説明

化粧料

【課題】熱分解しやすい美容成分を含んでいても、長期間安定した性状を保ちながら繰り返し加温して使用することができる化粧料を提供することを目的としている。
【解決手段】ビタミンC誘導体などの熱により劣化しやすい熱劣化性成分を含む化粧料において、熱劣化性成分を予めマイクロ乳化することによって得たマイクロ乳化物が、他の成分と分散混合状態となっているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温して使用することができる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、化粧料を塗布する皮膚温度(35〜37℃程度)〜火傷を負わない程度の温度(45〜46℃程度)まで加温してから使用することが女性の間で盛んに行われるようになっている。すなわち、使用時に化粧料を上記のように加温しておくことによって、塗布したときに皮膚温が上がることに伴い、血流が良くなり、皮膚が活性化する。そして、皮膚温が上がることにより毛穴が開いて、溜まった汚れなどが落ちやすくなったり、化粧品中の美容成分やうるおい成分の浸透がよくなったりする。
しかしながら、化粧料中には、ビタミンC誘導体、各種植物エキス等の熱を加えると分解など劣化しやすい熱劣化性成分が含まれている場合があり、これらの成分が何度も加温を繰り返すと、分解によって安定した効果を発揮できなくなる恐れがある。
【0003】
そこで、手軽に化粧料を加温して使用できるようにした発熱体付き化粧用パックが提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、この化粧用パックは、あらかじめ化粧料を含ませた不織布等のシートと、発熱体とを気密性のパック包装材に包装してあって、使用時にパック包装材を破り、発熱体を空気に触れさせて、発熱体を発熱させてその熱によって、シートに含まれた化粧料を温めながら、シートを皮膚に押し当てて使用するようになっており、一回切りの使用であるため、上記のような問題は発生しない。
【0004】
しかし、上記のようなパックは、一度開封すると加熱が始まるため、小分けして使用することができず、小さな範囲に用いる場合には無駄が多いという問題がある。
【0005】
一方、一回に使用する量の化粧料のみを温めれば、上記のような問題は解決できる。しかしながら、化粧料の一回に使用する量はごく僅かであるため、小分けして温めるのは難しい。また、電子レンジ等のマイクロ波を利用した加熱方法を用いた場合、化粧料中の水分子を振動させて発熱させるため、摩擦振動によって熱劣化性成分だけでなく、他の成分も分解されやすい。
【0006】
【特許文献1】特開2006−89458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、熱分解しやすい美容成分を含んでいても、長期間安定した性状を保ちながら繰り返し加温して使用することができる化粧料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる化粧料は、熱により劣化しやすい熱劣化性成分を含む化粧料において、前記熱劣化性成分が予めマイクロ乳化法によってマイクロ乳化状態されたのち、他の成分と分散混合されてなることを特徴としている。
【0009】
本発明において、使用される熱劣化性成分としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンC,ビタミンC誘導体、ダイズエキス、ゲンチアナ根エキス、加水分解シロガラシ種子エキス、加水分解コメヌカエキス、カンゾウ根エキス、オウゴンエキス、アロエベラエキス、カワラヨモギエキス、ヨクイニンエキス、シソエキス、オタネニンジンエキス、マグワ根皮エキス、カミツレエキス、アルニカ花エキス、オドリコソウ花エキス、ユキノシタエキス、ローズマリーエキス、加水分解酵母エキス、紅藻エキス、褐藻エキス、緑藻エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、フユボダイジュ花エキス、ハマメリス葉エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、レモン果実エキス、キュウリ果実エキス、サイシンエキス、シャクヤク根エキス、アロエフェロックス葉エキス、セイヨウナツユキソウ花エキス、ワイルドタイムエキス、トウキ根エキス、カラスムギ穀粒エキス、ルイボスエキス、アカツメクサ花エキス、ハス胚芽エキス、サボンソウエキス等が挙げられる。
【0010】
本発明において、マイクロ乳化状態とは、粒子径が50nm〜150nm(好ましくは70nm〜120nm)の水中油滴状態になっているものを意味する。
マイクロ乳化物中の成分としては、上記熱劣化性分、乳化剤以外に、必要に応じて、乳化可溶化分散剤(活性剤)、その他美容成分、エモリエント成分(肌や髪の表面が滑らかで柔らかい状態に整えるための成分のことをいいます。)、保湿剤を加えることができ、中でも安定したマイクロ乳化物を得るために乳化可溶化分散剤を添加することが好ましい。
マイクロ乳化物中の、熱劣化性成分の配合量としては、特に限定されないが、0.01〜5.0重量%が望ましい。これより配合量が多くなるとpHや内容成分によりマイクロ乳化状態が形成・維持できないおそれがある。
【0011】
上記乳化剤としては、特に限定されず、従来より化粧料に使用されている公知のものが使用できるが、たとえば、ポリプロピレングリコール4セテス−20、ポリプロピレングリコール4セテス−10、ポリプロピレングリコール8セテス−20などが挙げられる。
【0012】
上記乳化可溶化分散剤としては、特に限定されず、従来より化粧料に使用されている公知のものが使用できるが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、レシチン誘導体(水素添加大豆リン脂質)が挙げられ、これらを複数種併用してもよいが、レシチン誘導体を用いることが好ましい。
【0013】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリルなどが挙げられる。
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタンなどが挙げられる。
【0014】
上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、POE(30)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油などが挙げられる。
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテルなどが挙げられる。
【0015】
上記ポリオキシエチレンステロールとしては、例えば、POE(30)コレスタノールが挙げられる。
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、例えば、POE(20)POP(4)セチルエーテルが挙げられる。
【0016】
上記乳化可溶化分散剤の配合割合としては、特に限定されないが、0.1〜5.0重量%が好ましい。すなわち、0.1重量%を下回ると、その効果がほとんどなく、5.0重量%を越えると、増粘するおそれがある。
【0017】
その他美容成分としては、特に限定されず、従来より化粧料に使用されている公知のものが使用できるが、例えば、ダイズエキス、ゲンチアナ根エキス、加水分解シロガラシ種子エキス、加水分解コメヌカエキス、カンゾウ根エキス、ユビキノン、ダイズエキス、ゲンチアナ根エキス、加水分解シロガラシ種子エキス、加水分解コメヌカエキス、カンゾウ根エキス、オウゴンエキス、アロエベラエキス、カワラヨモギエキス、ヨクイニンエキス、シソエキス、オタネニンジンエキス、マグワ根皮エキス、カミツレエキス、アルニカ花エキス、オドリコソウ花エキス、ユキノシタエキス、ローズマリーエキス、加水分解酵母エキス、紅藻エキス、褐藻エキス、緑藻エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、フユボダイジュ花エキス、ハマメリス葉エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、レモン果実エキス、キュウリ果実エキス、サイシンエキス、シャクヤク根エキス、アロエフェロックス葉エキス、セイヨウナツユキソウ花エキス、ワイルドタイムエキス、トウキ根エキス、カラスムギ穀粒エキス、ルイボスエキス、アカツメクサ花エキス、ハス胚芽エキス、サボンソウエキスなどが挙げられる。
【0018】
エモリエント成分としては、特に限定されず、従来より化粧料に使用されている公知のものが使用できるが、例えば、スクワラン、シクロメチコン、ホホバ油、オリーブ油、トウモロコシ胚芽油、マカデミアナッツ油、乳酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピルなどが挙げられる。
【0019】
保湿剤としては、特に限定されず、従来より化粧料に使用されている公知のものが使用できるが、例えば、水、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールが挙げられる。
【0020】
なお、本発明の化粧料を加温して使用する場合、その使用温度は、美容効果を上げるには高い方が好ましいが、火傷等の問題が生じるとともに、他の成分の分解等のおそれがあるので、40℃〜50℃程度が好ましく、42〜46℃がより好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる化粧料は、以上のように、熱により劣化しやすい熱劣化性成分を含む化粧料において、前記熱劣化性成分が予めマイクロ乳化法によってマイクロ乳化状態されたのち、他の成分と分散混合されてなるので、熱劣化性成分が極小さな油滴中に保護された状態で分散されたようになり、繰り返し熱を加えても劣化しにくい。
したがって、加温してより高い美容効果を発揮させることが容易、かつ、安価に提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を、その実施例を説明する。
【0023】
(実施例1)
熱劣化性成分であるビタミンC誘導体としての3−O−アスコルビン酸エチルを表1に示す配合割合でその他の成分とともに、高圧乳化装置(マイクロフルイデックス インターナショナル コーポレーション社製マイクロフルイダイザー)で145MPa(メガパスカル)の圧力をかけて80nmまでマイクロ乳化したマイクロ乳化物(ベース)を得た。
そして、このマイクロ乳化物を表2に示す配合割合でその他の成分とともに撹拌機(新東科学社製、スリーワンモーター(BL1200))で撹拌混合して化粧料としてのエッセンスAを得た。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
(比較例1)
熱劣化性成分であるビタミンC誘導体としての3−O−アスコルビン酸エチルを、トータルの成分比が上記エッセンスAと同じになるように、表3に示す配合割合でその他の成分とともに、撹拌機(新東科学社製、スリーワンモーター(BL1200))で撹拌混合して化粧料としてのエッセンスBを得た。
【0027】
【表3】

【0028】
上記のようにして得られたエッセンスA及びエッセンスBのそれぞれについて、加熱なし、50℃の加温を5回繰り返し行った後、50℃の加温を10回繰り返し行った後、50℃の加温を20回繰り返し行った後の3−O−アスコルビン酸エチルの含有率を調べ、その結果を表4及び図1に示した。
なお、繰り返し加温は、サンプルをウォータバスにて50℃まで加温し、その後20℃に5分間静置する工程を1回とした。
【0029】
また、3−O−アスコルビン酸エチルの含有率は、液体クロマトグラフィー(島津社製:CTO−10A、LC−10AS、SPD−10A)を用いて測定した。
試料溶液は、試料1.0gを精密に量り、これに以下に示す内部標準液0.5mLを正確に加えた後、水を加えて正確に50mLとし、よく混和することによって得た。
【0030】
【表4】

【0031】
上記表4及び図1から、本発明のようにマイクロ乳化した状態で3−O−アスコルビン酸エチルを配合すれば、繰り返し加温しても3−O−アスコルビン酸エチルの分解が抑えられ、長期間安定した性能を維持できることがよく分かる。
【0032】
また、本発明の化粧料を加温する方法としては、特に限定されないが、例えば、図2及び図3に示すような加温装置1を用いることができる。
図2に示すように、この加温装置1は、装置本体2と、蓋3とを備えている。
【0033】
装置本体2は、図2及び図3に示すように、アルミニウム製の内容器21と、筐体22と、この筐体22内に設けられた電源ユニット23と、コントロールユニット24と、ペルチェ素子25と、サーモスタット26とを備える加温回路とを備えている。
また、筐体22は、上部開口の凹部22aを有するとともに、外壁面に加温回路に接続された、内容器21内の温度を表示する表示装置27を備えている。
【0034】
蓋3は、凹部22a上方を開閉自在に覆うように、ヒンジ28を介して筐体22に装着されていて、加温時は蓋3を閉じた状態にして加温効率を高めるようになっている。
【0035】
この加温装置1は、上記のようになっており、図2及び図3に示すように、内容器21に加温する化粧料が入った化粧料ビン4を収容するとともに、化粧料ビン4が水没しない程度に水を張り、ペルチェ素子25の働きによって内容器21を加熱して、水Wを加温し化粧料ビン4に入った化粧料を所定の温度(例えば、45,6℃)に加温した状態に保つことができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1及び比較例1で得られたエッセンスA,Bの繰り返し加温時の3−O−アスコルビン酸エチルの含有率変化を比較してあらわすグラフである。
【図2】本発明の化粧料を加温するために使用する加温装置の1例をあらわす斜視図である。
【図3】図1の加温装置の加温回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 加温装置
2 装置本体
21 内容器
22 筐体
22a 凹部
23 電源ユニット
24 コントロールユニット
25 ペルチェ素子
26 サーモスタット
27表示装置
3 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により劣化しやすい熱劣化性成分を含む化粧料において、前記熱劣化性成分が予めマイクロ乳化法によってマイクロ乳化状態されたのち、他の成分と分散混合されてなることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
熱劣化性成分が、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ダイズエキス、ゲンチアナ根エキス、加水分解シロガラシ種子エキス、加水分解コメヌカエキス、カンゾウ根エキス、オウゴンエキス、アロエベラエキス、カワラヨモギエキス、ヨクイニンエキス、シソエキス、オタネニンジンエキス、マグワ根皮エキス、カミツレエキス、アルニカ花エキス、オドリコソウ花エキス、ユキノシタエキス、ローズマリーエキス、加水分解酵母エキス、紅藻エキス、褐藻エキス、緑藻エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、フユボダイジュ花エキス、ハマメリス葉エキス、セイヨウトチノキ種子エキス、レモン果実エキス、キュウリ果実エキス、サイシンエキス、シャクヤク根エキス、アロエフェロックス葉エキス、セイヨウナツユキソウ花エキス、ワイルドタイムエキス、トウキ根エキス、カラスムギ穀粒エキス、ルイボスエキス、アカツメクサ花エキス、ハス胚芽エキス、サボンソウエキスからなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−53089(P2010−53089A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220749(P2008−220749)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(593140587)株式会社セレスコムテツク (3)
【Fターム(参考)】