説明

化粧料用組成物

【課題】べたつきが無く使用感に優れ、且つ優れた洗浄力を有するローションタイプの透明化粧料用組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の化粧料用組成物は、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水を含有する化粧料用組成物で、前記水の含有量が化粧料用組成物全量の60重量%以上であることを特徴とする。前記モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルとしては、下記式(1)で表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテル化合物が好ましい。
RO−(C362)n−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を示す。nはグリセリンの平均重合度を示し、1〜10である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローションタイプの化粧料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローションタイプの化粧料用組成物(例えば、クレンジングローション等)は、主に水分(通常、化粧料用組成物全量の70〜90重量%程度配合)、油性成分、及び界面活性剤の3成分を配合したものが提供されていた。しかし、近年、消費者の間では、油性成分特有のべたつきが嫌われる傾向がある。その一方で、クレンジングローションには、ウォータープルーフ性マスカラ等の疎水性の高い化粧料の洗浄に使用することができる優れた洗浄力が求められている。
【0003】
化粧料用組成物のべたつきを解消する方法として、べたつきの原因となる油性成分を含有しないクレンジングローションが提供されるようになった。油性成分を含有しないクレンジングローションは、べたつきが無くさっぱりした使用感を有するが、洗浄力が低下する。洗浄力を向上させるために界面活性剤を増量すると界面活性剤特有のべたつきが生じるだけでなく、皮膚刺激性が強まり炎症等を引き起こす恐れがある。そのため、洗浄力、使用感、及び安全性を兼ね備えることが困難であった。
【0004】
一方で、シリコーンオイルは皮膚表面に塗布すると化粧料と容易に馴染み、化粧料を皮膚表面から速やかに浮き上がらせるという油性成分特有の性質は有するが、他の油性成分のようなべたつき感は無い。そこで、油性成分としてシリコーンオイルを配合した、べたつきが無く洗浄力に優れる化粧料用組成物の開発が行われていた。しかし、シリコーンオイルは水への可溶化が極めて困難であり、水と混合すると不透明の外観を呈し美観を損なうことから、ウォータープルーフ性マスカラ等の疎水性の高い化粧料に対して十分な洗浄力を発揮できる程度の量のシリコーンオイルを含有するローションタイプの化粧料用組成物を調製することは困難であった。
【0005】
界面活性剤を増量することなくシリコーンオイルを可溶化する方法としては、界面活性剤と共にエタノールなどのアルコールを可溶化補助剤として使用する方法が知られている(特許文献1)。しかし、可溶化力の高いアルコール(例えば、エタノール)は刺激性が強いため化粧料のへの配合には適さず、低刺激性のアルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール)は、自己組織化阻害能を生じミセルが形成されにくくなるため、やはり化粧料への配合には適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−226617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、べたつきが無く使用感に優れ、且つ優れた洗浄力を有するローションタイプの透明化粧料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記事項を見出した。
1、特定の構造を有する低刺激性のモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルを界面活性剤として使用すると、シリコーンオイルを含有するO/W型ミセル溶液から成る刺激性の低いローションタイプの化粧料用組成物を形成することができる
2、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、べたつきが無く、油性成分としての洗浄作用と、補助活性剤(可溶化補助剤)としての界面活性作用を併せ持ち、前記界面活性剤と組み合わせて使用すると、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)(以後、単に「シリコーンオイル」と称する場合がある)の水に対する溶解性を著しく向上させることができ、界面活性剤を増量すること無しにシリコーンオイルを高含有し、ウォータープルーフ性マスカラ等の疎水性の高い化粧料に対して優れた洗浄力を有する低刺激性の化粧料用組成物が得られる
3、前記化粧料用組成物は、油性成分特有のべたつきを有さないシリコーンオイルとポリエーテル変性シリコーンオイルとを油性成分として高含有するため、べたつきが無く使用感が優れ、且つ、シリコーンオイルが界面活性剤とポリエーテル変性シリコーンオイルによって安定なO/W型ミセル内部に包含され、水中に高分散されてマイクロエマルションを形成し、該分散状態が維持されるため透明の外観を有すること
本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水を含有する化粧料用組成物で、前記水の含有量が化粧料用組成物全量の60重量%以上であることを特徴とする化粧料用組成物を提供する。
【0010】
前記モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルとしては、下記式(1)
RO−(C362)n−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を示す。nはグリセリンの平均重合度を示し、1〜10である)
で表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテルが好ましく、HLB値は8.0〜12.0が好ましい。
【0011】
前記ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値は3.0〜15.0が好ましい。
【0012】
前記モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水の化粧料用組成物全量に対する含有量としては、下記範囲であることが好ましい。
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル:1〜10重量%
ポリエーテル変性シリコーンオイル:1〜10重量%
シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く):1〜20重量%
水:60〜97重量%
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化粧料用組成物は、油性成分としての洗浄作用と、補助活性剤としての界面活性作用を併せ持つポリエーテル変性シリコーンオイルを含有するため、界面活性剤を増量することなく、ウォータープルーフ性マスカラ等の疎水性の高い化粧料に対して十分な洗浄力を発揮できる量のシリコーンオイルを安定なO/W型ミセル内部に包含させて水中に高分散し、マイクロエマルションを形成することができ、前記疎水性の高い化粧料に対して極めて優れた洗浄力を有し且つ透明の外観を有するローションタイプの化粧料用組成物を形成することができる。
また、発明に係る化粧料用組成物は油性成分として、べたつき感のないポリエーテル変性シリコーンオイルとシリコーンオイルとを有するため、使用感に優れる。
更にまた、本発明に係る化粧料用組成物は、界面活性剤として低刺激性のモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルを少量使用するだけで、前記疎水性の高い化粧料に対して十分な洗浄力を発揮できる量のシリコーンオイルを水中に高分散することができ、且つ、該分散状態を維持することができるため、低刺激性で安全性に優れる。
本発明に係る化粧料用組成物は、外観に優れ、洗浄力、安全性及び使用感に優れるため、クレンジングローションとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル]
本発明の化粧料用組成物は、界面活性剤として刺激性が低く安全性に優れるモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルを使用する。モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルとしては、モノグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテル、モノグリセリンジアルキル又はアルケニルエーテル、ポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテル、及びポリグリセリンジアルキル又はアルケニルエーテル等を挙げることができる。
【0015】
本発明においては、なかでも、下記式(1)表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテルを使用することが、疎水性の強いシリコーンオイルに対し、より優れた可溶化力を有する点で好ましい。式(1)中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を示す。nはグリセリンの平均重合度を示し、1〜10である
RO−(C362)n−H (1)
【0016】
式(1)の括弧内のC362は、下記式(2)及び(3)で示される両方の構造を有する。
−CH2−CHOH−CH2O− (2)
−CH(CH2OH)CH2O− (3)
【0017】
式(1)中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を示す。炭素数8〜22の直鎖状アルキル基としては、例えば、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ラウリル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−パルミチル、n−ヘプタデシル、n−ステアリル、n−ノナデシル、n−エイコシル、n−ヘンエイコシル、n−ドコシル基等を挙げることができる。炭素数8〜22の直鎖状アルケニル基としては、例えば、n−オクテニル、n−ノネニル、n−デセニル、n−ウンデセニル、n−ドデセニル、n−トリデセニル、n−テトラデセニル、n−ペンタデセニル、n−ヘキサデセニル、n−ヘプタデセニル、n−エライジル、n−オレイル、n−ノナデセニル、n−ガドレイル、n−エイコセニル、n−ヘンエイコセニル、n−ドコセニル基等を挙げることができる。
【0018】
ヒドロキシル基を有する炭素数8〜22の直鎖状アルキル基又はアルケニル基としては、上記炭素数8〜22の直鎖状アルキル基又はアルケニル基の1個以上の水素原子がヒドロキシル基で置換された基を挙げることができる。
【0019】
炭素数8〜22の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソオクチル、s−オクチル、t−オクチル、イソノニル、s−ノニル、t−ノニル、イソデシル、s−デシル、t−デシル、イソウンデシル、s−ウンデシル、t−ウンデシル、イソラウリル、s−ラウリル、t−ラウリル、イソトリデシル、s−トリデシル、t−トリデシル、イソテトラデシル、s−テトラデシル、t−テトラデシル、イソペンタデシル、s−ペンタデシル、t−ペンタデシル、イソパルミチル、2−ヘキシルデシル、s−パルミチル、t−パルミチル、イソヘプタデシル、s−ヘプタデシル、t−ヘプタデシル、イソステアリル、s−ステアリル、t−ステアリル、イソノナデシル、s−ノナデシル、t−ノナデシル、2−オクチルラウリル、イソエイコシル、s−エイコシル、t−エイコシル、イソヘンエイコシル、s−ヘンエイコシル、t−ヘンエイコシル、イソドコシル、s−ドコシル、t−ドコシル基等を挙げることができる。炭素数8〜22の分岐鎖状アルケニル基としては、例えば、イソオクテニル、s−オクテニル、t−オクテニル、イソノネニル、s−ノネニル、t−ノネニル、イソデセニル、s−デセニル、t−デセニル、イソウンデセニル、s−ウンデセニル、t−ウンデセニル、イソドデセニル、s−ドデセニル、t−ドデセニル、イソトリデセニル、s−トリデセニル、t−トリデセニル、イソテトラデセニル、s−テトラデセニル、t−テトラデセニル、イソペンタデセニル、s−ペンタデセニル、t−ペンタデセニル、イソヘキサデセニル、s−ヘキサデセニル、t−ヘキサデセニル、イソヘプタデセニル、s−ヘプタデセニル、t−ヘプタデセニル、イソオレイル、s−オレイル、t−オレイル、イソノナデセニル、s−ノナデセニル、t−ノナデセニル、イソエイコセニル、s−エイコセニル、t−エイコセニル、イソヘンエイコセニル、s−ヘンエイコセニル、t−ヘンエイコセニル、イソドコセニル、s−ドコセニル、t−ドコセニル基等を挙げることができる。
【0020】
ヒドロキシル基を有する炭素数8〜22の分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基としては、上記炭素数8〜22の分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基の1個以上の水素原子がヒドロキシル基で置換された基を挙げることができる。
【0021】
式(1)で表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテルにおけるRとしては、なかでも、水溶性が高く、シリコーンオイルの可溶化力に優れる点で、炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基が好ましく、特に、n−ラウリル基、n−ミリスチル基、n−パルミチル基等の炭素数8〜22(特に炭素数12〜14)の直鎖状アルキル基が好ましい。
【0022】
式(1)中、nはグリセリンの平均重合度を示し、例えば1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である。nの値が1を下回ると疎水性が高まり、水に対する可溶化力が低下する傾向がある。一方、nの値が10を上回ると親水性が高まり、シリコーンオイルに対する可溶化力が低下する傾向がある。
【0023】
式(1)で表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテルの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩基性触媒の存在下、脂肪族アルコールに、該アルコールとグリシドールの存在比(モル比)が特定の値となるようにグリシドールを添加して反応させる方法;モノ若しくはポリグリセリンにα−オレフィンエポキシドを反応させる方法;酸触媒もしくはアルカリ触媒の存在下でアルキルグリシジルエーテルを、モノ若しくはポリグリセリンを用いて開環させる方法等が挙げられる。
【0024】
本発明におけるモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルのHLB値としては、例えば8.0〜12.0、好ましくは9.0〜11.0、特に好ましくは9.5以上、11.0未満である。HLB値が上記範囲を下回ると、疎水性が高くなりすぎ、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルがシリコーンオイルにのみ溶解し、水への溶解が困難となる傾向があり、マイクロエマルションの形成が困難となる傾向がある。一方、HLB値が上記範囲を上回ると、親水性が高くなりすぎ、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルが水にのみ溶解し、シリコーンオイルへの溶解が困難となる傾向があり、マイクロエマルションの形成が困難となる傾向がある。モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルのHLB値は、例えば、アルキル基又はアルケニル基の炭素数を多くすることでHLB値を下げ、またポリグリセリンの重合度を上げるとHLB値を上げることができる。そのため、以上の分子構造を制御することによりHLB値を調整することができる。
【0025】
本発明におけるモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルの好ましい例としては、モノグリセリンモノラウリルエーテル(HLB値:8.5)、ジグリセリンモノラウリルエーテル(HLB値:10.6)、トリグリセリンモノミリスチルエーテル(HLB値:11.0)等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
[ポリエーテル変性シリコーンオイル]
本発明のポリエーテル変性シリコーンオイルは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、1個以上のポリオキシアルキレン基を置換基として有するものである。また、前記主鎖は環を形成していてもよい。
【0027】
ポリオキシアルキレン基の結合位置は特に限定されず、主鎖の両末端(両末端型:下記式(4)で表される)又は片末端(片末端型:下記式(5)で表される)に有していてもよいし、側鎖(側鎖型:下記式(6)で表される)に有していてもよい。さらに、側鎖及び両末端に置換基を有していてもよく(側鎖及び両末端型:下記式(7)で表される)、側鎖及び片末端に置換基を有していてもよい(側鎖及び片末端型:下記式(8)で表される)。下記式(6)〜(8)で表される化合物は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等の何れであってもよい。
【0028】
【化1】

【0029】
上記式中のX1はポリオキシアルキレン基であり、m、nは、1以上の整数である。m、nは、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0030】
1におけるポリオキシアルキレン基は、一般式[−O−(Cs2sO)t−H]で表される。上記一般式中、sは例えば2〜5、好ましくは2〜3を示す。tはオキシアルキレン基の付加数を示し、例えば2〜20、好ましくは3〜10である。sが2の場合は、上記一般式で表されるポリオキシアルキレン基はポリオキシエチレン基であり、sが3の場合はポリオキシプロピレン基である。例えば、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテル変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルにエチレンオキサイドを付加することにより合成することができ、ポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルにプロピレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0031】
本発明におけるポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、なかでも、HLB値が、例えば3.0〜15.0、好ましくは4.0〜5.0であるものが、より多量のシリコーンオイルをミセル内部に包含して高分散し、該高分散状態を維持することができる点で好ましい。HLB値は、例えば、ポリオキシアルキレン基の付加数により調整することができる。
【0032】
本発明におけるポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、特に、より優れた補助活性剤能(シリコーンオイルを水に可溶化させる能力)を発揮することができる点で、上記式(6)で表され、mが1〜10、nが1〜10である側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。
【0033】
本発明においては、例えば、商品名「KF−6011」(HLB:14.5)、「KF−6011P」(HLB:14.5)、「KF−6012」(HLB:7.0)、「KF−6013」(HLB:10.0)、「KF−6015」(HLB:4.5)、「KF−6016」(HLB:4.5)、「KF−6017」(HLB:4.5)、「KF−6017P」(HLB:4.5)、「KF−6043」(HLB:14.5)、「KF−6004」(HLB:9.0)等の側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;商品名「KF−6028」(HLB:4.0)、「KF−6028P」(HLB:4.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル(以上、信越シリコーン(株)製)の市販品を好適に使用することができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
[シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)]
本発明のシリコーンオイルは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、置換基を有していてもよい。また、前記主鎖は、環を形成していてもよい。シリコーンオイルには、ストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)が含まれる。
【0035】
前記ストレートシリコーンオイルは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、置換基を有する場合、置換基はメチル基及び/又はフェニル基であり、メチル基、フェニル基以外の置換基は有さない。
【0036】
ストレートシリコーンオイルにおける置換基の結合位置は特に限定されず、主鎖の両末端(両末端型:下記式(9)で表される)又は片末端(片末端型:下記式(10)で表される)に有していてもよいし、側鎖(側鎖型:下記式(11)で表される)に有していてもよい。さらに、側鎖及び両末端に置換基を有していてもよく(側鎖及び両末端型:下記式(12)で表される)、側鎖及び片末端に置換基を有していてもよい(側鎖及び片末端型:下記式(13)で表される)。全ての側鎖及び末端がメチル基で置換されていてもよい(下記式(14)で表される)。下記式(11)〜(13)で表される化合物は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等の何れであってもよい。
【0037】
【化2】

【0038】
上記式中のX2、X3、X4は水素原子又はフェニル基であり、m’、n’は、1以上の整数である。X2、X3、X4は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。m’、n’もまた、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0039】
ストレートシリコーンオイルの具体例としては、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、及び前記ジメチルシリコーンが環を形成して成る環状ジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーン等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等が、優れた洗浄力を有しつつ、より一層べたつきを抑えることができる点で好ましく、例えば、商品名「FK−995」(シクロペンタシロキサン、信越シリコーン(株)製)、商品名「SS−3408」(カプリリルメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「KF−56A」(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、信越シリコーン(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0040】
前記変性シリコーンオイルは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、メチル基、フェニル基、ポリオキシアルキレン基以外の置換基を有するものである。
【0041】
前記メチル基、フェニル基、ポリオキシアルキレン基以外の置換基としては、例えば、炭素数2以上のアルキル基、アラルキル基、エポキシ基、フッ素原子、アミノ基、カルボキシル基、脂肪族ヒドロキシル基(アルコール性水酸基)、フェニル基以外の芳香族ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)、(メタ)アクリロイル基含有基等を挙げることができる。
【0042】
変性シリコーンオイルにおける前記置換基の結合位置は特に限定されず、上記ストレートシリコーンオイルにおける置換基の結合位置と同様であり、主鎖の両末端(両末端型)又は片末端(片末端型)に有していてもよいし、側鎖に有していてもよく(側鎖型)、さらに、側鎖及び両末端(側鎖及び両末端型)、又は側鎖及び片末端(側鎖及び片末端型)に置換基を有していてもよいし、全ての側鎖及び末端が置換されていてもよい。
【0043】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、商品名「KF−6104」(HLB:10.0、ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越シリコーン(株)製)、商品名「KF−6100」(HLB:8.0、ポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコン、信越シリコーン(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0044】
[化粧料用組成物]
本発明の化粧料用組成物は、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水を含有する化粧料用組成物で、前記水の含有量が化粧料用組成物全量の60重量%以上であることを特徴とする。
【0045】
本発明の化粧料用組成物における水の配合量は化粧料用組成物全量の60重量%以上であり、例えば60〜97重量%、好ましくは70〜93重量%程度、特に好ましくは75〜90重量%程度、最も好ましくは75〜89重量%程度である。水の配合量が上記範囲を下回ると、ローションタイプとしての使用が困難となる。
【0046】
本発明の化粧料用組成物中のモノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルの配合量としては、例えば、化粧料用組成物全量の1.0〜10.0重量%程度、好ましくは2.0〜9.0重量%程度、特に好ましくは4.0〜8.5重量%程度である。モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルの配合量が上記範囲を下回ると、可溶化力が不十分となり化粧料用組成物の透明性が低下する傾向がある。また、洗浄力も低下する傾向がある。一方、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルの配合量が上記範囲を上回ると、不経済であるばかりでなく、べたつき感、皮膚刺激性が増加し使用感及び安全性が低下する傾向がある。
【0047】
本発明の化粧料用組成物中のポリエーテル変性シリコーンオイルの配合量としては、例えば、化粧料用組成物全量の1.0〜10.0重量%程度、好ましくは1.0〜8.0重量%程度、特に好ましくは1.5〜7.0重量%程度、最も好ましくは1.5〜5.0重量%程度である。ポリエーテル変性シリコーンオイルの配合量が上記範囲を下回ると、可溶化力が低下して、洗浄力を確保するために十分な量の油性成分を配合することが困難となり、洗浄力が低下する傾向がある。また、化粧料用組成物の透明性が低下する傾向がある。一方、ポリエーテル変性シリコーンオイルの配合量が上記範囲を上回ると、ポリエーテル変性シリコーンオイルがシリコーンオイルにのみ溶解してしまい、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、水とのミセル形成が困難となる傾向がある。
【0048】
本発明の化粧料用組成物中のシリコーンオイルの配合量としては、例えば、化粧料用組成物全量の1.0〜20.0重量%であり、好ましくは3.0〜20.0重量%程度、特に好ましくは3.0〜18.0重量%程度、最も好ましくは4.0〜17.0重量%程度である。シリコーンオイルの配合量が上記範囲を下回ると、洗浄力が低下する傾向がある。一方、シリコーンオイルの配合量が上記範囲を上回ると、可溶化が困難となり化粧料用組成物の透明性が低下する傾向がある。
【0049】
また、本発明の化粧料用組成物中の油性成分(ポリエーテル変性シリコーンオイル及びシリコーンオイル)の配合量としては、例えば、化粧料用組成物全量の2.0〜20.0重量%未満、好ましくは4.0〜20.0重量%程度、特に好ましくは5.0〜20.0重量%程度、最も好ましくは15.0〜18.0重量%程度である。油性成分の配合量が上記範囲を上回ると、相対的に水の配合量が少なくなり、ローションタイプとしての使用が困難となる傾向がある。一方、油性成分の配合量が上記範囲を下回ると、洗浄力が低下する傾向がある。
【0050】
ポリエーテル変性シリコーンオイルとシリコーンオイルの配合量の比(前者:後者(重量%))としては、例えば、1:1〜1:10程度、好ましくは1:1〜1:4程度である。ポリエーテル変性シリコーンオイルとシリコーンオイルの配合量の比が上記範囲を外れると、マイクロエマルションの形成が困難となり、化粧料用組成物の透明性が低下する傾向がある。
【0051】
本発明に係る化粧料用組成物には、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル及び水以外に、必要に応じて他の添加物、例えば、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を配合してもよい。これらを配合することにより、肌感触を向上させることができる。
【0052】
両性界面活性剤としては、通常の化粧料用組成物に用いられるものであれば特に制限されることがなく、例えば、カルボベタイン系活性剤、アミドベタイン系活性剤、スルホベタイン系活性剤、ホスホベタイン系活性剤、イミダゾリウムベタイン系活性剤、アミンオキサイド系活性剤等を挙げることができる。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、通常の化粧料用組成物に用いられるものであれば特に制限されることがなく、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、C8-12脂肪酸モノグリセリド、グリセリンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、C6-24脂肪酸ジエタノールアミド、C6-24脂肪酸モノエタノールアミド、グリセリン脂肪酸(C6-24)エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤等を挙げることができる。
【0054】
本発明に係る化粧料用組成物には、更にまた、通常の化粧料用組成物に用いられる成分、例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性ポリマー等の粘度調整剤;ポリオール類等の保湿成分;スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、高級アルコール、ラノリン、エステル等の油性成分;アミド、増泡剤、防腐剤、水溶性高分子、pH調整剤、紫外線吸収剤、パール化剤、酸化防止剤、香料、色素等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0055】
本発明の化粧料用組成物は、上記モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル、水(例えば、蒸留水、精製水、工業用精製水、脱イオン水等)、及び必要に応じて他の添加物を混合、撹拌することにより製造することができる。本発明の化粧料用組成物では、モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、及びポリエーテル変性シリコーンオイルの界面活性作用により、疎水性の高い化粧料に対して十分な洗浄力を発揮できる量のシリコーンオイルを極めて小さい粒度を有する安定したミセル中に含有して高分散することができるため[水中油型(O/W型)マイクロエマルションを形成することができるため]、透明性を有し外観が美しい化粧料用組成物が得られる。
【0056】
本発明の化粧料用組成物中に含有するミセルの最大粒度としては、例えば1μm以下、好ましくは500nm以下、特に好ましくは100nm以下である。尚、前記ミセルの最大粒度は、例えばナノトラック粒度分析計を使用して測定することができる。
【0057】
また、本発明に係る化粧料用組成物は、油性成分としてポリエーテル変性シリコーンオイル及びシリコーンオイルを含有するため、疎水性の高い化粧料(例えば、ウォータープルーフ性マスカラ、口紅、ファンデーション等)に対して優れた洗浄力を有する。その上、前記ポリエーテル変性シリコーンオイル及びシリコーンオイルは油性成分特有のべたつきがないため使用感にも優れる。更に、ポリエーテル変性シリコーンオイルは補助活性剤として作用するため、界面活性剤を増量することなく多量の油性成分を配合することができ、優れた洗浄力を有し、低刺激性で安全性の高い、透明性を有するローションタイプの化粧料用組成物を形成することができる。本発明に係る化粧料用組成物は優れた洗浄力、使用感、安全性、及び美しい外観を兼ね備えるため、例えば、クレンジングローション、化粧水等として有用である。
【0058】
特に、本発明に係る化粧料用組成物をクレンジングローションとして使用する場合、例えば、コットン等に含ませて化粧料(例えば、ウォータープルーフ性マスカラ等の疎水性の高い化粧料)を拭き取る用途等に好適に使用することができる。使用後の肌はべたつき感が無く、洗い流す必要がない。そのため、水が無いところでも使用することができ、非常に手軽に使用可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
実施例
下記表1に示す配合組成(重量%)により化粧料用組成物を常法により製造し、透明性及び洗浄力を下記方法で評価した。
【0061】
[透明性]
実施例で得られた各化粧料用組成物の粒度分布をナノトラック粒度分析計(商品名「UPA−EX150/UPA−EX−250」、日機装株式会社製)を使用して測定し、透明性を下記基準に従って評価した。
評価基準
○:最大粒度が100nm以下
△:最大粒度が100nmを超え、10μm未満
×:最大粒度が10μm以上
【0062】
[洗浄力]
上腕部にマスカラ(商品名「ボリューム エクスプレス ターボ ブースト N ウォータープルーフ(ブラック)」、メイベリン ニューヨーク製)0.1gを塗布し、30分間、ドライヤーを使用して乾燥させた。
実施例で得られた各化粧料用組成物 2mLをコットンに染み込ませ、上腕部に塗布したマスカラに1分間馴染ませた後、5回拭き取り、マスカラの落ち度合いから洗浄力を下記基準に従って評価した。
評価基準
○:完全に落ちた
△:ほぼ落ちた
×:落ちが不十分であった
【0063】
上記結果を下記表にまとめて示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水を含有する化粧料用組成物で、前記水の含有量が化粧料用組成物全量の60重量%以上であることを特徴とする化粧料用組成物。
【請求項2】
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルが、下記式(1)
RO−(C362)n−H (1)
(式中、Rはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はアルケニル基を示す。nはグリセリンの平均重合度を示し、1〜10である)
で表されるモノ若しくはポリグリセリンモノアルキル又はアルケニルエーテルである請求項1に記載の化粧料用組成物。
【請求項3】
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテルのHLB値が8.0〜12.0である請求項1又は2に記載の化粧料用組成物。
【請求項4】
ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値が3.0〜15.0である請求項1〜3の何れかの項に記載の化粧料用組成物。
【請求項5】
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)、及び水の化粧料用組成物全量に対する含有量が下記範囲である請求項1〜4の何れかの項に記載の化粧料用組成物。
モノ若しくはポリグリセリンアルキル又はアルケニルエーテル:1〜10重量%
ポリエーテル変性シリコーンオイル:1〜10重量%
シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く):1〜20重量%
水:60〜97重量%

【公開番号】特開2013−95713(P2013−95713A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240901(P2011−240901)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】