説明

化粧料シートおよびその製法

【課題】化粧料がそのまま充填された浅皿状凹部を有し、しかも全体として非常に薄くコンパクトで、使い勝手のよい化粧料シートとその製法を提供する。
【解決手段】化粧料4が充填された浅皿状凹部3を有する透明プラスチック製のベースシート2が、2つ折りされた第1の台紙片1aと第2の台紙片1bの間に挟み込まれた化粧料シートであって、上記第1の台紙片1aは、切欠き穴5から上記浅皿状凹部3を下方に突出させた状態で上記ベースシート2の下面に重なる重なり部分6と、その重なり部分6からはみ出して上記第2の台紙片1bと貼り合わされる余白部分7とを有し、上記第2の台紙片1bは、上記ベースシート2の上面に重なる重なり部分8と、その重なり部分8からはみ出して上記第1の台紙片1aと貼り合わされる余白部分9とを有し、両者の貼り合わせ面はイージーピール性を有するバリアフィルムで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の化粧料を浅皿状凹部内に充填し、シート状にパッケージ化してなる化粧料シートと、その製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップカラーやアイカラー、ファンデーション等の化粧料を、浅皿状のプラスチック成形体からなる容器に少量ずつ充填してその開口をフィルムで覆い、サンプルとして無料配布したり、使い捨ての携帯用化粧料として販売することが行われている。
【0003】
しかし、プラスチック成形体からなる容器の場合、容器自体が比較的厚みを有するため、これを、商品情報が印刷された台紙に挟み込む等して組み合わせた場合、全体が非常に嵩張ったものとなり、店頭で大量配布する場合や、顧客がバッグ等に入れて携帯するのに取扱性がよくないという問題がある。
【0004】
そこで、最近は、色の異なる複数種類の化粧料を、シート状の台紙に、少量ずつ配置して、保護フィルムで被覆したものが多く出回っている(特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−38673号公報
【特許文献2】特開平8−112141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、シート状の台紙に化粧料を少量ずつ配置させる場合、リップカラーやアイカラーのように高粘度の化粧料をごく薄く均一に配置させるには、化粧料を溶剤希釈して流動性を高め、これをガイド枠内に流し込んで溶剤を揮発させることによって薄膜化したり、溶剤希釈された化粧料をインクとして用い、印刷によって所定領域に薄く配置させることが必要となる。
【0007】
このように、化粧料を溶剤希釈した後、溶剤を揮発させると、化粧料の組成が変化して、化粧料本来の色とは異なる、くすんだ色になってしまうという問題がある。また、溶剤の揮発が不充分な状態で化粧料をフィルムによって密封すると、これをサンプルとして配布した場合に、その使用時に、化粧料の伸びがよすぎて、サンプルと実際の商品とで使用感が異なり苦情を招きやすいという問題もある。さらに、フィルムによって密閉された後、化粧料から溶剤が揮発すると、密封部分が膨張して見栄えが悪くなったり、フィルムと台紙の貼り合わせ部分が破れて、中の化粧料が劣化するおそれもある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、化粧料がそのまま充填された浅皿状凹部を有し、しかも全体として非常に薄くコンパクトで、使い勝手のよい化粧料シートとその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、化粧料が充填された浅皿状凹部を有する透明プラスチック製のベースシートが、2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の各片の間に挟み込まれ、両台紙片の貼り合わせによって一体化されている化粧料シートであって、上記ベースシートの下側に位置する第1の台紙片は、切欠き穴を有し、この切欠き穴から上記ベースシートの浅皿状凹部を下方に突出させた状態で上記ベースシートの下面に重なる部分と、その重なり部からはみ出して上記第2の台紙片と貼り合わされる余白部分とを有し、上記ベースシートの上側に位置する第2の台紙片は、上記ベースシートの上面に重なる部分と、その重なり部からはみ出して上記第1の台紙片と貼り合わされる余白部分とを有し、上記第1の台紙片と第2の台紙片の、少なくとも互いに対峙する面がイージーピール性を有するバリアフィルムで構成されており、上記第1の台紙片と第2の台紙片の貼り合わせ部のうち、第2の台紙片の余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分の台紙片を剥がすことにより、上記ベースシートの浅皿状凹部開口を露出させることができるようになっている化粧料シートを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記ベースシートの浅皿状凹部と、それに対応する第1の台紙片の切欠き穴が、複数個並んで形成されているとともに、上記第2の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分が、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けされている化粧料シートを第2の要旨とする。
【0011】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記第1の台紙片および第2の台紙片が、ともに、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものである化粧料シートを第3の要旨とする。
【0012】
そして、本発明は、上記第1の要旨である化粧料シートの製法であって、化粧料を充填するための浅皿状凹部が賦形された透明プラスチック製のベースシートを準備する工程と、上記ベースシートの浅皿状凹部に化粧料を充填する工程と、2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙であって、片方の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の折り返された片方の台紙片に、上記ベースシートの浅皿状凹部を嵌入突出させるための切欠き穴が設けられたものを準備する工程と、上記2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の各片の間に、上記ベースシートを、その浅皿状凹部を台紙片の切欠き穴から下向きに突出させた状態で挟み込み、両台紙片の、少なくとも上記ベースシートと重なる部分からはみ出す余白部分同士を貼り合わせることにより、上記ベースシートと両台紙片を一体化する工程とを備え、上記台紙片もしくは台紙として、少なくとも互いに対峙する面がイージーピール性を有するバリアフィルムで構成されたものを用い、上記台紙片もしくは台紙の貼り合わせ部のうち、ベースシートの浅皿状凹部開口を覆う側の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分を剥がすことにより、上記ベースシートの凹部開口を露出させることができるようにした化粧料シートの製法を第4の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記ベースシートとして、上記浅皿状凹部が複数個並んで形成されたものを用いるとともに、上記台紙片もしくは台紙として、上記浅皿状凹部に対応する切欠き穴が複数個並んで形成されたものを用い、上記台紙片もしくは台紙の貼り合わせ部のうち、ベースシートの浅皿状凹部開口を覆う側の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分を、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けするようにした化粧料シートの製法を第5の要旨とする。
【0014】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記台紙片もしくは台紙として、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものを用いるようにした化粧料シートの製法を第6の要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
すなわち、本発明の化粧料シートは、化粧料が溶剤希釈されることなくそのまま充填された浅皿状凹部を有するベースシートを、2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙で挟み込んで一体化することにより、全体を非常に薄く、コンパクトな構成に仕上げたものである。したがって、このものは、店頭や街頭で配布したりダイレクトメール等で郵送したりする化粧料サンプルとして用いるのに最適である。また、嵩張らないため、使い捨ての携帯化粧料としても有用である。そして、上記浅皿状凹部の開口が、蓋となるフィルムで覆われているのではなく、イージーピール性を有する上記2枚の台紙片の貼り合わせによって密閉されているため、密封性が高く、しかも上記貼り合わせを剥がすだけで、簡単に浅皿状凹部の開口を露出させて、その中の化粧料を使用することができるようになっている。また、このとき、腰のある台紙同士を剥がすため、従来のように、腰のないフィルムを剥がすよりも簡単に開封動作を行うことができる。そして、上記浅皿状凹部内の化粧料は、溶剤希釈によらず、そのまま充填されているため、サンプルとして顧客に提供した場合、色や使用感が実際の商品と同一であり、正確な情報を顧客に与えることができる。
【0016】
また、本発明の化粧料シートのなかでも、特に、上記ベースシートの浅皿状凹部と、それに対応する第1の台紙片の切欠き穴が、複数個並んで形成されているとともに、上記第2の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分が、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けされているものは、単一の化粧料シートによって、複数の化粧料を一度に顧客に提供することができ、しかも各化粧料を個別に開封して使用させることができるため、好適である。
【0017】
さらに、本発明の化粧料シートのなかでも、特に、上記第1の台紙片および第2の台紙片が、ともに、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものである場合には、台紙面がバリアフィルム層によって保護されているため、台紙片の堅牢度が極めて高いという利点を有する。しかも、紙の軽さと剛性、そしてイージーピール性が相俟って、非常に使い勝手のよいものとなる。
【0018】
そして、本発明の化粧料シートの製法によれば、浅皿状凹部内への化粧料の充填を、溶剤希釈によらずそのまま行うことができるため、工程が簡単であるだけでなく、得られる化粧料の色や使用感が、その化粧料本来のものと何ら異なることがないという利点を有する。
【0019】
また、本発明の化粧料シートの製法のなかでも、特に、上記ベースシートとして、上記浅皿状凹部が複数個並んで形成されたものを用いるとともに、上記台紙片もしくは台紙として、上記浅皿状凹部に対応する切欠き穴が複数個並んで形成されたものを用い、上記台紙片もしくは台紙の貼り合わせ部のうち、ベースシートの浅皿状凹部開口を覆う側の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分を、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けするようにすると、複数個の化粧料充填凹部が並ぶ化粧料シートであって、各化粧料を個別に開封して使用することのできる化粧料シートを、簡単に提供することができる。
【0020】
さらに、本発明の化粧料シートの製法のなかでも、特に、上記台紙片もしくは台紙として、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものを用いるようにすると、台紙片の堅牢度が高く、しかもその貼り合わせが良好で、優れた仕上がりの化粧料シートを簡単に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態を示す斜視図、(b)はこれを裏返した状態を示す斜視図である。
【図2】図1(a)のA−A′拡大断面図である。
【図3】上記一実施の形態の製造過程を示す説明図である。
【図4】上記一実施の形態の製造過程を示す説明図である。
【図5】上記一実施の形態の使用方法を示す説明図である。
【図6】(a)、(b)は、ともに本発明の他の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明の一実施の形態である化粧料シートを示す斜視図であり、図1(b)はこれを裏返した状態を示す斜視図である。また、図2は、図1(a)のA−A′拡大断面図である。これらの図において、1は、前後方向に2つ折りされた台紙であり、2は、その間に挟み込まれたベースシートである。
【0024】
上記ベースシート2は、細長い長方形状の透明プラスチックシート(ポリプロピレン製、厚み0.3mm)からなり、その表面に、下向きに凹状に突出する浅皿状凹部3が3個、長手方向に並んだ状態で形成されている。そして、各浅皿状凹部3内に、色の異なる3種類の化粧料(この例ではリップカラー)4が、それぞれ充填されている(図4参照)。
【0025】
上記ベースシート2を挟んで保持する台紙1は、厚紙(厚み0.3mm)を基材とし、その片面に、イージーピール性を有するバリアフィルムを積層一体化した複合シートからなり、このバリアフィルム面を内側にして2つ折りした構成になっている。なお、便宜上、折り合わされた台紙1のうち、使用時の姿勢(図1〔a〕の姿勢)において、下側になる部分を第1の台紙片1aといい、上側になる部分を第2の台紙片1bという。
【0026】
そして、上記第1の台紙片1aには、上記ベースシート2の3個の浅皿状凹部3に対応する3個の切欠き穴5が形成されており、各切欠き穴5から浅皿状凹部3を下方に突出させた状態で、ベースシート2の下面に重なる重なり部分6と、その重なり部分6からはみ出して上記第2の台紙片1bと貼り合わされる余白部分7とが設けられている。
【0027】
また、上記第2の台紙片1bは、上記ベースシート2の上面に重なる重なり部分8と、その重なり部分8からはみ出して上記第1の台紙片1aと貼り合わされる余白部分9とを有している。上記貼り合わされた余白部分7、9を、図1(a)、(b)において斜線で示す。
【0028】
この、台紙片1a、1bの余白部分7、9の貼り合わせによって、台紙1の内側に挟み込まれたベースシート2の、浅皿状凹部3内に充填された化粧料4が密封されているとともに、ベースシート2全体が台紙1内で動かない状態で固定されている。
【0029】
そして、図1(a)に示すように、上記第2の台紙片1bの、片縁側の余白部分9からベースシート2との重なり部分8にまたがる領域部分が、小領域ごとにミシン目Pによって区分けされており、上記ミシン目Pに沿って区分けされた小領域ごとに、貼り合わせ部分を剥がすことにより、上記ベースシート2の各浅皿状凹部3の凹部開口を個別に露出させることができるようになっている(図5参照)。
【0030】
なお、上記第2の台紙片1bの、上記ミシン目Pによって区分けされた小領域の片縁部は、ごく細い幅(例えば1〜3mm程度)だけ、第1の台紙片1aの端縁よりも側方に突出しており、この突出部10に指をかけることによって、貼り合わせ部分を容易に剥がすことができるようになっている。
【0031】
このように、上記化粧料シートは、化粧料4が浅皿状凹部3内に充填されたベースシート2が、2つ折りされた台紙1(第1の台紙片1aと第2の台紙片1b)の間に挟み込まれて一体化されているため、全体が非常に薄く、コンパクトな構成になっている。そして、上記化粧料4が充填された浅皿状凹部3の開口が、蓋となるフィルムで覆われているのではなく、イージーピール性を有する台紙片1a,1bの貼り合わせによって、必然的に密閉されており、その密封性が高いだけでなく、使用したい化粧料4の色を裏面側から確認した上で、その色の化粧料4が充填された浅皿状凹部3を覆う台紙部分(ミシン目Pで区分けされた小領域)を剥がすだけで、簡単に、その色の化粧料4を露出させて使用することができる。しかも、このとき、腰のある台紙片1a、1b同士を剥がすため、従来のように、腰のないフィルムを剥がすよりも簡単に開封動作を行うことができる。また、台紙片1a、1bが、ともにバリアフィルムで保護されているため、堅牢度が高く、耐久性に優れている。
【0032】
そして、上記浅皿状凹部3内の化粧料は、溶剤希釈によらず、そのまま充填されているため、サンプルとして顧客に提供した場合、色や使用感が実際の商品と同一であり、正確な情報を顧客に与えることができる。また、3個の浅皿状凹部3内に、それぞれ色の異なる3種類の化粧料4がそれぞれ充填されているため、顧客が、1枚の化粧料シートで3色の化粧料4(この例ではリップカラー)を使い分けることができ、好適である。
【0033】
上記化粧料シートは、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、厚み0.3mmの透明ポリプロピレンシートを、細長い長方形状に打ち抜き成形した後、真空成形によって、長手方向に所定間隔で並ぶ3個の浅皿状凹部3を賦形する。これによって、目的となるベースシート2が得られる。そして、図3に示すように、上記浅皿状凹部3内に化粧料4(色の異なる3種類のリップカラー)をそれぞれ充填する。このとき、ベースシート2の浅皿状凹部3は一定の強度を有するため、各リップカラーが、高粘度で流動性に乏しいものであっても、溶剤等で希釈することなく、加圧充填することができる。
【0034】
一方、台紙1を準備する。台紙は、厚み0.3mmの厚紙を基材とし、その片面に、イージーピール性を有するバリアフィルムを積層一体化した複合シートを、所定形状に打ち抜き成形することによって得られる。このとき、外形を打ち抜くとともに、2つ折りによって第1の台紙片1aとなる部分に、ベースシート2の浅皿状凹部3を嵌入突出させるための3個の切欠き穴5を形成するとともに、第2の台紙片1bとなる部分に、ベースシート2の浅皿状凹部3の開口を露出させるためのミシン目Pを形成する。
【0035】
そして、図4に示すように、上記台紙1を2つ折りし、その第1の台紙片1aの3個の切欠き穴5に、上記ベースシート2の3個の浅皿状凹部3を嵌入して下方に突出させるようにしてベースシート2を挟み込んだ後、第1の台紙片1aと第2の台紙片1bとを折り重ねて、その貼り合わせ部分(図1において斜線で示す部分)をヒートシールによって熱圧着することにより、目的とする化粧料シートを得ることができる。
【0036】
なお、上記製法において、ベースシート2の材料としては、ポリプロピレンシートに限らず、各種の樹脂シート、例えば、ポリエチレンシート、ポリエステルシート、硬質ポリ塩化ビニルシート、ポリスチレンシート、ABS樹脂シート等があげられる。そして、その厚みは、0.1〜2.0mmに設定することが好適であり、なかでも、加工性と取扱強度、軽量性、コンパクト性を考慮すれば、0.2〜0.5mmに設定することがとりわけ好適である。なお、いずれの材料も、化粧料シートを裏返した状態(図1〔b〕参照)で、切欠き穴5から突出する浅皿状凹部3内の化粧料4が透かして見える程度に透明でなければならない。リップカラーやアイカラーのように、化粧料4の色が重要なポイントである場合は、中の化粧料4の色が鮮明に見えるように、できるだけ透明であることが望ましい。また、化粧料4の種類によっては、さほどその色が重要でないものもあり、その場合は、完全に透明である必要はなく、浅皿状凹部3内に充填された化粧料4が、浅皿状凹部3の外側から認識できる程度に透けていればよい。
【0037】
そして、上記ベースシート2に形成する浅皿状凹部3の開口径は、その中に充填する化粧料4の使用形態を考慮して適宜の大きさに設定することができる。例えば化粧筆等を用いるリップカラーやアイカラーは比較的小さく設定し、パフ等を用いるファンデーションは比較的大きく設定する。また、上記浅皿状凹部3の深さ(図3においてDで示す)は、化粧料シート全体のコンパクト性と、化粧料4の充填量との兼ね合いから、通常、0.5〜3mmに設定することが好適である。0.5mmより浅いと、化粧料4の充填量が少なすぎて使用する顧客にもの足りない感じを与えるおそれがあり、逆に3mmを超えると、化粧料シートが分厚くなって嵩張るため好ましくない。
【0038】
また、上記製法において、台紙1は、互いに貼り合わせる面がイージーピール性を有するバリアフィルムによって構成されていれば、基材部分は、紙であってもプラスチックシートであってもよいが、取扱性、印刷性、外観の仕上がり性の点で、基材は紙であることが好ましく、なかでも一定の剛性を備えた厚紙が好適である。なお、「イージーピール性」とは、互いに接着後、手で、その界面を傷つけることなく簡単に剥がすことのできる特性をいう。
【0039】
上記基材の厚みは、剛性、強度、軽量性等を考慮すれば、0.2〜2mmに設定することが好適である。また、この基材の片面に設けられるイージーピール性を有するバリアフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、ポリスチレンフィルム等や、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、あるいはこれらの複合フィルムであって、フィルム同士の剥離強度が調節されてイージーピール性を有するものがあげられる。そして、なかでも、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンフィルムとの複合フィルムが、バリア性能およびヒートシール性に優れており、とりわけ好適である。
【0040】
なお、上記バリアフィルム同士の貼り合わせを剥がす際、そのイージーピール性が活かされるように、厚紙等の基材と上記バリアフィルムとは、強固に接合されていなければならない。両者の接合は、熱融着の他、接着剤を用いても差し支えない。また、基材上に、直接バリアフィルム材料を塗工して被膜化するようにしても差し支えない。
【0041】
また、上記の製法では、ベースシート2を挟み込んで台紙1を貼り合わせる際、ヒートシールによって貼り合わせを行ったが、バリアフィルムの種類によっては、両者を常温下で加圧することにより圧着させるようにしてもよい。
【0042】
なお、ヒートシール等によって貼り合わせる部分は、図1において斜線で示すように、台紙1の両台紙片1a、1bが互いに対峙する余白部分7、9の全面である必要はなく、少なくともベースシート2の周囲を囲う部分が途切れることなく貼り合わされていれば足りる。すなわち、ベースシート2の浅皿状凹部3に充填された化粧料4が密封されていればよいからである。もちろん、台紙1のバリアフィルムとベースシート2の材質の組み合わせによっては、両台紙片1a、1bとベースシート2とが重なる部分も、余白部分7、9と同様、シールされていてもよい。ただし、そのシール部分も、イージーピール性が発揮されるようになっていなければならない。
【0043】
そして、上記の例では、第1の台紙片1aと第2の台紙片1bとの貼り合わせを剥がしやすくするために、図1に示すように、突出片10を第2の台紙片1b側に設けたが、例えば、図6(a)に示すように、第1の台紙片1a側の片端縁を、ごく細い幅で突出させて、指をかけることができるようにしても差し支えない。
【0044】
また、上記の例は、3個の浅皿状凹部3が形成されたベースシート2を、台紙1に挟み込んだものであるが、例えば図6(b)に示すように、単一の浅皿状凹部3′が形成されたベースシート2′を挟み込んだものであってもよい。ただし、複数個の浅皿状凹部3が形成されたベースシート2を用いた方が、1つの化粧料シートで提供できる化粧料4の種類が多くなり、好適である。
【0045】
そして、上記の例では、1枚の台紙1を2つ折りして、その間にベースシート2を挟み込むようにしたが、予め対として用意される2枚の台紙を、上記の例の第1の台紙片1aと第2の台紙片1bとして用い、その間にベースシート2を挟み込むようにしても差し支えない。ただし、1枚の台紙1を2つ折りして用いる方が、打ち抜き工程や位置決め工程を簡略化することができ、好適である。
【実施例】
【0046】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
下記の条件にて、前述の製法にしたがって、図1に示す、3種類の化粧料(レッド系リップカラー、オレンジ系リップカラー、ピンク系リップカラー)が個別に充填された化粧料シートを作製した。
<ベースシート>
厚み0.3mmのポリプロピレンシートを打ち抜き成形後、真空成形により3個の浅皿状凹部を形成した。
<台紙>
厚み0.3mmの厚紙の片面にイージーピール性バリアフィルム(ジェイフィルム社製、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンフィルムとの複合フィルム)を積層一体化した後、打ち抜き成形により、3個の切欠き穴とミシン目を形成した。
<貼り合わせ>
台紙を2つ折りし、その間にベースシートを挟み込んで、170℃×3秒、圧力7.8×102 kPa(8kg/cm2 )のヒートシールを行い、全体を一体化した。
【0048】
このようにして得られた化粧料シートを、専門モニター5名に、使用させたところ、5名とも、使い勝手がよく、化粧料の使用感も良好であると評価した。また、上記化粧料シートを開封しない状態で3カ月間、30℃の恒温槽にて保管した後、ヒートシールによって貼り合わされた界面の密封状態と、浅皿状凹部内の化粧料の状態を観察したところ、全く異常はみられなかった。そして、中身である化粧料も良好な使用感が維持されているとの評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の化粧料シートは、店頭や街頭で配布したり、ダイレクトメールで郵送したりする化粧料サンプルとして好適に用いられる。また、外出時に携帯して使い捨てる使い捨て化粧料としても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
1 台紙
1a 第1の台紙片
1b 第2の台紙片
2 ベースシート
3 浅皿状凹部
4 化粧料
5 切欠き穴
6、8 重なり部分
7、9 余白部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料が充填された浅皿状凹部を有する透明プラスチック製のベースシートが、2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の各片の間に挟み込まれ、両台紙片の貼り合わせによって一体化されている化粧料シートであって、上記ベースシートの下側に位置する第1の台紙片は、切欠き穴を有し、この切欠き穴から上記ベースシートの浅皿状凹部を下方に突出させた状態で上記ベースシートの下面に重なる部分と、その重なり部からはみ出して上記第2の台紙片と貼り合わされる余白部分とを有し、上記ベースシートの上側に位置する第2の台紙片は、上記ベースシートの上面に重なる部分と、その重なり部からはみ出して上記第1の台紙片と貼り合わされる余白部分とを有し、上記第1の台紙片と第2の台紙片の、少なくとも互いに対峙する面がイージーピール性を有するバリアフィルムで構成されており、上記第1の台紙片と第2の台紙片の貼り合わせ部のうち、第2の台紙片の余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分の台紙片を剥がすことにより、上記ベースシートの浅皿状凹部開口を露出させることができるようになっていることを特徴とする化粧料シート。
【請求項2】
上記ベースシートの浅皿状凹部と、それに対応する第1の台紙片の切欠き穴が、複数個並んで形成されているとともに、上記第2の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分が、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けされている請求項1記載の化粧料シート。
【請求項3】
上記第1の台紙片および第2の台紙片が、ともに、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものである請求項1または2記載の化粧料シート。
【請求項4】
請求項1記載の化粧料シートの製法であって、化粧料を充填するための浅皿状凹部が賦形された透明プラスチック製のベースシートを準備する工程と、上記ベースシートの浅皿状凹部に化粧料を充填する工程と、2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙であって、片方の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の折り返された片方の台紙片に、上記ベースシートの浅皿状凹部を嵌入突出させるための切欠き穴が設けられたものを準備する工程と、上記2枚一対の台紙片もしくは2つ折りされた1枚の台紙の各片の間に、上記ベースシートを、その浅皿状凹部を台紙片の切欠き穴から下向きに突出させた状態で挟み込み、両台紙片の、少なくとも上記ベースシートと重なる部分からはみ出す余白部分同士を貼り合わせることにより、上記ベースシートと両台紙片を一体化する工程とを備え、上記台紙片もしくは台紙として、少なくとも互いに対峙する面がイージーピール性を有するバリアフィルムで構成されたものを用い、上記台紙片もしくは台紙の貼り合わせ部のうち、ベースシートの浅皿状凹部開口を覆う側の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分を剥がすことにより、上記ベースシートの凹部開口を露出させることができるようにしたことを特徴とする化粧料シートの製法。
【請求項5】
上記ベースシートとして、上記浅皿状凹部が複数個並んで形成されたものを用いるとともに、上記台紙片もしくは台紙として、上記浅皿状凹部に対応する切欠き穴が複数個並んで形成されたものを用い、上記台紙片もしくは台紙の貼り合わせ部のうち、ベースシートの浅皿状凹部開口を覆う側の台紙片の、余白部分からベースシートとの重なり部分にまたがる領域部分を、上記ベースシートの各浅皿状凹部開口を個別に露出しうる小領域ごとに、ミシン目によって区分けするようにした請求項4記載の化粧料シートの製法。
【請求項6】
上記台紙片もしくは台紙として、紙を基材としその片面にイージーピール性を有するバリアフィルム層を形成してなるものを用いるようにした請求項4または5記載の化粧料シートの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78511(P2011−78511A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232121(P2009−232121)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(591173936)旭日工業株式会社 (5)