説明

化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及びそれが含まれた化粧品組成物

【課題】皮膚に適用した場合に、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、透明感が付与できるだけでなく、乾燥時の二次凝集を抑え、すべりや触感が良い化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及びそれが含まれた化粧品組成物を提供する。
【解決手段】球晶構造からなり、広角X線解析による結晶子サイズが12nm以上、及びDSCによる結晶化度が50%以上であることを特徴とする化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子である。また、上記化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及び化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に適用した場合に、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、透明感が付与でき、すべりや触感が良い化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及びそれが含まれた化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質ポリアミド微粒子を配合した化粧品組成物は、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、皮脂や汗を吸収する性質などから、これまで多くの文献や実施例が見受けられる。例えば、特許文献1、2には、数平均粒子径1〜30μm、粒子径分布が1〜1.5の略球形もしくは筒状、ダンベル状である多孔質ポリアミド微粒子を含有する化粧品組成物が開示されている。特に分散溶液中では、球状に比べてダンベル状粒子の光散乱性が高いことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2004−043411号公報
【特許文献2】特開2005−239575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多孔質ポリアミド微粒子は、通常の真球状粒子と比較して、多数の細孔があることから比表面積が大きく、粒子としての表面エネルギーが大きいため、乾燥時に二次凝集が発生しやすい。そのため、化粧品原料として配合された製剤中において、粒子の凝集が完全にほぐれないと、すべりや触感などを悪化させてしまうことがある。特に球晶構造が、ダンベル状、筒状、勾玉(C型)状の粒子は、その形状から略球状粒子よりもさらに二次凝集が激しく、すべりや触感などを大きく悪化させてしまい問題となっている。そこで、これらを改善するために、作成後の粒子に既存の手法でシリコーン表面処理を施し、触感の改善等を試みたものの、一度出来た凝集を後処理手法で解くことは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、皮膚に適用した場合に、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、透明感が付与できるだけでなく、乾燥時の二次凝集を抑え、すべりや触感が良い化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及びそれが含まれた化粧品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、球晶構造を有し、結晶子サイズ及び結晶化度を調整した多孔質ポリアミド微粒子を用いることで、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、透明感が付与でき、乾燥時の二次凝集を抑え、すべりや触感が良い化粧品組成物が製造できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、球晶構造からなり、広角X線解析による結晶子サイズが12nm以上、及びDSCによる結晶化度が50%以上であることを特徴とする化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子である。
【0007】
また、本発明は、上記化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及び化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品組成物である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、皮膚に適用した場合に、光透過性と光散乱性に優れ、ソフトフォーカス性が高く、透明感が付与できるだけでなく、乾燥時の二次凝集を抑え、すべりや触感が良い化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及びそれが含まれた化粧品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1により得られた多孔質ポリアミド微粒子のSEM画像
【図2】各微粒子の光散乱特性測定結果
【図3】比較例2により得られた多孔質ポリアミド微粒子のSEM画像
【図4】実施例2により得られた多孔質ポリアミド微粒子のSEM画像
【図5】比較例3により得られた多孔質ポリアミド微粒子のSEM画像
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る化粧品組成物は、配合される多孔質ポリアミド微粒子の凝集性が改善されているため、触感やすべりが非常に良くなる。また、既存の粒子よりも結晶子サイズが大きく、結晶化度も高いために光散乱特性がさらに向上しており、化粧品組成物としてのソフトフォーカス性がさらに向上したものとなる。
【0011】
本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、後述する温度誘起による相分離を利用した方法で製造されており、既存の方法と異なり、高温のポリアミド溶液と低温の非溶媒を短時間で添加、攪拌、混合するため、系内の温度が非常に短い時間で均一になる。このため温度が低下した均一なポリアミド溶液からの析出は、過飽和状態にある溶液温度が系内で均一な状態から行われ、系内のいたるところでほぼ同時に核生成および核成長が進行する。この核生成および核成長速度を混合溶液の温度およびポリアミド濃度を制御することによって、ポリアミド特有の結晶構造である略球状の球晶構造、あるいは一部欠損した球晶構造(C型、勾玉状)、さらに欠損した軸晶的球晶構造(ダンベル状、鼓状、筒状)を有し、結晶子サイズが大きく、結晶化度の高い多孔質微粒子が得られる。また、粒子径および粒子形状が非常に揃ったものとなる。
【0012】
本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、広角X線回折から求めた結晶子サイズが12nm(ナノメートル)以上であることが好ましい。結晶子サイズが12nm未満でも多孔質構造を有すれば光散乱性能は有するが、12nmよりも大きいとよりいっそうの光散乱性が増強し、ソフトフォーカス性が向上するので化粧品組成物としたときに好ましい。
【0013】
また、DSCで測定された結晶化度が50%以上であることが好ましい。多孔質ポリアミド微粒子の結晶化度は、X線解析より求める方法、DSC測定法により求める方法、密度から求める方法があるが、DSC測定法により求める方法が好適である。普通溶融物から結晶化させたポリアミドの結晶化度は高いものでせいぜい30%程度である。本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、結晶化度が50%以上であるため光散乱性が増し、ソフトフォーカス性が向上するので好ましい。結晶化度が低いと粒子と基材の屈折率差のコントラストが低下し、光散乱性能が低下するので好ましくない。
【0014】
さらに、球相当数平均粒子径が、1.0〜30μmが好ましく、1.0〜20μmがより好ましい。球相当数平均粒子径が1.0μmより小さいと、微粒子内に多価アルコールが存在しても二次凝集してしまうことが多く、取り扱い操作が悪くなる。30μmより大きいと、化粧品組成物として用いた場合、ざらつきが発生してしまい好ましくない。
【0015】
また、本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、多孔質構造を有する。多孔質構造によっても、多重散乱効果が増し、光拡散能が高くなる傾向があり、ソフトフォーカス効果が向上するため好ましい。
【0016】
また、本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、球状や略球状の球晶構造、一方の側に膨らみを有し反対側に欠損部を有する球晶構造(例えば、C型状、勾玉状)、又は軸晶的球晶構造(ダンベル状、鼓状、筒状)であることが好ましい。上記球晶構造は、走査型もしくは透過型電子顕微鏡にて、粒子の断面を観察し、中心核近傍からポリアミドのフィブリルが放射状に成長しているかどうかで判断することができる。本発明においては、単一粒子そのものが全体的にあるいは局所的に上記球晶構造を有していてもよい。「単一粒子そのものが全体的にあるいは局所的に球晶構造」であるとは、一つの単独粒子の中心付近の単数または複数のコアからポリアミドフィブリルが三次元等方あるいは放射状に成長して形成した結晶性高分子特有の構造であり、局所的にとは、粒子がそれらの構造の一部分を有することを意味する。上記球晶構造を有することにより、光散乱効果や光透過性が高くなる。
【0017】
なお、化粧品組成物に用いたときに、多孔質ポリアミド微粒子全体の好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が上記球晶構造を有していることが望まれる。球晶構造が70%未満であると、光散乱能や光透過性が低下するため好ましくない。本発明においては、用途によってはこれらさまざまな構造の粒子を混合してもよい。
【0018】
本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子のBET比表面積は、好ましくは、0.1〜80m/g、より好ましくは、1〜50m/g、さらに好ましくは、3〜30m/gである。比表面積が0.1m/gより低いと、得られた多孔質微粒子の多孔質性が落ち光散乱性が悪くなる。また、80m/gより大きいと凝集しやすくなる。
【0019】
また、平均細孔径は、好ましくは、0.01〜0.5μm、より好ましくは、0.01〜0.3μmである。平均細孔径が0.01μmより小さい場合、多孔質性が落ちる。0.5μmより大きい場合、得られた微粒子の機械的強度が落ちる事がある。
【0020】
さらに、多孔度指数(RI)は、5〜100が好ましい。ここで多孔度指数(RI)とは、同じ直径の平滑な球状粒子の比表面積に対し、多孔質の球状微粒子の比表面積の比で表示したものと定義する。多孔度指数が5より小さければ、多孔質微粒子としての担持機能や吸着機能が劣るため好ましくない。多孔度が100より大きいと、粉体として取り扱いづらくなる。
【0021】
本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子は、球相当粒子径分布において、数平均粒子径(または数基準平均粒子径)に対する体積平均粒子径(または体積基準平均粒子径)の比が1〜2.5であることが好ましく、1〜1.5であることがさらに好ましい。数平均粒子径に対する体積平均粒子径の比(粒度分布指数PDI)が2.5より大きいと、粉体としての取り扱いが悪くなる。
【0022】
次に、本発明に係る化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子の製造方法について説明する。本発明に係る化粧品組成物に用いられる多孔質ポリアミド微粒子は、温度誘起による相分離を利用した方法で製造されている。例えば、原料として用いられるポリアミドを溶媒(A)と混合し、その後昇温して均一溶液を作成し、ポリアミド溶液全体を急速に均一に所定の温度まで冷却するために、低温の溶媒(B)を所定時間内に攪拌しながら添加し、その後、静置することによって製造することができる。その際、2液をなるべく短時間で攪拌混合して、析出(白濁)開始前に均一化させ、攪拌を止めて静置条件下で析出を進行させることが最も重要となる。
【0023】
多孔質ポリアミド微粒子の原料として用いられるポリアミドとしては、環状アミドの開環重合、アミノ酸の重縮合、ジカルボン酸とジアミンの重縮合等で得られるものが挙げられる。環状アミドの開環重合に用いられる原料としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられ、アミノ酸の重縮合に用いられる原料としては、ε−アミノカプロン酸、ω−アミノドデカン酸、ω−アミノウンデカン酸などが挙げられ、ジカルボン酸とジアミンの重縮合に用いられる原料としては、蓚酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などのジカルボン酸やそれらの誘導体と、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキシルジアミン、ペンタメチレンジアミン、デカメチレンジアミンなどのジアミンなどが挙げられる。
これらのポリアミドには、さらに、テレフタル酸、イソフタル酸、m−キシリレンジアミンなどの少量の芳香族成分を共重合してもよい。
【0024】
ポリアミドの具体的な例としては、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、およびこれらの混合物ないし共重合樹脂が挙げられる。これらの中で、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12又はポリアミド6/66共重合樹脂が好ましく、材料の取り扱い性の観点から、特にポリアミド6が好ましい。
【0025】
上記ポリアミドの分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜40,000である。ポリアミドの分子量が小さすぎると、多孔質ポリアミド微粒子の形成条件が狭くなり、製造が難しくなる。また、ポリアミドの分子量が大きすぎると、製造時に一次凝集体が出来やすくなり好ましくない。
【0026】
溶媒(A)としては、原料ポリアミドに対して高温では良溶媒として作用し、低温では非溶媒として作用する溶媒が好ましく、多価アルコールなどが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は1種類でも混合して用いても良い。
【0027】
上記溶媒(A)中に、溶解促進のために溶解温度を降下させるため、無機塩を加えても良く、無機塩としては塩化カルシウム、塩化リチウム等が挙げられる。金属イオンがポリアミドの水素結合部に作用して溶解を促進する無機塩であれば上記の限りではない。
【0028】
ポリアミドを溶解する温度は、そのポリアミドが溶媒(A)に溶解を開始する温度(以下、「相分離温度」と記載する。)より10〜100℃以上高い温度が好ましい。溶解する際、窒素ガスなどの不活性なガスによって、系内を密閉して溶解するとポリアミドが劣化することが少なく好ましい。
【0029】
ポリアミドの均一溶液の濃度は、0.1〜30重量%が好ましい。0.1重量%よりも低いと、粒子の生産性が低くなる。30重量%より高いと、溶液に一部溶け切れないポリアミドが残るおそれがあり、均一な微粒子が得られないことがあるため好ましくない。
【0030】
本発明においては、上記ポリアミドの均一溶液に、低温の溶媒(B)を混合することにより、ポリアミド溶液全体を急速に均一に所定の温度まで冷却する。ここで用いることができる溶媒(B)は、ポリアミドに対して少なくとも低温では非溶媒として作用し、溶媒(A)と相溶性が高いものであればよいが、溶媒(A)と同一の成分から構成されてなる、あるいは混合液の場合は同一の組成であることがより好ましい。異なる成分や組成である場合、粒子を回収後、溶媒の再利用を行う際、分別回収などに多くの手間がかかることがある。
【0031】
本発明で用いることができる上記の溶媒(B)として、溶媒(A)と同様な多価アルコール及びそれらの混合物が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。これらは1種類でも混合して用いても良い。
【0032】
ポリアミド溶液を冷却し、晶析させる温度は、ポリアミド溶液の相分離温度より20〜80℃低い温度が好ましく、30〜70℃低い温度がより好ましく、40〜60℃低い温度がもっとも好ましい。晶析温度が相分離温度から20℃以内の場合は、過飽和度が低いためにポリアミドが析出を開始し終了するまでに多大な時間がかかり、塊状の析出物や粒子の凝集体が得られるので好ましくない。また、80℃以上低い場合は、2液が均一に攪拌混合される前に局所的な温度の低下により、ポリアミドが析出を開始し、不均一な粒子や凝集体が得られるので好ましくない。
【0033】
冷却に用いる溶媒(B)の温度と添加量は、冷却するポリアミド溶液の温度および容量によって決定される。溶液と冷却に用いる非溶媒との温度差は150℃以内とするのが好ましい。温度差が150℃より大きいと非溶媒を添加している最中にポリアミドの析出が始まり、凝集等が生じるため好ましくない。また、2液を混合した後の最終的なポリアミド濃度は15重量%以下となることが好ましい。析出時のポリアミド濃度が高すぎると粒子の凝集、酷い場合は溶液が固化するおそれがあり好ましくない。
【0034】
高温のポリアミド溶液と低温の溶媒(B)との混合は、高温のポリアミド溶液に低温の溶媒(B)を添加しても良いし、低温の溶媒(B)に高温のポリアミド溶液を投入してもよいが、2液が均一となるまで攪拌する必要がある。攪拌時間は3分以内、好ましくは2分以内、さらに1分以内がもっとも好ましい。2液が十分混合されたかどうかについては、2液の屈折率の差による濃度ゆらぎが観察されなくなる、あるいは混合液の温度が±1℃以内で一定になることで判断できる。
【0035】
攪拌は、通常よく用いられる攪拌翼であれば形状や装置などに特に制限はない。また攪拌翼の回転数は、混合溶液が短時間で均一化するのであれば特に制限はない。また、邪魔板などのより攪拌効果が上がる設備が備わっているとより短時間で均一に混合され好ましい。
【0036】
2液が均一となった後は、攪拌を止めて静置させるのが好ましい。ポリアミドが析出し始めてからも攪拌を続けると、得られる粒子の形状が不完全な形状でばらついたり、凝集が起きたり、粒度分布が広がってしまうため好ましくない。邪魔板が備わることで、攪拌停止後の液体の流速が短時間で停止するので好ましい。静置時間は析出が終了するまでの時間保持することが好ましく、具体的には5分〜240分が好ましく、10分〜120分がさらに好ましい。
【0037】
また、所定の温度まで冷却された後は、その温度を保ったままポリアミドを析出させるのが好ましい。冷却されたポリアミド溶液の温度が変化すると、塊状の析出物や粒子の凝集体が生成したり、粒度分布が広がったりすることがあり好ましくない。
【0038】
上記の方法により作成した多孔質ポリアミド微粒子は、デカンテーション、ろ過あるいは遠心分離などの方法で固液分離させることができる。
【0039】
また、上記方法において、作成した多孔質ポリアミド微粒子は、表面に付着する非溶媒を除去するために、常温近傍にてポリアミドの非溶媒である粘度の低い溶剤にて洗浄する事が出来る。これらの溶剤として、脂肪族アルコール、脂肪族もしくは芳香族ケトン、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素、および水からなる群より選ばれる化合物を挙げられる。脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、および2−プロパノールなどの炭素原子数が1〜3の1価の脂肪族アルコールを挙げられる。脂肪族ケトンの例としては、アセトン、およびメチルエチルケトンを挙げられる。芳香族ケトンの例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、およびブチロフェノンを挙げられる。脂肪族炭化水素の例としては、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、およびn−デカンを挙げられる。芳香族炭化水素の例としては、トルエンおよびキシレンを挙げられる。
【0040】
分離、洗浄した多孔質ポリアミド微粒子は、最後に乾燥工程を経て、乾燥粉体にすることができる。乾燥方法としては、真空乾燥、恒温乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動槽乾燥などの汎用の粉体乾燥方法を用いることができる。
【0041】
上記乾燥粉体中の残留多価アルコール量は、10000ppm未満であることが好ましい。10000ppm以上あると、残留多価アルコールによって空気中の水分が取り込まれやすく、粒子自体が二次凝集を起こしやすく、さらさら感を失い、べたつき感を感じるようになるため好ましくない。
【0042】
次に、本発明に係る化粧品組成物について説明する。本発明に係る化粧品組成物は、上記多孔質ポリアミド微粒子及び化粧品基材を含み、その他構成成分によりファンデーション、リップクリーム、アイシャドウ、治療用化粧品などの種々の化粧品に用いることができる。代表的な化粧品組成物としては、エマルジョンなどの液状、ペースト状または粉末状として肌への塗布がしやすい形態のものを挙げる事ができる。
【0043】
化粧品基材とは、化粧品組成物の剤型を保持するための成分を意味する。本発明において化粧品基材としては、特に限定はなく、目的に応じて公知のものを適宜使用することができる。例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ソルビトールなどの水溶性基材、各種脂肪酸、脂肪酸アルコール、ワックス(例えば蜜蝋)とそれらの誘導体などの合成油及び油脂、各種の植物油、天然油(例えば椿油)および油脂などの油性基材、水、各種アルコール(例えばエタノール)などの水性基材、各種のエマルジョン基材といった液状基材、つや消し効果や艶出し効果、汗取り効果、その他剥離防止効果のある、タルク、粘土などの無機物粉体、有機粉末、繊維状粉末などといった粉末状基材、ペースト状基材、及びこれらの混合基材などが挙げられる。
【0044】
また、本発明に係る化粧品組成物は、必要に応じて、香料、無機顔料、分散剤、防腐剤、酸化防止剤などを適当量添加することができる。
【0045】
本発明に係る化粧品組成物は、さらに必要に応じて、洗浄剤、保湿剤、柔軟化剤、収斂剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、着色剤、消臭剤、増粘剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、細胞賦活剤、血行促進剤、美白剤、皮脂抑制剤、殺菌剤、抗炎症剤、及び制汗剤などを添加することができる。
【0046】
本発明に係る化粧品組成物は、例えばファンデーションに用いる場合、多孔質ポリアミド微粒子100重量部に対して液状基材を10〜300重量部含むものであることが好ましい。液状基材としては、油性基材あるいはラッテックス(エマルジョン基材)が好ましく、揮発性あるいは不揮発性シリコーンオイル、流動パラフィン、植物油、ワックス、グリセリン、エチレングリコールなどが好ましい。また、ファンデーションに用いる場合、多孔質ポリアミド微粒子1〜10重量%及び無機充填剤1〜15重量%を含有することが好ましく、特に多孔質ポリアミド粒微子2〜9重量%及び無機充填剤1〜15重量%を含有することが好ましい。無機充填材としては、チタン、シリカ、タルク、カオリン、マイカ、珪藻土などが挙げられる。
【0047】
また、本発明に係る化粧品組成物は、ファンデーションに用いる場合、脂肪性肌を処理するための活性剤を含んでもよい。活性剤としては、例えば、β−ラクタム誘導体、シプロフロキサシン、ノルマルフロキサシン、テトラサイクリン及びその塩、エリスロマイシン及びその塩など、および植物からの抽出物などが挙げられる。
【0048】
さらに、本発明に係る化粧品組成物は、ファンデーションに用いる場合、必要に応じて脂肪酸、エマルジョン、シリコーンオイル、水溶性ポリマー、顔料、有機添加物などを含むことができる。化粧品組成物の形態としては、クリーム状、水溶液、エマルジョン、ジェル状、粉末状などが挙げられる。
【0049】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体とを用いることができ、例えば、飽和脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など、及びそれらの混合物などを挙げることができ、不飽和脂肪酸としては、パルミトール酸、ミリストオレイン酸、オレイン酸など及びそれらの混合物、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸などのポリ不飽和脂肪酸などを挙げることができる。脂肪酸の誘導体は、ヒドロキシ化、エステル化されたものを用いることができる。
【0050】
エマルジョンとしては、油中水型が好ましい。油相はシリコーンオイル、鉱物油、植物油、蜜蝋、油脂、ワックスなどの非シリコーン有機油またはそれらの混合物を用いることができる。
【0051】
シリコーンオイルには、揮発性シリコーンオイル、不揮発性シリコーンオイルなどが挙げられる。また、水溶性ポリマーには、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルカルボン酸系などがある。顔料には、酸化鉄系などの顔料が挙げられる。有機添加物には、アミノ酸、尿素などの湿潤剤、香料、色素、防腐剤などが挙げられる。油溶性媒体としては、パラフィン、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、カルナバワックス、植物油、蜜蝋、シリコーンオイル、脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0052】
本発明に係る化粧品組成物は、ファンデーションに用いる場合、肌に直接塗りつけた際に、肌の凹凸を滑らかにし、肌の欠陥やくぼみを隠すなどの効果を有し、透明感を付与する。また、上に塗る化粧材と肌との間にあって双方に密着性を示す。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、結晶化度、平均粒子径、結晶子サイズ、比表面積、平均細孔径、空孔率、粒子の反射散乱特性、球晶構造などの測定は次のように行った。
【0054】
(結晶化度)
結晶化度は、DSC(示差走査熱量計)で測定した。具体的には、流速40ml/min窒素気流中で、昇温速度10℃/min、温度範囲120〜230℃の吸熱ピークの面積から求めた結晶融解熱と、既知のポリアミドの結晶融解熱量との比(下記数1で示される式)から求めた。なお、ポリアミド6の融解熱は、R.Viewegら、kunststoffeIV polyamide、218頁、Carl Hanger Verlag、1966年の記載により、45cal/gとした。
【0055】
【数1】

【0056】
(平均粒子径)
平均粒子径および粒子径分布は、コールターカウンター(CC)を用いて、微粒子50000個の平均値として測定した。数平均粒子径は下記数2、体積平均粒子径は下記数3、粒子径分布指数(PDI)は下記数4で示される式でそれぞれ表される。
【0057】
【数2】

【0058】
【数3】

【0059】
【数4】

【0060】
(結晶子サイズ)
リガク社製回転陰極型X線回折装置RINT2500型にて、CuKα線を用い、管電圧40kV、管電流130mA、走査速度10°/min、スリット条件DS(発散スリット)/SS(散乱スリット)/RS(受光スリット)=0.5°/0.5°/0.15mmの条件下、15〜40°の走査範囲で回折パターンを得た。得られた回折パターンから、下記数5で示されるScherrerの式よりScherrer定数Kを1とした場合の結晶子サイズDを算出した。回折ピークが複数ある場合は、各ピークにおいて結晶子サイズを算出し、その平均値を結晶子サイズとした。
【0061】
【数5】

【0062】
(比表面積)
比表面積は、窒素吸着によるBET法で3点測定を行った。
【0063】
(平均細孔径・空孔率)
平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した。測定範囲は、0.0036〜14μmの範囲で平均細孔径を求めた。多孔質ポリアミド微粒子の空孔率P(porousity)は、1個の粒子中のポリアミドの体積と空間体積の割合を表す(下記数6で示される式で表わされる)。即ち、粒子内累積細孔容積(P)とすると下記数7で示される式で表される。
【0064】
【数6】

【0065】
【数7】

【0066】
細孔径に対する累積細孔容積の図から、粒子内累積細孔容積を算出し、下記数8で示される式に従って、粒子内空孔率を算出する。このとき多孔質ポリアミド微粒子の密度ρは、DSCで求めた結晶化度χと結晶密度ρc、非晶密度ρaから求めた。ここでポリアミド6の結晶密度(ρc)は1.23cm/g、非晶密度(ρa)は1.09cm/gとした。
【0067】
【数8】

【0068】
多孔質ポリアミド微粒子の多孔質度(RI)は、同一粒子径で真球状微粒子を仮定したときの比表面積値Spと多孔質微粒子の場合のBET比表面積Spの比で表すことができ、下記数9及び10で示される式で求められる。
【0069】
【数9】

【0070】
【数10】

【0071】
(粒子の反射特性の評価)
粒子の反射散乱特性の評価は、(株)カラーシステム製、変角分光側色システムカラーロボIIIを用いた。粒子を薄い接着層をもつテープ上に均一に載せ、45°方向から入射した光の反射・散乱光を−85°〜85°の受光角度で検出し、CIE色度座標におけるY成分(視感反射率)を極座標上にプロットし、−45°への鏡面反射成分の大きさとすることにより評価した。
【0072】
(粒子中の残留溶媒量)
乾燥後の粉体の残留溶媒量は、フロンティアラボ社製ダブルショットパイオライザーにて320℃で熱抽出し発生したガスを日本電子製GC−MSにて定量した。
【0073】
(球晶構造の評価)
粒子が球晶構造、あるいは一部欠損した球晶構造(C型、勾玉構造)、さらに欠損した軸晶的球晶構造(ダンベル状)を有しているかどうかの判断は、走査型もしくは透過型電子顕微鏡にて、粒子の断面を観察し、中心核近傍からポリアミドのフィブリルが放射状に成長していることで確認した。また、粒子を偏光顕微鏡にて観察した際、偏光子と検光子をクロスニコルにしても、粒子が明視野となるかどうかで確認した。
【0074】
(実施例1)
ポリアミド6(宇部興産(株)製:分子量13,000)を容器中でポリアミドの重量濃度が20重量%となるようにグリセリンと混合した後、窒素ガスを系内に導入しながら、溶液の温度を上昇させたところ、180℃でポリアミドが溶解を開始したため、この温度を相分離温度とした。さらに昇温して、200℃になるまで攪拌しながら加熱溶解して均質な溶液を得た。この溶液に80℃のグリセリンを相分離温度より40℃低い140℃±1℃になるまで攪拌しながら添加し、さらに20秒攪拌し、濃度揺らぎがないことを確認後、140℃のオイルバス中に静置した。その結果、静置してから、約15秒後に溶液が白濁し始め、容器内に塊状の析出物が一切生じることなく均一なポリアミド6の沈殿物が得られた。得られた沈殿物をメタノールで洗浄して乾燥後、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察を行ったところ、図1に示すような軸晶状(ダンベル型)の多孔質微粒子が観察された。数平均粒子径は11.5μm、体積平均粒子径は16.4μmで、PDIは1.4と比較的粒度の揃った粒子であった。断面をTEM観察したところ、中心から主に2方向にナイロンフィブリルが成長したダンベル状球晶であることが確認できた。また、比表面積は8.4m/g、平均細孔径は14.2nmであった。残留グリセリン量は2500ppmであった。得られた粒子の結晶化度をDSC測定により測定したところ、当粒子の結晶化度は51.9%、結晶子サイズは13.9nmであった。本多孔質微粒子を粘着テープ上に均一に載せた試料の光反射測定の結果を極座標にして図2に示す。本粒子では−45°角度の反射が顕著に抑えられており、0°での反射が高く、全方向に均一な円形状に近い光散乱特性を示した。
【0075】
(比較例1)
ラウロラクタム50gを流動パラフィン130mL、さらに分散助剤として、ステアリン酸ソーダ1gを添加し、温度160℃まで加熱し、ナトリウム230mg、アセチルカプロラクタムを0.98mL添加し、2時間重合した。濾過後沸騰キシレンで洗浄し、その後真空乾燥し、ポリアミド微粒子を得た。
得られたポリアミド微粒子は、数平均粒子径5.9μm、体積平均粒子径は7.8μm、PDIは1.32で、粒子表面に多孔質構造は観察されず、非多孔質の真球粒子であった。断面のTEM観察により、中心核から放射状に成長するナイロンフィブリルは観察されなかった。また、比表面積は1.1m/gであった。得られた粒子の結晶化度をDSC測定により測定したところ、結晶化度は57%であった。本粒子を粘着テープ上に均一に載せた試料の光反射測定の結果を極座標にして図2に示す。本粒子では光の−45°反射が顕著に現れており、0°での反射が低く、光散乱性の低い特性を示した。
【0076】
(比較例2)
フェノールとメタノールとを重量比で9:1の割合で含む溶液に、ポリアミド6(分子量13,000)を加えて溶解させ、ポリアミド6濃度が5重量%のポリアミド6溶液を調製した。このポリアミド6溶液に、メタノールと水とを7:0.5の混合比で混合した混合液を添加した。温度は室温で行った。24時間静置して、析出終了させた。その後、遠心分離でポリマーを単離した後、50℃のメタノールを微粒子の100倍量かけながら遠心分離脱水を行い、粒子の洗浄を行なった。得られた粒子は、多孔質構造を有していた。断面をTEM観察したところ、中心からナイロンフィブリルが成長した球晶であることが確認できた。粒子のSEM画像を図3に示す。得られた粒子をコールターカウンターで粒度分布を測定したところ、数平均粒子径10.0μm、体積平均粒子径13.8μmの比較的均一な粒子であった。また、平均細孔径56.8nm、結晶子サイズ11.2nm、PDI1.4、比表面積21.4m/g、多孔度指数RI42.1、結晶化度56%であった。得られた粒子を粘着テープ上に均一に載せた試料の光反射測定の結果を図2に示す。本粒子では0°角度の反射は実施例1と同様であるが、−45°角度方向に若干の反射が見られ、実施例1の粒子と比べると楕円形の光散乱特性を示すことから、光散乱性が劣っていた。
【0077】
(実施例2)
ポリアミド6(宇部興産(株)製:分子量13,000)を容器中でポリアミドの重量濃度が10重量%となるようにエチレングリコールと混合した後、窒素ガスを系内に導入しながら、溶液の温度を上昇させたところ、150℃でポリアミドが溶解を開始したため、この温度を相分離温度とした。さらに昇温して、180℃になるまで攪拌しながら加熱溶解して均質な溶液を得た。この溶液に40℃のエチレングリコールを相分離温度から40℃低い110℃±1℃になるまで攪拌しながら添加し、さらに20秒攪拌し、濃度揺らぎがないことを確認後、110℃のオイルバス中に静置した。その結果、静置してから、約50秒後に溶液が白濁し始め、容器内に塊状の析出物が一切生じることなく均一なポリアミド6の沈殿物が得られた。得られた沈殿物をメタノールで数回洗浄し、走査型電子顕微鏡観察および粒子径を測定した。SEM画像を図4に示す。その結果、数平均粒子径が20.1μm、体積平均粒子径が23.5μmの比較的粒子サイズが揃った多孔質略勾玉状(C型状)粒子が観察された。残留したエチレングリコール量は1000ppmであった。得られた粒子の結晶化度をDSC測定により測定したところ、当粒子の結晶化度は52.3%であった。結晶子サイズは14.3nmであった。断面をTEM観察したところ、中心からナイロンフィブリルが成長したC型状球晶であることが確認できた。また、比表面積は5.1m/g、平均細孔径は55nm、PDIは1.2であった。本粒子も実施例1同様に高い光散乱特性を示した。
【0078】
(比較例3)
実施例2のポリアミドのエチレングリコール溶液を75℃に保温したステンレスバットの上に、厚さ1.5mmの液膜で30分間保温してポリアミド6の沈殿物が得られた。得られた沈殿物をメタノールで数回洗浄し、粒子径およびSEM観察を行った。粒子は凝集したが表面には目の細かい多孔質構造が観察できた。SEM画像を図5に示す。得られた多孔質ポリアミド微粒子は数平均粒子径9.8μm、体積平均粒子径14.0μm、平均細孔径19nm、PDI1.43、結晶子サイズ12.6nm、比表面積3.0m/g、結晶化度47.5%であった。断面をTEM観察したところ、中心付近にはナイロンフィブリルの成長は観察されず、粒子表面付近に若干のナイロンフィブリルが観察されたのみであった。図2に示すとおり、−45°角度方向に反射が見られ、0°角度の反射も低下し、光散乱性が低いことが確認された。
【0079】
(実施例3)
(1)ファンデーション化粧品組成物
実施例1で得られた多孔質ポリアミド微粒子を用い、表1の成分組成A〜Gを調整し、これらを均一に混ぜ合わせてクリームファンデーションを調製した。得られたクリームファンデーションについて、表2に各項目について健康な成人女性モニター20人に対するアンケートにより、非常に良い:5点、良い:4点、普通:3点、悪い:2点、非常に悪い:1点、の5段階評価を行った評価結果の平均値を示す。本実施例に係る多孔質ポリアミド微粒子を用いる事により、肌への密着性、塗布後の触感、カバー力およびメイクのナチュラル感に特に高い評価のファンデーションが得られた。
【0080】
【表1】

【0081】
(比較例4〜6)
比較例1〜3で得られた粒子を用いて、実施例3同様に、ファンデーションを作成し、各項目について健康な成人女性モニター20人に対するアンケートにより、非常に良い:5点、良い:4点、普通:3点、悪い:2点、非常に悪い:1点、の5段階評価を行った。結果を実施例3同様に表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
(実施例4)
(2)リップクリーム
(2−1)着色粉体の製造
実施例1で得られた多孔質ポリアミド微粒子40gを赤色106号1gとベンジルアルコール5gとN−メチル−2−ピロリドン10gと水84gを混合して調製した水溶液中に浸漬して50℃に加熱した。20分後、染まった粉体をろ過、洗浄して40℃、24時間乾燥した。得られた粉体96gに対してシリコーンオイル(東レダウシリコーン(株)製SH1107C)300gに溶かした溶液に添加し、攪拌後、乾燥し、着色粉体を得た。
【0084】
(2−2)リップクリームの調製
(1)パラフィン:15.0重量%、(2)キャンデリラワックス:3.0重量%、(3)カルナウバワックス:2.0重量%、(4)メチルフェニルポリシロキサン:40.0重量%、(5)流動パラフィン:29.8重量%、(6)香料:0.2重量%、(7)酸化防止剤:適量、(8)着色粉体:10.0重量%を用い、(1)〜(7)を80〜85℃にて溶解混合した後、(8)の着色粉体を混合し、所定の容器に流し込み、冷却固化してリップクリームを得た。
【0085】
(実施例5)
(3)アイシャドウ
(1)タルク:10.0重量%、(2)カオリン:6.0重量%、(3)炭酸マグネシウム:1.0重量%、(4)ステアリン酸亜鉛:5.0重量%、(5)酸化チタン:2.0重量%、(6)酸化チタン被覆雲母:20.0重量%、(7)実施例4で調製した着色粉体:50.0重量%、(8)ソルビタンセスキオレエート:1.0重量%、(9)流動パラフィン:5.0重量%、(10)香料:少量、(11)防腐剤:少量を用意し、(1)〜(7)を均一混合し、さらに(8)〜(11)を添加混合してアイシャドウを得た。
【0086】
(実施例6)
(4)治療用化粧品
皮膚軟化剤として、実施例1で得られた多孔質ポリアミド微粒子にイソヘキサデカンを10%担持したクリームを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る多孔質ポリアミド微粒子を含む化粧品組成物を人間の肌に適用すると、その優れた光散乱性によって、皮膚表面の異常光反射(テカリ)を低減し、また反射する光を均一に散乱させることで、毛穴やしみ、しわを隠蔽し、しかもナチュラル感を演出することができる。また、多孔質構造であるために、体内から滲み出る油脂成分を効率的に吸収し、化粧品として使用している間に型崩れが発生しにくい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球晶構造からなり、広角X線解析による結晶子サイズが12nm以上、及びDSCによる結晶化度が50%以上であることを特徴とする化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子。
【請求項2】
球相当数平均粒子径が、1.0〜30μmであることを特徴とする請求項1記載の化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子。
【請求項3】
比表面積が、0.1〜80m/gであることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子。
【請求項4】
乾燥粉体としたときの残留多価アルコール量が、10000ppm未満であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子。
【請求項5】
残留多価アルコールが、エチレングリコール、1,3ブタンジオール又はグリセリンであることを特徴とする請求項4記載の化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか記載の化粧品組成物用多孔質ポリアミド微粒子及び化粧品基材を含有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項7】
多孔質ポリアミド微粒子が、ポリアミド6からなることを特徴とする請求項6記載の化粧品組成物。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211090(P2012−211090A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76281(P2011−76281)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】