説明

化粧料用粉体および化粧料

【課題】 耐久性、落下強度、紫外線遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に優れたファンデーション等の化粧料が得られる化粧料用粉体を提供すること。
【解決手段】
水添植物油、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油および(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリルから成る油性組成物とアルキルポリシロキサンとの混合物を、顔料または体質顔料に混合処理して得ることを特徴とする化粧料用粉体および該化粧料用粉体を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐久性、落下強度、紫外線遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に優れたファンデーション等の化粧料が得られる化粧料用粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ケイ素化合物で表面処理した顔料または体質顔料は撥水性に優れることからファンデーション等の化粧料に広く使用されている。
【0003】
この撥水性の化粧料用粉体を得るために、有機ケイ素化合物で表面処理する方法として、従来、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたり、アルキルポリシロキサンと有機溶媒等を用いて加熱処理をしたり(特許第3079395号)、特定の反応性ポリシロキサンを用いる(特開平7−196946)ことが行われてきた。
【0004】
しかしながら、これら従来の方法で得られた粉体は水素が残留していて、該粉体を用いての化粧料製造の際危険であったり、ファンデーション等の化粧料にした時、耐久性、落下強度、紫外線遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に劣るものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような状況下でなされたものであり、耐久性、落下強度、紫外線遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に優れたファンデーション等の化粧料が得られる化粧料用粉体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
1.水添植物油、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油および(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリルから成る油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物を、顔料または体質顔料に混合処理して得ることを特徴とする化粧料用粉体。
2.油性組成物が水添植物油35〜45重量%、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル20〜30重量%、イソステアリン酸水添ヒマシ油15〜25重量%、(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリル10〜20重量%を含有する請求項1記載の化粧料用粉体。
3.水添植物油が水添パーム核油である請求項1または2記載の化粧料用粉体。
4.有機ケイ素化合物がメチルポリシロキサンである請求項1〜3のいずれか1項記載の化粧料用粉体。
5.油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物の混合比率が1:7(重量比)〜3:5(重量比)である請求項1〜4のいずれか1項記載の化粧料用粉体。
6.請求項1〜5のいずれか1項記載の化粧料用粉体を配合することを特徴とする化粧料。
よりなる手段によって、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明による化粧料用粉体は、特定の油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物を処理したものであるため、従来の有機ケイ素化合物単独の処理によるものに比べ落下強度、紫外線遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明に用いる油性組成物は水添植物油、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油および(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリルの4成分から成る。水添植物油は撥水性と人間の体温域で固体から液体になる融点特性(34℃〜37℃)を、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルは艶、付着性、抱水性を、イソステアリン酸水添ヒマシ油は粉体および顔料の分散性と抱水性を、そして(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリルは付着性、光沢性、顔料分散性等の物性を付与、向上する。
【0009】
本発明に用いる水添植物油としては、水添ナタネ油、水添パーム油、水添パーム核油、水添ヒマシ油、水添ヤシ油、水添綿実油、水添ピーナッツ油、水添大豆油、水添野菜油などが例示できるが、融点特性の点から特に水添パーム核油が好ましい。
【0010】
前記4成分の組成割合は任意であるが、特に水添植物油35〜45重量%、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル20〜30重量%、イソステアリン酸水添ヒマシ油15〜25重量%、(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリル10〜20重量%である時、前記物性の付与、向上に効果があり、また粉体間の静電気防止効果を付与する。
【0011】
本発明に用いる有機ケイ素化合物としては、メチルポリシロキサン、モノヒドロキシシロキサン、ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、モノアルコキシポリジメチルシロキサン、ジアルコキシポリジメチルシロキサン、トリアルコキシポリジメチルシロキサン、ヘキサアルコキシポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサンなどが例示できるが、特にメチルポリシロキサンが前記物性を付与、向上する上で好ましい。
【0012】
本発明に用いる油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物の混合比率は任意であるが、特に1:3(重量比)とする時、前記物性を付与、向上する上で好ましい。
【0013】
本発明に用いる顔料または体質顔料としては、化粧料用に用いられるものであれば特に制限されることはなく、例えば、有機、無機の顔料、マイカ、タルク、セリサイト、カオリン等の体質顔料を挙げることができる。
【0014】
本発明の混合処理において、油性組成物と有機ケイ素化合物との前記混合物は、顔料または体質顔料との合計量の0.1〜20.0重量%が使用される。
【0015】
本発明の化粧料用粉体は前記の油性組成物と有機ケイ素化合物とを混合、溶解後、次いで顔料または体質顔料と混合処理することにより得られる。この時、他の有機溶媒、水などの溶媒を併用してもよい。混合は通常の混合機を用いればよく、また噴霧による混合でもよい。処理温度は用いる油性組成物、有機ケイ素化合物、顔料また体質顔料、溶媒の耐熱性、揮発性、反応性に応じて適宜選択される。
【0016】
本発明によって得られる化粧料用粉体は化粧料、特にパウダリーファンデーション、リキッドファンデーション、ルージュ、アイシャドー等に配合することができる。配合量は剤型により任意であり、例えばパウダリーファンデーションであれば、10〜95重量%配合される。
【0017】
本発明によって得られる化粧料用粉体を化粧料に配合する場合、通常化粧料に配合し得る添加成分、例えば、油性成分、界面活性剤、保湿剤、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、防腐剤、色素、香料、薬剤等を、本発明の目的、効果を損なわない範囲内で適宜配合することができる。
【実施例】
【0018】
次に本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
<本発明の化粧料用粉体A>
水添パーム核油40重量%、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル25重量%、イソステアリン酸水添ヒマシ油20重量%、(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリル15重量%から成る油性組成物25.0重量%とジメチルポリシロキサン75.0重量%とを混合し、次いでこの油性組成物4.0重量%とセリサイト96.0重量%とをミキサーで室温下、混合して化粧料用粉体Aを得た。
<実施例1:パウダリーファンデーションA>
本発明の化粧料用粉体A 60.0重量%
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆タルク 19.3
酸化チタン 9.0
メタクリル酸メチルクロスポリマー 4.0
トリオクタノイン 6.0
パラベン 0.1
着色剤 1.6
100.0
<比較例1:パウダリーファンデーションB>
パウダリーファンデーションA中の本発明の化粧料用粉体Aに代えて、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆セリサイトを60.0重量%配合してパウダリーファンデーションBを得た。
【0020】
<パウダリーファンデーションの落下強度の比較>
成型品を高さ50cmから鉄板上に落下させ、欠けるまでの回数を測定して、平均値(n=5)を比較した結果、実施例1は5.0回、比較例は2.8回であった。
【0021】
<紫外線の遮断効果の比較>
SPFアナライザーを用いて、SPF値、PA値を測定した結果、次の値を得た。
実施例1:SPF値26、PA値5.8(++)
比較例1:SPF値20、PA値4.0(++)
【0022】
<顔料分散性の比較>
測色機(ミノルタ3610:D65光源、角度−10度)を用いて測色した結果、次の結果を得た。
実施例1:L値75.47、a値11.91、b値25.66
比較例1:L値78.06、a値10.79、b値23.67
実施例1は比較例1に比べ濃い色調を示しており、分散程度が大きいことが確認できた。
【0023】
<使用感触>
17名の女性パネル(19〜60才)が実施例1のパウダリーファンデーションAを使用した時の使用感触は次のようであった。
透明感:82.4%が満足
付着性:64.6%が満足
シットリ感:64.7%が満足
【0024】
<本発明の化粧料用粉体B>
水添パーム核油40重量%、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル25重量%、イソステアリン酸水添ヒマシ油20重量%、(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリル15重量%から成る油性組成物25.0%重量%とジメチルポリシロキサン75.0重量%を混合し、次いでこの油性組成物4.0重量%とセリサイト96.0重量%とをミキサーで室温下、混合して化粧料用粉体Bを得た。
<実施例2 : パウダリーファンデーションC>
本発明の化粧料用粉体B 45.0重量%
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆合成金雲母 15.0
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆酸化チタン 9.0
メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆タルク 8.0
トリオクタノイン 7.0
ナイロンパウダー 5.0
メタクリル酸メチルクロスポリマー 5.0
酸化亜鉛 3.0
酸化鉄 1.7
スクワラン 1.0
防腐剤 0.2
トコフェロール 0.1
100.0
<比較例2 : パウダリーファンデーションD>
パウダリーファンデーションC中の本発明の化粧料用粉体Bに代えて、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆セリサイト45.0重量%を配合してパウダリーファンデーションDを得た。
【0025】
<粉体間の静電気防止効果の比較>
実施例2の成型品と比較例2の成型品をそれぞれ500個ずつ製造し、粉体加工時及び成型時静電気を帯びるため成型品表面に生じる斑点の数を比較したところ、次のような結果であった。
実施例2 : 斑点が生じた成型品の数は13個(2.6%)であった。
比較例2 : 斑点が生じた成型品の数は56個(11.2%)であった。
周知のようにファンデーション、アイシャドー等は配合される粉体間で粉体同士或いは粉体単体で静電気を帯び1次凝集、2次凝集し易い物質、例えばナイロンパウダー、ポリメタクリル酸メチル等の滑剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体、顔料が配合されており成型する際不良率発生が大きな問題であった。本発明品は上記結果から明らかなようにかなりの確率でこの問題を解消し作業性の改善と原価削減を可能にするものである。
【0026】
以上、本発明の化粧料用粉体は、化粧料、特にパウダリーファンデーションに用いた時、耐久性、落下強度、紫外線の遮断効果、顔料分散性、使用感触、粉体間の静電気防止効果に優れるものであり、当該化粧料の品質を向上させ且つ作業性の改善と原価削減を可能にするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添植物油、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリヌリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油および(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリルから成る油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物を、顔料または体質顔料に混合処理して得ることを特徴とする化粧料用粉体。
【請求項2】
油性組成物が水添植物油35〜45重量%、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル20〜30重量%、イソステアリン酸水添ヒマシ油15〜25重量%、(水添ロジン・ジイソステアリン酸)グリセリル10〜20重量%を含有する請求項1記載の化粧料用粉体。
【請求項3】
水添植物油が水添パーム核油である請求項1または2記載の化粧料用粉体。
【請求項4】
有機ケイ素化合物がメチルポリシロキサンである請求項1〜3のいずれか1項記載の化粧料用粉体。
【請求項5】
油性組成物と有機ケイ素化合物との混合物の混合比率が1:7(重量比)〜3:5(重量比)である請求項1〜4のいずれか1項記載の化粧料用粉体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の化粧料用粉体を配合することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2006−273829(P2006−273829A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122890(P2005−122890)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(505090609)オーケム通商株式会社 (2)
【Fターム(参考)】