説明

化粧料の製造方法

【課題】使用者の嗜好に沿い且つ肌質にあった化粧料を用時調製し、肌感触等を評価させることのできる化粧料の製造方法の提供。
【解決手段】肌特性の度合を指標とした肌質分類法により肌質を少なくとも2つのタイプに分類し、さらにそれぞれのタイプを肌特性の度合に応じて複数の小区分に分類するステップと;当該分類された複数の小区分毎に、小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を調製するステップ等の多段階ステップを有することを特徴とする化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水、乳液、クリーム等の化粧料は、容器から手にとって直接肌に塗布されることが多く、化粧料を塗布した時の肌感触は、化粧料を評価・選択する上での重要な要素の一つとされている。使用者によって好みの肌感触は様々であり、全ての要求を満たすためには数多くの化粧料を用意する必要があるが実際上難しい。そのため、使用者は限られた商品の中から少しでも嗜好に近いものを選択しているのが実状である。
【0003】
近年、肌の皮脂量や水分量、皮膚表面形態等の肌特性を評価する方法が開発され(非特許文献1,2)、化粧料の販売現場では、化粧料の選択にあたってカウンセリングやアドバイスが行われている。また、使用者個人の肌特性や要望に応じて最適な成分を配合した、(セミ)オーダーメイドの化粧料の提供も行われている。しかしながら、カウンセリングやアドバイスを行う際に、使用者の嗜好に沿った肌感触を有する化粧料をその場で調製し、商品の肌感触を実際に評価させることは行われておらず、顧客の要望を十分に満たすには至っていない。
化粧料は、通常、研究所や工場等の生産現場において、数多くの原料を個別に計量し配合して製造されるが、その作業は煩雑なものである。この煩雑さも、使用者の嗜好に沿った肌感触を有する化粧料を用時調製し、使用者に提示できないことの一因となっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】橿淵暢夫, 村松宜江: 角層細胞による肌評価法の開発. J Soc Cosmet Chem Japan 1989; 23; 55-57.
【非特許文献2】平井義和: 個肌対応化粧品システムにおけるテクノロジーとブランド戦略. Frgrance J 2005;33; 54-59.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き従来の実状に鑑みてなされたものであり、使用者の嗜好に沿い且つ肌質にあった化粧料を用時調製し、肌感触等を評価させることのできる化粧料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、当該課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、第1の化粧料選択要素の度合をX軸、第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸座標を用い、予め用意した基礎的サンプル化粧料を提示して選択された第1及び第2の化粧料選択要素の位置の座標値に基づいて、3種類の調整用化粧料の配合比率を算出することで、使用者の嗜好に沿った化粧料をその場で簡便な作業により調製でき、肌感触等を評価させることができることを見出した。また、肌特性の度合から化粧料選択者の肌の状態を分類し、さらに小区分に分類した後、当該小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を提示することで第1及び第2の化粧料選択要素の位置の選択が容易になり、使用者の嗜好に沿い且つ肌質にあった化粧料を調製できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、肌特性の度合を指標とした肌質分類法により肌質を少なくとも2つのタイプに分類し、さらにそれぞれのタイプを肌特性の度合に応じて複数の小区分に分類するステップと;
当該分類された複数の小区分毎に、小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を調製するステップと;
相対的に、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第1調整用化粧料、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第2調整用化粧料、第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第3調整用化粧料、及び第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第4調整用化粧料を調製するステップと;
当該第1の化粧料選択要素の度合をX軸、当該第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸座標平面上に、当該各調整用化粧料及び各基礎的サンプル化粧料の第1及び第2の化粧料選択要素の度合を座標値としてそれぞれプロットするステップと;
肌解析手法に基づいて化粧料選択者の肌特性の度合を求め、当該求めた肌特性の度合から、化粧料選択者の肌の状態が当該分類したタイプのうちいずれのタイプに該当するかを決定し、さらに該当する小区分を決定するステップと;
当該決定されたタイプの小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を化粧料選択者に試用評価させ、基礎的サンプル化粧料の座標値を除いて、タイプ内で好みの第1及び第2の化粧料選択要素の位置を当該二軸座標平面上に選択させるステップと;
当該選択された座標値及び各調整用化粧料の座標値から当該選択位置における第1〜第4の調整用化粧料の配合質量比を算出するステップと;
当該算出された配合質量比に基づいて、第1〜第4の調整用化粧料を配合して化粧料を調製するステップと;
を有することを特徴とする化粧料の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者の嗜好に沿い且つ肌質にあった化粧料を、基礎的サンプル化粧料と4つの調整用化粧料を用意するだけで化粧料を購入する際のカウンセリングやアドバイスを行う場で簡便な作業により調製でき、実際の商品の肌感触等を評価させることができる。また、本発明の方法を用いれば、配合成分の配合比率の微調整も容易なため、使用者毎の要望に迅速に対応でき、より満足度の高い化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】皮膚水分量と皮脂量を指標とする肌質分類法により肌質を5つのタイプに分類し、さらにそれぞれのタイプを5〜10の小区分に分類した肌質分類表。
【図2】第1の化粧料選択要素の度合をX軸、第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸座標平面上に、各基礎的サンプル化粧料及び各調整用化粧料の第1及び第2の化粧料選択要素の度合を座標値としてそれぞれプロットし、さらに化粧料選択者の好みの位置をプロットした二軸座標。
【図3】各基礎的サンプル化粧料、各調整用化粧料及び化粧料選択者の好みの位置をプロットした二軸座標。
【図4】各基礎的サンプル化粧料、各調整用化粧料及び化粧料選択者の好みの位置をプロットした二軸座標。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、肌特性の度合を指標とした肌質分類法により予め肌質を少なくとも2つのタイプに分類しておく。ここで、肌特性とは、肌が有する生理的な指標であって、例えば、保湿力(皮膚水分量、キメ、重層剥離等)、皮脂量、色調等の皮膚表面形態等が挙げられる。肌質分類は、これらのうち1つ以上、好ましくは2つ以上を指標とするのが好ましく、特に、保湿力と皮脂量の度合を指標とするのが好ましい。なお、保湿力は、皮膚水分量、キメ、重層剥離等のうちいずれを指標としてもよい。
【0011】
肌質は、少なくとも2つのタイプに分類するが、さらに4タイプ、特に5タイプに分類するのが好ましい。例えば、保湿力と皮脂量の度合を指標とする場合、脂性肌、脂性乾燥肌、普通肌、油分不足肌、乾燥肌の5タイプに分けることが好ましい。
【0012】
肌質を少なくとも2つのタイプした後、さらにそれぞれのタイプを肌特性の度合に応じて複数の小区分に分類する。一つのタイプは、例えば3〜12、特に5〜10の小区分に等分するのが好ましい。例えば、肌質を脂性肌、脂性乾燥肌、普通肌、脂分不足肌、乾燥肌の5タイプに分類する場合、脂性肌はさらに10の小区分に、脂性乾燥肌はさらに8の小区分に、普通肌はさらに5の小区分に、脂分不足肌はさらに5の小区分に、乾燥肌はさらに8の小区分に分類するのが好ましい。図1に、肌質を5つのタイプに分類した後、さらにそれぞれ5〜10の小区分に分類した分類表を示す。
以下、図面を参照しつつ、本発明の詳細を説明する。
【0013】
本発明では、当該分類された複数の小区分毎に、小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を調製する。例えは、図1における脂性肌では、小区分A〜Jに対応する基礎的サンプル化粧料A〜Jを調製する。基礎的サンプル化粧料A〜E或いは基礎的サンプル化粧料F〜Jは、相対的に、第1の化粧料選択要素の度合が相違し、且つ第2の化粧料選択要素の度合が同じで、基礎的サンプル化粧料A〜Eと基礎的サンプル化粧料F〜Jとは、相対的に、第2の化粧料選択要素の度合が相違する。
また、図1における普通肌では、小区分A’〜E’に対応する基礎的サンプル化粧料A’〜E’を調製する。基礎的サンプル化粧料A’〜E’は、相対的に第1の化粧料選択要素の度合が相違し、且つ第2の化粧料選択要素の度合が同じである。
【0014】
一方、本発明では、4種類の調整用化粧料を調製し、用意する。4種類の調整用化粧料は、相対的に、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第1調整用化粧料と、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第2調整用化粧料と、第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第3調整用化粧料と、第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第4調整用化粧料である。この4種類の調整用化粧料は、肌質分類毎にそれぞれ用意することが好ましい。
【0015】
本発明においては、各調整用化粧料及び各基礎的サンプル化粧料の第1及び第2の化粧料選択要素の度合を二軸座標平面上に座標値としてそれぞれプロットする。
本発明で用いられる二軸座標は、第1の化粧料選択要素の度合をX軸、第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸からなる。第1及び第2の化粧料選択要素の度合を示すX軸のスケール数とY軸のスケール数は適宜選定される。スケール数は1以上の数を示すが、通常3〜200、特に5〜100とするのが実用的である。なお、X軸とY軸のスケール数は同一とするのが、化粧料選択要素の評価位置決めのし易さから好ましい。
【0016】
図2に、第1の化粧料選択要素の度合をX軸、第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸座標であって、X軸のスケール数がn、Y軸のスケール数がmである二軸座標平面上に、脂性肌の基礎的サンプル化粧料A〜J及び各調整用化粧料の第1及び第2の化粧料選択要素の度合を座標値としてそれぞれプロットした二軸座標を示す。図2において、X軸のスケール数はn、Y軸のスケール数はm、各調整用化粧料P〜Sの座標値は、P(0、m)、Q(0、0)、R(n、0)、S(n、m)である。また、各基礎的サンプル化粧料A〜Jの座標値は、A(n/10、3m/4)、B(3n/10、3m/4)、C(n/2、3m/4、D(7n/10、3m/4)、E(9n/10、3m/4)、F(n/10、m/4)、G(3n/10、m/4)、H(n/2、m/4)、I(7n/10、m/4)、J(9n/10、m/4)である。
【0017】
本発明において、第1の化粧料選択要素、第2の化粧料選択要素としては、化粧料を選択する際に用いられる評価要素であれば特に制限されず、例えば、化粧料の肌感触が挙げられる。肌感触とは、化粧料を肌に塗布した時の感触、使用感であり、例えば、しっとり感(保湿感)、とろみ感、油性感(ベタツキ感)、清涼感等が挙げられる。これらの化粧料選択要素中、特にX軸にしっとり感、Y軸にとろみ感を表示するのが化粧料の評価選択のし易さの点で好ましい。
【0018】
各調整用化粧料及び各基礎的サンプル化粧料は、第1及び第2の化粧料選択要素に応じて、通常化粧料に用いられる成分、例えば、保湿剤、増粘剤、油性物質、清涼剤等を適宜組み合わせて調製することができる。化粧料選択要素が、しっとり感の場合は保湿剤、とろみ感の場合は増粘剤、油性感(ベタツキ感)の場合は油性物質、清涼感の場合は清涼剤を配合するのが好ましい。なお、第1及び第2の化粧料選択要素の度合は、前記成分の配合割合により調整することができる。
また、各調整用化粧料及び各基礎的サンプル化粧料には、必要に応じて、化粧料に用いられる他の成分、例えば、粉体、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、香料、色素、水等を配合してもよい。
【0019】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、トリメチルグリシン、ジグリセリン、ソルビトール、マルチトール、トレハロース等が挙げられる。保湿剤の含有量は、各調整用化粧料又は各サンプル化粧料の総量を基準として、0〜80質量%が好ましく、特に1〜30質量%が好ましい。
【0020】
増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、β-1,3-グルカン等が挙げられる。増粘剤の含有量は、各調整用化粧料又は各サンプル化粧料の総量を基準として、0〜10質量%が好ましく、特に0.0001〜2.0質量%が好ましい。
【0021】
清涼剤としては、例えば、エタノール、メントール、カンファー等が挙げられる。清涼剤の含有量は、各調整用化粧料又は各サンプル化粧料の総量を基準として、0〜50質量%が好ましく、特に0〜20質量%が好ましい。
【0022】
油性物質としては、例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、精油類、シリコーン油類、界面活性剤等を挙げることができる。油性物質の含有量は、各調整用化粧料又は各サンプル化粧料の総量を基準として、0〜60質量%が好ましく、特に0〜30質量%が好ましい。
【0023】
本発明において、化粧料選択者の肌の肌特性の度合い求める肌解析手法は、上記肌特性の度合いを求めることができる方法で特に限定されない。例えば、皮膚水分量を測定する方法としては、水の電気的特性を利用した電導度や静電気量、赤外分光法(近赤外分光法)等を挙げることができる。また、肌の皮脂量を測定する方法としては、紙、不織布等に吸着させた後、光学的特性の変化度の測定等;キメを測定する方法としてはマイクロスコープでの観察、レプリカ法を挙げることができる。
【0024】
当該求めた化粧料選択者の肌の肌特性の度合いから、化粧料選択者の肌の状態が分類したタイプのうちいずれのタイプに該当するかを決定する。さらに該当する小区分を決定する。分類にあたっては化粧料選択者への問診の結果を参照してもよい。
【0025】
タイプ、小区分が決定されたら、当該決定されたタイプの小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を化粧料選択者に試用評価させる。試用評価は、サンプル化粧料の肌感触の評価を行う。肌感触の評価にあたってはサンプル化粧料を化粧料選択者の肌に塗布して行う。サンプル化粧料を塗布する肌は、特に限定されず、顔、手、腕などの皮膚が挙げられる。1回あたりの塗布量は特に限定されないが、顔のみ使用した場合は0.5〜5mlが好ましく、手の甲の場合は、0.1〜0.5mlが好ましい。
【0026】
次いで、決定されたタイプ内で、好みの第1及び第2の化粧料選択要素の位置を当該二軸座標平面上に選択させる。この選択される位置は基礎的サンプル化粧料の座標値と異なる位置である。好みの位置の選択は、化粧料選択者により行ってもよく、カウンセリングやアドバイスを行う者が化粧料選択者への問診の結果を参照して行ってもよい。
選択された座標イ、イ’をプロットした状態を図2に示す。
【0027】
次いで、当該選択された座標値及び各調整用化粧料の座標値から当該選択位置における第1〜第4調整用化粧料P〜Sの配合質量比を算出する。
具体的には、図2において選択された座標イ、イ’の座標値(a、b)に応じ、第1〜第4調整用化粧料P、Q、R及びSから三つの化粧料の組み合わせが選ばれ、この三つの化粧料に対して配合質量比を算出する。三つの調整用化粧料の組み合わせは、計4通り(P、Q、R)、(P、R、S)、(P、Q、S)、(Q、R、S)あり、(P、Q、R)又は(P、R、S)の組み合わせになる場合と、(P、Q、S)又は(Q、R、S)の組み合わせになる場合とがある。
【0028】
調整用化粧料の組み合わせが(P、Q、R)と(P、R、S)である場合を例に挙げると、配合質量比は次のとおり算出される。
選択した座標イの座標値(a、b)が、a+b≦(n+m)/2の場合は下記式(1):
Q:R:P={(n+m)/2}−a−b:a:b (1)
により、第1調整用化粧料P、第2調整用化粧料Q及び第3調整用化粧料Rの配合比率を算出する。
他方、座標イ’の座標値(a、b)が、(n+m)/2<a+b≦n+mの場合は下記式(2):
S:P:R=a+b−{(n+m)/2}:{(n+m)/2}−a:{(n+m)/2}−b (2)
により、第4調整用化粧料S、第3調整用化粧料R及び第1調整用化粧料Pの配合比率を算出する。
なお、上記式中、nはR及びSのX座標値、mはP及びSのY座標値である。
【0029】
当該算出された配合質量比に基づいて、第1〜第4の調整用化粧料をそれぞれ配合することにより、本発明の化粧料が得られる。
【0030】
本発明の化粧料は、常法に従って製造することができ、任意の剤型とすることができるが、液状、ゲル状、乳化状の剤型とすることが好ましく、液状とすることが特に好ましい。乳化状の化粧料としては、油中水型、水中油型、マルチエマルジョンのいずれの形状もあり得る。本発明の化粧料は、ローション、乳液、クリーム、洗浄剤、マッサージ等のスキンケア化粧料が好ましい。
【0031】
また、本発明の化粧料は、例えば、抗老化、美白、抗酸化、毛穴、肌理(キメ)等を目的に機能性成分を第二の調整用化粧料と共に配合し、多機能化粧料とすることもできる。このような成分としては、例えば、アルブチン、アルコルビン酸及びその誘導体、レチノール、ビタミンE、ハマメリス抽出物、セラミド等が挙げられる。
各機能性成分の含有量は、化粧料の総量を基準として、0〜30質量%が好ましく、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【実施例1】
【0032】
以下実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0033】
実施例1
〔肌質分類〕
皮膚水分量と皮脂量を指標とした肌質分類法により、脂性肌、脂性乾燥肌、普通肌、脂分不足肌、乾燥肌の5タイプに分類した。脂性肌はさらに10の小区分に、脂性乾燥肌はさらに8の小区分に、普通肌はさらに5の小区分に、脂分不足肌はさらに5の小区分に、乾燥肌はさらに8の小区分にそれぞれ等分した。分類表を図1に示す。
【0034】
〔肌特性の度合いの測定〕
化粧料選択者甲、乙を対象に、皮膚水分量と皮膚の皮脂量をSKICOS301(アミックグループ社製)により測定した。
その結果、化粧料選択者甲の肌の状態は脂性肌に分類され、さらに細分化した結果、小区分Dに分類された。また、化粧料選択者乙の肌の状態は脂性肌に分類され、さらに細分化した結果、小区分Gに分類された。
【0035】
〔脂性肌の基礎的サンプル化粧料A〜Jの調製〕
表1に示した原料を配合し、攪拌して脂性肌の基礎的サンプル化粧料A〜Jをそれぞれ調製した。
【0036】
【表1】

【0037】
〔第1〜第4調整用化粧料P〜Sの調製〕
表2に示した原料を配合し、攪拌して調整用化粧料P〜Sをそれぞれ調製した。
【0038】
【表2】

【0039】
図3に示す二軸座標を用いた。該二軸座標において、X座標軸にしっとり感、Y座標軸にとろみ感を表示し、X、Y座標軸のスケール数は10とした。
二軸座標平面上に各調整用化粧料P〜S及び各基礎的サンプル化粧料A〜Jのしっとり感及びとろみ感の度合、A(1、7.5)、B(3、7.5)、C(5、7.5)、D(7、7.5)、E(9、7.5)、F(1、2.5)、G(3、2.5)、H(5、2.5)、I(7、2.5)、J(9、2.5)、P(0、10)、Q(0、0)、R(10、0)、S(10、10)をそれぞれプロットした。
【0040】
〔化粧料の調製〕
基礎的サンプル化粧料Dを化粧料選択者甲の手の甲に0.2ml塗布した後、脂性肌内で好みのしっとり感、好みのとろみ感の位置をそれぞれ選択させた。選択された座標ロ(4.5、7)を図3にプロットした。同様にして、基礎的サンプル化粧料Gを化粧料選択者乙の手の甲に0.2ml塗布した後、脂性肌内で好みのしっとり感、好みのとろみ感の位置をそれぞれ選択させた。選択された座標ハ(3、0.5)を図3にプロットした。
【0041】
選択された座標ロの座標値(4.5、7)は、(n+m)/2<11.5≦n+mであるので、下記式(2):
S:P:R=a+b−{(n+m)/2}:{(n+m)/2}−a:{(n+m)/2}−b (2)
を用い、調整用化粧料S、R、Pの配合質量比を算出したところ、
S:P:R=15:55:30であり、この配合比率に基づいて、調整用化粧料S、Rを配合し、化粧料(1)を得た。
【0042】
一方、選択された座標ハの座標値(3、0.5)は、3.5≦(n+m)/2であるので、下記式(1):
Q:R:P={(n+m)/2}−a−b:a:b (1)
を用い、調整用化粧料Q、R、Pの配合質量比を算出したところ、
Q:R:P=65:30:5であり、この配合比率に基づいて、調整用化粧料Q、R、Pを配合し、化粧料(2)を得た。
【0043】
実施例2
実施例1と同様の肌質分類表を用いた。
〔肌特性の度合いの測定〕
化粧料選択者丙を対象にして、実施例1と同様に皮膚水分量及び皮脂量を測定した。その結果、化粧料選択者丙の肌の状態は普通肌に分類された。また、さらに細分化した結果、小区分普通肌C’に分類された。
【0044】
〔普通肌の基礎的サンプル化粧料A’〜E’の調製〕
表3に示した原料を配合し、攪拌して基礎的サンプル化粧料A’〜E’をそれぞれ調製した。
【0045】
【表3】

【0046】
〔第1〜第4調整用化粧料P〜Sの調製〕
表4に示した原料を配合し、攪拌して調整用化粧料P〜Sをそれぞれ調製した。
【0047】
【表4】

【0048】
図4に示す二軸座標を用いた。該二軸座標において、X座標軸にしっとり感、Y座標軸にとろみ感を表示し、X、Y座標軸のスケール数は10とした。
二軸座標平面上に各調整用化粧料P〜S及び各基礎的サンプル化粧料A’〜E’のしっとり感及びとろみ感の度合、A’(1、5)、B’(3、5)、C’(5、5)、D’(7、5)、E’(9、5)、P(0、10)、Q(0、0)、R(10、0)、S(10、10)をそれぞれプロットした。
【0049】
基礎的サンプル化粧料普通肌C’を化粧料選択者丙の手の甲に0.2ml塗布した後、普通肌内で好みのしっとり感、好みのとろみ感の位置をそれぞれ選択させた。選択された座標ニ(4、4)を図4にプロットした。
選択された座標ニの座標値(4、4)は、8≦(n+m)/2であるので、下記式(1)を用い、調整用化粧料Q,R,Pの配合質量比を算出したところ、Q:R:P=20:40:40であり、この配合比率に基づいて、調整用化粧料Q,R,Pを配合し、化粧料(3)を得た。
Q:R:P={(n+m)/2}−a−b:a:b (1)
【0050】
実施例3
表5に示す機能性成分をそれぞれ、計量し、混合しながら加温溶解した。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例1の化粧料(1)の配合質量比で調整用化粧料S、R及びPを配合し、上記機能性成分を要望に応じて化粧料の総量を基準として、機能性成分1を2質量%、機能性成分1を3質量%となるように配合して多機能化粧料(4)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌特性の度合を指標とした肌質分類法により肌質を少なくとも2つのタイプに分類し、さらにそれぞれのタイプを肌特性の度合に応じて複数の小区分に分類するテップと;
当該分類された複数の小区分毎に、小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を調製するステップと;
相対的に、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第1調整用化粧料、第1の化粧料選択要素の度合が最も低く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第2調整用化粧料、第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も低い品質を有する第3調整用化粧料、及び第1の化粧料選択要素の度合が最も高く、かつ第2の化粧料選択要素の度合が最も高い品質を有する第4調整用化粧料を調製するステップと;
当該第1の化粧料選択要素の度合をX軸、当該第2の化粧料選択要素の度合をY軸とする二軸座標平面上に、当該各調整用化粧料及び各基礎的サンプル化粧料の第1及び第2の化粧料選択要素の度合を座標値としてそれぞれプロットするステップと;
肌解析手法に基づいて化粧料選択者の肌特性の度合を求め、当該求めた肌特性の度合から、化粧料選択者の肌の状態が当該分類したタイプのうちいずれのタイプに該当するかを決定し、さらに該当する小区分を決定するステップと;
当該決定されたタイプの小区分に対応する基礎的サンプル化粧料を化粧料選択者に試用評価させ、基礎的サンプル化粧料の座標値を除いて、タイプ内で好みの第1及び第2の化粧料選択要素の位置を当該二軸座標平面上に選択させるステップと;
当該選択された座標値及び各調整用化粧料の座標値から当該選択位置における第1〜第4の調整用化粧料の配合質量比を算出するステップと;
当該算出された配合質量比に基づいて、第1〜第4の調整用化粧料を配合して化粧料を調製するステップと;
を有することを特徴とする化粧料の製造方法。
【請求項2】
選択された座標値及び各調整用化粧料の座標値から当該選択位置における第1〜第4の調整用化粧料の配合質量比を算出するステップが、
選択された座標値(a、b)が、a+b≦(n+m)/2の場合は下記式(1):
Q:R:P={(n+m)/2}−a−b:a:b (1)
(式中、Pは第1調整用化粧料、Qは第2調整用化粧料、Rは第3調整用化粧料、nはRのX座標値、mはPのY座標値を示し、nとmは1以上の数を示す)
により、第1〜第3調整用化粧料の配合質量比を算出するステップと;
選択された座標値(a、b)が、(n+m)/2<a+b≦n+mの場合は下記式(2):
S:P:R=a+b−{(n+m)/2}:{(n+m)/2}−a:{(n+m)/2}−b (2)
(式中、Sは第4調整用化粧料、nはR及びSのX座標値、mはP及びSのY座標値を示し、P、R、n及びmは前記と同じ)
により、第1、第3及び第4調整用化粧料の配合質量比を算出するステップ、
であることを特徴とする請求項1記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
肌特性が皮膚水分量と皮脂量である請求項1又は2記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
第1及び第2の化粧料選択要素が、肌感触であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
肌感触が、とろみ感としっとり感であることを特徴とする請求項4記載の化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173810(P2011−173810A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37585(P2010−37585)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】