説明

化粧品およびその製造方法、並びに油水相分離抑制剤

【課題】油水相分離が抑制されており、安全で乳化性が高い化粧品を提供すること。
【解決手段】コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料を化粧品に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンニャク粉由来の組成物を含む化粧品とその製造方法、およびコンニャク粉由来の組成物を含む油水相分離抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンニャクは、古くから一般消費者に広く親しまれている食品であり、そのまま単品で食されたり、他の素材と組み合せて料理されたうえで食されたりしてきた。また、最近のダイエットブームにより、コンニャクは低カロリーの健康食として注目されるようになっており、様々な食品中にコンニャクを含ませたコンニャク含有食品が開発されている。
【0003】
例えば、アルカリを加えて固化させたコンニャクを細かく裁断して、他の食材や飲料と混合しやすく改良したペースト状物が提案されている(特許文献1)。また、他の方法として、コンニャク粉に含まれている水溶性のコンニャクマンナンを精製した精製水溶性コンニャクマンナンを、他の食材や飲料と混合することも提案されている(特許文献2)。さらに、他の方法として、コンニャク粉に含まれるコンニャクマンナンを酵素処理して液状物とすることも提案されている(特許文献3)。また、コンニャク粉に水およびアルカリを添加して膨潤・反応させたコンニャクゼリー(特許文献4)、コンニャクゼリーのpH値を低減した後に酵素処理を行ったコンニャク流動材料(特許文献5)、高濃度のコンニャク粉を含むアルカリ膨潤液のpHを低減して強制攪拌することにより調製したコンニャク流動材料(特許文献6参照)を食品に添加することも提案されている。
【0004】
一方、コンニャク粉由来の組成物を化粧品に用いることについては、食品ほど活発な検討はなされていない。例えば、コンニャク粉を色付けしたファンデーション化粧品が自然志向の化粧品として提案されている(特許文献7参照)。また、こんにゃく芋抽出物とその独特の臭気を抑制するフレーバー成分を添加した化粧品も提案されている(特許文献8参照)。さらには、コンニャク粉の膨潤液を環状オリゴ糖の存在下で酵素処理して化粧品成分と混合した化粧品も提案されている(特許文献9参照)。これらを始めとする従来技術では、コンニャク粉由来の組成物が化粧品において果たす役割は、着色容易性や保湿性などに限られたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−207854号公報
【特許文献2】特公昭54−20582号公報
【特許文献3】特開平5−199856号公報
【特許文献4】特開2002−335880号公報
【特許文献5】特開2002−335899号公報
【特許文献6】特開2007−185113号公報
【特許文献7】特開2001−146号公報
【特許文献8】特開2004−173522号公報
【特許文献9】特開2008−118994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者らは、様々なコンニャク粉由来の組成物を調製して、化粧品への応用可能性を幅広く検討することにより、コンニャク粉由来の組成物の新規で有用な機能を見出すことを考えた。特に、本発明者らは、乳化安定性が高く、油分量が少なくても油水相分離をしにくい化粧品を提供することを課題として鋭意検討を進めた。また、滑らかでのびが良く、使用感に優れた化粧品を提供することも課題として鋭意検討を進めた。さらに、これらの検討を通して、コンニャク粉由来の組成物の新しい用途を開発することも課題として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明者らは、特定の条件を満たすコンニャク流動材料が優れた性質を有することを見出し、以下に記載する本発明を完成するに至った。
[1] コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料と、化粧品成分とを含むことを特徴とする化粧品。
[2] コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有するコンニャク流動材料と、化粧品成分とを含むことを特徴とする化粧品。
[3] コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料を化粧品成分と混合する工程を含むことを特徴とする含む化粧品の製造方法。
[4] 前記コンニャク流動材料が、pHを8未満に低減した後に酵素処理を行うことにより調製したものであることを特徴とする[3]に記載の化粧品の製造方法。
[5] 前記コンニャク流動材料が、酵素処理を行った後の組成物中に含まれる塊粒を断裁することにより調製したものであることを特徴とする[4]に記載の化粧品の製造方法。
[6] コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料を含むことを特徴とする油水相分離抑制剤。
[7] コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有するコンニャク流動材料を含むことを特徴とする油水相分離抑制剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧品は、乳化安定性が高く、油分量が少なくても油水相分離をしにくい。また、本発明の製造方法によれば、このような特徴を有する化粧品を容易に製造することができる。さらに,本発明の油水相分離抑制剤を用いて他の成分と混合すれば、混合物の油水相分離を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
[コンニャク流動材料]
本発明の化粧品は、本発明のコンニャク流動材料を用いて調製したことを特徴とするものである。そこでまず、本発明のコンニャク流動材料について詳しく説明する。
本発明のコンニャク流動材料は、コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理することによりアルカリ組成物を得る工程(以下において「工程A」という)を行った後、該アルカリ組成物のpHを8未満に低減する工程(以下において「工程B」という)を行うことにより調製することができ、ゲル化力を有することを特徴とする流動材料である。ここでいう「ゲル化力を有する」とはアルカリ条件下で加熱することによってゲル化する機能を発揮することを意味する。通常の板コンニャクは、すでにゲル化してしまっているためにアルカリ条件下で加熱してもさらにゲル化することはない。また、コンニャク粉を水で膨潤させた後に酵素などにより長時間分解させて低分子化させたものは、コンニャク粉に由来する組成物であるにもかかわらず、アルカリ条件下で加熱してもゲル化することはない。本発明のコンニャク流動材料は、特定の製法により製造したものであって、なおかつ流動性とゲル化力を兼ね備えた材料である点に特徴がある。
【0011】
コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理する工程(工程A)は、コンニャク粉のゲル化力を部分的に利用してアルカリ組成物を得る工程である。従来のコンニャクの製造方法では、コンニャク粉のゲル化力をほぼ完全に利用して固形のコンニャクを得ているが、本発明の工程Aではコンニャク粉のゲル化力の利用を抑える。すなわち、水を添加して攪拌すればペースト状ないし糊状になるような状態でゲル化をとどめておく。このような状態でゲル化を抑えておくことによって、最終的に得られるコンニャク流動材料にゲル化力を持たせることが可能になり、他の成分と混合した後に、そのゲル化力を発揮させうるようになる。
【0012】
工程Aで用いるコンニャク粉の産地や種類は特に制限されない。コンニャク芋をそのまま粉末化したものを用いてもよいし、精製工程を経たものを用いてもよい。また、コンニャク粉は必ずしも粒径が揃っている必要はない。
【0013】
工程Aにおいてコンニャク粉に添加するアルカリは、化粧品に用いることができるものの中から適宜選択する。コンニャク粉は、通常pH9以上のアルカリ下にてゲル化する。したがって、このようなpH範囲内になるように工程Aにおいてコンニャク粉に添加するアルカリの量を適宜調整する。好ましいのは、塩基性アミノ酸、塩基性塩類または両者の混合物をアルカリとして添加する態様である。
塩基性アミノ酸としては、通常は、アルギニン、ヒスチジン、リジン、シトルリン、オルニチン等の単独または混合したものを使用する。特に好ましいのはアルギニンまたはリジンである。塩基性アミノ酸は、コンニャク粉に対して1.25〜20重量%で添加することが好ましい。塩基性アミノ酸はpHの緩衝性が高い。このため、塩基性アミノ酸を用いれば、安定したpHが得られ、品質が安定した組成物を提供しやすいという利点もある。
【0014】
塩基性物質としては、通常は、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリム等の有機酸塩、及びポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム等のリン酸塩、及び炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、及び硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の単独又は混合したものを用いることができる。このように、化粧品に用いることが可能である塩基性の塩類であればいずれも、本発明において塩基性塩類として使用することができる。
【0015】
なお、バッファ効果を持たせるために各々の酸または酸性塩類を組み合わせて、最終的にpHがアルカリ性になる組み合わせで用いることも可能である。その場合の酸、塩基性塩類としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、リン酸、リン酸一ナトリウム、リンゴ酸一カリウム等を用いることができる。使用量はコンニャク粉に対して0.01〜20重量%にすることが好ましい。
【0016】
塩基性アミノ酸と塩基性塩類を併用すれば、両者の機能をうまくバランスさせて製造を容易化できることがある。すなわち、塩基性アミノ酸はpH緩衝性が高く、安定したpHが得られる反面、pH値を任意に設定することが難しいという難点がある。一方、塩基性塩類はpHの緩衝性は低いが、物質の選択により任意にpHを調整できる長所がある。このため、両者をうまく組み合わせれば、pH設定を容易にし、原料、使用水によるpHの変動をおさえて、均一なアルカリ組成物を製造することが可能になる。
【0017】
pHは9以上に調整するが、9.0〜10.5に調整することが好ましく、9.3〜10.2に調整することがより好ましい。pHが9.0以上であれば、効率よくゲル化を進行させやすい。また、pHが10.5以下であれば、ゲル化反応が進みすぎて離水やアルカリ臭が発生する弊害を防ぎやすい傾向がある。
【0018】
コンニャク粉に、水とアルカリを添加する順序は特に制限されない。例えば、コンニャク粉に水を加えて膨潤溶解させてからアルカリを添加混合して反応させてもよいし、アルカリを添加した水をコンニャク粉に加えて膨潤と反応を同時に行ってもよい。あるいは、コンニャク粉にアルカリを混合しておいてから水を加えて膨潤溶解させてもよい。これらの方法は適宜組み合わせてもよい。また、コンニャク粉にまず塩基性アミノ酸を含む水を添加して、その後に塩基性塩類を含む水を添加してもよい。いずれの方法であっても、水による膨潤とアルカリによる反応が進行する限り、工程Aの手順として採用することが可能である。
【0019】
好ましい具体例として、まず、コンニャク粉に水を加えて膨潤溶解し、得られたコンニャク糊状物に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を加え、よく混合する方法を挙げることができる。また、別の好ましい具体例として、水に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を予め混合溶解し、この溶液でコンニャク粉を膨潤溶解する方法を挙げることができる。さらに別の好ましい具体例として、コンニャク粉に塩基性アミノ酸、塩基性塩類又は両者の混合物を予め混合し、次いで水を添加混合して膨潤溶解する方法を挙げることができる。
【0020】
水の添加量は、コンニャク粉1重量部に対して、10〜150重量部が好ましく、12〜100重量部がより好ましい。
【0021】
コンニャク粉に水やアルカリを添加した後は、室温または加熱下にて十分に反応させることが好ましい。たとえば、室温で2〜4時間、60℃で15分〜1時間程度処理することにより十分に反応させることができる。温度や時間などの条件は、コンニャク粉とアルカリの割合、添加方法、pH、最終製品とする化粧品の種類などによって適宜決定することができる。一般に、pHが高い場合には反応時間は短くてよく、pHが低い場合は反応時間を長くすることが好ましい。
【0022】
工程Aでは、本発明の効果を過度に損なわない限り、上記以外の成分を添加してもよい。例えば、乳化剤、澱粉、油脂、調味料または香料等を適宜添加してもよい。その種類や量は、目的とする化粧品の種類や製造条件、保存環境などに応じて決定することができる。また、このような成分や添加剤の添加は、後の工程(例えば工程B、工程Cおよび/または工程D)において行っても構わない。
【0023】
次に、アルカリ組成物のpHを8未満に低減する工程(工程B)について説明する。
工程Bは、工程Aで得られたアルカリ組成物のpHを8未満に低減する工程である。pHの低減は、通常は酸を添加することにより行う。添加する酸の種類は、本発明の効果を過度に阻害しないものであれば特に制限されない。通常は、乳酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の有機酸溶液を添加する。酸の添加は、一時期に一気に添加してもよいし、連続的または断続的に添加してもよい。pHは、4.6〜7.5に調整することが好ましく、5〜7に調整することがより好ましい。特に、pH4.6未満、特にpH5未満のpH領域に調整してからさらにpHを上昇させるような処理を行うことなく、目的とするpHにコントロールすることがより好ましい。
【0024】
本発明のコンニャク流動材料は、上記の工程Aおよび工程Bに続けて、さらに酵素処理する工程(工程C)と酵素処理済み組成物に含まれる塊粒を断裁する工程(工程D)を実施して得られるものであってもよい。本発明のコンニャク流動材料は、工程A、工程Bに続けて工程Cだけを行って得られるものであってもよい。
【0025】
工程Cにおいて、酵素処理に使用する酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、及びガラクトマンナーゼから選ばれる1種又は2種以上の酵素が好ましい。これらの酵素については、市販品を使用することができる。例えば、三共株式会社製のスクラーゼNなどを好ましく使用することができる。
【0026】
酵素処理は、酵素が十分に作用しうる温度で行う。通常は、加熱条件下で行い、40〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。また、処理時間は、酵素の種類や温度によって異なるが、通常は10分〜12時間、好ましくは20分〜6時間、さらに好ましくは30分〜3時間である。また、酵素処理中は攪拌を行うことが好ましい。
【0027】
酵素処理を行った後は、酵素を失活させることが好ましい。酵素を失活させる手段は、本発明の効果に過度な悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されないが、例えば酵素が失活する温度まで上昇させることにより目的を達成することができる。前述のスクラーゼNを用いた場合は、例えば90℃まで温度を上昇させることによって酵素を失活させることができる。
【0028】
次に工程Dについて説明する。
工程Dは、工程Cで得られた酵素処理済み組成物に含まれる塊粒を断裁する工程である。工程Cによって、本発明の粘度条件を満たすコンニャク流動材料を得ることが可能であるが、工程Cで得られた組成物の粘度をさらに低くしたい場合や、工程Cで得られた組成物に含まれる塊粒をさらに小さくしたい場合には、工程Dを行うことが好ましい。粘度はさらに0.2〜1Pa・s程度低下させることが可能である。
【0029】
工程Dで行う裁断は、ホモジナイザーやフードカッターを用いて行うことが好ましい。フードカッターやホモジナイザーの構造の詳細は特に限定されない。工程Cで得られた酵素処理済み組成物に塊粒が含まれている場合は、その塊粒を機械的に断裁できればよく、高速回転カッターや高速ホモジナイザー等を用いることが好ましい。このような機械的な断裁処理は複数回繰返すことも可能である。このような裁断処理を行うことによって、一段と分散特性に優れて、他の成分と均一に混合しやすいコンニャク流動材料にすることができる。
【0030】
本発明では、コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有する高濃度コンニャク流動材料を好ましく用いることができる。このような高濃度コンニャク流動材料は、工程Aにおいて高濃度のアルカリ組成物を調製し、工程Bにおいて強制攪拌を行うことにより調製することができる。すなわち工程Aでは、コンニャク粉1重量部に対して、水の添加量を10〜27重量部とすることが好ましく、11〜23重量部とすることがより好ましく、12〜20重量部とすることがさらに好ましく、13〜18重量部とすることが特に好ましい。工程Aで得られる組成物は、高粘度であることから、このままでは他の成分と十分に混合することはできない。このため、工程Bでは、アルカリ組成物のpHを8未満に低減して強制攪拌しつつ温度を上げて強制攪拌組成物を得る。ここでいう「強制攪拌」とは、アルカリ組成物の粘度に抗して、アルカリ組成物中に導入した攪拌手段を30rpm以上で回転させるか、それと同等の攪拌を行うものである。攪拌手段としては、2〜12枚のブレード付き回転軸などを挙げることができる。このような強制攪拌を行いながら、徐々に温度を上昇させて行く。温度上昇の幅は5〜60℃が好ましく、10〜55℃がより好ましく、20〜50℃がさらに好ましい。また、温度の上昇速度は、最初は低くしておき、徐々に高めて行くことが好ましい。工程Bにおける最終到達温度は、40〜75℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。工程Bでは、温度上昇に伴って攪拌速度を上げて行くことが好ましい。攪拌速度は最終的に1.5倍以上に上げることが好ましく、1.8倍以上に上げることがより好ましく、2倍以上に上げることが特に好ましい。具体的には、室温から60℃に温度を上昇させつつ、回転速度を30rpmから60rpmに上げる態様を好ましい態様として例示することができる。攪拌時間は2〜45分が好ましく、3〜30分がより好ましく、5〜20分が特に好ましい。工程Bを行った後は、工程Cを行うことが好ましく、さらに工程Dまで行うことがより好ましい。
【0031】
高濃度コンニャク流動材料のコンニャク粉含有量は、4重量%以上であることがより好ましく、4.5重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、5.5重量%以上であることが特に好ましい。上限については特に制限はないが、例えば8重量%のコンニャク流動材料を得ることができる。また、高濃度コンニャク流動材料の20℃における粘度は、3.5Pa・s以下であることがより好ましく、3Pa・s以下であることがさらに好ましく、2.8Pa・s以下であることが特に好ましい。下限値は、好ましくは0.1Pa・s以上であることが好ましく、0.2Pa・s以上であることがより好ましく、0.3Pa・s以上であることがさらに好ましく、0.4Pa・s以上であることが特に好ましい。範囲で規定すると、高濃度コンニャク流動材料の20℃における粘度は、0.1〜4Pa・sであることが好ましく、0.1〜3.5Pa・sであることがより好ましく、0.2〜3.2Pa・sであることがさらに好ましく、0.3〜3Pa・sであることがさらにより好ましく、0.4〜2.8Pa・sであることが特に好ましい。
【0032】
高濃度コンニャク流動材料は、多量のコンニャク粉を含んでいるにもかかわらず粘度が低く、しかもゲル化力を有している点に特徴がある。コンニャク粉は水によって膨潤してペースト状になるが、コンニャク粉が元来有している膨潤量には限界があるため、3重量%を大きく上回る量のコンニャク粉を含む流動材料は製造することが容易ではない。コンニャク粉を多量に含む流動材料を得るためには、コンニャク粉を構成するコンニャクマンナン(グルコマンナン)を膨潤性がかなり低下するまで分解して水に溶解ないし分散させる方法が考えられるが、このような方法を採用するとコンニャクマンナンが有しているゲル化力や生体内作用が得られなくなってしまうため好ましくない。上記の製法によれば、コンニャクマンナンが有しているゲル化力や生体内作用を維持しつつ、高濃度化することができるため、上記の条件を満たすコンニャク流動材料を簡便に製造することができる。
【0033】
[化粧品]
本発明の化粧品は、本発明のコンニャク流動材料を用いて製造したものである。本発明の化粧品は、本発明のコンニャク流動材料と化粧品成分を混合することにより調製することができる。混合時には、通常の化粧品製造の際に採用されている攪拌や加温を行ってもよい。本発明の化粧品に用いられるコンニャク流動材料は、化粧品全量に対して0.5〜50重量%とすることが好ましく、1〜30重量%とすることがより好ましく、2〜15重量%とすることがさらに好ましい。本発明のコンニャク流動材料を用いて調製した本発明の化粧品は、乳化安定性が極めて高いという特徴を有する。このため、長時間静置した場合であっても、相分離が生じにくい。具体的には、化粧品表面に油分や水分が浮き出して来たり、変色したり、粘度や強度が変化したりすることを防ぐことができる。また、本発明のコンニャク流動材料を用いて調製した本発明の化粧品は、親油性成分(油分)が少ない場合であっても乳化性が高く、また相分離しにくいという特徴を有する。さらに本発明のコンニャク流動材料を用いて調製した本発明の化粧品は、滑らかでのびがよく使用感に優れているという特徴も有する。
【0034】
上記の高濃度コンニャク流動材料を用いれば、化粧品中に高濃度のコンニャク成分を容易に含有させることができる。また、他の化粧品成分と均一に混合することが可能である。高濃度コンニャク流動材料は、優れたゲル化力を有しているため、一段と高い乳化安定性を発揮させることができる。特に、夏のように比較的高温の雰囲気下に長時間静置した場合であっても、高い乳化安定性を示す。
【0035】
本発明の化粧品は、例えば、化粧石鹸、シャンプー、洗顔料、リンス、アイクリーム、アイシャドウ、クリーム・乳液、化粧水、香水、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ひげそり用クリーム、びげそり用ローション、日焼けオイル、日焼け止めオイル、日焼けローション、日焼け止めローション、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、ファンデーション、粉末香水、ほお紅、マスカラ、眉墨、爪クリーム、美爪エナメル、美爪エナメル除去液、洗毛料、浴用化粧品、口紅、リップクリーム、アイライナー、歯磨き、デオドラント剤、オーデコロン、養毛剤および育毛剤などとして使用することができる。また、本発明の化粧品は、軟膏剤や湿布剤などとして使用することもできる。
【0036】
本発明の化粧品には、使用目的に応じてコンニャク流動材料以外のさまざまな成分をさらに添加させておくことができる。例えば、エモリエント効果改善、使用感改善、使用後のかさつき軽減、可溶性改善、乳化性改善、乳化安定性改善、油剤成分との相溶性改善、使用後のつっぱり感軽減、肌への馴染み改善、皮膚上におけるのびの改善、べたつきの軽減、肌荒れ防止、美肌効果改善、皮膚保護効果改善、角質改善、表皮角化正常化(皮膚のターンオーバー亢進による不全角化予防、表皮肥厚化予防、表皮脂質代謝異常抑制)、老人性乾皮症などの乾皮症軽減、ひび割れや落屑などの皮膚乾燥状態改善、しわ発生抑制、しわ消滅、創傷治療、色素沈着予防および改善、老化防止、ふけやかゆみの軽減、脱毛軽減、頭皮疾患予防および治療、保存性改善、柔軟性改善、弾力性改善、艶付与、メラニン色素産生抑制、日焼け防止などを目的として適当な成分を添加させることができる。
【0037】
本発明の化粧品に添加しうる成分として、例えば、油脂成分、リン脂質、UV吸収剤、IR吸収剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、美白剤、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、ペプチド、生理活性植物抽出物、蛍光材料、顔料、色素、香料、スクラブ剤、金属イオン封鎖剤、バインダー、増量剤、増粘剤、糖類、栄養成分、pH調節剤、キレート剤、殺菌剤、角質改善剤、角質溶解剤、抗生物質、皮膚透過促進剤、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、創傷治療剤、新陳代謝促進剤などを使用目的に応じて適宜配合することができる。
【0038】
本発明の化粧品に使用することができる油脂成分として、脂肪酸(例えばオレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ−(n−6,9,13)−トリエン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、チムノドン酸、ヘキサエン酸)、エステル油(例えばペンタエリスリトール−テトラ−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルミリステート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート)、ロウ(例えばミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ワセリン)、動物油および植物油(例えばミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、カカオ脂、パーム油、タラ肝油、牛脂、バター脂、月見草油、コメヌカ油、スクワラン)、鉱物油(例えば炭化水素系オイル、流動パラフィン)、シリコーンオイル(例えばメチルフェニルシリコン、ジメチルシリコン)、高級アルコール(例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール)およびこれらの誘導体を例示することができる。また、有機酸として、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メバロン酸(メバロノラクトン)などを使用することができる。
【0039】
本発明の化粧品に使用することができるリン脂質として、モノアシルエステル型グリセロリン脂質やジアシルエステル型グリセロリン脂質を例示することができる。具体的には、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンを挙げることができる。また、天然由来のレシチン(例えば卵黄)や、上記具体例の水素添加物も使用することができる。
【0040】
本発明の化粧品に使用することができるUV吸収剤として、オキシベンゾン(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、オキシベンゾンスルホン酸、オキシベンゾンスルホン酸(三水塩)、グアイアズレン、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート(p−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチル)、ジ−p−メトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキシル酸グリセリル、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシアニソール、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、p−メトキシケイ皮酸イソプロピル、ジイソプロピルケイ皮酸エステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−tert−ブチル−4'−メトキシベンゾイルメタン、サリチル酸−2−エチルヘキシル、グリセリル−p−ミノベンゾエート、オルトアミノ安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、アミル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルフォン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォン酸、ジカロイルトリオレエート、p−メトキシケイ炭酸−2−エトキシエチル、ブチルメトキシベンゾイルメタン、グリセリル−モノ−2−エチルヘキサノイル−ジ−p−メトキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−4−ビスヒドロキシプロピルアミノベゾエートを例示することができる。
【0041】
本発明の化粧品に使用することができる乳化剤および界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。ノニオン界面活性剤として、ソルビタンエステル(例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、グリセロールエーテル(例えばグリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノミリステート)、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(例えばポリオキシエチレングリセロールモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセロールモノミリステート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルデカイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えばグリセリルモノカプレート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノジリノレエート、グリセリルモノジカプレート)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレングリセリルモノミリステート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート)、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルドデシルアルコール、ポリオキシエチレン−2−デシルテトラデシルアルコール)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアレート)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル)などを例示することができる。
【0042】
また、陰イオン界面活性剤として、高級脂肪酸(例えばオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、バルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸)の塩(例えばジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩)、エーテルカルボン酸アルカリ塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルサルコン塩、高級アルキルスルホン酸塩を例示することができる。さらに、陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤として、アルキル4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン塩などを例示することができる。
【0043】
本発明の化粧品に使用することができる粉末剤として、タルク、カオリン、フラー土、ゴム、デンプン、シリカ、珪酸、珪酸アルミニウム水和物、化学修飾珪酸アルミニウムマグネシウム、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアリールアンモニウムスヌクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスヌクタイト、モノステアリン酸エチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、チョーク、ガム質、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレートを例示することができる。
【0044】
本発明の化粧品に使用することができるポリオールとして、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルトトリオース、スレイトール、ショ糖、グルコース、マルトース、マルチトース、フルクトース、キシリトースを例示することができる。
【0045】
本発明の化粧品に使用することができるその他の材料として、ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)、アミノ酸(例えばプロリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、スレオニン、リジン、システイン、アルギニン)、ホルモン(例えば卵胞ホルモン、プレグネノロン、副腎皮質ホルモン)、ペプチド類(例えばケラチン、コラーゲン、エラスチン)、糖類(例えばポリオールの項で例示したもの)、無機塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、硫化カリウム)、乳酸菌培養物、ステロール類(例えばコレステロール、プロビタミンD3、カンペステロール、スチグマスタノール、スチグマステロール、5−ジヒドロコレステロール、α−スピナステロール、コレステロール脂肪酸エステル)、スフィンゴシン類(例えばスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン)、セラミド、プソイドセラミド、サポニン、キチン誘導体、オリゴ糖(例えばマルトース、キシロビオース、イソマントース、ラクトース、スクロース、ラフィノース、マルトトリオース、キシロトリオース、マルトテトラオース、キシロテトラオース、マルトペンタオース、キシロペンタオース、マルトヘキサオース、キシロヘキサオース、マルトヘプタオース、キシロヘプタオース)、酸性ムコ多糖(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸)、酵母エキスを例示することができる。
【0046】
さらに、本発明の化粧品には、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリグルタミン酸、ゼラチン)、電解質(例えば塩化ナトリウム)、美白剤(例えばハイドロキノン及びその誘導体、アラントイン、ビタミンE誘導体、グリチルリチン、L−アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸、エラグ酸及びその誘導体、トラネキサム酸、レゾルシン及びその誘導体、パンテリン酸誘導体、プラセンタエキス、ヨクイニン、緑茶、葛根、桑白皮、甘草、オウゴン、アロエ、橙皮、カミツレ、霊芝)、皮膚保護剤(例えばレチノール、レチノールエステル、レチノイン酸であり、特に水溶性の美白剤が好ましい)、皮膚軟化剤(例えばステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレアート、ミンク油、セチルアルコール、ステアリン酸、ヤシ油、ヒマシ油、オイソステアリン酸)、皮膚緩和剤(例えばステアリルアルコール、モノリシノール酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、セチルアルコール)、皮膚透過促進剤(例えば2−メチルプロパン−2−オール、2−プロパノール、エチル−2−ヒドロキシプロパノアート、2,5−ヘキサンジオール、アセトン、テトラヒドロフラン)、生理活性植物抽出物(例えばアロエ、アルニカ、カンゾウ、セージ、センブリなどの抽出物)、保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、尿素、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、抗炎症剤(例えばサリチル酸)、殺菌剤(例えばトリクロサン)、酸化防止剤(例えばα−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン)、緩衝剤(例えばトリエタノールアミンまたは水酸化ナトリウムと乳酸の組み合わせ)、角質溶解剤(例えば乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸)、スクラブ剤(例えばポリエチレン粉末)、顔料(例えばカルシウム、バリウム及びアルミニウムのレーキ、酸化鉄、二酸化チタン、雲母)などを使用することができる。これら以外の材料についても、用途に応じて本発明の化粧品に添加することができる。各成分の添加量や添加方法については、本技術分野に周知の方法に従うことができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0048】
[1]コンニャク流動材料の製造
(製造例1)
コンニャク精粉20kgとリン酸ナトリウム1.8kgを60℃の水1000リットルに添加混合して、30分反応させることによって、pH12のアルカリ組成物を得た。アルカリ組成物1kgに対して5gの乳酸(50%濃度)を混合して、pH値を3.7に調整した。次いで、60℃のペ−スト状コンニャク100重量部に対して、酵素(酵素名:スクラ−ゼN、主要酵素:ペクチナ−ゼ、メ−カ−名:三共株式会社)を0.05重量部添加して2時間反応させることによりコンニャク流動材料1を製造した。
【0049】
(製造例2)
コンニャク精粉20kgとリン酸ナトリウム1.8kgを25℃の水1000リットルに添加混合して、3時間反応させることによって、pH12のアルカリ組成物を得た。その後は、製造例1と同じ工程を実施することによりコンニャク流動材料2を製造した。
【0050】
(製造例3)
コンニャク精粉60kgと炭酸ナトリウム2.15kgを60℃の水1000リットルに添加混合して、30分反応させることによって、pH9.3のアルカリ組成物を得た。アルカリ組成物に、クエン酸1kgと水100kgからなる水溶液を添加して室温で強制攪拌した。強制攪拌は、各混合物を入れたバッチ中に挿入した攪拌手段(10枚のブレード付き回転軸)を室温にて30rpmで回転させることにより開始し、温度を60℃まで上昇させるのに伴って回転速度を60rpmまで速めることにより行った。これによってpH7.3の組成物を得た。得られたpH調整済み組成物100重量部に対して、酵素(酵素名:スクラ−ゼN、主要酵素:ペクチナ−ゼ、メ−カ−名:三共株式会社)を0.05重量部添加して60℃で2時間酵素処理を行った。その後、90℃まで温度上昇して酵素を失活させた後、常温に降温して、酵素処理済み組成物を得た。次いで、得られた酵素処理済み組成物に含まれる塊粒をフードカッターを使用して断裁処理してコンニャク流動材料3を製造した。
【0051】
(製造例4〜11)
クエン酸の使用量を2kg、3kg、4kg、5kg、6kg、7kg、8kg、9kgへそれぞれ変えて製造例3と同じ工程を実施することにより、それぞれpH6.2、pH5.6、pH5.3、pH5.0、pH4.6、pH4.4、pH4.3、pH4.2のアルカリ組成物を得て、最終的にコンニャク流動材料4〜11を得た。
【0052】
(製造例12〜20)
コンニャク精粉と炭酸ナトリウムを60℃ではなく25℃の水に添加混合して、反応時間を3時間へ変更して製造例4〜11と同じ工程を実施することにより、コンニャク流動材料12〜20を製造した。
【0053】
[2]化粧品の製造
製造例1〜20で製造した各コンニャク流動材料を用いて、以下に示す工程にしたがって化粧品を製造した。なお、組成中の成分含量の単位(%)は重量%であり、少なくとも2%以上の成分を表示している。
(実施例1)
以下に記載される各成分を混合し、十分に攪拌することによって化粧用ローションを製造した。
65.0% 水
10.0% コンニャク流動材料
4.0% カプリル酸トリグリセリド/カプリン酸トリグリセリド
3.5% ブチレングリコール
2.0% トリエチルヘキサノン
2.0% スクアラン
1.2% ステアリルアルコール
1.2% ソルビタンセスキオレエート
1.1% ステアリン酸
【0054】
(実施例2)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによってボディーローションを製造した。
66.5% 水
10.0% コンニャク流動材料
8.0% 鉱油
7.0% グリセリン
2.5% プロピレングリコール
1.2% セチルアルコール
【0055】
(実施例3)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによってボディークレンザーを製造した。
46.5% 水
25.0% ラウレス硫酸ナトリウム
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
10.0% コンニャク流動材料
8.0% コカミドプロピルベタイン
(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)
4.0% ラウラミドプロピルベタイン
3.0% ラウラミドDEA(ラウリン酸ジエタノールアミド)
2.0% コカミドDEA(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)
【0056】
(実施例4)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによってしわクリームを製造した。
64.5% 水
12.5% シクロペンタシロキサン
5.0% コンニャク流動材料
3.0% グリセリン
2.0% ポリメチルシルセスキオキサン
2.0% ブチレングリコール
1.5% グリセリン、グリセリルアクリレート/アクリル酸共重合体、
プロピレングリコール
1.5% ヒアルロン酸
【0057】
(実施例5)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによってスキンを製造した。
73.7% 水
10.0% コンニャク流動材料
10.0% アルギニン
3.0% ブチレングリコール
2.0% グリセリン、グリセリルアクリレート/アクリル酸共重合体、
プロピレングリコール
【0058】
(実施例6)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによって化粧用クリームを製造した。
52.8% 水
10.0% コンニャク流動材料
8.0% シクロペンタシロキサン
5.0% ジメチコンコポリオール
4.0% ジメチコン、ジメチコン/ビニルジメチコン共重合体
3.0% ジメチコン
3.0% グリセリン
3.0% ブチレングリコール
2.0% フェニルトリメチコン
2.0% ヒアルロン酸
【0059】
(実施例7)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによって化粧用ミストを製造した。
87.3% 水
10.0% コンニャク流動材料
1.0% アロエフェロックスリーフ抽出物
1.0% グリセリン
【0060】
(実施例8)
以下に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによって化粧用エッセンスを製造した。
64.7% 水
10.0% コンニャク流動材料
10.0% グリセリン、グリセリルアクリレート/アクリル酸共重合体、
プロピレングリコール
5.0% ブチレングリコール
4.0% グリセリン
1.0% ヒアルロン酸
【0061】
本発明の化粧品は、親油性成分が少なくても相分離することがなく、乳化安定性に優れていた。また、本発明の化粧品はベタ付きがなく、滑らかで使用感が良いものであった。本発明以外のコンニャク粉由来の組成物を用いて製造した化粧品は、いずれの性質も本発明のコンニャク流動材料を用いた場合よりも劣っていた。本発明のコンニャク流動材料の中でも、特に、コンニャク流動材料3〜20を用いた場合は、より相分離しにくい化粧品とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のコンニャク流動材料と化粧品は、極めて簡単にかつ安価に製造することができる。また、植物由来の成分を用いているため安全性が高く、安心して製品化することができる。さらに、本発明の油水成分分離抑制剤は、化粧品のみならず幅広い用途に応用可能である。よって、本発明は産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料と、化粧品成分とを含むことを特徴とする化粧品。
【請求項2】
コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有するコンニャク流動材料と、化粧品成分とを含むことを特徴とする化粧品。
【請求項3】
コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料を化粧品成分と混合する工程を含むことを特徴とする含む化粧品の製造方法。
【請求項4】
前記コンニャク流動材料が、pHを8未満に低減した後に酵素処理を行うことにより調製したものであることを特徴とする請求項3に記載の化粧品の製造方法。
【請求項5】
前記コンニャク流動材料が、酵素処理を行った後の組成物中に含まれる塊粒を断裁することにより調製したものであることを特徴とする請求項4に記載の化粧品の製造方法。
【請求項6】
コンニャク粉を水で膨潤溶解してpH9以上でアルカリ処理した後にpHを8未満に低減する工程を経て調製したゲル化力を有するコンニャク流動材料を含むことを特徴とする油水相分離抑制剤。
【請求項7】
コンニャク粉含有量が3.5重量%以上であり、20℃における粘度が4Pa・s以下であって、ゲル化力を有するコンニャク流動材料を含むことを特徴とする油水相分離抑制剤。

【公開番号】特開2013−1641(P2013−1641A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130904(P2011−130904)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(507301833)蒟蒻屋本舗株式会社 (3)
【Fターム(参考)】