置した)、又は寒熱処理(80℃の条件下で2時間放置し、次いで−20℃の条件下で2時間放置し、これを1サイクルとして、10サイクルした)を別々の試験片に施した後、上記と同様に碁盤目テープ剥離試験を行い、以下の基準で評価した。
○:100/100であった(全く剥離しなかった)。
△:90〜99/100であった。
×:90/100未満であった。
【0053】
製造例1(化粧シートAの製造)
基材として、ポリエチレン系樹脂フィルム(厚み80μm)を用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面に木目柄絵柄層をグラビア印刷により形成した。一方、裏面には、アクリルウレタン系樹脂をバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成した。次いで、前記絵柄層の上に2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着層(厚み3μm)を形成した。さらに、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体からなるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融押し出し塗工することによって、透明樹脂層(厚み60μm)を形成した。透明樹脂層の上に、アクリル−ウレタンブロック重合体(主剤)と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)とからなる2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層(厚さ2μm)を形成した。
【0054】
次に、電離放射線硬化性の多官能ウレタンオリゴマー35質量部/2官能ウレタンオリゴマー65質量部に対し、シリカ粒子(平均粒子径:4〜5μm,球状)5質量部及びポリエチレン系ワックス5質量部(融点110〜200℃)を含む電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにて塗膜を形成した後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、保護層(厚さ5μm)を形成した。最後に、保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱した後、保護層の面から熱圧によりエンボス版を用いてエンボス加工を行い、木目導管溝模様の凹凸模様を賦形することにより、所定の化粧シートAを得た。
得られた化粧シートAの表面粗さRzは、90μmであった。ここで、Rzは、十点平均粗さであり、JIS B 0601に準拠して、測定長4mm、カットオフ値0.8mmで測定した値である。
【0055】
製造例2:化粧シートB
製造例1において、エンボス版を変更した以外は製造例1と同様にして、化粧シートBを得た。得られた化粧シートBの表面粗さRzは、30μmであった。
【0056】
製造例3:化粧シートC
基材として、ポリプロピレン系樹脂フィルム(厚み60μm)を用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面に木目柄絵柄層をグラビア印刷により形成した。一方、裏面には、アクリルウレタン系樹脂をバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成した。次いで、前記絵柄層の上に2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着層(厚み3μm)を形成した。さらに、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体からなるポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融押し出し塗工することによって、透明樹脂層(厚み80μm)を形成した。
【0057】
次に、透明樹脂層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱した後、透明樹脂層の面から熱圧によりエンボス版を用いてエンボス加工を行い、木目導管溝模様の凹凸模様を賦形した。最後に、表面にコロナ放電処理を施した後に2液硬化型ウレタン樹脂からなる樹脂組成物を、グラビアコートにて透明樹脂層の上に塗膜を形成した後、硬化させることにより、保護層(厚さ5μm)を形成し、所定の化粧シートCを得た。得られた化粧シートCの表面粗さRzは、30μmであった。
【0058】
実施例1
厚さ3mmのフロートガラス板(サイズは上記の各評価に示すものとする。)を二枚、化粧シートとして製造例1で得られた化粧シートAを一枚、接着剤としてEVA樹脂シート(「メルセンG7053(商品名)」,東ソー・ニッケミ株式会社製,厚さ:0.40mm)を二枚用意した。二枚のガラス板のうち、一方のガラス板の表面に、EVA樹脂シート、化粧シート、EVA樹脂シートの順にのせて、次いでガラス板をのせて、化粧シートをガラス板で挟みこんだ。これをオートクレーブで105℃、0.7MPaの条件で10分間加熱圧着し、化粧合わせガラスを作製した。得られた化粧合わせガラスについて、上記の評価を行った結果を、第1−1表及び第1−2表に示す。
【0059】
実施例2及び比較例1
実施例1において、化粧シートを化粧シートBと化粧シートCとに示されるものにかえて、接着剤として用いるEVA樹脂シートの厚さを0.25mmにかえた以外は、実施例1と同様にして実施例2と比較例1の化粧合わせガラスを作製した。得られた化粧合わせガラスについて、上記の評価を行った結果を、第1−1表及び第1−2表に示す。
【0060】
【表1】

*1,1000時間後/2000時間後
*2,カッコ内の数値は、測定したはく離力(N)の平均値である。
【0061】
【表2】

*1,カッコ内の数値は、測定したはく離力(N)の平均値である。
*2,カッコ内の数値は、100マスの内、剥離しないマス目の数を示す。
*3,一部に浮きがみられたが、剥離はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の化粧合わせガラスは、耐光性、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性などといった基本性能に優れ、中間膜とガラスとの優れた接着性を有しつつ、意匠性にも優れたものである。本発明の化粧合わせガラスは、その特性をいかして、一般建築物、住宅、家具などの窓、扉や、大型店舗、ビルなどの大型建物の内外装に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1.化粧合わせガラス
2.ガラス板
3.接着剤層
11.化粧シート
12.基材
13.絵柄層
14.保護層
15.接着層
16.透明樹脂層
17.プライマー層
18.凹凸模様
19.貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚のガラス板の間に、接着剤層を介して化粧シートを挟んでなる化粧合わせガラスであって、該化粧シートが基材上に保護層を有し、該保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものである化粧合わせガラス。
【請求項2】
化粧シートが、基材と保護層との間に絵柄層を有するものである請求項1に記載の化粧合わせガラス。
【請求項3】
絵柄層と保護層との間に透明樹脂層を有するものである請求項2に記載の化粧合わせガラス。
【請求項4】
化粧シートが、保護層側からエンボス加工されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の化粧合わせガラス。
【請求項5】
化粧シートが、二枚挟まれてなる請求項1〜4のいずれかに記載の化粧合わせガラス。
【請求項6】
接着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤により形成されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の化粧合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195618(P2010−195618A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41143(P2009−41143)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】