説明

化粧料

【課題】タンパク質由来の綿状の化粧原料の酸化を防止可能に構成した化粧料を提供する。
【解決手段】本発明に係る化粧料では、容器本体の上部開口をフィルム体で密閉したポーション容器の内部に、綿球状の化粧用原料を収容することとした。また、前記容器本体は、底壁の周縁より斜め外方へ向けて延設した斜面部と、同斜面部の上端縁より立設した周壁部と、同周壁部の上端縁より外方へ向けて水平に延設したフランジ部とよりなり、前記周壁部の上下方向中途部には、上部側を外方に拡径させる段差部が周方向に沿って形成されていることにも特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿球状の化粧原料を収容した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コラーゲンは、肌荒れ・シワ・キメ・くすみ形成の予防・改善や保湿効果などの抗老化防止効果を奏するものとして、多くの化粧料に配合されている。
【0003】
特に、コラーゲンの保湿効果は非常に高く、また、生体への適合性が比較的良好であることから、肌の潤いを保つために広く愛用されている。
【0004】
ところで、コラーゲンを配合した化粧料は、水や化粧水などの水性溶媒に溶解され、既に溶液化された物が多い。それゆえ、使用者自身がコラーゲンの濃度を濃く調整することは困難である。
【0005】
しかし、使用者各人の肌質はそれぞれ異なっており、好みのコラーゲン濃度で使用したいという要望があった。
【0006】
そこで、水や化粧水などの水性溶媒を適宜添加することで、所望の濃度のコラーゲン溶液を得ることのできる綿状のコラーゲンが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−214226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、綿状のコラーゲンは、その重量に対する表面積が非常に大きいため、空気中の酸素によってタンパク変性を起こしやすく、溶媒に対する溶解度が極端に低下するという問題があった。
【0009】
また、この問題は、コラーゲンに限定されるものではなく、水や化粧水等の水性溶媒に対して可溶性を示す綿状の化粧原料、特にタンパク質由来の綿状の化粧原料は同様の問題を有していた。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、タンパク質由来の綿状の化粧原料の酸化を防止可能に構成した化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る本発明では、化粧料において、容器本体の上部開口をフィルム体で密閉したポーション容器の内部に、綿球状の化粧用原料を収容してなることとした。
【0012】
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の化粧料において、前記容器本体は、底壁の周縁より斜め外方へ向けて延設した斜面部と、同斜面部の上端縁より立設した周壁部と、同周壁部の上端縁より外方へ向けて水平に延設したフランジ部とよりなり、前記周壁部の上下方向中途部には、上部側を外方に拡径させる段差部が周方向に沿って形成されていることに特徴を有する。
【0013】
また、請求項3に係る本発明では、請求項2に記載の化粧料において、前記底壁は平面状に形成したことに特徴を有する。
【0014】
また、請求項4に係る本発明では、請求項2又は請求項3に記載の化粧料において、前記斜面部は、外方に湾曲する曲面形状としたことに特徴を有する。
【0015】
また、請求項5に係る本発明では、請求項2〜4いずれか1項に記載の化粧料において、前記周壁部は、平面方向端面視において半円弧状の曲面部と直線状の平面部とよりなる角丸長方形状としたことに特徴を有する。
【0016】
また、請求項6に係る本発明では、請求項2〜5いずれか1項に記載の化粧料において、前記周壁部の前記段差部よりも上部側には、前記周壁部を凹ませて切欠状の注ぎ口を形成したことに特徴を有する。
【0017】
また、請求項7に係る本発明では、請求項1〜6いずれか1項に記載の化粧料において、前記容器本体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層を、ポリプロピレン層でサンドイッチ状とした三層構造を有することに特徴を有する。
【0018】
また、請求項8に係る本発明では、請求項1〜7いずれか1項に記載の化粧料において、前記フィルム体は、前記ポーション容器の外側から内側にかけて、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ポリエチレンテレフタレート層、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着性樹脂層の四層構造を有することに特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タンパク質由来の綿状の化粧原料の酸化を防止可能に構成した化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る化粧料を示した説明図である。
【図2】容器本体の内部構造を示した説明図である。
【図3】搬送時における気流を示した説明図である。
【図4】本実施形態に係る化粧料の梱包形態を示した説明図である。
【図5】本実施形態に係る化粧料の使用手順を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る化粧料は、容器本体の上部開口をフィルム体で密閉したポーション容器の内部に、綿球状の化粧用原料を収容したものである。
【0022】
特に、本実施形態に係る化粧料は、内部に収容した綿球状の水溶性を有する化粧用原料に対し、水や化粧水等の水性溶媒を添加して、同水性溶媒に化粧用原料を溶解させ、このタンパク溶液を手肌に塗布するために用いられるものである。
【0023】
ここで、綿球状の化粧用原料とは、水溶性の繊維状のタンパク質が乾燥されて綿状となったものを5mm〜15mm程度の球状に成形したものである。
【0024】
ここで、繊維状のタンパク質は、皮膚に対して美容効果をもたらし、化粧用途に使用可能のであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ケラチン、コラーゲン、エラスチン等を挙げることができる。
【0025】
綿状(綿球状)とした繊維状タンパク質は、その重量に対する表面積が非常に大きく、空気中では特に酸化されやすい傾向にある。
【0026】
特に、疎水傾向の強い(難溶性の)タンパク質に、親水性を向上させる官能基の付加等によって親水化処理を施して水溶性とした繊維状タンパク質は、空気中の酸素によって酸化されることにより変性して、再び難溶性となってしまうことがある。
【0027】
そこで、本実施形態に係る化粧料では、これらの綿球状の化粧用原料をポーション容器に収容することにより、化粧料の使用者が容器を開封するまで、できるだけ酸素との接触機会を減らして、タンパク質の酸化を防止するようにしている。
【0028】
また、本実施形態に係る化粧料の容器本体は、底壁の周縁より斜め外方へ向けて延設した斜面部と、同斜面部の上端縁より立設した周壁部と、同周壁部の上端縁より外方へ向けて水平に延設したフランジ部とよりなり、周壁部の上下方向中途部には、上部側を外方に拡径させる段差部が周方向に沿って形成している。
【0029】
このような構成を有することにより、上部開口近傍をフランジ部に沿って水平に流れる気流が容器内方に流入して、綿球状の化粧用原料が舞い上がってしまうのを防止することができる。
【0030】
すなわち、綿状の化粧原料を収容した化粧料は、製造時に化粧原料が舞い上がりやすく、例えば、密閉前の容器に綿状の化粧原料を収容した状態でコンベア搬送を行うと、相対的な気流が発生することにより、化粧原料が舞上げられて容器から離脱してしまう可能性があったが、段差部を備えることにより、これを回避することができる。
【0031】
またこの段差部は、後に詳述するが、本実施形態に係る化粧料を、製品用の化粧箱等に収容した際に、使用者が化粧料を化粧箱から取り出しやすくするという効果も生起することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る化粧料の底壁は平面状に形成しており、容器内で調製したタンパク溶液を指先ですくい取る際に、残液が出にくいようにしている。
【0033】
具体例を挙げて説明すると、コーヒーフレッシュ等を収容する一般のポーション容器は、底壁に同心円状の凹凸が設けることで、ポーション容器の強度向上や保形性向上を図っている。
【0034】
しかしながら、仮に本実施形態に係る化粧料にこの同心円状の凹凸が形成されていると、底壁にタンパク溶液が残存し、指先できれいにすくい取ることが困難となってしまう。
【0035】
そこで、本実施形態では、底壁を平面状とすることにより、指先と底壁との接触面積を可及的拡大して、タンパク溶液を指先でできるだけきれいにすくい取ることができるようにしている。
【0036】
また、本実施形態では、前記斜面部は、外方に湾曲する曲面形状としている。これにより、斜面部と底壁とが成す角、及び、斜面部と周壁部とが成す角をできるだけ180度に近づけて、指触りを滑らかとすると共に、斜面部と底壁との接続部、及び、斜面部と周壁部との接続部にタンパク溶液が残存してしまうのを防止することができる。
【0037】
また、綿球状の化粧原料を水性溶媒に溶解させるにあたり、容器本体内に挿入した指先で攪拌する場合、挿入した指の腹と内壁面との接触面積をできるだけ拡大させることができ、化粧原料が溶け残るのを防止できる。
【0038】
また、前記周壁部は、平面方向端面視において半円弧状の曲面部と直線状の平面部とよりなる角丸長方形状としている。
【0039】
このような形状とすることにより、使用者が容器本体を持つ際に、対向して設けられた平面部を指先でつまむことにより、指先と本体容器との接触面積をできるだけ大きくすることができ、本体容器を滑り落としてしまうことを防止できる。
【0040】
また、指先との接触面積が大きくなるため、容器本体内に水性溶媒を収容した際に、指先の熱を周壁部を介して水性溶媒に伝えて、水性溶媒の温度を可及的速やかに上昇させることができるため、綿球状の化粧原料を速やかに水性溶媒に溶解させることができるとともに、調製したタンパク溶液を温めて、手肌に塗布した際に使用者が冷たさを感じるのを防止することができる。
【0041】
また、後述するが、本実施形態に係る化粧料を前述の化粧箱に複数個収容した際に、化粧料が容器本体の胴回り方向へ回転してしまうのを防止して、化粧料を化粧箱内に整然と並べることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る化粧料を製造する際に、例えば、綿球状の化粧原料を容器本体内に収容し、上部開口を解放した状態でコンベア搬送する場合、予め容器本体の形状にフィットする載置穴を形成しておくことにより、コンベア上での容器本体の搬送方向を所定の方向に定めることができる。
【0043】
なお、この平面部は、指先の形状に合わせて撓むようにしても良い。これにより、前述の曲面部に変形力が伝わるのを防止して、容器本体の全体的な変形を防ぐことができる。したがって、容器本体の容量の大きな変化を防ぎ、目測であってもできるだけ正確な濃度調整を可能とすることができる。また、指先に平面部をさらにフィットさせることができ、使用者が容器本体を落下させてしまうことを防止できる。
【0044】
また、前記周壁部の前記段差部よりも上部側には、前記周壁部を凹ませて切欠状の注ぎ口を形成している。これにより、調製したタンパク溶液を掌などに滴下して取り出し、手肌に塗布することができる。
【0045】
また、容器本体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層を、ポリプロピレン層でサンドイッチ状とした三層構造を有することとしても良い。このような構造とすることにより、ポーション容器内部に収容した綿球状の化粧原料が変性して水溶性が失われるのを可及的防止することができる。
【0046】
また、フィルム体は、前記ポーション容器の外側から内側にかけて、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ポリエチレンテレフタレート層、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着性樹脂層の四層構造を有するように構成しても良い。
【0047】
このような構造とすることにより、ポーション容器内部に収容した綿球状の化粧原料が変性して水溶性が失われるのをさらに防止することができる。
【0048】
以下、本実施形態に係る化粧料について、図面を参照しながら更に説明する。
【0049】
図1は、本実施形態に係る化粧料Aを示した説明図である。図1(a)は化粧料Aの外観を示した斜視図であり、図1(b)はフィルム体3を剥がした化粧料Aを示す斜視図である。
【0050】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る化粧料Aは、容器本体1の上部開口2を、フィルム体3で閉塞したポーション容器13を備えている。容器本体1は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層を、ポリプロピレン層でサンドイッチ状とした三層構造を有している。また、フィルム体3は、ポーション容器13の外側から内側にかけて、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ポリエチレンテレフタレート層、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着性樹脂層の四層構造としている。フィルム体3は、容器本体1に加熱圧着することで、接着性樹脂層によって剥離可能に接着されている。
【0051】
また、図1(b)に示すように、ポーション容器13の内部には、綿球状の化粧料としての綿状コラーゲン球Bが収容されている。この綿状コラーゲン球Bは水溶性であり、容器本体1内に水や化粧水などの水性溶媒を収容した際に、膨潤し溶解する。
【0052】
容器本体1は、図1(b)及び図2(a)に示すように、凹凸のない平面状に形成された底壁4と、底壁4の周縁より斜め外方へ向けて延設した斜面部5と、同斜面部5の上端縁より立設した周壁部6と、同周壁部6の上端縁より外方へ向けて水平に延設したフランジ部7とで構成している。なお、図2(a)は、図1(b)における容器本体1のG−G’断面を示した説明図である。
【0053】
底壁4は、図2(b)に示すように、平面視角丸長方形状の形状を有し、調製したコラーゲン溶液を指で掬って取り出したり、容器本体1を傾けて取り出した際に、コラーゲン溶液が残存するのを防ぐため、凹凸のない平面状としている。
【0054】
斜面部5は、底壁4の周縁よりやや外方へ向けて緩やかに立ち上げて形成されており、しかも、やや外方へ向けて湾曲させて膨らみを持たせた形状としている。
【0055】
これにより、底壁4と斜面部5との接続部は、斜面部5を直線状に形成した場合に比して角がやや丸められ滑らかになるため、容器本体1からコラーゲン溶液を取り出した際に、コラーゲン溶液が残存するのを防止できる。また、容器本体1内に指を挿入して綿状コラーゲン球Bを溶解させる際に、この底壁4と斜面部5との接続部にも指の腹が接触可能となるため、底壁4と斜面部5との接続部に綿状のコラーゲンが溶け残るのを防止することができる。なお、底壁4は、斜面部5と滑らかに接続しているため、図2(b)及び(c)ではその形状を破線で示している。
【0056】
周壁部6は、斜面部5の上端縁に接続する下部周壁部8と、下部周壁部8の上端縁より外方へ水平方向に僅かに伸延して段差を形成する段差部9と、段差部9の外方端縁より上方へ向けて立設された上部周壁部10とで構成している。
【0057】
下部周壁部8は、斜面部5の上端縁より僅かに外方へ傾きながら上方へ立ち上がるように形成している。図2(a)からも分かるように、下部周壁部8の仮想延長線と、底壁4の仮想延長線とが交わる点の角度αは、90度よりも大きく、湾曲させた斜面部5の接線(図示せず)と底壁4とが成す角の角度βよりも小さい角度としている。これらの角度は、例えば角度αを95度〜105度、角度βを130度〜140度とすることができる。角度αが105度を上回ると、容器本体1が平面視において拡径してしまい、容器本体1を載置した際に余分にスペースを必要とすることとなり好ましくない。また、角度βが130度を下回ると、底壁4と斜面部5との接続部に指の腹が接触しなくなるおそれがあるため好ましくなく、140度を上回ると、容器本体1を載置した際に余分にスペースを必要とすることとなり好ましくない。
【0058】
この下部周壁部8は、図2(b)に示すように、図2(a)のI−I’断面視において、対向する2つの平面部21,21を有するオーバル形状、より具体的には角丸長方形状としている。
【0059】
すなわち、下部周壁部8は、平面方向端面視において半円弧状の曲面部20と、直線状の平面部21とで構成している。
【0060】
このような構成とすることにより、図2(c)に示すように、使用者が容器本体1を把持するにあたり、親指と人差し指で対向する2つの平面部21,21をつまむことにより、使用者は、容器本体1をしっかりと挟持することができる。
【0061】
また、対向する2つの平面部21,21は、指先で挟持した際に若干撓むように構成している。この撓みによる変形力は、平面部21と曲面部20との境目まで及ぶが、境目を越えて曲面部20を変形させることはほとんどない。
【0062】
したがって、指先に容器本体1をしっかりとフィットさせながらも、容器本体1の容積変化をできるだけ少なくして、コラーゲン溶液の濃度調整を容易としている。
【0063】
段差部9は、図2(a)に示すように、下部周壁部8の上部端縁全周から容器本体1の外方へ向けて、略水平方向へ僅かに突出させて形成している。
【0064】
上部周壁部10は、段差部9の外方端縁から、容器本体1の内方へやや傾けて立設している。換言すれば、段差部9と上部周壁部10とが成す角度γは、直角よりもやや小さい角度(例えば、80度〜89.5度、好ましくは83度〜87度)に形成している。このように構成することにより、例えば、容器本体1の内部に収容した綿状コラーゲン球Bを収容した状態でコンベア搬送を行った際に、相対的な気流が発生することにより、化粧原料が舞上げられて容器から離脱してしまうのを防止することができる。
【0065】
このことについてより具体的に説明する。図3は、内部に綿状コラーゲン球Bを収容した段差部9及び上部周壁部10を備えない容器本体100と、本実施形態に係る容器本体1とをコンベア搬送した状態を示す説明図である。図3(a)は段差部9及び上部周壁部10がない容器本体100を示し、図3(b)は図1(b)のH−H’断面を示し、段差部9及び上部周壁部10を有する容器本体1を示している。なお、図3では、容器本体100及び容器本体1は、紙面右から左方向へ搬送されている。
【0066】
容器本体1に綿状コラーゲン球Bを収容し、フィルム体3を添付する工程にコンベア搬送した場合、図3(a)に示すように、容器本体100の上部開口102近傍には、太い破線の矢印で示すように、紙面左から右方向へ相対的な気流Cが発生する。
【0067】
この際、気流Cの一部は、細い破線の矢印で示すように分岐流Dとなって本体周壁部103に沿って容器本体100の内部に侵入し、綿状コラーゲン球Bを浮き上がらせてしまうこととなる。
【0068】
このようにして浮き上がった綿状コラーゲン球Bは、気流Cに吸い寄せられて、最終的には容器本体100から離脱してしまうこととなる。このような綿状コラーゲン球Bの離脱が発生すると、内部に綿状コラーゲン球Bを備えない化粧料が生じることとなり、製造上非常に好ましくない。
【0069】
一方、本実施形態に係る容器本体1の場合、図3(b)に示すように、分岐流Dは、まず上部周壁部10に沿って容器本体1の内部側に流れ始める。
【0070】
ここで、上部周壁部10は、下方へ向かうにしたがって容器本体1の半径方向外方へ向けて拡開するよう、段差部9に対して角度γの傾きを持って立設しているため、分岐流Dは上部周壁部10に沿って下方へ流れ、段差部9に至る。
【0071】
すると分岐流Dは、段差部9にぶつかって流れが拡散して弱められる。従って、容器本体1の深部に至る分岐流Dはごく僅かとなるため、綿状コラーゲン球Bが舞上げられることがなく、綿状コラーゲン球Bの容器本体1からの離脱を効果的に防止することができる。
【0072】
特に、図2(a)にも示したように、上部周壁部10を段差部9に対して角度γの傾きを持って立設しているため、分岐流Dを段差部9に効率よく当接させて、綿状コラーゲン球Bを舞上げる原因となる分岐流Dを効果的に減衰させることができる。なお、この際、綿状コラーゲン球Bの大きさは、底壁4上に載置した際にその高さが段差部9よりも低くなる直径に形成することが肝要である。なお、角度γは、80度を下回ると、段差部9と上部周壁部10との接続部にコラーゲン溶液が残留しやすくなるため好ましくなく、また、89.5度を上回ると分岐流Dの減衰効果が弱くなるため好ましくない。
【0073】
図2(a)の説明の戻ると、上部周壁部10の一部には、同上部周壁部10を外方へ向けて凹ませて、切欠状の注ぎ口14を形成している。この注ぎ口14は、図1(b)に示すように、綿状コラーゲン球Bを水性溶媒に溶解してコラーゲン溶液とした後に、容器本体1からコラーゲン溶液を取出す際に、コラーゲン溶液の流出を容易とするためのものである。
【0074】
上部周壁部10の上端縁には、フランジ部7が接続されている。このフランジ部7は、容器本体1の上部開口2を閉塞するフィルム体3の接着部として機能するとともに、前述の気流Cが水平に流れるよう整流するための整流板として機能する。
【0075】
また、前述の注ぎ口14を形成したフランジ部7は、同フランジ部7の他の部位に比して幅広に形成し、段差15を形成して容器本体1の外方へ向けて下り段差状とし、その先端部を剥離舌片16としている。
【0076】
この剥離舌片16は、フィルム体3の剥離を容易とするものであり、容器本体1にフィルム体3を貼付した際に、段差15によって剥離舌片16とフィルム体3との間に間隙が形成され、その間隙からフィルム体3を剥離すると容易に開封することができることとなる。
【0077】
次に、本実施形態に係る化粧料Aの使用形態について説明する。図4は、化粧料Aを複数個収容した箱入化粧料Eを示す説明図である。
【0078】
箱入化粧料Eは、化粧料収納箱30に化粧料Aを複数個収容して構成しており、消費者に化粧料Aを販売する際の一形態である。
【0079】
化粧料収納箱30は、角形筒状の筒状体31と、同筒状体31より引き出し自在に収容される引出収容体32とを備えている。
【0080】
引出収容体32の内部には、引出収容体32の開口形状と略同形状の中仕切板33が上げ底状態で配設されており、化粧料Aを配置するための収納穴34が複数穿設されている。
【0081】
ここで、この収納穴34は、図2(b)にて示した下部周壁部8の断面形状と略同形状の角丸長方形状としている。
【0082】
したがって、収納穴34に化粧料Aを収納した際に、収納穴34の直線部分と、下部周壁部8の平面部21とが接触して、化粧料Aの周回り方向の回動を規制することとなるため、化粧料収納箱30内で化粧料Aを整然と配置することができる。
【0083】
また、収納穴34の大きさは、下部周壁部8の断面視における大きさ、具体的には、下部周壁部8と段差部9との接続部近傍の大きさとしているため、化粧料Aの段差部9より上側が、中仕切板33よりも上方に突出することとなり、化粧料Aを引出収容体32から取り出しやすく、しかもコンパクトに収容することができる。
【0084】
次に、使用者が本実施形態に係る化粧料Aを使用する手順について説明する。
箱入化粧料Eを手にした使用者は、まず、化粧料収納箱30より化粧料Aを取り出して、上面のフィルム体3を剥離しする。
【0085】
次いで、図5に示すように容器本体1の平面部を指先で挟持しながら、内部に水性溶媒(本実施形態では化粧水40)を注入する。これにより綿状コラーゲン球Bは、化粧水40で湿潤状態となる。
【0086】
次に、使用者は容器本体1の内部に指を挿入し、綿状コラーゲン球Bを内壁に擦りつけながら化粧水40に溶解させ、コラーゲン溶液を調製する。この際、綿状コラーゲン球Bの化粧水40への溶解が進むに従い、化粧水40の粘性が徐々に上がる。
【0087】
十分に溶解したことを確認したら、指先でコラーゲン溶液をすくい取り、顔や手肌に塗布して使用する。
【0088】
また、調製したコラーゲン溶液は、容器本体1から掌に注いで使用することもできる。この場合、上部周壁部10の一部に形成した注ぎ口より注ぐと、コラーゲン溶液の流れる方向を規制することができ、液切れも良好である。
【0089】
上述してきたように、本実施形態に係る化粧料Aは、容器本体1の上部開口2をフィルム体3で密閉したポーション容器の内部に、綿球状の化粧用原料(綿状コラーゲン球B)を収容してなる化粧料Aとしたため、タンパク質由来の綿状の化粧原料の酸化を防止することができる。
【0090】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0091】
1 容器本体
2 上部開口
3 フィルム体
4 底壁
5 斜面部
6 周壁部
7 フランジ部
8 下部周壁部
9 段差部
10 上部周壁部
13 ポーション容器
14 注ぎ口
20 曲面部
21 平面部
40 化粧水
A 化粧料
B 綿状コラーゲン球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の上部開口をフィルム体で密閉したポーション容器の内部に、綿球状の化粧用原料を収容してなる化粧料。
【請求項2】
前記容器本体は、底壁の周縁より斜め外方へ向けて延設した斜面部と、同斜面部の上端縁より立設した周壁部と、同周壁部の上端縁より外方へ向けて水平に延設したフランジ部とよりなり、前記周壁部の上下方向中途部には、上部側を外方に拡径させる段差部が周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記底壁は平面状に形成したことを特徴とする請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記斜面部は、外方に湾曲する曲面形状としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
前記周壁部は、平面方向端面視において半円弧状の曲面部と直線状の平面部とよりなる角丸長方形状としたことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記周壁部の前記段差部よりも上部側には、前記周壁部を凹ませて切欠状の注ぎ口を形成したことを特徴とする請求項2〜5いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記容器本体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層を、ポリプロピレン層でサンドイッチ状とした三層構造を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記フィルム体は、前記ポーション容器の外側から内側にかけて、ポリエチレンテレフタレート層、アルミニウム層、ポリエチレンテレフタレート層、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする接着性樹脂層の四層構造を有することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−234861(P2011−234861A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108368(P2010−108368)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(507373520)株式会社ゼンシン (6)