説明

化粧料

【解決手段】 ヒドロキシエチルセルロースと、メチルセルロース及び/またはヒプロメロース、並びに保湿成分を水に溶解してなる水性組成物及びパック化粧料を提供する。
【効果】本発明の水性組成物は、室温では流動性が高くパックしやすいが、ヒトなどの体温で容易に増粘するため皮膚に長時間留まり、高い保湿効果を得ることができる。本発明の組成物は高い揺変性を有するため、体温により増粘しても軽く指で伸ばすことができ、ムラなく均一にパックすることが可能である。そして、水性組成物であるため、使用後は水で簡単に洗い流すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温では流動性が高いが、ヒトの体温付近の熱で増粘し皮膚に留まることができる化粧料に関するものである。さらに、体温により増粘しても指で軽く伸ばすなど弱い力を加えたときに急激に粘度が低下して流動性が高まることにより、ムラなく均一にパックできる化粧料に関するものである。さらに詳しくは、保湿成分を含む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主被膜剤としてデキストリンを用い、拭き取り、または洗い流しを特徴とするパック化粧料が開示されている。この化粧料はデキストリン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの合成高分子を用いて、使用性及び安定性の高いパック化粧料が実用化されている。
特許文献2には、タマリンドの種子に由来する多糖類である、キシログリカンを配合するサラサラした使用感を持つ化粧料が開示されている。この化粧料はキシログリカンが高温で低粘性化するのを防ぐために、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム等から選ばれる1種以上の増粘多糖類を、キシログルカンに対して10〜1/40倍量(重量比)となるように配合することにより、安定性を向上させている。
特許文献3には、保湿成分としてヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸を含むジェル状化粧料及びジェル状パックが開示されている。この化粧料はバリア機能を十分に発揮させるまでに保湿機能を付与する。
以上のとおり、化粧料としてヒアルロン酸などの保湿成分を複数組み合わせて、バリア機能を向上するものや、メチルセルロース等の増粘多糖類により組成物の安定性を高めるような技術は公知であるが、熱により増粘することで保湿効果を高めるような効果があることは従来全く知られていない。
【特許文献1】特開平11−217313
【特許文献2】特開平10-259118
【特許文献3】特開2002−145753
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は室温では流動性が高くパックしやすいが、ヒトの体温付近の熱で増粘するため皮膚に長時間留まることにより高い保湿効果をもつ化粧料を提供することである。さらに、体温により増粘しても指で軽く伸ばすなど弱い力を加えたときに急激に粘度が低下して流動性が高まることにより、ムラなく均一にパックできる化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ヒドロキシエチルセルロースと、メチルセルロース及びヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに保湿成分を含む水溶液が、上記課題を達成しうるという知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す水性組成物を提供するものである。
1.(A)ヒドロキシエチルセルロース、(B)メチルセルロース及び/またはヒプロメロース、並びに(C)保湿成分を含む水溶液からなる水性組成物。
2.保湿成分がムコ多糖類もしくはその化粧料として許容される塩である1項記載の水性組成物。
3.ムコ多糖類がヒアルロン酸、はコンドロイチン硫酸もしくはこれらの化粧料として許容される塩である2項記載の水性組成物。
4.(A)ヒドロキシエチルセルロースの濃度が0.01〜10w/v%であり、(B)メチルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選ばれる少なくとも一種の濃度が0.01〜7w/v%、並びに(C) 保湿成分が0.001〜5w/v%である1〜3項記載の水性組成物。
5.上記1〜4項記載の用途が化粧料である水性組成物
6. 上記1〜4項記載の用途がパック化粧料である水性組成物
7.さらに、(D)糖アルコール、ポリビニルピロリドン、クエン酸もしくはその化粧料として許容される塩、ホウ酸もしくはその化粧料として許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む1〜6項記載の水性組成物。
8.糖アルコールがマンニトールである7項記載の水性組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明の水性組成物は、室温では流動性が高くパックしやすいが、ヒトなどの体温で容易に増粘するため皮膚に長時間留まることにより高い保湿効果を得ることができる。本発明の組成物は高い揺変性を有するため、体温により増粘しても軽く指で伸ばすことができ、ムラなく均一にパックすることが可能である。そして、水性組成物であるため、使用後は水で簡単に洗い流すことが可能である。
【0006】
一般に高分子化合物を含む水溶液は、温度が上昇することで粘度は低下することが知られている。ところが、本発明の組成物は、20℃と35℃のshear stress−粘度曲線を描いた場合、20℃における粘度よりも35℃における粘度が高いという特徴を有する。そして、35℃で増粘した本発明の組成物を20℃にすることで粘度は元に戻り、もう一度35℃に加温した場合は再び増粘する。すなわち、可逆的加熱増粘性を有する。また、35℃で増粘させた本発明の組成物に外部からわずかな力を加えることで粘度が急激に低下するが、その加えた力を取り除くことで元の高粘度組成物に戻るという特徴を有する。すなわち、可逆的揺変性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる成分(A)のヒドロキシエチルセルロース(以下、HECと略称する)の粘度は特に制限は無いが、その2w/v%水溶液の20℃における粘度が好ましくは3〜10000mPa・sの範囲のものが望ましい。この範囲のものであればいずれの HECでも単独または混合して使用することができる。ヒドロキシエトキシル基の含有率は水に対する溶解性の観点から好ましくは30〜70質量%の範囲である。さらにHECはその水溶液の粘度により区別され、例えば、市販品の品種には表示粘度10、20、300、400、10000(数値は2w/v%水溶液の20℃粘度の値(mPa・s))を示しており、容易に入手可能である。表示粘度10〜400のHECが取り扱いやすいため好ましい。HECの概要、規格、用途、使用量及び商品名などについては医薬品添加物事典(日本医薬品添加物恊会編集、薬事日報社発行)に詳細に記載されている。
【0008】
本発明の組成物におけるHECの使用濃度範囲は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜10w/v%、より好ましくは0.05〜4w/v%、最も好ましくは0.1〜2w/v%である。HECの濃度が10w/v%以下の場合には組成物の粘度が取り扱いやすい範囲にあるので好ましく、また、HECの濃度が0.01w/v%以上の場合には熱で増粘しやすいので好ましい。
【0009】
本発明に成分(B)として用いられるメチルセルロース(以下、MCと略称する)の粘度は特に制限は無いが、その2w/v%水溶液の20℃における粘度が好ましくは3〜12000mPa・sの範囲のものが望ましい。この範囲のものであればいずれのMCでも単独または混合して使用することができる。メトキシル基の含有率は水に対する溶解性の観点から好ましくは26〜33質量%の範囲である。さらにMCはその水溶液の粘度により区別され、例えば、市販品の品種には表示粘度4、15、25、100、400、1500、8000(数値は2w/v%水溶液の20℃粘度の値(mPa・s))を示しており、容易に入手可能である。好ましくは表示粘度4〜400のMCが取り扱いやすいため好ましい。MCの概要、規格、用途、使用量及び商品名などについては医薬品添加物事典(日本医薬品添加物恊会編集、薬事日報社発行)に詳細に記載されている。
【0010】
本発明の組成物におけるMCの使用濃度範囲は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜5w/v%、より好ましくは0.05〜3w/v%、最も好ましくは0.2〜1.7w/v%である。MCの濃度が5w/v%以下の場合には組成物の粘度が取り扱いやすい範囲にあるので好ましく、また、MCの濃度が0.01w/v%以上の場合には熱で増粘しやすいので好ましい。
【0011】
本発明に成分(B)として用いられるヒプロメロース(以下、HPMCと略称する)の粘度は特に制限は無いが、その2w/v%水溶液の20℃における粘度が好ましくは2〜18000mPa・sの範囲のものが望ましい。この範囲のものであればいずれのHPMCでも単独または混合して使用することができる。メトキシル基の含有率は水に対する溶解性の観点から好ましくは16〜30質量%の範囲、また、ヒドロキシプロポキシ基は好ましくは4〜32質量%の範囲である。さらにHPMCは、その水溶液の粘度により区別され、例えば、市販品の品種には表示粘度3、4、4.5、6、15、50、100、400、4000、10000、15000(数値は2w/v%水溶液の20℃粘度の値(mPa・s))を示しており、容易に入手可能である。表示粘度3〜400のHPMCが、取り扱いやすいため好ましい。HPMCの概要、規格、用途、使用量及び商品名などについては医薬品添加物事典(日本医薬品添加物恊会編集、薬事日報社発行)に詳細に記載されている。
【0012】
本発明の組成物におけるHPMCの使用濃度範囲は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜5w/v%、より好ましくは0.05〜2w/v%、最も好ましくは0.1〜0.4w/v%である。HPMCの濃度が5w/v%以下の場合には組成物の粘度が取り扱いやすい範囲にあるので好ましく、また、HPMCの濃度が0.01w/v%以上の場合には熱で増粘しやすいので好ましい。
本発明において成分(B)として、MCとHPMCを併用する場合、MCとHPMCの合計の使用濃度範囲は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.01〜7w/v%、より好ましくは0.05〜5w/v%、最も好ましくは0.1〜1.7w/v%である。MCとHPMCの合計の濃度が7w/v%以下の場合には組成物の粘度が取り扱いやすい範囲にあるので好ましく、また、MCとHPMCの合計の濃度が0.01w/v%以上の場合には熱で増粘しやすいので好ましい。
【0013】
本発明の組成物において成分(A)と成分(B)の質量比率は、成分(A)w/v%/ 成分(B)w/v%とした場合に、好ましくは0.01〜500、より好ましくは0.03〜300、最も好ましくは0.3〜20である。
【0014】
本発明に成分(C)として保湿成分をもちいる。保湿成分としては好ましくはムコ多糖類もしくはその化粧料として許容される塩を挙げることができる。さらに、ムコ多糖類としてはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸もしくはこれらの化粧料として許容される塩を挙げることができ、好ましくはヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸もしくはこれらの化粧料として許容される塩を挙げることができる。ムコ多糖類の化粧料として許容される塩としてはナトリウム塩、カリウム塩を例示できる。
【0015】
本発明の組成物における保湿成分の使用濃度範囲は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、好ましくは0.001〜5w/v%、より好ましくは0.005〜1w/v%、最も好ましくは0.01〜0.1w/v%である。ヒアルロン酸もしくはその化粧料として許容される塩の濃度が5w/v%以下の場合には組成物の粘度が取り扱いやすい範囲にあるので好ましく、また、その濃度が0.001w/v%以上の場合には保湿効果が得られやすいので好ましい。
従って、本発明の好ましい実施態様は、0.01〜10w/v%の成分(A)HEC、0.01〜5w/v%の成分(B)MC及び/またはHPMC、並びに0.001〜5w/v%の成分(C)保湿剤成分からなる水性組成物である。
【0016】
本発明のより好ましい実施態様は、0.05〜4w/v%の成分(A)HEC、0.05〜3w/v%の成分(B)MC及び/またはHPMC、並びに0.005〜1w/v%の成分(C)保湿成分からなる水性組成物である。
【0017】
本発明の組成物には、成分(D)として糖アルコール、ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略称)、クエン酸もしくはその化粧料として許容される塩、ホウ酸もしくはその化粧料として許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を添加することが好ましい。これらの物質の添加量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、通常0.01〜10w/v%、好ましくは0.03〜7w/v%、最も好ましくは0.05〜4w/v%である。
【0018】
糖アルコールとしては、好ましくはマンニトール、キシリトール及びソルビトールが挙げられ、最も好ましくはマンニトールが挙げられる。クエン酸及びホウ酸の化粧料として許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0019】
本発明の組成物は、通常pH4〜10に調整され、特にpH5〜8に調整されることが好ましい。本発明の組成物のpHを調整するために、通常添加される種々のpH調整剤が使用される。酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸などが挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ホウ砂、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、メグルミンなどが挙げられる。その他のpH調整剤としては、グリシン、ヒスチジン、イプシロンアミノカプロン酸などのアミノ酸類なども挙げることができる。
【0020】
本発明の組成物を調製するにあたって、化粧料として許容し得る等張化剤、可溶化剤、保存剤及び安定化剤などを必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で本発明の組成物に添加することができる。等張化剤としては、ブドウ糖等の糖類、プロピレングリコール、グリセリン、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。可溶化剤としては、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。保存剤としては塩化ベンザルコニウ厶、塩化ベンゼトニウム及びグルコン酸クロルヘキシジンなどの逆性石鹸類、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル等のパラベン類、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール及びベンジルアルコールなどのアルコール類、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸及びソルビン酸カリウムなどの有機酸及びその塩類が挙げられる。また、その他の添加剤としては、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールもしくはポリアクリル酸ナトリウ厶等の増粘剤、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの化粧料として許容される塩、トコフェロール及びその誘導体、亜硫酸ナトリウムなどの安定化剤が挙げられる。
【0021】
本発明の水性組成物は、その特性を生かして化粧料、特にパック化粧料などの形態で使用することが好ましい。
【0022】
以下、本発明の水性組成物の製法を例示する。
MCもしくはHPMCを70℃以上に加熱した滅菌精製水に分散させ、氷冷する。室温に戻した後、HEC、保湿成分、糖アルコール、PVP、クエン酸、ホウ酸、添加剤などを添加溶解し、良く混合する。pHを調整し、滅菌精製水でメスアップし、本発明の水性組成物を調製する。調製した本発明の組成物をメンブレンフィルターによるろ過滅菌後、プラスチック製ボトルなどの容器に充填する。
【実施例】
【0023】
[試験例1]
0.2gの65SH400(HPMC、信越化学工業(株)製、メトローズ(登録商標))に、85℃に加熱した滅菌精製水70mLを添加し、攪拌することで分散させた。均一に分散したことを確認後、撹拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。ここに0.2gのクエン酸ナトリウム、4.0gのマンニトールを添加し、溶解するまで撹拌した。さらに、1.5gのHEC(和光純薬製)及び0.05gのヒアルロン酸ナトリウムを添加し、溶解するまで撹拌した。すべての成分の溶解を確認後、NaOHでpHを7.0に調整し、滅菌精製水を添加し100mLにメスアップし、本発明の組成物を調製し、実施例1とした。
【0024】
実施例1の組成物の20℃及び、30℃、35℃におけるshear stressと粘度の関係を評価した。
TA Instruments社製AR2000で粘度を測定した。調製した本発明の組成物約2mLを直径60mmのアクリル製パラレルプレートと温度コントロール用ペルチェの間にセットした。ペルチェとパラレルプレートのギャップは0.5mmにした。この状態で測定試料を20℃で30秒保持した後、所定の測定温度(20もしくは、30℃、35℃)に昇温し、さらに30秒保持した。そして、試料に0.01〜10Paのshear stressを加えたときの粘度を連続的に測定した。結果を図1に、shear
stress−粘度曲線として示した。
【0025】
本発明の組成物はshear
stressの上昇とともに粘度が低下しており(20℃及び、30℃、35℃)、非ニュートン流体であることが示された。これは水性組成物中で何らかの構造体が形成されていることを示している。
また、20℃もしくは30℃と、35℃を比較した場合、shear stressが0.5Pa以下では35℃における粘度が高いことが示された。これは、一般的な高分子水性組成物では観察されない現象であり、本発明の可逆的加熱増粘性を特徴付ける現象である。この体温付近の温度で急激に増粘する本発明の組成物をヒトにパックした場合、組成物が皮膚に長時間留まり、保湿剤としての効果が高まることが期待される。
また、shear
stressが1Pa以上になると、熱による増粘効果が急激になくなり、非常に流動性の高い水性組成物となることが示された。特にshear stressが10Pa付近になると、20℃及び30℃の粘度が35℃よりも高くなる。これは弱い力を加えることにより、熱で増粘した本発明の組成物が容易に流動性の高い組成物に変化することを示している。つまり、パック後、体温により増粘するが、ムラがあった場合指で軽く伸ばすだけで本組成物は容易に流動性が高まるため、均一にパックし直すことが可能である。これにより、均一な保湿効果が得られると共に無駄なく組成物を使用することが期待される。
さらに、35℃で増粘させた試料を20℃に冷却し、再び35℃に加温するなど加温と冷却を繰り返しても、図1に示したようなshear stress−粘度曲線が得られることが示された。これは本発明の組成物が可逆的加熱増粘性揺変性を有することを示している。
【0026】
[試験例2]
所定量のSM−4、SM−15、SM−400(いずれもMC、信越化学工業(株)製、メトローズ(登録商標))、65SH400それぞれに、85℃に加熱した滅菌精製水70mLを添加し攪拌することで分散させた。均一に分散したことを確認後、攪拌しながら氷冷した。全体が澄明になったことを確認後、室温に戻るまで放置した。組成物によってはここに所定量のクエン酸ナトリウム、ホウ酸、マンニトール、ポリビニルピロリドンk25(以下、PVPk25と略称する)、50%塩化ベンザルコニウム液、20%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液を添加し、溶解するまで撹拌した。さらに、所定量のHEC(和光純薬製)及びヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムを添加し、溶解するまで撹拌した。すべての成分の溶解を確認後、NaOHでpHを7.0に調整後、滅菌精製水を添加し100mLにメスアップし、実施例2〜7の組成物を調製した。
表1に実施例2〜7の処方と、20℃もしくは35℃に保持した組成物に0.1Paもしくは10Paのshear stressを加えたときの粘度(Pa・s)を示した。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例2〜7はshear
stressが0.1Paの場合には20℃よりも35℃の粘度が高くなり、熱により増粘することが示された。shear
stressが10Paの場合には、0.1Paの場合と比較して、35℃における粘度が非常に低く、且つ、20℃よりも35℃の粘度が低くなった。これは熱により増粘しても弱い力を加えることで流動性の高い組成物になることを示している。
さらに、実施例2〜7において、10Paのshear stressを加え、流動性を高めた後に、35℃で30秒静置し、再びshear
stressを0.1Paとした場合、粘度が元に戻ることが示された。これは本発明の組成物が外部から加えられた力に対して可逆的であること、すなわち、本発明の組成物が可逆的加熱増粘性揺変性を有することを示している。
【0029】
実施例8(パック化粧料)
実施例6で調製した本発明の組成物をメンブレンフィルターでろ過し、5mLのプラスチック製容器に充填してパック化粧料とした。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の水性組成物は、室温では流動性が高くパックしやすいが、ヒトなどの体温で容易に増粘するため皮膚に長時間留まり、高い保湿効果を得ることができる。本発明の組成物は高い揺変性を有するため、体温により増粘しても軽く指で伸ばすことができ、ムラなく均一にパックすることが可能である。そして、水性組成物であるため、使用後は水で簡単に洗い流すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の組成物の20℃及び、30℃、35℃におけるshear stressと粘度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒドロキシエチルセルロース、(B)メチルセルロース及び/またはヒプロメロース、並びに(C)保湿成分を含む水溶液からなる水性組成物。
【請求項2】
保湿成分がムコ多糖類もしくはその化粧料として許容される塩である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
ムコ多糖類がヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸もしくはこれらの化粧料として許容される塩である請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の用途が化粧料である水性組成物。
【請求項5】
請求項1〜3の用途がパック化粧料である水性組成物。
【請求項6】
さらに、(D)糖アルコール、ポリビニルピロリドン、クエン酸もしくはその化粧料として許容される塩、ホウ酸もしくはその化粧料として許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の水性組成物。
【請求項7】
糖アルコールがマンニトールである請求項6に記載の水性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−143868(P2010−143868A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323782(P2008−323782)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000100492)わかもと製薬株式会社 (22)
【Fターム(参考)】