説明

化粧床材

【課題】樹脂の使用量を増やすことなく、脚部の基礎床面への接触面積を上げることができる化粧床材を提供することを目的としている。
【解決手段】ベース部と、このベース部の上方に一体に設けられた化粧部と、前記ベース部下面から下方に突出し、基礎床面に受けられて前記ベース部下面と基礎床面との間に空間を形成する複数の脚部とを備え、少なくともベース部及び脚部が樹脂で形成された化粧床材であって、脚部2が、少なくとも本体部(ベース部)1上面側が開口し、基礎床面F側が閉塞された樹脂量軽減用の中空穴21を備えているとともに、基礎床面Fに受けられる脚部下面22が中空穴21の横断面積より大きい平坦面になっていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ床や屋上床などに置敷される化粧床材に関する。
【背景技術】
【0002】
ベランダや屋上などのコンクリートがむき出しあるいは防水シート(シート保護層を含む)が露出したような意匠性の乏しい床面(以下、「基礎床面」と記す)上には、樹脂製で芝生状の意匠が施された化粧床材や、タイル等の表面化粧材を樹脂ベース材上に接着一体化した化粧床材を並べて置敷することによって、基礎床面を覆い隠して意匠性を高めるようにされる場合がある。
【0003】
上記のような化粧床材は、図6に示すように、ベース部100の下面から間隔を空けて複数の脚部110が突設されている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、化粧床材は、化粧床材上に降った雨水等が化粧床材と化粧床材との目地あるいは化粧床材の表面化粧材と表面化粧材との目地を通り、基礎床面F上に流れ込んだとき、基礎床面F上を基礎床面Fの一部に設けられた排水口からスムーズに排水されるように、脚部110が化粧床材本体部と基礎床面Fとの間に排水空間を設けるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2783127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、脚部110は、使用樹脂量を低減してコストダウンを図るために、図7に示すように、基礎床面F側が開口した中空穴111形状とすることが一般的である。
しかし、上記のような中空穴形状の脚部110の場合、脚部110と基礎床面Fとの接触面積が少ないため、人の歩行などで化粧床材に上から荷重がかかると、脚部110部分で基礎床面Fに局所的に荷重がかかる。
【0006】
そして、防水シートが露出したような表面が柔らかい基礎床面Fの場合、上記のように局所的に大きな荷重がかかると、基礎床面F表面が破壊されて、防水性が損なわれ、階下への漏水を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、樹脂の使用量を増やすことなく、脚部の基礎床面への接触面積を上げることができる化粧床材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる化粧床材は、ベース部と、このベース部の上方に一体に設けられた化粧部と、前記ベース部下面から下方に突出し、基礎床面に受けられて前記ベース部下面と基礎床面との間に空間を形成する複数の脚部とを備え、少なくともベース部及び脚部が樹脂で形成された化粧床材であって、前記脚部が、少なくともベース部上面側が開口し、前記基礎床面側が閉塞された樹脂量軽減用の中空穴を備えているとともに、前記基礎床面に受けられる脚部下面が前記中空穴の横断面積より大きい平坦面になっていることを特徴としている。
【0009】
本発明の化粧床材は、ベース部と脚部とが一体に射出成形されていて、化粧部がベース部の上面に接着固定された1枚または複数枚の表面化粧材で形成されている構成が好ましい。
【0010】
また、本発明の化粧床材は、特に限定されないが、例えば、脚部下面の周縁部が下側に凸の曲面形状に面取りされているようにしても構わない。
すなわち、上記のように、面取り部が設けられていれば、脚部下面のコーナー部で基礎床面Fに極端な荷重がかかることがなく、基礎床面が脚部からかかる荷重によって破損する事故をより防止することができる。
なお、上記下側に凸の曲面形状とは、特に限定されないが、断面円弧状あるいは楕円弧状が挙げられる。
【0011】
さらに、本発明の化粧床材は、特に限定されないが、ベース部が、平面視矩形をしていて、ベース部の矩形の隣接する2辺に沿って雄型嵌合部が間隔を隔てて複数設けられ、他の2辺の前記雄型嵌合部と対称位置に雌型嵌合部が設けられている構成とすることが好ましい。
すなわち、雄型嵌合部を雌型嵌合部に嵌合させることによって化粧床材同士をズレ動かないように容易に連結できる。
【0012】
本発明の化粧床材の樹脂部分の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂等などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0013】
また、上記熱可塑性樹脂には、必要に応じて熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤等を添加してもよい。
【0014】
上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メ
ルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー
、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブ
チル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三
塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム− 亜鉛系安定剤、バリウム− 亜鉛系安定剤、バリウム− カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記の安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化ア
マニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エス
テル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記の滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。上記の内部滑剤は、成形加
工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記の内部滑
剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステア
リルステアレート、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビ
スアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記の外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用さ
れる。上記の外部滑剤としては特に限定されず、例えば、モンタン酸系ワックス、パラフィン系ワックス、ポリオレフイン系ワックス、エステル系ワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子10万〜200万のア
ルキルアクリレート/ アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記の酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記の光安定剤として
は特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、べンゾフェノン系、べンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定
剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記表面化粧材としては、特に限定されないが、磁器タイル等の無機系焼成体、木材、合成樹脂、金属、天然石や、これらの複合材料が挙げられる。
また、上記表面化粧材の樹脂ベース部材への固定方法は、特に限定されないが、接着、融着、ビス固定方法や、樹脂ベース部材及び表面化粧材のいずれか一方に嵌合突部を設け、他方に嵌合凹部を設けて嵌合によって固定する方法も採用することができる。
【0021】
表面化粧材の固定に用いられる接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ホットメルト型接着剤、熱硬化性樹脂接着剤、パテ、セメント、シリコーン樹脂系充填材などが挙げられ、屋外で使用するので耐候性の高いものがより好ましい。
【0022】
上記ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなるホットメルト型接着剤が好ましい。
そして、ホットメルト型接着剤の場合、予め、ぺレット状や粉末状の接着材料を加熱溶融してから接着部分に滴下充填してもよいが、樹脂ベース部材または表面材にぺレット状や粉末状の接着材料を配設しておき、この接着材料をハロゲンランプで集中加熱するかもしくは高周波ウエルダーで加熱してもよい。
【0023】
上記熱硬化性樹脂接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系のものが挙げられ、難流動性の粘度に調整されたものを接着部分に滴下充填するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる化粧床材は、ベース部と、このベース部の上方に一体に設けられた化粧部と、前記ベース部下面から下方に突出し、基礎床面に受けられて前記ベース部下面と基礎床面との間に空間を形成する複数の脚部とを備え、少なくともベース部及び脚部が樹脂で形成された化粧床材であって、前記脚部が、少なくともベース部上面側が開口し、前記基礎床面側が閉塞された樹脂量軽減用の中空穴を備えているとともに、前記基礎床面に受けられる脚部下面が前記中空穴の横断面積より大きい平坦面になっているので、樹脂の使用量を増やすことなく、脚部の基礎床面への接触面積を上げることができる。
したがって、防水シートが露出したような表面が柔らかい基礎床面であっても、人が歩行したときの荷重によって基礎床面が破損して、ベランダや屋上に降った雨水が階下に漏水するという事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる化粧床材の1つの実施の形態をあらわしている。
【図2】図1の化粧床材の樹脂ベース部材の平面図である。
【図3】図1の化粧床材の樹脂ベース部材の底面図である。
【図4】図1のX部拡大図である。
【図5】図1の化粧床材の脚部の断面図である。
【図6】従来の化粧床材の脚部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる化粧床材の1つの実施の形態をあわわしている。
【0027】
図1に示すように、この化粧床材Aは、樹脂ベース部材Bと、表面化粧材としての4枚の磁器タイルTと、から構成されている。
樹脂ベース部材Bは、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA樹脂、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を射出成形することによって得られ、図2あるいは図3に示すように、ベース部となる本体部1と、20本の脚部2と、12個の雄型嵌合部4と、12個の雌型嵌合部3とを備えている。
【0028】
本体部1は、図2及び図3に示すように、外形が平面視略正方形をしていて、上面が平坦になっている。
本体部1は、磁器タイルTと磁器タイルTとの目地部分に臨む位置に、十字状に水抜き孔11が穿設されている。
水抜き孔11は、磁器タイルTと磁器タイルTとの目地を介して入り込んだ雨水等を基礎床面F側にスムーズに流れ落ちるようにするとともに、本体部1の目地部分に可撓性を持たせて雄型嵌合部4と、雌型嵌合部3との嵌合作業を容易にする働きを備えている。
【0029】
本体部1の下面側には、図3に示すように、磁器タイルTの固定位置の下面側に円筒状をした接着剤溜め部5が突設されている。
接着剤溜め部5は、各磁器タイルTの4隅を臨む位置にそれぞれ設けられていて、上下に貫通するとともに、本体部1の上面側に十字状をした接着剤の抜け止め部6を備えている。
【0030】
脚部2は、図2〜図5に示すように、本体部1の下面から下方に向かって突設されている。
そして、脚部2は、本体部1の上面側から下方に向かって底21aによって下端が閉鎖された中空穴21が穿設されていて、その下面22が平坦になっている。また、下面22全体が、図5に示すように、基礎床面Fに受けられるようになっている。
【0031】
雄型嵌合部4は、本体部1の正方形の2辺に沿って下面側に突設するように各辺に6個ずつ等ピッチで設けられている。
雌型嵌合部3は、本体部1の正方形の残りの2辺に沿って本体部1の側面から突出するように、雄型嵌合部4と対称位置に設けられ、雄型嵌合部4が上方から嵌合することによって、同型の化粧床材Aと連結できるようになっている。
【0032】
そして、この化粧床材Aは、例えば、以下のようにして製造することができる。
(1)樹脂ベース部材Bを射出成形する。なお、脚部2の中空穴21は、金型の樹脂ベース部材の上面側のキャビティ面から、ピンを突出させることによって形成される。
(2)4枚の磁器タイルTの表面側を下にして間隔保持型(図示せず)上に並べ、4枚の磁器タイルTの固定間隔に保持した状態で、樹脂ベース部材Bの本体部1の上面側を下側に向けて、4枚の磁器タイルTの下面に樹脂ベース部材Bの本体部1の上面を受けさせる。
(3)接着剤溜め部5に磁器タイルTとの接着性に優れたエポキシ系樹脂接着剤(図示せず)を充填したのち、接着剤を養生硬化させる。
【0033】
この化粧床材Aは、上記のように、脚部2が樹脂量軽減のための中空穴21を備え、この中空穴の下端が閉鎖されて、脚部下面が中空穴の横断面積より大きい平面になっている。すなわち、基礎床面Fに受けられる面積が大きく確保されているので、防水シートが露出したような表面が柔らかい基礎床面であっても、人が歩行したときの荷重によって基礎床面が破損して、ベランダや屋上に降った雨水が階下に漏水するという事故を防止することができる。
また、脚部2の中空穴21は、金型の樹脂ベース部材Bの上面側のキャビティ面から、ピンを突出させることによって形成されるので、樹脂ベース部材Bを効率よく成形することができる。
【0034】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、樹脂ベース部材及び表面化粧材が平面視正方形であったが、長方形でも構わない。
上記の実施の形態では、ベース部と脚部とが一体に射出成形された樹脂ベース部材の上面に表面化粧材を接着固定するようにしていたが、化粧部とベース部と脚部とが一体に射出成形されている構成でも構わない。このように化粧部とベース部と脚部とを一体に射出成形する構成においては、脚部の中空穴形成用ピンの跡が化粧床材の表面側に残るが、跡を表面柄の一部となるように配置すれば意匠性に問題がなくなる。
【符号の説明】
【0035】
A 化粧床材
B 樹脂ベース部材
F 基礎床面
T 磁器タイル(表面化粧材)
1 本体部(ベース部)
11 水抜き孔
2 脚部
21 中空穴
21a 底
22 下面(脚部下面)
3 雌型嵌合部
4 雄型嵌合部
5 接着剤溜め部
6 抜け止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、このベース部の上方に一体に設けられた化粧部と、前記ベース部下面から下方に突出し、基礎床面に受けられて前記ベース部下面と基礎床面との間に空間を形成する複数の脚部とを備え、少なくともベース部及び脚部が樹脂で形成された化粧床材であって、
前記脚部が、少なくともベース部上面側が開口し、前記基礎床面側が閉塞された樹脂量軽減用の中空穴を備えているとともに、前記基礎床面に受けられる脚部下面が前記中空穴の横断面積より大きい平坦面になっていることを特徴とする化粧床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172304(P2012−172304A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31914(P2011−31914)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】