説明

化粧料

【課題】美白効果に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】竹酢液中の4−エチル−2−メトキシフェノール(A)、2,6−ジメトキシフェノール(B)、フェニルプロパノイド配糖体化合物(C)の一種あるいは複合してなる、美白成分を有することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白効果・抗酸化能に優れた化粧料素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球に降り注ぐ紫外線の量が急増し、人体に与える悪影響が懸念されている。その紫外線にはビタミンDの生合成あるいは殺菌効果などの有用な作用がある反面、多量の紫外線が照射されると体内で活性酸素・フリーラジカルが発生し、老化、動脈硬化、癌、皮膚の変性などの症状が現れる。これらの現代病の約90%に活性酸素・フリーラジカルが関与していることが明らかにされている。一方、美容上の観点からみると、シミ・ソバカスの生成促進や皮膚の老化促進など数多くの有害作用があることも知られている。
【0003】
シミ・ソバカスの原因であるメラニンの生成には多くの要因が挙げられている。その一つとして酵素の関与が知られており、その中でも、メラニン生成の鍵酵素であるチロシナーゼの活性を阻害する竹酢液中の成分に関する。また、化粧品は毎日使用されるものであり、肌に直接しかも長時間にわたり塗布されることから、肌に刺激が少なくより安全な製品が求められている。特に最近では、健康に対する意識や天然素材に対する注目度が高くなっている。
これらの問題を解消するために、多くの化粧料剤が提案されている。例えば、アルブチンを有効成分とする化粧料やα―トコフェロール等の酸化防止剤を利用した化粧料等が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】特開昭60−56912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら化粧料には種々の問題点が残されており、実用性の面で問題があった。例えば美白成分としてのアルブチンは漂白効果は強いが細胞毒性が強いという欠点があり、活性酸素種の消去剤としてのα―トコフェロールは光や熱に対して不安定であり、また作用・効果が不十分であった。
本発明では上記のような問題点の解消を図り、より優れた美白用の化粧料を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、天然物由来の抽出物の有効利用について研究を続け、竹を加熱する過程で発生する蒸気を冷却して採取される竹酢液に注目し、上記従来の課題について、色素細胞へのメラニン生成抑制効果について鋭意研究を重ね、本発明を達成した。すなわち本発明の構成は、竹酢液中におけるメラニン生成抑制成分のうち、4−エチル−2−メトキシフェノール(A)、2,6−ジメトキシフェノール(B)、フェニルプロパノイド配糖体化合物(C)のうちの一種を含有すること、あるいは(A)と(B)または(A)と(C)、(B)と(C)を複合して含有することを特徴とする化粧料である。
なおこれらの化学式は次式で表される。
【化1】

【化2】

【化3】

【発明の効果】
【0007】
本発明の竹酢液中成分中の化粧料素材は、市販品であるアルブチンよりも良好な美白効果を示し、かつ細胞毒性を発現しない有用な化合物を産出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係わる化粧料素材には、イネ科タケ亜科に属する植物(俗名タケ、以下、単にタケと称す)が用いられる。使用できるタケの種類は特に限定されないが、特に、孟宗竹(Phyllostachys heterocycla)が好ましく用いられる
【0009】
その他、クロチク(Phyllostachys nigra)、ハチク(Phyllostachys nigra var.henosis)、マダケ(Phyllostachys bambusoides)、ホテイチク(Phyllostachys bambusoides var.aurea)、メダケ(Pleioblastus simonii)、ヤダケ(Pseudosasa japonica)、シチク(Bambusa stenostachya)、ホウライチク(Bambusa multiplex)、ケイチク(Chimonobaambusa makinoi)、カンチク(Chimonobaambusa marmoreal)、シカクダケ(Chimonobaambusa quadrangularis)、ナリヒラダケ(Semiarundinaria fastuosa)、トウチク(Sinobambusa tootsik)、ダイサンチク(Bambusa vulgaris)、チョウシチク(Bambusa dolichoclada)、リョクチク(Bambusa oldhamii)、マチク(Dendrocalamus latifolius)等を例示することができ、これらタケより竹酢液を採取する方法としては例えば、特開平08−157832、特開平07−034070、特開05−311177等がある。
【0010】
本発明においては、タケの地上部及び地下部の全部位が使用可能である。具体的には、竹皮(表皮)部、枝部、葉部、茎部などの各部位を単独で、或いは適宣混合して用いてもよい。
【0011】
またタケの使用形態は特に限定されず、粉末状や板状あるいは丸竹のまま用いても、あるいは抽出物として用いてもよい。また、これらを混合して用いることも可能である。
【0012】
竹酢液より有効成分を抽出する方法は特に限定されず、酢酸エチル等の有機溶媒、或いはこれらの混液など、竹酢液の有効成分が好適に抽出される溶媒であれば、全て好適に用いることができる。
【0013】
本発明において、竹酢液中から選ばれる少なくとも一種からなる有効成分の配合量は、化粧料剤によって異なるものであるが、0.0001〜20重量%配合するのがよい。好ましくは0.001〜10重量%、さらに好ましくは、0.01〜2重量%配合するのがよい。配合量が0.0001重量%未満であると、本発明の効果が発揮できず、また化粧剤によっては製造が困難になるものもあることから、20重量%を超えないほうがよい。
【0014】
試験検体は、竹酢液回収装置(特開平08−157832)により、孟宗竹より採取された竹酢液である。
【0015】
この竹酢液を酢酸エチルで抽出し、例を挙げ、本発明をより詳細に説明が、本発明はこの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
酢酸エチルで抽出した竹酢液中の4−エチル−2−メトキシフェノール及び2,6−ジメトキシフェノールのマッシュルーム由来のチロシナーゼ活性阻害試験を行った。
試験成分濃度はいずれも0.033%で行った。
また、比較のため市販の化粧品配合剤である、アルブチンとの比較を行った。
【表1】

【0017】
チロシンを基質としたチロシナーゼ活性阻害試験方法
試験管に3mMの試料溶液0.1mLとチロシン溶液2.8mLを加え、あらかじめ37℃に設定した恒温水槽中で5分間予備加温を行った。ついで、チロシナーゼ溶液(2000unit/mL)0.1mLを加え、恒温水槽中で30分間加温を行い、475nmに設定した分光光度計V-530(JASCO社製)を用いて、吸光度を測定した。ブランクは、試料溶液の代わりにジメチルスルフォキシド(以下、DMSOと略す)を、色対照(資料及びブランク)は、チロシナーゼ溶液の代わりに、リン酸ナトリウム緩衝液を加え、吸光度を測定した。(試料溶液の吸光度をA,色対照をB,ブランクの吸光度及び色対照をそれぞれC,Dとする)阻害率は3回の測定結果からそれぞれ平均値を算出し、次式によってチロシナーゼ活性阻害率を求めた。
チロシナーゼ活性阻害率(%)=〔(C−D)−(A−B)〕×100/(C−D)
このように、4−エチル−2−メトキシフェノールについては、アルブチンよりも良好な阻害活性を示した。また、チロシンを基質とした条件においてのみ作用が発現していることから、チロシンとDOPA間でチロシナーゼが成分に作用し、チロシンの酸化に影響を及ぼし、メラニン生成を抑制しているものと考えられる。
【実施例2】
【0018】
酢酸エチルで抽出した竹酢液中の4−エチル−2−メトキシフェノール及び2,6−ジメトキシフェノールのDPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン)ラジカル消去活性試験を行った。
比較のため市販の化粧品配合剤である、α―トコフェロールとの比較を行った。
【表2】

【0019】
DPPHラジカル消去活性試験方法
試料の1mMエタノール溶液を作成し、これを96ウエルマイクロプレートに最低5濃度の希釈系列(各100μL)をあらかじめ作成し、この希釈系列100μLのエタノールを加えた。ついで0.2mM 1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン(以下、DPPHと略す)ラジカルエタノール溶液50μLを加えた。25℃で30分間反応を行った後、517nmに設定したマイクロプレートリーダーMTP−300(CORONA社製)を用いて、吸光度を測定した。また、ブランク試験は試料溶液の代わりにエタノールを加え、同様の操作を行い、吸光度を測定した(試料溶液の吸光度をA,ブランクの吸光度をB,色対照の吸光度をCとする)。次式に従ってDPPHラジカル消去率を求めた。また、この結果に基づいて50%消去濃度であるSC50を算出した。
DPPHラジカル消去率(%)=〔1−(A−C)/B〕×100
DPPHラジカル消去活性試験においても、4−エチル−2−メトキシフェノール(A)、2,6−ジメトキシフェノール(B)及び(A)+(B)とも高い消去活性を示した。
【実施例3】
【0020】
酢酸エチルで抽出した竹酢液中の4−エチル−2−メトキシフェノール及び2,6−ジメトキシフェノール、フェニルプロパノイド配糖体を、より生体に近い細胞レベルでのメラニン生成抑制効果を調べるため、B16メラノーマ培養細胞(in vivo)を用いて、メラニン生成抑制効果を行った。
また、比較のため市販の化粧品配合剤である、アルブチンとの比較を行った。
【表3】

【0021】
B16マウスメラノーマチロシナーゼ活性阻害試験方法
(メラニン生成抑制試験)
24穴プレートの1穴あたりが3.0×104 cells/mL濃度の細胞を播取し、24時間培養を行った。テオフィリン(0.09mg/mL)を含む培地990μLに、所定濃度に調整した試料を溶解したDMSO混合溶液10μLを添加した培地と交換し、CO2インキュベーター内で3日間培養を行った。その後、培地を除去し、3N NaOH水溶液を用いて生成したメラニンを溶解し、405nmに設定したマイクロプレートリーダーで吸光度(A)を測定した。一方、ブランク試験として試料の代わりにDMSOを用い、得られた吸光度(B)とし、次式により、メラニン生成抑制率を算出した。
メラニン生成抑制率(%)=(B−A)×100/B
【実施例4】
【0022】
【表4】

【0023】
竹酢液中の4−エチル−2−メトキシフェノール及び2,6−ジメトキシフェノール、フェニルプロパノイド配糖体を、MTT法により細胞毒性試験を行った。その結果メラニン生成抑制効果を発現する0.033重量%の濃度においても細胞毒性を示す値は見られなかった。
【0024】
細胞毒性試験(MTT法)
96穴プレートの1穴あたりが1.0×104 cells/90μL濃度の細胞を播取し、CO2インキュベーターで24時間培養を行った。ついで、所定濃度の試料を溶解したDMSO混合溶液10μLを添加し、48時間CO2インキュベーター内で培養を行った。その後、あらかじめリン酸緩衝液で調整したMTT(テトラゾリウム塩)混合溶液10μL(MTT5mg/mL)を添加し、さらに6時間インキュベートした。その後、MTT溶液を吸引除去し後、酸性イソプロパノール200μL(アルコールに対して、1/100容量の4N塩酸水溶液で調整)を用いて生成したMTTホルマザンをマイクロプレートミキサーで10分間攪拌を行い、ついで、560nmに設定したマイクロプレートリーダーで吸光度(A)を測定した。一方、ブランク試験として試料の代わりにDMSOを添加し、吸光度(B)を測定した。次式から細胞損傷率を算出した。
細胞損傷率(%)=(B−A)×100/B
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、化粧料に関し、更に詳しくは、竹酢液中の有効成分を配合した、従来にない化粧料に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹酢液中におけるメラニン生成抑制成分のうち、4−エチル−2−メトキシフェノール(A)、2,6−ジメトキシフェノール(B)、フェニルプロパノイド配糖体化合物(C)のうちの一種を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
竹酢液中に含まれるメラニン生成抑制成分のうち、(A)と(B)または(A)と(C)、または(B)と(C)含有することを特徴とする化粧料。
【請求項3】
竹酢液中に含まれるメラニン生成抑制成分のうち、(A)と(B)と(C)を含有することを特徴とする化粧料。


【公開番号】特開2007−77034(P2007−77034A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263696(P2005−263696)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(591258691)板井築炉株式会社 (1)
【Fターム(参考)】