説明

化粧品への使用に適した光学的なぼかし効果を有する顔料組成物

ナノ粒子のフラクタルネットワークと半透明の巨視的粒子の組み合わせから形成されるゲルシステムを含む組成物、二酸化チタンおよび他の着色顔料が開示される。前記組成物は、フラクタル粒子、巨視的粒子、二酸化チタンおよび着色顔料の間の相乗作用の結果として、皮膚が自然な外観を保っている間に、小じわやしわをぼかすのに有効な膜を形成できる。また、それらの使用方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
しわを低減し、小じわを最小にする多くの方法が開発されている。これらの方法のいくつかは、有効成分を含む。本発明は、概して、化粧品用、皮膚科学用および医薬用組成物、およびその使用に関する。より詳細には、本発明は、しわ、小じわ、毛穴、皮膚の欠陥などを効率良く光学的にぼかすことによって、生体表面の外観を改善する化粧品組成物とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的幾何学に起因して、皮膚上の小じわやしわが顕著に目立つようになる。人間の皮膚に関して、拡散反射は容易に起こるが、必要とされる拡散反射とは程度が異なる。皮膚の表面がなめらかな場合、光は吸収され、反射されて、皮膚の表面を離れて散乱されて、光の吸収・散乱の程度に応じた色として観察される。しかしながら、一方で、皮膚表面のしわから観察者の目に向かって反射される光は、通常の皮膚からの光よりも強度が小さくなり、その結果、目は、しわの多い皮膚領域をより暗いものとして認識する。それにより、該領域はより目立つようになる。多方向に光を散乱できると、目が皮膚を実在する状態で明確に視認できなくなるので、拡散反射の程度を増すことにより、しわの多い皮膚の視認される外観は容易に修正されるようになる。
【0003】
しわを減らし、小じわを最小にするために、多くの方法が開発されている。これらの方法には、抗酸化剤、つまり、神経細胞内の神経伝達を抑制することによって作用し、それにより収縮した筋肉を弛緩するボツリヌストキシン(Botox(商標))(Allergan,Irvine,Calif.)などの薬剤やレチノイン酸のようなヒドロキシ酸フルーツ酸、シアバターのような皮膚軟化薬、ヒアルロン酸のような皮膚プランパー、コラーゲンのようなフィラー、しわが消失したと錯覚を起こさせる光拡散顔料やマイクロスフィアなどの細胞再生プロセスを早める薬剤などの有効成分が含まれる。毛穴、皮膚表面の凹凸や欠陥などを目立たなくするために、他の方法が開発されている。これらの方法には、皮膚に充填されてカモフラージュする皮膚美白剤が含まれる。
【0004】
皮膚の表面に塗布される粒子の光拡散特性を通じて、しわを光学的に減少できる。しわの周縁部と溝の中で、粒子は、光を散乱して遠方に拡散し、皮膚の窪みを最小にする。観察者に対して、しわはぼやけて見えるので、「ソフトフォーカス効果」や「ぼかし効果」という用語が用いられる。以前は、ぼかし効果は、マイクロスフィアなどの球状微粒子やファイバーの拡散反射に基づくものであった。このような組成物の1つは、非特許文献1で述べられている。
【0005】
残念なことに、これらの方法には、即効性がなく、効果が見られるには、数日または数週間使用し続ける必要がある。注入を要し、患者を不快にする侵襲的な方法もあり、発赤、腫れおよび他の副作用を伴う場合もある。さらに、化粧用ファンデーションの多くおよびメーキャップ化粧品では、実際に、しわの隙間の中に顔料が移動するので、しわや小じわが目立ってしまう。他の製品は、不自然で厚塗りの外観を呈して皮膚の欠陥を覆う。さらに、マイカなどの他の製品は、光を拡散や散乱するよりもむしろ反射するので、その結果、外観が不自然に輝くようになる。
【0006】
特に関心があるのは、しわを低減し、小じわを最小にするために開発された公知の方法の1つにおいて、一般に、皮膚表面を横切って、入射光をより均一に散乱するために使用される光拡散顔料が用いられることであり、これにより、しわの中での光の損失量は最小になるので、しわが見えにくくなる。光拡散顔料の1つとして、その反射特性のために、二酸化チタンが最も一般的に使用される。その結果、しわや小じわは、覆われて目立たなくなる。しかしながら、二酸化チタン(TiO)粒子は、概して、化粧品配合物において一般に見られるものとは大きく異なる屈折率を示すため、この方法は、望ましくないことが分かっている。このため、TiO粒子を使用する場合、目標とする化粧品組成物は、十分な光透過率が得られなくなるまで不透明にしたものである。その結果、従来のTiO濃度(約10〜15%)の配合物は、使用者の皮膚に塗布されると、着色された皮膚の色調を光学的にぼかすよりもむしろ、常に白く見えるものであった。したがって、化粧品としての適切な効果を得るには、このような白い色調を防ぐことが望まれている。
【0007】
しわ、小じわ、毛穴および皮膚の欠陥を視覚的に低減して、皮膚を自然で滑らかに見えるようにし、さらに、従来の方法および組成物に関する問題を克服する代替法が望まれている。これらの有益な目的を達成することによって、化粧品分野において、飛躍的な進歩が明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nakamura,N,et al,“Blurring of Wrinkles Through Control of Optical Properties”,XIV th I.F.S.C.C.Congress,Barcelona,Spain,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高分子マトリックスにナノスケールの無機粒子を混合することは、例えば、携帯電話やスキー板に透明コーティングするために、工業的に様々に利用されることが知られている。しかしながら、皮膚上のファンデーションが自然な外観を保っている間に、しわ、小じわ、毛穴および皮膚の欠陥を見えづらくすることにより、ぼかしをもたらす新規な方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的の1つは、マクロ粒子、二酸化チタン粒子およびナノ粒子のフラクタルネットワーク内に分散される着色顔料粒子を含み、以後、「ゲルシステム」または「ゲル」と言及される実質的に無水のシステムを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、半透明のマクロ粒子、例えば、これに限られる訳ではないが、シリコーンクロスポリマーを有するゲルシステムを提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、フラクタルネットワークがフラクタルゲルであるゲルシステムを提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、「厚塗りの外観」ではなく「自然な外観」をもたらすファンデーションを得るために、二酸化チタンの濃度が実質的に制限されるゲルシステムを提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、小じわ、しわ、毛穴および皮膚の欠陥を効果的にぼかす本発明のゲルシステムを含む化粧品組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、フラクタル粒子と巨視的粒子の間のサイズドメインの違いや光学的特性に影響を及ぼすゲルを提供することである。巨視的粒子が存在することにより、フラクタル粒子の空間分布が増加し、光の屈折/横方向への散乱が生ずる界面領域が増加する。したがって、ゲルは、特に化粧製品に用いた場合に、優れた光学的特性を有することが理解される。巨視的粒子は、有機的あるいは無機的なものであってもよい。
【0016】
本発明の別の目的は、本発明に係るゲルシステムを含む組成物を製造する方法を提供することであり、該組成物では、巨視的粒子が、ゲルシステム内において、フラクタル粒子のネットワークがフラクタル粒子の混合物を用いることによって得られるマトリックス中で分散される。
【0017】
本発明の別の目的は、カラー化粧品組成物の製造および色合わせ方法、特に、広範に渡る複数の色合いを作成せずに、目標とする色合いを調製できる方法を提供することである。
【0018】
また、本発明の目的には、人体、特に、顔面、首および唇の皮膚において、しわ、小じわ、毛穴および皮膚の欠陥をぼかすことができる美容処理プロセスも含まれる。このプロセスは、本発明の組成物を有効量皮膚に塗布することを特徴としている。
【0019】
さらに、本発明のその他の目的および利点として、しわや小じわをぼかす方法が提供される。一方法は、皮膚および/または唇に、効果的なぼかし得るために、フラクタルネットワークと巨視的粒子の相対的なサイズ/ドメインおよび屈折率に影響を及ぼす本発明の組成物を塗布することを含む。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明は、化粧品として許容できるビヒクルの状態で、皮膚に適用できる。
本発明とその態様を以下記載する。
1.(a)ナノ粒子のフラクタルネットワークと、
(b)半透明の巨視的粒子と、
(c)二酸化チタンと、
(d)二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、
を含む化粧品組成物であって、
前記二酸化チタンが、該組成物の重量に対して、約0.5%〜4.0%の量で存在し、
前記化粧品組成物が、ゲルシステムであるとともに、実質的に無水であることを特徴とする化粧品組成物。
2.前記ナノ粒子が、約40〜900ナノメートルの範囲の粒径と、約1.38〜約2の範囲の屈折率と、を有する無機ナノ粒子である、上記1の化粧品組成物。
3.前記無機ナノ粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、セリアまたはこれらの混合物であり、
前記巨視的粒子が、シリコーンエラストマー、シリコーンクロスポリマー、炭化水素エラストマー、天然および合成ゴム、ポリマー球体、またはこれらの互換可能な組み合わせである、上記2の化粧品組成物。
4.前記ポリマー球体が、フルオロポリマー、ポリアクリル酸、ナイロン、ポリエステル、セルロースビーズ、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタンまたはこれらの混合物である、上記3の化粧品組成物。
5.前記組成物が、該組成物の重量に対して、少なくとも約3%から60%未満のナノ粒子を含む、上記3の化粧品組成物。
6.前記巨視的粒子が、シリコーンエラストマー、シリコーンクロスポリマー、炭化水素エラストマー、ポリマー球体またはこれらの組み合わせである、上記4の化粧品組成物。
7.前記巨視的粒子が、硫化可能なシリコーンシーラント化学(silicone sealant chemistry)から得られる架橋シリコーンエラストマー、シリル水素化物を有するオレフィンまたはオレフィン系珪素のヒドロシリル化によって調製される付加重合されたシリコーンエラストマー、架橋分子の不存在下におけるエポキシシリコーン官能基とシリルヒドリド官能基の双方を含む二官能性前駆体分子の自己重合によって得られるシリコーンクロスポリマーである、上記6の化粧品組成物。
8.前記シリコーンクロスポリマーが、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(アルキルセテアリルジメチコン/ポリシクロヘキサンオキシド)クロスポリマーまたはこれらの組み合わせである、上記7の化粧品組成物。
9.前記巨視的粒子が、約1.38〜約1.6の屈折率を有する、上記6の化粧品組成物。
10.有効成分をさらに含む、上記9の化粧品組成物。
11.前記有効成分は、日焼け止め、紫外線吸収剤、またはこれらの互換可能な組み合わせである、上記10の化粧品組成物。
12.前記着色顔料が、酸化第二鉄、酸化第一鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、黒色酸化鉄、アシルグルタメート酸化鉄、水酸化クロム、マンガンバイオレット、酸化セリウム、ウルトラマリンブルーレーキ、カーマインレーキ、バリウムレーキ、ストロンチウムレーキ、カルシウムレーキ、アルミニウムレーキ、カーボンブラックまたはこれらの混合物である、上記1の化粧品組成物。
13.異なるナノ粒子が異なるフラクタルネットワークを形成する、上記1の化粧品組成物。
14.前記ゲルシステムは、さらに非水性溶媒を含み、該非水性溶媒が、シリコーンオイル、非シリコーン系の有機オイル、またはこれらの混合物である上記3の化粧品組成物。
15.さらに溶媒を含み、該溶媒中に前記巨視的粒子が分散され、前記フラクタル粒子の屈折率が前記巨視的粒子の屈折率と一致しない、上記3の化粧品組成物。
16.前記ゲルシステムが第1のナノ粒子と第2のナノ粒子とからなる非水分散体である、上記4の化粧品組成物。
17.前記第1のナノ粒子がアルミナであり、前記第2のナノ粒子がシリカである、上記15の化粧品組成物。
18.前記組成物中の前記二酸化チタンと他の着色顔料との量は、該化粧品組成物に対して、約1%〜約10%の間にある、上記1の化粧品組成物。
19.前記組成物中の前記着色顔料の量は、該化粧品組成物の重量に対して、約0.5%〜約9.5%の間にある、上記1の化粧品組成物。
20.実質的に無水である化粧品組成物であって、
該化粧品組成物は、
(a)約40〜900ナノメートルの範囲の粒径と約1.38〜約2の範囲の屈折率とを有するナノ粒子のフラクタルネットワークであって、該ナノ粒子が該組成物の重量に対して、約3%〜約60%の量で存在し、アルキル置換煙霧シリカ、煙霧シリカ、コロイドシリカ、煙霧アルミナ、煙霧チタニアおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、ナノ粒子のフラクタルネットワークと、
(b)約1〜約200ミクロンの範囲の粒径と、約1.38〜約1.6の範囲の屈折率と、を有する半透明の巨視的粒子であって、前記ナノ粒子の屈折率と前記巨視的粒子の屈折率とは一致しない、半透明の巨視的粒子と、
(c)約0.5マイクロメートル〜約1.5マイクロメートルの範囲の粒径を有し、該組成物の重量に対して、約0.5%〜約4.0%の間の量で存在する二酸化チタンと、
(d)約0.1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の粒径を有し、該組成物の重量に対して、約0.5%〜約9.5%の量で存在する、二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、
(d)少なくとも1つの化粧品の有効成分またはアジュバントと、
を含むことを特徴とする化粧品組成物。
21.前記巨視的粒子が、シリコーンエラストマー、炭化水素エラストマー、シリコーンクロスポリマー、ナイロン、ポリウレタン、セルロースビーズ、またはこれらの組合せである、上記20の化粧品組成物。
22.実質的に無水である化粧品組成物であって、該化粧品組成物は、
(a)ナノ粒子のフラクタルネットワークと、(b)半透明の巨視的粒子と、(c)二酸化チタンと、(d)二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、(e)無水溶媒と、を含み、該全組成物に対する前記二酸化チタンの重量百分率が、約0.5%〜約4.0%の間の範囲にあり、前記ナノ粒子の屈折率と前記巨視的粒子の屈折率とは一致しない、
ことを特徴とする化粧品組成物。
23.前記ナノ粒子が、アルキル置換煙霧シリカ、煙霧シリカ、コロイドシリカ、煙霧アルミナ、煙霧チタニアまたはこれらの組合せである、上記22の化粧品組成物。
24.前記マクロ粒子が、シリコーンエラストマー、炭化水素エラストマー、シリコーンクロスポリマー、ポリマー球体、またはこれらの組合せである、上記23の化粧品組成物。
25.前記マクロ粒子が、シリコーンエラストマー、炭化水素エラストマー、シリコーンクロスポリマー、ポリマー球体、またはこれらの組合せである、上記22の化粧品組成物。
26.前記ポリマー球体が、フルオロポリマー、ポリアクリル酸、ナイロン、ポリエステル、セルロースビーズ、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタンまたはこれらの混合物である、上記25の化粧品組成物。
27.前記ナノ粒子が、約50〜約200ナノメートルの粒径を有し、前記巨視的粒子が、約2〜約50マイクロメートルの粒径と、約1.38〜約1.6の屈折率と、を有する上記22の化粧品組成物。
28.前記溶媒が、液体炭化水素または液体シリコーンである、上記22の化粧品組成物。
29.ナノ粒子のフラクタルネットワーク内に、半透明の巨視的粒子と二酸化チタンと1または複数の着色顔料とを含む実質的に無水のゲルシステムであって、全組成物に対する前記二酸化チタンの重量百分率が約0.5%〜4.0%の間の範囲にある、ことを特徴とするゲルシステム。
30.前記ナノ粒子の屈折率と前記巨視的粒子の屈折率とは一致しない、上記29のゲルシステム。
31.前記フラクタルネットワークが、無水溶媒における、ナノ粒子の、実質的に無水の分散体である、上記29のゲルシステム。
32.しわ、小じわ、および毛穴からなる群から選ばれる皮膚の欠陥の外観を光学的にぼかす方法であって、
該方法は、前記皮膚の欠陥の外観を光学的にぼかすのに有効な量のスキンケアまたはメーキャップ組成物を皮膚に塗布して、該皮膚の欠陥の外観を光学的にぼかす工程を含み、
該組成物が、(a)ナノ粒子のフラクタルネットワークと、(b)半透明の巨視的粒子と、(c)二酸化チタンと、(d)二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、を含み、
前記総組成物に対する前記二酸化チタンの重量百分率が、約0.5%〜4.0%の間の範囲にあり、
前記化粧品組成物が、実質的に無水である、
ことを特徴とする方法。
33.上記1の組成物を生体表面上に塗布する工程を含み、前記生体表面上で、拡散透過率が最大になり、不透明度が最小になる、方法。
34.生体表面に塗布した場合に、前記組成物によって、拡散透過率が55%よりも大きくなる、上記1の化粧品組成物。
【0021】
本発明の、これらの新規の特徴は、以下の詳細な説明から、当業者に明白となるであろう。該記述には、本発明を実施するための様々な態様が簡潔に分かり易く説明されている。自明のことであるが、本発明は、追加的あるいは別途自明な態様が可能であり、それらは全て本発明の範囲を逸脱することはない。したがって、図面および詳細な説明は、事実上例示的なものであり、それらに限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】巨視的粒子とフラクタルナノ粒子からなるゲルシステム構造の空間配置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の化粧品組成物で処理された皮膚表面上での入射光の拡散を示す概念図である。
【図3】表2(試料1,2,3および4)、表3(試料5および対照標準)および表4(ファンデーションの試作品、つまり試料6および7)に開示された配合物の拡散透過率を示している。
【図4】図3に開示された種々の配合物に応じた不透明度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、特有の光学的および空間充填特性を有する組成物を使用する。これらの光学および充填特性のために、基層、特に、生体表面に塗布される組成物の薄膜は、膜表面上に入射する光の屈折方向を変え、膜表面上での入射光の拡散を改善する。組成物が化粧品組成物であり、フィルムが個体の皮膚の表面にある場合、皮膚の欠陥は目立ちにくくなる。つまり、反射光の方向のために、観察者には「見えにくく」なる。
【0024】
本発明の組成物とは、ゲルシステムのことである。本発明のゲルシステムは、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内に、半透明のマクロ粒子、二酸化チタン粒子および着色顔料を含む。二酸化チタンの濃度は、「厚塗りの外観」ではなく「自然な外観」をもたらすファンデーションを得るために、実質的に制限されている。
【0025】
図1に概念的に示されるように、ゲルシステム(10)は、多数のナノ粒子(20)で囲まれた複数の半透明の巨視的粒子(15)を含むとされている。ナノ粒子は、凝集あるいは結合して、フラクタルゲルネットワーク(30)を形成する。
【0026】
図2は、皮膚(105)に塗布された本発明の化粧品組成物(ゲルシステム)の膜(100)と、膜(100)の微小領域から取り出されたゲル(110)の拡大図(A)を示している。ゲル(110)は、多数のナノ粒子によって囲まれた複数の半透明のマクロ粒子(115)を含み、マクロ粒子(115)からフラクタルゲルネットワーク(130)が形成される。二酸化チタン、着色顔料および他の種々の作用剤(135)が、ゲルネットワーク(130)内に存在する。ゲル(110)に入射する光(140)は、複数の光ベクトル(145)、(146)、(147)によって概念的に示されるように、半透明のマクロ粒子によって拡散されるので、皮膚が、光学的にぼかされるという利点がもたらされる。
【0027】
発明の別の有益な態様は、ゲルネットワークが特有のレオロジー特性を示すことであり、このことは、特に、化粧品への応用に役立つ。ゲルネットワークは、極めて高いチキソトロピーを示す。すなわち、ゲルの粘度は、剪断応力が増加する場合、急速に減少するが、一旦剪断応力が取り除かれると、ゲルネットワークが即座に再生される。実際に、ブラシや他の塗布具などを用いて組成物を塗布する場合、この性質により、組成物が粘性を有する非流動性の組成物から自由に流動する液体にまで変形するという効果がもたらされる。ネットワークがゲルに再生する速度は、粒子濃度の関数として表され、フラクタルネットワークがフラクタルゲルである例では、逆符号に帯電された粒子間の引力相互作用の大きさに基づく関数として表される(「分散粒子の表面電荷」の項を参照)。高チキソトロピー性を有する組成物は、塗布中には低粘度が望まれるが、塗布後には組成物の移動を防ぐために、粘度が即座に増加することが重要となるファンデーション、マスカラ、ヘアケア、口紅およびパーソナルケア製品の組成物として特に有用である。
【0028】
本発明のゲルシステムは、1または複数の半透明なマクロ粒子を含み、ナノ粒子のフラクタルネットワークを含む。半透明材料は、光が該材料を透過することを許容するが、光を散乱して画像を歪める。好適な半透明のマクロ粒子は、側色用分光光度計を用いて測定されるように、ガラスプレート上の10ミクロンのフィルムキャストに対して、拡散透過率が0よりも大きなものである。膜は、適切なバインダ、ポリマーあるいは溶媒中に巨視的粒子を分散させて調製されてもよい。分散体は、マクロ粒子をバインダ、ポリマーあるいは溶媒中に分散させて調製でき、引き続き、ドローダウンバー(drawdown bar)を用いて、10ミクロンの膜がガラス上にキャストされる。側色用分光光度計は、全透過率および直接透過率を測定するために使用できる。拡散透過率は、全透過率から直接透過率を控除することによって得ることができる。
【0029】
本発明において、フラクタルネットワークは、1または複数の種類のフラクタル粒子を含む。好適な実施形態では、フラクタルネットワークはフラクタルゲルである。どのような特定の理論やメカニズムによるのか確かではないが、フラクタルネットワークは、適切な媒体に分散されたときにゲル化が生じるにつれて、マクロ粒子を覆うと考えられる。
【0030】
本明細書では、ゲルシステムは、複合的なゲル構造を形成するフラクタル粒子ネットワーク内で半透明をなす巨視的粒子の何らかの共連続相を指しており、2007年12月27日に申請された表題「Gel Technology Suitable For Use In Cosmetic Compositions」(Docket No:SC92−US)として同時係属中の仮特許出願でより詳細に記載され、その内容は参照によって本願に包含される。これらのゲルシステム内の巨視的粒子あるいはマクロ粒子は、1〜200ミクロンの範囲の大きさを有する粒子を指しており、半透明であると考えられている。
【0031】
本明細書で使用される「フラクタル粒子」は、多様なフラクタル次元や固有の網状構造を有するナノ粒子を指している。つまり、トポロジー次元(topological dimensions)よりも大きなハウスドルフ−ベシコビッチ次元(Hausdorff−Besicovitch dimentions)を有する。ここで使用される「ナノ粒子」は、特に記載のない限り、「フラクタル粒子」と同義であり、約900ナノメートルまでの大きさを有する粒子を指している。
【0032】
「粒径」への言及は、検討中のサイズドメインに対して適切な撮像技術、例えば、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡のもとで測定される平均粒子径を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「二酸化チタン」という用語は、TiOという化学式を有するチタンの酸化物を指しており、これは化粧品組成物中で使用できる。
【0034】
本明細書で使用される「着色顔料」という用語は、選択的に色を吸収した結果、反射する光の色を変更する材料を指しており、二酸化チタンを除く何らかの着色顔料を指している。
【0035】
本明細書で使用される「ぼかし」および/または「光学的なぼかし」という用語は、しわ、小じわ、皮膚表面の凹凸および欠陥を光学的に減少させることを指している。
【0036】
本明細書と添付の請求項で使用される「a」および「an」という用語は、特に言及されない限り、「1または複数」を意味している。
【0037】
実測値が存在する特定の例を除いて、本明細書で引用される数値は、適切なものと考えられるべきである。
【0038】
本明細書で引用される全ての百分率および比率は、特に言及されない限り、全組成物(つまり、存在する全ての組成物の和)の重量に対するものである。
【0039】
(フラクタルネットワーク)
一実施形態では、フラクタルネットワークは、少なくとも1種類のサブミクロンサイズのフラクタル粒子(つまり、ナノ粒子)を含んでいる。適切な媒体に分散されると、フラクタル粒子は、フラクタルネットワークを形成するために合体する。以下でより詳細に説明されるように、マクロ粒子が、本発明のゲルを形成するために、剪断下でこの分散剤に添加されてもよい。
【0040】
一実施形態では、フラクタルネットワークはフラクタルゲルである。フラクタルゲルは、1または複数種のナノサイズのフラクタル粒子を含んでいる。一例として、シリカおよびアルミナの金属酸化物が、ナノサイズのフラクタル粒子として共に使用されてもよい。2以上の異なるフラクタル粒子が、異なる大きさ、異なる正味の表面電荷または異なる屈折率を有してもよい。本発明のゲル形態でフラクタルゲルを使用すると好ましい。
【0041】
フラクタルネットワークが、単一のフラクタル粒子あるいは2以上のフラクタル粒子からなる場合、ネットワークは、前出の段落に記載されたようなフラクタル粒子の分散体を提供することによって形成されてもよい。粒子間の凝集相互作用が粒子と媒体間の接着相互作用よりも大きい場合、ネットワークは、本発明での使用に適した形態となるであろう。巨視的粒子は、以後のネットワーク形成において組み込まれる。
【0042】
(フラクタル粒子の幾何学についての簡単な説明)
手短に言えば、フラクタル対象物は、再帰的な自己相似性を有することを特徴とする。一般に、フラクタル特性は以下の形のべき乗法則関係によって数学的に記載され得る(式(1))。
【0043】
【数1】

ここで、cは定数である。したがって、データがべき乗法則関係に従う場合、log(X)に対してlog(Y)をプロットすれば、傾きdを有する直線が得られる。
【0044】
同様に、自己相似フラクタル種、つまりハウスドルフ−ベシコビッチ次元性(Hausdorff−Besicovitch dimentionality)のクラスは、異なる長さスケールにおいて自己相似となる対象物に依存する。この場合、べき乗法則は、以下の式に一致する(式(2))。
【0045】
【数2】

ここで、Aは同じ大きさとなる部分(identical parts)の数であり、sは減少係数であり、Dはフラクタルの自己相似性次元の大きさである。数式2は、以下のように整理されてもよい(式(3))。
【0046】
【数3】

【0047】
例えば、単位正方形の各辺が半分に分割されると、4つの要素が形成されるので、A=4、s=1/2となって、Dは2となる。同様に、シェルピンスキーのギャスケットでは、元の三角形の辺が等分されると、3つの三角形の要素が形成される。したがって、A=3、S=1/2となって、D=1.5850となる。比較として、単位線分を考える。線分を半分にすれば、同様に、2つの等しい部分が形成される。したがって、A=2,s=1/2となって、D=1となる。Dの値は線分の位相次元に一致するが、線分はフラクタルでないということに注目することが重要である。したがって、フラクタルとは、ハウスドルフ−ベシコビッチ次元(Hausdorff−Besicovitch dimention)が位相次元よりも大きい対象物のことである。
【0048】
さらに、フラクタルは自己相似に応じて分類されてもよい。フラクタルを表現する自己相似には、3つの基準となる分類がある。つまり、正確な自己相似、準自己相似および統計的自己相似である。
【0049】
正確な自己相似とは、最も強いタイプの自己相似のことである。フラクタルは、異なる長さスケールにおいて同一に見える。このタイプのフラクタルは、正確な自己相似を示すことによって説明される。
【0050】
準自己相似とは、非正確な形態の自己相似のことである。フラクタルは、異なる長さスケールにおいてほぼ同一に見える。準自己相似フラクタルは、歪められて変質した複製物からなる。
【0051】
統計的自己相似とは、最も弱いタイプの自己相似のことである。フラクタルは、統計的尺度によって説明され、該統計的尺度は、長さスケール全体に渡って保持される。ランダムなフラクタルは、統計的に自己相似であるが、正確な自己相似あるいは準自己相似ではないフラクタルの例である。フラクタルの相似性も、数学関数によって説明されてもよい。
【0052】
対象となるフラクタル対象物のほとんどは、容易に明らかとなる自己相似性を有していない。したがって、対象のフラクタル次元を決定する従来法では、ボックスカウント法を採用している。この方法は、広範に用いられ、画像解析によってフラクタル次元の対象物を測定する直接的な方法である。対象物の画像は、公知の大きさのグリッド上に投射される。その後、画像が接触するブロックの数が数えられる。このデータによって、ブロックの数(N)とブロックの大きさ(減少係数,s)が得られる。グリッドの大きさが変更されて、プロセスが繰り返される。等式3を用いて、x軸がlog(s)、y軸がlog(N(s))となるように、データをプロットすると、傾きDの値が得られる。
【0053】
画像解析は、粒子のフラクタル次元を評価するのに特に有用である。具体的に言うと、透過型電子顕微鏡(TEM)は、複雑な粒子構造のフラクタル次元を評価するのに好適である。特に興味があるのが、重なり合わない初期粒子からなるフラクタル粒子であり、該粒子は巨大な凝集構造を形成する。一般に、この性質を有する粒子は、煙霧プロセスや複雑な沈殿プロセスによって製造される。
【0054】
小さな初期粒子の凝集体から形成される粒子の質量フラクタル次元の評価は、凝集体ごとに初期粒子の数を測定することを含む。一般に、これは、デジタル画像処理技術を用いてTEM写真を評価することによって行われる。凝集体ごとの初期粒子の数(N)は、凝集体の投射領域(Aa)をモノマー単位の投射領域(Am)で割ることによって決定される(式(4))。
【0055】
【数4】

ここで、αは実験的なフィッティングパラメータであり、典型的には1.0〜1.1である。したがって、ハウスドルフ次元によって暗示されるのは、初期粒子の大きさ(dp)、断面二次半径(Rg)および初期粒子の数(N)間の関係によって、凝集体のフラクタル次元(Df)が記述されることである(式(5))。
【0056】
【数5】

ここで、kfは頻度定数である。log(Rg)に対してlog(N)をプロットすると、傾きがDfの直線プロットが得られる。煙霧プロセスによって得られた本発明のフラクタル粒子の典型的なDf値は、1.5〜1.9の範囲にあり、一方で、沈殿プロセスによって得られた本発明のフラクタル粒子の典型的なDf値は、2〜2.8の範囲にある。
【0057】
当該技術分野において周知であるように、レオロジー測定および光散乱測定に基づいたさらなる試験方法が、フラクタル粒子の次元数を明らかにするために使用されてもよい。
【0058】
粒子のフラクタル性に起因して、フラクタルネットワークの多孔質マトリックス構造が生じる。別の実施形態では、フラクタルネットワークの多孔質マトリックス構造は、1あるいは複数の有効成分を受け入れてもよい。
【0059】
フラクタル粒子のサイズドメインおよび屈折率は、巨視的粒子間に障壁を効果的に形成するように選ばれ、その結果、本発明の組成物がしわに充填され、皮膚の欠陥を覆う効能を高める。フラクタル粒子のネットワークは開口構造を有するので、表面を平滑にする効果がもたらされる。このように、本発明の組成物は皮膚表面の欠陥に充填されるので、皮膚に塗布されたときに、しわや皮膚の欠陥が視覚的に低減されて、外観が、自然で、平滑で、かつ若々しくなる。
【0060】
一般に、フラクタル粒子は、フラクタル粒子分散体の重量に対して、約5%から約75%、好ましくは約10〜40%、より好ましくは約20〜40%の間で、固体状のフラクタル粒子を含んでもよい。いくつかの例では、粒子は、分散体として製造することによって提供されてもよい。好適に市場で入手可能な金属酸化物の分散体は、Cab−o−Spherse(商標)PG01およびPG063として、Cabot Corporation,Billerica,MAから、またはDegussa,Parsippany,NJから入手可能な煙霧シリカと、商品名Cab−o−Spherse(商標)PR003やPG0042として、Cabot Corporation,Billerica,MAから入手可能な煙霧アルミナである。
【0061】
分散体の媒体は、フラクタル粒子の表面電荷を維持できなければならない場合もある。典型的には、電荷を中和するように、微量の安息香酸テトラブチルアンモニウムなどの電荷制御剤を要する。フラクタル粒子の分散体を提供するのに使用される好適な分散体の媒体は、これらに限られる訳ではないが、イソドデカン、単なるエステルなどの炭化水素、およびシクロメチコンなどの液体シリコーンである。非水系媒体中での金属酸化物表面のイオン化については、以下で論じられている。Labib,M.E.;Williams,R.J.;J.Colloid Interface Sci,1984,97,356;Labib,M.E.;Williams,R.J.;J.Colloid Interface Sci,1987,115,330;Fowkes,et al.,“Mechanism of Electric Charging of Particles In Nanoaqueous Dispersions”,Journal of the American Chemical Society,vol.15,1982;Fowkes,et al.,“Steric And Electrostatic Conbinations To The Colloidal Properties of Nanoaqueous Dispersion”,Journal of the American Chemical Society,vol.21,1984;Huang,Y.C.,Sanders,N.D.,Fowkes,F.M.,Lloyd,T.B.“The Impact of Surface Chemistry on Particle Electrostatic Charging and Viscoeleasticity of Precipitated Calcium Carbonate Slurries”,National Institute of Standards and Technology Special Publication 856,USA Department of Commerce,180〜200(1993)。
【0062】
網状のフラクタルネットワークが得られるような何らかの好適な金属酸化物のフラクタル粒子あるいはその誘導体が使用されてもよい。無機ナノ粒子が、約25〜300nmの間、好ましくは約40〜250nmの間、より好ましくは約40〜200nmの間の直径を有する金属酸化物粒子であると都合がよい。本明細書で使用される直径は、フラクタル粒子を囲む球体の直径を指している。直径は、当該技術分野において周知の方法、例えば、光散乱法やTEMによって測定されてもよい。さらに、各ナノ粒子種は、約50〜400m/gの間、より好ましくは約50〜300m/gの間の粒子表面積を有する。ナノ粒子のフラクタル次元は、約1.2〜2.8、より好ましくは1.2〜2.5の範囲にある。一般に、フラクタル次元が増加するにつれて、ネットワーク内の固体濃度は減少し、表面積が増加するにつれて、フラクタル次元も増加する。
【0063】
一般的ではないが、フラクタル有機粒子は公知であり、本発明によれば、必須となる表面電荷特性が満たされる条件で使用することができる。例えば、有機物であるポリアクリレート類やそれらの誘導体が、フラクタル次元数を有し、表面が帯電されていてもよい。有機物であるポリアクリレートの粒子は、(ラウリルメタアクリレート/ジメチルアクリレート)クロスポリマー(Amcol Health and Beauty Solutions,Arlington Heights,ILから入手可能)であると好ましい。
【0064】
フラクタル粒子の非限定的な例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉛、酸化インジウムスズ、セリアおよびこれらの混合物である。フラクタル粒子は、煙霧プロセスあるいは沈殿プロセスの一部において形成されてもよく、該プロセスでは、フラクタル粒子、例えば、金属酸化物粒子は次元に関してフラクタルとなっている。フラクタル粒子は煙霧プロセスによって形成されると好ましい。アルミナは、可視スペクトル領域において、高い拡散透過率、高い反射率、高い散乱反射率および低い総反射率をもたらすことが知られており、好適なフラクタル粒子である。シリカは、市販の化粧品媒体、特にシリコーンオイルに十分匹敵する屈折率を有するので、好適である。
【0065】
好適なフラクタル粒子の例は、これに限定される訳ではないが、商品名AerosilにてDegussaに(Parsippany,NJ)よって販売される煙霧シリカ類を含む。Aerosilは、親水性や親油性の煙霧シリカを含んでおり、例えば、Aerosil R−900シリーズ、A380(商標)煙霧シリカ、OX50(商標)、商品名Carbosil(商標)やSpectrAL(商標)にてCabot(Bellerica,MA)によってそれぞれ販売されるコロイド状シリカや煙霧アルミナ、および煙霧チタニアである。好適には、煙霧シリカ、煙霧アルミナ、煙霧チタニア(Degussa W740X)、煙霧ジルコニア(Degussa W2650X,W2550X)、煙霧セリア(Degussa Adnano)、煙霧亜鉛酸化物(Degussa Adnano)、煙霧酸化インジウムスズ(Degussa Adnano)またはこれらの混合物である。
【0066】
(巨視的粒子)
本発明の巨視的粒子は、フラクタルネットワーク内にあって、ゲルシステムを形成する。代わりに、付加的な成分が、フラクタルネットワーク内のゲル相の内部に、例えば、化粧品組成物において分散されてもよい。
【0067】
さらに別の実施形態では、2つの異なる種類のフラクタル粒子が、異なるフラクタルネットワークを形成するように使用されてもよく、該ネットワークは、巨視的粒子に沿って、本発明のゲルを形成するために使用される。別の実施形態では、異なる巨視的粒子が、同一または異なるフラクタルネットワークを用いて、ゲルを形成するために使用されてもよい。
【0068】
さらに別の実施形態では、巨視的粒子は、「光拡散物質」としても知られるソフトフォーカス材料として機能してもよく、この材料は、塗布表面にぼかし効果をもたらす。代わりに、ゲルシステムは、マクロ粒子に加えて、一般にゲルシステムを形成するフラクタルネットワーク内に組み込まれる他のソフトフォーカス材料を含んでもよい。非限定的な例は、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内に、例えば、ナイロンや窒化ホウ素などの弾性マクロ粒子やソフトフォーカス材料からなるゲルシムテムを含む組成物である。
【0069】
フラクタル粒子の屈折率が、巨視的粒子の屈折率に一致しないと好ましい。一致しない、または「不一致」を意味する屈折率は、マクロ粒子とフラクタル粒子の間の屈折率の値が、互いに0.05かそれ以上離れた組み合わせ、好ましくは約0.07以上離れた組み合わせ、最適には、約0.1以上離れた組み合わせのことである。
【0070】
本発明のマクロ粒子は、約1〜200ミクロンの間、好ましくは約2〜100ミクロンの間の粒径を有する。マクロ粒子の粒径は、マクロ粒子の直線寸法が最大となる長さを指している。例えば、球状のマクロ粒子の大きさは、その直径となる。直径は、本技術分野で公知の方法、例えば、光散乱やTEMによって測定されてもよい。巨視的粒子は、有機物あるいは無機物のいずれであってもよい。巨視的粒子の非限定的な例は、シリコーンエラストマー、炭化水素エラストマー、シリコーンクロスポリマー、ポリマー球体、金属酸化物球体、あるいはこれらの組み合わせである。本発明の一実施形態では、巨視的粒子は、巨視的な有機弾性粒子である。別の好適な実施形態では、巨視的粒子は、約1〜約200ミクロンの粒径を有するシリコーンクロスポリマーである。
【0071】
本発明を適用できる弾性マクロ粒子の非限定的な例を例示すると、天然および合成ゴム、例えば、天然ゴム、ニトリルゴム、脱水素型ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリブタジエン、ポリブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロブタジエンやイソプレンなどのブタジエン置換ポリマー、ビニルアセテートの共重合体やエチレン、プロピレンおよび非置換ジエンのエチレンターポリマー、1または複数の重合可能なエチレン系のスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリル酸などの不飽和モノマーを有するブタジエンの共重合体、シリコーンエラストマー、シリコーン骨格を有するフルオロポリマーを含むフルオロポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、およびこれらの混合物である。
【0072】
このような粒子は、公知の方法、例えば、1梱のエラストマー材料を、ヘラで処理し、切断し、あるいは引き裂いて、破片や小片にし、引き続き、その破片あるいは小片を切り刻んだり、破砕したりして所望の大きさを有する粒子にして調製される。さらに、当該技術分野において公知の「湿式」化学技術が、所望の粒径や粒径分布を有する粒子を形成するために用いられてもよい。本発明の実施は、エラストマーや弾性マクロ粒子を調製するのに用いられる特定の手順によらない。
【0073】
本発明において、特にスキンケア用途に有用な適切な巨視的粒子は、一般に、約1.38から約2、好ましくは約1.38から1.6の好適な屈折率を有する。
【0074】
マクロ粒子として好適なシリコーンエラストマーは、(i)シリコーン接着材を室温で硬化させる化学反応から得られる架橋シリコーンポリマー、あるいは(ii)シリル水素化物を有するオレフィンまたはオレフィン系珪素のヒドロシリル化によって調製される付加重合されたシリコーンエラストマーである。好適なシリコーンエラストマーは、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(アルキルセテアリルジメチコン/ポリシクロヘキサンオキシド)クロスポリマー、およびこれらの混合物などの架橋された有機ポリシロキサンである。これらのエラストマーの例は、Dow Corningから入手可能なDC9040、DC9040およびDC9045、商品名KSG−15、16、18としてShin Etsuから入手可能な(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、Shin Etsuによって供給される(ラウリルジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(例えば、KSG−31、KSG−32、KSG−41、KSG−42、KSG−43およびKSG−44)、EPSQ(商標)などのGrant Industriesから入手可能なグランシルの線状エラストマーである。好適なシリコーンエラストマーは、EPSQ(商標)(Grant)である。
【0075】
本発明の実施形態において、シリコーンクロスポリマーは、架橋分子の不存在下において、シリコーン共重合体のネットワークをもたらすために、エポキシシリコーン官能基とシリル水素官能基の双方を含む二官能性前駆体分子を自己重合させても好適に得られる。このようなクロスポリマーには、Momentive Performance Materials,Inc(旧GE Silicones)から入手可能なVelvesil(商標)の線状シリコーンクロスポリマーなどが特に好適である。Velvesil125(商標)(General Electric Co,Pittsfield,MA)、つまり、シクロメチコンと((C30〜C45)アルキルセテアリルジメチコン/ポリシクロヘキサンオキシド)クロスポリマーが最適である。
【0076】
本発明のゲル内での巨視的粒子に対するフラクタル粒子の重量比は、典型的には約1:10から10:1、好ましくは約1:10から2:1、最適には約1:5から1:1となっている。
【0077】
他の好適な巨視的粒子は、ナイロン(例えば、CabotからSP−500およびOrgasol 2002(商標)として入手可能なナイロン12)などのポリマー球体、セルロースビーズ、ポリ(アクリル酸メチル)(PMMAあるいはメタクリル酸メチルクロスポリマーとしても知られる、CAS番号25777−71−3)、窒化ホウ素、硫酸バリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミナなどのケイ酸塩、ポリエチレン、ポリスチレン、商品名BPD−800としてKobo Industriesによって販売される(HDI/トリメチルヘキシルラクトン)クロスポリマーなどのポリウレタン、エチレン/アクリル酸共重合体(例えば、Koboによって供給されるEA−209)、テフロン(登録商標)あるいはシリコーンである。
【0078】
(二酸化チタン顔料)
本発明のゲルシステムは、二酸化チタン(TiO)顔料も含んでおり、この顔料は、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内に取り込まれ得る。どのような理論やメカニズムによるのか確かではないが、図2に示されるように、二酸化チタン顔料は、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内で、複数の、または半透明のマクロ粒子で囲まれた実質的に無水のゲルシステム内に埋め込まれるようになると信じられており、見出し(135)は、二酸化チタン、着色顔料およびゲルネットワーク内に埋め込まれた他の種々の有効成分を示している。
【0079】
二酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型)は、適切なサイズドメインに入るとは限らず、適切な次元数を有さないので、本発明に係るフラクタル粒子ではない。二酸化チタンは、フラクタル粒子ネットワークと相乗的に相互作用するように、親水的または親油的のいずれかに表面修正されてもよい。
【0080】
この発明に適した二酸化チタン顔料は、直線寸法が最大となる長さまたは球状の光拡散顔料の場合は直径によって定義されるような、約100ナノメートルから約50ミクロンの粒径範囲にあり、一般に、保護、被覆および/または着色をもたらすために、パーソナルケアまたは化粧品産業で使用される。より好ましくは、二酸化チタンは、約0.5ミクロン〜約1.5ミクロンの範囲の粒径を有する。本発明の一実施形態では、二酸化チタン顔料粒子は、約0.5ミクロンの粒径を有する。本発明の別の実施形態では、二酸化チタンは、約1.0ミクロンの粒径を有する。本発明のさらに別の実施形態では、二酸化チタンは、約1.5ミクロンの粒径を有する。
【0081】
一実施形態では、本発明の組成物は、二酸化チタンの2つの鉱物形式、つまり、ルチル型とアナターゼ型の組み合わせからなる。本発明の別の実施形態では、組成物は、ルチル型かアナターゼ型のいずれか一方のような単一形式の二酸化チタンからなる。
【0082】
(着色顔料)
本発明のゲルシステムは、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内に取り込まれる着色顔料も含む。どのような理論やメカニズムによるのか確かではないが、図2に示すように、着色顔料は、ナノ粒子のフラクタルネットワーク内で、複数または半透明のマクロ粒子で囲まれる実質的に無水のゲルシステム内に埋め込まれると信じられており、見出し(135)は、二酸化チタン、着色顔料およびゲルネットワーク内に埋め込まれた他の種々の有効成分を示している。
【0083】
一実施形態では、化粧品組成物は、1または複数の着色顔料を含んでおり、無機物および/または有機物であってもよい。二酸化チタン顔料と同様に、着色顔料は、必ずしも適切なサイズドメインに入るとは限らず、適切な次元数を有さないので、本発明に係るフラクタル粒子ではない。本明細書で使用されるように、「着色顔料」は、レーキ、単一の顔料および顔料の組み合わせを含むが、二酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型)は含まない。
【0084】
好ましくは、無機着色顔料の非限定的な例には、酸化第二鉄、酸化第一鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、ビスマス塩素酸化物、黒色酸化鉄、アシルグルタメート酸化物、酸化クロム、水酸化クロム、マンガンバイオレット、酸化セリウム、ウルトラマリンブルー、カーマインなどの酸化鉄類およびこれらの誘導体やこれらの混合物が含まれる。好適な有機顔料は、これらに限られる訳ではないが、バリウム、ストロンチウム、カルシウムやアルミニウムのレーキやカーボンブラックを含む。より好ましくは、着色顔料は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄やこれらの組み合わせである。着色顔料によって、フラクタル粒子のネットワークと相乗的に相互作用するために、親水性あるいは親油性のいずれかに表面修飾されてもよい。
【0085】
(本発明の組成物)
本発明の組成物は、ナノ粒子のフラクタルネットワークと、半透明のマクロ粒子と、二酸化チタンと、着色顔料からなるゲルシステムを含む。本発明の組成物は、化粧品配合物、皮膚化学的配合物、または医薬品配合物であってもよい。本発明の化粧品組成物は、パウダー状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ゲル状、乳化ゲル状、または何らかの他の無水化粧品組成物を含む種々の形態を取ってもよい。化粧品組成物は、ゲルファンデーションで使用されると好ましい。
【0086】
本発明のゲルシステムは、これらに限られる訳ではないが、液状(例えば、縣濁液または溶液)、ゲル、エマルション、乳化ゲル、ムース、クリーム、軟膏、ペースト、漿液、泡、香膏、エアロゾル、固体状(例えば、プレストパウダー)、無水油状物やワックス組成物などの化粧品として許容されるビヒクルに取り込まれてもよい。化粧品組成物は、液状またはパウダーファンデーションで使用されると好ましい。より具体的には、化粧品は、スキンローション、スキンミルク、スキンクリーム、ゲルなどのスキンケア化粧品と、ファンデーション、ファンデーションプライマーベース、刷毛、口紅、アイシャドウ、アイライナー、ネイルエネメル、コンシーラ、マスカラ、ボディメーキャップ製品、または日焼け止めなどのメーキャップ化粧品を含む。
【0087】
当業者は、使用される成分の特性や組成物を使用する意図を考慮して、周知の事項に基づいて、適切な提案された形態を選ぶことができ、それを調製する方法も選ぶことができる。
【0088】
典型的には、ゲルシステムは、ゲルシステムの重量に対して、約3%〜約60%のフラクタル粒子を含み、より典型的には、ゲルシステムの重量に対して、約5%〜約40%のフラクタル粒子を含む。有益なゲルシステム組成物は、アルミナとシリカ、チタニアとシリカ、ジルコニアとシリカ、および記述された範囲の粒子の他の組み合わせを含んでもよい。
【0089】
本発明のゲルシステムにおいて、巨視的粒子に対するフラクタル粒子の重量比率は、典型的には、約1:10〜10:1であり、好ましくは、約1:10〜2:1であり、最適には、約1:5〜1:1である。
【0090】
本発明の化粧品組成物は、マクロ粒子に加えて、他の重合体の、および/または無機のソフトフォーカス材料またはこれらの何らかの混合物を含んでおり、このソフトフォーカス材料により、組成物のぼかし効果が高められる。重合体ソフトフォーカス材料の非限定的な例は、ナイロン(例えば、SP−500やOrgasol 2002(商標)としてCabotから入手可能なナイロン12)、セルロースビーズ、ポリ(メチルアクリル酸)(PMMAやメチルメタクリレートクロスポリマー、CAS番号25777−71−3、としても知られる、)、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン/アクリル酸重合体(例えば、Koboによって供給されるEA−209)、およびテフロン(登録商標)などの不飽和炭化水素などである。無機ソフトフォーカス材料の非限定的な例は、窒化ホウ素、硫酸バリウム、およびホウケイ酸カルシウムアルミナなどのケイ酸塩などである。追加のソフトフォーカス材料が、組成物のぼかし効果を高めるのに十分な量で存在してもよいが、上記で開示された巨視的粒子に対するフラクタル粒子の重量比率を超えてはならない。
【0091】
本発明の化粧品組成物は、非水性組成物として配合され、この非水性組成物は、エマルションであってもよいし、エマルションでなくてもよい。一実施形態では、本発明に係る化粧品組成物は、エマルションとして配合される。これらのエマルションは、シリコーン中油型エマルション、油中シリコーン型エマルション、または油中シリコーン中油型(o/s/o)またはシリコーン中油中シリコーン型(s/o/s)などの多相エマルションであってもよいが、油中シリコーン型またはシリコーン中油型エマルションが好ましい。油相が、シリコーンオイル、非シリコーン系の有機オイルまたはこれらの混合物を含んでもよいことが分かる。好適ではないが、組成物は、振盪したときに混ざり合う2つの非混和相を含んでもよい。
【0092】
フラクタル粒子の表面積は、典型的には、アルミナについては50〜200m/gであり、シリカについては約30〜400m/gである。好適なゲルは、Spectral 51またはSpectral 80(Cabot Corporation)煙霧アルミナとCab−O−Sil M5,Cab−O−Sil EH−5を用いて形成されてもよい。さらに、金属酸化物の分散体は、それらの粒径や表面積に基づいて選ばれてもよく、金属酸化物の分散体によって、ゲル形成の容易さと降伏強度などのゲルの物理的特性が決定される。本発明の一実施形態では、ゲルは、液体炭化水素または液体シリコーンなどの実質的に無水の媒体において、煙霧シリカまたは煙霧アルミナを含んでおり、好ましくは、煙霧シリカと煙霧アルミナの組み合わせを含んでいる。この実施形態では、ゲルの形態は、相互作用しない親油性マトリックス中の親水性表面基間の相互作用によってもたらされる。実質的に無水とは、組成物が分離した水相を形成するのに十分でない量の水を含んでいることを意味しており、これは、典型的には水分が約1%未満、好ましくは水分が約0.5%未満のことである。
【0093】
本発明に係る化粧品組成物は、二酸化チタン顔料を含んでおり、この顔料は、ゲルシステムのフラクタルネットワーク内に埋め込まれる。本発明の組成物は、組成物の重量に対して、約0.5%〜約4.0%の二酸化チタンを含んでもよい。二酸化チタンの濃度の上限は、ファンデーションが「厚塗りの外観」ではなく「自然な外観」をもたらすように実質的に制限される。
【0094】
本発明に係る化粧品組成物は、さらに1または複数の着色顔料を含む。本発明に係る化粧品組成物は、顔料効果をもたらすために、化粧品組成物の重量に対して0.1%以上の顔料を含む。典型的には、着色顔料は、総組成物の重量に対して、約0.5%〜9.5%、好ましくは約0.5%〜7%、より好ましくは約0.5%〜5%、最適には約0.5%〜3%で存在してもよい。
【0095】
典型的には、システム内での顔料、つまり、二酸化チタンと着色顔料の組み合わせの総重量は、マクロ粒子と他のソフトフォーカス材料の総重量によるが、総組成物の重量に対して約10%を上回るべきではない。本発明の組成物は、全体として顔料の総重量(TiOと着色顔料)が小さいが、同等の着色強度を示すので、皮膚に化粧品をより薄く塗布できる。それゆえ、自然な皮膚の色調を得るときに、皮膚の自然着色は、より重要な役割を担う。具体的に言うと、組成物は、皮膚の自然着色を保護するのではなく、むしろ、「化粧品的な」外観を用いずに、皮膚をより輝かせることによって、皮膚の自然着色を高める。
【0096】
加えて、本発明の組成物は、膜として皮膚に塗布したときに、皮膚に化粧品の効果を付与するのに適した1または複数の有効成分または「作用剤」および/または1または複数の補助剤または賦形剤を含んでもよい。補助剤と賦形剤は、本明細書では、製品に要求される性能を満たし、または組成物の形を形成するために、特に望ましい物理的特性を、化粧品製品に付与する補助剤として総称される。
【0097】
好適な有効成分には、乳白剤、日焼け止め、紫外線(UVAおよび/またはUVB)吸収剤、皮膚軟化薬、湿潤剤、吸蔵剤、抗酸化剤、エクスフォリアント(exfoliants)、抗酸化剤、抗炎症剤、美白剤、研磨剤、抗アクネ剤、ヘアトリートメント剤、膨潤剤、皮膚軟化薬、モイスチャライザー、抗しわ成分、コンシーラ、つや消し仕上げ剤、プロテイン、抗酸化剤、ブロンザー、溶媒、紫外線(UVAおよび/またはUVB)吸収剤、油分吸収剤、中和剤が含まれる。当業者には、化粧品として許容できる成分、つまり、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,11th Edition(2006)(Cosmetic and Toiletries Association)(本明細書ではINCIと同義)に含まれるものが、使用され、これらが互換可能に組み合わされてもよいことが分かる。
【0098】
好適な補助剤には、膜形成物質、非水性溶媒、増粘剤などの粘度およびレオロジー変更因子、ハイドロトループを含む界面活性剤、乳化安定剤、可塑剤、フィラーおよび充填剤、ワックスなどの構造形成剤、キレート剤、バインダ、噴霧剤、化粧品香料、防腐剤および抗菌剤、およびこれらの互換可能な組み合わせが含まれる。
【0099】
本発明の化粧品組成物で使用される好適な有効成分と補助剤は、INCIで表に示されている。一般に、特定の材料を参照する場合、学名命名法を採用するINCIが利用される。化粧品分野の当業者によく知られるように、有効成分および補助剤は、それらに意図される効能が発揮される量で、本発明の組成物内に取り込まれる。一般に、この量は、組成物の重量に対して、約0.001〜25%であり、より一般的には0.01〜15%であり、特に0,1〜10%である。
【0100】
本発明の化粧品組成物は、乳化剤とともに用いられて、組成物の粘度を変更、例えば、クリーム状態、ペースト状態または皮膚感触を高めるローション状態を形成する増粘剤などの粘度変更因子を含んでもよい。好適な粘度変更因子は、ポリアミドなどのポリマー、粘度およびワックスである。粘度/レオロジー変更因子が、組成物の重量に対して、約0.1〜約10%の量で組成物内に存在してもよい。
【0101】
本発明の化粧品組成物は、これに限定される訳ではないが、液状化粧品、つまり、種々の希釈剤中に種々のエラストマーの組み合わせを含むシリコーン化合物などの非吸蔵性の膜形成剤を含んでもよい。好適な液状化粧品の例は、シクロペンタシロキサンとアミノプロピルジメチコン(液状化粧品 1486−NH)(Chemisil製造)、シクロメチコンとジメチコン(液状化粧品 1684−DM)(Chemisil製造)、低粘度および高粘度ポリジメチルシロキサンの混合物(例えば、Dow Corning 1413 Fluid(商標))(Dow Corning)である。低粘度のポリジメチルシロキサンに高粘度のポリジメチルシロキサンを混合したものが好適である(例えば、Dow Corning 1413 Fluid(商標))(Dow Corning)。
【0102】
化粧品組成物は、光学的な煌めきや光沢を与えるため、または触れたときに絹のような肌触りをもたらすために、これらに限られる訳ではないが、マイカ、微粒化された種々の白雲母であるセリサイトなどの乳白剤、虹色剤あるいは真珠光沢剤を含んでもよい。これらの薬剤は、約0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%の量で存在してもよい。これらの薬剤は、本発明の組成物のぼかしや拡散特性を阻害しないような濃度で存在する。
【0103】
化粧品組成物は、拡散・潤滑特性を与えるための基剤として有用な、あるいは化粧品組成物の1または複数の他の成分に媒体をもたらすビヒクルとして有用な油相溶媒を含んでもよい。これらの溶媒には、特に液体炭化水素などの液体有機物、液体シリコーン、親油性のポリマーなどが含まれ、該溶媒は、組成物の重量に対して、約0.5〜90%、好ましくは約5〜50%、最適には10〜35%の濃度で存在する。好適な油相溶媒は、シクロテトラシロキサン(例えば、Cyclo−2244化粧品グレードシリコーン(D4)(Clearco製造)、シクロペンタシロキサン(例えば、Cyclo−2245化粧品グレードシリコーン(D5)(Clearco製造)、シクロペンタシロキサン/シクロヘキサシロキサン混合物(D5/D6混合物)Cyclo−2345化粧品グレードシリコーン(Clearco製造)、シクロメチコン/ジメチコノール混合物(D5/D4混合物)Cyclo−1400化粧品グレードシリコーン(Clearco製造)などのシクロメチコン類である。これらの中でシクロペンタシロキサンがより好適である。
【0104】
随意であるが、これに限られる訳ではないが、塩化ナトリウムなどの電解質が、組成物の重量に対して、約0〜5%、好ましくは0,5〜2%の範囲の量で添加されてもよい。例えば、電解質(無機または有機塩)がゲル化されたエマルションを「破壊」して、該エマルションを液化することが知られている。いくつかの実施形態では、高濃度の組成物、特に局所的な組成物に導入することによって、ゲル化されたエマルションが「破壊」されると好ましい。
【0105】
さらに、本発明の組成物に導入される他の化粧品、皮膚化学的または医薬品用の有効成分と補助剤は、本発明に従って、本明細書中で見出される有益な効果に悪影響を及ぼさない種類のものでなければならず、悪影響を及ぼさない量で用いなければならないことが分かる。熟練の職人は、特定の組み合わせや量についての知識が豊富であり、当該技術分野で公知の方法を用いると思われるので、過度な実験を行わないで適切な成分と量を決定できる。
【0106】
明るい外観を生み出す光を単に反射する膜、単に皮膚を保護して皮膚に白い色合いを付与する膜、または両方ではないが、光学的ぼかしか空隙への充填のいずれかをもたらす膜と比べると、本発明の組成物によって、化粧品組成物の膜の光学特性が改善される。得られた組成物が皮膚に塗られると、皮膚は、より若々しく、より平坦に見えるようなり、濃淡がより均一に見えるようになる。
【0107】
ゲルシステム構造の物理的な構成は、粒子が高く積まれてネットワークを形成しており、何らかのファンデーションのトップコート(光学層)塗布用の平坦な平面を備える。光拡散顔料やソフトフォーカス材料と組み合わせて用いられると、光学層によって、皮膚から特有の「光放出」効果がもたらされる。光学層は、皮膚本来の透明な質感を真似ており、その透明な質感を高める。光が光学層を貫くと、二酸化チタン、着色顔料または随意であるがソフトフォーカス材料を通る拡散反射が「逆光効果」をもたらし、より自然かつ若々しく見えるようにファンデーションを輝かせる。皮膚の美的外観を改善するときの組成物の有効性は、これらに限られる訳ではないが、拡散透過率や不透明度などの光拡散特性を通じて得られてもよく、この光拡散特性によって、組成物が、観察者に視認されるような1または複数のしわ、小じわ、毛穴、皮膚の欠陥をどの程度良好にぼかしたか、または保護したかが評価される。したがって、本願の実施例の項で示すように、最大の拡散透過率と最小の不透明度をもたらす組成物が望ましい。さらに、本発明によって、カラー化粧品組成物を製造および色合わせする改良された方法、特に、広範に渡る複数の色合いを作成せずに、目標とする色合いを調製できる方法が提供される。具体的には、広範に渡る複数の色合いを要し、製品の型ごとに典型的に10ないし20の異なる色合いがあり、各色合いが隣接する色合いよりも漸増するように異なっている(例えば、1つ製品の型での皮膚を明るくする色調は、3種の隣接する色合い、つまり、アイボリー、ヌードおよびビスクを有する)従来のカラー化粧品と異なり、本発明の組成物は、完全な色合いのパレットを実現するのに、典型的に3ないし5の異なる色合いのみを必要とすることが分かる。本発明によれば、製品組成物の1つは、皮膚を明るくする全ての色調に適するように配合されてもよい。このような色調を得るには、従来技術では、アイボリー、ヌードおよびビスクの色合いが必要であった。したがって、製造費用、在庫費用および流通費用を節約するとともに、在庫管理単位(SKUs)数を大幅に減らせる。
【0108】
(使用方法)
本明細書で開示され請求される化粧品組成物の使用方法は、皮膚の美的外観を改善し、これに限られる訳ではないが、特に、顔面、首、または唇領域上やその周りで、1または複数のしわ、小じわ、毛穴、皮膚の欠陥の外観をぼかしたり、覆ったり低減したりする方法、痣、そばかす、発赤、クモ状静脈、および目の周りの隈などの皮膚の欠陥を補修する方法、皮膚の色調を高めたり、変更したりする方法、仕上げのメーキャップを改善する方法、および毛髪、まつ毛、眉毛に適用される方法を含む。
【0109】
本発明の組成物を用いて改善され得る顔の小じわや皮膚の欠陥の例は、これらに限られる訳ではないが、眉間しわとして知られる眉毛の間に走る(眉をひそめた時にできる)眉間や額のしわ、口の上の縦線である口周りのしわまたはスモーカーズライン、口角として知られる口の角にあるマリオネットライン、額を横切って走る懸念じわ、眼窩周囲のしわとして知られる目の角にあるカラスの足跡、鼻唇溝として知られる鼻の端部から口の角まで走る深い笑いじわ、頬の窪み、にきび痕、何らかの顔の傷跡、創傷痕および火傷痕、ケロイド、目の周りの隈を低減すること、毛穴あるいはシミ、加齢シミ、黒子、母班を目立たなくすること、唇縁を再生すること、人工的あるいは自発的な日焼け、および皮膚の色調の不均一あるいは単調さを低減することを含む。
【0110】
顔の小じわやしわは、顔面のあらゆる場所に存在し、唇や目の領域に最も頻繁に発生する。もっとも、しわ、小じわ、毛穴および皮膚の欠陥を減らすようなぼかし効果が望まれる体のあらゆる部位に、組成物が塗布されてもよいことが、当業者に理解される。非限定的な例には、セルライトまたは白斑の外観を覆うこと、クモ状静脈、ほくろ、加齢シミ、シミ、傷跡、そばかす、母班および下肢静脈瘤の外観を覆うこと、美容外科、火傷、皮膚のストレッチなどによる外傷により皮膚が被った損傷を隠すこと、皮膚上の産毛を見えにくく隠すこと、紫外線保護を皮膚に施すことなどの皮膚の欠陥を隠すことが含まれる。
【0111】
本明細書に記載される組成物は、皮膚の領域に有効量の組成物を局部的に塗布することによって使用されてもよい。有効量は、各ユーザーが容易に決めることができる。
【0112】
本明細書で使用される「有効量」は、「光学的にぼかし」、保護し、皮膚の色合いを均一にし、または皮膚の欠陥を見えにくくするのに十分な量を指している。
【0113】
組成物は、任意の間隔で、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間塗布されてもよい。一般に、組成物は、皮膚上に組成物を軽くマッサージすることによって塗布される。もっとも、塗布方法は、当該技術分野で公知の何らかの方法でよいので、前述したものには限られない。
【0114】
本発明は、皮膚に治療的処置を施す方法にも関する。本発明のゲルが、これらに限られる訳ではないが、抗アクネ剤、日焼け止め、自己日焼け成分、抗炎症剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗イースト剤、目の治療剤、加齢シミの治療剤、鎮痛剤、フケおよび脂漏防止剤、角質溶解剤、抗乾せん剤、美白剤、脱色剤、創傷治療剤、火傷治療剤、日焼け剤、ヘアトリートメント剤、育毛製品、イボ除去剤、解熱剤、およびホルモンを含む医薬品組成物とともに、あるいはこれに付加して使用する治療薬とともに使用されてもよいことが、さらに理解される。
【0115】
(調製)
ゾルゲル化学技術、つまり、コロイド縣濁液の形成を通じて無機ネットワークを進展すること(ゾル)と前記ゾルをゲル化して、連続する液相のネットワークを形成すること(ゲル)が、C.J.Brinker and W.Scherer,Sol−Gel Science:The Physics and Chemistry of Sol−Gel Processing(Academic Press,Inc.:New York,1990)に記載されるように、本発明のゲルの形態に影響を及ぼすために使用されてもよい。本明細書の全てがこれに参照されて包含される。
【0116】
本発明の方法に有用な組成物は、一般に、局所用化粧品組成物を形成する技術分野において知られるような従来の方法によって調製される。このような方法は、加熱、冷却、真空の印加などの有無に関わらず、典型的に1または複数のステップで、成分を比較的均一な状態に混合することを含む。
【0117】
典型的には、フラクタル粒子のネットワークは、各フラクタル粒子を好適な溶媒(分散剤)に分散させて調製し、例えば、フラクタルネットワークがフラクタルゲルの場合、必要ならば、pH調整剤を用いて分散体のpHを調整し、フラクタルネットワークが形成されるように剪断状態で分散体を混合することによって形成される。場合によっては、成分の特性のために、分散剤を予熱する必要がある。フラクタルゲルがフラクタルネットワークを形成するために使用されている場合には、pH調整剤は、各分散体にそれぞれ添加されるよりもむしろ混合された分散体に添加されてもよい。その後、マクロ粒子が、要求される何らかの有効成分や補助剤とともに分散体に取り込まれてもよい。化粧品の技術分野で公知であるように、溶媒と前混合するように、特定の補助剤の添加を要してもよい。
【0118】
本明細書で引用された特許、特許出願、公開されたPCT出願および論説、書籍、参考文献、リファレンスマニュアルおよび抄録の内容の全ては、本発明が属する技術分野の水準をより完全に説明するために、その全体が参照されて本明細書に取り込まれる。
【0119】
本発明によれば、(クリーム状、ゲル状および粘性液体を含む)固体および/または半固体形態に有益な種々の組成物が提供される。このような組成物は、ファンデーションであると好ましいが、フェイススティック、パンケーキ、および他のフェイシャル化粧品製品をも含んでいる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、上述の主題に種々の変形がなされるので、全ての主題が、上記記載に含まれ、あるいは添付の請求の範囲で定義され、本発明を描写し例証するものとして解釈されることが意図される。上記教示に照らすと、本発明について多くの修正と変形が実現可能である。
【0120】
本発明は、特定の実施形態について詳細に説明しているが、当業者に公知であるにもかかわらず、なお本発明の範囲に包含される変形と修正が存在してもよいことが分かる。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲において明らかにされるように、本発明の範囲内にあるそのような全ての代替、修正および変形を包含することを意図している。
【実施例】
【0121】
以下の実施例は、発明を例証し、当業者に対して本発明の方法について説明するために、本発明の特定の態様を記載している。実施例は、単に、本発明とその種々の態様を理解し実施するのに有用な特定の方法論を提供するものであるので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0122】
(実施例1)
本実施例は、自然な外観を保っている間に、光学拡散顔料とソフトフォーカス材料を、しわや他の皮膚の欠陥をぼかしたり低減するのに十分な濃度でナノ粒子のフラクタルネットワークとマクロ粒子からなる組成物に添加する効果を調べている。ぼかしを行うソフトフォーカス効果の有効性や小じわやしわを隠す能力は、拡散透過率の作用によるものと思われる。総透過率、直接透過率および反射率を測定するために、Gretag MacBeth Color Eye 7000A Spectrophotometerが使用された。拡散透過率と不透明度は、以下の式(6)のように算出される。
【0123】
【数6】

ここで、拡散透過率は、測定された総透過率と直接透過率から算出される。不透明度は、直接透過率から算出された(7)。
【0124】
【数7】

全ての測定は、清潔なガラス板上のフィルムキャストに対して行われた。試験中、以下の定量的な属性は、有効なぼかしを行うソフトフォーカス効果、つまり、(1)最大の拡散透過率と(2)最小の不透明度と一致する。
【0125】
本発明の好適な組成物を作成する方法において、弾性ゲル、乳化剤および日焼け止めが第1の容器で前混合された。別体の容器(第2の容器)に、溶媒、膜形成物質、ワックス、顔料および防腐剤が添加され、混合しながら華氏180度〜華氏190度まで加熱された。温度が一定となり、材料が良好に混合されると、フラクタル粒子、この例では、煙霧アルミナとシリカが、第1の容器に添加された。煙霧材料の全てが均一に分散されるまで、混合を続けた。その後、前混合されたゲル相が、第2の容器内の溶媒/膜形成物質/ワックスの混合物に添加された。バッチが冷却されると、約10〜60分間混合が続けられ、残りの粒状組成物が添加された。温度が華氏120度未満になると、化粧品香料が添加された。ワックスが組成物中で構造化剤として使用されると、プロセス温度は、ワックスの凝固点よりも高く保持され、熱間充填(hot fill)が使用された。
【0126】
種々の濃度の二酸化チタンを含む組成物の物理混合物が調査された。組成物は、清潔な(光学的に透明な)ガラス板上にキャストされた。湿潤状態での膜厚は、約10ミクロンであり、乾燥膜を形成するために、一晩乾燥された。各試料は、同じものを複数調製した。総透過率、直接透過率および反射率は測定され、拡散透過率および不透明度は等式(6)および(7)に基づいて算出された。本発明の例示的な配合物は、以下の表1に示される。各値は、全組成物に対する重量%として報告されている。
【0127】
調製された試料および/または組成物の概要は、以下の表2,3および4に示されている。表2で報告される試料1,2,3および4では、TiOの濃度は、試料1の場合の3.31%のTiOから試料4の場合の9.5%のTiOまで増やされており、各値は、全組成物に対する重量百分率として報告されている。表3で報告される試料5では、配合物は、市場で入手可能なファンデーションに基づいている。該ファンデーションは、Avon(登録商標)Products,Inc(Suffern,NY)から入手可能な商品名Personal Match(商標)として市販される。市場で入手可能な配合物Personal Match(商標)(対照標準)は、通常約10%のTiOを含んでいるのに対して、試料5は、約3.3%のTiOを含むように変更された。表4に示される試料6および7については、配合物は、本発明の好適な組成物のプロトタイプであった。
【0128】
図3は、種々の二酸化チタン濃度を有する各試料の拡散透過率の値を示している。試料1ないし4は、表2に開示されるTiO濃度の昇順で示される。試料5と対照標準の組成物は表3に開示される。試料6および7の組成物は表4に開示される。二酸化チタンが増加するにつれ、拡散透過率の減少が観察された(試料1ないし4)。さらに、元の組成物(対照標準)が3.3%の二酸化チタンで代用される場合、試料5は、より大きな拡散透過率を示した。もっとも、最大の拡散透過率は、2つのプロトタイプ組成物(試料6および7)で観察された。これらの組成物は、ゲルシステムに加えられる本発明の顔料を含んでいる。
【0129】
表4は、図3で報告されるような各試料の不透明度の値を示している。二酸化チタンが増加されるにつれ、拡散透過率の増加が確認された(試料1ないし4)。さらに、試料5は、市場で入手可能な元の配合物(対照標準)に対して、より低い不透明度を示した。もっとも、最小の拡散透過率は、2つのプロトタイプ組成物(試料6および7)で観察された。これらの組成物は、ゲルシステムに加えられる本発明の顔料を含んでいる。
【0130】
(実施例2)
表4に開示される2つのプロトタイプ(試料6および7)は、本発明のゲルシステムを含むファンデーション組成物の例示である。組成物は、少なくとも24人の被験者(パネリスト)に対して試験され、市場で入手可能なファンデーションと比較された。該ファンデーションは、Avon(登録商標)Products,Inc(Suffern,NY)から入手可能な商品名Personal Match(商標)として市販される。この比較結果は、表5に要約されている。パネリストは、対照標準の組成物(パーソナルマッチファンデーション)と2種のプロトタイプ(試料6および7)を皮膚に塗布して、アンケートに基づいて配合物を評価するように頼まれていた。
【0131】
パネリストの大多数(95% LOC)が、両方のプロトタイプ配合物(試料6および7)を好んでおり、多くの美的および性能の属性に対して、積極的に評価していた。2種のプロトタイプは、パーソナルマッチファンデーション(対照標準)よりも良好に機能した。両方のプロトタイプでは、試験された対象標準のファンデーションよりも、塗布時に、遥かに「絹のような滑らかさ」と「瑞々しさ」を感じ、遥かに「快適」に感じることが分かった。加えて、これらのプロトタイプは、対照標準のファンデーションと比べると、遥かに良好に「小じわとしわ」および「毛穴」を隠すことが分かった。技術的な評価者の評価によれば、両方のプロトタイプは、対照標準よりも遥かに「輝き」が少なかった。2種のプロトタイプの中でも、試料6は、試料7よりも幾分良好に機能していた。パネリストの評価に基づくと、第1のプロトタイプ(試料6)は、パーソナルマッチファンデーション(対照標準)よりも遥かに良好に「毛穴を隠す」ことが分かり、試料7および対照標準の両方よりも遥かに「均一に」なっており、遥かに「真の色調」を保つことが分かった。技術的な評価者の評価は、対照標準のファンデーション(パーソナルマッチファンデーション)と比べると、第1のプロトタイプ(試料6)は、遥かに均一に被覆していた。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノ粒子のフラクタルネットワークと、
(b)半透明の巨視的粒子と、
(c)二酸化チタンと、
(d)二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、
を含む化粧品組成物であって、
前記二酸化チタンが、該組成物の重量に対して0.5%〜4.0%の量で存在し、
前記化粧品組成物が、ゲルシステムであるとともに、実質的に無水であり、
前記ナノ粒子が、40〜900ナノメートルの範囲の粒径と1.38〜2の範囲の屈折率とを有する、
ことを特徴とする化粧品組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、セリアおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる無機ナノ粒子であり、
前記巨視的粒子が、シリコーンエラストマー、シリコーンクロスポリマー、炭化水素エラストマー、天然および合成ゴム、ポリマー球体、ならびにこれらの互換可能な組み合わせからなる群から選ばれ、
前記ポリマー球体が、フルオロポリマー、ポリアクリル酸、ナイロン、ポリエステル、セルロースビーズ、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタンまたはこれらの混合物であり、
前記組成物が、該組成物の重量に対して少なくとも3%から60%のナノ粒子を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記巨視的粒子が、シリコーンエラストマー、シリコーンクロスポリマー、炭化水素エラストマー、ポリマー球体またはこれらの組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
前記シリコーンクロスポリマーが、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(アルキルセテアリルジメチコン/ポリシクロヘキサンオキシド)クロスポリマーまたはこれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項2または3に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
有効成分をさらに含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
前記有効成分は、日焼け止め、紫外線吸収剤、またはこれらの互換可能な組み合わせである、ことを特徴とする請求項5に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
前記着色顔料が、酸化第二鉄、酸化第一鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、黒色酸化鉄、アシルグルタメート酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、マンガンバイオレット、酸化セリウム、ウルトラマリンブルーレーキ、カーマインレーキ、バリウムレーキ、ストロンチウムレーキ、カルシウムレーキ、アルミニウムレーキ、カーボンブラックまたはこれらの混合物である、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記ゲルシステムは、シリコーンオイル、非シリコーン系の有機オイル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる非水性溶媒をさらに含む、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
さらに溶媒を含み、
該溶媒中に前記巨視的粒子が分散され、
前記フラクタル粒子の屈折率が、前記巨視的粒子の屈折率と一致しない、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記ゲルシステムが、第1のナノ粒子および第2のナノ粒子からなる非水分散体である、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記第1のナノ粒子がアルミナであり、前記第2のナノ粒子がシリカである、ことを特徴とする請求項10に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
前記化粧品組成物中の酸化チタンと他の着色顔料との量は、該組成物の重量に対して1%〜10%の間にある、ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項13】
前記化粧品組成物中の前記着色顔料の量は、該組成物の重量に対して0.5%〜9.5%の間にある、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項14】
前記ナノ粒子は、前記組成物の重量に対して3%〜60%の量で存在し、アルキル置換煙霧シリカ、煙霧シリカ、コロイドシリカ、煙霧アルミナ、煙霧チタニアおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、
前記半透明の巨視的粒子は、1〜200ミクロンの範囲の粒径と1.38〜1.6の範囲の屈折率とを有し、前記ナノ粒子の屈折率と前記巨視的粒子の屈折率とは一致しておらず、
前記二酸化チタンは、0.5マイクロメートル〜1.5マイクロメートルの範囲の粒径を有し、前記組成物の重量に対して0.5%〜4.0%の間の量で存在し、
二酸化チタン以外の前記1または複数の着色顔料は、0.1マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の粒径を有し、前記組成物の重量に対して0.5%〜9.5%の量で存在する、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項15】
前記ナノ粒子が50〜200ナノメートルの粒径を有し、
前記巨視的粒子が、2〜50マイクロメートルの粒径と、1.38〜1.6の屈折率と、を有し、
前記溶媒が、液体炭化水素または液体シリコーンである、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項16】
しわ、小じわ、および毛穴からなる群から選ばれる皮膚の欠陥の外観を光学的にぼかすのに有効な量を皮膚に塗布して該皮膚の欠陥の外観を光学的にぼかすためのスキンケアまたはメーキャップ組成物であって、
該組成物が、(a)ナノ粒子のフラクタルネットワークと、(b)半透明の巨視的粒子と、(c)二酸化チタンと、(d)二酸化チタン以外の1または複数の着色顔料と、を含み、
総組成物に対する前記二酸化チタンの重量百分率が0.5%〜4.0%の間の範囲にあり、
該組成物が実質的に無水である、
ことを特徴とする組成物。
【請求項17】
前記組成物が、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の化粧品組成物であり、
該組成物が生体表面上にある場合に、前記生体表面上で拡散透過率が最大になり不透明度が最小になる、
ことを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物を生体表面に塗布した場合に、該組成物によって、拡散透過率が55%よりも大きくなる、ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の化粧品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−507957(P2011−507957A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540691(P2010−540691)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083508
【国際公開番号】WO2010/019164
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】