化粧料
【課題】比較的少量を施用しても抗炎症作用、抗酸化作用、メラニン色素生成抑制作用が充分にあり、皮膚の弱い人または皮膚疾患を有する人でも使用可能な抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料または美白化粧料とすることである。
【解決手段】ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分を水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として0.001〜20重量%含有する抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料とする。
【解決手段】ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分を水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として0.001〜20重量%含有する抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柑橘類由来の有効成分を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類は、古くから調味用もしくは食材として用いられ、その他にも漢方薬の原料として用いられ、例えばミカンの成熟した果実の皮は、漢方薬の陳皮(チンピ)として消化器系機能に対する改善作用が周知であり、また未成熟な果皮または幼果は青皮と称され、抗アレルギー剤の有効成分となることが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、はっさく、温州ミカン、アマナツ、キンカン、イヨカン、夏ミカン、ダイダイ、ブンタン、カボス、スダチ、ポンカンなど柑橘類の果汁、果皮、搾り粕を水、有機溶媒またはこれらの混合物で抽出したものを精製して抗酸化性物質のグルコシルオスミンが得られることが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、未成熟な温州ミカンなどの柑橘類のアルコール抽出エキスは、シミ・ソバカスなどの色素沈着症の改善に有効であり、またメラニン色素の産生抑制効果があることからも化粧料の有効成分として利用できることが知られている(特許文献3)。
【0005】
さらに、温州ミカンその他のミカン属(Citrus spp.)に属する植物を原料とし、アルコール、有機溶媒または水によって抽出した成分には、血管新生阻害性のあることが知られている(特許文献4)。
【0006】
このように、従来、抗炎症作用、抗酸化作用、メラニン色素生成抑制等の効果を目的とし、経口漢方薬や化粧品などに柑橘類の抽出物が配合されているものがある。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−170323号公報
【特許文献2】特開平10−245552号公報
【特許文献3】特開2005−132793号公報
【特許文献4】特開2004−331567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、柑橘類と称される果樹のなかにもその果実その他の部位に含有されている有用成分やその効用が知られていない種類があり、たとえば和歌山県東牟婁郡北山村で栽培され、その希少価値により幻の果実とも呼ばれるジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)には、これを飲用することで花粉症を抑える効果があると言われているが、それ以外の有用性は知られていない。
【0009】
また、前述した従来公知の多くの柑橘類についても、公知の有効性を発揮させるためには、抽出物を高濃度に配合するか、または頻繁または多量に施用する必要があり、そのような使用状態ではこの種の果樹に多く含まれる刺激成分が有効量を充分に作用させるための妨げになり、実際には確実な効果を得るほど配合することは容易なことではなかった。
【0010】
特に、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を患っている人は、柑橘類の刺激成分が症状の悪化を招く場合もあるため、通常の柑橘系の成分を含む化粧品の使用を制限せざるをえないという問題点もあった。
【0011】
そこで、この発明の課題は上記した問題点を解決して、比較的少量で施用しても抗炎症作用や抗酸化作用またはメラニン色素生成抑制作用があり、皮膚の弱い人でも使用可能な抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性のある化粧料または美白化粧料とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明では、ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として含有する化粧料としたのである。
【0013】
上記したように構成されるこの発明の化粧料は、その成分は未だ充分に解明されていないが、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の成分を含み、後述する試験結果からも明らかではあるが、皮膚への刺激性は極めて低く抑えられるものになる。
【0014】
そのような抽出対象のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)としては、例えば果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹・枝から選ばれる1部位以上のジャバラ植物体を採用することができる。
【0015】
また、化粧料中の抗酸化性有効成分を含む水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物の配合量は、ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に、その水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%であることが、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料であり、かつ皮膚への低刺激性の化粧料とするために好ましい。このようなメラニン色素生成抑制性の化粧料は、美白化粧料として採用できるものになる。
【0016】
すなわち、このようなジャバラ抽出物を配合した化粧料を使用すると、日光等に含まれる紫外線を浴びることで皮膚及び皮脂が酸化することにより生成される活性酸素種を防ぎ、これらにより誘導されるシワやたるみ等の老化現象の防止もしくは改善に優れると考えられる。
【0017】
また、ジャバラ抽出物を配合した化粧料を使用することによるメラニン色素生成抑制作用は、日光等に含まれる紫外線を浴びることで、メラニン色素の生成が起こり、皮膚上にシミ、ソバカス等の色素沈着として現れる諸症状の防止もしくは改善である。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、ミカン科ミカン亜科シトラス属のシトラス ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の所定の抽出物を抗酸化性有効成分として含有するので、比較的少量を施用しても抗炎症作用、抗酸化作用、メラニン色素生成抑制作用が充分にあり、皮膚の弱い人または皮膚疾患を有する人でも使用可能な抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料または美白化粧料となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明に用いるミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)は、和歌山県東牟婁郡北山村で栽培されている柑橘類であり、ユズ、九年母、小ミカンなどの交雑種の中から自然淘汰されて寒さに強い固体が定着したものと考えられている。
【0020】
ジャバラの名は「邪気を祓う」に由来するとされ、1971年に田中論一郎氏によって新種と確認され、この地方の呼び名をそのまま種名とし、ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)と命名された。このようなジャバラは、北山村では伝統的に特別に貴重なものとして正月料理などに利用されてきた。
【0021】
ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出部位は、例えば果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分であり、さらに具体的に挙げれば、ジャバラの果実、果皮、果汁、果肉、花、花の莟、葉、枝、茎、幹などである。
【0022】
この発明に用いる抽出溶媒は、水性溶媒または有機溶媒が用いられる。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはこれらが水で希釈された溶媒を総称する水性溶媒を用いるか、またはブタノールヘキサン、アセトン、酢酸エチル、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの有機溶媒を用いることができる。
【0023】
また、これら具体例の溶媒から1種もしくは2種以上を抽出溶媒として採用することができ、抽出溶媒の使用量は、ジャバラ植物体の各部位の等倍量から10倍量(但し、この割合は、新鮮なジャバラ植物体である場合の重量比である。)であることが好ましい。
【0024】
抽出操作は、温度、時間、圧力を適宜に変更して最適な効率で行なえばよいが、必要があれば1回以上行なうことが好ましく、還流または静置のいずれの抽出方法を採用してもよい。
【0025】
また抽出時間は、1時間〜196時間が好ましく、その場合に好ましい抽出温度は、20℃から80℃の範囲である。抽出後には、固液分離し、例えば濾紙濾過もしくは遠心分離にて残渣を除去して液状成分を分取し、必要に応じて濃縮することもできる。また、ペースト状にするか、または再び抽出溶媒に溶解して精製しても良い。
【0026】
抽出物中には、抗酸化性成分が含有され、化粧料中に有効成分として配合する場合には、例えばジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%配合する。
【0027】
このように好ましい配合量の数値範囲が特定される理由は、抽出物の配合量が0.001未満の低濃度では、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性のいずれもが充分に作用せず、また20重量%を超える高濃度を配合してもそれ以上に抗酸化作用などの向上は余り無く、低濃度では感じられなかった皮膚刺激性を惹起することとなって好ましくないからである。
【0028】
例を挙げると、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症などの抑制である。
【0029】
因みに、花粉症が起こるメカニズムについて説明をすると、I型アレルギーと言われる狭義のアレルギーは、肥満細胞と好塩基性白血球に結合しているIgE(免疫グロブリンE)抗体に抗原(アレルゲン)が結合することにより、ヒスタミンやセロトニンなどの化学伝達物質が放出され、その結果、痒み、浮腫、発赤などのアレルギー症状が現れることである。その症状が鼻粘膜で起こるとアレルギー性鼻炎、気道で起こると気管支喘息発作、皮膚で起こるとアトピー性皮膚炎、目で起こるとアレルギー性結膜炎となる。花粉症はアレルギー性鼻炎の1種であり、その症状であるくしゃみ、鼻水、鼻つまり、目の痒みは、異物(抗原)が体内に侵入するのを防ぐために起こるものである。
【0030】
この発明の化粧料で奏される抗炎症作用は、炎症を引き起こす物質が体内に侵入することにより誘発されるアレルギー症状を抑えることも含めて言う。
【0031】
このような作用が奏されるように、この発明に用いるジャバラ抽出物は、化粧品や浴用剤で常用される基材、薬剤などと共に処方し、任意の形態の化粧品を製造することができる。
【0032】
例えば、この発明におけるジャバラ抽出物に配合が適当な油分としては、動植物油、鉱物油が代表例であり、その他のエステル油、ワックス油、高級アルコール、脂肪酸類、シリコン油、リン脂質などの油または油脂が挙げられる。
【0033】
また、界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。また、p−アミノ安息香酸、アントラニル誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、シコニン、ビタミンB6誘導体などの紫外線吸収剤、アスコルビン酸およびその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、などの抗酸化剤、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメタクリレート、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸およびその塩、カゼイン、ゼラチンなどの増粘剤、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヒアルロン酸およびその塩、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸およびその塩、水溶性キチンあるいはキトサン誘導体、乳酸ナトリウムなどの保湿剤、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、防バイ剤、香料、着色料、清涼剤、安定化剤、動・植物を起源とした抽出物、動・植物性タンパク質およびその分解物、動・植物性多糖類およびその分解物、血流促進剤、消炎・抗炎症剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸およびその塩、核質溶解剤、収斂剤、創傷治癒剤、増泡剤、消臭・脱臭剤などを必要に応じて併用し、各種化粧品とすることができる。
【0034】
すなわち、この発明の化粧料は、化粧品、医薬部外品として抗炎症作用、抗酸化作用さらにはメラニン色素生成抑制作用を奏して皮膚美容効果が期待できるものとして適用され、その形態としては、例えばクリーム、軟膏、乳液、美容液、化粧水、パック、浴用剤、ヘアケア化粧料、メークアップ化粧料などが適当であり、その他にも周知の化粧品形態や剤型を採用できるものである。
【実施例】
【0035】
〔ジャバラの抽出:実施例1〕
ハサミで細かく切断したジャバラの果皮110gを、その3倍量(重量比)のエチルアルコール(95vol%)を加えてジューサーミキサーで攪拌した後、24時間、室温で静置して抽出を行った。24時間後に濾紙で濾過して抽出液を分取した。
【0036】
〔ジャバラの抽出:実施例2〕
ハサミで細断したジャバラの果皮110gを、その1.5倍量の1,3−ブチレングリコールと同じく1.5倍量の水を加えてジューサーミキサーで攪拌した後、24時間、室温で静置して抽出を行った。24時間後、濾紙を用いて濾過し、抽出液を分取した。
【0037】
〔比較例1、2〕
市販の温州みかん[比較例1]とグレープフルーツ[比較例2]を比較抽出例とした。抽出方法は、ジャバラの抽出例[実施例1]と同じである。
【0038】
<抗炎症作用試験>
前述の実施例1のジャバラ抽出液と市販の温州みかん及びグレープフルーツを比較例1、2として抗炎症作用試験の比較試験を行った。
【0039】
抗炎症作用を調べる対象の細胞は、ラット好塩基性白血病細胞RBL-2H3を10%FBS含有MEM培地中で培養したものを使用した。なお、この培養は全て37℃、5%CO2存在下条件で行った。詳細に説明すると、まず5×105cells/mlのラット好塩基性白血病細胞RBL-2H3を用意し、0.3μg/mlのマウス抗DNP IgE抗体を加え、24穴マイクロプレートに500μlずつ播種し、24時間培養して細胞を感作させた。24時間後、実施例1、2及び比較例1、2のサンプルとDNP−BSAを添加し、脱顆粒を起こした。脱顆粒の際には、細胞から放出されるβ―ヘキソサミニダーゼを人工基質であるp−ニトロフェニル−N―アセチル β―D−グルコサミニドと反応させ、405nmにおける吸光度を測定し、この結果を表1に示した。
【0040】
β―ヘキソサミニダーゼ活性阻害率={1−(S−B)/(C−b)}×100
(式中の各記号は、それぞれ以下の測定値を示す。S:サンプルを細胞に加えた時のA405、B:細胞非存在下にてサンプルを加えた時のA405、C:コントロール(PBSを細胞に加えた時)のA405、b:細胞非存在下でのA405)
【0041】
【表1】
【0042】
表1はβ―ヘキソサミニダーゼ活性抑制率を示す。β−ヘキソサミニダーゼは、脱顆粒の際、ヒスタミン等のアレルギー誘発物質と同時に放出され、アレルギー反応活性測定の指標とされる。すなわち、β―ヘキソサミニダーゼ活性抑制が高いほど、アレルギー反応が抑えられている。表1からも明らかなように、他の代表的な柑橘類よりもはるかに効果のあることが確認された。
【0043】
<メラニン合成抑制試験>
実施例1のジャバラ抽出液と比較例1、2を用いて、マウスメラノーマ細胞B16によるメラニン生成抑制作用試験を行った。
【0044】
試験方法としては、B16マウスメラノーマ細胞を10%FBS含有MEM培地中で培養したものを使用した。なおこの培養は全て37℃、5%CO2存在下条件で行った。詳細には、5×104 cells/mlのB16メラノーマ細胞を、60mmプラスティックシャーレに播種し、24時間培養した。その後、新鮮な培地に交換し、試験試料をそれぞれ1%、0.5%になるよう培地中に添加した。試料添加72時間後、培地を吸引除去し、細胞を0.85N水酸化カリウム溶液で溶解させ、405nmにおける吸光度を測定した。また、試料無添加の細胞のメラニン合成率を100%として試料添加時のメラニン合成率を算出した。メラニン合成阻害率は、試料無添加のメラニン合成率(100%)から試料添加時のメラニン合成率を差し引いたものとした。この結果をメラニン阻害率(%)として表2に示した。
【0045】
【表2】
【0046】
<抗酸化力試験>
実施例1のジャバラ抽出液と比較例1、2を用い、517nmに極大吸収を持つ安定なラジカル物質1,1−ジフェニル-2-ピクリル-ヒドラジル(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl DPPH)がジャバラ抽出物に含まれる抗酸化物質により還元されることで、517nmにおける吸光度の減少を捕らえて抗酸化能を評価した。
【0047】
因みに、ヒトはヒドロキシラジカルを消去する酵素を産生していないため、皮膚等で産生されたヒドロキシラジカルの消去作用を有する物質を配合した化粧料を塗布することで、様々な皮膚疾患を予防及び改善できる。
【0048】
適当な濃度のサンプルをエタノールで調整し、1mlとした。この100μlを96穴プレートに入れ、5×10−4 mol/LのDPPH溶液を100μl加えて25℃、30分間反応させ、517nmの吸光度を測定した。その結果を表3に示した。
【0049】
DPPH消去率={1−(C−D)/(A−B)}×100
(式中、A、B、C、Dは以下の測定値を示す。A:試料無添加におけるDPPH溶液の吸光度、B:試料無添加おけるサンプル溶液の吸光度、C:各濃度の試料溶液におけるDPPHの吸光度、D:各濃度の試料溶液におけるサンプル溶液の吸光度)
【0050】
【表3】
【0051】
<化粧水とクリームの製造と官能評価>
表4、表5に示す配合割合で、実施例1のジャバラ抽出物を配合した化粧水、化粧クリームをそれぞれ製造した。このうち、化粧水をアレルギー肌、脂性肌、乾燥肌のパネラー(成人男女各10人、20代〜50代)の皮膚(顔面部及び腕部)に毎日朝晩2回、2ヶ月間使用させ、2ヶ月後に官能結果を調査し、結果を表6に示し、表7に化粧クリームの使用結果を示した。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
上記の表6、7の結果からも明らかなように、化粧水およびクリームのいずれにおいても70%以上の人が浸透性と使用感は良いと判断し、化粧水では60%の人のしわ、シミ、アレルギー(アトピー及びかぶれ)の改善が認められ、クリームでは約50%の人のしわ、シミ、アレルギー(アトピー及びかぶれ)の改善が認められた。
【0057】
また、アトピー性皮膚炎やかぶれの症状がある人においても刺激がなく、従来の柑橘類系化粧品を使用できなかった人にも使用できる化粧品であることが認められた。
【技術分野】
【0001】
この発明は、柑橘類由来の有効成分を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類は、古くから調味用もしくは食材として用いられ、その他にも漢方薬の原料として用いられ、例えばミカンの成熟した果実の皮は、漢方薬の陳皮(チンピ)として消化器系機能に対する改善作用が周知であり、また未成熟な果皮または幼果は青皮と称され、抗アレルギー剤の有効成分となることが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、はっさく、温州ミカン、アマナツ、キンカン、イヨカン、夏ミカン、ダイダイ、ブンタン、カボス、スダチ、ポンカンなど柑橘類の果汁、果皮、搾り粕を水、有機溶媒またはこれらの混合物で抽出したものを精製して抗酸化性物質のグルコシルオスミンが得られることが知られている(特許文献2)。
【0004】
また、未成熟な温州ミカンなどの柑橘類のアルコール抽出エキスは、シミ・ソバカスなどの色素沈着症の改善に有効であり、またメラニン色素の産生抑制効果があることからも化粧料の有効成分として利用できることが知られている(特許文献3)。
【0005】
さらに、温州ミカンその他のミカン属(Citrus spp.)に属する植物を原料とし、アルコール、有機溶媒または水によって抽出した成分には、血管新生阻害性のあることが知られている(特許文献4)。
【0006】
このように、従来、抗炎症作用、抗酸化作用、メラニン色素生成抑制等の効果を目的とし、経口漢方薬や化粧品などに柑橘類の抽出物が配合されているものがある。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−170323号公報
【特許文献2】特開平10−245552号公報
【特許文献3】特開2005−132793号公報
【特許文献4】特開2004−331567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、柑橘類と称される果樹のなかにもその果実その他の部位に含有されている有用成分やその効用が知られていない種類があり、たとえば和歌山県東牟婁郡北山村で栽培され、その希少価値により幻の果実とも呼ばれるジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)には、これを飲用することで花粉症を抑える効果があると言われているが、それ以外の有用性は知られていない。
【0009】
また、前述した従来公知の多くの柑橘類についても、公知の有効性を発揮させるためには、抽出物を高濃度に配合するか、または頻繁または多量に施用する必要があり、そのような使用状態ではこの種の果樹に多く含まれる刺激成分が有効量を充分に作用させるための妨げになり、実際には確実な効果を得るほど配合することは容易なことではなかった。
【0010】
特に、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を患っている人は、柑橘類の刺激成分が症状の悪化を招く場合もあるため、通常の柑橘系の成分を含む化粧品の使用を制限せざるをえないという問題点もあった。
【0011】
そこで、この発明の課題は上記した問題点を解決して、比較的少量で施用しても抗炎症作用や抗酸化作用またはメラニン色素生成抑制作用があり、皮膚の弱い人でも使用可能な抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性のある化粧料または美白化粧料とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明では、ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として含有する化粧料としたのである。
【0013】
上記したように構成されるこの発明の化粧料は、その成分は未だ充分に解明されていないが、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の成分を含み、後述する試験結果からも明らかではあるが、皮膚への刺激性は極めて低く抑えられるものになる。
【0014】
そのような抽出対象のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)としては、例えば果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹・枝から選ばれる1部位以上のジャバラ植物体を採用することができる。
【0015】
また、化粧料中の抗酸化性有効成分を含む水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物の配合量は、ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に、その水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%であることが、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料であり、かつ皮膚への低刺激性の化粧料とするために好ましい。このようなメラニン色素生成抑制性の化粧料は、美白化粧料として採用できるものになる。
【0016】
すなわち、このようなジャバラ抽出物を配合した化粧料を使用すると、日光等に含まれる紫外線を浴びることで皮膚及び皮脂が酸化することにより生成される活性酸素種を防ぎ、これらにより誘導されるシワやたるみ等の老化現象の防止もしくは改善に優れると考えられる。
【0017】
また、ジャバラ抽出物を配合した化粧料を使用することによるメラニン色素生成抑制作用は、日光等に含まれる紫外線を浴びることで、メラニン色素の生成が起こり、皮膚上にシミ、ソバカス等の色素沈着として現れる諸症状の防止もしくは改善である。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、ミカン科ミカン亜科シトラス属のシトラス ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の所定の抽出物を抗酸化性有効成分として含有するので、比較的少量を施用しても抗炎症作用、抗酸化作用、メラニン色素生成抑制作用が充分にあり、皮膚の弱い人または皮膚疾患を有する人でも使用可能な抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料または美白化粧料となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明に用いるミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)は、和歌山県東牟婁郡北山村で栽培されている柑橘類であり、ユズ、九年母、小ミカンなどの交雑種の中から自然淘汰されて寒さに強い固体が定着したものと考えられている。
【0020】
ジャバラの名は「邪気を祓う」に由来するとされ、1971年に田中論一郎氏によって新種と確認され、この地方の呼び名をそのまま種名とし、ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)と命名された。このようなジャバラは、北山村では伝統的に特別に貴重なものとして正月料理などに利用されてきた。
【0021】
ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出部位は、例えば果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分であり、さらに具体的に挙げれば、ジャバラの果実、果皮、果汁、果肉、花、花の莟、葉、枝、茎、幹などである。
【0022】
この発明に用いる抽出溶媒は、水性溶媒または有機溶媒が用いられる。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはこれらが水で希釈された溶媒を総称する水性溶媒を用いるか、またはブタノールヘキサン、アセトン、酢酸エチル、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの有機溶媒を用いることができる。
【0023】
また、これら具体例の溶媒から1種もしくは2種以上を抽出溶媒として採用することができ、抽出溶媒の使用量は、ジャバラ植物体の各部位の等倍量から10倍量(但し、この割合は、新鮮なジャバラ植物体である場合の重量比である。)であることが好ましい。
【0024】
抽出操作は、温度、時間、圧力を適宜に変更して最適な効率で行なえばよいが、必要があれば1回以上行なうことが好ましく、還流または静置のいずれの抽出方法を採用してもよい。
【0025】
また抽出時間は、1時間〜196時間が好ましく、その場合に好ましい抽出温度は、20℃から80℃の範囲である。抽出後には、固液分離し、例えば濾紙濾過もしくは遠心分離にて残渣を除去して液状成分を分取し、必要に応じて濃縮することもできる。また、ペースト状にするか、または再び抽出溶媒に溶解して精製しても良い。
【0026】
抽出物中には、抗酸化性成分が含有され、化粧料中に有効成分として配合する場合には、例えばジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%配合する。
【0027】
このように好ましい配合量の数値範囲が特定される理由は、抽出物の配合量が0.001未満の低濃度では、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性のいずれもが充分に作用せず、また20重量%を超える高濃度を配合してもそれ以上に抗酸化作用などの向上は余り無く、低濃度では感じられなかった皮膚刺激性を惹起することとなって好ましくないからである。
【0028】
例を挙げると、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症などの抑制である。
【0029】
因みに、花粉症が起こるメカニズムについて説明をすると、I型アレルギーと言われる狭義のアレルギーは、肥満細胞と好塩基性白血球に結合しているIgE(免疫グロブリンE)抗体に抗原(アレルゲン)が結合することにより、ヒスタミンやセロトニンなどの化学伝達物質が放出され、その結果、痒み、浮腫、発赤などのアレルギー症状が現れることである。その症状が鼻粘膜で起こるとアレルギー性鼻炎、気道で起こると気管支喘息発作、皮膚で起こるとアトピー性皮膚炎、目で起こるとアレルギー性結膜炎となる。花粉症はアレルギー性鼻炎の1種であり、その症状であるくしゃみ、鼻水、鼻つまり、目の痒みは、異物(抗原)が体内に侵入するのを防ぐために起こるものである。
【0030】
この発明の化粧料で奏される抗炎症作用は、炎症を引き起こす物質が体内に侵入することにより誘発されるアレルギー症状を抑えることも含めて言う。
【0031】
このような作用が奏されるように、この発明に用いるジャバラ抽出物は、化粧品や浴用剤で常用される基材、薬剤などと共に処方し、任意の形態の化粧品を製造することができる。
【0032】
例えば、この発明におけるジャバラ抽出物に配合が適当な油分としては、動植物油、鉱物油が代表例であり、その他のエステル油、ワックス油、高級アルコール、脂肪酸類、シリコン油、リン脂質などの油または油脂が挙げられる。
【0033】
また、界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。また、p−アミノ安息香酸、アントラニル誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体、カンファー誘導体、フラン誘導体、ピロン誘導体、核酸誘導体、アラントイン誘導体、ニコチン酸誘導体、シコニン、ビタミンB6誘導体などの紫外線吸収剤、アスコルビン酸およびその塩、ステアリン酸エステル、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、ノルジヒドログアセレテン酸、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、などの抗酸化剤、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメタクリレート、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸およびその塩、カゼイン、ゼラチンなどの増粘剤、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヒアルロン酸およびその塩、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸およびその塩、水溶性キチンあるいはキトサン誘導体、乳酸ナトリウムなどの保湿剤、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、防バイ剤、香料、着色料、清涼剤、安定化剤、動・植物を起源とした抽出物、動・植物性タンパク質およびその分解物、動・植物性多糖類およびその分解物、血流促進剤、消炎・抗炎症剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸およびその塩、核質溶解剤、収斂剤、創傷治癒剤、増泡剤、消臭・脱臭剤などを必要に応じて併用し、各種化粧品とすることができる。
【0034】
すなわち、この発明の化粧料は、化粧品、医薬部外品として抗炎症作用、抗酸化作用さらにはメラニン色素生成抑制作用を奏して皮膚美容効果が期待できるものとして適用され、その形態としては、例えばクリーム、軟膏、乳液、美容液、化粧水、パック、浴用剤、ヘアケア化粧料、メークアップ化粧料などが適当であり、その他にも周知の化粧品形態や剤型を採用できるものである。
【実施例】
【0035】
〔ジャバラの抽出:実施例1〕
ハサミで細かく切断したジャバラの果皮110gを、その3倍量(重量比)のエチルアルコール(95vol%)を加えてジューサーミキサーで攪拌した後、24時間、室温で静置して抽出を行った。24時間後に濾紙で濾過して抽出液を分取した。
【0036】
〔ジャバラの抽出:実施例2〕
ハサミで細断したジャバラの果皮110gを、その1.5倍量の1,3−ブチレングリコールと同じく1.5倍量の水を加えてジューサーミキサーで攪拌した後、24時間、室温で静置して抽出を行った。24時間後、濾紙を用いて濾過し、抽出液を分取した。
【0037】
〔比較例1、2〕
市販の温州みかん[比較例1]とグレープフルーツ[比較例2]を比較抽出例とした。抽出方法は、ジャバラの抽出例[実施例1]と同じである。
【0038】
<抗炎症作用試験>
前述の実施例1のジャバラ抽出液と市販の温州みかん及びグレープフルーツを比較例1、2として抗炎症作用試験の比較試験を行った。
【0039】
抗炎症作用を調べる対象の細胞は、ラット好塩基性白血病細胞RBL-2H3を10%FBS含有MEM培地中で培養したものを使用した。なお、この培養は全て37℃、5%CO2存在下条件で行った。詳細に説明すると、まず5×105cells/mlのラット好塩基性白血病細胞RBL-2H3を用意し、0.3μg/mlのマウス抗DNP IgE抗体を加え、24穴マイクロプレートに500μlずつ播種し、24時間培養して細胞を感作させた。24時間後、実施例1、2及び比較例1、2のサンプルとDNP−BSAを添加し、脱顆粒を起こした。脱顆粒の際には、細胞から放出されるβ―ヘキソサミニダーゼを人工基質であるp−ニトロフェニル−N―アセチル β―D−グルコサミニドと反応させ、405nmにおける吸光度を測定し、この結果を表1に示した。
【0040】
β―ヘキソサミニダーゼ活性阻害率={1−(S−B)/(C−b)}×100
(式中の各記号は、それぞれ以下の測定値を示す。S:サンプルを細胞に加えた時のA405、B:細胞非存在下にてサンプルを加えた時のA405、C:コントロール(PBSを細胞に加えた時)のA405、b:細胞非存在下でのA405)
【0041】
【表1】
【0042】
表1はβ―ヘキソサミニダーゼ活性抑制率を示す。β−ヘキソサミニダーゼは、脱顆粒の際、ヒスタミン等のアレルギー誘発物質と同時に放出され、アレルギー反応活性測定の指標とされる。すなわち、β―ヘキソサミニダーゼ活性抑制が高いほど、アレルギー反応が抑えられている。表1からも明らかなように、他の代表的な柑橘類よりもはるかに効果のあることが確認された。
【0043】
<メラニン合成抑制試験>
実施例1のジャバラ抽出液と比較例1、2を用いて、マウスメラノーマ細胞B16によるメラニン生成抑制作用試験を行った。
【0044】
試験方法としては、B16マウスメラノーマ細胞を10%FBS含有MEM培地中で培養したものを使用した。なおこの培養は全て37℃、5%CO2存在下条件で行った。詳細には、5×104 cells/mlのB16メラノーマ細胞を、60mmプラスティックシャーレに播種し、24時間培養した。その後、新鮮な培地に交換し、試験試料をそれぞれ1%、0.5%になるよう培地中に添加した。試料添加72時間後、培地を吸引除去し、細胞を0.85N水酸化カリウム溶液で溶解させ、405nmにおける吸光度を測定した。また、試料無添加の細胞のメラニン合成率を100%として試料添加時のメラニン合成率を算出した。メラニン合成阻害率は、試料無添加のメラニン合成率(100%)から試料添加時のメラニン合成率を差し引いたものとした。この結果をメラニン阻害率(%)として表2に示した。
【0045】
【表2】
【0046】
<抗酸化力試験>
実施例1のジャバラ抽出液と比較例1、2を用い、517nmに極大吸収を持つ安定なラジカル物質1,1−ジフェニル-2-ピクリル-ヒドラジル(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl DPPH)がジャバラ抽出物に含まれる抗酸化物質により還元されることで、517nmにおける吸光度の減少を捕らえて抗酸化能を評価した。
【0047】
因みに、ヒトはヒドロキシラジカルを消去する酵素を産生していないため、皮膚等で産生されたヒドロキシラジカルの消去作用を有する物質を配合した化粧料を塗布することで、様々な皮膚疾患を予防及び改善できる。
【0048】
適当な濃度のサンプルをエタノールで調整し、1mlとした。この100μlを96穴プレートに入れ、5×10−4 mol/LのDPPH溶液を100μl加えて25℃、30分間反応させ、517nmの吸光度を測定した。その結果を表3に示した。
【0049】
DPPH消去率={1−(C−D)/(A−B)}×100
(式中、A、B、C、Dは以下の測定値を示す。A:試料無添加におけるDPPH溶液の吸光度、B:試料無添加おけるサンプル溶液の吸光度、C:各濃度の試料溶液におけるDPPHの吸光度、D:各濃度の試料溶液におけるサンプル溶液の吸光度)
【0050】
【表3】
【0051】
<化粧水とクリームの製造と官能評価>
表4、表5に示す配合割合で、実施例1のジャバラ抽出物を配合した化粧水、化粧クリームをそれぞれ製造した。このうち、化粧水をアレルギー肌、脂性肌、乾燥肌のパネラー(成人男女各10人、20代〜50代)の皮膚(顔面部及び腕部)に毎日朝晩2回、2ヶ月間使用させ、2ヶ月後に官能結果を調査し、結果を表6に示し、表7に化粧クリームの使用結果を示した。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
上記の表6、7の結果からも明らかなように、化粧水およびクリームのいずれにおいても70%以上の人が浸透性と使用感は良いと判断し、化粧水では60%の人のしわ、シミ、アレルギー(アトピー及びかぶれ)の改善が認められ、クリームでは約50%の人のしわ、シミ、アレルギー(アトピー及びかぶれ)の改善が認められた。
【0057】
また、アトピー性皮膚炎やかぶれの症状がある人においても刺激がなく、従来の柑橘類系化粧品を使用できなかった人にも使用できる化粧品であることが認められた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として含有する化粧料。
【請求項2】
抽出対象のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)が、果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%含有する請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
化粧料が、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料。
【請求項1】
ミカン科ミカン亜科シトラス属のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を抗酸化性有効成分として含有する化粧料。
【請求項2】
抽出対象のジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)が、果実、葉、花、種子、樹皮、樹幹、樹枝から選ばれる1部位以上のジャバラの植物体部分である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
ジャバラ(Citrus jabara Hort.ex Tanaka)の抽出条件が、室温、大気圧下、24時間である場合に水性溶媒抽出物または有機溶媒抽出物を0.001〜20重量%含有する請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
化粧料が、抗炎症性、抗酸化性またはメラニン色素生成抑制性の化粧料である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料。
【公開番号】特開2007−238464(P2007−238464A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59454(P2006−59454)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(593084649)日本コルマー株式会社 (12)
【出願人】(502365003)北山村 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(593084649)日本コルマー株式会社 (12)
【出願人】(502365003)北山村 (2)
【Fターム(参考)】
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