説明

化粧品用水溶性コラーゲンおよび該コラーゲンを含有する化粧品

【課題】哺乳類由来コラーゲンと同等の熱安定性を有し、化粧品やシート状化粧品の原料として有用な魚類由来コラーゲンの提供。
【解決手段】マツダイの皮から得られ、粘度変化から求められる変性温度が33℃以上であることを特徴とする化粧品用水溶性コラーゲンおよびこのコラーゲンを含有してなる化粧品。好ましくはアテロコラーゲンである。またサクシニル化してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品用水溶性コラーゲンおよび該コラーゲンを含有する化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンあるいはコラーゲンの誘導体は、保湿性や皮膜形成性に優れ、皮膚に塗布したときの肌なじみが良く、使用感が良好になることから化粧料に多用されている。コラーゲンの起源としては、従来から牛や豚などの獣由来のものが用いられていた。しかし、近年、BSE(牛海綿状脳症)問題が顕在化し、牛皮を含む家畜由来の原料を用いたコラーゲン製品により、人間に対して病原体が感染する危険性を潜在的に指摘されるに至った。そこで安全性と資源量等の観点から、魚類由来コラーゲンが化粧品原料として俄に脚光を浴びた。
【0003】
コラーゲンは、少なくとも部分的に螺旋構造(コラーゲン螺旋)を有するタンパク質または糖タンパク質として定義される。これは、3本のポリペプチド鎖から形成される三重螺旋で、分子量10万程度の各ポリペプチド鎖にはグリシン残基が3個目ごとに、またその他のアミノ酸残基としてプロリン残基、ヒドロキシプロリン残基が高頻度に現れる。コラーゲンは無脊椎動物あるいは脊椎動物の組織、特に皮膚から多く抽出することができる。コラーゲン分子には構造の違いによって20種類以上の型の存在が報告されており、さらに同じ型に分類されるコラーゲンにも数種類の異なる分子種が存在する場合がある。
【0004】
中でも、タイプIコラーゲンが主に化粧品原料として用いられている。タイプIはほとんどの結合組織に存在し、生体内に最も多量に存在するコラーゲン型である。特に腱、真皮および骨に多く、工業的にはコラーゲンはこれらの部位から抽出される場合が多い。本明細書において、以下コラーゲンという呼称は、実質的にタイプIコラーゲンを示すこととする。
【0005】
コラーゲンは皮膚やうろこ、骨などの生体組織の中で‘線維’とよばれる特徴的なファイバー構造を形成し、コラーゲン分子間・線維間で化学的に架橋されて安定化している。化粧品用に用いるためには、生体組織からコラーゲンを可溶化して用いる。最終的には、ペプシンなどのたんぱく質分解酵素でコラーゲン分子末端の‘テロペプチド’とよばれる非螺旋領域を消化して使用される場合が多い。テロペプチドにはコラーゲン分子間架橋が存在し、ヒトに対して抗原性を示す場合があるからである。テロペプチドを消化したアテロコラーゲンは、モノメリックな状態になり肌へのなじみが良くなり、抗原性が最小化される。
【0006】
コラーゲンに熱を加えるとコラーゲンの三重螺旋構造がほぐれ、それぞれのポリペプチド鎖がランダムコイル状の熱変性物を与える。そのような構造変化を起こす温度は変性温度と呼ばれ、熱変性物はゼラチンと呼ばれる。コラーゲンの変性温度は溶液状態の時に最も低くなるため、通常は水溶液の状態で変性温度が計測される。
【0007】
ゼラチン水溶液はコラーゲン水溶液と異なりべたつきを示し、粘度が低く、濃度が高いと低温でゲル化することがあり、化粧品原料としての価値が低下する。そのため、化粧品用コラーゲンの製造はできるだけ変性が起こらないよう低温下で実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−149455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コラーゲンの変性温度は由来する生物の生活環境温度と密接に関係していると言われている。水溶液でのコラーゲンの変性温度は、恒温動物である哺乳類では38℃前後であるが、変温動物である魚類はおおむね哺乳類よりも低く、生息水温とほぼ等しい。日本近海の魚類の場合はおおむね20〜30℃の範囲であり、鮭等の寒流系の魚類では20℃を下回る場合もある。変性温度の低いコラーゲンは熱安定性が低くなるため、取扱性や保存安定性に劣ることにつながる。
したがって、本発明の目的は哺乳類由来と同等程度に高い変性温度を持つ魚類由来コラーゲンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究した結果、マツダイの皮から得られたコラーゲンは変性温度が高く、哺乳類由来コラーゲンと同等の33℃以上の変性温度とすることができること、そのコラーゲンを化粧料原料として使用することにより熱安定性に優れた化粧料とすることができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下のコラーゲンおよびそれを含有する化粧品に関する。
【0011】
[1]マツダイの皮から得られ、粘度変化から求められる変性温度が33℃以上であることを特徴とする化粧品用水溶性コラーゲン。
[2]アテロコラーゲンである前記1に記載の化粧品用水溶性コラーゲン。
[3]サクシニル化コラーゲンである前記1に記載の化粧品用水溶性コラーゲン。
[4]前記1〜3のいずれかに記載の化粧品用水溶性コラーゲンを含有してなる化粧品。
[5]前記1〜3のいずれかに記載の化粧品用水溶性コラーゲンを含む液体を凍結乾燥してなることを特徴とするシート状化粧品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化粧品用水溶性コラーゲンは、哺乳類由来コラーゲンと同等の熱安定性を有し、化粧品やシート状化粧品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた本発明コラーゲンのSDS−PAGEの結果。
【図2】実施例1で得られた本発明コラーゲンの温度に対する剪断応力を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の魚類由来コラーゲンは、マツダイの皮から得られたものである。マツダイとは、スズキ目スズキ亜目マツダイ科に属するものであり、マツダイ科には、沿岸近くの浅い海で生活するマツダイ属と、インドからボルネオ島・ニューギニア島にかけての淡水・汽水域に分布するダトニオイデス属に分けられる。どちらの属から得られたコラーゲンであってもよいが、食用として大量に水揚げされ、原料の皮の確保が容易であるマツダイ属が好ましく用いられる。
【0015】
マツダイ由来コラーゲンは、通常の魚類由来コラーゲンと同様の方法、すなわち酸性水溶液を用いてマツダイ魚皮から酸抽出することにより製造することができる。
マツダイ魚皮を酸性水溶液に浸漬すると、酸可溶性のコラーゲンが溶け出し膨潤する。用いる酸性水溶液の種類は特に限定されるものではなく、最終用途から見て安全で、工業用として広く使用されている塩酸、酢酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リン酸等の水溶液が望ましく、特に酢酸水溶液が好ましい。
マツダイ魚皮の膨潤に用いられる酸性水溶液のpHは、2.0〜5.5の間であることが好ましい。pHが2.0よりも低い場合、コラーゲン分子が加水分解を受ける場合があり好ましくない。pHが5.5よりも高い場合、魚皮の膨潤が十分に起こらない場合があり好ましくない。より好ましくは、pH3.5〜5.0の範囲である。
コラーゲンの製造における温度条件は、マツダイコラーゲンの変性温度以下から零度以上が望ましいが、酸化や菌汚染などの品質劣化を考えると、零度以上+10℃以下が好ましい。
【0016】
マツダイ魚皮を酸性水溶液で膨潤させるための浸漬時間は、膨潤真皮を除去できるのに十分な膨潤が起こっていれば特に限定されるものではなく、pH、温度などの条件により異なる。浸漬時間が長すぎると魚皮が過度に膨潤し過ぎて不要な色素を抽出することになり好ましくない。具体的な浸漬時間は、上記pH、温度範囲では、6〜72時間程度が好ましい。かくして酸性水溶液で膨潤した真皮から酸可溶性コラーゲンを得る。
抽出された酸可溶性コラーゲン溶液に不溶解分が残存している場合には、濾過法、遠心分離法により不溶解分を除去することが望ましい。
【0017】
得られたコラーゲンは、アテロ化することが好ましい。アテロ化とは、コラーゲンの抗原性を低くするために、抗原部位であるテロペプチドを酵素処理で取り外すことを意味する。アテロ化によりモノメリックな状態になり肌になじみやすくなる利点がある。
具体的には、酸抽出後の水溶液に酸性プロテアーゼを加え、15℃以下、望ましくは4−10℃で、5〜24時間処理する。アテロ化するためのプロテアーゼとしてはペプチド結合の加水分解を触媒する酵素であればいずれの酵素でも良く、好ましくは抽出pHとの関係で酸性プロテアーゼによる分解が好ましく、さらに好ましくはペプシンが好ましい。その添加量はコラーゲンに対して、0.01質量%〜10質量%添加することができるが、好ましくは0.1質量%〜7質量%程度であり、特に好ましくは1質量%〜5質量%程度である。
【0018】
得られたアテロコラーゲンは、酸溶液に対して溶解度が高いので、そのままでも使用可能であるが、精製することが好ましい。精製は、アテロコラーゲン液に塩を添加して沈殿させる塩析法により行なうことができる。塩析法に用いる塩は、アテロコラーゲンが沈殿する塩であればいずれの塩であっても使用可能であるが、経済性、安全性等から考えて塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が望ましい。得られた沈殿物は、再度前述した酸溶液または、前述した酸の緩衝液に溶解して製品とすることも可能であるが、塩析法では塩を透析により除去することも可能である。
【0019】
本発明のアテロコラーゲンは、常法により化学修飾することもできる。アテロコラーゲンのアシル化反応はアテロコラーゲン溶液に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリを添加し、pH9〜12に調整した後、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水酢酸などの酸無水物を加え、反応系のpHが低下するのを防ぐためにアルカリを添加してpHを9〜12に調整しながら反応させる。反応温度はアテロコラーゲンの変性を防ぐために10℃以下、望ましくは2〜8℃で行うのが望ましい。アシル化剤はコラーゲンのεアミノ基をカルボキシル化できるものであればいずれでも良く、好ましくは無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などの酸無水物であり、特に好ましくは無水コハク酸である。
【0020】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは、粘度変化から求められる変性温度が33℃以上であり、好ましくは34℃以上である。粘度変化から求められる哺乳類由来コラーゲンの変性温度は、およそ34℃である。変性温度が33℃未満の場合、化粧品として用いた場合のコラーゲンの熱安定性が哺乳類由来コラーゲンよりも明確に低下し、代替原料とはなりえない。
【0021】
粘度変化を測定する方法としては、ペルチェ温度コントローラを装備した動的粘弾性測定装置が利用される。測定されるコラーゲン水溶液量は1mL〜5mLの範囲とする。一般的な回転式粘度系は測定に用いる溶液の量が多く、恒温水槽を用いるため、温度上昇を精度よく行うことが難しくなるため好ましくない。
【0022】
上記の粘度変化の測定において、温度上昇は10℃から40℃まで1℃ずつ段階的に行い、一定温度に到達してからの待ち時間を3分〜5分の範囲とする。段階的温度上昇の一段の温度を大きくすると、計測は早く終了するが変性温度を正確に決定することが困難になる場合があり好ましくない。段階的温度上昇の一段の温度を小さくすると、計測時間が膨大となり好ましくない。化粧品としての有用性を検証するためには、一段の温度は1℃で十分である。一定温度に到達してからの待ち時間を5分以上とると、計測時間が膨大となり、3分未満とするとコラーゲンの構造変化が温度上昇に追随できない場合があり好ましくない。
【0023】
上記の粘度変化の測定において、測定されるコラーゲン水溶液量は1mL〜5mLの範囲とする。1mL未満の場合、乾燥により計測に不具合をきたす場合があり好ましくない。5mLを超える場合、溶液の温度が均一になりにくく、待ち時間を5分以上とらなければならない場合があり好ましくない。
【0024】
上記の粘度変化の測定において、変性温度の決定は、単位温度あたりの粘度変化の絶対値が最大となる温度とする。
【0025】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは、実質的にタイプIコラーゲンである。ここでいう実質的にとは、他のタイプのコラーゲンやたんぱく質が微量混合していても、支配的にはタイプIコラーゲンから成る、という意味である。皮膚を原料とした場合、微量のタイプIIIコラーゲンなどが混入してくることがよくある。タイプIIIコラーゲンはタイプIコラーゲンとわずかにアミノ酸シーケンスが異なるだけで、多少含まれていても化粧料用途においては全く問題がない。無理に取り除くとタイプIコラーゲン製造の歩留まりが悪化してしまう。実質的にタイプIコラーゲンから成る事実は、SDS−PAGE法などの古典的な電気泳動法で確認できる。
【0026】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは水溶性である。皮からコラーゲンを製造する場合、皮には膨張した真皮層が残る。この主成分はコラーゲンであり、不溶性コラーゲンとしての利用価値がある。しかし、不溶性コラーゲンは化粧品としての品質を低下させるので、水溶性コラーゲン成分への混入があっても遠心分離などで除去する。
【0027】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは、サクシニル化してもよい。コラーゲンは通常、酸可溶性成分が抽出・生成される。酸可溶性コラーゲンは中性での溶解性が低いが、サクシニル化によりコラーゲン分子に負電荷を導入することにより中性での溶解性が高まる。サクシニル化には無水コハク酸を用いた公知の修飾方法を用いることができる。
【0028】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは、従来の哺乳類由来コラーゲンと同様に、化粧料の成分として好適に用いることができる。化粧料の成分としては、本発明のコラーゲンと水、および公知の化粧品用防腐剤のみで構成されていてもよいが、取扱いを容易にするために、溶剤を添加してもよい。用い得る溶剤としては、例えば、水の他、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;1,3−ブタンジオール,グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類などを例示することができる。また、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、上記した成分の他、賦形剤、増量剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、安定剤、pH調整剤、増粘剤などを目的に合わせて適宜配合することができる。
【0029】
本発明のマツダイ由来コラーゲンは化粧料用原料として、化粧品や医薬部外品などの化粧料に配合して使用することができる。具体的には、洗顔剤、化粧水、乳液、スキンクリーム、ファンデーション、マスカラ、ネールエナメル、口紅、プレシェーブローション、アフターシェーブローション等の皮膚用化粧料、シャンプー、ヘアトリートメント、育毛・養毛剤、ヘアクリーム、ヘアフォーム、染毛剤、毛髪脱色剤、パーマネントウェーブ剤などの頭髪用化粧料、しみやそばかすなどの特定の使用目的を有した薬用化粧料などに好適に用いることができる。
シート状の化粧料とする場合には、常法に従い、コラーゲンを含む液体を凍結乾燥することにより製造することができる。
【0030】
本発明の化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分を適宜任意に配合することができる。例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、シリコーン類、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸等の油性成分;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤の各種界面活性剤;低級アルコール、多価アルコール、糖類、ステロール類等のアルコール類;保湿剤、高分子化合物、無機顔料、粉体、色素、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、アミノ酸類、収斂剤、美白剤、動植物抽出物、金属イオン封鎖剤、酸、アルカリ等の添加成分;水等を例示することができる。
【0031】
具体的には、油性成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油等の油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、スクワラン等の炭化水素;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリド等の脂肪酸エステル;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。
【0032】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、およびこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類等の非イオン界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N−アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼエトニウム等の陽イオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤を例示することができる。
【0033】
アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール;1,3−ブタンジオール,グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、キシリトール、ラクトース、トレハロース等の糖類;コレステロール、フィトステロール等のステロール類を挙げることができる。
【0034】
化粧品や医薬部外品などの化粧料に本発明の化粧品用魚類由来コラーゲンを配合する場合、配合量は特に限定されないが、保湿性等のコラーゲン類の効果を発揮させる観点から、化粧料中0.001質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、使用感の観点から、化粧料中20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。これらから、化粧料中の化粧料用原料の配合量は、0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を具体例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は下記の記載範囲に限定されるものではない。
【0036】
実施例1:マツダイ由来コラーゲンの製法
肉を除去し、砕片としたマツダイ皮500gを75%エタノール製剤に一晩浸漬して脱脂し、その後流水で5時間洗浄した。洗浄したマツダイ皮を0.5M酢酸水溶液8Lに浸漬し、48時間10℃以下の雰囲気で抽出を行った。酢酸抽出液をポアサイズ1μmのメンブランフィルターで濾過した。この濾液にペプシン(ブタ由来)を添加して一晩静置し、アテロ化した。アテロ化後の溶液をセルロースチューブに充填し、1%(w/v)炭酸水素ナトリウム水溶液に対し1日間、次いで0.1%(w/v)炭酸水素ナトリウム水溶液に対し2日間浸漬し、透析を行った。
透析液を1規定の塩酸でpH3に調整した後、塩化ナトリウムを終濃度0.7Mとなるように添加し、一晩撹拌し、沈殿を析出させた。遠心分離で沈殿物を回収し、水分を含む塩析物178gを得た。この塩析物を75%エタノール製剤1000mlに一晩浸漬した。この操作を2回繰り返し、125gの水分を含む塩析物を得た。この塩析物を0.2M酢酸水溶液に溶解し、セルロースチューブに充填し、外液に脱イオン水を用い毎日外液を交換し6日間透析を行い、精製水で1%に溶解して、水溶性コラーゲン溶液標品(アテロコラーゲン)2000mlを得た。
【0037】
得られたマツダイ由来コラーゲンのSDS−PAGEの結果を図1に示す。また、得られたマツダイ由来コラーゲンについて、蛋白質純度を確認しアミノ酸組成分析を行った。結果は表1の通りである。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2:コラーゲンの変性曲線と変性温度
コラーゲンの変性温度は、コラーゲン水溶液の温度を段階的に上昇した場合の粘度変化から求めた。動的粘弾性測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製;MarsIII)のコーン型センサー(内径60mm、傾斜1°)を用いて、0.3%コラーゲン水溶液にせん断速度5/秒のせん断ひずみを与え、センサーの温度を1℃ずつ(各温度の保持時間60秒)上昇させた。各温度でのせん断応力を計測し、温度に対してプロットした(図2)。せん断応力が最も減少した温度を変性温度とした。
マツダイアテロコラーゲンの変性温度は36℃であった。日本近海で漁獲される魚のコラーゲンの変性温度(14〜30℃)よりも高く、温帯に広く分布するティラピアのコラーゲンよりも高かった。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例3:コラーゲンのサクシニル化
実施例1の1%マツダイ水溶性コラーゲン溶液標品100mlに、1mol/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液を添加してpH10に調整し、得られた溶液にアセトン10mLに溶解した無水コハク酸0.9gを少量ずつ滴下して、1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いて、反応系のpHを9〜10に維持させながら5℃で6時間反応させた。得られた反応後液の酸沈殿を3回繰り返し、透析により脱塩して濃度を調節して0.3%アテロ化サクシニルコラーゲン溶液を得た。
【0042】
実施例4:スキンクリームへの配合
(1)コラーゲン配合スキンクリームの調製
流動パラフィン6.0g、セタノール4.0g、ステアリルアルコール2.0g、ミリスチン酸イソプロピル1.5g、POE(20)セチルエーテル0.8g、モノステアリン酸グリセリン0.60gおよびパラベン0.2gを撹拌しながら75℃にして溶解した後、この溶液に、カーボポール981を20.0g、パラベン0.2g、精製水65.0gからなる溶液を同温度に加熱した状態で加えてホモジナイズして乳化させ撹拌し、冷却してスキンクリームを得た。
このスキンクリーム46.5gに、実施例1において調製した1%水溶性コラーゲン溶液標品(アテロコラーゲン)を3.5g添加し、良く混ぜコラーゲン配合スキンクリームを得た。
(2)コラーゲン配合スキンクリームの安定性
得られたコラーゲン配合スキンクリームは、30℃,RH75%の条件下において3か月間安定であった。
(3)コラーゲン配合スキンクリームの性能評価
得られたコラーゲン配合スキンクリームおよびコラーゲンを配合する前のスキンクリームについて、パネルテスト(パネリスト20名)による官能試験で比較評価した。評価は下記の評価項目について同一パネリストが其々5段階で評価した。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、水溶性コラーゲンを配合したスキンクリームでは、使用時、使用後とも肌感触が良好であった。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例5:化粧水への配合
(1)アテロ化サクシニルコラーゲン配合化粧水の調製
低温で、ビタミンC誘導体(リン酸型アルコルビン酸)1.5g、グリチルリチン酸ジカリウム0.2g、植物性グリセリン5g、パラベン0.3g、エタノール5g、および実施例3で得られた0.3%アテロ化サクシニルコラーゲン溶液15gに、精製水を添加して100mlとし、よく撹拌し化粧水とした。同時にコラーゲン未配合の化粧水を調製した。
(2)アテロ化サクシニルコラーゲン配合化粧水の安定性
1か月30℃で保存し粘度を測定した。保存前後での粘度変化はなく、安定性は良好であった。
(3)アテロ化サクシニルコラーゲン配合化粧水の性能評価
アテロ化サクシニルコラーゲン溶液配合化粧水、アテロ化サクシニルコラーゲン溶液未配合化粧水を、パネルテスト(パネリスト20名)による官能試験で比較評価した。評価は下記の評価項目について同一パネリストが其々5段階で評価した。結果を表4に示す。
表4から明らかなように、水溶性コラーゲンを配合した化粧水では、使用時、使用後とも肌感触が良好であった。
【0045】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マツダイの皮から得られ、粘度変化から求められる変性温度が33℃以上であることを特徴とする化粧品用水溶性コラーゲン。
【請求項2】
アテロコラーゲンである請求項1に記載の化粧品用水溶性コラーゲン。
【請求項3】
サクシニル化コラーゲンである請求項1に記載の化粧品用水溶性コラーゲン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化粧品用水溶性コラーゲンを含有してなる化粧品。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の化粧品用水溶性コラーゲンを含む液体を凍結乾燥してなることを特徴とするシート状化粧品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−1664(P2013−1664A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132337(P2011−132337)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(594038025)井原水産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】