説明

化粧料及び皮膚外用剤

【課題】シワの発生を効果的に防止あるいは改善することが可能な化粧品及び皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ダイズ、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上の保湿成分と、抗シワ作用を有する合成ペプチドと、を含有する化粧料及び皮膚外用剤を提供する。この化粧料及び皮膚外用剤において、前記合成ペプチドは、例えば、筋特異的キナーゼ(MuSK)に対するアグリンの結合を競合的に阻害する活性を有するものとできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料及び皮膚外用剤に関する。より詳しくは、保湿成分と抗シワ作用を有する合成ペプチドとを含有する化粧料等に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層に位置する角層は、細菌や有害物質などの異物の接触や浸透から生体を保護するとともに体内からの水分蒸散を防ぐことによって、皮膚を健全な状態に保持するバリア機能を果たしている。角質のバリア機能が低下すると、皮膚表面からの経表皮水分蒸発量が増加し、角質水分量が低下する。角層水分量が低下すると、皮膚はかさかさした肌荒れ状態を呈し、この肌荒れが慢性的に続くと、皮膚にシワを生じる要因となる。また、顔の目や口、鼻などを動かして顔の表情を作り出すための筋肉(表情筋)の収縮によるストレスも、皮膚にシワを生じる要因と考えられている。
【0003】
シワの発生を防止あるいは改善するため、従来、角質の皮膚バリア機能の低下を防ぎ、経表皮水分蒸発を抑えることを目的として、グリセリンや天然保湿因子(NMF)、コラーゲン誘導体等の保湿成分を肌に塗布して皮膚の水分保持を高める方法が提案されている。
【0004】
また、シワの発生を防止あるいは改善するため、BOTOX(登録商標)などのボツリヌス毒素の局所適用が行われている(非特許文献1参照)。ボツリヌス毒素は、神経筋接合部のシナプス間隙へのアセチルコリンの放出に関与するタンパク質(SNAREタンパク質)を切断することにより、アセチルコリンの放出を阻害し、表情筋の収縮を抑制して、シワの発生を防止あるいは改善する作用を有する。
【0005】
さらに、近年では、ボツリヌス毒素の作用を模倣する化合物も、シワの発生を防止あるいは改善するために用いられるようになっている。例えば、特許文献1には、SNAREタンパク質の1つであるシナプトソーム関連タンパク質25(SNAP−25)のN末端断片から誘導されたペプチドが開示されている。このペプチドは、SNAP−25のSNAREタンパク質複合体の形成を競合的に阻害することで、アセチルコリンの放出を阻害する作用を示し、「Argireline」の登録商標で販売されている。また、特許文献2には、SNAP−25のアミノ酸配列の特にC末端部分から誘導されたペプチドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1180524号明細書
【特許文献2】国際公開第97/34620号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Treatment of glabellar frown lines with C. botulinum-A exotoxin." J. Dermatol. Surg. Oncol., 1992, Vol.18, No.1, p.17-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シワは老化の明らかな徴候の一つであるため、額や眉間、口や目の周辺に出現するシワには美容上大きな関心が寄せられており、顔のシワを減らしたり取り除いたりするための化粧品や皮膚外用剤の開発が期待されている。そこで、本発明は、シワの発生を効果的に防止あるいは改善することが可能な化粧品及び皮膚外用剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、抗シワ作用を有する合成ペプチドに種々の保湿成分を組み合わせて、シワの発生を防止あるいは改善する効果を検証し、特定の保湿成分との組み合わせにより、抗シワ効果を相乗的に高められることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ダイズ、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上の保湿成分と、抗シワ作用を有する合成ペプチドと、を含有する化粧料及び皮膚外用剤を提供する。
この化粧料及び皮膚外用剤は、少なくともダイズと、さらに1以上の保湿成分を含有することが好適となる。
この化粧料及び皮膚外用剤において、前記合成ペプチドは、例えば、筋特異的キナーゼ(MuSK)に対するアグリンの結合を競合的に阻害する活性を有するものとできる。このような合成ペプチドとして、INCI名ACETYL HEXAPEPTIDE−30で示されるペプチドを用いることができる。この合成ペプチドは、好適にはアミノ酸配列中にアスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸、ロイシン及びアルギニンのみを含むヘキサペプチドとされる。
【0011】
本発明において、「保湿」の用語は、角質水分量の測定によって確認できる効果のほか、皮膚の乾燥による肌荒れ、並びに皮膚の潤い感、つや及びはり等の低下などを予防あるいは改善する効果などを含めて最も広義に解釈されるものとする。なお、角質水分量は、従来公知の測定装置(例えば、SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス社製))を用いた電気伝導度の計測により測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、シワの発生を効果的に防止あるいは改善することが可能な化粧品及び皮膚外用剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.保湿成分
本発明に係る化粧料及び皮膚外用剤は、ダイズ、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上の保湿成分と、抗シワ作用を有する合成ペプチドと、を含有することを特徴とする。これらの保湿成分は、1種又は2種以上を化粧料あるいは皮膚外用剤配合に配合できる。このうち、特にダイズを配合することが、抗シワ効果を高めるために好ましい。以下に、各保湿成分について説明する。
【0015】
(1−1)ダイズ
ダイズは、マメ科(Leguminosae)ダイズ属(Glycine)ダイズ(Glycine max)のことであり、特に種子が好適に用いられる。ダイズは、粉砕したいわゆる豆乳や、脱脂大豆、及びこれらから抽出されるダイズ抽出物、これらを酸やアルカリ、酵素処理して得られる加水分解ダイズ蛋白質、真菌や細菌類で発酵処理した発酵ダイズ抽出物などを用いることができる。これらのうち、特に加水分解ダイズ蛋白質が好ましい。加水分解ダイズ蛋白質は、例えば脱脂ダイズを水に分散してpHを調整した後、蛋白質分解酵素を加えて加水分解し、次いで不溶物を除去して得られる大豆蛋白質溶液またはそれを粉末化したものが好適に用いられる。
【0016】
脱脂大豆等の化粧料及び皮膚外用剤への配合量は、全量中に乾燥重量として好ましくは0.00001〜3.0質量%、特に好ましくは0.00001〜1.0質量%である。この範囲内であれば、成分を安定に配合して、優れた保湿作用及び抗シワ効果を発揮させることができる。なお、溶液として配合する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、溶液濃度は限定されない。
【0017】
(1−2)トウキ・アマチャヅル・ヒキオコシ・ヤシャブシ
トウキは、生薬名で当帰と称されているセリ科(Umbelliferae)の植物である。原産地は日本である。国内の主産地は北海道、奈良、和歌山、長野であり、他に中国、韓国産等がある。中国産は、カラトウキ(Angelica sinensis(OLIV.))、日本産は、トウキ(ヤマゼリ)(Angelica acutiloba KITAGAWA)(大深当帰、大和当帰)及びホッカイトウキ(北海当帰)(Angelica acutiloba KITAGAWA var. sugiyamae HIKINO)、韓国産は、オニノダケ(Angelica gigas NAKAI)等が用いられる。
【0018】
アマチャヅル(甘茶蔓)(Gynostemma pentaphyllum)は、ウリ科(Cucurbitaciae)アマチャヅル属(Gynostemma)に属する雌雄異種ツル性の植物である。日本・中国・東南アジアに自生し、葉は薬草として用いられる。
【0019】
ヒキオコシは、生薬名で延命草と称されているシソ科ヤマハッカ属(Labiatae rabdosia)の植物である。ヒキオコシ(Rabdosia japonicus Hara)の他、同属種のクロバナヒキオコシ(Rabdosia trichocarpa Hara)、カメバヒキオコシ(Rabdosia umbrosa Hara var.kameba Hara)等が用いられる。
【0020】
ヤシャブシは、カバノキ科ハンノキ属(Betulaceae Alnus Mull.)の植物である。ヤシャブシ(Alnus firma Sieb.Et Zucc.)の他、同属種のヒメヤシャブシ(Alnus pendula Matsumura)、オオバヤシャブシ(Alnus sieboldana Matsumura)、ミヤマハンノキ(Alnus crispa(Aiton)Pursh.Maximowiczii Hara)、ケヤマハンノキ(Alnus hirsute (Spach) Pupr.)、ハンノキ(Alnus japonica (Thunb.)Steud.)等が用いられる。
【0021】
トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ及びヤシャブシは、生のままでも乾燥したものでも使用することができる。使用する部位は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、全草、あるいは幹、樹皮、果実、種子、根茎、根皮、根、茎、枝、葉、花などのあらゆる部位を選択し、適宜組み合わせて用いることができる。このうち、トウキについては根茎を、アマチャヅルについては葉を、ヒキオコシについては地上部を、ヤシャブシについては果実、果皮又は花穂を、特に好適に用いることができる。各部位は、製剤時の取り扱い上の便宜のため、乾燥粉末や、好適には溶媒抽出物として用いられる。
【0022】
溶媒抽出物は、適当な溶媒を用いた常法の抽出方法によって調製することができる。例えば、全草、あるいは幹、樹皮、果実、種子、根茎、根皮、根、茎、枝、葉、花などの一箇所又は二箇所以上を、低温ないし加温下で溶媒中に所定の時間浸漬したり、加熱還流を行うことによって調製することができる。溶媒抽出物は、必要に応じてろ過を行い、さらに濃縮やイオン交換樹脂や液体クロマトグラフィー等による精製・分離、凍結乾燥を行ってもよい。
【0023】
溶媒には、通常、植物抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノール及びプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒用いた分配法も適宜採用され得る。
この中でも、本発明においては、親水性溶媒が好ましく、特に、水、エタノール、ブチレングリコールをそれぞれ単独、もしくはこれらを組み合わせて用いることが好ましい。これらの溶媒は、細胞毒性が低いため安全性が高く、得られた抽出物を凍結乾燥させて用いることも可能だからである。
【0024】
溶媒抽出物は、液状、ペースト状、ゲル状等いずれの形態で用いることもできる。液状等の抽出物を、乾固させて固体状としたり、あるいは凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。
【0025】
トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ及びヤシャブシの化粧料及び皮膚外用剤への配合量は、全量中に乾燥重量として好ましくは0.00001〜3.0質量%、特に好ましくは0.00001〜1.0質量%である。この範囲内であれば、成分を安定に配合して、優れた保湿作用及び抗シワ効果を発揮させることができる。なお、溶液として抽出物を使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出物溶液濃度は限定されない。
【0026】
(1−3)バリン
必須アミノ酸の一つであるバリンは、結晶または粉末として用いることができる。バリンの化粧料及び皮膚外用剤への配合量は、全量中に固形重量として好ましくは0.00001〜3.0質量%、特に好ましくは0.00001〜1.0質量%である。この範囲内であれば、成分を安定に配合して、優れた保湿作用及び抗シワ効果を発揮させることができる。
【0027】
2.抗シワ作用を有する合成ペプチド
上記の保湿成分とともに化粧料及び皮膚外用剤に配合される合成ペプチドは、抗シワ作用を有するものであれば特に限定されないが、以下に例示する化合物を好適に採用することができる。
【0028】
(2−1)筋特異的キナーゼに対するアグリンの結合を阻害するペプチド
合成ペプチドとして、筋特異的キナーゼ(MuSK)に対するアグリンの結合を競合的に阻害する活性を有するものが挙げられる。筋収縮は、神経筋接合部の軸索末端からシナプス間隙に放出されたアセチルコリンが筋細胞上のアセチルコリン受容体に結合し、受容体が集積することによって引き起こされる。このアセチルコリン受容体の集積には、軸索から放出されるプロテオグリカンの一種であるアグリンが関与している。アグリンは、筋細胞上の筋特異的キナーゼ(MuSK)と結合してMuSKを活性化して、シナプス形成に必要なシグナルとなる。アグリンのMuSKへの結合を阻害することで、アセチルコリン受容体の集積による筋収縮を抑制して、シワの発生を防止あるいは改善することができる。
【0029】
MuSKに対するアグリンの結合を競合的に阻害する活性を有する合成ペプチドとしては、化粧品原料の国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)による名称(INCI名)が「ACETYL HEXAPEPTIDE-30」であり、「Inyline」の登録商標で製造されているペプチドがある。この合成ペプチドは、アミノ酸配列中にアスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸、ロイシン及びアルギニンのみを含み、アセチル基又はアルキル基で修飾されているペプチドである。
【0030】
(2−2)シナプトソーム関連タンパク質25のSNAREタンパク質複合体の形成を阻害するペプチド
また、合成ペプチドとして、シナプトソーム関連タンパク質25(SNAP−25)のSNAREタンパク質複合体の形成を競合的に阻害する活性を有するものも挙げられる。神経筋接合部における軸索末端からシナプス間隙へのアセチルコリンの放出は、神経細胞内のアセチルコリンを内包するシナプス小胞が細胞膜と膜融合(エクソサイトーシス)することによって引き起こされる。このエクソサイトーシスには、シナプス小胞表面のシナプトブレビン(VAMP / Synaptobrevin)、細胞膜側にあるシンタキシン(Syntaxin)とSNAP−25の3つのタンパク質(SNAREタンパク質)が関与し、この3つのSNAREタンパク質が複合体を形成することによって膜融合と神経伝達物質の放出が行われている。SNAP−25のSNAREタンパク質複合体の形成を阻害することで、アセチルコリンの放出による筋収縮を抑制して、シワの発生を防止あるいは改善することができる。
【0031】
(2−3)エンケファリンのエンケファリン受容体への結合を阻害するペプチド
さらに、合成ペプチドとして、エンケファリンのエンケファリン受容体への結合を競合的に阻害する活性を有するものも挙げられる。軸索末端からのエクソサイトーシスによるアセチルコリンの放出には、SNAREタンパク質複合体の形成に加えて、神経細胞の細胞質内へのカルシウムイオンの流入が必要である。エンケファリンは、受容体に結合して三量体Gタンパク質複合体を活性化し、イノシトールリン酸受容体を介して細胞内貯蔵部からのカルシウムイオンの放出を引き起こす。エンケファリンのエンケファリン受容体への結合を阻害することで、アセチルコリンの放出による筋収縮を抑制して、シワの発生を防止あるいは改善することができる。
【0032】
これらの合成ペプチドの化粧料及び皮膚外用剤への配合量は、全量中に固形重量として好ましくは0.000001〜1.0質量%、特に好ましくは0.00001〜0.1質量%である。この範囲内であれば、成分を安定に配合して、優れた抗シワ効果を発揮させることができる。
【0033】
3.添加剤
本発明に係る化粧料及び皮膚外用剤には、上記の保湿成分及び合成ペプチドに加えて、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常使用される各種の成分を適宜添加することができる。添加剤としては、基剤、着色剤、体質顔料、着色顔料、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐防黴剤、アルコール、多価アルコール、水、油剤、増粘剤、湿潤剤、粉体、キレート剤、pH調整剤、酵素、各種薬効剤、動植物・微生物由来の抽出物、香料等が挙げられる。
【0034】
化粧料は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、洗顔料等のスキンケア化粧料、シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー等のメーキャップ化粧料、日焼け止め料などに適用することができる。
【0035】
皮膚外用剤は、あらゆる剤型の外用剤に適用することができる。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、点鼻液剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤、浴用剤などの外用剤に適用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0037】
[試験例1:クリームの抗シワ効果の評価]
「表1」及び「表2」に示す配合に従って調製したクリームを目元に塗布し、使用前後のシワ改善効果を比較する使用試験を1ヶ月間実施した。各実施例及び比較例には、それぞれ35〜55歳のパネル5人ずつを使用した。
【0038】
クリームは、以下の製造方法により調製した。
A:成分(1)〜(8)を混合し、70℃で均一に溶解する。
B:成分(10)、(18)を混合し、70℃に加熱する。
C:AにBを加えて乳化する。
D:冷却後、成分(9)、(11)〜(17)を加える。
【0039】
各保湿成分の調製は以下に説明する方法で行った。
(1)ダイズ
[製造例1:ダイズ抽出物]
乾燥したダイズGlycine max Merrill(Leguminosae)の種子1kgに精製水5Lを加え12時間浸漬した後、80℃で8時間抽出する。抽出液を濾過して得られた濾液を減圧乾固した。得られた乾固物を3質量%濃度になるよう30質量%1,3−ブチレングリコール水溶液に溶解して調製した。
[製造例2:加水分解ダイズ抽出物]
乾燥したダイズGlycine max Merrill(Leguminosae)1kgを粉砕し、精製水5Lを加え80℃で3時間抽出する。抽出液を40℃3時間プロテアーゼにて加水分解処理し、80℃に加熱してプロテアーゼを失活させた後にろ過した。得られた濾液を減圧乾固し、得られた乾固物を2質量%濃度になるよう20質量%ジプロピレングリコール水溶液に溶解して調製した。
[製造例3:発酵ダイズ抽出物]
乾燥したダイズGlycine max Merrill(Leguminosae)1kgを粉砕し、精製水5Lを加え80℃で3時間抽出する。抽出液に乳酸菌(Lactbacillus delbrueckii)を加え3日間培養し、上清をろ過・殺菌する。これに適量のパラベンを加えて調製した。本品を別途測定したところ固形分濃度は8質量%であった。
(2)トウキ
トウキ(Angelica acutiloba(Sieb.Et Zucc.)Kitagawa)の根の粉砕物10gに、50質量%エタノール100mlを加えて室温で3日間抽出を行なった。抽出液を濾過して得られた濾液を減圧乾固し、得られた乾固物を水:エタノール:プロピレングリコール=1:1:1の割合で混合した溶媒を用いて5質量%溶液として調製した。
(3)アマチャヅル
アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum Makino(Cucurubitaceae)の葉1kgを細切し、精製水10Lを加え、加熱還流後ろ過する。50℃で減圧濃縮後、3質量%水溶液を調製し、パラベンを適量加えて使用した。
(4)ヒキオコシ
ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara)の地上部1kgを細切し、50質量%エタノール水溶液5Lを加え5時間加熱還流した後ろ過する。ろ液を3日間冷暗所に静置し、沈殿物を除去後、減圧乾固した。得られた乾固物を2質量%溶液になるように再度50質量エタノール水溶液で溶解した。
(5)ヤシャブシ
ヤシャブシ(Alnus firma sieb.Et Zucc.)の実100gに、70体積%含水エチルアルコール1Lを加え、室温にて3日間抽出を行った。抽出液を濾過した後、溶媒を留去し、ヤシャブシ実抽出物を0.7g得た。
(6)バリン
味の素社製のL−バリンを用いた。
(7)合成ペプチド
LIPOTEC社製INYLINE(登録商標)、またはその本質であるINCI名ACETYL HEXAPEPTIDE−30を用いた。
【0040】
シワ改善効果は、下記に示した評価基準に基づいて、使用前後の目元のシワの改善程度を、比較例1を基準として点数化し、平均点を算出することにより評価した。
評価点数
6:かなり優れる
5:優れる
4:わずかに優れる
3:かわらない
2:わずかに劣る
1:劣る
0:かなり劣る
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
結果を、「表1」及び「表2」中に示す。合成ペプチドのみを配合した比較例1に係るクリーム及びダイズ抽出物等の保湿成分のみを配合した比較例3〜8に係るクリーム比べて、保湿成分と合成ペプチドをともに配合した実施例1〜6に係るクリームでは、優位なシワ改善効果が認められた。特に、ダイズ抽出物と合成ペプチドを配合した実施例1に係るクリームは、他に比して顕著なシワ改善効果を示した。
【0044】
[試験例2:化粧水の抗シワ効果の評価]
「表3」及び「表4」に示す配合に従って調製した化粧水を目元に塗布し、使用前後のシワ改善効果を比較する使用試験を1ヶ月間実施した。各実施例及び比較例には、それぞれ35〜55歳のパネル5人ずつを使用した。シワ改善効果の評価は、試験例1と同様に比較例9を基準に点数化して行った。
【0045】
化粧水は、以下の製造方法により調製した。
A:成分(1)〜(5)を均一に溶解する。
B:成分(6)〜(16)を均一に溶解する。
C:BにAを加える。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
結果を、「表3」及び「表4」中に示す。合成ペプチドのみを配合した比較例9に係る化粧水及びダイズ抽出物等の保湿成分のみを配合した比較例10〜15に係る化粧水に比べて、保湿成分と合成ペプチドをともに配合した実施例7〜15に係る化粧水では、優位なシワ改善効果が認められた。特に、ダイズ抽出物と合成ペプチドを配合した実施例7に係る化粧水は、ダイズ抽出物あるいは合成ペプチドを単独でそれぞれ配合した化粧水に比して相乗的なシワ改善効果を示した。
【0049】
[試験例3:乳液の抗シワ効果の評価]
「表5」及び「表6」に示す配合に従って調製した乳液を目元に塗布し、使用前後のシワ改善効果を比較する使用試験を1ヶ月間実施した。各実施例及び比較例には、それぞれ35〜55歳のパネル5人ずつを使用した。シワ改善効果の評価は、試験例1と同様に比較例16を基準に点数化して行った。
【0050】
乳液は、以下の製造方法により調製した。
A:成分(1)〜(9)を70℃に加熱し、均一に溶解する。
B:成分(12)〜(14)、(22)を70℃に加熱し、均一に溶解する。
C:AにBを加えて乳化する。
D:冷却後、成分(10)、(11)、(15)〜(21)を加える。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
結果を、「表5」及び「表6」中に示す。合成ペプチドのみを配合した比較例16に係る乳液及びダイズ抽出物のみを配合した比較例17,18に係る乳液に比べて、保湿成分と合成ペプチドをともに配合した実施例16〜21に係る乳液では、優位なシワ改善効果が認められた。さらに、合成ペプチドに、ダイズ抽出物とそれ以外のトウキ抽出物等の保湿成分とを組み合わせて配合した実施例22〜26に係る乳液では、シワ改善効果が一層増強された。
【0054】
[製剤例1:パック]
(成分) (%)
(1)ポリビニルアルコール 15.0
(2)無水ケイ酸 0.5
(3)ポリオキシプロピレン(10)メチルグルコシド 5.0
(4)エタノール 20.0
(5)INYLINE 0.05
(6)製造例1のダイズ抽出物 0.1
(7)製造例2のダイズ抽出物 0.1
(8)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(9)グリセリン 5.0
(10)メチルパラベン 0.1
(11)香料 0.02
(12)精製水 残量
【0055】
(製造方法)
A:成分(1)〜(4)、(11)を混合溶解する。
B:成分(5)〜(10)、(12)を混合溶解する。
C:AとBを混合して均一にし、パックを得た。
【0056】
[製剤例2:軟膏剤]
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 15.0
(2)セタノール 7.0
(3)トリエタノールアミン 2.0
(4)グリセリン 7.0
(5)合成ペプチド(ACETYL HEXAPEPTIDE−30) 0.1
(6)製造例3のダイズ抽出物 3.0
(7)酢酸トコフェロール 1.0
(8)精製水 残量
【0057】
(製造方法)
A:成分(3)、(4)及び(8)の一部を加熱混合し、75℃に保つ。
B:成分(1)、(2)を加熱混合し、75℃に保つ。
C:AをBに徐々に加える。
D:Cを冷却しながら(8)の残部で溶解した(5)〜(7)を加え、軟膏を得た。
【0058】
[製剤例3:日中用美容液]
(成分) (%)
(1)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 2.0
(2)ジメチルポリシロキサン 5.0
(3)イソノナン酸イソトリデシル 5.0
(4)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5.0
(5)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチル
ブチルフェノール 1.0
(6)シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 8.0
(7)ポリスチレン末 2.0
(8)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
(9)メチルトリメチコン 10.0
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
(12)ジプロピレングリコール 3.0
(13)エタノール 10.0
(14)INYLINE 0.01
(15)トウキ抽出物 0.01
(16)アマチャヅル抽出物 0.01
(17)ビタミンCグルコシド 0.5
(18)精製水 残量
【0059】
(製造方法)
A:成分(1)〜(11)を均一に溶解する。
B:成分(12)〜(18)を均一に溶解する。
C:AにBを加えて乳化する。
【0060】
[製剤例4:油中水型ファンデーション]
(成分) (%)
(1)レシチン処理酸化チタン 8.0
(2)レシチン処理酸化鉄 2.0
(3)レシチン処理黄色酸化鉄 1.3
(4)レシチン処理黒色酸化鉄 0.1
(5)シリコーン処理タルク 4.0
(6)シリコーン処理マイカ 2.0
(7)ポリオキシエチレン変性シリコーン 2.0
(8)水添レシチン 0.2
(9)有機変性アンモニウムヘクトライト 1.0
(10)パルミチン酸デキストリン 0.5
(11)ステアリン酸イヌリン 0.5
(12)ジペンタエリスリット脂肪酸エステル 1.0
(13)部分架橋型メチルポリシロキサン 2.0
(14)ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 4.0
(15)水添ポリイソブテン 10.0
(16)デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
(17)香料 適量
(18)1,3−ブチレングリコール 3.0
(19)エタノール 5.0
(20)防腐剤 適量
(21)塩化ナトリウム 0.5
(22)INYLINE 0.02
(23)ヒキオコシ抽出物 0.1
(24)ヤシャブシ抽出物 0.1
(25)ビタミンAパルミテート 0.02
(26)精製水 残量
【0061】
(製造方法)
A:成分(10)〜(12)を90℃に加熱し、均一に溶解する。
B:Aに成分(1)〜(9)を添加し、三本ローラーにより均一分散する。
C:Bに成分(13)〜(16)を添加し、均一に混合する。
D:成分(18)〜(26)を均一に混合する。
E:Cをディスパーミキサーで攪拌しながら、Dを添加し、乳化する。
F:Eに成分(17)を添加し、ファンデーションを得た。
【0062】
上記各製剤例で調製したパック、軟膏剤、日中用美容液、油中水型ファンデーションは、いずれも変色・変臭および沈殿・分離などがなく安定であり、皮膚に適用して保湿効果やシワ改善効果に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る化粧料及び皮膚外用剤は、シワの発生を効果的に防止あるいは改善することができるため、特に額や眉間、口や目の周辺に出現するシワを減らしたり取り除いたりするための化粧料等として有効に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイズ、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上の保湿成分と、抗シワ作用を有する合成ペプチドと、を含有する化粧料。
【請求項2】
ダイズ、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上の保湿成分と、抗シワ作用を有する合成ペプチドと、を含有する皮膚外用剤。
【請求項3】
前記保湿成分として、トウキ、アマチャヅル、ヒキオコシ、ヤシャブシ及びバリンからなる群より選択される1以上とダイズとを含有する請求項1記載の化粧料又は請求項2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記合成ペプチドが、筋特異的キナーゼ(MuSK)に対するアグリンの結合を競合的に阻害する活性を有する請求項1から3のいずれかに一項に記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項5】
前記合成ペプチドが、INCI名ACETYL HEXAPEPTIDE−30で示される請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項6】
前記合成ペプチドが、アミノ酸配列中にアスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸、ロイシン及びアルギニンのみを含むヘキサペプチドである請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料又は皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−207769(P2011−207769A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74031(P2010−74031)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(592042750)株式会社アルビオン (20)
【Fターム(参考)】