説明

化粧層構造および化粧板

【課題】表面に形成した実際の凹凸以上に凹凸を強調して表現できる化粧層構造およびこの化粧層構造を用いた化粧板を提供する。
【解決手段】化粧層構造1Aは、熱硬化性樹脂3が含浸してなる少なくとも1枚のシート2を含み、表面側に凹凸41,42が熱プレス形成されてなり、前記凹凸は、鏡面光沢度がJISZ8741準拠の指標で、最大値と最小値との差が少なくとも5以上となるように、凸部分42で高く凹部分41で低く調整され、または前記凹部分41で高く前記凸部分42で低く調整されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に形成した実際の凹凸以上に凹凸が強調されて視認される化粧層構造およびこの化粧層構造を用いた化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧板には、木目調模様、石目調模様、あるいは幾何学模様が施されることがある。化粧板は、通常、基板に装飾層を積層して形成される。この場合、化粧板の表面はフラットに形成されるが、特許文献1に示すようにエンボスが付与されることもある。
【0003】
この種の化粧板では、実際の木目や石目の風合いを表現し、あるいは凹凸が際立って見える幾何学模様を表現するために、凹凸をある程度深く形成することが要求されることがある。
【特許文献1】特開平11−342553号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際にエンボスが形成された化粧板では、特許文献1に示すように高低差が小さい凹凸表現しかできず、際立った段差を有する凹凸を表現することができない。
【0005】
本発明の目的は、表面に形成した実際の凹凸以上に凹凸が強調されて視認される熱硬化性樹脂からなる化粧層構造およびこの化粧層構造を用いた化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の化粧層構造は、熱硬化性樹脂層が、該熱硬化性樹脂が含浸してなる少なくとも1枚のシートを含み、表面側に凹凸が熱プレス形成されてなるものであって、前記凹凸は、鏡面光沢度がJISZ8741準拠の指標で、最大値と最小値との差が少なくとも5以上となるように、凸部分で高く凹部分で低く調整され、または凹部分で高く凸部分で低く調整されていることを特徴とする。
鏡面光沢度の最大値は5〜100、最小値は0〜50の範囲にあり、かつ、凸部分と凹部分との高さの差は、5〜300μmの範囲に含まれるように形成することが好ましく、また鏡面光沢度が2値のみで調整されていてもよい。
また、前記少なくとも1枚のシートには、表面側から視認される印刷シートが含まれ、印刷シートの表面側には、無模様単一色の着色、あるいは、単一色または複数色からなる模様が表されていてもよい。とりわけ、凹凸は木目調に形成でき、かつ印刷シート表面側には木目模様を印刷できる。この場合には、この凹凸とこの木目模様とがあい俟って表面意匠を構成することが好ましい。さらに、熱硬化性樹脂はジアリルフタレート系樹脂であってもよい。
本発明の化粧板は、上記した化粧層構造が基板に形成されていることを特徴とするもので、表面に形成した実際の凹凸以上に凹凸を強調して表現できる化粧板が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面に形成した実際の凹凸以上に凹凸を強調して表現できる化粧層構造およびこの化粧層構造を用いた化粧板を提供することができる。
たとえば、化粧層構造表面に木目の意匠を形成する場合、凹凸に特定の光沢度差を付し、しかも凹凸の繰り返しパターンと、印刷シートに印刷された木目模様のパターンとを不一致とすることにより、本物に近い木目が表現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
木目調の凹凸は一定の方向に向くほぼ平行な凹凸条である(凹凸条のうち一部は分岐しているものが含まれていてもよい)。木目調の凹凸をそのまま木目模様に反映させることもできるが、当該凹凸と当該木目模様とを一致させないようにすることで、より本物の木目感覚を惹き出すことができる。
本発明では、凹部分と凸部分とに鏡面光沢度の差を付けることにより、鏡面光沢度が高い部分(光沢部)と鏡面光沢度が低い部分(つや消し部)との段差が強調される。
【0009】
本発明において、熱硬化性樹脂が含浸されるシートは、不織布様、織布様あるいは編布様のものであってよく、典型的には紙であり、たとえばクラフト紙、チタン紙(酸化チタン含有紙)などが使用できる。
シートを複数枚とすることで化粧層構造に厚みを持たせることができる。
本発明の化粧層構造の製造に際しては、これらのシートとして、熱硬化性樹脂を含浸しているものを使用するが、複数枚のうち一部は、熱硬化性樹脂を含浸していないものであってもよい。
【0010】
通常、熱硬化性樹脂を用いた化粧層構造では、凸部分と凹部分との高さの差は5〜30μm程度である。本発明の化粧層構造は、この程度の高さの差を有する化粧層構造をも当然に含むが、本発明では、例えば、シートを複数枚とすることや、熱硬化性樹脂を大量に含浸できるシートを使用すること、あるいは熱硬化性樹脂を特定する(例えば、ジアリルフタレート系樹脂を使用する)ことなどで、前記凸部分と前記凹部分との高さの差をさらに300μm程度までとすることができる。
【0011】
なお、凸部分と凹部分との高さの差Hが300μmを越えると、ひび割れや欠けが生じ易くなるおそれがある。
また、凸部分と凹部分との高さの差が5μm未満だと、鏡面光沢度が高い部分(光沢部)と鏡面光沢度が低い部分(つや消し部)との段差の強調効果が低下する傾向が強くなる。すなわち、本発明では、凸部分と凹部分とが丸みを帯びた状態で形成することもできるし、ステップ状に高さ変化するように形成することもできる。
本発明において、好ましい凸部分と凹部分との高低差は、10〜200μm、より好ましくは、50〜150μmである。
【0012】
上記凸部分が第1の鏡面光沢度(高い鏡面光沢度)を持ち、凹部分が第2の鏡面光沢度(低い鏡面光沢度)を持つか、逆に凹部分が第1の鏡面光沢度(高い鏡面光沢度)を持ち、凸部分が第2の鏡面光沢度(低い鏡面光沢度)を持つように調整でき、このような光沢度差と、上記のステップ状あるいは丸みを帯びた状態で高さ変化する凹・凸との相乗作用により、5〜30μm程度の高さの差であっても、高低差の大きい段差として観者を錯覚させることができる。
【0013】
なお、本発明では、鏡面光沢度は、最も凸となる部分から最も凹となる部分にわたって連続的に変化(鏡面光沢度が高い側から低い側に変化)するように調整されていてもよい。
さらに、ステップが3段以上の場合には、最も凸となる部分が第1の鏡面光沢度(高鏡面光沢度)を持ち、最も凹となる部分が第2の鏡面光沢度(低鏡面光沢度)を持ち、最も凸となる部分と最も凹となる部分との中間に位置する部分で第3の鏡面光沢度(中鏡面光沢度)を持つように調整してもよい。
【0014】
本発明では、印刷シートは視認(表面側から視認)されることを目的として形成されている。印刷シートの上にオーバレイシートが存在している場合、オーバレイシートは、熱プレスにより透明または半透明(以下、半透明を含めて「透明」と言う)となるような材料を使用できる。もちろん、オーバレイシートとして、熱プレスにより透明とはならないものを使用することもできる。この場合には、印刷シートの機能はオーバレイシートが果たす。
なお、印刷シートの裏面側を隠蔽させるために、印刷シートにチタン紙を用いてもよいし、あるいは印刷シートの裏面側にチタン紙を配置してもよい。
【0015】
本発明の化粧層構造では、前述したように、凹凸が木目調に形成され、かつ印刷シートに木目模様が表現され、この木目調の凹凸と印刷シートの木目模様とがあいまって表面意匠を構成することができる。
ここで、木目調の凹凸が一定の方向に向くほぼ平行な凹凸条であり(凹凸条のうち一部は分岐しているものが含まれていてもよい)、この木目調凹凸をそのまま前記木目模様に反映させることもできるが、当該木目調凹凸と当該木目模様とを一致させないようにすることで、より本物の木目感覚を惹きだすことができる。
【0016】
また、本発明において、熱硬化性樹脂としては、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを使用することができ、ジアリルフタレート系樹脂を使用する場合には、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマーなどが好ましい。
これらの熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で、あるいはこれらの適宜の組合せによる2種以上を併用することができる。
ジアリルフタレート系樹脂を使用した場合は、人体や環境に有害である揮発性成分(ホルムアルデヒドやトルエンなど)が含まなれておらず、上記の凸部分と凹部分との高さの差を大きくできる効果との相乗で、室内用の化粧層構造として、極めて効果的である。
【0017】
しかも、本発明の化粧層構造において、硬度の調整が要求されるときには、上記樹脂、あるいは配合する成分などを適宜選択することにより、所望の硬度を得ることもできる。
なお、本発明の化粧板では、化粧層構造が形成される基板として、合板や繊維板を使用することができる。合板や繊維板の裏面には、接着剤で紙を貼ることで施工の便宜に供することができたり、防湿等のフィルムを貼ったり樹脂含浸紙をプレスすることで反りを防止することができるなどの、機能処理を施すこともできる。
【0018】
上記構成を有する本発明の化粧板は、硬度が高く耐傷性に優れ、熱硬化性樹脂が表面を構成することから耐熱性にも優れ、したがって、建材、特に室内装飾などの用途に好適である。
【実施例】
【0019】
図1〜図3により本発明の化粧層構造の実施形態を説明する。
図1は本発明の化粧層構造1Aが基板6に形成されている化粧板5を示しており、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A断面図である。
【0020】
化粧層構造1Aは、図1(B)示すように、熱硬化性樹脂3を含浸してなる1枚のシート2を含み、表面側に木目調の凹凸(凹部分41,凸部分42)が熱プレス形成されている。木目調の凹凸は一定の方向に向いたほぼ平行な凹凸条であり、図1(A),図2(A)に示すように、凹凸条のうち一部は分岐43しているものが含まれていてもよい。
【0021】
図示はされないが、本実施形態では、鏡面光沢度は凸部分42では高く、凹部分41では低くなるような、2値で調整されている。具体的には、JISZ8741準拠の指標で、凹部分41の鏡面光沢度は約10、凸部分42の鏡面光沢度は約80であり、鏡面光沢度差は約70に調整されている。
図2(A)に鏡面光沢度が高い領域(凸部分42)を白地で、鏡面光沢度が低い領域(凹部分41)をハッチングで示す。
本実施形態では、凹部分41と凸部分42とがステップ状に高さ変化するように形成されており、凸部分42と凹部分41との高さの差Hが100μmとなるように形成されている(図1(B)参照)。
【0022】
本実施形態では熱硬化性樹脂3としてジアリルフタレート系樹脂を使用しており、このジアリルフタレート系樹脂を使用することで凹部分41と凸部分42との高さの差Hを30μm以上(ここでの例では100μm)とすることができる。
【0023】
シート2はチタン紙からなり、その表面には図2(B)に示すような木目印刷が形成されている。
図2(B)では、説明の便宜上グレー諧調で表現してあるが、モノクロやグレーのほか、単色カラーまたは多色カラーで表現することができる。
【0024】
上記の熱硬化性樹脂3を含浸したシート2は、熱プレスにより該樹脂3が基板6に浸透して、化粧層構造1Aと基板6とを一体化する役割を果たすばかりでなく、凹部分41と凸部分42との高さの差を30μm以上とする役割をも果たす。
【0025】
本実施形態では、光沢度差を備えた凹凸と印刷模様とがあいまって、表面に形成した実際の凹凸以上に強調された凹凸が表現でき、装飾性の高い表面意匠が構成される。図2(C)は、図2(A)の凹凸パターンと図2(B)の木目印刷とを重畳させた図である。なお、図2(A)では光沢度差は表現されていない。
木目調の凹凸と木目調の模様とは同じような縞状にして一致させることもできるが、本発明では、木目調の凹凸と模様とを異なる縞状にして、しかも一致させないようにすることで、より本物の木目感覚を惹き出している。
【0026】
図3(A),(B)は、図1に示した化粧層構造1Aとは異なる本発明の化粧層構造が基板6に形成されている化粧板5の例を示す説明図である。
図3(A)では、化粧層構造1Bは、熱硬化性樹脂3が含浸してなる2枚のシート2a,2bを含んでいる。
【0027】
化粧層構造1Bは、図1(B)の化粧層構造1Aと同様に、表面側に木目調の凹凸(凹部分41,凸部分42)が熱プレスにより形成されており、シート2aが印刷シートである。
シート2bは、熱プレスにより樹脂3が基板6に浸透し、化粧層構造1Bと基板6とを一体化する役割を果たすばかりでなく、凹部分と凸部分との高さの差を化粧層構造1Aよりも大きくできる役割をも果たす。
【0028】
図3(B)では、化粧層構造1Cは、熱硬化性樹脂3が含浸してなる3枚のシート2a,2bおよび2cを含んでいる。シーと2aと2bは化粧層構造1Bの2aと2bと同様の役割を果たし、2cは、いわゆるオーバレイシートであり、熱プレス前は不透明であるが熱プレスにより樹脂が浸透して透明になる。
化粧層構造1Cでは、これら3枚のシート2a,2b,2cを使用することで、凹部分と凸部分との高さの差を、化粧層構造1Bよりも大きくすることができる。
【0029】
なお、本発明の化粧板は、化粧層構造の表面意匠を、上述した木目調の他、石目調や幾何学模様とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の化粧層構造が基板に形成されている化粧板の一実施態様例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるA−A断面図である。
【図2】図1の化粧板の表面意匠を説明するための図であり、(A)は表面に形成された凹凸の鏡面光沢度が高い領域と鏡面光沢度が低い領域とを区別して示す説明図、(B)は表面に印刷された模様の説明図、(C)は(A)と(B)を重畳させた説明図である。
【図3】図1に示した化粧層構造とは異なる本発明の化粧層構造が基板に形成されている化粧板の例の実施態様例を示す説明図であり、(A)は熱硬化性樹脂層の間に2枚のシートがある場合の説明図、(B)は熱硬化性樹脂層の間に3枚のシートがある場合の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1A,1B,1C 化粧層構造

,2a,2b,2c シート
3 熱硬化性樹脂
41 凹部分
42 凸部分
43 分岐部
5 化粧板
6 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂層が、該熱硬化性樹脂が含浸してなる少なくとも1枚のシートを含み、表面側に凹凸が熱プレス形成されてなる化粧層構造であって、
前記凹凸は、
鏡面光沢度がJISZ8741準拠の指標で、最大値と最小値との差が少なくとも5以上となるように、凸部分で高く凹部分で低く調整され、または凹部分で高く凸部分で低く調整されている、
ことを特徴とする化粧層構造。
【請求項2】
前記鏡面光沢度の最大値が5〜100、最小値が0〜50の範囲にあり、かつ、
凹部分と凸部分との高さの差が5〜300μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の化粧層構造。
【請求項3】
前記鏡面光沢度が2値のみで調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧層構造。
【請求項4】
前記少なくとも1枚のシートには、表面側から視認される印刷シートが含まれ、前記印刷シートの表面側には、無模様単一色の着色、あるいは、単一色または複数色からなる模様が表されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の化粧層構造。
【請求項5】
前記凹凸が木目調に形成され、かつ前記印刷シートの表面側に木目模様が印刷され、前記凹凸と前記木目模様とがあいまって表面意匠を構成することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の化粧層構造。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂がジアリルフタレート系樹脂であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の化粧層構造。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の化粧層構造が基板に形成されていることを特徴とする化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−110495(P2008−110495A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293339(P2006−293339)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(500497722)株式会社豊中産業 (3)
【Fターム(参考)】