説明

化粧料の製造方法

【課題】乳化滴の安定性が高く、その合一が効果的に防止され、かつ均一であり、また粉末成分の凝集に起因する色調の変化が起こりにくい乳化化粧料を製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて油性流動体となし、該油性流動体と水性成分を含む流動体とを混合させて乳化物となし、該乳化物を冷却する工程を有する。油性流動体を、振動式攪拌混合装置内を通過させつつ、油性流動体の温度が油性成分の固化開始温度以上で、水性成分を含む流動体を振動式攪拌混合装置内に連続的に供給し、混合させて乳化物となすとともに、振動式攪拌混合装置内で乳化物を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックス等の油性成分及び水性成分を含む乳化物からなる化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化化粧料の製造に関し、本出願人は先に、加熱溶融した油性成分に、水性成分を添加して乳化した後、プロペラで撹拌しながら冷却後、ホモミキサーを用いて撹拌する技術を提案した(特許文献1参照)。この方法によれば、乳化化粧料中に含まれるワックス等の油性成分の配合量を高めることができるので、化粧持続性が向上するという利点がある。しかし、乳化を一層均一に行うことで、化粧料の外観色、使用感及び保存安定性等を更に高めたいとの要求がある。
【0003】
この技術とは別に、乳化分散したエマルジョンの製造に使用する振動式攪拌混合装置に関する技術が知られている(特許文献2参照)。この振動式攪拌混合装置は、ケーシングの内側に熱交換パイプを備えており、該ケーシング内にエマルジョンを通過させることで、エマルジョンを均一に冷却することができると、同文献には記載されている。しかし同文献には、一般的なエマルジョンに関する記載しかなく、乳化化粧料の具体的な製造方法については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176825号公報
【特許文献2】特開2002−139296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術よりも各種の性能が一層向上した乳化化粧料を製造し得る方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて油性流動体となし、該油性流動体と水性成分又は水性成分を含む流動体とを混合させて乳化物となし、該乳化物を冷却する工程を有する化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、
前記油性流動体を、前記振動式攪拌混合装置内を通過させつつ、前記油性流動体の温度が前記油性成分の固化開始温度以上で、前記水性成分又は水性成分を含む流動体を該振動式攪拌混合装置内に連続的に供給し、混合させて乳化物となすとともに、該振動式攪拌混合装置内で該乳化物を冷却する化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳化滴の安定性が高く、その合一が効果的に防止され、かつ均一であり、また着色成分の凝集に起因する色調の変化が起こりにくい乳化化粧料を得ることができる。また、化粧の仕上がりが良好で、また使用感の良好な乳化化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法を実施する好適な装置を示す概略図である。
【図2】図1に示す振動式攪拌混合装置の縦断面の模式図である。
【図3】図1に示す振動式攪拌混合装置における攪拌体の要部拡大図である。
【図4】本発明の製造方法を実施する別の好適な装置を示す概略図である。
【図5】実施例1−1で得られた乳化化粧料の顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の方法に好適に用いられる装置の概略図が示されている。図1に示す装置10は、水性成分又は水性成分を含む流動体の加熱混合部15、油性成分の加熱混合部20及び冷却部30に大別される。水性成分又は水性成分を含む流動体の加熱混合部15には、目的とする化粧料の配合原料のうち、水を初めとする第2の配合原料が充填され、該配合原料を加熱混合して水性成分又は水性成分を含む流動体となすために用いられるものである。油性成分の加熱混合部20には、目的とする化粧料の配合原料のうち、油性成分を初めとする第1の配合原料が充填され、該配合原料を加熱下に混合して流動体となすために用いられるものである。冷却部30は、油性成分と、水性成分又は水性成分を含む流動体とを混合して乳化し、この乳化によって得られた乳化物を冷却し、目的とする化粧料を得るために用いられるものである。
【0010】
水性成分又は水性成分を含む流動体の加熱混合部15は、混合装置16及び定量ポンプ17を備えている。混合装置16は、これに充填される第2の配合原料を混合攪拌させるための攪拌翼等の攪拌手段(図示せず)を備えている。また混合装置16は、これに充填される水性成分又は水性成分を含む流動体を所定の温度にまで加熱するための加熱手段(図示せず)を備えている。混合装置16の底部には、該装置16によって混合攪拌されて得られた、水性成分又は水性成分を含む流動体を取り出すための管18が接続されている。管18は、モーノポンプ等からなる定量ポンプ17に接続されている。定量ポンプ17は、管19を通じて水性成分又は水性成分を含む流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。
【0011】
油性成分の加熱混合部20は混合タンク21を備えている。混合タンク21は、ジャケット22によって加熱又は冷却され、所定温度に調整される。混合タンク21内には攪拌翼23が設置されている。攪拌翼23は、シャフト24を介して混合タンク21外に設置されたモータ25に接続されており、回転可能になっている。混合タンク21の底部には、該タンク21内で加熱混合されて得られた流動体を取り出すための管26が接続されている。管26は弁27を介して定量ポンプ28に接続されている。定量ポンプ28は、管29を通じて流動体を冷却部30に定量供給するために用いられる。定量ポンプ28としては、水性成分又は水性成分を含む流動体の混合部15に備えられたポンプ17と同様のものが用いられる。
【0012】
冷却部30は、振動式攪拌混合装置40を備えている。振動式攪拌混合装置40は、略筒状の構造を有し、その一端側に、管29に接続された第1流入口31A及び管19に接続された第2流入口31Bを有し、他端側に吐出口32を有している。吐出口32は吐出用管33に接続されている。第2流入口31Bは、第1流入口31Aよりも下流側(図1中、上側)に位置している。油性成分の加熱混合部20で得られた流動体は、第1流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。ここで言う「連続供給」とは、工程全体として連続的あればよく、完全に連続的であることを要しない。したがって、一定期間又は不定期に断続的に供給を行う場合や、間欠的に供給を行う場合も、本明細書で言う「連続供給」に包含される。一方、水性成分又は水性成分を含む流動体の混合部15で得られた水性成分は、第2流入口31Bを通じて振動式攪拌混合装置40内に連続供給される。油性成分の流動体及び水性成分又は水性成分を含む流動体は、振動式攪拌混合装置40内で混合・乳化されて乳化物となり、この乳化物は該装置40内を通過し、吐出口32を通じて吐出用管33の端部から吐出される。
【0013】
振動式攪拌混合装置40内で生成した乳化物は、該装置40内を移動する間に好適には連続的に冷却される。乳化物の連続的な冷却を行うために、振動式攪拌混合装置40には、流入口31A側から吐出口32側に向けて4つのジャケット34,35,36,37がこの順で取り付けられている。各ジャケットにはそれぞれ冷却水が循環するようになっている。冷却水の温度は、適宣設定することが可能であり、これらのジャケットによって、乳化物を流入口31A側から吐出口32側に向けて連続的に冷却させることができる。なお、乳化物の冷却は連続的であることを要せず、乳化物が振動式攪拌混合装置40を通過する間に最終的に冷却されれば、冷却の過程は問われない。したがって、振動式攪拌混合装置40内を乳化物が通過する間に、途中、一定温度の状態や加熱状態があっても差し支えない。また、冷却が段階的であっても差し支えない。尤も、振動式攪拌混合装置40による乳化物の冷却は、該乳化物の安定性の観点から連続的に行われることが好ましい。そのための一手法として、独立に制御できる冷却装置を振動式攪拌混合装置40に取り付け、該冷却装置を複数組み合わせることも好ましい。
【0014】
図2には、振動式攪拌混合装置40の縦断面の模式図が示されている。装置40は、管状のケーシング41内に、駆動軸42と、該駆動軸42に取り付けられた攪拌羽根43とからなる攪拌体44を備えている。駆動軸42は、バイブレータ45aによって軸方向に沿って上下振動するようになされている。
【0015】
ケーシング41は、その横断面が円形である管状のものであり、その下部付近に第1流入口31Aが設けられている。第1流入口31Aよりも下流側(図2中、上側)には第2流入口31Bが設けられている。ケーシング41の上部付近には吐出口32が設けられている。第1流入口31Aから流入した油性成分の流動体及び第2流入口31Bから流入した水性成分はケーシング41内で混合・乳化され、それによって生成した乳化物は該ケーシング41内を通り、吐出口32から吐出される。
【0016】
ケーシング41内には、上述の攪拌体44が配されている。攪拌体44の駆動軸42は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に延びている。駆動軸42の上端は、ジョイント45bを介してバイブレータ45aに接続されている。バイブレータ45aは、モータ(図示せず)とその出力軸に接続された公知のカム機構(図示せず)を備えている。カム機構は、回転部(図示せず)と揺動部(図示せず)からなる。回転部は、モータの出力軸に対して偏心して取り付けられている。揺動部は、回転部の偏心回転によって揺動するようになっている。そして、揺動部の揺動が駆動軸42に上下振動として伝達される。
【0017】
ケーシング41の内壁には、円環状の仕切部46が複数設けられている。仕切部46はいずれも同形であり、ケーシング41の内壁から水平方向へ突出している。仕切部46の中央に形成された円孔には、駆動軸42が挿入される。この円孔の直径は、駆動軸42の直径よりも大きくなっている。隣り合う2つの仕切部によってケーシング41の内部は複数の混合室47が画成される。混合室47は、ケーシング41の長手方向(縦方向)に沿って直列配置される。
【0018】
図3(a)及び(b)には、攪拌体44の要部拡大図が示されている。攪拌体44は、駆動軸42とその周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根43とを備えている。同図においては、攪拌羽根43は3周の螺旋状に取り付けられている。この状態の攪拌体44を一組として、ケーシング内には、各混合室47内に攪拌体44が配されている。したがって攪拌体44の組数は、混合室47の数と同じになっている。それぞれの組の攪拌体44において、攪拌羽根43の螺旋の方向は同じになっている。
【0019】
それぞれの組の攪拌体44における攪拌羽根43には1個以上の開孔48及び/又は1個以上の切り欠き49が設けられている。開孔48及び切り欠き49は、攪拌体44を駆動軸42の軸心方向からみたときに(図3(a)参照)、上下で隣り合う攪拌羽根どうしで形成位置が一致しないように設けられている。この理由は、軸方向での短絡流の発生を防止して、攪拌混合効果を高めるためである。
【0020】
以上のとおりの構成を有する振動式攪拌混合装置40としては、例えば特開平4−235729号公報に記載のもの等を用いることができる。また振動式攪拌混合装置40として、例えば冷化工業(株)製のバイブロミキサー(登録商標)が挙げられる。
【0021】
以上の構成を有する装置10を用いた化粧料の製造方法について説明すると、25℃において固体の油性成分(以下、この油性成分を「固体脂」ともいう。)を1種以上含む第1の配合原料が、混合タンク21内に充填される。第1の配合原料は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切なものが用いられる。例えば第1の配合原料としては、25℃において固体の油性成分のほかに、25℃において液体の油性成分や、顔料及び光輝性粉体などの粉体成分などが用いられる。しかし、第1の配合原料中には水性成分は含まれていない。第1の配合原料の充填が完了したら、混合タンク21を加熱して第1の配合原料中に含まれている固体脂を溶融状態にする。加熱温度は、固体脂の融点に応じて適宜設定することができる。一般的には最も融点の高い固体脂の融点よりも10℃程度高めに設定することが好ましい。加熱によって固体脂が融解し、第1の配合原料全体が溶融して油性流動体となる。この状態下に攪拌翼23を回転させることで混合タンク21内を攪拌し、第1の配合原料を十分に均一混合分散させる。
【0022】
別法として、第1の配合原料のうち、主として油性成分を予めホモミキサーやディスパーなどの予備分散手段(図示せず)を用いて予備分散させた後、これによって得られた予備分散物を混合タンク21に内に充填するとともに、第1の配合原料のうちの残部(例えば粉体成分)を該タンク21に充填し、両者を該タンク21内で加熱混合して油性流動体を得てもよい。
【0023】
一方、水性成分又は水性成分を含む流動体の加熱混合部15における混合装置16内に、水性成分を含む第2の配合原料が充填され、均一混合される。第2の配合原料は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切なものが用いられる。例えば第2の配合原料には、水のほかに、水溶性有機溶剤、水溶性無機金属塩、水溶性高分子などが配合される。水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の一価及び多価アルコールが用いられる。水溶性無機金属塩としては例えば硫酸マグネシウムが用いられる。これら各成分の配合量は、目的とする化粧料の具体的な用途に応じ適切に選択される。混合装置16内においてこれらの成分を必要に応じ加熱しながら混合することで、水性成分又は水性成分を含む流動体(以下、「水性流動体」という場合もある。)が得られる。水性流動体は、第2の配合原料の種類に応じ、水溶液であるか、水分散液であるか、又は水中油型乳化物若しくは油中水型乳化物であり得る。特に、水性流動体として油中水型乳化物を用いると、本製造方法によって得られる乳化物の構造が一層微細になるので好ましい。
【0024】
本製造方法においては、目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料と第2の配合原料とに振り分け、各配合原料を上述のとおり、油性成分の加熱混合部20及び水性流動体の混合部15にそれぞれ供給することができる。あるいは目的とする化粧料の成分を、第1の配合原料及び第2の配合原料並びに第3の配合原料に振り分け、第1及び第2の配合原料を、油性成分の加熱混合部20及び水性成分又は水性成分を含む流動体の混合部15にそれぞれ供給するとともに、第3の配合原料を、後述するように、振動式攪拌混合装置40の途中から該装置40内に直接供給することもできる。第3の配合原料としては、後述するように、熱に弱い成分などが好ましい。
【0025】
油性成分の加熱混合部20において第1の配合原料が十分に混合し、かつ所定の温度に達したら、混合タンク21の底部に取り付けられた弁27を開き、タンク21内の油性流動体を取り出す。油性流動体は定量ポンプ28に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。また、定量ポンプ28には、該流動体が振動式攪拌混合装置40内を通過するための押し出し圧力源としての働きもある。振動型攪拌装置40へ導入される油性流動体の粘度は、導入される温度において、5〜10000mPa・s、特に10〜1000mPa・sであることが好ましい。
【0026】
水性成分又は水性成分を含む流動体の混合部15においても同様に、第2の配合原料が十分に混合したら、混合装置16の底部に取り付けられた弁(図示せず)を開き、混合装置16内の水性流動体を取り出す。水性流動体は定量ポンプ17に導入され、その一定量が振動式攪拌混合装置40に供給される。
【0027】
なお、図1には示していないが、第1の配合原料を用いて油性流動体を得る場合、混合タンク21で得られた油性流動体を直接に振動式攪拌混合装置40へ供給することに代えて、インラインホモミキサーやマイルダー等の連続式分散装置を通過させた後に振動式攪拌混合装置40へ供給してもよい。これらの装置を用いることによって油性成分が一層微細に分散した油性流動体を得ることができる。
【0028】
振動式攪拌混合装置40には、上述のとおり4つのジャケット34,35,36,37が取り付けられており、それぞれのジャケットには、所定温度の冷却水が循環して、乳化物の冷却のための熱交換が行われる。例えば、ジャケット34には熱水が循環し約90℃に保たれており、ジャケット35は約45〜50℃に保たれている。残りの二つのジャケット36,37はいずれも0〜10℃に保たれている。つまり振動式攪拌混合装置40には、第1の流入口31A側から吐出口32側に向けて低下する温度勾配が設けられている。
【0029】
先に述べたとおり、油性流動体は第1の流入口31Aを通じて振動式攪拌混合装置40内に導入される。一方、水性流動体は第1の流入口31Aよりも下流側に位置する第2の流入口31Bを通じて該装置40内に導入される。したがって、油性流動体を、振動式攪拌混合装置内40を通過させつつ、水性流動体を該装置40内に供給することになる。換言すれば、油性流動体が振動式攪拌混合装置内40を移動しながら、該装置内において油性流動体と水性流動体とが合流する。上述のとおり、振動式攪拌混合装置40は冷却水によって冷却されているので、油性流動体と水性流動体とが合流する時点では、該油性流動体の温度は、該装置40内に供給されたときの温度よりも低下している。つまり、油性流動体は、これが振動式攪拌混合装置40に供給されたときの温度よりも低い温度になった状態で、水性流動体と合流する。尤も、油性流動体の温度が低下し過ぎた時点で水性流動体と合流すると、両者の混合・乳化に支障を来すので、水性流動体は、25℃において固体の油性成分の固化開始温度以上の温度で振動式攪拌混合装置40に供給され、かつ固化開始温度以上の温度で油性流動体と合流する。合流時の油性流動体の温度も、固化開始温度以上の温度としておく。特に、水性流動体は、25℃において固体の油性成分の固化開始温度以上の温度で振動式攪拌混合装置40に供給され、かつ固化開始温度以上の温度で油性流動体と合流することが好ましい。この場合には、合流時の油性流動体の温度も、固化開始温度以上の温度としておくことが好ましい。油性流動体と水性流動体とが合流するときの各温度は、同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。水性流動体の供給温度及び該水性流動体の油性流動体との合流温度の上限は100℃とすることが好ましい。水性流動体と合流するときの油性流動体の温度の上限も100℃とすることが好ましい。
【0030】
前記の固化開始温度は、油性流動体を、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/minの加熱速度で100℃まで昇温した後、2℃/minの冷却速度で降温したときの、発熱ピークの立ち上がる温度として測定される。
【0031】
振動式攪拌混合装置40においては攪拌体44がその軸方向に沿って上下に振動することで、ケーシング41内を通過する油性流動体及び水性流動体が攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合され乳化が起こる。特に油性流動体は、約90℃という高温に保たれているジャケット34に対応する位置から供給されるので、供給された時点は流動性が高い状態になっている。したがって攪拌体44の振動によって混合が促進されて、上述の混合タンク21内での混合に引き続き再分散が行われ、その後に水性流動体と合流することになる。
【0032】
ジャケット34に対応する位置から供給された油性流動体は、ジャケット35に対応する位置まで押し出され、この位置で水性流動体と合流する。この位置の温度は、ジャケット34に対応する位置の温度よりも低いので、油性流動体は冷却されて、その流動性が若干低下した状態で水性流動体と合流する。この場合、油性流動体及び水性流動体は、攪拌体44に沿った流れと、攪拌羽根43に設けられた開孔48及び切り欠き49を通る流れの乱れによって混合されながら冷却されるので、冷却むらが生じにくい状態で乳化が起こる。また振動式攪拌混合装置40内にはデッドスペースが殆ど存在しないので、攪拌むらが生じにくい。しかも振動式攪拌混合装置40は、油性流動体及び水性流動体の流動性が高い場合でも低い場合でも良好な攪拌混合を行うことができる。振動式攪拌混合装置40が有するこれらの利点に起因して攪拌混合時の発熱量が小さくなるので、本製造方法においては、固化した固体脂の粒子が融着しやすいという二軸ブレンダーを用いた従来法が有する欠点がなく、油性成分の粒子を良好に分散させることが可能となる。発熱量が小さいことは、温度制御が容易であるという点からも有利である。
【0033】
油性流動体と水性流動体との混合・乳化によって生じた乳化物は、ジャケット35に対応する位置で冷却され、次いでジャケット36,37に対応する位置へ順次押し出され、当該位置で更に冷却される。このようにして、乳化物は連続的に冷却され、目的とする化粧料が、振動式攪拌混合装置40の吐出口32を経て吐出用管33から吐出される。この状態での化粧料の温度は約30℃となる。乳化物の冷却の間、該乳化物には大きな剪断力が加わらないので、W/O乳化物を製造する場合には、水性成分を含む液滴が固体脂膜によってカプセル化されたカプセル化物が、乳化物のバルク(液油)中に多数形成される。そして、このカプセル化物が乳化物中に均一分散する。その結果、乳化滴の合一や顔料の凝集といった不都合が生じづらくなり、乳化物の保存安定性が向上する。顔料の凝集が防止されることは、乳化物の色調の変化が起こりづらくなる点から有利である。前記のカプセル化物は、その直径が好ましくは1〜50μm程度の球状ないし略球状のものである。
【0034】
固体脂の固化開始温度より低い温度で油性流動体と水性流動体とが合流・混合しても、前記のカプセル化物は首尾よく生成しない。また、この温度以上で油性流動体と水性流動体とを合流・混合させても、剪断力が高い場合には前記のカプセル化物が破壊されてしまう。剪断力を低くしてカプセル化物の破壊を防止ししようとすると、混合不足に起因して顔料の凝集や水滴の合一(W/O乳化物の場合)、生産性の低下等の不都合が生じる。要するに、前記のカプセル化物を生成させ、乳化物の保存安定性を高めるためには、固体脂の固化開始温度以上の温度で、油性流動体と水性流動体とを、振動式攪拌混合装置40内で合流・混合させて乳化物を生成させ、該乳化物を該装置内で冷却する必要がある。
【0035】
なお、目的とする化粧料中に熱に弱い成分が含まれている場合や、熱により化粧料に悪影響を与える成分が含まれている場合には、当該成分を混合装置16又は混合タンク21へ充填せず、振動式攪拌混合装置40の途中の位置から該装置40内に直接供給することで、熱に起因する不都合を回避することが可能である。例えば、ジャケット35に対応する位置においては、油性流動体はある程度冷却されているので、定量ポンプを用いて当該位置に前記の成分を供給することで、熱に起因する不都合を回避できる。振動式攪拌混合装置40による乳化物の攪拌混合は、ほぼピストンフローなので、該装置40の途中から前記の成分を供給しても、該成分と乳化物との混合を首尾良く行うことができる。前記の成分としては、例えばある種の活性剤、揮発成分、ラテックス、香料、植物性エキス、ワックス微分散物などの、温度変化しやすい成分が挙げられる。かかる成分の供給のために、振動式攪拌混合装置40の途中に補助注入口(図示せず)を1ヶ所又は複数設けることができる。
【0036】
振動式攪拌混合装置40を用いた冷却においては、平均冷却速度を0.1〜5℃/secに設定することが好ましい。平均冷却速度は、振動式攪拌混合装置40に油性流動体が入ったときの温度と、該装置40から乳化物が出たときの温度の差を滞留時間で除した値である。また、振動式攪拌混合装置40の振動数は5〜30ストローク/secの範囲が好ましい。更に、振動式攪拌混合装置40で冷却される間に与えられる総振動量は、50〜100000ストローク、特に200〜20000ストロークであることが好ましい。
【0037】
次に、本発明で製造される化粧料の主たる原料について説明する。混合タンク21に充填される第1の配合原料には、上述のとおり、25℃において固体の油性成分が少なくとも含まれる。25℃において固体の油性成分はその固化開始温度が40〜100℃、特に50〜80℃であることが好ましい。
【0038】
目的とする乳化化粧料においては、25℃において固体の油性成分の量は、1〜70質量%、特に5〜60質量%であることが好ましい。従来法でこのような処方(つまり、25℃において固体の油性成分の配合量を高くする処方)を採用すると、冷却過程において激しく増粘するため、攪拌混合が困難になる。これに対して本製造方法を用いると、25℃において固体の油性成分の配合量を高くしても、十分な攪拌混合が可能である。25℃において固体の油性成分の配合量を高くできることは、化粧持ちを高める観点から有利である。
【0039】
前記の25℃において固体の油性成分の代表的な例はワックスである。ワックスは、固体/液体の可逆変化をし、30〜150℃の融点固化開始温度を有するものを広く包含する。ワックスの融点固化開始温度は、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜150℃である。本発明においては、このワックスを1種、又は弾性率調整の点から2種以上用いることができる。具体的には、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、セレシン、カルナウバロウ、ライスワックス、ホホバワックス、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、雪ロウ等が挙げられる。25℃において固体の油性成分以外の油性成分としては、脂肪酸やそのエステル炭化水素油等の25℃で液体の油剤や揮発油剤などが挙げられる。
【0040】
乳化化粧料には、界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤としては、化粧品一般に用いられる非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。化粧料中におけるこれら界面活性剤の含有量は0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。界面活性剤は、必要に応じ、第1の配合原料及び/又は第2の配合原料に含有させる。
【0041】
前述の各成分以外に、化粧料に通常使用される成分、例えば粉体成分を、第1の配合原料及び/又は第2の配合原料に含有させることができる。粉体成分としては、コンジョウ、群青、ベンガラ、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイトなどの無機粉体;雲母チタン、酸化鉄雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体などが挙げられる。これらの粉体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。冷却に振動式攪拌混合装置を用いた本発明の製造方法によれば、強い剪断力がかからないので、特に剪断力により破砕しやすい光輝性粉体を破砕することなく高分散できるという利点がある。
【0042】
以上の方法によって製造された化粧料は、その配合原料の組成及び配合量に応じ、油中水型の乳化物となり、例えばまつ毛又は眉毛のメイクアップ用のマスカラ、液状口紅、油性アイシャドウ、クリームファンデーションなどとして使用することができる。
【0043】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、振動式攪拌混合装置40を一台用いたが、これに代えて、図4に示すように、振動型攪拌混合装置40、40’を2台以上直列に連結して使用することができる。この場合、下流側に位置する2台目の振動型攪拌混合装置40’の途中から、熱に弱い成分等を供給することで、ワックスが固化するまでの攪拌条件と該成分の混合条件等をそれぞれ別個に適切に選択することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0045】
〔実施例1−1〕
表1の組成を有する液状口紅を、図1に示す装置を用いて調製した。1〜17の成分を85℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これに18〜20の成分を投入し、混合タンク内で混合分散し油性流動体とした。この油性流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。これとは別に、21〜23の成分を混合装置によって85℃で攪拌混合した水性流動体を、振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで供給した。油性流動体を、振動型攪拌混合装置を移動させつつ、これを水性流動体と合流させ、装置内で攪拌して乳化物を得た。この乳化物を、振動型攪拌混合装置を移動させながら連続的に30℃以下まで冷却し液状口紅を得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は85℃、ジャケット35の温度は25℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に水性流動体を注入したときの油性流動体の液温度は70℃であった。このようにしてW/O乳化物からなる液状口紅を得た。この液状口紅について、以下の方法で保存安定性、使用感及び仕上がりを評価した。その結果を表2に示す。また、この液状口紅の顕微鏡写真を図5に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
〔保存安定性〕
透明容器で保存し、室温で1ヶ月静置保存後の様子を、以下の基準で評価した。
○:全く油水分離していない。
△:若干油水分離している。
×:油水分離している。
【0048】
〔使用感〕
専門パネラーに実際に使用させて、使用感について評価させた。評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0049】
〔仕上がり〕
専門パネラーに実際に使用させて、仕上がりについて評価させた。評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0050】
〔実施例1−2〕
実施例1−1において、水性成分を含む流動体を、振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を70℃とする以外は、実施例1−1と同様にして液状口紅を得た。この液状口紅について、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0051】
〔実施例1−3〕
実施例1−1において水性流動体としてW/O乳化物を用いた。このW/O乳化物は、21〜23の成分と4及び7の成分を混合装置によって85℃で攪拌乳化して調製した。また、油性流動体は4及び7の成分を抜いた組成で調製し、これ以外は実施例1−1と同様にして液状口紅を得た。この液状口紅について、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0052】
〔比較例1−1〕
実施例1−1において水性流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を40℃とする以外は実施例1−1と同様にして液状口紅を得た。この液状口紅について、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0053】
〔比較例1−2〕
表1の組成を有する液状口紅を、エクストルーダーを用いて製造した。実施例1−1と同様に調製した油性流動体をエクストルーダーへ定量ポンプで供給した。これとは別に、実施例1−1と同様に調製した水性流動体を、エクストルーダーの途中からへ定量ポンプで供給した。油性流動体を、エクストルーダー内を移動させつつ、これを水性流動体と合流させ、装置内で攪拌して乳化物を得た。この乳化物を、エクストルーダー内を移動させながら連続的に30℃以下まで冷却し液状口紅を得た。エクストルーダーにおいては、ジャケットは10℃に設定した。平均冷却速度は0.2℃/secであった。エクストルーダーに水性流動体を注入したときの油性流動体の液温度は70℃であった。このようにしてW/O乳化物からなる液状口紅を得た。この液状口紅について、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0054】
〔比較例1−3〕
表1の組成を有する液状口紅を、ホモミキサーを用いて製造した。実施例1−1と同様に調製した油性流動体へ、実施例1−1と同様に調製した水性流動体を添加し、ホモミキサーで乳化しW/O乳化物を得た。このW/O乳化物をホモミキサーで攪拌しながら30℃まで冷却し、液状口紅を得た。平均冷却速度は0.02℃/secであった。この液状口紅について、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の製造方法に従って製造された実施例1−1〜1−3の液状口紅は、比較例の方法で製造されたものに比べて、保存安定性、使用感及び仕上がりに優れるものであることが判る。また、図5に示す顕微鏡写真から、水性流動体を含む液滴が、前記油性成分の固体脂膜でカプセル化されたカプセル化物が形成されていることが判る。
【0057】
〔実施例2−1〕
表3の組成を有する液状油性アイシャドウを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜13の成分を80℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これを14の成分とともに混合タンク内で混合分散し油性流動体とした。この油性流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。これとは別に、15〜17の成分を混合装置によって80℃で攪拌混合した水性流動体を、振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで供給した。油性流動体を、振動型攪拌混合装置を移動させつつ、これを水性流動体と合流させ、装置内で攪拌して乳化物を得た。この乳化物を、振動型攪拌混合装置を移動させながら連続的に30℃以下まで冷却し液状油性アイシャドウを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.8℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に水性流動体を注入したときの油性流動体の液温度は70℃であった。このようにしてW/O乳化物からなる液状油性アイシャドウを得た。このアイシャドウについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
〔実施例2−2〕
実施例2−1において水性流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を68℃とする以外は実施例2−1と同様にして液状油性アイシャドウを得た。このアイシャドウについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0060】
〔比較例2−1〕
実施例2−1において水性流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を25℃とする以外は実施例2−1と同様にして液状油性アイシャドウを得た。このアイシャドウについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0061】
〔比較例2−2〕
実施例2−1において、水性流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を25℃とし、振動型攪拌混合装置の上流側から4ユニット目(ジャケット36の位置)へ定量ポンプで供給した以外は実施例2−1と同様にして液状油性アイシャドウを得た。振動型攪拌混合装置内に水性流動体を注入したときの油性流動体の液温度は50℃であった。このアイシャドウについて、実施例2−1と同様の評価をした。その結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
〔実施例3−1〕
表5の組成を有するマスカラを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜7の成分を90℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これを14の成分とともに混合タンク内で混合分散し油性流動体を得た。この油性流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。これとは別に、10〜13の成分を50℃で攪拌混合し、これと8〜9の成分とを70℃で混合装置によって混合してW/O乳化を行い、水性成分を含む流動体とした。この水性成分を含む流動体を振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで供給した。油性流動体を、振動型攪拌混合装置を移動させつつ、これを水性成分を含む流動体と合流させ、装置内で攪拌して乳化物を得た。この乳化物を、振動型攪拌混合装置を移動させながら連続的に30℃以下まで冷却しマスカラを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は90℃、ジャケット35の温度は0℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に水性成分を含む流動体を注入したときの油性流動体の液温度は70℃であった。このようにしてW/O乳化物からなるマスカラを得た。このマスカラについて、実施例1−1と同様の評価をした。その結果を表6に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
〔実施例3−2及び3−3〕
実施例3−1において振動型攪拌混合装置の振動数を表6に示す条件とした以外は実施例3−1と同様にしてマスカラを得た。このマスカラについて、実施例3−1と同様の評価をした。その結果を表6に示す。
【0066】
〔比較例3−1〕
実施例3−1において水性成分を含む流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を25℃とした。また、振動型攪拌混合装置の振動数を表6に示す条件とした。これら以外は実施例3−1と同様にしてマスカラを得た。このマスカラについて、実施例3−1と同様の評価をした。その結果を表6に示す。
【0067】
〔比較例3−2〕
実施例3−1において振動型攪拌混合装置の振動数を表6に示す条件とした以外は実施例3−1と同様にしてマスカラを得た。このマスカラについて、実施例3−1と同様の評価をした。その結果を表6に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
〔実施例4−1〕
表7の組成を有する乳化ファンデーションを、図1に示す装置を用いて調製した。1〜9の成分を80℃加熱下で、ホモミキサーで分散した後、これを14〜19の成分とともに混合タンク内で混合分散し油性流動体とした。この油性流動体を振動式攪拌混合装置(冷化工業(株)製のバイブロミキサー)へ定量ポンプで供給した。これとは別に、10〜13の成分を混合装置によって80℃で攪拌混合した水性流動体を、振動型攪拌混合装置の上流側から2ユニット目(ジャケット35の位置)へ定量ポンプで供給した。油性流動体を、振動型攪拌混合装置を移動させつつ、これを水性流動体と合流させ、装置内で攪拌して乳化物を得た。この乳化物を、振動型攪拌混合装置を移動させながら連続的に30℃以下まで冷却し乳化ファンデーションを得た。振動式攪拌混合装置においてはジャケット34の温度は80℃、ジャケット35の温度は25℃、ジャケット36の温度は0℃、ジャケット37の温度は0℃に設定した。平均冷却速度は0.7℃/secであった。振動型攪拌混合装置内に水性流動体を注入したときの油性流動体の液温度は65℃であった。このようにしてW/O乳化物からなる乳化ファンデーションを得た。このファンデーションについて、実施例1−1と同様の評価をした。また、外観色の評価も行った、それらの結果を表8に示す。なお、外観色は次の方法で評価した。
【0070】
【表7】

【0071】
〔外観色〕
専門パネラーに、外観色の発色について評価させた。評価基準は以下のとおりである。
◎:非常に良い。
○:良い。
△:普通。
×:悪い。
【0072】
〔実施例4−2及び4−3〕
実施例4−1において振動型攪拌混合装置の振動数を表8に示す条件とした以外は実施例4−1と同様にして乳化ファンデーションを得た。このファンデーションについて、実施例4−1と同様の評価をした。その結果を表8に示す。
【0073】
〔比較例4−1〕
実施例4−1において水性成分を含む流動体を振動型攪拌混合装置内に供給するときの温度を30℃とした。また、振動型攪拌混合装置の振動数を表8に示す条件とした。これら以外は実施例4−1と同様にして乳化ファンデーションを得た。このファンデーションについて、実施例4−1と同様の評価をした。その結果を表8に示す。
【0074】
〔比較例4−2〕
実施例4−1において振動型攪拌混合装置の振動数を表8に示す条件とした以外は実施例4−1と同様にしてマスカラを得た。このマスカラについて、実施例4−1と同様の評価をした。その結果を表8に示す。
【0075】
【表8】

【符号の説明】
【0076】
10 装置
15 水性成分又は水性成分を含む流動体の混合部
20 油性成分の加熱混合部
30 冷却部
40 振動式攪拌混合装置
41 ケーシング
42 駆動軸
43 攪拌羽根
44 攪拌体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において固体の油性成分を1種以上含む配合原料を加熱下に混合させて油性流動体となし、該油性流動体と水性成分又は水性成分を含む流動体とを混合させて乳化物となし、該乳化物を冷却する工程を有する化粧料の製造方法であって、
管状のケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられた攪拌羽根とからなる攪拌体を備え、該駆動軸が軸方向に振動するようになされている振動式攪拌混合装置を用い、
前記油性流動体を、前記振動式攪拌混合装置内を通過させつつ、前記油性流動体の温度が前記油性成分の固化開始温度以上で、前記水性成分又は水性成分を含む流動体を該振動式攪拌混合装置内に連続的に供給し、混合させて乳化物となすとともに、該振動式攪拌混合装置内で該乳化物を冷却する化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記水性成分又は水性成分を含む流動体を、前記油性成分の固化開始温度以上の温度で、前記振動式攪拌混合装置内へ供給する請求項1記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記油性成分として、固化開始温度が40〜100℃のものを用いる請求項1又は2記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記水性成分を含む流動体を、水中油型乳化物又は油中水型乳化物の状態で前記振動式攪拌混合装置内に供給する請求項1ないし3のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法で製造された乳化物を有する化粧料。
【請求項6】
前記乳化物においては、水性成分を含む液滴が、前記油性成分の固体脂膜でカプセル化されている請求項5記載の化粧料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−116687(P2011−116687A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274867(P2009−274867)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】