説明

化粧品用粉体およびこれを配合した化粧品

【課題】
アコヤ貝貝殻の炭酸カルシウム結晶の状態を活用して、容易にアコヤ貝の真珠層を取り出し化粧品用粉体を得ることである。
【解決手段】
アコヤ貝貝殻をアルカリ溶液に浸漬した後、解砕し、200〜500メッシュで分別することを特徴とする薄片状炭酸カルシウムを主成分とする化粧品用粉体。
さらには上記の粉体の表面に平均粒子径0.05〜0.5μの球形粉体を表面処理するとより効果が強くなり、光散乱性や透明感等の有効性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコヤ貝貝殻の真珠層から得た薄片状炭酸カルシウムを主成分とする化粧品用粉体およびこれを配合した化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
貝殻の真珠層から得た薄片状炭酸カルシウムを化粧料に配合することはすでに知られている。(特許文献1〜4)
これらは、化粧品用の顔料として用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−148320号公報
【0004】
【特許文献2】WO2003/000592
【特許文献3】特開2006−052183号公報
【特許文献4】特許登録第4458439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では自然にできた結晶状態を活かして貝殻より化粧品用の粉体を取り出すことは行われていた。
しかしながらアコヤ貝のように稜柱層を有し、これは暗茶色であり、化粧品の粉体として利用が制限される。
このため、稜柱層を取り除く必要があるが、その方法として、アルカリ溶液、次亜塩素酸ソーダ等を用いる方法、グラインダー等の機械的方法を用いる方法、加熱して真珠層と稜柱層の隙間にある有機層を焼ききってしまう方法等があるが稜柱層の除去が不充分であったり、非常に大きな労力を必要としたりする。
ひとつはこれを解決することであるが、さらに従来は単に白色顔料として用いられているのみであるので、新しい用途を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、アコヤ貝貝殻をアルカリ溶液に浸漬した後、解砕し、200〜500メッシュで分別することを特徴とする薄片状炭酸カルシウムが稜柱層の混入もなく、化粧品原料として有効である。さらにこの粉体が光散乱性が高く透明感が付与されることを見出し、粉体として新たな用途を見出した。
以下に詳細に記載する。
【0007】
アコヤ貝の貝殻は、内側より真珠層、稜柱層、殻皮層があり、さらに外側には触手動物であるコケムシ類、軟体動物である二枚貝類、節足動物であるフジツボ類、環形動物である多毛類、脊索動物であるホヤ類、海藻類等々多種多様の生物が付着している。
これらのうち、真珠層以外の部分をある程度除去しておくと後の工程がスムーズに行える。
その方法はブラシ等で擦り落とす方法、研磨石と撹拌する方法、アルカリや酸を加えて撹拌する方法、或いはこれらを組み合わせて実施する方法のうちいくつかを実施する。
【0008】
処理した貝殻を、必要により破砕する。この破砕は、アルカリ溶液に浸漬するので嵩高いとアルカリ溶液の必要量が多くなるので、アルカリ溶液での解砕を効率的に行うために実施する場合があり、数〜十数mm程度に破砕する。小さく破砕すると、薄片状の炭酸カルシウムの収率が低下するので、アルカリ溶液濃度、作用温度や時間を考えて、必要なら破砕する。
アルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を用いる。これの1〜50%、好ましくは2〜20%水溶液を用いる。作用温度は加温した方が反応が早いので反応時間との兼ね合いで必要に応じて加温する。
反応時間はアルカリの濃度、貝殻の粉砕の程度、作用温度等によって大きく異なるが、10分間〜6ヶ月程度で行う。反応時に時折、カルシウム結晶を破損しない程度に振動や撹拌を加えるとよい。
なお、ここでいう反応はカルシウム結晶の隙間にあるタンパク質等を分解し、カルシウム結晶が解砕あるいはその後の処理で解砕する程度に分解することである。
また、解砕とは結晶状態をある程度保ったままで、結晶が1〜数十個程度になることを指す。
【0009】
反応が終了したら、アルカリ溶液を棄て、或いは水を加えてからアルカリ溶液を棄てる。さらに水を加えて、必要により撹拌したのち、液を棄てる。これを繰り返す。
この作業の前後或いは中間で必要に応じて振動や撹拌を加える。
この貝殻解砕物を200〜500メッシュで分別し、通過する部分を利用する。どの程度のメッシュがよいのかは、アコヤ貝の産地、大きさ等によって異なるが、稜柱層等が取り除ける篩であればよい。
また、事前に利用するメッシュより目が粗い篩を通しておくと効率的な場合がある。
これを必要に応じて、さらに水を加えて振動、撹拌を加えて、乾燥し、薄片状炭酸カルシウムを得る。
【0010】
この粉体をそのまま化粧品原料として利用できるが、この粉体の表面を種々の加工を行うことによって、さらに利用価値が拡がる。
表面処理する物質は、シリコーン、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、ポリエチレン、金属石鹸、アミノ酸、アルキルフォスフェート、フッ素化合物等でもよいが、薄片状炭酸カルシウムに比較して小さい粉体で表面を覆ってもよい。特に粉体の種類や形状は問わないが、本発明者が検討した結果、平均粒子径0.05〜0.5μの球形粉体が好ましいことがわかった。
【実施例】
【0011】
以下に実施例、配合例を示すがこれに限定させるものではない。
【0012】
実施例1
三重県志摩市浜島町迫子大崎ミキモト多徳養殖場において浜揚げしたアコヤ貝貝殻20kgをバレル研磨機に入れ、研磨石を加え、水を徐々に加えつつ3時間撹拌した。この貝殻14kgに10%水酸化ナトリウム水溶液を85kgを加えて、3週間時々撹拌しつつ浸漬した。
これを静置し、上澄みをすて、すてた量と同じ量の水を加え、撹拌した。これを5回繰り返した。
48メッシュ、100メッシュ、400メッシュの順に篩を通し、通過したものを集めた。
これをろ紙(東洋濾紙社製No5C)で濾過し、ろ紙上の固形物を水80kgを加え撹拌した。これを5回繰り返した。
これを100℃で24時間乾燥させた。収量は6kgであった。
【0013】
実施例2
実施例1の粉体2.4kgと球形粉体(材質=ポリメタクリル酸メチル(綜合化学株式会社、平均粒子径=0.2μ)0.6kgをヘンシェルミキサー(三井三池工機株式会社)に投入し、10分間、2800rpmで撹拌した。

【0014】
変角光度測定
村上色彩技術研究所社製変角光度計GP−5で入射角度−45度、受光角度−90〜90で測定した。
結果を表1及び表2に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
なお、表1の比較1はマイカ(トピー工業社製、商品名PDM−10L)、比較2はタルク(浅田製粉社製、商品名JA−13R)を用いた。
以上のように実施例は比較した粉体に比較して、再帰反射、拡散反射は増加しており、反射光があらゆる角度に散乱しており化粧品粉体として有効であることがわかった。
以下に実施例を配合した処方例を以下に挙げる。
【0018】
処方例1ファンデーション
タルク 44
マイカ 25
酸化チタン 10
ナイロンパウダー 10
ジメチコン 5
酸化鉄 4.8
実施例1 1
パラベン 0.2
【0019】
処方例2 仕上げ用化粧品
マイカ 50
タルク 26
シリカ 5
酸化チタン 10
スクワラン 5
酸化鉄 2.8
実施例2 1
パラベン 0.2
【0020】
使用テスト
女性20名を2班に分け、それぞれ顔面を左右に分け、一方を実施例、もう一方を比較例とし使用してもらって、アンケートした。
なお、比較処方例は、各実施例をタルクに置き換えたものである。
【0021】
判定基準は以下のようでアンケートの結果をまとめたのが以下の表である。
実施例の方が非常によい 3
実施例の方がかなりよい 2
実施例の方がややよい 1
差がない 0
比較例の方がややよい −1
比較例の方がかなりよい −2
比較例の方が非常によい −3
【0022】
結果は、処方例1の『カバー力』は1.5、『仕上げの美しさ』が0.8、処方例2の『カバー力』は1.3、『仕上げの美しさ』が1.1であった。
このように本発明の粉体は光散乱性が高く、透明感が付与されることを見出し、結果、カバー力の強い、仕上がりが美しい化粧用粉体を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アコヤ貝貝殻をアルカリ溶液に浸漬した後、解砕し、200〜500メッシュで分別することを特徴とする薄片状炭酸カルシウムを主成分とする化粧品用粉体
【請求項2】
請求項1の粉体の表面に平均粒子径0.05〜0.5μの球形粉体を表面処理した化粧品用粉体
【請求項3】
請求項1乃至請求項2の粉体を配合した化粧品

【公開番号】特開2012−211111(P2012−211111A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78110(P2011−78110)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】