説明

化粧料及び飲食品

【課題】安全性の高い天然抽出物を有効成分とする抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに当該天然抽出物を配合した皮膚化粧料、頭髪化粧料及び飲食品を提供する。
【解決手段】本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤に、東紫蘇からの抽出物を含有せしめる。また、本発明の皮膚化粧料、頭髪化粧料又は飲食品に、東紫蘇からの抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに皮膚化粧料、頭髪化粧料及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、活性酸素としては、スーパーオキサイド(すなわち酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン:・O)、過酸化水素(H)、ヒドロキシラジカル(・OH)及び一重項酸素()等が挙げられる。これらの活性酸素は、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウィルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。
【0003】
しかしながら、活性酸素の過剰な生成は、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。通常、生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されているが、スーパーオキサイドの産生が過剰である場合、又はSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分となり、スーパーオキサイド濃度が高くなり、これが関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、しわ、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等を引き起こす。
【0004】
特に、皮膚は、紫外線等の環境因子の刺激を直接受けることから、スーパーオキサイドが生成しやすい器官であるため、スーパーオキサイド濃度の上昇により、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解し、変性し又は架橋したり、油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成したりすると考えられており、活性酸素によって引き起こされる障害が、皮膚のしわ形成や皮膚の弾力低下等の老化の原因になるものと考えられている(非特許文献1参照)。したがって、活性酸素や生体内ラジカルの生成を阻害・抑制することにより、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防、治療又は改善できるものと考えられる。
【0005】
そこで、活性酸素消去物質、ラジカル消去物質を安全性の点で有利な天然物から得る試みがなされており、このような作用を有するものとして、アブラナ科ブラシカ属植物からの抽出物(特許文献1参照)、ベンケイソウ科リュウキュウベンケイ属植物からの抽出物(特許文献2参照)、タマコチョウからの抽出物(特許文献3参照)、スイオウからの抽出物(特許文献4参照)等が知られている。
【0006】
一酸化窒素(NO)は、大気汚染、酸性雨等の要因となる窒素酸化物であるが、近年、この一酸化窒素が、血管内皮由来弛緩因子(EDRF)、神経伝達物質、生体防御における微生物・腫瘍細胞の障害因子等、生体内で多彩な機能を示す生理活性物質であることが見出されている。生体防御においては、特にマクロファージから産生される一酸化窒素が、細菌やウィルスの感染を防御している。
【0007】
しかし、一酸化窒素が大量に生合成されると、生体にとって無毒ではなく、自己組織の破壊を引き起こし、炎症の悪化、リューマチ、糖尿病等の病態の原因となっている。また、大量に生合成された一酸化窒素が血管平滑筋の弛緩と過剰な透過性の増大をもたらし、著しい血圧の低下によってエンドトキシン・ショックを引き起こすことも知られている。
【0008】
したがって、炎症性疾患においては、一酸化窒素の過剰な産生を抑制することが重要となる。一酸化窒素の産生抑制作用を有するものとして、例えば、ローズマリー抽出液、カルノソール、カルノシン酸、コーヒー豆の抽出液、サクラダソウ抽出液、オウレン抽出液、オウバク抽出液、カンゾウ抽出液、イヌノイバラ抽出液、センキュウ抽出液、トウニン抽出液、シャクヤク抽出液、ヨクイニン抽出液、アカブドウ抽出液(特許文献5参照);唐独活、タラ根皮、和続断、車前子、遠子、茜草根、半枝連、槐花、花椒(非特許文献2参照)等が知られている。
【0009】
炎症性の疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種皮膚疾患等の原因や発症機構は多種多様であるが、その原因の一つとして、ヒアルロニダーゼの活性化、ヒスタミン遊離、血小板凝集等が知られている。ヒアルロニダーゼの活性化によって、マストセルからのヒスタミンの脱顆粒が促進され、その結果炎症が引き起こされる。したがって、ヒアルロニダーゼの活性化を阻害することにより、炎症性疾患の予防、治療又は改善が期待できる。ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する植物抽出物としては、イロハモミジからの抽出物(特許文献6参照)等が知られている。
【0010】
また、ヒスタミンが遊離されると同時に、ヘキソサミニダーゼも遊離されることから、ヘキソサミニダーゼの遊離を指標にヒスタミン遊離抑制作用を評価することができる。したがって、ヘキソサミニダーゼの遊離を抑制することにより、同時にヒスタミンの遊離も抑制でき、これにより炎症性疾患等の予防、治療又は改善に効果があるものと考えられる。ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有する植物抽出物としては、藤茶からの抽出物(特許文献7参照)等が知られている。
【0011】
血小板は、凝集して活性化することにより、生理的には止血、病理的には血栓形成を生じる他、血小板の凝集は、動脈硬化の進展、がん転移、炎症等に関与していると考えられている。したがって、血小板の凝集を抑制することにより、上記疾患の予防、治療又は改善が期待できる。血小板凝集抑制作用を有する植物抽出物としては、地衣類雪茶からの抽出物(特許文献8参照)等が知られている。
【0012】
皮膚の真皮・表皮は、表皮細胞、線維芽細胞及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するエラスチン、コラーゲン等の真皮細胞外マトリックスによって構成されており、若い皮膚においてはこれらの皮膚組織が恒常性を維持することにより水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすることによって、真皮細胞外マトリックスの主要構成成分であるエラスチン、コラーゲン等の産生量が減少するとともに、変性や分解を引き起こす。その結果、角質は異常剥離を始め、肌は張りや艶を失い、肌荒れやシワ等の老化症状を呈するようになる。このように、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワの形成、張りの消失、弾力性の低下等には、エラスチン、コラーゲン等の真皮細胞外マトリックス成分の減少、変性が関与している。
【0013】
エラスチンは、皮膚組織に弾力性を与える線維であり、加齢等に伴ってエラスチンが分解されると皮膚の張りが失われるとともに、弾力性が低下する。エラスチンを分解する酵素であるエラスターゼは、紫外線の照射により活性化され、これによりエラスチンの分解が加速し、皮膚の張りが失われるとともに、弾力性が低下する。そのため、エラスターゼの活性を阻害することによりエラスチンの分解が抑制され、張りの消失、弾力性の低下等の皮膚の老化症状を予防・改善できると考えられる。従来、エラスターゼ阻害作用を有する生薬として、スターフルーツ果実抽出物が知られている(特許文献9参照)。
【0014】
近年、皮膚の老化に伴う変化を誘導する因子として、マトリックス系プロテアーゼの関与が指摘されている。マトリックス系プロテアーゼの中でも、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)は、皮膚の真皮細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンを分解する酵素として知られているが、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、コラーゲンの減少・変性の一因となり、皮膚のシワの形成、弾力性の低下等の大きな要因となると考えられている。したがって、MMP−1活性を阻害することは、皮膚の老化症状を予防・改善する上で重要である。従来、MMP−1阻害作用を有する生薬として、マツ科マツ属二葉松類の樹皮の抽出物が知られている(特許文献10参照)。
【0015】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、線維芽細胞、及びこれらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては線維芽細胞の増殖は活発であり、線維芽細胞、コラーゲン等の皮膚組織の相互作用により皮膚に水分が保持されるとともに、皮膚の柔軟性、弾力性等が確保され、皮膚は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0016】
ところが、紫外線、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等、ある種の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると線維芽細胞の増殖が遅くなり皮膚の保湿機能や弾力性が低下する。そして、皮膚は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。そのため、線維芽細胞の増殖を促進することにより皮膚の老化を予防又は改善することができると考えられる。このような考えに基づき、線維芽細胞増殖促進作用を有するものとして、クスノハガシワ抽出物(特許文献11参照)等が提案されている。
【0017】
多くのステロイドホルモンは産生臓器から分泌された分子型で受容体と結合してその作用を発現するが、アンドロゲンと総称される男性ホルモンの場合、例えば、テストステロンは標的臓器の細胞内に入ってテストステロン5α−レダクターゼにより5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)に還元されてから受容体と結合し、アンドロゲンとしての作用を発現する。
【0018】
アンドロゲンは重要なホルモンであるが、それが過度に作用すると、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等、さまざまな好ましくない症状を誘発する。そこで、従来から、これらの各種症状を改善するために過剰のアンドロゲンの作用を抑制する方法、具体的には、テストステロンを活性型5α−DHTに還元するテストステロン5α−レダクターゼの作用を阻害することにより、活性な5α−DHTが生じるのを抑制する方法や、テストステロンから生じた5α−DHTが受容体と結合するのを阻害することによりアンドロゲン活性を発現させない方法などが知られている。
【0019】
テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有するものとしては、例えば、コエロスポンディアス(Choerospondias)属に属する植物からの抽出物(特許文献12参照)、マジト及び/又はカチュアからの抽出物(特許文献13参照)、五斂子からの抽出物(特許文献14参照)、紅豆杉、鳥欖、幌傘楓及び穿心蓮からなる群より選ばれた1種又は2種以上の植物からの抽出物(特許文献15参照)等が知られている。
【0020】
また、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有するものとしては、例えば、黄皮の葉の抽出物(特許文献16参照)、マジト及び/又はカチュアの抽出物(特許文献13参照)、五斂子からの抽出物(特許文献14参照)、藤茶の枝葉からの抽出物(特許文献17参照)等が知られている。
【0021】
近年、飽食や運動不足等の生活習慣が原因となって体脂肪が増加し、肥満が増えている。このような肥満の増加は、人間ばかりでなく、ペットや家畜においても見られる。肥満は、高脂血症や動脈硬化等の成人病の原因になるため、美容の面で問題となるばかりでなく、健康の面でも大きな問題となる。
【0022】
生体内の脂肪を分解するためには、サイクリックAMPの役割が重要となる。サイクリックAMPは生体内に存在するリパーゼを活性化し、活性化されたリパーゼによって脂肪が脂肪酸とグリセロールとに分解される。しかし、サイクリックAMPホスホジエステラーゼが活性化されるとサイクリックAMPの分解が誘発され、リパーゼの活性化が阻害される。そのため、サイクリックAMPホスホジエステラーゼの活性を阻害することにより細胞内におけるサイクリックAMPが増量し、脂肪の分解を促進することができるものと考えられる。このようなサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有するものとして、ピーナッツ渋皮抽出物(特許文献18参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2003−81848号公報
【特許文献2】特開2005−29483号公報
【特許文献3】特開2006−321730号公報
【特許文献4】特開2007−8902号公報
【特許文献5】特開2002−87975号公報
【特許文献6】特開2003−113068号公報
【特許文献7】特開2003−12532号公報
【特許文献8】特開2005−82532号公報
【特許文献9】特開2003−300893号公報
【特許文献10】特開2003−277223号公報
【特許文献11】特開2003−146837号公報
【特許文献12】特開2003−55162号公報
【特許文献13】特開2002−241297号公報
【特許文献14】特開2002−241296号公報
【特許文献15】特開2002−87976号公報
【特許文献16】特開2001−226278号公報
【特許文献17】特開2002−308790号公報
【特許文献18】特開2004−26719号公報
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル臨時増刊」,1995年,No.14,p.156
【非特許文献2】「和漢医薬学雑誌」,1998年,Vol.15,p.302-303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、安全性の高い天然抽出物及び/又は天然抽出物由来成分を有効成分とする抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、並びに当該天然抽出物及び/又は当該天然抽出物由来成分を配合した皮膚化粧料、頭髪化粧料及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
また、本発明の皮膚化粧料、頭髪化粧料又は飲食品は、東紫蘇からの抽出物を配合したことを特徴とする。
【0027】
本発明の抗酸化剤においては、前記東紫蘇からの抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有するのが好ましく、本発明の抗炎症剤においては、前記東紫蘇からの抽出物が、一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用及び血小板凝集抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するのが好ましく、本発明の抗老化剤においては、前記東紫蘇からの抽出物が、エラスターゼ活性阻害作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用及び皮膚線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有するのが好ましく、本発明の育毛剤又は抗男性ホルモン剤においては、前記東紫蘇からの抽出物が、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有するのが好ましい。
【0028】
ここで、本発明において「アンドロゲン受容体結合阻害」とは、5α−DHTとアンドロゲン受容体との結合の阻害を意味し、その阻害様式は特に限定されるものではなく、例えば、競合的拮抗薬、非競合的拮抗薬といったアンタゴニストとしての阻害が考えられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、天然物である東紫蘇からの抽出物及び/又は当該抽出物由来成分を有効成分として含有し、安全性の高い抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料、頭髪化粧料及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について説明する。
〔抗酸化剤,抗炎症剤,抗老化剤,育毛剤,抗男性ホルモン剤,抗肥満剤,サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤〕
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有する。
【0031】
ここで、本発明において「抽出物」には、東紫蘇(学名:Elsholtzia bodinieri)を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0032】
東紫蘇(Elsholtzia bodinieri)は、シソ科に属する植物であって、中国西南地方、華南地方等に広く分布しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用する東紫蘇の構成部位は特に限定されるものではなく、例えば、花部、葉部、枝部、全草、根部等が挙げられ、これらのうち、特に全草を使用するのが好ましい。東紫蘇の全草は、鳳尾茶(ホウビチャ,別名:野山茶・小山茶・雲松茶・小香茶・小松毛茶・銹山茶・牙刷草)と称される生薬として知られており、従来、頭痛、咽頭痛、肝炎、目痛、消化不良等の治療に用いられている。
【0033】
東紫蘇からの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。この際、抽出原料の乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機により行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、抽出原料の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0034】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0035】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0036】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0037】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10〜90容量部を混合することが好ましい。
【0038】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0039】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0040】
東紫蘇からの抽出物は、特有の匂いを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料、頭髪化粧料又は飲食品に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0041】
上記のようにして得られる東紫蘇からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しているため、それぞれの作用を利用して抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤の有効成分として用いることができる。
【0042】
東紫蘇からの抽出物が有する抗酸化作用は、例えば、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用に基づいて発揮される。ただし、東紫蘇からの抽出物が有する抗酸化作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗酸化作用に限定されるものではない。
【0043】
東紫蘇からの抽出物が有する抗炎症作用は、例えば、一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用及び血小板凝集抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、東紫蘇抽出物が有する抗炎症作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗炎症作用に限定されるものではない。
【0044】
東紫蘇からの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用及び線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用に基づいて発揮される。ただし、東紫蘇抽出物が有する抗老化作用は、これらの作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
【0045】
東紫蘇からの抽出物が有する育毛作用又は抗男性ホルモン作用は、例えば、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用に基づいて発揮される。ただし、東紫蘇からの抽出物が有する育毛作用又は抗男性ホルモン作用は、これらの作用に基づいて発揮される育毛作用又は抗男性ホルモン作用に限定されるものではない。
【0046】
なお、東紫蘇からの抽出物は、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、線維芽細胞増殖促進作用、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有するため、それらの作用を利用して、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤、一酸化窒素産生抑制剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制剤、エラスターゼ活性阻害剤、MMP−1活性阻害剤、線維芽細胞増殖促進剤、テストステロン5α−レダクターゼ阻害剤又はアンドロゲン受容体結合阻害剤の有効成分として使用してもよい。
【0047】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、東紫蘇からの抽出物のみからなるものであってもよいし、東紫蘇からの抽出物を製剤化したものであってもよい。
【0048】
東紫蘇からの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。また、東紫蘇からの抽出物は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料、頭髪化粧料、飲食品等)に配合して使用することができる。
【0049】
なお、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、必要に応じて、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有する他の天然抽出物等を配合して有効成分として用いることができる。
【0050】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与方法としては、一般に経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。
【0051】
また、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0052】
本発明の抗酸化剤は、東紫蘇からの抽出物が有する活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗酸化剤は、これらの用途以外にも活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0053】
本発明の抗炎症剤は、東紫蘇からの抽出物が有する一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用及び血小板凝集抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種炎症性皮膚疾患等を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗炎症剤は、これらの用途以外にも一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用及び血小板凝集抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0054】
本発明の抗老化剤は、東紫蘇からの抽出物が有するエラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用及び線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、皮膚の老化症状等を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗老化剤は、これらの用途以外にもエラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用及び線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0055】
本発明の育毛剤は、東紫蘇からの抽出物が有するテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等を予防、治療又は改善することができ、特に男性型脱毛症の予防、治療又は改善に好適である。ただし、本発明の育毛剤は、これらの用途以外にもテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0056】
本発明の抗男性ホルモン剤は、東紫蘇からの抽出物が有するテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を通じて、男性ホルモンが関与する疾患、例えば、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本発明の抗男性ホルモン剤は、これらの用途以外にもテストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0057】
本発明の抗肥満剤は、東紫蘇からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、サイクリックAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解をすることができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防・改善することができる。ただし、本発明の抗肥満剤は、これらの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0058】
本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、東紫蘇からの抽出物が有するサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を通じて、サイクリックAMPの産生を促進し、脂肪細胞の分解を促進することができ、この結果、肥満症、それに伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等の様々な疾病を予防・改善することができる。ただし、本発明のサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、これらの用途以外にもサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0059】
〔皮膚化粧料,頭髪化粧料〕
東紫蘇からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、皮膚又は頭髪(頭皮)に適用した場合の使用感又は安全性に優れているため、皮膚化粧料又は頭髪化粧料に配合するのに好適である。
【0060】
この場合において、皮膚化粧料又は頭髪化粧料には、東紫蘇からの抽出物をそのまま配合してもよいし、東紫蘇からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合してもよい。
【0061】
東紫蘇からの抽出物、又は東紫蘇からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を配合することにより、皮膚化粧料又は頭髪化粧料に抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を付与することができる。
【0062】
東紫蘇からの抽出物を配合し得る皮膚化粧料又は頭髪化粧料の種類は特に限定されるものではなく、皮膚化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション等が挙げられ、また、頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンス等が挙げられる。
【0063】
東紫蘇からの抽出物を皮膚化粧料又は頭髪化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料又は頭髪化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001〜1質量%である。
【0064】
本発明の皮膚化粧料又は頭髪化粧料は、東紫蘇からの抽出物が有する抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を妨げない限り、通常の皮膚化粧料又は頭髪化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された上記成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0065】
本発明の皮膚化粧料は、高い安全性を有しており、かつ抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用及びサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化や、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性等の活性酸素が関与する各種障害;接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種炎症性皮膚疾患;皮膚の老化症状;脂漏症、座瘡(ニキビ等)、皮膚の老化症状、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟;肥満症、肥満症に伴う動脈硬化、糖尿病、メタボリック症候群等を予防、治療又は改善することができる。また、本発明の頭髪化粧料は、高い安全性を有しており、かつ育毛作用及び/又は抗男性ホルモン作用を通じて、男性型脱毛症等を予防、治療又は改善することができる。
【0066】
〔飲食品〕
東紫蘇からの抽出物は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用、育毛作用、抗男性ホルモン作用、抗肥満作用又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有しており、消化管で消化されるようなものではないことが確認されており、安全性にも優れているため、飲食品に配合するのに好適である。
【0067】
この場合に、東紫蘇からの抽出物をそのまま飲食品に配合してもよいし、東紫蘇からの抽出物から製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を飲食品に配合してもよい。
【0068】
東紫蘇からの抽出物又はそれらから製剤化した抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤若しくはサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1〜1000mgになるようにするのが好ましい。
【0069】
本発明の飲食品は、東紫蘇からの抽出物をその活性を妨げないような任意の飲食品に配合したものであってもよいし、東紫蘇からの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0070】
本発明の飲食品を製造する際には、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品にすることができる。
【0071】
東紫蘇からの抽出物を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられ、これらの飲食品に東紫蘇からの抽出物を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0072】
なお、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤、育毛剤、抗男性ホルモン剤、抗肥満剤、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤、皮膚化粧料、頭髪化粧料又は飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0073】
以下、製造例、試験例及び配合例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0074】
〔製造例1〕東紫蘇抽出物の製造
細切りにした東紫蘇の全草の乾燥物42.7gに50容量%エタノール(水とエタノールとの容量比=1:1)400mLを加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。残渣についてさらに同様の抽出処理をした。得られた抽出液を合わせて減圧下で濃縮し、さらに乾燥して東紫蘇抽出物12.6gを得た(試料1)。
【0075】
〔試験例1〕スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法)
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0076】
試験管に、0.05MのNaCO緩衝液(pH10.2)を2.4mL、並びに3mMのキサンチン、3mMのEDTA、ウシ血清アルブミン溶液及び0.75mMのNBT(nitroblue tetrazolium)を0.1mLずつ加え、これに試料溶液(試料1,試料濃度は下記表1を参照)0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。放置後、酵素溶液としてのキサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間静置した。その後、6mMの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。
【0077】
酵素溶液を添加しない場合についても、同様の操作と吸光度の測定を行い、さらに、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。得られた結果から、下記式によりスーパーオキサイド消去率(%)を算出するとともに、スーパーオキサイド消去率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を算出した。
【0078】
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「酵素溶液添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Bは「酵素溶液無添加・試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「酵素溶液添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表し、Dは「酵素溶液無添加・試料溶液無添加時の吸光度」を表す。
結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は優れた活性酸素消去作用を有することが確認された。また、活性酸素消去作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0081】
〔試験例2〕ラジカル消去作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
【0082】
1.5×10−4MのDPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに試料溶液(試料1,試料濃度は下記表2を参照)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料を溶解した溶媒のみを用いて同様の操作をして、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出するとともに、ラジカル消去率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を算出した。
【0083】
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「コントロールの吸光度」を表し、Bは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Cは「ブランクの吸光度」を表す。
結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたラジカル消去作用を有することが確認された。また、ラジカル消去作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0086】
〔試験例3〕一酸化窒素産生抑制作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにして一酸化窒素産生抑制作用を試験した。
【0087】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7細胞,大日本製薬社製)を、10%FBSを添加したDMEM培地(日水製薬社製)にて前培養後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を3.0×10cells/mLの細胞密度になるように10%FBSを含有しフェノールレッドを含有しないD−MEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、4時間培養した。
【0088】
培養終了後、培地を抜き、終濃度2%のDMSOを含む10%FBSを含有しフェノールレッドを含有しないD−MEMで溶解した試料溶液(試料1,試料濃度:200μg/mL)を各ウェルに100μL添加し、10%FBSを含有しフェノールレッドを含有しないD−MEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS,終濃度1μg/mL,E.coli0111:B4,DIFCO社製)を100μL加え、48時間培養した。
【0089】
一酸化窒素(NO)産生量は、亜硝酸イオン(NO)量を指標に測定した。培養終了後、各ウェルの培養液に、培養上清と同量のグリス試薬(1質量%のスルファニルアミド,0.1%N-1-naphthyl ethylendiamine dihydrochlpride in 5%リン酸溶液)を添加し、10分間室温にて反応させた。反応後、波長540nmにおける吸光度を測定した。一酸化窒素(NO)産生抑制率(%)は、試料無添加時(コントロール)の一酸化窒素(NO)産生量を基に、下記式により算出した。
【0090】
NO産生抑制率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加時のブランクの吸光度」を表し、Cは「試料添加時の吸光度」を表し、Dは「試料添加時のブランクの吸光度」を表す。
【0091】
上記のようにして算出した結果、東紫蘇抽出物(試料1)の一酸化窒素抑制率は、15.3%であった。このことから、東紫蘇抽出物は、優れた一酸化窒素産生抑制作用を有することが確認された。
【0092】
〔試験例4〕ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてヒアルロニダーゼ活性阻害作用を試験した。
【0093】
試料を溶解した0.1mol/Lの酢酸緩衝液(pH3.5)0.2mL(試料1,試料濃度は下記表3を参照)にヒアルロニダーゼ溶液(Type IV-S(from bovine testis),SIGMA社製,400NF units/mL)0.1mLを加え、37℃で20分間反応させた。さらに、活性化剤として2.5mmol/Lの塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間反応させた。これに0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム溶液(from Rooster Comb)0.5mLを加え、37℃で40分間反応させた。
【0094】
その後、0.4mol/L水酸化ナトリウムを0.2mL加えて反応を停止し、冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p−DABA試薬6mLを加え、37℃で20分間反応させた。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。得られた測定結果から、下記式によりヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0095】
阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
式中、Stは「試料溶液の波長585nmにおける吸光度」を表し、Sbは「試料溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度」を表し、Ctは「コントロール溶液の波長585nmにおける吸光度」を表し、Cbは「コントロール溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度」を表す。
結果を表3に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
表3に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。また、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0098】
〔試験例5〕ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を試験した。
【0099】
ラット好塩基球白血病細胞(RBL−2H3)を15%FBS添加S−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を4.0×10cells/mLの細胞密度に希釈し、終濃度0.5μg/mLとなるようにDNP-specific IgEを添加した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0100】
培養終了後、培地を抜き、シリガリアン緩衝液100μLにて洗浄を2回行った。次に、同緩衝液30μL及び同緩衝液にて調製した試料溶液10μL(試料1,試料濃度は下記表4を参照)を加え、37℃にて10分間静置した。その後、100ng/mLのDNP−BSA溶液10μLを加え、37℃にて15分間静置し、ヘキソサミニダーゼを遊離させた。
【0101】
その後、96ウェルプレートを氷上に静置することにより遊離を停止した。各ウェルの細胞上清10μL及び1mmol/Lのp−NAG(p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサイド)溶液10μLを、新たな96ウェルプレートに添加し、37℃で1時間反応させた。
【0102】
反応終了後、各ウェルに0.1mol/LのNaCO/NaHCO250μLを加え、波長415nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し補正した。また、空試験として、細胞上清10μLと、0.1mol/LのNaCO/NaHCO250μLとの混合液の波長415nmにおける吸光度を同様に測定した。得られた測定結果から、下記式によりヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)を算出した。
【0103】
ヘキソサミニダーゼ遊離抑制率(%)={1−(B−C)/A}×100
式中、Aは「試料無添加での吸光度」を表し、Bは「試料添加での吸光度」を表し、Cは「試料添加・p−NAG無添加での吸光度」を表す。
結果を表4に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
表4に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用を有することが確認された。
【0106】
〔試験例6〕血小板凝集抑制作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにして血小板凝集抑制作用を試験した。
【0107】
採血したウサギの血液に日本薬局方ヘパリンナトリウム注射液を1/10量加えて遠心分離(180×g、10分、室温)し、血小板浮遊液(Platelet Rich Plasma;P.R.P.)を得た。
【0108】
次に、血小板浮遊液(P.R.P.)223μLに200mmol/Lの塩化カルシウム溶液1μLを加え、37℃で1分間反応した。これに試料溶液(試料1,試料濃度は下記表5を参照)1μLを加え、さらに2分間反応し、撹拌子を入れて1分間撹拌した後、コラーゲン溶液を25μL添加して37℃で10分間の血小板凝集率を測定した。別に、コントロールとして、披験試料溶液の代わりに披験試料溶液の溶媒を添加した以外は、上記と同様に操作して血小板凝集率を測定した。得られた測定結果から、下記式により血小板凝集抑制率(%)を算出した。
【0109】
血小板凝集抑制率(%)={(A−B)/A}×100
式中、Aは「コントロールの血小板凝集率」を表し、Bは「試料溶液添加時の血小板凝集率」を表す。
結果を表5に示す。
【0110】
【表5】

【0111】
表5に示す結果から、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れた血小板凝集抑制作用を有することが確認された。
【0112】
〔試験例7〕エラスターゼ活性阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてエラスターゼ活性阻害作用を試験した。
【0113】
96ウェルプレートにて、0.2mol/Lのトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で調製した試料溶液(試料1,試料濃度:400μg/mL)50μL及び20μg/mLのエラスターゼ・タイプIII溶液50μLを混合した。その後、上記緩衝液で調製した0.4514mg/mLのN-succinyl-Ala-Ala-Ala-p-nitroanilide100μLを添加して、25℃で15分反応させた。
【0114】
反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりエラスターゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0115】
エラスターゼ活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加・酵素添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加・酵素無添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料添加・酵素添加時の波長415nmにおける吸光度」を表し、Dは「試料添加・酵素無添加時の波長415nmにおける吸光度」を表す。
【0116】
上記のようにして算出した結果、東紫蘇抽出物(試料1)のエラスターゼ活性阻害率は、15.5%であった。このことから、東紫蘇抽出物は、優れたエラスターゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0117】
〔試験例8〕MMP−1活性阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてMMP−1活性阻害作用を試験した。
【0118】
蓋付試験管にて、20mmol/Lの塩化カルシウムを含有する0.1mol/Lのトリス−塩酸緩衝液(pH7.1)で調製した試料溶液(試料1,試料濃度は下記表6を参照)50μL、0.1mg/mLのマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1,COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum,SIGMA社製)溶液50μL、及び0.5mol/LのPz−ペプチド(Pz-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-OH,BACHEM Feinchemikalien AG社製)溶液400μLを混合し、37℃にて30分間反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え、反応を停止した。
【0119】
その後、酢酸エチル5mLをさらに加えて、激しく振とうした。これを遠心分離し(1600×g,10分間)、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。また、同様の方法により空試験を行った。得られた結果から、下記式によりMMP−1活性阻害率(%)を算出するとともに、MMP−1の活性を50%阻害する試料濃度IC50(μg/mL)を算出した。
【0120】
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加・酵素添加時の吸光度」を表し、Bは「試料無添加・酵素無添加時の吸光度」を表し、Cは「試料添加・酵素添加時の吸光度」を表し、Dは「試料添加・酵素無添加時の吸光度」を表す。
結果を表6に示す。
【0121】
【表6】

【0122】
表6に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたMMP−1活性阻害作用を有することが確認された。また、MMP−1活性阻害作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0123】
〔試験例9〕皮膚線維芽細胞増殖促進作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにして皮膚線維芽細胞増殖促進作用を試験した。
【0124】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を7.0×10cells/mLの細胞密度になるように5%FBS含有α−MEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0125】
培養終了後、5%FBS含有α−MEMで溶解した試料溶液(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、3日間培養した。線維芽細胞増殖作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。
【0126】
培養終了後、各ウェルから100μLずつ培地を抜き、終濃度5mg/mLでPBS(−)に溶解したMTTを各ウェルに20μLずつ添加した。4.5時間培養した後に、10%SDSを溶解した0.01mol/Lの塩酸溶液を各ウェルに100μLずつ添加し、一晩培養した後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式により線維芽細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0127】
線維芽細胞増殖促進率(%)=(St−Sb)/(Ct−Cb)×100
式中、Stは「試料を添加した細胞での吸光度」を表し、Sbは「試料を添加した空試験の吸光度」を表し、Ctは「試料を添加しない細胞での吸光度」を表し、Cbは「試料を添加しない空試験の吸光度」を表す。
結果を表7に示す。
【0128】
【表7】

【0129】
表7に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れた線維芽細胞増殖促進作用を有することが確認された。
【0130】
〔試験例10〕テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を試験した。
【0131】
蓋付V底試験管にて、テストステロン(和光純薬工業社製)4.2mgをプロピレングリコール1mLに溶解したもの20μLと、1mg/mLのNADPHを含有する5mmol/Lのトリス塩酸緩衝液(pH7.13)825μLとを混合した。
【0132】
さらに、各試料のエタノール水溶液(試料1,試料濃度は下記表8を参照)80μL及びS−9(ラット肝臓ホモジネート,オリエンタル酵母工業社製)75μLを加えて混合し、37℃にて30分間インキュベートした。その後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止させた。これを遠心分離し(1600×g,10分間)、塩化メチレン層を分取して、分取した塩化メチレン層について、下記の条件にてガスクロマトグラフィー分析をし、3α−アンドロスタンジオール、5α−ジヒドロテストステロン(5α−DHT)及びテストステロンの濃度(μg/mL)を定量した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶媒を同量(80μL)用いて同様に処理し、ガスクロマトグラフィー分析をした。
【0133】
[ガスクロマトグラフィー条件]
使用装置:Shimadzu GC-7A(島津製作所社製)
カラム:DB−1701(内径:0.53mm,長さ:30m,膜厚:1.0μm,J&W Scientific社製)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器:FID
試料注入量:1μL
スプリット比:1:2
キャリアガス:窒素ガス
キャリアガス流速:3mL/min
【0134】
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンの濃度の定量は、下記の方法により行った。
3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンの標準品を塩化メチレンに溶解し、当該溶液についてガスクロマトグラフィー分析をし、これらの化合物の濃度(μg/mL)及びピーク面積から、ピーク面積と化合物の濃度との対応関係を予め求めておいた。そして、テストステロンとS−9との反応後の3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT及びテストステロンのそれぞれのピーク面積あたりの濃度を、予め求めておいた対応関係を利用して、下記式(1)に基づいて求めた。
【0135】
A=B×C/D・・・(1)
式中、Aは「3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT又はテストステロンの濃度(μg/mL)」を表し、Bは「3α−アンドロスタンジオール、5α−DHT又はテストステロンのピーク面積」を表し、Cは「標準品の濃度(μg/mL)」を表し、Dは「標準品のピーク面積」を表す。
【0136】
式(1)に基づいて算出された化合物濃度を用いて、下記式(2)に基づき、変換率(テストステロン5α−レダクターゼによりテストステロンが還元されて生成した3α−アンドロスタンジオール及び5α−DHTの濃度と、テストステロンの初期濃度との濃度比)を算出した。
【0137】
変換率=(E+F)/(E+F+G)・・・(2)
式中、Eは「3α−アンドロスタンジオールの濃度(μg/mL)」を表し、Fは「5α−DHTの濃度(μg/mL)」を表し、Gは「テストステロンの濃度(μg/mL)」を表す。
【0138】
式(2)に基づいて算出された変換率を用いて、下記式(3)に基づき、テストステロン5α−レダクターゼ阻害率(%)を算出するとともに、テストステロン5α−レダクターゼ阻害率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を算出した。
阻害率(%)=(1−H/I)×100・・・(3)
式中、Hは「試料添加時の変換率」を表し、Iは「コントロールの変換率」を表す。
結果を表8に示す。
【0139】
【表8】

【0140】
表8に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたテストステロン5α−レダクターゼ阻害作用を有することが確認された。また、テストステロン5α−レダクターゼ阻害作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0141】
〔試験例11〕アンドロゲン受容体結合阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてアンドロゲン受容体結合阻害作用を試験した。
【0142】
マウス自然発生乳癌(シオノギ癌;SC115)よりクローニングされたアンドロゲン依存性マウス乳癌細胞(SC−3細胞)を、2%DCC−FBS及び10−8mol/Lのテストステロンを含有するMEM培地(以下、MEM−2という。)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10cells/μLの細胞密度になるようにMEM−2培地で希釈し、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの条件下で培養した。
【0143】
24時間後、試料(試料1,試料濃度は下記表9を参照)及び1.0×10−9mol/LのDHTを添加した0.5%BSA含有HamF12+MEM培地(以下、HMB培地という。)に培地を交換して48時間培養した。
【0144】
その後、培地を0.97mmol/LのMTTを含むMEM−2培地に交換し、2時間培養後、培地をイソプロパノールに交換して細胞内に生成したブルーホルマザンを抽出した。溶出したブルーホルマザンを含有するイソプロパノールについて、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。
【0145】
なお、付着細胞の影響を補正するため、同時に650nmの吸光度も測定し、両吸光度の差をもってブルーホルマザンの生成量に比例する値とした(下記結合阻害率の計算式における吸光度はこの補正済み吸光度である)。上記と並行して、試料単独でSC−3細胞に及ぼす影響をみるため、HMB培地にDHTを添加せず試料のみを添加して、同様の培養と測定とを行った。
【0146】
さらに、コントロールとして、試料及びDHTを添加しないHMB培地で培養した場合、並びに試料を添加せずDHTのみを添加したHMB培地で培養した場合についても同様の測定を行った。測定結果から、下記式によりアンドロゲン受容体結合阻害率(%)を算出するとともに、アンドロゲンの受容体への結合を50%阻害する試料濃度IC50(μg/mL)算出した。
【0147】
アンドロゲン受容体結合阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
式中、Aは「DHT添加・試料添加の場合の吸光度」を表し、Bは「DHT無添加・試料添加の場合の吸光度」を表し、Cは「DHT添加・試料無添加の場合の吸光度」を表し、Dは「DHT無添加・試料無添加の場合の吸光度」を表す。
結果を表9に示す。
【0148】
【表9】

【0149】
表9に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することが確認された。また、アンドロゲン受容体結合阻害作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0150】
〔試験例12〕サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験
製造例1により得られた東紫蘇抽出物(試料1)について、以下のようにしてサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
【0151】
5mMの塩化マグネシウムを含有する50mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mLのウシ血清アルブミン溶液0.1mL、0.1mg/mLのサイクリックAMPホスホジエステラーゼ溶液0.1mL及び50%DMSOに溶解した試料溶液(試料1,試料濃度は下記表10を参照)0.05mLを加え、37℃の温度条件下で5分間インキュベーションした。
【0152】
この反応溶液に、0.5mg/mLのサイクリックAMP溶液0.05mLを加え、37℃の温度条件下で60分間インキュベーションした。3分間沸騰水浴上で煮沸することにより反応を停止させ、これを遠心(2260×g,10分間,4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。また、試料溶液を添加せずに同様の方法で空試験を行った。
【0153】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
製品名:Chromatocorder 12(SYSTEM INSTRUMENTS社製)
固定相:Wakosil 5C18(和光純薬工業社製)
カラム径:4.6mm
カラム長:250mm
移動相:1mM TBAP in 25mM KH2PO4:CH3CN=90:10
移動相流速:1.0mL/min
検出:UV,260nm
【0154】
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)及び試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式により試料無添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(C)及び試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
【0155】
試料無添加時の標準品分解率(C,%)=(1−B1/A)×100
試料添加時の標準品の分解率(D,%)=(1−B2/A)×100
【0156】
その後、上記式により算出した各分解率(C,D)に基づいて、下記式によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)を算出するとともに、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率が50%になる試料濃度IC50(μg/mL)を算出した。
阻害率(%)=(1−D/C)×100
結果を表10に示す。
【0157】
【表10】

【0158】
表10に示すように、東紫蘇抽出物(試料1)は、優れたサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認された。また、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用の程度は、東紫蘇抽出物の濃度によって調節できることが確認された。
【0159】
〔配合例1〕
下記組成の乳液を常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.1g
ホホバオイル 4.0g
オリーブオイル 2.0g
スクワラン 2.0g
セタノール 2.0g
モノステアリン酸グリセリル 2.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.5g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0g
黄杞エキス 0.1g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
イチョウ葉エキス 0.1g
コンキオリン 0.1g
オウバクエキス 0.1g
カミツレエキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0160】
〔配合例2〕
下記組成の化粧水を常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.1g
グリセリン 3.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
クエン酸 0.1g
クエン酸ソーダ 0.1g
油溶性甘草エキス 0.1g
海藻エキス 0.1g
キシロビオースミクスチャー 0.5g
クジンエキス 0.1g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0161】
〔配合例3〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
セタノール 3.0g
スクワラン 10.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
酵母抽出液 0.1g
シソ抽出液 0.1g
シナノキ抽出液 0.1g
ジユ抽出液 0.1g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0162】
〔配合例4〕
下記組成の養毛ヘアトニックを常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.2g
塩酸ピリドキシン 0.1g
レゾルシン 0.01g
D−パントテニルアルコール 0.1g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
L−メントール 0.05g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
ニンジンエキス 0.5g
エタノール 25.0g
香料 0.01g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0163】
〔配合例5〕
下記組成のシャンプー(クリームシャンプー)を常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.2g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 30.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 6.0g
ヤシ油脂肪酸モジエタノールアミド 4.0g
ジステアリン酸エチレングリコール 2.0g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
ムクロジエキス 0.2g
黄杞エキス 0.5g
オウバクエキス 0.3g
ローズマリーエキス 0.5g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
香料 0.01g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0164】
〔配合例6〕
下記組成のリンスを常法により製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 0.2g
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.5g
ポリオキシエチレンセチルエーテル 1.0g
セチルアルコール 2.0g
オクチルドデカノール 1.0g
カチオン化セルロース 0.5g
プロピレングリコール 5.0g
ムクロジエキス 0.2g
黄杞エキス 0.5g
オウバクエキス 0.3g
ローズマリーエキス 0.5g
香料 3.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0165】
〔配合例7〕
下記の混合物を打錠して、錠剤状の栄養補助食品を製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 50質量部
粉糖(ショ糖) 188質量部
グリセリン脂肪酸エステル 12質量部
【0166】
〔配合例8〕
下記の混合物を顆粒状にして、栄養補助食品を製造した。
東紫蘇抽出物(製造例1) 50質量部
ビートオリゴ糖 1000質量部
ビタミンC 167質量部
ステビア抽出物 10質量部
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の抗酸化剤は、活性酸素種に起因する各種障害の予防・改善に、本発明の抗炎症剤は、各種炎症性疾患の予防・改善に、本発明の抗老化剤は、皮膚の老化の予防・改善に、本発明の育毛剤又は抗男性ホルモン剤は、男性型脱毛症、多毛症、脂漏症、座瘡(ニキビなど)、前立腺肥大症、前立腺腫瘍、男児性早熟等の予防・改善、本発明の抗肥満剤又はサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤は、肥満症の予防・改善に大きく貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
前記東紫蘇からの抽出物が、活性酸素消去作用及び/又はラジカル消去作用を有することを特徴とする請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項3】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項4】
前記東紫蘇からの抽出物が、一酸化窒素産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用及び血小板凝集抑制作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項3に記載の抗炎症剤。
【請求項5】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項6】
前記東紫蘇からの抽出物が、エラスターゼ活性阻害作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用及び皮膚線維芽細胞増殖促進作用からなる群より選ばれる1種又は2種以上の作用を有することを特徴とする請求項5に記載の抗老化剤。
【請求項7】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする育毛剤。
【請求項8】
前記東紫蘇からの抽出物が、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することを特徴とする請求項7に記載の育毛剤。
【請求項9】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗男性ホルモン剤。
【請求項10】
前記東紫蘇からの抽出物が、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用及び/又はアンドロゲン受容体結合阻害作用を有することを特徴とする請求項9に記載の抗男性ホルモン剤。
【請求項11】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満剤。
【請求項12】
東紫蘇からの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害剤。
【請求項13】
東紫蘇からの抽出物を配合したことを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項14】
東紫蘇からの抽出物を配合したことを特徴とする頭髪化粧料。
【請求項15】
東紫蘇からの抽出物を配合したことを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−184915(P2010−184915A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31773(P2009−31773)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】