説明

化粧料用添加剤

【課題】 抗菌性、抗酸化作用に優れ、美しい緑色を呈する茶葉加工品を含む化粧料を提供する。
【解決手段】 茶葉に含まれる葉緑素中の鉄が銅に置き換わっている銅処理茶葉からなる、化粧料用添加剤並びに該化粧料用添加剤を配合してなる化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改変した茶葉成分を含む化粧料用添加剤に関する。より具体的には本発明は、茶葉に含まれる葉緑素中の鉄を銅に置き換えることによって得られる銅処理茶葉からなる化粧料用添加剤並びに該添加剤を配合してなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、茶葉に含まれる物質の抗菌、抗酸化作用に着目し、化粧料へ茶葉粉末や茶葉の抽出物を配合することが行われている。茶葉そのものは美しい緑色を呈しているものの、この緑色は容易に褪色することから、茶葉配合化粧品であっても着色料として他の着色剤を配合して用いているというのが現実である。
【0003】
茶葉等の植物の緑色を、銅にて処理することにより変色を防止する方法は既に知られており、例えば特許文献1および2に記載されている。しかしながら、かかる方法により処理した茶葉加工品を化粧料に添加した例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4175333
【特許文献2】特開2009−78367
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗菌性、抗酸化作用に優れ、美しい緑色を呈する茶葉加工品を含む化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
茶葉に含まれる葉緑素中の鉄を銅に置き換えた銅処理茶葉は緑色を呈し、また銅により処理していない茶葉と比して優れた抗菌、抗酸化活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本願発明は、茶葉に含まれる葉緑素中の鉄が銅に置き換わっていることを特徴とする銅処理茶葉からなる、化粧料用添加剤を提供する。本発明の化粧料用添加剤は、製品を緑色へ着色するため、製品へ抗菌性および/または抗酸化性を付与するための添加剤として好適に用いられる。また、スクラブ剤としても好適に用いられる。
本発明はまた、本発明の化粧料用添加剤を配合してなる化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において銅処理される茶葉はチャノキの葉であり、品種は特に限定されない。茶葉としては飲料にも用いられる若葉を用いることが好ましい。また、茶葉はチャノキより採取したものをそのまま用いても、乾燥したもの、あるいは乾燥した上に粉砕したものを用いてもよい。
【0009】
本願明細書において「銅処理茶葉」とは、茶葉の葉緑素に含まれる鉄が銅に置き換わるように処理された茶葉を意味する。葉緑素中の鉄は完全に銅に置き換わっておらずとも下記に説明するごとき、銅により処理をしたものであればよい。
【0010】
銅処理茶葉を得る方法は限定的ではなく、銅の存在下で茶葉を加熱処理する(特許文献1)、酸の存在下で銅処理する(特許文献2)等の方法が挙げられる。例えば特許文献1に記載の方法が好適に用いられる。
具体的には、茶葉と水とを煮沸し、得られる柔らかくなった茶葉と茶葉抽出液を粉砕混合して茶葉粉末と茶葉抽出液からなるスラリーを得、該スラリーを銅の存在下で攪拌しながら該溶液を加熱濃縮して銅処理茶葉を得ることができる。
あるいは乾燥茶葉粉末を水と混合してスラリーを得、該スラリーを銅の存在下で攪拌しながら加熱濃縮して銅処理茶葉を得てもよい。
何れの場合も加熱濃縮を茶葉が乾燥状態になるまで続けて銅処理茶葉の乾燥粉末を得てもよい。
【0011】
上記方法において茶葉と水を煮沸する場合、当該工程において煮沸時間は特に限定的ではなく例えば5分〜5時間、好ましくは15分〜3時間、より好ましくは30分〜2時間程度の時間行えばよい。煮沸は加圧下で行っても良く、その場合には加熱時間を短くしてもよい。
【0012】
スラリーを銅の存在下で加熱濃縮する工程においては、例えば銅製の釜へスラリーを投入し、これを攪拌下、加熱すればよい。あるいは釜中へ金属銅と共にスラリーを投入してこれを加熱、攪拌してもよい。加熱は、スラリー温度が60〜120度、好ましくは80〜100度となるよう行えばよい。加熱時間は限定的ではなく、例えば5分〜5時間、好ましくは15分〜3時間、より好ましくは30分〜2時間程度の時間行えばよい。銅処理茶葉の乾燥粉末を得る場合には、乾燥粉末となるまで加熱処理を続ければよい。
【0013】
得られた銅処理茶葉は必要に応じて乾燥して乾燥銅処理茶葉として用いてもよい。乾燥して粉末状とした銅処理茶葉が特に好適に化粧料用添加剤として用いられる。乾燥方法は特に限定的ではなく、加熱濃縮処理を乾燥状態となるまで行ってもよいし、あるいは加熱処理後に水分の残った銅処理茶葉を公知の方法、例えば温風あるいは熱風により乾燥してもよい。必要に応じて、得られた乾燥銅処理茶葉を粉砕しおよび/または分級して所望のサイズの粒子を得てもよい。
【0014】
このようにして得られる銅処理茶葉はあざやかな緑色を保持しているだけでなく、抗菌、抗酸化作用に優れている。かかる銅処理茶葉からなる本発明の化粧料用添加剤は、着色のみならず優れた抗菌、抗酸化作用を提供するという効果を併せ持ち、種々の化粧料に好適に配合することができる。
【0015】
本発明の銅処理茶葉を配合してなる化粧料は、その剤型や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形、パウダーの剤型とすることができる。製品形態としては、洗顔フォーム、メイク落とし、化粧水、美容液、乳液、クリーム、マッサージクリーム、パック、化粧下地、日焼け止め等の皮膚用化粧料、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、ほほ紅、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトニック、ヘアトリートメント、液状整髪料、セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧料、パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤、シェービングフォーム、シェービングジェル、シェービングローション等のひげそり用化粧料等を例示することができる。
【0016】
本願の化粧料用添加剤は抗菌活性並びに抗酸化活性を有しており、上記のうちでも特に美白やニキビ防止を目的として用いられる化粧料や、清浄用化粧料に好適に配合される。また、粒子が柔らかく肌への刺激が少ないことより、スクラブ剤としても好適に用いられる。
【0017】
本願発明の化粧料は、各種化粧料として従来より公知の処方へ本願発明の化粧料用添加剤を配合して調製すればよい。本願発明の化粧料用添加剤の配合量は限定的ではなく、目的に応じて0.01%〜10%の範囲で適宜定めれば良いが、典型的には、抗菌性を目的とする場合は0.01%〜10%、美白剤として0.1%〜5%、着色剤として0.1%〜10%、スクラブ剤として0.1%〜10%の銅処理茶葉粉末を配合する事が好ましい。
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、下記実施例は本発明をなんら限定するものではない。配合量は特記しない限り全て重量%である。
【0019】
〔銅処理茶葉の調製〕
使用茶葉:乾燥緑茶茶葉(粉末)
蒸留水80g中へ乾燥茶葉20gを投入し、スラリー状となるまで攪拌した。次いで、得られたスラリーを銅製の鍋へ投入し、攪拌しながらスラリー温度が90〜100℃となるよう加熱した。40分程度加熱して水分を蒸発させ、粉末状の銅処理茶葉を得た。
銅未処理茶葉としては、上記銅処理を行う前の乾燥緑茶粉末を用いた。
【0020】
〔抗菌活性の評価〕
得られた銅処理抹茶の抗菌活性を検証した。表1および表2に示す濃度で銅処理抹茶と銅未処理抹茶を寒天培地に各濃度で配合した実施例1〜7および比較例1〜7のプレートをそれぞれ調製し、細菌並びに真菌に対する抗菌活性を調べた。寒天培地は、細菌用にはSCD寒天培地、そして真菌用にはGP寒天培地をそれぞれ使用した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
抗菌性試験は細菌として、大腸菌(Escherichia coli),黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)、真菌としてカンジダ(Candida albicans),黒カビ(Aspergillus niger)を用いた。各実施例及び比較例の試料に画線し、細菌は、37℃、48時間、真菌は、25℃、96時間培養し、生育状況を確認した。結果は表3に示す。生育が認められなかった場合を−、生育が認められた場合を+として示した。
【0024】
【表3】

【0025】
表3の結果から、実施例1〜実施例7において、銅処理抹茶は抗菌活性が高いことが判明した。また、比較例1〜7の結果から、銅処理を行っていない抹茶では、抗菌スペクトルが狭いことが判明した。つまり、抹茶を銅処理することで、抗菌活性が飛躍的に向上することが判明した。
【0026】
〔抗酸化作用(DPPHラジカル消去作用)の評価〕
実施例8、9、10及び比較例8、9、10について、抗酸化活性能を、DPPH法により評価した。陽性コントロールとして、アスコルビン酸を用いた。測定されたDPPH吸光度を、以下の基準で評価した。当該評価結果を表4に示す。なお、DPPH法とは、抗酸化活性能を測定する試験方法であり、DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)を含むトリス塩酸緩衝液に、予め調整した実施例8、9、10及び比較例8、9、10の80%エタノール抽出物を加えて、DPPHラジカルが消去する割合を分光光度計で測定した。
各試料の消去率は、次の式で算出した。
消去率(%)=(1−試料吸光度/ブランク吸光度)×100
【0027】
また、試料の安定性を確認するために、試料を40℃で2週間保存した後に同様に測定を行った。これらの試験結果を表4に示した。アスコルビン酸は40℃で2週間の保存により、DPPHラジカル消去作用が大きく減少した。比較例2、5、6は消去作用の減少がみられた。実施例2、5、6は消去作用に変化はなかった。以上のことから、銅処理抹茶は、安定で優れたDPPHラジカル消去作用を示すことがわかった。
【0028】
【表4】

【0029】
〔官能評価〕
(各試料の調製)
上記調製した銅処理抹茶及び銅未処理抹茶をスクラブ剤として、表5、表6に示す組成に従い、実施例11〜実施例18及び比較例11〜比較例20のマッサージクリームを定法により調製した。
【0030】
尚、ポリエチレン末は東色ピグメント社製の商品名ポリエチレンビーズを使用した。クルミ殻としては一丸ファルコス社製の商品名WNグリッドを使用した。
【0031】
(試料の評価)
実施例8〜実施例15及び比較例8〜比較例17の各試料を、洗顔料としての態様で各10名の専門パネラーに使用させ、使用感(皮膚刺激感、異物感)、スクラブ感(スクラブ効果)及び製剤の安定性(40℃、1ヶ月保管後の変色)について、下記評価基準に従い評価した。結果を表5及び表6に記す。
【0032】
<評価基準;皮膚刺激感・異物感>
○:ほとんどない
△:すこし感じる
×:感じる(痛い)
【0033】
<評価基準;スクラブ効果>
◎:十分ある
○:ある
△:あまりない
×:ない
【0034】
<評価基準;安定性(40℃、1ヶ月保管後の変色)>
○:なし
×:あり
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
表5、表6に示される結果の通り、本発明に係る皮膚洗浄剤組成物は、不快な皮膚刺激感や異物感を感じさせることなく使用感に優れるとともに、適度なスクラブ効果を得ることができる。
【0038】
一方、銅未処理抹茶をスクラブ剤として使用した比較例の試料については、皮膚刺激感や異物感を感じさせないが、銅処理抹茶と比較してスクラブ効果を得ることができず、キャンデリラロウはスクラブ剤として適していなかった。
【0039】
また従来から硬スクラブ剤として用いられているポリエチレン末、クルミ殻を配合した比較例の試料については、優れたスクラブ効果が得られるものの、不快な皮膚刺激感や異物感を与える結果となった。
【0040】
以下、本発明の銅処理茶葉を用いた化粧料の処方例を示す。本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0041】
処方例1 美白液
【表7】

【0042】
(製法)Aに属する原料を70℃に加熱し、完全溶解した後、室温まで冷却する。その後、Bに属する原料を混合し、美白液(pH:6.5)を得た。
【0043】
処方例 乳液
【表8】

【0044】
処方例 モイスチャークリーム
【表9】

【0045】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を70℃に加熱し、完全溶解した後、油相部を水相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を30℃まで冷却し、モイスチャークリーム(pH:7.0)を得た。得られたモイスチャークリームは美しい淡緑色を呈していた。
【0046】
処方例 洗顔クリーム
【表10】

【0047】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を75℃に加熱し、溶解した後、水相部をゆっくりと油相部に混合し、その後良く攪拌した後、30℃まで冷却し、洗顔クリーム(pH:8.5)を得た。得られた洗顔クリームは美しい淡緑色を呈していた。
【0048】
処方例 サンスクリーンクリーム
【表11】

【0049】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を75℃に加熱し、完全溶解した後、油相部を水相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を30℃まで冷却し、サンスクリーンクリーム(pH:6.0)を得た。
【0050】
処方例 リキッドファンデーション(シェイクウェルタイプ)
【表12】

【0051】
処方例 石けん
【表13】

【0052】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を70℃に加熱し、完全溶解した後、油相部を水相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を30℃まで冷却し、石けん(pH:8.5)を得た。得られた石けんは美しい淡緑色を呈していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉に含まれる葉緑素中の鉄が銅に置き換わっている銅処理茶葉からなる、化粧料用添加剤。
【請求項2】
銅処理茶葉が茶葉を銅の存在下で加熱する工程を含む方法にて茶葉を処理して得られる、請求項1記載の化粧料用添加剤。
【請求項3】
茶葉と水の混合物を銅製釜中で加熱しながら濃縮する工程を含む方法にて得られる、請求項2記載の化粧料用添加剤。
【請求項4】
銅処理茶葉の乾燥粉末である、請求項1〜3いずれかに記載の化粧料用添加剤。
【請求項5】
スクラブ剤として用いられる、請求項4記載の化粧料用添加剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の化粧料用添加剤が配合された化粧料。
【請求項7】
スクラブ入り皮膚洗浄剤である、請求項5記載の化粧料。

【公開番号】特開2012−224562(P2012−224562A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91779(P2011−91779)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(597021026)大日本化成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】