説明

化粧料組成物

【課題】構造回復性を有し、透明で、皮膚や毛髪への塗布時の滑らかさ、使用感が良好な化粧料組成物を提供する。
【解決手段】下記の成分(A)ないし(D)を含有し、成分(A)0.1〜30質量%、成分(B)0.1〜50質量%、成分(C)50〜95質量%、成分(D)0.01〜10質量%、成分(A)と成分(B)の質量比率が1/5〜5/1である、化粧料組成物。
(A)下記式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体

Z−{O−(EO)a−(AO)k−H}m (I)
(Zは、水酸基を3〜6個有する多価アルコールの残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基、EOとAOはブロック状結合である。)
(B)ポリオキシエチレン基と炭素数12〜22の炭化水素基を有し、HLBが8〜14である非イオン性界面活性剤。
(C)25℃で液状のエステル油及びトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上の油剤
(D)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール誘導体を含有する化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品には、皮膚や毛髪に滑らかさやしっとり感を付与するために、流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素油、植物油に代表される油脂やトリグリセリド、エステル結合を有するエステル油、ジメチルシロキサンなどといったシリコーン油など、油剤が使用される。特に、常温において透明液体で、低粘性の油剤は、感触が良好であるために汎用されている。
油剤を高度に配合する透明な化粧品としては、クレンジングオイル、ヘアオイル、マッサージオイルなどが例示できる。これら化粧品への消費者ニーズとして、近年は、優れた構造回復性が挙げられる。
構造回復性とは、外力によって粘性が低下するが、外力を抑えると元の粘度に戻る性質である。一般的に、低粘度の油剤は、手に取ったときの液垂れが起こり、肌の適切な部位に適量を塗布することが困難である。このため、容器から取り出す際や、肌に塗布する前は高粘性であることが求められる。一方で、塗布する(外力を与える)際には、油剤本来の滑らかさを損なわないことが求められる。すなわち、使用感が良好で、構造回復性があれば、商品の付加価値が高められる。
【0003】
構造回復性を付与するには、ゲル化剤もしくは増粘剤(以下、ゲル化剤とする)を添加して、粘度を制御することが一般的であるが、油系で透明なゲルを得るのは技術的に困難である。その理由として、油剤には、炭化水素油、植物油やトリグリセリド、エステル油、シリコーン油など様々な化学物質があり媒体の種類が豊富であること、また、水系と異なり、電気伝導性が乏しいため、電荷による会合体の形成が困難であることが挙げられる。したがって、油系において粘度制御するには、ゲル化剤による凝集や結晶構造を利用することが一般的であり、透明な化粧料組成物を得るのが困難で、肌や毛髪に塗布する際の使用感も満足いくものが得られていなかった。
つまり、油剤を多く含有しながら、構造回復性があり、透明で、かつ、使用感が良好な化粧料組成物の開発が望まれていた。
【0004】
油剤の粘性を向上させるために、これまでに、いくつかのゲル化剤が提案され、水酸基やアミド基など水素結合部位を有する油性ゲル化剤の開発がなされている。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸及びパルミチン酸デキストリンなどの脂肪酸デキストリンを用いた技術(特許文献1)、N−2−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドなどのN−アシルアミノ酸誘導体(特許文献2)などが提案されている。これらは、油中でも強力に相互作用する水素結合に依存した増粘機構を有し、少量でゲル化効果を発揮するものの、とくに構造回復性が求められる製剤への使用に適するものではなかった。
また、ブロック型アルキレンオキシド誘導体である特定のポリオキシアルキレンエーテルと油剤及び水を含有するゲル組成物も提案されている(特許文献3)。この組成物は、優れた構造回復性(チキソトロピー性)のゲル形成能と透明感を有しているものの、塗布時の感触やのびなどの使用感において、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−3340号公報
【特許文献2】特開2002−316971号公報
【特許文献3】特開2008−19239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、構造回復性を有し、透明であり、皮膚又は毛髪への塗布時の滑らかさ、肌へのなじみなど、使用感が極めて良好な化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリアルキレングリコール誘導体と特定の非イオン性界面活性剤を配合することで、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1)下記の成分(A)ないし(D)を含有し、成分(A)が0.1〜30質量%、成分(B)が0.1〜50質量%、成分(C)が50〜95質量%、成分(D)が0.01〜10質量%、かつ、成分(A)と成分(B)の質量比率(A)/(B)が、1/5〜5/1である、化粧料組成物。
(A)下記式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体

Z−{O−(EO)a−(AO)k−H}m (I)

(式中、Zは、水酸基を3〜6個有する多価アルコールから水酸基を除いた残基、mは3〜6、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数、kはAOの平均付加モル数を示し、aは1〜50、kは1〜50である。また、EOとAOの合計量100質量部に対し、EOの質量割合は10〜75質量部である。)
(B)ポリオキシエチレン基と炭素数12〜22の炭化水素基を有し、HLBが8〜14である非イオン性界面活性剤
(C)25℃で液状のエステル油及びトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上の油剤
(D)水
(2)成分(C)の一部を下記成分(E)に置き換え、成分(C)と成分(E)の合計量100質量部に対する成分(C)の量が30質量部以上である、(1)に記載の化粧料組成物。
(E)25℃で液状の炭化水素油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上の油剤
(3)AOが、1,2−オキシブチレン基である、(1)又は(2)に記載の化粧料組成物。
(4)成分(B)が、炭素数12〜22の分岐又は不飽和炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤である、(1)ないし(3)のいずれか1に記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧料組成物は、油性成分を多く含有する組成でありながら、透明な外観と構造回復性を同時に達成し得たものである。また、優れた構造回復性を有するため、容器からの取り出し時に液だれが生じず、容器を汚すことなく適量を手に取ることができる。これを肌へ塗布し、指先でのばすなどの外力を加えれば、粘度が低下して油性製剤本来の滑らかな感触を得ることができ、皮膚や毛髪へのなじみ性など使用感も極めて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例13の化粧料組成物のせん断速度とせん断粘度の関係を示す図である。
【図2】図2は比較例11の化粧料組成物のせん断速度とせん断粘度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
成分(A)は、下記式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体である。

Z−{O−(EO)a−(AO)k−H}m (I)

式中、Zは、水酸基を3〜6個有する多価アルコールから水酸基を除いた残基を示す。多価アルコールとしては、水酸基が3個のグリセリン、トリメチロールプロパン、水酸基が4個のジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、メチルグルコシド、水酸基が5個のキシリトール、トリグリセリン、水酸基が6個のソルビトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールが例示される。好ましくは、水酸基を4個以上持つアルコールから水酸基を除いた残基であり、さらに好ましくは、ゲル化能の高さから、水酸基が4個のジグリセリン、ペンタエリスリトールである。
mは3〜6、好ましくは4〜6、より好ましくは4である。mが2以下、又は7以上では、塗布時にべたつき感が生じてしまい、さらに、なめらかな使用感も得られないので好ましくない。
【0011】
EOはオキシエチレン基であり、aはEOの平均付加モル数、a×mは、式(I)の全EO付加モル数である。aは、1〜50、好ましくは10〜45である。aが1より小さいと十分な親水性が得られず、構造回復性を有する化粧料組成物が得られ難い。また、aが50より大きいと、EO鎖の結晶性が高くなるために、透明な化粧料組成物が得られ難い。
(EO)aは、ポリオキシエチレン鎖であり、本発明のポリアルキレングルコール誘導体における親水基となる。
AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基であり、AO鎖は、式(I)のポリアルキレングルコール誘導体における親油基となる。AO鎖は、成分(A)と成分(C)及び/又は成分(E)との相溶性向上に寄与することから、化粧料組成物の安定性を保持するための必須部位である。
AOが炭素数3の場合は、油剤との相溶性に劣り、求める増粘性が得られない。さらに、炭素数が9以上の場合は、使用感が悪化する傾向があり好ましくない。
AOとしては、炭素数4の1,2−オキシブチレン基、炭素数5の1,2−オキシペンチレン基、炭素数6の1,2−オキシヘキシレン基、炭素数7の1,2−オキシへプチレン基、炭素数8の1,2−オキシオクチレン基が例示されるが、好ましくは、1,2−オキシブチレン基又は1,2−オキシオクチレン基であり、より好ましくは、1,2−オキシブチレン基である。AOは1種でも2種以上でもよく、2種以上の場合、付加形態は、ランダム状、ブロック状のどちらでもよい。
kはAOの平均付加モル数であり、k×mは、式(I)における全AO付加モル数である。kは、1〜50であり、好ましくは、5〜30である。kが1より小さいと、十分な親油性が得られず、成分(A)と成分(C)及び/又は成分(E)との相溶性が劣り、安定な組成物が得られ難い。また、50より大きくなると、べたつき感を生じてしまうため、使用感に劣る場合があり好ましくない。
EOとAOの合計含有量を100質量部としたとき、EOの質量比は10〜75質量部である。好ましくは20〜75質量部である。より好ましくは30〜75質量部である。質量比が10質量部より小さいと、水和領域が少なくなり、成分(D)の水を添加してもゲル化しない。また、75質量部より大きいと、EO鎖の比率が大きくなるため、結晶性が強くなり、透明な化粧料組成物が得られない。
EOとAOはブロック状に結合している。ランダム状では、目的とする油性化粧料組成物を得ることができない。
【0012】
本発明の式(I)で示されるポリオキシアルキレングリコール誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を3〜6個有する多価アルコールに、アルカリ又は酸触媒下、オキシエチレン、炭素数4〜8のオキシアルキレンの順に付加重合することによって得ることができる。
【0013】
成分(A)は、化粧料組成物の全質量に対して、0.1〜30質量%配合される。好ましくは、0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。0.1質量%より少ないと、求める構造回復性が得られない。また、30質量%を超えると、塗布時にべたつき感が生じてしまい好ましくない。
【0014】
成分(B)は、ポリオキシエチレン鎖(EO鎖)と炭素数12〜22の炭化水素基を有し、HLBが8〜14の非イオン性界面活性剤である。なお、非イオン性界面活性剤、及びポリオキシエチレンを、それぞれ単に、ノニオン、及びPOEと表記することもある。
HLBとは、Hyrophile−Lipophile Balanceの略で、界面活性剤の親水基及び親油基のバランスを数値化した概念である。一般に、0から20で示され、数値が高い方が、親水性が高いことを示す。HLBは、下記(1)又は(2)の式により算出できる。
(1) POEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤
HLB=オキシエチレン基の質量分率/5
(2) 多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤
HLB=20(1−S/A)
S:エステルのけん化価、 A:脂肪酸の酸価
(出展: 「新版 界面活性剤ハンドブック」 工学図書株式会社)
【0015】
EO鎖の長さが不十分でHLBが8より小さいと、成分(D)の水との水和力劣り、求める構造回復性と透明性が得られない。このような観点から、HLBは、8.5以上13.0以下であることが好ましく、9.0以上13.0以下であることが最も好ましい。
HLBが14を超えると、水による水和が強く、EO鎖の影響で凝固しやすくなるため、透明感が得られない場合があり好ましくない。
炭素数12〜22の炭化水素基としては、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、セチル基、イソパルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、オクチルドデシル基、ベヘニル基等が挙げられ、これらの混合アルキル基であってもよい。その中でも、相溶性や透明性の観点から、炭素数12〜22の分岐飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基が好ましい。このような親油基として、特に好ましいのは、オレイル基、イソパルミチル基、イソステアリル基である。炭素数が12より小さいと、求める構造回復性が得られず好ましくない。また、炭素数22を超えると、透明性が得られない。
【0016】
成分(B)は、HLB8〜14の範囲であれば、エステル型、エーテル型、直鎖型、多鎖型の何れでも構わない。また、オキシエチレン基の重合度やエステル化率も特に限定されない。
例えば、POE(ポリオキシエチレン)オレイルエーテル、POEイソパルミチルエーテル、POEイソステアリルエーテル、モノオレイン酸POE、モノイソステアリン酸POE、ジオレイン酸POE、ジイソステアリン酸POE、モノオレイン酸POEソルビトール、ジオレイン酸POEソルビトール、トリオレイン酸POEソルビトール、テトラオレイン酸POEソルビトール、ペンタオレイン酸POEソルビトール、ヘキサオレイン酸POEソルビトール、モノイソステアリン酸POEソルビトール、ジイソステアリン酸POEソルビトール、トリイソステアリン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトール、ペンタイソステアリン酸POEソルビトール、ヘキサイソステアリン酸POEソルビトール、モノオレイン酸POEグリセリン、ジオレイン酸POEグリセリン、トリオレイン酸POEグリセリン、モノイソステアリン酸POEグリセリン、ジイソステアリン酸POEグリセリン、トリイソステアリン酸POEグリセリン、モノオレイン酸POEソルビタン、セスキオレイン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、セスキイソステアリン酸POEソルビタン、トリイソステアリン酸POEソルビタンなどが例示できる。
このうち、透明性を良好にするためには25℃で液状であることが好ましく、また、成分(D)水との水和をより強力にするためにはエステル型が好ましい。したがって、好ましくは、モノオレイン酸POE、モノイソステアリン酸POE、ジオレイン酸POE、ジイソステアリン酸POE、テトラオレイン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトール、トリイソステアリン酸POEグリセリン、モノイソステアリン酸POEグリセリン、モノオレイン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタンなどが例示できる。ゲル化能を良好にするためには、直鎖型であることがさらに好ましい。このようなノニオンとしては、モノオレイン酸POE、モノイソステアリン酸POE、ジオレイン酸POE、ジイソステアリン酸POEが挙げられる。
【0017】
成分(B)は、化粧料組成物の全質量に対して、0.1〜50質量%配合される。好ましくは、0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜20質量%である。0.1質量%より少ないと、求める構造回復性が得られない。また、50質量%を超えると、透明性を維持できず、塗布時にべたつき感が感じられてしまい好ましくない。成分(B)は、2種以上を混合して使用してもよい。
成分(A)と成分(B)の質量比率(A)/(B)は、1/5〜5/1であり、好ましくは、1/3〜3/1である。1/5より小さいと、構造回復性が得られず、また、5/1より大きいと、透明性が得られ難く、好ましくない。
【0018】
成分(C)は、25℃で液状のエステル油及びトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上の油剤である。
エステル油としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルへキサン酸ステアリル、2−エチルへキサン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパンアジピン酸ジデシル、アジピン酸ジデシル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、リシノレイン酸セチル、コハク酸ジオクチル、乳酸セチル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなどが例示できる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
トリグリセリドとしては、グリセリンとカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸など、炭素数6以上の高級脂肪酸とのトリグリセリド、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヒマシ油、ツバキ油などの動植物油脂類などが例示できる。
【0019】
好ましいエステル油としては、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルが挙げられる。
また、好ましいトリグリセリドとしては、グリセリンとカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸などの炭素数6〜10の高級脂肪酸、又はこれらの混合物とのトリグリセリド、例えばトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリドが挙げられる。
【0020】
本発明の化粧料組成物においては、成分(C)の一部を成分(E)に置き換えることができる。
成分(E)は、25℃で液状の炭化水素油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上の油剤である。炭化水素油としては、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、テトラデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、α−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。好ましくは、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、スクワランである。シリコーン油としては、ジメチコン、シクロメチコン、フェニルジメチコンなどが挙げられるが、好ましくはシクロメチコンである。また、これらを1種又は2種以上、用いることができる。
【0021】
成分(C)と成分(E)の合計量は、化粧料組成物の全質量に対して、50〜95質量%配合される。好ましくは、60〜90質量%である。50質量%より少ないと、べたつきなど使用感が悪化する。また、95質量%を超えると、粘性を付与できないため好ましくない。また、成分(C)と成分(E)の合計量を100質量部としたときに、成分(C)の量は30質量部以上であり、好ましくは、40質量部以上、より好ましくは、50質量部以上である。30質量部より少ないと、求める構造回復性が得られず好ましくない。
【0022】
成分(D)は、水である。本発明の化粧料組成物においては、成分(A)のEO鎖又は成分(B)のノニオンのEO鎖が水和されることによって、粘性が付与される。水としては、一般に化粧品、医薬部外品、医薬品に用いられているものであれば、特には限定されない。例えば、蒸留水やイオン交換水などの精製水、生理食塩水、リン酸緩衝水溶液等を用いることができる。
水は、化粧料組成物の全質量に対して、0.01〜10質量%配合される。好ましくは、0.1〜8質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。0.01質量%より少ないと、求める構造回復性が得られない。また、10質量%を超えると、経時的に粘度の低下が見られるため好ましくない。
【0023】
本発明の化粧料組成物においては、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬品などに一般的に用いられている各種成分を配合することが可能である。例えば、保湿剤、炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、成分(C)及び(E)以外のトリグリセリド、エステル油、動植物油脂、又はシリコーン等、ビタミン類、紫外線吸収剤、水溶性高分子、酸化防止剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、成分(B)以外の非イオン性界面活性剤、金属イオン封鎖剤、エタノール、増粘剤、防腐剤、色素、顔料、香料などが挙げられる。
また、本発明の化粧料組成物の形態は、特に限定されないが、クレンジングオイル、ヘアオイル、マッサージオイルなど油性化粧料組成物が好適である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る成分(A)の合成例を示す。水酸基価は、JISK1557 1に準じて測定した。
[合成例]
合成例1:ポリオキシブチレン(48モル)ポリオキシエチレン(88モル)ペンタエリスリトールエーテル(化合物1)
ペンタエリスリトール45g、トルエン50g、水酸化カリウム8.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら、110℃にて、滴下装置より、エチレンオキシド1292gを滴下して2時間撹拌した。引き続き、110℃にて1,2−ブチレンオキシド1160gを滴下し、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有するトルエン及び水分を除去するため、115℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去し、2345gの化合物1を得た。水酸基価は、エチレンオキシド反応後が56.0mgKOH/g、1,2−ブチレンオキシド反応後が30.0mgKOH/gであった。
【0025】
合成例2:ポリオキシブチレン(45モル)ポリオキシエチレン(75モル)グリセリル(化合物2)
グリセリン31g、水酸化カリウム5.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら、140℃にて滴下装置より、エチレンオキシド1100gを滴下して2時間撹拌した。引き続き、140℃にて、1,2−ブチレンオキシド1080gを滴下し、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃にて1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2180gのポリオキシブチレン(45モル)ポリオキシエチレン(75モル)グリセリルエーテルを得た。水酸基価は、エチレンオキシド反応後が49.6mgKOH/g、1,2−ブチレンオキシド反応後が25.4mgKOH/gであった。
本発明者らは、上記合成例1〜2に準じて、下記表1に示す組成のポリアルキレングリコール誘導体を合成した。表1中、化合物1〜5は本発明の成分(A)であり、化合物6〜10は比較対照成分(A´)である。
【0026】
【表1】

【0027】
[実施例1〜12、比較例1〜5]
表2に示す成分と組成で、化粧料組成物を調製し、構造回復性、透明性、肌に塗布時の滑らかさ、肌へのなじみ性について評価した。
<調整方法>
成分(A)、成分(B)又は(B’)、成分(C)、成分(E)を70℃で均一に溶解させた後、成分(D)を徐々に加え、撹拌しながら25℃まで冷却した。
【0028】
<評価方法>
構造回復性
25℃において、せん断速度(s−1)に対するせん断粘度(Pa・s)を2回測定した。ただし、測定間隔は1分とした。測定機器は以下のとおりである。
測定機器 PaarPhysica MCR−300
測定治具 CP 50−2
1回目、2回目ともに、せん断速度に対して、せん断粘度が低下するのを確認した上で、せん断速度0.1(s−1)における、せん断粘度の回復率を指標として構造回復性を判断した。○を合格とした。
○:構造回復性あり
1回目に対して、2回目が90%以上回復
△:構造回復性に乏しい
1回目に対して、2回目が70%以上回復
×:構造回復性なし
1回目に対して、2回目の回復率が50%以下
透明性
25℃において、外観を目視で確認した。
○:透明
△:蛍光色がある
×:白濁もしくは白色結晶が析出
塗布時の滑らかさ
調製直後の油性化粧料組成物を、25℃、相対湿度50%の環境下において、20名の専門女性パネラーの前腕内側部に塗布し、塗布時の滑らかさについて以下の基準で評価してもらい、平均点3.5以上を合格基準とした。
5:のびが非常によく、非常に軽い感触
4:のびがよく、軽い感触
3:のびがやや悪く、少しひっかかる感触
2:のびが悪く、重い感触
1:のびが非常に悪く、べたべたする感触
肌へのなじみ性
塗布時の滑らかさの評価に引き続き、25℃、相対湿度50%の環境下にて1時間経過後の肌へのなじみ性について、以下の基準で評価した。平均点3.5以上を合格基準とした。
5:皮膜感が良好で、皮膚を柔らかくしている感触
4:適度な皮膜感があり、皮膚を柔らかくしている感触
3:皮膜感がやや強いが、皮膚を柔らかくしている感触
2:皮膜感がやや強く、皮膚がわずかに柔らかくなる感触
1:皮膜感が強く、皮膚がつっぱっている感触
表2に、これらの評価結果も併せて示す。
【0029】
【表2】

【0030】
[実施例13〜17、比較例6〜12]
表3に示す成分と組成で、化粧料組成物を調製し、構造回復性、透明感、肌に塗布時の滑らかさ、肌へのなじみ性について評価した。
<調整方法>
成分(A)又は(A´)、成分(B)、成分(C)、及び成分(E)を70℃にて均一に溶解させた後、成分(D)を徐々に添加し、撹拌しながら25℃まで冷却した。
<評価方法>
実施例1〜12と同様に、構造回復性、透明性、塗布時の滑らかさ、肌へのなじみ性を評価した。
結果を表3に併せて示す。
【0031】
【表3】

【0032】
実施例13(構造回復性○、回復率106%)、及び比較例11(構造回復性×、回復率20%)のせん断速度に対するせん断粘度の挙動を、それぞれ図1及び図2に示す。
【0033】
以下、本発明の化粧料組成物の参考処方を例示する。何れの処方例も「構造回復性」、「透明性」、「塗布時の滑らかさ」、「肌へのなじみ性」が良好であった。
<処方例1:ヘアオイル>
(A)化合物1 15.0質量%
(B)ジオレイン酸POE(12モル)(HLB10.0) 7.0質量%
(B)トリイソステアリン酸POE(20モル)グリセリン(HLB10.4)
5.0質量%
(C)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリド 20.0質量%
(C)イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
(C)オリーブ油 5.0質量%
(C)ツバキ油 3.0質量%
(E)水添ポリイソブテン 20.0質量%
(E)シクロメチコン 10.0質量%
(D)水 3.5質量%
ビタミンEアセテート 0.2質量%
ポリオキシエチレン(10モル)メチルグルコシド 0.5質量%
グリセリン 0.2質量%
防腐剤 適量
香料 適量
<調整方法>
成分(D)以外を70℃にて均一に溶解させた後、成分(D)を徐々に添加し、撹拌しながら25℃まで冷却した。
【0034】
<処方例2:マッサージオイル>
(A)化合物1 5.0質量%
(A)化合物5 10.0質量%
(B)モノイソステアリン酸POE(8モル)(HLB11.6) 3.0質量%
(B)モノイソステアリン酸POE(8モル)グリセリン(HLB12.0)
2.0質量%
(C)パルミチン酸イソプロピル 15.0質量%
(C)オレイン酸エチル 10.0質量%
(C)サフラワー油 15.0質量%
(C)ヒマシ油 3.0質量%
(E)流動パラフィン 15.0質量%
(E)スクワラン 15.0質量%
(D)水 3.5質量%
ジプロピレングリコール 1.0質量%
1,2−オクチレングリコール 0.5質量%
ビタミンE 0.5質量%
防腐剤 適量
香料 適量
<調整方法>
成分(D)以外を70℃にて均一に溶解させた後、成分(D)を徐々に添加し、撹拌しながら25℃まで冷却した。
【0035】
<処方例3:クレンジングオイル>
(A)化合物1 10.0質量%
(B)テトライソステアリン酸POE(30モル)(HLB11.1)
13.0質量%
(B)モノオレイン酸POE(6モル)ソルビタン(HLB11.8)
3.0質量%
(C)パルミチン酸2−エチルヘキシル 20.0質量%
(C)トリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリド 20.0質量%
(C)サフラワー油 15.0質量%
(E)水添ポリイソブテン 15.0質量%
(D)水 3.0質量%
1,3−ブチレングリコール 0.2質量%
1,2−へキシレングリコール 0.2質量%
ビタミンE 0.3質量%
防腐剤 適量
香料 適量
<調整方法>
成分(D)以外を70℃にて均一に溶解させた後、成分(D)を徐々に添加し、撹拌しながら25℃まで冷却した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)ないし(D)を含有し、成分(A)が0.1〜30質量%、成分(B)が0.1〜50質量%、成分(C)が50〜95質量%、成分(D)が0.01〜10質量%、かつ、成分(A)と成分(B)の質量比率(A)/(B)が、1/5〜5/1である、化粧料組成物。
(A)下記式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体

Z−{O−(EO)a−(AO)k−H}m (I)
(式中、Zは、水酸基を3〜6個有する多価アルコールから水酸基を除いた残基、mは3〜6、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数4〜8のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aはEOの平均付加モル数、kはAOの平均付加モル数を示し、aは1〜50、kは1〜50である。また、EOとAOの合計量100質量部に対し、EOの質量割合は10〜75質量部である。)
(B)ポリオキシエチレン基と炭素数12〜22の炭化水素基を有し、HLBが8〜14である非イオン性界面活性剤
(C)25℃で液状のエステル油及びトリグリセリドから選ばれる1種又は2種以上の油剤
(D)水
【請求項2】
成分(C)の一部を下記成分(E)に置き換え、成分(C)と成分(E)の合計量100質量部に対する成分(C)の量が30質量部以上である、請求項1に記載の化粧料組成物。
(E)25℃で液状の炭化水素油及びシリコーン油から選ばれる1種又は2種以上の油剤
【請求項3】
AOが、1,2−オキシブチレン基である、請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
成分(B)が、炭素数12〜22の分岐又は不飽和炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−35827(P2013−35827A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152030(P2012−152030)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】