説明

化粧料

【課題】自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料を提供する。
【解決手段】本発明は、成分(A)金属酸化物微粒子を内包するフレーク状ガラスと、成分(B)フレーク状ガラスの配向を改善する配向改善剤とを含有し、成分(B)が少なくとも窒化ホウ素を含む、化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレーク状ガラスを配合した化粧料が知られている。
例えば、特許文献1では、酸化チタン等の金属酸化物微粒子が単粒子の形で1重量%〜60重量%になるように内部に分散したフレーク状ガラスが記載されている。このフレーク状ガラスは、高い紫外線遮蔽能を有し、かつ可視光に対する透明性が高く、表面が平滑性が高いとされている。
【0003】
また、窒化ホウ素は、化粧品の用途に用いられることが知られている(例えば、特許文献2〜7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−315859号公報
【特許文献2】特開2001−58925号公報
【特許文献3】特開2002−212032号公報
【特許文献4】特開2003−55151号公報
【特許文献5】特開2006−151917号公報
【特許文献6】特開2006−151918号公報
【特許文献7】特開2010−77043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるような化粧料では、配合されたフレーク状ガラス(ガラス粉末)は平滑性を有するものの肌に付着しにくい傾向にあり、ガラス粉末の配向が乱れて皮膚上で塗膜を形成しにくかった。また、フレーク状ガラスの大きさのばらつきによっても配向が乱れ、ガラス粉末のエッジ部分が塗布膜の表面に現れることで、エッジで光散乱が生じたり、光反射が阻害されたりするため、フレーク状ガラスの光沢特性が十分に発揮させることができない。さらに、ガラス粉末が塗膜様に配向しないことにより光透過も阻害されるため、金属微粒子の内包による光透過の制御効果も十分に得られていなかった。すなわち、従来の化粧料では、金属微粒子を内包するフレーク状ガラスの光学機能を十分に発揮させることができないため、ガラス粉末は平滑性や透過性を有するものの、化粧料に配合した場合には期待するほどのツヤ感とカバー力との向上がみられていなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラス状フレークの配向性を向上させて、肌へ塗布した際の皮膜の形成能(付着性)を向上させるとともに、光学機能、とりわけ光沢特性と光透過制御性とを発揮させて、自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記成分:
(A)金属酸化物微粒子を内包するフレーク状ガラス
(B)前記フレーク状ガラスの配向を改善する配向改善剤
を含有し、
前記成分(B)が少なくとも窒化ホウ素を含む、化粧料が提供される。
【0008】
この発明によれば、フレーク状ガラスに窒化ホウ素を併用することにより、肌に塗布した時のフレーク状ガラスの配向性が向上するため、肌への付着性が向上するとともに、フレーク状ガラスが有する光沢特性と光透過制御性とを十分に発揮させて、肌にツヤとぼかし効果とをバランスよく付与することができる。したがって、自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料が実現可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、成分(A)金属酸化物微粒子を内包するフレーク状ガラスと、成分(B)フレーク状ガラスの配向を改善する配向改善剤とを含有し、成分(B)が少なくとも窒化ホウ素を含む、化粧料である。
【0012】
まず、成分(A)について説明する。
成分(A)のフレーク状ガラスとしては、化粧品に一般的に用いられるガラスフレークに、金属酸化物微粒子を内包したものを用いることができる。金属酸化物微粒子を内包するとは、金属酸化物微粒子が粒子材料の内部に包含されることを意味する。すなわち、本発明のフレーク状ガラスは、表面を金属酸化物微粒子層で単層又は複数層被覆された粒子は含まない。金属酸化物微粒子は、粒子材料の内部に、良好かつ均一に分散しているのが好ましい。
フレーク状ガラスの表面は、平滑であると好ましい。「平滑」の程度は、表面粗さRaで表すことができ、好ましくは100nm以下、特に1〜20nmである。この範囲にあると、凹凸による光散乱が抑制されるため、光沢を損なわない。表面粗さRaは、フィールドエミッション電子線三次元粗さ解析装置ERA−8900FE(エリオニクス社製)を用いて測定することができる。
【0013】
フレーク状ガラスの形状は、限定されないが、板状であることが好ましい。フレーク状ガラスの厚みは、0.4〜2μmであることが好ましく、0.7〜1.5μmであると、肌にツヤを付与し、色むらや毛穴の隠蔽性(カバー力)、自然な仕上がりとカバー力が得られ、また窒化ホウ素との組み合わせにより配向性を効果的に改善できるため、より好ましい。フレーク状ガラスの厚みが2μm以下であると塗布時のざらつき等が損なわれることなく使用感が良い。また0.4μm以上であると表面の平滑性が損なわれることなく、ツヤやカバー力が向上する。また、平均粒径は1〜500μmであることが好ましい。平均アスペクト比は10〜100であることが好ましく、5〜25であると、自然な仕上がりとカバー力が得られ、窒化ホウ素との組み合わせにより肌への付着性が効果的に改善できるため、より好ましい。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー散乱法によって測定された粒度分布の体積累積50%の粒径を意味する。
フレーク状ガラスの場合、粒径は、フレーク状ガラスを平面視したときの面積Sの平方根で表される値である。平均厚さは、n=50のサンプルを走査電子顕微鏡で測定した平均であり、平均アスペクト比は(平均粒径/平均厚さ)で表される値である。
【0014】
フレーク状ガラスに含まれる金属酸化物微粒子は、Ti、Sn、Si,Fe、Zr、Al、Zn及びCeからなる群から選択される1又は複数の金属を酸化させた金属酸化物であることが好ましい。また、金属酸化物微粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、繊維状、板状、または不定形状等が挙げられるが、中でも球状が好ましい。平均粒径は、10〜300nmであることが好ましい。これらの存在は、X線回折法により知ることができる。
【0015】
フレーク状ガラスには、金属酸化物微粒子として、少なくとも、(A−1)酸化チタン(TiO)が内包されていることが好ましい。酸化チタン内包フレーク状ガラスとしては、例えば、酸化チタン内包シリカフレーク;TSG30、NTS30K3TA、NPT30K3TA(日本板硝子社製)等の市販品を用いることができる。
【0016】
また、上記成分(A−1)に加え、(A−2)酸化鉄(Fe)、及び、(A−3)チタン・鉄複合酸化物をフレーク状ガラスに内包させることがさらに好ましい。成分(A−3)のチタン・鉄複合酸化物は、成分(A−1)と成分(A−2)とが焼成してなるシュードブルッカイト(FeTiO)、ウルボスピネル(FeTiO)、イルメナイト(FeTiO)などの複合酸化物からなることが好ましく、特にシュードブルッカイトからなることがより好ましい。これにより、成分(A−1)の白色と、成分(A−2)の赤色と、成分(A−3)の黄色とを組み合わせることで、入射光の短中波長成分を吸収しながら、肌色を呈する透過性を向上させることができる。したがって、自然な肌色に着色しながら、ぼかし効果によるカバー力を肌に付与することができる。このような成分(A−1)と成分(A−2)と成分(A−3)とを内包するチタン・鉄複合酸化物内包フレーク状ガラスは、本明細書中、「複合酸化物内包ガラスフレーク」と称する。複合酸化物内包ガラスフレークとしては、例えば特開平7−330542号公報に記載のものがあげられる。また、以下の複合酸化物内包ガラスフレークを使用することが好ましい。
【0017】
複合酸化物内包ガラスフレークは、650nmにおける直進透過率T(650)が0.7〜1.5であり、550nmにおける直進透過率T(550)が0.6〜1.4であり、450nmにおける直進透過率T(450)が0.5〜1.1であって、かつ、T(450)<T(550)≦T(650)の関係にあることが好ましい。また、短中波長側は光が吸収され、長波長の光を肌内で散乱させる点から、T(650)が0.75〜1.20であり、T(550)が0.75〜1.20であり、T(450)が0.60〜0.90であることがより好ましい。なお、直進透過率T(650)、T(550)、T(450)は、1μm厚のフレーク状ガラスを用いて、10×15cmの微粘着フィルム(エクシールコーポレーション社製)上にスポンジにて15mgを塗布して試料を調製し、変角分光反射率測定器GCMS−4(村上色彩研究所社製)を用い、透過計測モードで、オパール板を標準校正板として調整し、入射角0度、透過角15度の測定条件で測定した値である。
【0018】
また、複合酸化物内包ガラスフレークは、入射角を45度、受光角を0度としたときの光沢度をG(45−0)とし、入射角を45度、受光角を45度としたときの光沢度をG(45−45)としたとき、2.0≦G(45−45)/G(45−0)≦5.0で表されることが好ましい。また、G(45−45)/G(45−0)の下限は、角度依存性との兼ね合いにより3.5以上であるとより好ましく、上限は、4.8以下であるとより好ましい。なお、光沢度は、変角分光測定システム(村上色彩技術研究所製、GCMS−4)を用いて測定されたものをいう。
【0019】
さらに、複合酸化物内包ガラスフレークは、全透過率(Tt)が60%以上、ヘイズ値(H)が60%以上であると好ましい。ヘイズ値(H)は、70%以上であるとより好ましく、80%以上であると特に好ましい。このようなフレーク状ガラスを含む化粧料では、毛穴や肌の色むらに対して、より高いぼかし効果を得ることができる。したがって、ぎらつかない適度なふんわりしたやわらかい光沢を示すことができる。上記ヘイズ値の上限は特にないが、例えば、95%以下とすることができる。なお、全透過率(Tt)は、フレーク状ガラスとアミノ変性シリコーン(SF8417、東レ・ダウコーニング社製)とをフーバーマーラーにて混合することで、フレーク状ガラスを20質量%含有する粉体分散媒を調製し、この粉体分散媒をガラス板上にコーターで15μmになるように成膜して、得られた粉体分散膜をISO13468−1に準拠して測定したものである。また、ヘイズ値は、上記の粉体分散膜をISO14782に準拠して測定したものである。
【0020】
複合酸化物内包ガラスフレークの色相角は、50度以上75度以下とすることができ、55度以上70度以下とするとより好ましい。これにより、肌を自然な肌色に着色することができる。なお、本発明において、色相角は、専用セル(ミノルタ社製、粉体セル CR−A50)に入れ、色差計(ミノルタ社製CR−300)でa値およびb値を測定し、得られたa値およびb値を用い、下記式(1)に基づいて算出したものをいう。
色相角(h)=tan-1(b/a) (1)
【0021】
複合酸化物内包ガラスフレークは、以下のように製造することができる。まず、複合酸化物内包ガラスフレーク中のチタン(Ti)含有量が酸化チタンに換算して7質量%以上38質量%以下、複合酸化物内包ガラスフレーク中の鉄(Fe)の含有量が酸化鉄に換算して、2質量%以上13質量%以下となるように、母材となる(a4)シリカ原料に粒子状の(a1)チタン原料と(a2)鉄原料とを配合する。複合酸化物内包ガラスフレーク中におけるチタン含有量と鉄含有量との比率は、酸化チタンと酸化鉄との質量比に換算して、2.5:1〜10:1とすることが好ましい。(a1)チタン原料は、アルコキシド等のチタン化合物や酸化チタン微粒子、チタニアゾルを用いることができる。また、(a2)鉄原料は、硝酸塩等の鉄イオン、アルコキシド等の鉄化合物、鉄含有コロイド、酸化鉄コロイド、又は酸化鉄微粒子を用いることができる。(a1)チタン原料の平均粒径は、1〜100nm、特に10〜100nmであることが好ましい。また、(a2)鉄原料の平均粒径が100〜300nmであることが好ましい。
【0022】
成分(a4)のシリカ原料には、シリカゾルを用いると好ましい。例えば、成分(a4)としてシリカゾルを用い、成分(a1)としてチタンニアゾルと、成分(a2)として酸化鉄微粒子とを配合してゾル液を調製することができる。
【0023】
ゾル液には、水、有機溶媒及び触媒のいずれかを含むことができる。有機溶媒としては、水溶性の有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、ケトン、およびエステルが挙げられる。また、触媒としては、酸触媒や塩基触媒が用いられる。酸触媒としては、プロトン酸が好ましく、具体的には、硝酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸、硫酸、リン酸およびトルエンスルホン酸が挙げられる。酸の添加量は特に限定されないが、成分(a4)のシリカ原料に対してモル比で0.001〜2が好ましい。塩基触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを用いることができる。
【0024】
その他、上記ゾル液の特性を変化させるために、有機増粘剤等を添加しても良い。
【0025】
ついで、公知の技術(例えば、特開平07−315859号公報、特開平09−110452号など)を用いて、基材、好ましくは表面が平滑な基板の表面に、上記調製したゾル液を塗布する。このとき、基板上に0.06〜50μmのゾル液の薄膜を形成するように塗布すればよい。基板の材質は金属、ガラスあるいはプラスチック等とすることができる。このように形成したシリカゾルの薄膜は、乾燥すると収縮するが、基板は収縮しない。したがって、膜に亀裂が発生して、未焼成のフレーク状ガラスを得ることができる。
【0026】
その後、未焼成の複合酸化物内包ガラスフレークを熱処理する。熱処理の温度及び時間は、成分(a1)のチタン原料の表面に成分(a2)の鉄原料が反応して成分(a3)のチタン・鉄複合酸化物、特にシュードブルッカイトが生成し、かつ、成分(a4)のシリカ原料を含むマトリックスがガラスへ転移する条件であればよい。具体的には、700〜1200℃で10分間〜24時間加熱することができ、900〜1100℃で5〜10時間加熱するとより好ましい。
【0027】
このように焼成することで、成分(a4)のシリカ原料が焼成した(a4)シリカガラスとなり、成分(a1)のチタン原料の表面に成分(a2)の鉄原料が反応して成分(A−3)のチタン・鉄複合酸化物が形成され、成分(a2)とは反応しなかった成分(a1)のチタン原料が、成分(A−1)の酸化チタンとなり、成分(a1)とは反応しなかった成分(a2)の鉄原料が、成分(A−2)の酸化鉄となる。そして、成分(A−1)の酸化チタンと、成分(A−2)の酸化鉄と、成分(A−3)のチタン・鉄複合酸化物とが、成分(A−4)のシリカガラスによって内包された、表面が平滑なフレーク状ガラス(複合酸化物内包ガラスフレーク)が得られる。この複合酸化物内包ガラスフレーク全体に対する金属酸化物の内包率(成分(A−1)の内包率と成分(A−2)の内包率と成分(A−3)の内包率との合計)は、自然さとカバー力の点から、10質量%以上が好ましく、特に20質量%以上とすることが好ましい。また、製造容易性の観点から、55質量%以下とすると好ましく、50質量%がより好ましい。フレーク状ガラス中の(A−4)シリカガラスの含有量は、例えば、50〜90質量%とすることができる。なお、酸化チタン及び酸化鉄の平均粒径は、焼成前後でほぼ同じであることが確認されている。
【0028】
本発明において、成分(A)のフレーク状ガラスは、化粧料全体に0.1〜40質量%含有させることが好ましい。フレーク状ガラスは、含有させる化粧料の目的に応じて適宜疎水化処理をして使用することができる。上記疎水化処理の方法としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高粘度シリコーンオイル、シリコーン樹脂等のシリコーン化合物による処理、アニオン活性剤、カチオン活性剤等の界面活性剤による処理、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、テフロン(登録商標)、ポリアミノ酸等の高分子化合物による処理、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン等のフッ素化合物による処理、レシチン、コラーゲン、金属石鹸、親油性ワックス、多価アルコール部分エステル又は完全エステル等による処理等の方法が挙げられる。一般に粉末の疎水化処理に適用できる方法であれば良く、これらの方法に限定されるものではない。
【0029】
また、フレーク状ガラスの含有量は、化粧料の形態によって適宜変更することが好ましく、例えば、パウダーファンデーション、おしろいのような粉末固形や粉末化粧料の場合は、粉末固形全体にフレーク状ガラスを0.5〜40質量%、特に0.5〜20質量%、更に0.5〜15質量%含有させることが、肌に適度なツヤを付与し、色むらや毛穴の隠蔽性(カバー力)、および使用感の点で好ましい。また、油中水型乳化物または水中油型乳化物の場合は、乳化物全体にフレーク状ガラスを0.1〜20質量%、特に0.3〜10質量%、更に0.3〜5%含有させることが、ツヤを付与し、色むらや毛穴の隠蔽性(カバー力)、さらに安定性や塗布時の使用感の点で好ましい。
【0030】
つづいて、成分(B)について説明する。
成分(B)は、フレーク状ガラスの配向を改善するものであって、少なくとも窒化ホウ素を含んでいればよいが、窒化ホウ素のみを成分(B)として用いてもよいし、窒化ホウ素と他の配向改善剤とを併用してもよい。配向改善剤の平均粒径は、1〜25μmであることが、フレーク状ガラスの配向性を向上させて、肌への付着性を効果的に改善させることができるために好ましい。窒化ホウ素以外の配向改善剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、オキシ塩化ビスマス等の無機板状粉体やNε−ラウロイルリジン、N−ラウロイルタウリンカルシウム等の有機板状粉体が挙げられる。このうち、特に、マイカ、タルク、が好ましい。
【0031】
本発明に用いる成分(B)の窒化ホウ素としては、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されずに使用できる。窒化ホウ素の形態としては、六方晶、ウルツ鉱型構造、立方晶、菱面体晶、乱層構造などのものがあるが、六方晶のものが使用性の面から最も好ましい。本発明においては、フレーク状ガラスの配向性を効果的に改善できるという観点からは、平均粒径が3〜18μmのものが好ましく、自然な艶感を得るという観点から、3〜12μmであるとより好ましく、5〜10μmであることがさらに好ましい。このような市販品としては、水島合金鉄株式会社製のSHP−3(平均粒径5.3μm)、SHP−6(平均粒径9.6μm)などが挙げられる。
【0032】
窒化ホウ素の含有量は、化粧料全体に対して3〜35質量%であることが好ましく、5〜30質量%であると、フレーク状ガラスの配向を効果的に改善しつつ、フレーク状ガラスの光学特性を十分に発揮させることができるためより好ましい。
また、窒化ホウ素と(A)金属酸化物内包フレーク状ガラスとの比率(窒化ホウ素/A)は、肌に塗布した時のフレーク状ガラスの配向性が向上するため、肌への付着性を向上させる点から1/1〜150/1が好ましく、特に1/1〜50/1、更に2/1〜25/1が好ましい。
【0033】
成分(B)の配向改善剤はそのまま用いてもよいが、撥水性や化粧料の持続性を向上させるため、成分(A)の金属酸化物内包フレーク状ガラスと同様のフッ素化合物処理、シリコーン化合物処理、金属石鹸処理等の表面を施すことができる。特に、シリコーン処理をすることで、窒化ホウ素の使用感を損なうことなく、撥水性を付与することができる。
【0034】
また、窒化ホウ素以外の配向改善剤の含有量は、化粧料全体に対して10〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であると、窒化ホウ素によるフレーク状ガラスの配向改善効果を向上できる。
【0035】
本発明の化粧料は、常法により種々の剤型で使用され、その剤型は特に制限されないが、油中水型化粧料であってもよいし、水中油型化粧料であってもよい。また、粉末化粧料、粉末固形化粧料や油性固形化粧料であってもよい。
また、化粧料の形態としては、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、エアゾール化粧料、下地化粧料、リキッドファンデーション、パウダーファンデーション、白粉、パウダーアイシャドー、口紅等のメーキャップ化粧料等として使用されるが、ベースメーク用化粧料としての用途がより好ましい。なお、本発明において、ベースメーク用化粧料とは、ファンデーション、おしろい、及び、下地化粧料からなる群から選択するものである。
【0036】
また、本発明の化粧料には、成分(A)や上記着色顔料内包ポリマーの他に、例えば、上記以外の無機粉体、有機粉体、油性成分、界面活性剤、水溶性多価アルコール、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤、紫外線吸収剤、香料などの通常化粧料に用いられる他の成分を必要に応じて適宜配合することができる。以下に列挙する。
【0037】
無機粉体としては、上記配向改善剤に含まれる以外のものであり、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機白色顔料;べンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、群青等の着色顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料などが挙げられる。
【0038】
有機粉体としては、例えば、シリコーンパウダー、ウレタンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミン樹脂パウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ジスチレンベンゼンポリマーパウダー、エポキシ樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、微結晶性セルロース、等が挙げられる。また、これらの樹脂粉体は通常の方法により着色顔料、色素、染料、金属イオン等を被覆、内包処理し、着色したものであってもよい。特に、カバー力と透明感のある自然な仕上がりの点で、樹脂粉体に酸化チタンや酸化鉄等の無機顔料、酸化亜鉛等を内部に分散したものを好ましく使用できる。このような内包樹脂としては、特開2008−162941号、特開2003−192538等に記載のポリマー粉体が使用できる。
【0039】
さらに、本発明の化粧料中の、成分(A)金属酸化物内包フレーク状ガラスおよび成分(B)配合改善剤を含む全粉体の含有量は、粉末化粧料や粉末固形化粧料の場合60〜99質量%、特に85〜98質量%であることが好ましい。乳化化粧料の場合には0.1〜50質量%であることが好ましい。
【0040】
油性成分としては、25℃で固形、半固形、液状の油性成分が使用できる。具体的には、スクワラン、パラフィンワックス、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、セレシン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリヤシ油脂肪酸グリセロール、オリーブ油、アボガド油、椿油、ホホバ油、ミツロウ、鯨ロウ、カルナウバロウ、ミリスチン酸ミリスチル、ミンク油、ラノリン等の各種炭化水素、高級脂肪酸類、油脂類、エステル類、高級アルコール類、ロウ類、揮発性シリコーンや不揮発性シリコーン油等のシリコーン油類などが挙げられる。これら油性成分の含有量は、全化粧料に対して、粉末化粧料や粉末固形化粧料の場合0.1〜40質量%、特に1〜20質量%であることが好ましい。乳化化粧料の場合には、1〜60質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。
【0041】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、脂肪酸アルカリ金属塩、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これら油性成分の含有量は、全化粧料に対して、粉末化粧料や粉末固形化粧料の場合0.1〜20質量%、特に1〜10質量%であることが好ましい。乳化化粧料の場合には、0.5〜20質量%、特に1〜15質量%であることが好ましい。
【0042】
水溶性多価アルコールとしては、分子内に水酸基を2個以上含有する水溶性多価アルコールで、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、及びジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトース、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール、デンプン分解糖還元アルコール等が挙げられる。
【0043】
また、α−トコフェロール等の酸化防止剤;ブチルパラベン、メチルパラベン等の防腐剤;キサンタンガム、カラギーナン等の増粘剤等も適宜配合することができる。
【0044】
つづいて、本発明の効果について図1を用いつつ説明する。この発明では、フレーク状ガラス(図はGFと示す)とともに配向改善剤として窒化ホウ素(図はBNと示す)を併用することで、肌に塗布した時のフレーク状ガラスの配向性を向上させる。図1には、フレーク状ガラスを肌上に塗布したときのモデルを示す。フレーク状ガラスは肌へ付着しにくく、またフレーク状ガラスの大きさと肌の凹凸構造と大きさが異なったり、フレーク状ガラス自体の大きさのばらつきによっても、配向が乱れてしまう。さらに、フレーク状ガラスの厚みが大きくなったり、アスペクト比が小さくなったりすると、配向の乱れはより顕著になる。フレーク状ガラスは、平滑面で光Lを反射できるため、光沢特性を有する。また、このフレーク状ガラスに金属微粒子(図はPと示す)を内包することで、光(L)を透過したり、内包する金属微粒子により光を反射することで光を散乱したりして、光透過性を制御することもできる。しかしながら、配向が乱れると、図1(b)で示すように、エッジで光散乱が生じたり、光の反射や透過が阻害されたりして、こうしたガラス状フレークの光学機能を十分に発揮させることができない。一方、ガラス状フレークを窒化ホウ素と併用することで、図1(a)で示すように、ガラス状フレークの配向が改善され、光反射や光透過を設計どおりに制御することができる。
【0045】
このようなメカニズムにより、本発明では、肌に塗布した時のフレーク状ガラスの配向性を向上させることができるため、肌への付着性が向上するとともに、フレーク状ガラスが有する光沢特性と光透過制御性とを十分に発揮させて、肌にツヤとぼかし効果とをバランスよく付与することができる。したがって、自然な仕上がりとカバー力とを両立できる化粧料が実現可能になる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0047】
製造例1(複合酸化物内包フレーク状ガラスの製造)
下記、製造例に従いフレーク状ガラスを作製した。チタニアゾル、酸化鉄の粒径は、マイクロトラック(日機装株式会社)により測定した平均粒径である。
シリカゾル(SiO、日本化学工業社製)233g(70.0質量%)、チタニアゾル(TiO、粒径30nm)75g(22.5質量%)、酸化鉄(Fe、粒径200nm)7.5g(7.5質量%)を混合し、50℃で18時間養生して塗布液とした。幅10cmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いて塗布した。次に、PETフィルムを雰囲気温度120℃の乾燥炉に1分間入れ、PETフィルム上に形成された薄膜を乾燥させた。次に、PETフィルムに室温の水を噴霧しながら、薄膜をフェルトまたはスクレーパーで軽く擦り、PETフィルムから剥離させた。剥離した薄膜を80℃で24時間乾燥させて、1000℃で7時間焼結した。
【0048】
製造例2(複合酸化物内包フレーク状ガラスの製造)
シリカゾル(SiO)200g(60.0質量%)、チタニアゾル(TiO2。粒径30nm)100g(30質量%)、酸化鉄(Fe、粒径200nm)10g(10質量%)を混合した以外は、製造例1と同じくした。
【0049】
製造例1〜2で得られたフレーク状ガラスについて、以下の項目について測定した。結果を表1に示す。
1.平均厚み、平均粒径
簡易型電子顕微鏡(キーエンス社製)により測定した。
2.色相角
専用セル(ミノルタ社製、粉体セル CR−A50)に入れ、色差計(ミノルタ社製CR−300)でa値およびb値を測定し、得られたa値およびb値を用い、式(1)に基づいて色相角を算出した。
色相角(h)=tan-1(b/a) (1)
3.直進透過率
1μm厚のフレーク状ガラスを用いて、10×15cmの微粘着フィルム(エクシールコーポレーション社製)上にスポンジにて15mgを塗布して試料を調製し、変角分光反射率測定器GCMS−4(村上色彩研究所社製)を用い、透過計測モードで、オパール板を標準校正板として調整して入射角0度、透過角15度の測定条件で測定した。波長650nmにおける直進透過率をT(650)とし、波長550nmにおける直進透過率をT(550)とし、波長450nmにおける直進透過率をT(450)とした。
4.ヘイズ値(H%)、全透過率(Tt%)
フレーク状ガラスとアミノ変性シリコーン(SF8417、東レダウコーニング)とをフーバーマーラーにて、フレーク状ガラスの含有量が20質量%になるように混合した粉体分散媒を、ガラス板上にコーターで15μmになるように製膜した。この粉体分散膜をヘイズメータHM−150(村上色彩研究所社製)にて、ISO14782に準拠してヘイズ値(H)を計測し、ISO13468−1に準拠して全透過率(Tt)を計測した。
5.光沢度
光沢度は、変角分光測定システム(村上色彩技術研究所製、GCMS−4)を用いて、入射角を45度、受光角を0度としたときの光沢度G(45−0)、入射角を45度、受光角を45度としたときの光沢度をG(45−45)をそれぞれ測定し、G(45−45)/G(45−0)を求めた。
6.表面粗さ(Ra)
フィールドエミッション電子線三次元粗さ解析装置ERA−8900FE(エリオニクス社製)により測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1〜5および比較例1〜4
表2に示す組成のパウダーファンデーションを以下の方法で調製した。表中のフッ素化合物処理はパーフルオロアルキルリン酸の5質量%処理である。
成分1〜18を均一に撹拌混合したところへ成分19、20を加えて均一に撹拌混合する。その混合物を粉砕後、皿にプレスし、パウダーファンデーションを得た。
官能評価試験方法は、女性パネラー10名に試験品を肌に塗布してもらい、各パウダーファンデーションを用いたとき、「色むらが目立たない」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」、「艶の程度が好ましい(ぎらつかない)」、「綺麗な仕上がり」、「つきが良い」の項目について、下記の評価基準に従って評価してもらった。評価結果を表2に合わせて示す。
(評価基準)
A:7人以上がそう思うと評価した
B:5〜6人がそう思うと評価した
C:3〜4人がそう思うと評価した
D:2人以下がそう思うと評価した
【0052】
【表2】

【0053】
実施例6〜7
表3に示す組成の白粉(おしろい)を以下の方法で調製した。成分1〜13を均一に撹拌混合したところへ成分14を加えて均一に撹拌混合する。表中のフッ素化合物処理はパーフルオロアルキルリン酸の5質量%処理である。この混合物を粉砕後、皿にプレスし、白粉を得た。
官能評価試験方法は、女性パネラー10名に試験品を肌に塗布してもらい、各おしろいを用いたとき、「色むらが目立たない」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」、「綺麗な仕上がり」、「つきが良い」の項目について、前述の評価基準に従って評価してもらった。評価結果を表3に合わせて示す。得られた白粉は、「つきが良い」、「色むらが目立たない」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」、「綺麗な仕上がり」のいずれも良好であった。
【0054】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
(A)金属酸化物微粒子を内包するフレーク状ガラス
(B)前記フレーク状ガラスの配向を改善する配向改善剤
を含有し、
前記成分(B)が少なくとも窒化ホウ素を含む、化粧料。
【請求項2】
前記窒化ホウ素の平均粒径が、3〜12μmである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記窒化ホウ素の含有量が、該化粧料全体に対して3〜35質量%である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記フレーク状ガラスの含有量が、該化粧料全体に対して0.1〜40質量%である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記フレーク状ガラスは、前記金属酸化物微粒子として下記成分
(A−1)酸化チタン
(A−2)酸化鉄
(A−3)チタン・鉄複合酸化物
を内包する、請求項1乃至4いずれか1項に記載の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2012−167052(P2012−167052A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29214(P2011−29214)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】