説明

化粧料配合剤及びそれを含む化粧料組成物

【課題】本発明は、皮膚に保護修復効果を与えることができ、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料または皮膚洗浄剤など種々の製品形態の化粧料に配合することができる化粧料配合剤およびそれを配合してなる化粧料組成物を提供することを課題とするものである。
【解決手段】本発明は、球状セルロースの水酸基の一部を硫酸エステル化してなる球状硫酸化セルロースまたはその塩を用いることにより、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状硫酸化セルロースまたはその塩を含む化粧料配合剤及びそれを含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は皮膚の結合組織等に存在する多糖類であり、保湿機能を有していることから、皮膚の弾力性や潤い、みずみずしさを保つ働きがある。しかしながら、このヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼという酵素によって分解されてしまうことが知られている。皮膚において、ヒアルロン酸が分解され、ヒアルロン酸が不足すると、皮膚が乾燥し、肌荒れの原因になる。近年増加している「敏感肌」は、この乾燥により皮膚の細胞表面や支持マトリックスが崩壊して細胞が暴露され、病原体、炎症媒介物質、炎症剤または防腐剤などの種々の物質に肌が損傷される結果、化粧料に配合されている化学物質に肌が過敏に反応する症状をいう。
【0003】
一方、ヒアルロニダーゼの活性を阻害する化合物として、硫酸化多糖が知られている。硫酸化多糖は、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することにより、細胞表面及び保護接続組織のマトリックスの再生を促進させ、その結果、抗炎症作用または組織再生作用を奏するものと考えられている。代表的な硫酸化多糖としてはコンドロイチン硫酸が知られている。また、本件発明者らは先に、硫酸化セルロースがコンドロイチン硫酸の約100倍のヒアルロニダーゼ活性阻害能を有することを見出している(特開2006−274245号公報(特許文献1)参照)。しかしながら、化粧料配合剤として用いるためには、のびや肌触りが良好であることも要求され、更なる検討が求められている。
【0004】
ところで、化粧習慣として、ファンデーションなどのメークアップ化粧料は、一日の大半を皮膚に付けたままで過ごすため、皮膚への負担が大きい。他方、ファンデーションなどのメークアップ化粧料には、特別な手間をかけずに手軽に保護修復効果を期待できるアイテムとしての側面もある。このため、メークアップ化粧料には必然的に保護修復効果が期待される。近年使用者の社会的行動範囲が拡大し、それに伴い、多様なライフスタイルを持つ人が多くなってきており、メークアップ化粧料の保護修復的役割に大きな期待が持たれるようになってきた。
【特許文献1】特開2006−274245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中で、ヒアルロニダーゼ活性阻害能が高く、より効果的に皮膚に保護修復効果を与えることができ、種々の製品形態の化粧料に配合することができる化粧料配合剤の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、球状セルロースの水酸基の一部を硫酸エステル化してなる球状硫酸化セルロースがヒアルロニダーゼ活性阻害能を有しており、しかものびと肌触りの滑らかさが良好であり、種々の製品形態の化粧料に好適に配合できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に示す化粧料配合剤及び化粧料組成物等を提供するものである。
[1]球状硫酸化セルロースまたはその塩を含む化粧料配合剤。
[2]ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有するものである、[1]記載の化粧料配合剤。
[3]球状硫酸化セルロースまたはその塩の平均粒子径が0.01〜45μmである、[1]または[2]記載の化粧料配合剤。
[4]球状硫酸化セルロースまたはその塩の真球度が0.8〜1.0である、[1]〜[3]のいずれか記載の化粧料配合剤。
[5]球状硫酸化セルロースまたはその塩の硫黄濃度が0.001〜10重量%である、[1]〜[4]のいずれか記載の化粧料配合剤。
[6]球状硫酸化セルロースの塩が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、トリエチルアミン塩、アルギニン塩、リジン塩及びヒスチジン塩から選ばれる1種以上である、[1]〜[5]のいずれか記載の化粧料配合剤。
[7][1]〜[6]の何れか記載の化粧料用材料を含む化粧料組成物。
[8]球状硫酸化セルロースまたはその塩の含有量が0.01〜50重量%である、[7]記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有し、のびと肌触りの滑らかさが良好な化粧料配合剤が得られる。本発明の化粧料配合剤は、種々の製品形態の化粧料に好適に用いられる。例えば、本発明の化粧料配合剤は、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料及び皮膚洗浄剤などに好適に配合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の化粧料配合剤及び化粧料組成物等について詳細に説明する。
【0010】
A.化粧料配合剤
本発明の化粧料配合剤は、球状硫酸化セルロースまたはその塩を含む。本発明の化粧料配合剤は、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有する球状硫酸化セルロースまたはその塩を含むものであるので保湿効果に優れており、しかものびと肌触りの滑らかさが良好であり、皮膚に負担をかけることなく適用することができるので、皮膚を乾燥や肌荒れから効果的に保護修復することができる。また、本発明の化粧料配合剤は、化粧料中に分散しやすく、スキンケア化粧料はもちろんのこと、メークアップ化粧料または皮膚洗浄剤など、種々の製品形態の化粧料に好適に配合することができる。
【0011】
本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩は、球状セルロースの水酸基の少なくとも一部を硫酸エステル化することによって得られる化合物である。本発明において、球状硫酸化セルロースの塩は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に限定されるものではないが、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、トリエチルアミン塩、アルギニン塩、リジン塩及びヒスチジン塩から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも、ナトリウム塩が好ましい。
【0012】
本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩は、球状であるので化粧料に配合した際にのびや肌触りが優れており、また表面積が大きくなるため、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用をより効果的に発揮することができる。なお、本明細書において、「球状」というときは、真球状から略球状までの形態を含む。本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩の真球度は0.8〜1.0であることがより好ましく、より好ましくは0.9〜1.0である。球状硫酸化セルロースまたはその塩が、上記の真球度を有することにより、化粧料に配合した際の、のびと肌触りがより優れたものになる。なお、本明細書において、「真球度」は、球状硫酸化セルロースまたはその塩の短径/長径を意味する。真球度は、乾燥した粒子を光学顕微鏡によって観察し、その短径/長径を測定することによって求めることができる。
【0013】
本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩の平均粒子径は、特に限定されるものではなく、製品形態または用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、メークアップ化粧料に用いる場合は、平均粒子径は0.01〜45μmであることが好ましく、より好ましくは1〜45μm、さらに好ましくは1〜20μmである。平均粒子径が上記の範囲であると、のびと肌触りの滑らかさがさらに良好なものとなり、ヒアルロニダーゼ活性阻害能をより効果的に発揮することができるという利点もある。また、皮膚への付着性が良好であり、透明感に優れたものとなるので、メークアップ化粧料に用いる場合に好適である。なお、メークアップ化粧料に用いる場合には、皮膚に付けた際に肌のザラツキ感がないようにするため、球状硫酸化セルロースまたはその塩の粒子径は揃っていることが好ましく、最大粒子径は50μm以下であることが好ましい。
また、スキンケア化粧料または皮膚洗浄料に用いる場合には、平均粒子径は0.01〜350μmであることが好ましく、より好ましくは1〜300μmである。平均粒子径が上記の範囲であると、肌触りが良好であり、所望の保湿効果を付与することができる。なお、スキンケア化粧料または皮膚洗浄料に用いる場合も、球状硫酸化セルロースまたはその塩の粒子径は揃っていることが好ましく、最大粒子径は400μm以下であることが好ましい。
【0014】
球状硫酸化セルロースまたはその塩の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0015】
本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩の硫黄濃度は、球状硫酸化セルロースまたはその塩の重量に対し、0.001〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.3重量%である。硫黄濃度が0.5重量%を超えると球状を保ち難くなる場合があるが、原料となる球状セルロースを架橋することにより球状を保ちつつ硫黄濃度を上げることが可能である。
【0016】
本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩は、球状セルロースを溶媒中で、硫酸化剤を用いて硫酸エステル化処理することによって得られる。
【0017】
本発明において、球状硫酸化セルロースまたはその塩の原料である球状セルロースは、特に限定されるものではなく、一般に知られている架橋または非架橋の球状セルロースを用いることができる。球状セルロースは、球状の形態を持った固体状粒子であり、真球度は0.8〜1.0であることがより好ましく、より好ましくは0.9〜1.0である。なお、球状セルロースの真球度は、前述した球状硫酸化セルロースの真球度と同様の方法で測定することができる。
【0018】
球状セルロースは、セルロースを溶解し、再生することにより製造することができる。例えば、球状セルロースは、特公昭55−39565号公報、特公昭55−40618号公報などに記載されている酢酸エステルを経由する方法、特公昭63−62252号公報などに記載されるチオシアン酸カルシウム塩を用いた溶液から造粒する方法、特開昭59−38203号公報などに記載されるパラホルムアルデヒド・ジメチルスルホキシド溶液から製造する方法、あるいは、セルロースを塩化リチウム含有アミドに溶解させたセルロース溶液から成形する特許第3663666号公報に記載された方法などを用いて製造することができる。
【0019】
本発明に用いられる球状セルロースは非架橋のものであっても、架橋したものであってもよい。架橋球状セルロースは、例えば、非架橋の球状セルロースを、常法に従い、架橋剤を用いて架橋処理することにより得ることができる。架橋剤としては、例えばエピクロロヒドリンなどの多官能エポキシ化合物などを用いることができる。
【0020】
本発明に用いられる球状セルロースの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、所望の平均粒子径を有する球状硫酸化セルロースを生成するためには、45μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜45μm、さらに好ましくは1〜20μmである。
【0021】
本発明においては、球状セルロースとして市販品を用いることもできる。例えば、非架橋セルロースを原料とした「セルフロー C−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)及び「セルフロー TA−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径4〜12μm)などを使用することができる。
【0022】
本発明に用いられる球状セルロースは、通常、自重の約2〜3重量%の水分を含んでいる。このように水分が存在する状態で球状セルロースの硫酸エステル化反応を行った場合、硫酸エステル化剤がこの水分により失活し、硫酸エステル化が効率よく進まないことがある。このため、硫酸エステル化反応を行う前に球状セルロースを脱水し、あらかじめ水分をできるだけ除去しておくことが好ましい。
【0023】
脱水処理は、球状セルロースの形状を損なうことなく、球状セルロース中の水分を十分に除去できるものであれば特に限定されない。脱水処理方法としては、例えば、加熱乾燥が挙げられる。なお、加熱乾燥は、真空条件下で行ってもよい。
【0024】
加熱乾燥は球状セルロース中の水分が1重量%以下になるまで行うことが好ましい。それによって、次の硫酸エステル化反応を効率よく行うことができる。加熱温度は80±20℃が好ましい。
【0025】
本発明において、球状セルロースの硫酸エステル化に用いられる硫酸化剤としては、例えば、無水硫酸またはN,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸との混合物(N,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸とによって形成される複合体ないし錯体を含む)が好適である。N,N−ジメチルホルムアミドと無水硫酸との混合物を使用する場合は、該混合物中の無水硫酸の濃度が1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは18重量%である。
【0026】
硫酸化剤の使用量は、球状セルロースの硫酸エステル化を行うのに必要十分な範囲であればよく、当業者であればその範囲を適宜決定することができる。例えば、球状セルロースの質量をグルコース(単位構造物質)相当の分子量で割った値を球状セルロースのモル数と考えて、その0.01〜5倍モルの無水硫酸を含むように、硫酸化剤の使用量を調整することが好ましく、より好ましくは硫酸化剤中に0.1〜1倍モルの無水硫酸を含むように調整することが好ましい。本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩における硫酸基の導入量(硫黄濃度)は、球状セルロースに対する硫酸化剤の仕込み量を適宜調整することにより、制御することができる。
【0027】
球状セルロースの硫酸エステル化反応に使用する溶媒は、球状セルロース及び硫酸化剤に対して不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ピリジン等の複素環系溶媒、トリエチルアミン等の3級アミン系溶媒などが好適に用いられる。溶媒の使用量は、反応条件によって適宜調整すればよいが、球状セルロースの重量の1〜100倍量であることが好ましく、より好ましくは1〜10倍量である。
【0028】
硫酸エステル化反応は、球状セルロースを溶媒に懸濁後、硫酸化剤を滴下して行う。反応を均一に行うため、反応は攪拌しながら行うことが好ましい。反応温度は、特に低温である必要はなく、0〜70℃であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃、さらに好ましくは30〜50℃である。反応時間は、硫酸エステル化反応が十分に進行する範囲であれば特に限定されないが、目安としては、通常1〜10時間程度であり、好ましくは2〜6時間、より好ましくは2〜4時間である。
【0029】
反応終了後、反応生成物を濾過分離などによって回収し、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒を用いて洗浄することによって、球状硫酸化セルロースを得ることができる。
【0030】
得られた球状硫酸化セルロースはそのまま用いることもできるが、無機塩基、有機塩基、塩基性アミノ酸などのアルカリで中和処理して用いることが好ましい。中和処理を行うことにより、球状硫酸化エステルの塩を形成することができ、これにより硫酸エステル基による球状硫酸化セルロースの分解を抑えることができる。
【0031】
例えば、無機塩基で中和処理して得られる球状硫酸化セルロースの塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩等が挙げられる。有機塩基で中和処理して得られる球状硫酸化セルロースの塩としては、トリエチルアミン塩等が挙げられる。また、塩基性アミノ酸で中和処理して得られる球状硫酸化セルロースの塩としては、アルギニン塩、リジン塩またはヒスチジン塩等が挙げられる。中でも、ナトリウム塩は製造が容易であり、比較的安価であることから好適に用いられる。
【0032】
中和処理後は、イオン交換水などを用いて生成物を洗浄し、目的の球状硫酸化セルロースの塩を得ることができる。なお、本発明に用いられる球状硫酸化セルロースの塩には、無水物及び水和物のいずれもが含まれる。
【0033】
なお、本発明に用いられる球状硫酸化セルロースまたはその塩は、乾燥した粉体であるが、保水性が高いため、完全に水分を除去できない場合や完全に除去しても空気中の水分を吸収する場合があり、自重の約2〜3重量%の水分を含む場合がある。本発明においては、球状硫酸化セルロースまたはその塩がそのように水分を含む場合も好適に用いられる。
【0034】
本発明の化粧料配合剤において、球状硫酸化セルロースまたはその塩は、単独で用いることもできるし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
B.化粧料組成物
次に、本発明の化粧料組成物について説明する。
本発明の化粧料組成物は、上記「A.化粧料配合剤」で説明した化粧料配合剤を含むものであるので、のびと肌触りの滑らかさを保ちつつ、優れた保湿効果を奏することができる。
【0036】
本発明の化粧料組成物において、上記化粧料配合剤の含有量は、特に限定されるものではなく、求める保湿効果を発揮しうる濃度領域と製品の原材料費とのバランス、更には製品の目的などを考慮して決定すればよい。上記化粧料配合剤の含有量は、球状硫酸化セルロースまたはその塩の含有量が、本発明の化粧料組成物の全重量に対し、好ましくは0.0001〜99重量%、より好ましくは0.001〜80重量%、さらに好ましくは0.001〜70重量%、特に好ましくは0.01〜50重量%となる範囲で任意に決定される。例えば、液状ファンデーションに使用する場合は0.001〜10重量%であることが好ましく、固形ファンデーションに使用する場合は0.001〜50重量%であることが好ましい。
【0037】
本発明の化粧料組成物には、本発明の化粧料配合剤に加えて、さらに必要に応じて添加剤を含むことができる。本発明の化粧料組成物に用いられる添加剤としては、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば特に限定されるものではなく、化粧料として通常配合される成分を用いることができる。
【0038】
例えば、顔料、色素沈着抑制剤、チロシナーゼ活性阻害剤、メラノサイトメラニン生成抑制剤、メラニン生成促進剤、球状硫酸化セルロースまたはその塩以外の保湿剤、細胞賦活剤/代謝活性化剤、抗酸化剤、活性酸素消去剤/ラジカル生成抑制剤、脂肪代謝促進剤、紫外線防御剤/紫外線吸収促進剤、収斂剤、抗炎症剤/インターロイキン産生抑制剤/消炎剤、抗脂漏剤、抗菌剤/抗ウイルス剤、血流促進剤/血管刺激剤、抗アンドロゲン剤、構造タンパク質分解酵素(エラスターゼ、コラゲナーゼ、ケラチンプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、インテグリン分解酵素、インボルクリン分解酵素、フィラグリン分解酵素、ラミニン分解酵素、フィブロネクチン分解酵素、プロテオグリカン分解酵素等)活性阻害剤、構造タンパク質合成促進剤、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等)分解酵素阻害剤、ムコ多糖類合成促進剤、細胞間脂質生成促進剤/細胞間脂質状態改善剤、角質溶解剤/角層剥離促進剤、プラスミノーゲンアクチベーター拮抗阻害剤、メイラード反応阻害剤、テストステロン5αレダクターゼ活性阻害剤/毛乳頭活性化剤/発毛促進剤、毛母細胞増殖抑制剤/発毛抑制剤、毛髪膨潤剤/毛髪保護剤及び有臭物質消去剤等の有効成分を使用することができる。
【0039】
また、化粧料組成物を形成する上で使用が好まれる植物系原料、動物系原料、微生物系原料、その他天然物原料等を由来とするエキスまたは代謝物等の成分、その他の種々の化合物を添加剤として任意に選択・併用することができる。上記添加剤としては、例えば特開2005−350454号公報に記載された化合物などを例示することができる。
【0040】
これらの添加剤の配合量は、用途や目的に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではないが、本発明の化粧料組成物の全重量に対し、通常0.0001〜50重量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.01〜50重量%である。
【0041】
本発明の化粧料組成物の形状は、微粉末状、微細結晶状、液状、ペレット状などいずれを採用することもできる。形状は製品形態に合わせて適宜選択することができる。例えば、任意の添加剤として、賦形剤、増粘剤、ゲル化剤等を混合して、顆粒状、ゲル状または粘液状に調製することも可能である。ここで、賦形剤、増粘剤、ゲル化剤としては、化粧料組成物に一般に用いられる化合物を目的に応じて適宜選択して使用することができる。
【0042】
本発明の化粧料組成物は、本発明の化粧料配合剤及び必要に応じてその他の添加剤を、用途に応じた割合で計量し、混合することによって製造することができる。製造装置及び製造条件は、目的とする化粧料組成物の性状及び用途に応じて公知の製造装置及び製造条件を採用すればよい。
【0043】
本発明の化粧料組成物は、種々の製品形態で用いることができるが、中でも、スキンケア化粧料、メークアップ化粧料及び皮膚洗浄剤として好適に用いられる。本発明の化粧料組成物は、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有する本発明の化粧料配合剤を含むものであるので、スキンケア化粧料に配合することにより、皮膚に高い保護修復効果を与えることができる。また、保湿成分である化粧料配合剤ののびや肌触りが滑らかであるので、つけ心地が良く、ファンデーションやおしろいなどのメークアップ化粧料にも好適に配合することができる。メークアップ化粧料は、一日の大半を皮膚に付けたまま過ごすため、皮膚への負担が大きいが、ヒアルロニダーゼ活性阻害能が高い本発明の化粧料配合剤を含む本発明の化粧料組成物を使用することによって、皮膚に高い保護修復効果を与え、皮膚の負担を軽減させることができる。さらに、本発明の化粧料組成物は、皮膚に負担をかけることなく皮膚に適用することができるので、皮膚洗浄時の肌へのダメージを最小限に抑えることができ、皮膚洗浄剤に好適に配合することができる。
【0044】
スキンケア化粧料としては、例えば、化粧水、美容液、美白化粧水、乳液、美白乳液、クリーム、美白クリーム、軟膏、美白軟膏、ローション、美白ローション、オイルまたはパックなどが好ましく挙げられる。
メークアップ化粧料としては、例えば、固形ファンデーション、液状ファンデーション、口紅、リップグロス、アイシャドウ、白粉、頬紅、アイライナー、マスカラまたは眉墨などが好ましく挙げられる。
皮膚洗浄剤としては、例えば、石鹸、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングミルク、洗顔料またはボディーシャンプーなどが好ましく挙げられる。
【0045】
これら各化粧料の組成は、本発明の化粧料配合剤を含むものであれば特に限定されるものではなく、各化粧料の組成として公知の組成を用いることができる。例えば、「香粧品化学−理論と実際−第4版」(廣田博、田村健夫、フレグランスジャーナル社)、「化粧品ハンドブック」(関根茂ら、日光ケミカルズ株式会社他)、特開2005−200407号公報、特開平1−143816号公報、特開2000−191442号公報、特開2005−314393号公報、特開2000−319629号公報、特開2003−160465号公報、特開2005−232049号公報等を参照することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
球状硫酸化セルロースナトリウム塩の製造
出発原料である球状セルロースとしては、セルフロー C-25(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)を使用した。セルフロー C-25は、あらかじめ、水分値が1重量%より小さくなるまで、80℃の真空乾燥機で乾燥した。最終的に水分は0.7重量%となった。この乾燥した粉体を硫酸エステル化反応に用いた。
【0048】
まず、N,N−ジメチルホルムアミド150mLに、乾燥した球状セルロースの粉体48.99gを投入し、この混合液に、室温にて18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液61.00gを徐々に滴下した。この際、滴下速度は、液内の温度が5℃を超えないように調整した。滴下終了後、反応温度を32℃に保ちながら、4時間攪拌した。なお、18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液は、氷浴にて5℃以下に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド2500g中に無水硫酸278gを攪拌しながら滴下して調製したものを使用した。
【0049】
反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した後、10℃以下に冷却したイオン交換水中へ仕込み、1M−NaOHにて中和した。その後、イオン交換水で充分洗浄し、球状硫酸化セルロースナトリウム塩を得た。
元素分析(測定値)の結果、硫黄濃度は0.18重量%であった。また、得られた球状硫酸化セルロースナトリウム塩の平均粒子径(測定値)は、11.3μmであった。真球度は、0.9であった。
【0050】
得られた球状硫酸化セルロースナトリウム塩は、イオン交換水に懸濁し、それぞれ、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%の濃度になるように調製して、次のヒアルロニダーゼ活性阻害試験に用いた。
【0051】
[実施例2]
球状硫酸化セルロースナトリウム塩の製造
出発原料である球状セルロースは、平均粒子径250μmのものを使用した。なお、製造工程は次のとおりである。
(1)チオシアン酸カルシウム(無水物として)60重量%を含む水溶液に結晶性セルロース0.46kgを加え、110℃に加熱し溶解する。
(2)この溶液に界面活性剤を添加し、130〜140℃に予め加熱したo−ジクロロベンゼン30L中に溶解液を滴下し攪拌分散する。
(3)次いで、上記分散液を40℃以下まで冷却し、メタノール13L注ぎ粒子を得る。
(4)この懸濁液をろ過分別し、粒子をメタノール13Lにて洗浄し、ろ過分別する。この洗浄操作を数回行う。
(5)さらに大量の水で洗浄した後、目的とする球状セルロース粒子を得る。
【0052】
球状セルロース中の水分を除去するため、5000mLビーカーに含水重量で1942.4g秤量し、N,N−ジメチルホルムアミド4000mLを加えて30分間攪拌した。攪拌後静置し、カールフィッシャー法により上澄み液中の水分量を測定し、上澄み液中の水分が0.2重量%台になるまで脱水処理を繰り返した。最終的に上澄み液中の水分が0.19重量%となったので、この脱水処理した球状セルロースを用いて、次の硫酸エステル化処理を行った。
【0053】
まず、氷浴にて5℃以下の温度に保持したN,N−ジメチルホルムアミド中に脱水処理した球状セルロースを分散させた。これに5℃に冷却した18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液370.0gを徐々に滴下した。反応温度を30±2℃に保ちながら4時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過分別し、ろ過物をメタノールにて洗浄した。使用した18重量%無水硫酸−ジメチルホルムアミド溶液は実施例1に示した方法で調整した。
【0054】
次いで、ろ過物を10℃以下に冷却したイオン交換水中で1M−NaOHにて中和した。その後、イオン交換水で洗浄した後、球状硫酸化セルロースナトリウム塩を得た。
元素分析(測定値)の結果、硫黄濃度は2.8重量%であった。また、得られた球状硫酸化セルロースナトリウム塩の平均粒子径(測定値)は、250μmであった。真球度は、0.9であった。
【0055】
得られた球状硫酸化セルロースナトリウム塩は、イオン交換水に懸濁し、それぞれ、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%の濃度になるように調製して、次のヒアルロニダーゼ活性阻害試験に用いた。
【0056】
[比較例1]
比較例として、球状硫酸化セルロースに代えて硫酸化していない球状セルロースである「セルフロー C−25」(製品名・チッソ(株)、平均粒子径8〜12μm)を用い、これをイオン交換水に懸濁させ、それぞれ、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%の濃度になるように調製した。
【0057】
[試験例1]
ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼの活性阻害試験
次に、実施例1、2または比較例1で調製した各濃度の懸濁液を用いて、ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ活性阻害試験を行った。なお、ここで使用した試薬は特に記載しない限り和光純薬工業(株)製のものを用いた。
【0058】
下記の6種の溶液A〜Fを調製し、試験に用いた。
溶液A:ウシ睾丸由来ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 2.83mg/mL)
溶液B:0.3mol/L塩化ナトリウム−0.1mol/L酢酸緩衝溶液(pH4.0)
溶液C:ヒアルロン酸ナトリウム(チッソ(株)製、CHA H−Type)の0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)溶液(濃度 1.83mg/mL)
溶液D:0.4mol/L水酸化ナトリウム水溶液
溶液E:0.8mol/Lホウ酸ナトリウム水溶液
溶液F:パラ−ジメチルアミノベンズアルデヒド1gに、10N塩酸1.25mL及び酢酸98.75mLを添加した溶液
【0059】
(試験溶液の調製)
実施例1、2または比較例1で調製した各濃度の懸濁液を用いて、それぞれの試験溶液を調製した。
まず、溶液A(0.025mL)に溶液B(0.2mL)を添加し、37℃で20分間保持した。これに上記懸濁液を添加し、37℃で20分間恒温槽に静置した。更に溶液C(0.2mL)を加えて37℃で20分間恒温槽に静置した。次いで溶液D(0.1mL)及び溶液E(0.1mL)を添加して3分間煮沸した後、冷却し、溶液F(3.0mL)を加え37℃で20分間恒温槽に静置し、試験溶液を調製した。この試験溶液について、ヒアルロニダーゼの分解により生成した還元端のN−アセチルヘキソサミンを指標として、対照を純水に、585nmにおける吸光度QEを測定した。
【0060】
(対照溶液1の調製)
溶液Aの代わりに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)を用い、球状硫酸化セルロースナトリウム塩の代わりに純水を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液1を調製した。この対照溶液1につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Q1を測定した。
【0061】
(対照溶液2の調製)
球状硫酸化セルロースナトリウム塩の懸濁液の代わりに純水を用いた以外は、上記の試験溶液の調製と同様にして対照溶液2を調製した。この対照溶液2につき、試験溶液の場合と同様にして、585nmにおける吸光度Q2を測定した。
【0062】
測定した吸光度QE、吸光度Q1、吸光度Q2を用い、下記の式に従って、実施例1及び2で調製した球状硫酸化セルロースナトリウム塩の0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%濃度のイオン交換水懸濁液と、比較例1で調製した球状セルロース「セルフロー C−25」の0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%濃度のイオン交換水懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率を求めた。
阻害率(%)=[(Q2−Q1)−(QE−Q1)]/(Q2−Q1
結果を図1に示す。
【0063】
図1の結果から明らかなとおり、球状硫酸化セルロースを用いた実施例1及び実施例2では、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を示したが、球状セルロースを用いた比較例1では、ヒアルロニダーゼ活性阻害能を示さなかった。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率は、球状硫酸化セルロースナトリウム塩の濃度に比例して増加した。実施例2において、球状硫酸化セルロースナトリウム塩の濃度が0.1重量%の場合はヒアルロニダーゼ活性阻害能を検出できなかったが、濃度が0.5重量%になると20%近い阻害率を示すことがわかり、1重量%以下の低濃度でも高い効果を示すことがわかった。
【0064】
実施例1では、実施例2の場合と比較して、約4倍ものヒアルロニダーゼ活性阻害能を示した。球状硫酸化セルロースナトリウム塩の硫黄濃度を比較すると、実施例1では0.18重量%であるのに対して、実施例2では2.8重量%であり、実施例1の硫黄濃度は、実施例2の約15分の1であるのに、ヒアルロニダーゼ活性阻害能は実施例1の方が高いという結果が得られた。
【0065】
これらの結果は、球状セルロースを硫酸化することによってヒアルロニダーゼ活性阻害能が付与されたことを意味する。また、球状硫酸化セルロース中における硫黄濃度に比例してヒアルロニダーゼ活性阻害能が高くなるだけではなく、平均粒子径を小さくすることによってその効果が約4倍にも高められることが判った。これは、一つには、球状硫酸化セルロースの平均粒子径を小さくすることによって表面積が増加し、結果としてヒアルロニダーゼ活性阻害能を高めているということが推論できる。
【0066】
以上より、球状硫酸化セルロースまたはその塩は、低濃度でも高いヒアルロニダーゼ活性阻害能を示すことができる。そして、その効果は、平均粒子径を小さくすることにより、より優れたものとなった。このような球状硫酸化セルロースまたはその塩を化粧料に配合することによって、ヒアルロン酸の分解を抑制させる機能が付加されるため、皮膚に保湿効果を付与し、さらに抗炎症作用または組織再生の作用を奏しうる化粧料を提供することができる。また、球状硫酸化セルロースまたはその塩は、のびがよく、肌触りも滑らかであるので、化粧料に好適に配合することができる。
【0067】
以下に本発明の化粧料組成物の製造例と官能試験の結果を示す。
【表1】


【0068】
[官能試験1]
次に製造例1の液状ファンデーションを30代〜60代の女性14名に3日間使用してもらい、その結果を下記の5段階で評価してもらった。その結果の平均値を表1に示す。

・良い 5
・やや良い 4
・普通 3
・やや悪い 2
・悪い 1
【0069】
【表2】

【0070】
表1より、本発明の化粧料組成物は、のび、潤い、持続力またはカバー力などの点で高い評価が得られており、化粧料として好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の化粧料配合剤は、保湿効果が高く、のびと肌触りの滑らかさに優れている。本発明の化粧料配合剤は、スキンケア化粧料をはじめ、メークアップ化粧料や皮膚洗浄剤など、種々の製品形態の化粧料組成物に好適に配合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1及び2で調製した球状硫酸化セルロースナトリウム塩の各濃度におけるイオン交換水懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率と、比較例1で調製した球状セルロースの各濃度におけるイオン交換水懸濁液のヒアルロニダーゼ活性阻害率とを比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状硫酸化セルロースまたはその塩を含む化粧料配合剤。
【請求項2】
ヒアルロニダーゼ活性阻害能を有するものである、請求項1記載の化粧料配合剤。
【請求項3】
球状硫酸化セルロースまたはその塩の平均粒子径が0.01〜45μmである、請求項1または2記載の化粧料配合剤。
【請求項4】
球状硫酸化セルロースまたはその塩の真球度が0.8〜1.0である、請求項1〜3のいずれか記載の化粧料配合剤。
【請求項5】
球状硫酸化セルロースまたはその塩の硫黄濃度が0.001〜10重量%である、請求項1〜4のいずれか記載の化粧料配合剤。
【請求項6】
球状硫酸化セルロースの塩が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、トリエチルアミン塩、アルギニン塩、リジン塩及びヒスチジン塩から選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか記載の化粧料配合剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか記載の化粧料配合剤を含む化粧料組成物。
【請求項8】
球状硫酸化セルロースまたはその塩の含有量が0.01〜50重量%である、請求項7記載の化粧料組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−222604(P2008−222604A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60845(P2007−60845)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】