説明

化粧料組成物

【課題】紫外線防止能があり、乳化安定性および使用感触に優れ、しかも耐水性に優れていると共に、洗浄料による落ちの良い油性成分中に水性成分が乳化または分散している化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、疎水化処理剤及びカチオン性界面活性剤で被覆した改質粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物に関し、特に使用感触に優れ、耐水性に優れていると共に、洗浄料による落ちが良く、日焼け止めに最適な油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に粉体を配合することにより、肌や頭髪の彩色やシミ、ソバカス等を隠蔽したり、紫外線から肌を保護する等の機能を付与している。特に、近年では、耐水性や化粧持ちを向上させたり、分散性を向上させる目的で、表面が疎水化処理された粉体が用いられている(特許文献1、2、3)。
また、化粧持ちを向上させる目的として、疎水性である油性成分を連続相とさせた油中水型乳化化粧料に代表される、油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料が用いられている。そして、耐水性や化粧持ちが特に強く求められるメーキャップ化粧料や紫外線防御乳液等においては、疎水化処理粉末を油中水型化粧料に配合する技術が多用されている(特許文献4)。
【0003】
しかしながら、これらの技術においては、耐水性を向上させると、化粧持ちには優れるものの、石鹸やボディソープなどに代表される通常の水性洗浄剤や洗顔料では落としにくくなり、専用のクレンジング剤を使用することが推奨されている。そのため消費者には、日常使いには不向きであるという印象を与えることがあった。また、洗浄性の優れた基剤では、耐水性や化粧持ちが劣り、化粧持ちと洗浄性を両立させることはできなかった。
【0004】
また、油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料は一般に、べたつきがあり、使用感触が重く、使用性の点で満足できるものではなかった。使用性を改善するために、さらさら感を有する球状粉末を配合する技術も知られているが(特許文献5)、疎水性の球状粉末を配合した場合は、製品粘度が上昇したり、塗布時の伸びの重さ、べたつき、油っぽさが気になり、さらなる使用性の改善が望まれていた。
【0005】
一方、親水性の無水ケイ酸を水性成分中と混合した後、油性成分中に混合した固型化粧料も知られている(特許文献6)。しかしながら、親水性の粉末を油性成分中に安定に分散させることは非常に困難であり、化粧料としての品質を担保するためには、吸水量の極めて高い特異的な粉末を用い、かつワックスなどで、固形状態に固めることが必要であった。また、安定性を確保しながら多量の水性成分を配合することも困難であった。また、化粧料基剤で最も汎用される、乳液状やクリーム状などの流動性のある化粧料に応用可能な技術ではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−286309号公報
【特許文献2】特開2001−72527号公報
【特許文献3】特開平8−119832号公報
【特許文献4】特開2005−232068号公報
【特許文献5】特開平9−263523号公報
【特許文献6】特開2001−335410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紫外線防御機能に優れ、耐水性や化粧持ちに優れるともに、製品安定性を担保しながら、使用性を大幅に改善させ、汎用の水性洗浄料で容易に除去可能である、日常使いにも適した汎用性の高い化粧料基剤を提供することを目的とする。また、油中水型乳化化粧料に代表される、油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料において、親水性粉末を水性成分中に配合した場合に問題であった親水性粉末の凝集や乳化安定性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは耐水性に優れていると共に、洗浄料による落ちが良く、使用感触にも優れた油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料を得るべく鋭意研究を重ねた結果、疎水化処理剤および表面処理剤の一部としてカチオン性界面活性剤を用いた紫外線防御効果を有する基粉体を配合することにより、耐水性と洗浄性とが両立した油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料が得られ、さらに親水性粉末が製剤中で凝集せず安定配合が可能であり、かつ使用感触についても満足しえるものが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、疎水化処理剤及びカチオン性界面活性剤で被覆した改質粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物である。
【0010】
本発明においては、前記(B)親水性粉末は球状粉末であることが好ましい。
本発明においては、前記(B)親水性粉末は水性成分に分散されていることが好ましい。
また、前記(A)改質粉体の基粉体は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸からなる群より選択される一種又は二種以上であることが好ましい。
さらに、前記(B)親水性粉末が、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される一種又は二種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線防止能があり、乳化安定性および使用感触に優れ、しかも耐水性に優れていると共に、洗浄料による落ちの良い化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
(油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料組成物)
油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料とはすなわち油性成分を連続相とし、水性成分が乳化または分散している状態を指す。ここで、「乳化」とは、水性成分が乳化剤によって油性成分中に分散していることを指し、「分散」とは、乳化剤を使用せずに水性成分が油性成分中に分散していることを指す。また「水性成分」には、水、アルコール、多価アルコール、水溶性薬剤、水溶性界面活性剤、水溶性高分子などが含まれ、「油性成分」には、油分、油溶性界面活性剤、油溶性紫外線吸収剤などが含まれる。
【0013】
本発明の化粧料組成物は、代表的には油中水型乳化化粧料が挙げられるが、乳化剤を用いた乳化化粧料に限定されるものではない。水性成分の乳化または分散には通常乳化剤を用いるが、本発明においては、上記(A)成分が界面活性剤としての性質を有しており、このため乳化剤なしでも分散が可能である。また、前述(B)は水性成分に分散されていることがもっとも好ましいが、前述(B)に水性成分を含浸、吸着させた状態で油性成分中に分散する形態でも製剤は成立する。
【0014】
(A)改質粉体
本発明で用いられる(A)改質粉体は、紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、疎水化処理剤及びカチオン性界面活性剤で被覆したものである。
<疎水化処理剤>
疎水化処理剤としては、特に限定されないが、(A)の改質粉体の処理に用いられるカチオン界面活性剤以外の通常公知の疎水化処理剤を用いることができる。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、ラウロイルリジンなどのアシルアミノ酸化合物、デキストリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0015】
<カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、C12モノヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ジヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ジヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ヤシ油ジアミドプロピルカチオン、ヤシ油ジカルボキシエチルカチオン、C16ジカルボキシエチルカチオン、C18ジカルボキシエチルカチオン、POP(15)ジエチルメチルカチオン、POP(25)ジエチルメチルカチオン、POP(40)ジエチルメチルカチオン、C12ジアミドプロピルメチルアミン、C14ジアミドプロピルメチルアミン、C16ジアミドプロピルメチルアミン、C18ジアミドプロピルメチルアミン、isoC18ジアミドプロピルメチルアミン、ジC18プロピルジメチルカチオン、ヒドロキシプロピル-ビス-ラウリルカチオン、ヒドロキシプロピル-ビス-ステアリルカチオン、ヒドロキシプロピル-ビス-ラウリルアミドカチオン、ヒドロキシプロピル-ビス-ステアリルアミドカチオン、C18モノヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ビス-C18ヒドロキシアルキルエーテルカチオン、C22トリメチルアンモニウムブロマイド、C22プロピルジメチルアミン、クオタニウム-91、C22トリメチルアンモニウムメトサルフェート、ジココイルアミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC18アミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC16アミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC18ジメチルアンモニウム塩、C18ジメチルベンジルアンモニウム塩、パーフルオロトリメチルアンモニウム塩、ジアシルアミドエチルエチルヒドロキシカチオンが挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
特に好ましいカチオン性界面活性剤は、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムである。
【0016】
<基粉体>
本発明において改質される粉体としては、紫外線防御作用を有し、化粧品一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず用いることができる。また、これらを複合化した粉末や、他の無機化合物(シリカやアルミナ等)で予め処理された粉末を用いることもできる。
具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。これらの中でも、特に酸化チタン又は酸化亜鉛が好ましい。
【0017】
前述の改質される粉体としては、上記粉体の他、エチルヘキシルトリアゾン(ユビナールT150(登録商標))等の有機系粉体も含まれる。
【0018】
本発明において改質される粉体の大きさについて、とくに制限はないが、紫外線防御効果と塗布時の透明性に優れている平均粒子径0.01〜0.2μmの微粒子であることが好ましい。
【0019】
本発明において、疎水化処理剤とカチオン性界面活性剤の被覆量は、基粉体の自重に対してそれぞれ3〜90質量%、0.5〜10質量%であることが好ましい。
また、疎水化処理剤とカチオン性界面活性剤の被覆量は、質量比で1:1〜9:1であることが好ましい。カチオン性界面活性剤の比率が上述の範囲よりも多いと耐水性が悪くなることがあり、少ないと洗浄性が悪くなることがある。
【0020】
<改質粉体の製造方法>
本発明の改質粉体の製造方法としては、以下の方法が例示されるがこれに限定されない。
溶媒中に、基粉体に対して各種疎水化処理剤を3〜90質量%、カチオン性界面活性剤を0.5〜10質量%加え溶解する。その後、基粉体を加え1時間室温で攪拌する。攪拌終了後、溶媒除去、乾燥、粉砕を行い、目的とする改質粉体を得る。
なお溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いることができるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。
【0021】
また本発明の改質粉体は、市販の疎水化処理粉体を用いて、これをカチオン性界面活性剤にて処理することによっても製造できる。また、本発明の改質粉体は予め疎水化処理剤とカチオン性界面活性剤にて処理した粉体のみならず、例えば、市販の疎水化処理粉体を原料とし、化粧料の製造工程中においてカチオン性界面活性剤を添加して処理すること、あるいは、カチオン性界面活性剤処理粉体を原料とし、化粧料の製造工程中において疎水化処理剤を添加して処理すること、さらには未処理の粉体を原料とし、工程中で基粉体にカチオン性界面活性剤ならびに疎水化処理剤を添加して処理することでも製造できる。
【0022】
従って本発明は、(A1)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を疎水化処理剤で被覆した疎水化処理粉体と、(A2)カチオン性界面活性剤と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性がある油中水型乳化組成物を提供するものである。この場合には、本発明と同様の効果が得られる。
【0023】
また本発明は、(A1´)基粉体の表面をカチオン性界面活性剤で被覆した処理粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物を提供するものである。この場合には、耐水性および紫外線防御効果については劣るものの、粉末の分散性(安定性)、使用性、洗浄性については本発明と同等の効果が得られる。
【0024】
使用できる疎水化処理粉体としては、ステアリン酸アルミニウム等で処理された金属石鹸処理粉体(酸化チタンMT−100T(テイカ社製)等)、デキストリン−脂肪酸エステル等で処理された脂肪酸−デキストリン処理粉体(WSX−MZ−700(テイカ社製)等)、N−ラウロイル−L−リジン等で処理されたアシルアミノ酸処理粉体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体、ジメチルポリシロキサン、シリカ+ジメチルポリシロキサン等で処理されたシリコーン処理粉体(SS−Activox80(昭和電工社製)等)、パーフルオロアルキルリン酸等で処理されたフッ素処理粉体、オクチルトリエトキシシラン(OTS)等で処理されたアルキルシランカップリング剤処理粉体が挙げられる。この中で、特に好ましい処理粉体として、オクチルトリエトキシシラン等で処理されたアルキルシランカップリング剤処理粉体が挙げられる。
【0025】
本発明において、(A)成分である改質粉体は、本発明の化粧料組成物中に0.1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%配合される。0.1質量%より少ない場合は紫外線防御効果が十分に得られない。また40質量%より多い場合は使用感触が悪くなる。
【0026】
本発明品において(A)成分である改質粉体は、((A)改質粉体の配合量)/(改質粉体を含む油相全量)が0.7以下(質量比)であることが、最も安定性に優れ且つ使用感触が向上するために好ましい。
【0027】
(B)無機または有機の親水性粉末
本発明で用いられる(B)無機または有機の親水性粉末は特に限定されない。かかる粉末としては、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸、マイカ、タルク、粘土鉱物等の無機粉末;セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプン等の有機粉末が挙げられる。親水性粉末以外の粉末のみを用いた場合は、使用感触向上のための効果が十分に得られない欠点がある。(B)成分を用いることで、使用感触を向上させることができると共に、紫外線防止効果もさらに高められる。
【0028】
(B)無機または有機の親水性粉末は、球状粉末であることが使用感触向上の点でさらに好ましい。また(B)の粒子径は特には限定されないが、使用性の観点から、平均粒子径が0.01〜100μmのものが好ましく、特に平均粒子径が1〜30μmのものが好ましい。
【0029】
前述(B)の親水性粉末は分散性や化粧持ちの観点から、吸水性・水分保持力のある、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される一種又は二種以上であることが好ましい。このような粉末としては、球状シリカとして、サンスフェア L−51(旭硝子社製)、微粒子シリカとしてアエロジル200(日本アエロジル社製)、セルロース粉末として、セルロフロー C−25(チッソ社製)、でんぷん粉末として、STスターチC(日澱化学社製)などが挙げられる。
【0030】
本発明においては、油性成分中に上記(A)の改質粉体を用いているので、水性成分に分散される(B)成分であっても凝集することなく、安定に存在させることができる。(A)の改質粉体以外の疎水化処理粉末を用いた場合には、カチオン性界面活性剤を同時に配合しないと(B)成分を水性成分中に安定に分散させることはできない。
(B)成分は水性成分中に分散されていても、あるいは油性成分中に分散されていてもかまわないが、水性成分中に分散されていた方が使用性の良いものが得られる。
【0031】
本発明において、(B)成分である親水性粉末は、本発明の化粧料組成物中に0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%配合される。0.1質量%より少ない場合は、使用感触が満足できるものではなくなる。また、30質量%より多い場合は、使用感触が粉っぽくなり好ましくない。
【0032】
本発明において(B)成分である無機または有機の親水性粉末は、((B)親水性粉末)/(親水性粉末を含む水相全量)が0.4以下(質量比)であることが、最も安定性に優れ且つ使用感触が向上するために好ましい。
【0033】
本発明の化粧料組成物は、さらに有機系の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ジモルホリノピリダジノン等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いられる油分としては、例えば、ジメチルポリシロキサン,ジメチルシクロポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,アルキル変性シリコーン、アクリルシリコーン、架橋型シリコーン、メチルハイドロジェンポリシロキサン,高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン,高級アルコール変性オルガノポリシロキサン,トリメチルシロキシシリケート、アミノ変性シリコーン、ピロリドン変性シリコーン等のシリコーン系オイルやシリコーンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、イソプロピルミリステート、ミリスチルオクチルドデカノール、ジ−(2−エチルヘキシル)サクシネート、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノステアリン酸グリセリン、イソステアリン酸トリグリセライド、ヤシ油脂肪酸トリグリセライド、ヒマシ油、オクチルドデカノール、ヘキサデシルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラノリン、ミツロウ、オリーブ油のような炭化水素、エステル、グリセライド、高級アルコール、高級脂肪酸などが例示される。このような油分の合計量は、化粧料全量中の10.0〜95.0重量%が好ましい。
【0035】
本発明においてはアニオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤を用いることができ、特に非イオン界面活性剤が望ましい。かかる非イオン界面活性剤としては、炭化水素系のものやシリコーン系のものが用いられる。具体的にはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルや、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、(ポリ)グリセリン変性シリコーン、架橋型や分岐型のポリオキシアルキレン変性シリコーンやポリグリセリン変性シリコーンなどのシリコーン系活性剤が例示される。シリコーン活性剤の具体例としては、ABIL−EM−90(ゴールドシュミット社製)、信越化学社製の、KF-6000シリーズ(ペンダント型や分岐型などのポリエーテル変性シリコーンやポリエーテル・アルキル共変性シリコーン)、KF-6100シリーズ(ペンダント型や分岐型などのポリグリセリン変性シリコーンやポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン)、KSG-210、310、710、810(架橋型ポリエーテルまたはポリグリセリン変性シリコーン)などが挙げられる。
本発明においては、上記(A)成分が界面活性剤としての性質を有しており、このため界面活性剤なしでも乳化が可能であり、安全性の点で有利である。
また前述したように、(A)改質粉体の代わりに、(A1)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を疎水化処理剤で被覆した疎水化処理粉体を用い、これと(A2)カチオン性界面活性剤とを併用することもできる。
【0036】
本発明の化粧料組成物には、上記した構成成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、他の粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、有機変性粘土鉱物、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することができる。
【0037】
本発明の化粧料組成物とは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用される組成物を意味し、それも粉体を含む組成物であれば特に限定されないが、その主な性能である紫外線防止能や耐水性、使用感触が明確に知覚されるものとして、日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料としての用途が特に好ましい。
【0038】
本発明の化粧料組成物は製剤の形態は特に限定はされないが、より本発明の効果が発揮されるため、化粧料組成物の粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性があることが好ましい。
ここで、本発明の化粧料組成物の粘度は、VDH型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDH)或いはVDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)を用いて測定する。試験対象物の粘度により下記の通りに粘度計を使い分ける。すなわち試験物の粘度が0〜2500(mPa・s)の場合、VDA型を用いてビスメトロンローターNo2を使用し、回転数12rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が2500〜10000(mPa・s)の場合、VDA型を用いてビスメトロンローターNo3を使用し、回転数12rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が10000〜100000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo6を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が100000〜400000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo7を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が400000〜1000000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo7を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。測定対象物が2相分離している場合は、測定前に10回振とうし、測定に供するものとする。測定対象物の温度は30℃である。流動性がある本発明品とは本測定法に従って、粘度300000(mPa・s)以下のものをさす。本発明品の粘度は300000(mPa・s)以下で規定されるもの、好ましくは粘度200000(mPa・s)以下で規定されるもの、さらに好ましくは粘度100000(mPa・s)以下、特に粘度10000(mPa・s)以下で規定されるものが好ましい。
【実施例】
【0039】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
初めに本発明における化粧料組成物の安定性、使用性、耐水性、紫外線防御効果、洗浄性の各試験方法について説明する。
【0040】
<化粧料組成物の安定性>
化粧料組成物における粉末の分散状態、乳化状態は顕微鏡判定を通じて行い、以下の基準で化粧料組成物の安定性の評価とした。評価点は図1〜図3を基準として、1〜5段階で評価する。
1点:図1(粉末が凝集して安定性悪い)
3点:図2(粉末は若干凝集しているが安定性に問題はない)
5点:図3(粉末の分散状態は良好で安定)
【0041】
<使用性>
前述で調整した目的化粧料を10名の専門パネルで感触評価を行った。特に油っぽさ、べたつきに関する使用感触の5段階評価を行った。各評価段階は表1の通りである。
【0042】
【表1】

【0043】
<耐水性試験>
サンプル0.1mLを前腕内側部の10cm×5cmの範囲に塗布し(2μL/cm2)、15分間乾燥させる。
塗布部分(直径2cmの範囲)のサンプルを、アセトン5mLを用いて抽出する(洗浄前)。
前腕内側部を流水中に15分間当てた後、塗布部分(先程とは別の直径2cmの範囲)のサンプルをアセトン5mLを用いて抽出する(洗浄後)。
洗浄前後のアセトン溶液について、310nmの吸光度を比較し、洗浄前のアセトン溶液に対して、洗浄後のアセトン溶液中にサンプルがどれだけ残存しているかを試験する。評価基準は以下の通りである。
【0044】
A:85%以上残存
B:75%以上85%未満残存
C:65%以上75%未満残存
D:65%未満残存
【0045】
<紫外線防御効果>
専門パネル20人により、晴天の日に試料を使用してもらい、紫外線防御効果を評価する(前腕内側部に2μL/cm2のサンプルを塗布し、15分間乾燥させる)。評価基準は以下の通りである。
【0046】
A:20人中16人以上が、紫外線防御効果が良好と回答
B:20人中12〜15人が、紫外線防御効果が良好と回答
C:20人中6〜11人が、紫外線防御効果が良好と回答
D:20人中5人以下が、紫外線防御効果が良好と回答
【0047】
<洗浄性試験方法>
この試験は、メーキャップクレンジングなどの特殊な洗浄料ではなく、日常汎用に用いられている石鹸やボディソープなどに代表される通常の水性洗浄剤や洗顔料で、化粧料が除去可能であるかを評価するための試験であり、下記手順により評価を行った。
サンプル0.1mLを前腕内側部の10cm×5cmの範囲に塗布し(2μL/cm2)、15分間乾燥させ、塗布部分(直径2cmの範囲)のサンプルを、アセトン5mLを用いて抽出する(洗浄前)。その後、市販ボディーソープ2mLを十分に泡立て、サンプル塗布部を5回なでるように洗浄した後、水で洗い流し乾燥させ、塗布部分(先程とは別の直径2cmの範囲)のサンプルをアセトン5mLを用いて抽出する(洗浄後)。
洗浄前後のアセトン溶液について、ICP(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて無機粉末量の定量を行い洗浄前のアセトン溶液に対して、洗浄後のアセトン溶液中に無機粉末がどれだけ残存しているかを試験し、次の基準で評価した。
【0048】
A:残存量20%未満
B:残存量20%以上30%未満
C:残存量30%以上40未満
D:残存量40%以上
【0049】
改質粉体1〜9
次に、本発明の実施例、比較例において用いられる改質粉体について説明する。
<改質粉体1:(アルキルシランカップリング剤+カチオン界面活性剤)被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにオクチルトリエトキシシラン6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、オクチルトリエトキシシラン(OTS)およびカチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体1)を得た。
以下の説明においては、改質粉体1を(OTS/カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0050】
<改質粉体2: (アルキルシランカップリング剤+カチオン界面活性剤)被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール200mLにオクチルトリエトキシシラン6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、オクチルトリエトキシシラン(OTS)およびカチオン界面活性剤で被覆された二酸化チタン(処理粉末2)を得た。
以下の説明においては、改質粉体2を(OTS/カチオン)酸化チタンと表記する。
【0051】
<改質粉体3:(シリコーン+カチオン界面活性剤)被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール300mLにジメチルポリシロキサン12mL、シリカ30g、及び塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム6gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.02μmである二酸化チタン100gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、シリコーンおよびカチオン界面活性剤で被覆された二酸化チタン(改質粉体3)を得た。
以下の説明においては、改質粉体3を(シリコーン/カチオン)酸化チタンと表記する。
【0052】
<改質粉体4:(金属石鹸処理+カチオン界面活性剤)被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール400mLにステアリン酸20g、及び塩化ステアリルトリメチルアンモニウム2gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.05μmの酸化亜鉛200gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、金属石鹸処理およびカチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体4)を得た。
以下の説明においては、改質粉体4を(金属石鹸/カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0053】
<改質粉体5:(フッ素化合物+カチオン界面活性剤)被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール300mLにパーフルオロアルキルリン酸7g、及び塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム3gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.01μmの二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、フッ素化合物およびカチオン界面活性剤で被覆された二酸化チタン(改質粉体5)を得た。
以下の説明においては、改質粉体5を(フッ素/カチオン)酸化チタンと表記する。
【0054】
<改質粉体6: カチオン界面活性剤被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにジステアリルジメチルアンモニウムクロライド5gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.05μmの酸化亜鉛200gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、カチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体4)を得た。
以下の説明においては、改質粉体4を(カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0055】
<改質粉体7:アルキルシランカップリング剤被覆酸化亜鉛>
ジC18ジメチルアンモニウム塩を加えないこと以外は、改質粉体1と同様にして処理を行い、オクチルトリエトキシシラン(OTS)被覆酸化亜鉛(改質粉体7)を得た。
以下の説明においては、改質粉体7を(OTS)酸化亜鉛と表記する。
【0056】
<改質粉体8:シリコーン処理二酸化チタン>
塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加えないこと以外は、改質粉体3と同様にして処理を行い、シリコーンで被覆された二酸化チタン(改質粉体8)を得た。
以下の説明においては、改質粉体8を(シリコーン)酸化チタンと表記する。
【0057】
<改質粉体9:金属石鹸処理二酸化チタン>
市販の石原産業社製の金属石鹸被覆微粒子酸化チタンMT−100Tを用いた。
【0058】
試験例1(1-1〜1-5、従来技術の説明)
初めに、以下の表2に示す処方に基づき、油中水型乳化化粧料を調製し、上記評価を行った。その結果を表2に併せて示す。
なお、化粧料の調製は定法により行った。すなわち、油性成分を常温で均一に溶解・混合したのち、粘土鉱物、粉末部1(改質粉体および改質粉体以外の疎水性粉末)を油性成分中に分散させ、油相を調製する。分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。一方、水性成分も常温で均一に溶解・混合した後、粉末部2(親水性粉末)を水性成分中に分散させる。親水性粉末の分散は手攪拌で行うか、或いはホモミキサーを用いて分散を行い、水相を得た。このようにして調製した水相を、先に調整した油相に添加し、乳化或いは分散を行う。乳化或いは分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示すように、疎水化処理剤で処理された紫外線防御性粉体を用いた油中水型乳化化粧料は、耐水性や分散性に優れるものの、油っぽく、べたついた使用感触となり、洗浄性が劣っていた(試験例1−1)。
また、疎水性球状粉末を添加した場合、わずかに油っぽさやべたつきは改善されるものの、のびも重く、十分満足のゆく使用感触は得られない(試験例1−2)。
親水性粉末を添加した場合、使用感触はやや改善されるものの、粉末の分散性が極めて悪く、製品としての品質を保持できないものであった(試験例1−3)。
親水性粉末を添加した場合に、分散安定性の改善を試み、乳化安定性や粘度向上剤として知られている、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトを添加しても、安定性は改善されなかった(試験例1−4)。
一方、ワックスの添加により固型化した場合、固型状であるため製品としての品質は担保できるものの、粉末の分散状態は改善されていない。また、固型製剤ゆえ、のびが重く、ワックスによるべたついた感触となってしまう(試験例1−5)。
【0061】
試験例2(2-1〜2-10、(A)成分の種類を変えた例)
以下の表3に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。なお、化粧料の調製は定法により試験例1と同様に行った。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に示すように、疎水化処理剤及びカチオン界面活性剤で被覆した改質粉体を用いた場合、親水性粉末を用いても、分散状態は極めて良好であり、使用性、耐水性、UV防御能、洗浄性において、いずれも優れていた(試験例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5)
一方、カチオン活性剤のみで被覆した改質粉体は、粉末の分散性や洗浄性において優れていた。しかし、耐水性とUV防御能に劣り、日焼け止めを目的とした化粧料としては不十分な性質であった(試験例2−6)
また、疎水化処理剤のみで被覆した改質粉体は、種々の疎水化処理剤を用いても、粉末の分散性と洗浄性に劣り、使用性も優れなかった(試験例2−7、2−8、2−9)。
なお、改質粉体を用いない場合は、洗浄性以外のいずれの項目も劣っていた(試験例2−10)。
【0064】
試験例3(3-1〜3-5、カチオン性界面活性剤を後添加した例)
以下の表4に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。
なお、化粧料の調製は、油相の調整を80℃の加温状態にて行うこと以外は、試験例1と同様に行った。
【0065】
【表4】

【0066】
表4に示すように、疎水化処理剤のみで被覆した改質粉体を用いた場合であっても、化粧料の製造工程中で、カチオン界面活性剤を添加することにより、分散性、使用性、洗浄性のいずれの項目も大きく向上させることができた。つまり、本発明の改質粉体(A)は、化粧料原料として既に、疎水化処理剤及びカチオン界面活性剤で被覆された粉体のみならず、工程中で、カチオン活性剤を添加処理してもよい。
なお、工程中にて、カチオン活性剤を添加する場合のカチオン活性剤の配合量としては、処理されるべき改質粉体に対し、2〜15質量%程度が好ましく、さらに好ましくは、2〜10質量%である。
また、親水性粉末に対する重量比としては、2〜15重量%が分散性の向上を図るために好ましい。
【0067】
試験例4(4-1〜4-9、(B)成分の種類を変えた例)
以下の表5に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。
なお、化粧料の調製は、試験例1と同様に行った。ただし、試験例4−5については、シリカを油相に分散して調製した。
【0068】
【表5】

【0069】
なお表中、※印は次のものを指す。
※1:アエロジルR972(日本アエロジル社製)
※2:ガンツパールGMX0810(ガンツ化成社製)
※3:トスパール2000B(東芝シリコーン社製)
※4:サンスフェアL−51(旭硝子社製)
※5:セルロフロー C−25(チッソ社製)
※6:STスターチC(日澱化学社製)
※7:アエロジル200(日本アエロジル社製)
【0070】
表5に示すように、疎水性の粉末を配合した場合は、使用性はほとんど改善されなかった(試験例4−1、4−2、4−3、4−4)。しかしながら、親水性粉末を配合した場合は、使用性が大きく改善され、分散状態も良好であった(試験例4−5、4−6、4−7、4−8、4−9)。特に、親水性粉末としては、シリカが極めて良好な性質を示した(試験例4−5、4−6、4−9)。また、試験例4−5と試験例4−6の比較から、親水性粉末を水性成分中に分散することが特に好ましいことがわかる。
【0071】
試験例5(5-1〜5-6、界面活性剤の有無、種類、配合量を変えた例)
以下の表6に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。
なお、化粧料の調製は、試験例1と同様に行った。
【0072】
【表6】

【0073】
表6に示すように、本発明の改質粉体(A)と親水性粉体(B)を用いた場合は、乳化剤を添加しない場合においても、油性成分中に水性成分および親水性粉末が安定に分散することがわかった(試験例5−1)。もちろん、乳化剤を添加しても安定な乳化組成物が得られ、シリコーン系乳化剤に限らず、広く安定な組成物が得られることがわかった(試験例5−2、5−3、5−4、5−5、5−6)。
【0074】
試験例6(6-1〜6-8、(A)成分と(B)成分の配合量を振った例)
以下の表7に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。
なお、化粧料の調製は、試験例1と同様に行った。
【0075】
【表7】

【0076】
表7に示すように、本発明の改質粉体(A)は5〜30質量%の範囲で使用して良好な結果が得られており、親水性粉体(B)は0.5〜20質量%の範囲で使用して良好な結果が得られている。
【0077】
処方例1
下記表8に示す処方の乳液状日焼け止め化粧料を調製した。得られた乳液状日焼け止め化粧料は、安定性、使用性、耐水性、UV防御能、洗浄性に優れたものであった。
【0078】
【表8】

【0079】
処方例2
下記表9に示す処方のクリーム状日焼け止め化粧料を調製した。得られたクリーム状日焼け止め化粧料は、安定性、使用性、耐水性、UV防御能、洗浄性に優れたものであった。
【0080】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(1点)を示す図である。
【図2】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(3点)を示す図である。
【図3】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(5点)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、疎水化処理剤及びカチオン性界面活性剤で被覆した改質粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
前記(B)親水性粉末が、球状粉末であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記(B)親水性粉末が、水性成分中に分散されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記(A)改質粉体の基粉体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸からなる群より選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記(A)改質粉体の配合量が0.1〜40質量%であり、前記(B)親水性粉末の配合量が0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記(B)親水性粉末が、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
化粧料組成物の粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性があることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の化粧料組成物。
【請求項8】
化粧料組成物が油中水型乳化組成物であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の化粧料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−217361(P2007−217361A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40906(P2006−40906)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】