説明

化粧料

【課題】
冷感剤とともに、テアニンを含有することにより、冷感剤の効果の持続性を高める化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)及び(B):
(A)冷感剤
(B)テアニン
を含有することを特徴とする化粧料であること。さらに(A)冷感剤がl―メントール及び/又はdl−カンフルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感を持続的に感じる化粧料に関する。さらに詳細には冷感剤を含有した化粧料にテアニンを添加することにより、冷感が持続する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフスタイルの変化や消費者意識の変化に伴い、多種多様な化粧品が生み出されている。特に夏場において使用される化粧品としては、清涼感を与える商品の需要が高まりつつある。化粧品市場においても、シャンプー、リンス、ヘアーコンディショナーなどのヘアーケアー製品や、ボディシャンプー、ボディリンス等のボディケアー製品、入浴剤等の各種製品への冷感効果を付与する技術検討が行われている。
【0003】
従来よりメントールやカンフルなどの冷感剤は、冷感効果を付与することが知られており、化粧品や医薬部外品に限らず、チューイングガム、キャンデー及び飲料等の飲食物、目薬、貼付薬等の医薬品などに幅広く利用されている。しかし、このような冷感剤は、塗布直後の冷感は高いが、その効果は長くは持続するものではなかった。また、冷感持続性を高めるために含有量を増やすことも検討されているが、その効果は十分ではなく、かつ皮膚刺激の観点から悪影響を及ぼす場合があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
冷感剤の冷感効果を持続させるべく他の成分を併用する検討も一方でなされている。例えば、3−(l−メントキシ)プロパンー1,2−ジオールと特定のグリセリルエーテルを併用する技術(特許文献2参照)、3−(l−メントキシ)プロパンー1,2−ジオールと親水性ポリエーテル変成シリコンを併用する技術(特許文献3参照)が挙げられる。さらにl−メンチル3−ヒドロキシビチレート(特許文献4参照)や4−(l−メントキシメチル)−2−フェニルー1,3−ジオキソラン(特許文献5参照)などを用いる技術もある。
【0005】
また、従来よりアミノ酸は身体を構成するたんぱく質の成分として知られており、栄養素としてはもとより重要であるが、近年はアミノ酸を含有する補助食品が消費者に一種の健康ブームを引き起こしており、健康食品、飲料メーカーなどが盛んに新製品を出している。
【0006】
テアニンは、茶に多量に含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン酸の誘導体であり、植物の中でもお茶とそのごく近縁種にしかみつかっていないアミノ酸として知られ、茶の旨味成分の一つである。テアニンの摂取により、血圧効果作用、体脂肪の低減、アレルギー症状の緩和などが知られており、最近では睡眠の質の向上、更年期症状の緩和、ストレス緩和効果等が明らかにされてきており、食品での利用例は多い。また、近年、化粧料への応用も検討されており、不全角化抑制効果(特許文献6参照)、毛髪の修復(特許文献7参照)などの効果があげられる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−18411号公報
【特許文献2】特開2006−104070号公報
【特許文献3】特開昭63−264522号公報
【特許文献4】特開昭61−194049号公報
【特許文献5】特開平8−225564号公報
【特許文献6】特開2007−204417号公報
【特許文献7】特開2006−104160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4,5の技術では、冷感剤の持続性を高める技術であるが、皮膚刺激の問題が懸念される場合があった。また特許文献2,3の技術においては、冷感を感じることはできるものの優れた持続性を充分に有していなかった。
【0009】
上記のような技術においては、従来より用いられている冷感剤やそれらに類似構造を有する冷感剤に着目した技術が大半であった。皮膚刺激の観点からも含有量を増量することなく、冷感剤の効果を持続させる全く異なる技術開発を行う必要があった。すなわち皮膚刺激性の少ない冷感効果の持続性に優れる化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究した結果、驚くべきことに冷感剤を含有した化粧料に、従来より保湿剤等の効果が見出されていたテアニンが冷感持続剤としての効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は次の成分(A)及び(B);
(A)冷感剤
(B)テアニン
を含有することを特徴とする化粧料に関する。
【0012】
また、成分(A)の冷感剤がl―メントール及び/又はdl―カンフルであることを特徴とする化粧料に関する。
【0013】
成分(B)が成分(A)の冷感持続剤として含有することを特徴とする化粧料に関する。
【0014】
成分(A)に対する成分(B)の含有質量比(B)/(A)が0.5〜10であることを特徴とする化粧料に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化粧料は、冷感剤とともに、テアニンを含有することにより、冷感剤の効果の持続性を高めるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明品の成分(A)冷感剤は、冷感効果の目的で含有されるものであり、化粧料に用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、l−メントール、d−メントール、dl−メントール、l−メントン、d−メントン、dl−メントン、l−イソメントール、d−イソメントール、dl−イソメントール、l−ネオメントール、d−ネオメントール、dl−ネオメントール、l−ネオイソメントール、d−ネオイソメントール、dl−ネオイソメントール、l−メンチルアセテート、d−メンチルアセテート、dl−メンチルアセテート、l−カンフル、d−カンフル、dl−カンフル、1,8−シネオール等が挙げられる。これらは特に限定することなく、一種または二種以上を併用して用いることも可能である。なかでも冷感剤としての効果および安全性の観点から、特にl―メントールもしくはdl―カンフルが好ましい。
【0017】
本発明の成分(A)冷感剤の含有量は、特に限定されないが、皮膚刺激の観点から、0.005〜1.0質量%(以下、単位に「%」と略す)が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましい。
【0018】
本発明の成分(B)テアニンは、グルタミン酸―γ―モノエチルアミドが化学名の物質であり、d体とl体が存在する。テアニンは主にl体が一般的であるが、本発明はd体を含んでいても構わない。
【0019】
本発明の成分(B)テアニンの製造方法としては、特公昭27−3417号公報に記載のあるL−ピログルタミン酸とエチルアミンを加圧・加熱下で反応させる方法がある。また、緑茶、動植物や微生物等から抽出・精製してもよく、発酵法により製造しても構わない。市販品としては、l―テアニン(クリタ工業株式会社製)や、サンテアニン(太陽化学社製)が挙げられる。
【0020】
本発明の成分(B)テアニンの含有量は、特に限定されないが、使用時にべたつかないこと、および冷感の持続が得られる含有量を考慮した場合、0.0025〜10%が好ましく、0.1〜5%がより好ましい。
【0021】
本発明において、成分(B)は成分(A)の冷感を持続させる成分である。成分(A)冷感剤に対して成分(B)テアニンの含有質量比を特定の範囲で含有することにより冷感持続性効果がより好ましいものとなる。このような成分(A)、成分(B)の含有質量比(B)/(A)は、0.5〜10であり、1〜5の範囲にすることでさらに効果的に冷感持続性を感じることができる。冷感持続性の効果は成分(A)の含有量が多い場合に冷感持続性効果が高いことが認められるが、成分(A)の含有量が少ない場合においてもこの範囲の比率にすることで、さらに冷感の持続性効果を向上させることが可能となる。
【0022】
本発明の化粧料には、上記必須成分以外の成分として、使用時に清涼感を与える効果を得られることからエタノールを含有することができる。本発明においてのエタノールの含有量は、特に限定されないが、1〜30%が好ましく、5〜20%がより好ましい。
【0023】
本発明の化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料に含有される任意成分、すなわち、油剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤等を含有することができる。
【0024】
本発明の冷感持続における「持続」とは、成分(A)の含有量、成分(B)の含有量、成分(A)、成分(B)の含有質量比により異なるが、概ね本発明の化粧料塗布後、肌に塗り伸ばしてから3分以上冷感を継続して感じるものをいう。
【0025】
本発明の化粧料は、特に限定されないが、粘度として3000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下であれば、さらに冷感効果の点で好ましい。粘度が3000mPa・sより小さくすると、皮膚上均一に塗り伸ばしやすく冷感を感じやすいものとなる。
【0026】
本発明の化粧料の剤型としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック、マッサージ料等のスキンケア化粧料、ヘアトニック、育毛剤等のヘアケア化粧料、ボディローション、ボディミルク等のボディ用化粧料等が挙げられる。
【0027】
本発明の化粧料の形態としては、ミスト、エアゾール、不織布含浸化粧料などの液状形態が好ましい。特に不織布含浸化粧料とすることで、冷感持続効果をより効果的に得ることができるため好ましい。この場合の不織布の材質等は特に限定されない。
【実施例1】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
本発明品1〜12及び比較品1〜3 : 化粧水
表1及び表2に示す組成および下記製法にて化粧水を調製し、塗布後の冷感および冷感持続性の有無を確認した。その結果を表1及び表2に併記する。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
(製造方法)
A:成分(1)、(2)を室温にて(7)、(8)に混合溶解する。
B:成分(3)〜(6)、(9)を室温にて混合溶解する。
C:BにAを加え、混合することで化粧水を得た。
【0033】
(評価方法:冷感持続性の評価)
表1及び表2の処方により調製した化粧水について以下に示す方法、基準に従って塗布直後および3分後の冷感を評価した。結果を表1及び表2に併記する。
【0034】
(方法)
10名の専門パネルに本発明品1〜7および比較品1〜3の化粧水を3ml、パネラーの顔に塗布し、塗布直後および3分後の冷感を評価した。
【0035】
(評価基準)
塗布直後、および3分経過後に冷感を感じた人数を点数として表記する。
人数 :評価
10〜8名:冷感を非常に感じる
7〜5名:冷感を感じる
4〜1名:冷感をあまり感じない
【0036】
表1及び表2から明らかなように、本発明品1〜12の化粧水は塗布直後、3分間の冷感持続を感じることが実証された。また、本発明品10と本発明品11を比較した場合、成分(A)の含有量は同一であるが、成分(B)テアニンの含有量を増量した本発明品11は、より好ましい(B)/(A)であり、冷感持続に優れるものであった。
一方、成分(B)のテアニンを含有しない比較品1は、l-メントール含有による直後の冷感は感じられたが、冷感持続は感じられなかった。また、これとは逆に冷感剤を含有せず、成分(B)のテアニンを含有した比較品2では、直後の冷感もほとんど感じられず、また冷感持続は感じられなかった。さらに成分(B)の変わりにアミノ酸であるグルタミン酸、L−セリン、さらにアミノ酸の誘導体であるN−アセチルーL−グルタミン酸を含有した、それぞれ比較品3、比較品4、比較品5においては、成分(A)の冷感剤による直後の冷感は感じられるものの、冷感持続は感じられなかった。以上のことより、成分(B)テアニンが冷感持続の効果として相乗的に特に優れていることが明らかであることが示された。
【実施例2】
【0037】
乳液
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 2.0
2.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 2.0
3.流動パラフィン 3.0
4.マカデミアナッツ油 2.0
5.1,3−ブチレングリコール 7.0
6.グリセリン 5.0
7.アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(注1) 0.2
8.防腐剤 適量
9.トリエタノールアミン 0.2
10.エデト酸二ナトリウム 0.02
11.l―テアニン 0.05
12.精製水 残量
13.エタノール 10.0
14.l―メントール 0.02
15.香料 適量
(注1)ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0038】
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を70℃にて加熱溶解する。
B:成分(9)〜(12)を70℃にて加熱後、Aに添加しディスパミキサー(回転数3000rpm)にて乳化する。
C:Bを室温まで冷却する。
D:成分(14)を成分(13)に混合溶解する。
E:CにDを添加する。
F:Eに成分(15)を添加し、乳液を得た。
【0039】
実施例2の乳液は、冷感を感じることができ、塗布3分後でも冷感の持続性を有したものであった。
【実施例3】
【0040】
ヘアトニック
(成分) (%)
1.イソプロピルメチルフェロール 0.1
2.イソステアリン酸ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.4
3.l―メントール 0.6
4.dl―カンフル 0.6
5.エタノール 67.5
6.香料 適量
7.1,3−ブチレングリコール 2.5
8.l―テアニン 3.0
9.精製水 残量
【0041】
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を混合溶解する。
B:成分(7)〜(9)に、Aに添加しプロペラミキサー(回転数500rpm)にて可溶化し、ヘアトニックを得た。
【0042】
実施例3のヘアトニックは、冷感を感じることができ、塗布10分後でも冷感の持続性を有した。
【実施例4】
【0043】
不織布含浸マスク
(成分) (%)
1.クエン酸 0.05
2.クエン酸ナトリウム 0.2
3.1,3−ブチレングリコール 9.0
4.ジプロピレングリコール 5.0
5.アルギン酸ナトリウム 0.05
6.l―テアニン 0.5
7.精製水 残量
8.セスキオレイン酸ソルビタン 0.03
9.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.01
10.ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(8E.O.)0.02
11.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.01
12.l―メントール 0.03
【0044】
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を混合溶解する。
B:成分(8)〜(12)を、50℃にて加熱溶解する。
C:AにBを加え可溶化し、これを不織布に含浸させる。
D:Cをアルミラミネートの袋状容器に密封充填し、不織布含浸マスクを得た。
【0045】
実施例4の不織布含浸マスクは、冷感を感じることができ、使用後5分間でも冷感の持続性を有した。
【実施例5】
【0046】
ボディローション
(成分) (%)
1.エタノール 10.0
2.精製水 残量
3.イソステアリン酸ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 0.3
4.パラオキシ安息香酸メチル 0.05
5.l―テアニン 3.0
6.香料 適量
7.l―メントール 0.02
8.エタノール 10.0
9.リン酸一水素ナトリウム 0.02
10.リン酸二水素ナトリウム 0.05
11.精製水 3.0
【0047】
(製造方法)
A:成分(3)〜(8)を混合溶解する。
B:成分(9)〜(11)を混合溶解する。
C:成分(1)、(2)とBを混合し、Aに加えプロペラミキサー(回転数500rpm)にて可溶化し、ボディローションを得た。
【0048】
実施例5のボディローションは、使用時に冷感を感じることができ、使用後5分間でも冷感の持続性を有した。
【実施例6】
【0049】
化粧水
(成分) (%)
1.1,2−ペンタンジオール 1.0
2.精製水 残量
3.POE20POP6デシルテトラデシルエーテル 0.3
4.パラオキシ安息香酸メチル 0.05
5.l―テアニン 3.0
6.香料 適量
7.l―メントール 0.1
8.エタノール 10.0
9.リン酸一水素ナトリウム 0.02
10.リン酸二水素ナトリウム 0.05
11.精製水 3.0
【0050】
(製造方法)
A:成分(3)〜(8)を混合溶解する。
B:成分(9)〜(11)を混合溶解する。
C:成分(1)、(2)とBを混合し、Aに加えプロペラミキサー(回転数500rpm)にて可溶化し、化粧水を得た。
【0051】
実施例6の化粧水は、使用時に冷感を感じることができ、使用後5分間でも冷感の持続性を有した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)冷感剤
(B)テアニン
を含有することを特徴とする化粧料
【請求項2】
成分(A)がl―メントール及び/又はdl−カンフルであることを特徴とする請求項1記載の化粧料
【請求項3】
成分(B)が成分(A)の冷感持続剤として含有することを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料
【請求項4】
成分(A)に対する成分(B)の含有質量比(B)/(A)が0.5〜10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の化粧料。

【公開番号】特開2009−256319(P2009−256319A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49953(P2009−49953)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】