説明

化粧料組成物

【解決手段】 水溶液条件(イ)又は(ロ)を満たすポリマーの10重量%水溶液の25℃における剪断応力bと剪断応力aとの比(b/a)が0.45以下である特性を有するポリマーを含有する化粧料組成物〔条件(イ):電解質(ポリマー自体が電解質の場合、そのポリマーを除く電解質)含量が0〜20重量%、条件(ロ):pHが2〜10、剪断応力a:500/秒以下の剪断速度における最大剪断応力、剪断応力b:剪断応力aを示す剪断速度の1/2の剪断速度における剪断応力〕。
【効果】 洗浄効果やマッサージ効果に優れ、かつひりひり感やつっぱり感を生じない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマッサージ効果や洗浄効果を得ることのできる化粧料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】人体用洗浄剤には、通常落ちにくい汚れ、例えば皮膚の余分な角質層や毛穴に入り込んだ汚れ等を物理的力によって落とすために、固体粒子が配合されることがある。また、マッサージ剤には、マッサージによって皮膚を効果的に圧迫し血行を促進したり皮膚の表面の状態を整えるために、固体粒子が配合されることがある。いずれの場合にも、配合された固体粒子に基づく異物感(例えば、ひりひり感やつっぱり感)を感じるという問題があった。本発明の課題は、このような異物感を使用者に与えることなく、固体粒子を配合した場合と同等又はそれ以上の洗浄効果やマッサージ効果を得ることができる化粧料組成物を提供することにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記水溶液条件(イ)又は(ロ)を満たすポリマーの10重量%水溶液の25℃における下記剪断応力bと剪断応力aとの比(b/a)が0.45以下である特性を有するポリマーを含有する化粧料組成物を提供するものである。
条件(イ):電解質(ポリマー自体が電解質の場合、そのポリマーを除く電解質)含量が0〜20重量%。
条件(ロ):pHが2〜10。
剪断応力a:500/秒以下の剪断速度における最大剪断応力。
剪断応力b:剪断応力aを示す剪断速度の1/2の剪断速度における剪断応力。
【0004】本発明化粧料組成物を皮膚に塗布した場合、皮膚上の上記ポリマー水溶液に対して、指や掌で塗り延ばす場合のような緩やかに擦る剪断がかかったときには液体として感じられるものの、洗浄やマッサージを行うために高速で擦るときには全体的に固くなった状態となり、物理力による洗浄効果やマッサージ効果を示すようになる。また、本発明化粧料組成物が示す物理力は固体粒子配合物による場合と異なり、局所に集中することがないので、使用者に異物感を与えない。当然のことながら、本発明化粧料組成物には固体粒子を配合することも可能で、その際に固体粒子と皮膚との直接の接触が起こらないので、固体粒子による過度の刺激が緩和された望ましい状態をつくることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明において、化粧料とは、洗浄剤のみならず、マッサージ剤をも含む概念である。
【0006】本発明に用いるポリマーの特性(以下、ポリマー特性という)は、ポリマーの10重量%水溶液について測定する。当該水溶液は、(イ)pHが2〜10の水溶液であるか、又はポリマーの水に対する溶解度が低い場合にはポリマー水溶液中に(b)20重量%以下(0〜20重量%)の電解質(ポリマー自体が電解質の場合、そのポリマーを除く電解質、以下、ポリマー可溶電解質という)を含有させて、そのポリマーを水に可溶化させた水溶液である。このようなポリマー水溶液は、例えばポリマー10重量部と水90重量部とを加熱して攪拌(例えば80℃にて10時間攪拌)後、常温に静置(例えば25℃で5時間静置)することにより得られる。
【0007】ここで、ポリマー可溶電解質としては、下記カチオンとアニオンとの組合わせからなる低分子電解質が例示され、これらは単独あるいは混合物として用いられる。
カチオン:ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、窒素原子上に炭素数1〜12のアルキル基を1〜4個有する1級〜4級アンモニウム。
アニオン:塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、炭化イオン、炭素数1〜4の脂肪酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、乳酸イオン、グリコール酸イオン、酒石酸イオン、クエン酸イオン、リン酸の炭素数1〜4のモノアルキルエステルイオン、硫酸の炭素数1〜4のモノアルキルエステルイオン、炭素数1〜4のアルカンスルホン酸イオン、炭素数1〜4のアルカンホスホン酸イオン、グルタミン酸イオン、ピロリドンカルボン酸イオン。
【0008】より具体的には、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等が例示される。
【0009】剪断応力a及びbは25℃において測定される。当該剪断応力の測定には、例えばHaake社製Rotovisco 、RV20、センサーシステム“コーン・プレート”PK−0.5が用いられる。剪断応力aは、剪断速度を2分間で1から始めて500/秒まで上昇させて測定する。
【0010】本発明に用いるポリマーの特性は、0<b/a≦0.45であるが、0<b/a≦0.25であるのがより好ましい。
【0011】本発明のポリマー特性を示すものとして両性ポリマーが例示される。その数平均分子量は40,000〜500,000が好ましい。両性ポリマーはアニオン性モノマーとカチオン性モノマーを共重合することにより得られ、必要に応じてこれらのイオン性モノマー以外のモノマーを共重合させることができる。この場合において、重合方法は従来公知のいずれでもよい。
【0012】ここで、アニオン性モノマーとはカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等のアニオン性基を分子内に有するモノマーであり;カチオン性モノマーとは4級アンモニウム塩、1〜3級のアミノ基、4級ホスホニウム基等のカチオン性基を分子内に有するモノマーである。本発明においては、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーとのモル比は20:80から80:20の範囲が好ましく、双方のイオン性モノマーはそれぞれ単一であっても二種以上の混合物であってもよい。
【0013】また、イオン性モノマー以外のモノマーは、ポリマー中、重量分率で65重量%以下が好ましい。イオン性モノマー以外のモノマーがこの範囲内の場合に、本発明のポリマーの特性を容易に得ることができる。
【0014】アニオン性モノマーとしては、スチレンスルホン酸が特に好ましい。カチオン性モノマーとしては、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、エチル硫酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウム、塩化2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムが特に好ましい。その他のモノマーとしては、メタクリル酸エチル等のメタクリレート類、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が特に好ましい。
【0015】本発明の両性ポリマーの合成に用いるイオン性モノマーとして、アニオン性モノマーには水素イオン以外のカチオン性対イオン(例えばナトリウムカチオン)が含まれることがあり、カチオン性モノマーには水酸化物イオン以外のアニオン性対イオン(例えば塩素イオン)が含まれることがある。この場合には、それぞれのモノマーに由来する対イオン群(上記例では、ナトリウムイオンと塩素イオン)を含んでいる。このときには、このような対イオン群を含んだままの状態で、ポリマー特性を測定する検体としてもよい。
【0016】本発明に用いるポリマーとしては、スチレンスルホン酸・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル共重合体、スチレンスルホン酸・アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル共重合体、スチレンスルホン酸・メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル・ジアセトンアクリルアミド共重合体、スチレンスルホン酸・エチル硫酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウム共重合体、スチレンスルホン酸・塩化2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム共重合体が特に好ましい。
【0017】本発明化粧料組成物には、前記ポリマーを組成物中1〜40重量%、特に8〜30重量%配合するのが、皮膚に対する心地よい刺激(以下、マッサージ効果という)及び洗浄効果の点から好ましい。
【0018】本発明組成物が洗浄剤組成物、特に皮膚洗浄剤組成物の場合、前記ポリマーを1〜30重量%(特に好ましくは10〜30重量%)配合し、更に界面活性剤を5〜60重量%(特に10〜40重量%)配合するのが、洗浄効果、マッサージ効果の点から好ましい。ここで界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、リン酸エステル、アシル化アミノ酸、スルホコハク酸類、タウレート系活性剤、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩類、アルキルサッカライド類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、炭素数8以上のアルキル基を有する3級又は4級アンモニウム塩類などが例示される。
【0019】本発明組成物がマッサージ剤組成物の場合、前記ポリマーを1〜40重量%、特に15〜30重量%配合するのがマッサージ効果の点から好ましい。
【0020】本発明化粧料組成物には、更に水、水溶性塩類、油剤、増粘剤、湿潤剤、着色剤、香料、消炎剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、固体粒子を必要に応じて含有できる。
【0021】
【実施例】合成例1〔第一液の調製〕p−スチレンスルホン酸ナトリウム90.0g(純度89.2%)にイオン交換水480gを加えて溶かした。この溶液を氷冷して攪拌し、ここに濃塩酸39.1g、続いてメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル61.20gを、内温が30℃以下に保てる速度で加えた。塩酸、水酸化ナトリウム次いでこの溶液のpHが4.5となるように塩酸と水酸化ナトリウムで調整し、25℃に保った。
【0022】〔第二液の調製〕2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩1.056g(和光純薬社製 V−50)をイオン交換水120gに溶解し、25℃に保った。窒素雰囲気下で攪拌されているイオン交換水500g(70℃)に、第一液と第二液とを同時に2時間かけて滴下し、70℃で5時間攪拌を続けた。その後温度を60℃に下げ、塩化ナトリウムを35.6gと6モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液をpHが7.9になるまで加えて室温に戻し、無色透明溶液としてポリマーを得た。得られた溶液は、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルのp−スチレンスルホン酸塩が重合した構造のポリマー分を10.0重量%、塩化ナトリウム分を3.5重量%含有している。
【0023】得られた溶液18.0gに1モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を42.0g混合して80℃で18時間加熱し、室温に戻してリン酸を加え、pHを7.4にした。こうして得た加水分解物の重量平均分子量は284,000、数平均分子量は159,000であった。この重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル濾過式液体クロマトグラフィーを用いて分析することで求めた。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー(株)製 TSK GMPWXL 2本溶離液:リン酸二水素カリウムを0.1モル/リットルとリン酸水素二ナトリウムを1モル/リットルとを含む水溶液と、アセトニトリルとの9:1の容量比混合物。
検出器:示差屈折率計流 速:1.0ミリリットル/分温 度:40℃標 準:ポリエチレングリコール(重量平均分子量9.20×105 、5.10×105 、2.50×105 、9.50×104 、4.60×104 、3.90×104
検体濃度:0.20g/100ミリリットル溶離液検体溶液注入量:0.20ミリリットル
【0024】得られたポリマー溶液(ポリマー濃度は10重量%)の25℃における剪断速度−剪断応力曲線を図1に示した。この場合の最大応力は剪断速度130/秒において2934Paで、剪断速度65/秒における剪断応力は439Paであり、b/aは0.149であった。
【0025】このようにして得られたポリマー水溶液を乾燥させて水分の一部を除去し、ポリマー分40.0重量%を含有する溶液を調製し、実施例に使用した。
【0026】合成例2〔第一液の調製〕p−スチレンスルホン酸ナトリウム69.4g(純度89.2%)にイオン交換水280gとエチル硫酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウム110.4g(84.6%水溶液)とを加えて溶かし、室温に保った。
【0027】〔第二液の調製〕2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.814g(和光純薬社製 V−50)をイオン交換水120gに溶解し、室温に保った。窒素雰囲気下で攪拌されているイオン交換水400gを70℃に保っているところに、第一液と第二液とを同時に2時間掛けて滴下し、滴下終了後70℃で5時間攪拌を続けた。その後温度を室温に下げ、得られた白色水溶液に塩化ナトリウムを29.4g加えて、無色透明溶液として目的とするポリマーを得た。得られた溶液は、p−スチレンスルホン酸 2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルエチルアンモニウムが重合した構造のポリマー分を7.3%、エチル硫酸ナトリウムを2.9%、塩化ナトリウム分を3.0%含有している。
【0028】得られた溶液17.6gに1モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を42.4g混合して80℃で18時間加熱し、室温に戻してリン酸を加え、pHを7.4にした。こうして得た加水分解物の重量平均分子量は283,000数平均分子量は97,600であった。
【0029】得られたポリマー溶液を濃縮してポリマー分を10重量%とした溶液(pH5.75)の剪断応力測定では、最大応力は剪断速度346/秒において1030Paで、剪断速度173/秒における剪断応力は402Paであり、本文中のb/aは0.390であった。
【0030】このようにして得たポリマー水溶液を乾燥させて水分の一部を除去し、ポリマー分を35.0重量%含有する溶液を調製し、実施例に使用した。
【0031】実施例1、2及び比較例1、2表1の処方にて洗顔料を調製した。同表に記載した使用感の評価は、専門パネラー女性10人に洗顔を行ってもらい、使用感を官能によって以下の基準で判定した。
◎:8人以上が良好と感じた。
○:5〜7人が良好と感じた。
△:2〜4人が良好と感じた。
×:1人以下が良好と感じた。
ここで良好とは、洗顔する際にしっかりとしたこすり感があり、かつ、すすぎ後はひりひりとした痛みやつっぱり感が残らないことを指す。
【0032】
【表1】


【0033】実施例3、4及び比較例3、4表2の処方にてマッサージ剤を調製した。同表に記載した使用感の評価は、専門パネラー女性10人に顔のマッサージを行ってもらい、使用感を官能によって以下の基準で判定したものである。
◎:8人以上が良好と感じた。
○:5〜7人が良好と感じた。
△:2〜4人が良好と感じた。
×:1人以下が良好と感じた。
ここで良好とは、マッサージする際にしっかりとしたこすり感があり、かつ、洗い流した後はひりひりとした痛みやつっぱり感が残らず、肌の風合いが良くなったと感じられたことを指す。
【0034】
【表2】


【0035】表1及び2より、本発明の特定のポリマーを含有する化粧料は、マッサージ効果及び洗浄効果に優れ、かつすすぎ後にひりひりとした痛みやつっぱり感が残らず使用感にも優れていた。
【0036】
【発明の効果】本発明化粧料組成物は、指や掌で塗り延ばす場合のような緩やかに擦る剪断がかかったときには液体として感じられ、一方洗浄やマッサージを行うために高速で擦るときには全体的に固くなった状態となり、物理力による洗浄効果やマッサージ効果を示すようになる。従って、洗浄効果やマッサージ効果に優れ、かつひりひり感やつっぱり感を生じない。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1のポリマー水溶液の25℃における剪断速度と剪断応力の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記水溶液条件(イ)又は(ロ)を満たすポリマーの10重量%水溶液の25℃における下記剪断応力bと剪断応力aとの比(b/a)が0.45以下である特性を有するポリマーを含有する化粧料組成物。
条件(イ):電解質(ポリマー自体が電解質の場合、そのポリマーを除く電解質)含量が0〜20重量%。
条件(ロ):pHが2〜10。
剪断応力a:500/秒以下の剪断速度における最大剪断応力。
剪断応力b:剪断応力aを示す剪断速度の1/2の剪断速度における剪断応力。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2000−178122(P2000−178122A)
【公開日】平成12年6月27日(2000.6.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−354394
【出願日】平成10年12月14日(1998.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】